【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。感想を頂けるお陰で続けられております。
 誤字報告も感謝です。ありがとうございます。
 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。

 アンケートのご協力、ありがとうございました。参考にさせて頂きます。
 いいですよね、ダークエルフ娘。


ロリを仰ぐ蛇

 シュガー何やらとビターなんとか。祭の終わりを目にすると、好きなアニソンの歌詞を思い出す。

 フライシュ祭が終了すると、街は以前と同じケルト音楽の似合う牧歌的な雰囲気に戻っていった。多くの屋台が姿を消し、派手な芸人が化粧を落とす。乗合馬車が集う駅は、連日満員御礼だった。

 

「いやぁ、おじさん的に王都に専門店とか出来て欲しいけどなぁ。アレ食うと元気出るんだよな」

「来るだろ。高級店になりそうだけどよ」

「問題は米だろうな。やはり、リンジュ米でないとあの味は再現できぬ……」

 

 なんて世間話をしながら、王都を拠点とする同業者達も帰って行った。

 同じ冒険者でも、銀と鉄では金銭感覚が違う。前者は高級馬車で、後者は安い馬車とか徒歩だったり。一般人と違うのは、護衛が無くても自由に移動できるところだな。

 中には祭の後もリントに居残ってる人等もいた。

 

「これはいい商売になりそうですねぇ」

 

 とか何とかで、元銀細工のソルトさんなんかは先回りしてスパイス類を買い漁っていた。

 然る後、フライシュ侯爵はカレーのレシピを公開するそうだ。それに先回りして、原材料を確保しているのだろう。

 まぁお上から怒られない程度ならいいんじゃなかろうか。

 

「こちら、買い取らせて頂いたレシピについての契約書でございます。ご確認ください」

 

 カレー以外の各種レシピについてだが、俺はその殆どをフライシュ家の方々に買い取ってもらった。

 祭の前に再現してた料理の多くは、日本で食べてた庶民料理である。唐揚げとか、すき焼きとか。中でもカツ系が好評で、粉末状にしたパンをまぶして油で揚げるって概念が斬新だそうな。ちなみに、俺発レシピでカレーに次ぐ高評価だったのはカツ丼だった。

 ここらへんもそのうち公開されるだろう。ご当主様もお喜びだと、例の老執事はホクホク顔だった。あの如何にも貴族然とした侯爵様が豚カツ食ってるの想像するとなんか草生える。

 

「しばらくカレーはいいわ……」

「ッスね~。ドロドロしてねぇのが食いてぇッス」

「贅沢な悩みじゃが、実際そうじゃのぅ」

「ボクは毎日でも食べたいですね!」

「や、カレーは週一がベスト」

「それでも食う方なんだよな」

 

 他方、余所者の我等はレシピで得た金を使って経済回すべくリント土産を大量購入。

 蜂蜜酒(ミード)にリンゴに名称そのまま金の卵。産地直送のフルーツは、どれも信じられないくらいの美味である。スパイスに限らず、フライシュ領は食材の宝庫だった。

 曰く、時期になると大農園で収穫祭をやるらしい。その時はまたお邪魔したいところである。

 

「よし、帰ろうか」

 

 そうして美食を堪能し、フライシュ領を出たのは冬を目前にした頃の事だった。

 フライシュ祭初日より、気持ち吹く風が肌寒い。冬が苦手な兎人なんかは既にコートを羽織っていた。対し、分厚い筋骨を持つ熊人は元気に半袖短パンだ。

 熊人といえば、この前グレイソン氏と再会したんだよな。誰経由で知ったか知らないが、カレーの感想を言ってきた。曰く、ハチミツ入り甘口カレーが最高らしかった。銀細工のグレイソン氏、意外と甘党派な模様。

 

 そんなこんな……。

 

「ただいまーっと」

「これからどうすんスか?」

「とりあえず、荷下ろししてゆっくりしたら淫魔王国かな」

 

 風の吹くまま気の向くまま。時折寄り道などしつつ、王都アレクシストに帰還である。

 借家に荷物を下ろし、イリハが新しい漬物を仕込み終えたら、予定通り淫魔王国にゴーだ。

 

