【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 誤字報告もありがとうございます。感謝です。
 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。

 久しぶりな気がする迷宮回です。
 よろしくお願いします。


舞い降りるロリ

 古今東西、敵と戦う系のゲームには、嫌われエネミーの存在が付き物だ。

 嫌われエネミーの定義や種類は多岐にわたる。強いザコ。ウザいモブ。見てくれがキモいとか、ゲームシステムにマッチしていないとか。あるいは単に硬すぎるとか。そういう類いの面倒な魔物は、迷宮を擁するこの異世界にも存在するものだ。

 即ち、遠隔攻撃持ちの素早い飛行エネミーである。

 

 この世界はゲームっぽくはあれどゲームではないので、余程の理由が無い限りわざわざ向こうから此方の間合いに入ってきてはくれない。そこに遠隔攻撃が加わると実にウンチ。スピードがあるとダブルでウンチ。

 こっちの飛行エネミーに比べると、どこぞの巨大蜂やどこぞの空戦飛竜なんかは実に紳士である。こっちじゃ付かず離れずの距離でお邪魔してくるとかザラなのだ。素直にクソゲーです。飛行エネミーが厄介なのは迷宮界隈じゃあ常識なんだよ。

 

 故に、固定一党の場合は弓なり魔法なりで対空手段を持つのがマストで、もしくは飛べる味方がいるのが望ましい。

 剣士六人、武闘家集団、ガチガチ鎧の重騎士パーティ。一点特化の一党は、相手によっては木偶と化す。

 だからこそ、この異世界の迷宮は個人の自衛力と共に一党単位の対応力が肝要になる訳だ。

 まぁ特定迷宮の専門家とかはその限りじゃないが、それは置いといて。

 

 その点、我等が黒剣一党は自衛力と対応力の鬼である。

 ルクスリリアは物魔飛行可の魔族であり、エリーゼは杖によってフォームチェンジができてしまう。グーラは問答無用のパワーがあって、イリハは全属性の陰陽術を扱えるのだ。どだい頭目たる俺が汎用性重視の器用万能ビルドなのである。

 

 そんな黒剣一党視点でも、前述の嫌われエネミーは厄介極まる。

 ただ飛んでるだけなら、まぁいい。普通にルクスリリアが墜としてくれる。遠隔持ちも対応可能だ。スピードタイプの飛行型でも、こっちも速いし問題ない。

 けれど、それら全部が揃った遠隔攻撃持ちの素早い飛行エネミーは満場一致でクソ・オブ・クソだ。

 

 エイムアシスト、弾道予測、軌道予測。各種チートの恩恵で、我が一党は対空自体はむしろ得意だ。しかし、素早い飛行エネミーは「対空見てから回避余裕でした」をやってくる。これが最高に最悪で、狙いが正確であればこそ避けられやすいのだ。

 こういう魔物相手の場合、いつも二人がかりで沈めている。片方が敵を動かして、片方が撃墜する。そうすればいくら素早かろうと流石に勝てる。

 逆に言うと、嫌われエネミーの対処には二人分の戦力を当てる必要があるのだ。

 

 だから、俺は常々思っていた。

 ああいうの、単騎で対処してくれる仲間がいたらなぁ……と。

 

 

 

 翔翅迷宮。

 

 屋外型の中位迷宮で、端から端までが斜めに切り立ったギザギザ岩山というフィールド構成。見上げた先は気味の悪い曇り空で、不規則にびょうびょうと怖気の過る風の音が聞こえてくる。

 この迷宮の特徴としては、出現エネミーの殆どが遠隔持ちの素早い飛行系であるところだ。

 以前に潜った浮蟲迷宮や嵐鮫迷宮はどちらも飛行エネミーメインだったが、双方ともに敵の基本攻撃は近接物理技だった。故に、翔翅迷宮の厄介さは比較にならんぐらいのカスである。

 何たって、此処の魔物は基本的に空飛びながら遠隔攻撃を撃ってくるのである。だから迷宮自体が嫌われていて、年単位で人が入ってない不人気迷宮なのだ。

 

 強いのではなく、厄介なエネミー。翔翅迷宮とは、そういうのしかいない迷宮なのである。

 例を挙げると、ヒットアンドアウェイしてくる爆撃鳥。魔法を引き撃ちしてくるバッタ。ホバリングしながら毒液を狙撃してくるコブラなど。どいつもこいつも陰険で、会場冷え冷えの塩試合メーカーである。

 ボスたる魔物など最たるもので、いくつかパターンはあれど全員悪辣極まりない。当たりは正統派ドラゴンくんで、ハズレは闇落ち一反木綿である。逃げるな戦え、高機動引き撃ちミサイラーは即刻中止せよ。

 

 こうも厄介でいやらしいのに迷宮等級が中位なのは、踏破率の低さの割に生還率が高いからだと思われる。

 そう、帰ろうと思えば帰れるのだ。引き撃ち君は逃げに弱いので、怪我なり何なりで危なくなったら存外撤退できちゃうのである。

 

 で、各種対策揃えに揃えた俺達一党。

 レノの射撃の実戦披露に、こんなとこに転移した訳だが……。

 