 淫魔王国には、エリーゼの検診とレノの健康診断の為に向かう。前者は夢魔討伐の報酬で、後者は第三王子からのアフターケアだ。

 エリーゼの呪いもそうだが、レノの身体は謎が多いのだ。そこで、一流呪術師にして一流魔工師の淫魔女王に診てもらおうって話である。

 

「おいイシグロ。お前宛てに手紙来てるぞ」

 

 諸々の書類を書いてもらうべく転移神殿にエントリーすると、馴染みの受付おじさんに俺宛ての手紙を渡された。

 差出人は、武器工匠のドワルフだった。

 

「えーっと……?」

 

 書類を作ってもらってる間、例の手紙を開いてみる。

 内容は単純明快。研究中の光力銃について、進捗があったから来てくれと。

 

 来たか、異世界ビームライフル。

 

 

 

 

 

 

 フライシュ祭に向かう前、俺はドワルフに新たな武器の作成依頼を出していた。

 既存の武器ではなく、カテゴリー自体が初の武器。仮称・光力銃である。

 

 光力銃は天使族が扱う“光力”を制御する触媒であると同時に、それを収束して発射する機能を想定した武器である。

 名前に銃とあるように、大枠の形は前世地球にあった銃をモデルにするつもりだ。レノに曰く、普通の杖より使いやすいとの事なので。

 で、件の光力銃について何か進捗があるとの事で、俺達は呼び出された訳である。

 

「おっ、来たかい旦那。へへへっ、待ってたぜぇ」

「お久しぶりです」

 

 転移神殿近くにある、相も変わらぬ狭い店。用意がいるとの事なので、アポを取っての訪問だ。

 再会の挨拶もそこそこに、俺達は店の奥にある倉庫兼フィッティングルームに案内された。

 そこには、先客としてドワーフ三銃士のインヴァさんの姿があった。彼は俺やグーラの武器を打ってくれた鍛冶師である。

 

「とりあえず、これを見てくれ」

 

 インヴァさんへの挨拶も簡便に、ドワルフは部屋の中心に設置された作業机に楽器ケースみたいな箱を置いた。蓋を開くと、中には一本の杖が入っていた。

 杖のサイズは大型の両手用で、カテゴリとしてはスタッフになるだろうか。素材は木材無しの金属製。グリップや石突き部など、部位ごとに使われている金属が違うのがひと目で分かる。

 魔法の杖というにはメカメカしく、メカというにはファンタジー。パッと見、ハリウッドナイズされたリリカル魔法少女杖って印象を受けた。

 

「これは?」

「光力触媒……天使族に言わせると、“聖輪錫杖(せいりんしゃくじょう)”ってやつです。魔王戦争ん時のツテでね。どうぞ、確かめてみてくだせぇ」

 

 促され、持って掲げて使ってみる。詠唱するは、最低威力の“魔力の礫”だ。

 弱い魔法を使ってみたが、どうにも具合がよろしくない。威力補正はそれなりだが、魔力の通りが遅いのだ。

 イメージで言うと、空気でパンパンのタイヤに更に空気を入れようとしてる感じ。魔法行使に無駄な力を使わされている。

 

「そいつぁ魔法触媒としても使えますがね。基本的には光力専用ですわ。多分、元の持ち主ぁ魔法がからっきしだったんでしょうねぇ」

「ピーキーですね。天使にアジャストされた杖って感じでしょうか」

「その通り。まぁこいつが特別そういう造りってだけですがね。天使の嬢ちゃんも試してみな」

 

 今度はレノに使わせてみる。大きな杖を両手に持ち、何気ない動作で光弾を発射。ポーヒーと、部屋にあった的にレノの光弾が命中した。

 

「ん、すご……」

 

 ぽかんと口を開けて感嘆するレノ。実際、俺が魔法を使った時より発生速度がダンチだった。

 以前、銃杖を光力の触媒に使わせてみた事があったが、それより全然速かった。大型の杖で早撃ちができるあたり、なかなか尖った性能である。あるいはそれだけレノの光力制御が上手いのか。

 

「見て分かる通り、聖輪錫杖はパーツごとに素材を変えています。メインフレームに光力増幅効果のある素材を使い、グリップには伝達効率の良い素材を。先端には光力制御の魔術刻印……要するに、彼等の言う聖印が刻まれています。刻印部分には聖銅(オリハルコン)が使われていますね。こうも複雑だと効率が悪くなりそうですが、存外上手く組まれています」

「へえ」

 

 何となくの所感だが、光力触媒である聖輪錫杖はこの世界で一般に使われてる魔法触媒用の杖とは根本の設計思想が異なってる気がする。

 魔法触媒が極力シンプルな構造を心がけているのに対し、こっちは用途に合わせたカスタム前提武器って印象だ。前者が機動戦士なら、後者はアーマード・コアである。

 それでいうと、このリリカルスタッフは「魔法なんかどうでもええわ! 光力特化でよろしく!」と言ったところか。

 

「しかし、これじゃ光力銃にはなりませんわな。へへへっ……」

 

 ゲスい笑いを零しながら、ドワルフは箱を退かして一枚の紙を広げてみせた。それは、俺が光力銃をオーダーする時に描いた仕様書のうちの一枚だった。

 そこに描かれていたのは、レノが魔導人機に乗ってた時に使ってた巨大弩だった。淫魔王国の国土結界を破り、ウェルン島の大地を貫通させたあの謎ランチャーである。

 確かに、アレは光力触媒というより光力発射機とでも言うべき代物だった。当人もそういう認識だったようで、一発撃つごとにチャージとスナイプを必要としていたらしい。

 

「聖輪錫杖は増幅はできても収束ができねぇ。つまり、こいつを元に光力触媒を銃型にしても、この大砲みてぇな威力は発揮できねぇって話さ」

「なるほど」

 

 光力銃は光力を溜めて撃つ事を想定した異世界ビームライフルだ。使い手をジェネレーターに、生成したエネルギーを発射するのである。

 しかし、既存の触媒ではエネルギーの蓄積ができないから、銃の形をした杖になっても銃の機能を持った杖にはならないよ、と。

 実物があればもっと研究捗っただろうが、残骸はヴィーカさんがミンチにしてしまったんだよな。

 あるいは、求め過ぎなのかもしれない。杖機能と銃機能は、どう頑張っても両立できないとか。それならそれで、諦めもつくが……。

 

「ですが、不可能ではないと判断しました」

 

 が、そうでもないっぽい。

 金属のプロであるインヴァさんは、箱に戻した光力触媒を指差してから口を開いた。

 

「要するに、触媒を邪魔しない部位に光力を溜められるパーツを組み込めばいい訳です」

「で、いい感じの素材を調べてみたんでさぁ」

 

 続いて、これまた新たに箱をお出しされる。頑丈そうなそれを開くと、中には拳大の石が三つ入っていた。

 一つは赤みを帯びた金塊。一つはうっすら光る半透明の石。一つは光沢のあるゴツゴツした石。どれも進化素材になりそうな見てくれである。

 

「これは陽緋色金(ヒヒイロカネ)と言って、リンジュの鉱山や一部の天津島で採れる希少金属です。イシグロさんがお持ちの刀にも使われている素材ですね。刃物としての適性も高いですが、それと同等程度に光力との相性がよく、聖輪錫杖では核となる素材として用いられております」

 

 箱にある鉱石を指差しながら、インヴァさんが説明を続ける。

 

「こちらは月光石(げっこうせき)という希少金属となります。光力伝達率が高く、且つ光力を溜め込み、放出する性質を持っております。しかし、武器の素材とするにはあまりにも脆く……文献によると、古代では装飾に使われていたそうですね。武器としては鏃などに使われていたようです。宝石兼爆弾といったところでしょうか」

 

 半透明のやつは月光石というらしい。これは巨像迷宮のゴーレムからはドロップしてないアイテムだ。

 

「三つ目は星鉄(ほしがね)です。陽緋色金同様、極めて光力伝達率が高く、魔術刻印によって光力を増幅させる効果があります。聖輪錫杖においては、その希少性も相まって非常に重要な部位を構成するパーツに使用されていますね」

 

 最後にゴツゴツした石の説明を終える。

 すると続いて、インヴァさんはポッケの中から手のひらサイズの小箱を差し出した。

 パカリと蓋が開かれる。中にはビー玉サイズの金属が入っていた。

 

「そして、此方がこの三つの素材を混ぜた合金になります。我等の共作で、正式な名前はまだありません。仮の名を、“ライト合金”と」

 

 それは白金色をした鈍い光沢を湛えた金属だった。おじさん達の金の玉だ。

 見た目には分かりにくいが、メインになってるのは陽緋色金だろうか。光沢はあるのに、キラキラもギラギラもしていない不思議な色調をしている。

 

「天使族の方に協力して頂き試行錯誤した結果、一定の強度を維持しつつ光力を溜める性質を持たせる事に成功しました。尚且つ、溜めた光力を増幅させる事ができます」

「おぉ、問題解決ですね」

「ですが……」

 

 すすっと、インヴァさんはライト合金の入った箱をレノの前にスライドさせた。

 

「一度、光力を注いでみて頂けますか?」

「レノ、やってみて」

「ん、こんな感じ」

 

 レノは言われた通り、金の玉に光力を注いだ。すると、それは徐々に光を放ち始めた。

 これが、光力を溜めている状態か。

 

「一旦、光力を止めていただけますか?」

 

 蛇口を閉めるように光力の注入を止めた途端、合金に宿っていた光が徐々に薄れていった。

 まるで、風船から空気が抜けていくかの様。充填はできるが、蓄積はできないとかの性質があるのだろうか。

 

「次は、指でつまんだ状態から、充填後にあの的に光力を撃っていただけますか? 撃った後は速やかに指を離してください」

 

 合金を摘み、さっきと同じ要領で光力を注入。程々のところで、レノはビームを発射した。

 我知らず、おぉと感嘆の息が漏れた。溜めて撃たれた光力は、光弾三発分の威力があるように感じられた。まるでエイジャの赤石みたいだぁ(直喩)

 

「あつい……」

「うわ手ぇ離して!」

 

 ビーム発射直後、件の合金は熱を発していた。慌てて取り上げると、確かに熱かった。限界まで温かくなってるホッカイロくらいに。

 

「このように、光力の蓄積は一時的な効果になります。そして、一度指向性を持って光力を操作すると、使用後の合金は熱を発してしまいます。検証の結果、発熱中のライト合金は極めて脆くなるようですね。それから、限界まで光力を注入すると壊れてしまうようです」

「一応言っとくが、これでも合金にして長く持たせた方なんだぜ。これが月光石そのままだと確定で壊れるしな。だから爆弾代わりに使ってた訳でぇ」

「な、なるほど」

 

 充填からの解放攻撃。イメージ的には、アクションゲームでよくあるチャージ系武装って印象だ。

 ボタン押しっぱで光力をチャージし、ボタンを離すとゲージが減って行く。一度チャージ攻撃を使ってしまうと、クールタイムが必要な訳か。中身はまるで違うが、魔法装填の仕様に近い気がする。

 つまり、収束ビームには都度チャージが必要な訳か。まぁ移動しながら充填できるなら、大きなデメリットとは思えない。

 オーバーチャージで壊れるってのは、ちょっと注意が必要だが。

 

「これを銃型触媒に組み込むんですか?」

「ええ。ですが、組み込む箇所にも注意が必要です。これで溜め込んだ光力を出す先に触媒があれば、パーツが壊れてしまいますので」

「えーっと?」

「杖ん中に組み込んじまうとミスすりゃ最悪ドカンになりまさぁ」

「それは怖い、では、先端にくっ付けるのでしょうか?」

「それはそれで、光力をチャージできなくなっちまう。組み込むんなら、手元に近い方がいいな」

「手元……」

 

 なかなか複雑な事情があるようで。

 単なるチャージ武装かと思ったが、そう簡単でもないらしい。

 

「どうすればいいんでしょう……?」

「まぁ解決策のアテはあるんだがよ」

「え?」

「だから旦那を呼んだんでぇ」

 

 ここでシンキングタイムかと思ったら、既に解決してあった。

 机に置いてあった物を退かして、ドワルフはまた新しい紙を広げてみせた。それは前に俺が描いた光力銃の仕様書……ではなく、銃杖制作時に適当に描いたリアル銃のイメージイラストだった。

 とにかく、銃と聞いて連想される形を描きまくったお絵描き用紙である。その手の人が見たら卒倒しかねない程度には雑で曖昧な資料モドキだ。

 なんか、ちょっぴり恥ずかしいゾ。

 

「この旦那が描いてくれた銃……ここですわ」

 

 ドワルフの指差した絵。そこには、俺が適当に描いたなんちゃってハンドガンとその解説があった。

 それから彼の指が横にズレて、注釈付きのマガジンを指し示す。これがグリップ内部に収まるんだよといううろ覚え知識。件のマガジンを人差し指でくるくる囲って、ドワルフが言葉を継いだ。

 

「……柄ん中に弾ぁ入れて撃ち出す機構。これを、光力銃に組み込んでみちゃあどうかってなってんでさぁ」

「……ああ!」

 

 その時だ。彼の言葉を受けた事で、俺の脳裏にいくつかのイメージ映像が再生された。

 弾倉と、杖。それこそリリカルな杖にはそれっぽい機構があったじゃあないか。熱が籠ったらマガジンを交換すればいい。レノのリロードはレボリューションだ。

 

「手元にあれば光力を籠めやすい。柄越しだから熱くねぇ。銃口に術式ぶち込みゃ強度問題も解決だ」

「勿論、杖としての性能も忘れてはいけません。ベース素材には聖銅と陽緋色金を使って、光力と魔法の触媒としての運用も可能にします」

「おぉ……」

 

 すげぇ、それもう完成形みたいなもんじゃん。

 異世界ビームライフル計画、順調じゃん。

 

「で、今日来てもらったのは、使い手の嬢ちゃんにコレを試してほしかったからでさぁ」

 

 ゴン、ゴン、ゴン……箱など使わず机の上に直載せされたのは、大中小の銃型杖だった。

 モデルガンというか何というか。武器ではないのだろうが、その造りにチャチなところはなかった。

 

「これは?」

「合わせ用の模型です。魔法触媒である銃杖と違い光力銃は狙い撃つ必要があるので、構えやすい形狙いやすい形でないといけませんから」

「一応、光力銃としての機能があるんだぜ。この穴にライト合金を入れてだな……さっきみたいに撃ってみてくれや」

「ん、わかった」

 

 大中小のモデルガンはその全てが中折れ式で、手前の穴にさっきのビー玉を入れると簡易な光力銃になる仕様らしい。記念すべき一発目は大サイズのスナイパーライフル型だ。

 銃身を折り、弾を入れ、カシャコンと戻す。俺が教えて構えてみせて、光力籠めて狙い撃つ。

 瞬間、銃口から光のビームが発射された。

 

「いいねぇ~……」

 

 普通に感動した。今、銃口からビーム出た。マジでかっけぇ。

 発射後のモデルガンは、銃口から熱を発していた。あぁ~、そういうギミック好き。ガンスの発熱エフェクトとか、ロボアニメの排気演出とかいいよねって。

 

「どう?」

「んぅ……」

 

 と、今はレノの試射中だ。銃の具合を訊いてみると、こくりこくり何度か首を傾げた後、レノは見えざる手で熱した合金を取り出した。

 それから、未だ銃身の焼けたスナライを置き、口を開く。

 

「……分かんないけど、片手で撃てるやつがいい。この形だと撃ちづらい、気がする」

 

 どうやら、イマイチしっくり来なかったようだ。

 多分、慣れの問題だろう。魔導人機時代、レノは例の巨大弩を片手で撃ってたし、銃杖の時もマフィア撃ちやってたもんね。

 

「とりあえず、残りも試してみよう」

「ん……」

 

 大のスナイパーライフル型。中のショットガン型。小のピストル型。

 計三種を試してみた結果、レノは片手で持てる小型銃杖が手に馴染むようだった。ステというよりサイズと形の関係で、中型片手撃ちは厳しいそうな。

 

「なるほど。じゃあ、そっちの方向で進めて頂けますか?」

「あいよ」

 

 剣と魔法のこの世界には、杖一つとっても種類がある。

 小型のワンド。中型のロッド。大型のスタッフ。どれも魔法触媒なのは同じだが、サイズが大きくなるにつれステータス補正が高くなる傾向である。

 対して、小さい杖は魔法の発生が速くなる。同じ能力、同じ魔法の人が大小の杖で早撃ち勝負をしたならば、ほぼ確実にハリポタ杖が勝つくらいには差が出るのだ。

 それで言うと、俺の銃杖は小寄りの中型杖なので、威力よりも発生重視である。エリーゼの杖に関しては素材と補助効果の兼ね合いで王笏サイズになった次第。

 

 現状、レノの役割は空中・中衛の遊撃支援である。

 役割的には、小さい方がちょうどいいのかもしれないな。

 

「でよ、旦那。ちょっと手伝ってほしい事があってな」

「何でしょう」

 

 あとはプロに任せて……と思ったら、ドワルフに話しかけられた。

 何だ何だと思ったところ、俺は宿題を出される事になった。

 

 参考資料を描いてほしい、と。

 

 

 

 

 

 

「ん、動かないで」

「ぐぎぎぎぎぎ……! こ、これ意外とキツいんスが……!」

「我慢なさい。モデルはじっとしていなさいな」

 

 その日の夜。

 美味しい夕食を食べた後、俺達は各々まったりくつろいでいた。

 グーラは普段通り読書タイムで、今はフライシュ領の歴史書を読んでいる。イリハは以前購入した楽器の練習中。レノはルクスリリアをモデルに絵を描き、エリーゼはその光景を眺めていた。

 

「あれ? こんなんだったっけ?」

 

 そんな中、俺は机に向かってお絵描きをしていた。ドワルフに出された宿題……銃の図面を描いているのである。

 当然として、俺に銃の構造を描画できる能力はない。そもそも銃の仕組みは何となくしか把握していない。

 そこらは脳内のアニメから引っ張り出して、それっぽく描いているだけだ。何となくの想像はつくがスマホもパソコンも無い現状正解かどうか分からない。

 

「ん~」

 

 それでもドワルフよりは知っているので、出来る範囲で参考資料を描き続ける。

 ガンアクションのあるアニメを思い出しつつ、片手で扱える銃を描く。

 美術の成績は悪かったので、定規を使って慎重に。そのせいで全体的にカクカクしたイラストになってしまっていた。

 

 片手、片手で使える銃というと……やはり最初に描くべきはハンドガンだろう。製作可能かどうか不明だが、参考として一応だ。

 大泥棒が持ってた拳銃に、新宿種馬リボルバー。その他、アニメやゲームに登場した記憶に残るハンドガン。

 架空の銃も念のため。銀河鉄道のやつとか、それこそリリカル三期のデバイスとか。

 

 曰く、レノは片手で撃てる銃がいいらしい。それで当てれんのかよと思うところだが、魔導人機時代は実際やってたんだからまぁ出来るんだろう。

 言うまでもないが、レノはロリだ。身長の割に手足は長いものの、長すぎる銃は扱いにくいはず。しかし、だ。この世界、銃型杖を作る場合は銃身部分が短すぎると杖判定をしてくれない。なので、触媒として使うには否が応にもある程度はデカくなる。

 

 当然として、デカすぎる銃は取り回しが悪い。だからこそ、俺も銃杖の長さは剣の軌道を邪魔しないサイズにしているのだ。

 デカいゴツいが威力が出るのは、光力触媒も同様だ。そこで製作可能な最小サイズの銃杖となると、どうしても火力が低くなる。遊撃役にはそれでいいが、火力は高いに越したことはない。

 何か、レノの希望を叶えた上で火力を上げる手段はないだろうか……?

 

「二挺拳銃とか……?」

 

 おぉ、二挺拳銃。いいじゃん、である。

 ピストルカラテにガン=カタに、山猫俺ちゃんカットラス。双剣同様これはロマンの極みである。

 それに、二つあるなら右銃のクールタイム中に左銃を撃てるじゃないのと。同時発射でダメージアップだ。

 

 いや、待て。二挺拳銃って、実際問題できるもんか?

 モーションアシストありきとはいえ、剣の二刀流は可能である。杖はただの発動媒体なので、二つ持ちに問題はない。

 けれど、実際に狙い撃つ光力銃の場合はどうだろうか。確か、二挺拳銃ってリアルでやると全く当たらないってのを聞いた事がある。人間の目はそういう風に出来てないとか何とかで……。

 

 銃を合体させて威力アップ! とかも、できないんだよなぁこの世界。

 判定的に、単なる重ねただけになる訳で、一つの武器として認識してくれないのだ。つまり、直剣合体させて双刃剣ってのはできないよって話だ。

 

 小さ過ぎると武器にならない。デカ過ぎるのは扱い難い。合体機構も意味がない。

 なら、バレルの長いハンドガンあたりが妥当だろうか。

 グリップの近くに充填機構がないといけないらしいので、実際造るならリボルバーかオートマチックか。

 

「へえ、上手ですね!」

 

 その時、レノの絵を見て感嘆するグーラが目に入った。

 彼女は身の丈以上の剣を片手で振り回すパワー系ロリだ。例によって剣の重さは彼女の体重を優に超えている。

 膂力ステータスと種族特性の影響で、彼女は地球物理学ではあり得ない事象を起こしているのである。

 

 うん、異世界女史の細腕は見た目通りのパワーではないのだ。レノの言う「片手用」を地球人の尺度で捉えるべきではないだろう。眼や脳の構造も、天使と地球人じゃ全く違うだろうし、試してみないと分からない。

 そもそも、仮称・光力銃とリアル銃は全くの別物である。反動を前提に製造された銃をそのままコピーするのはナンセンスじゃあないか。あくまで参考に止めておくのが健全だろう。

 その上で、彼女に最適な銃を探すのが肝要か。

 

「まあ、今は描きまくるしかないか」

 

 そのへんはプロに任せて、俺は参考資料を作るのみ。

 そうして、俺はドワルフの宿題を終わらせるのであった

 

「マスター」

「ん……?」

 

 などと思いつつ一心不乱にお絵描きしていると、寄ってきたレノに声をかけられた。

 振り向いて、「ん」と差し出されたのは一枚の画用紙だった。そこには、机に向かい筆を走らせる俺の姿が描かれていた。

 

「う、上手ぇ……!」

 

 ていうか、レノ絵ぇ上手っ!

 写実的というかリアル調というか、白黒で描かれた俺は誰がどう見ても俺である。

 この絵に比べると、さっきまで俺がやってたイラストがドブカスに見えてくるな。

 

「見て下さい! ジュスティーヌ様ですよ! 記憶の通り、とてもお美しいです……!」

「この子、目で見た物をそのまま写せるみたいなのよ」

「え、じゃあなんであたし動かないよう言われてたんスか?」

「そういうもんって教えたのルクスリリアじゃろ」

 

 皆に褒められて嬉しいのか、レノの無表情がほんのり崩れている。

 

「ん、褒めて」

「ああ。マジで凄いよ、ビックリした。こんなに絵上手い人、見た事ないよ俺」

 

 斜め四十五度で差し出された頭を、俺は髪型を乱さないよう優しくナデナデした。

 すると、微かに輝く天使の輪が、ほんの少しだけ光を増した。

 

 お褒めは人を見下す行為と、何かの本で読んだ気がする。

 けれど、褒め言葉なしに愛を知る子はいないはずだ。それに、さすれば俺も嬉しくなるので皆がハッピーと言えるだろう。

 なら、躊躇も出し惜しみも、する理由が無いと思うのだ。

 

「……ん♡」

 

 気のせいか、勘違いでなければ。

 頭を撫でられたレノは、ちょっぴり嬉しそうにしてる気がした。




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