「やっぱり普通に撃っても当たらないのじゃ」

「脆いのが救いですね。ぶちぬき丸は過剰でしょうか」

「ボス次第で替えようか。エリーゼは?」

「そうね。どのみち当たりそうもないし、範囲の広い氷に替えた方がいいかもしれないわ」

 

 行きは良い良い帰りは知らね。ボスを目指して迷宮内を登攀中、何度かザコエネミーに遭遇した。

 まだ大規模な群れとかち合ってはいないが、戦ってみてわかった。こいつ等クソだ。

 何故なら、ザコ相手だのに相当頑張らないと剣の間合いに入れられないからである。ここでも足の遅い近接は不利を受けちゃうあたり、この世界で全身甲冑が流行らない理由に納得がいく。

 

「レノは大丈夫ですか?」

「ん、問題ない」

「まぁこんくらい楽勝ッスよ。当たりにくいッスけど、当てりゃ勝てるんスから」

「と、お話の途中だがワイバーンだ」

 

 なんて思っていたのがフラグだったのか、俺のボス位置表示に変化があった。

 どうやら先に感知されたらしく、ボスの反応が凄い勢いでこっちに向かってきている。音か魔力か直感か、他のメンバーも大物の気配を感じ取ったようだ。

 

「戦闘準備! あの山の影からやってくるぞ! 会敵、いっちにーのっ……今!」

 

 タイミングぴったり。ドンと岩山を削って現れたのは、自動車サイズのオニヤンマ・ドラゴンだった。その後ろから、イナゴの大群のように多種多様な魔物が続いている。

 終末の光景。地獄の尖兵。そんな印象を受けるくらいには邪悪な雰囲気だ。

 

翼竜(ワイバーン)族じゃないじゃない」

「ごめん適当言った」

「いえ、分類的には魔龍で合っているかと」

 

 翅龍蜻蛉(ドラッヘ・リベェレ)。その名の通り、トンボのような造形のダークファンタジー・ドラゴンという、カッコいいんだかカッコよくないんだかよく分からない主級魔物だ。

 魔物学的には、以前戦ったイセカイザウルス同様に魔龍扱いである。主級魔物である翅龍蜻蛉は、ドラゴンの御多分に漏れず炎ブレスを吐いてくる。また、この迷宮で確認されたボスの中では最速な事でも有名だ。

 そして今現在、件のトンボは多数のザコ兵に加え、当然の権利のように強モブの取り巻きを連れていた。五体いるし、トンボ四天王といったところ。

 

「あいつが出たから毒々作戦は中止だ。イリハ、準備はいいか?」

「了解なのじゃ!」

「よぉし、場合によっては即撤退! 作戦通り、訓練通り、ご安全に!」

「ご安全にッス!」

 

 軽口は余裕の証だ。一瞬の睨み合いの後、各々勝手に動き出す。散開して包囲せんとする魔物勢に対し、此方も負けじと散開した。

 役割分担である。大剣を構えたグーラは地上に残り、ヘラジカに乗ったルクスリリアはイリハと共に飛び発った。俺は銃杖スタイルで空中足場に立ち、レノは光輪を輝かせてフワッと浮かび上がった。

 

「さぁて……」

 

 自己強化をかけ終えたエリーゼは、月光を束ねたような翼を広げた。次いで大きく羽ばたいて、凛と瞬時に垂直飛翔。一定高度に到達すると、翼を消していつもの飛び方に移行した。

 聖輪郷でのパワーアップによって手に入れた彼女固有の竜族魔翼は、通常の翼と違って自由自在には動けない。その代わり、一定距離を超高速移動できるのだ。いわばクールタイム付きの移動技にして、魔法限定の当身技であった。

 

「先手は貰うわ。凍えよ(・・・)……!」

 

 射程範囲に入った瞬間、銀竜の吹雪が解き放たれる。敵方の先陣は冷気の嵐に負け、後続の群れは各々避けた。逃れた敵にルクスリリア達からの遠隔攻撃が届くのだが、命中率は半々ほど。やはり見てから避けられている。

 すると、向こうからもお返しが来た。大河ドラマの合戦シーンのような魔法矢の驟雨。俺は傘を差すようにバリアを張った。

 

「先に統率個体をやるぞ! あいつ等はリポップしないはずだ!」

「あいッス!」

 

 ここから先は乱戦だ。最悪トンボは逃していい。先に取り巻きを全滅させる方が安パイである。

 リリィとイリハを乗せたヘラジカが、ザコを統率している強モブを追いかけ回す。そのうち滅してくれるだろうが、その間ボスを引き付ける役が必要だ。

 その時、翼を広げたレノが前に出た。

 

アレ(・・)は任せて」

 

 左右一対、二挺の拳銃を提げたレノは、左の銃を構えて言った。

 銃の先端に光が集まり、やがて発射された。光力制御による追尾光弾である。迫り来る追尾光弾を、トンボは稲妻のような軌道で避けていた。奴に必死になってる感じはなく、飛びつつブレスを溜めている。

 そうして此方を向いた瞬間、直線光条がトンボの脚に突き刺さる。ブレスを中止したトンボは、右銃を構えるレノを睨みつけた。

 追尾で動かして、本命を当てる。オートエイムを含む各種チートを切ってるレノは、補助抜きの玄人射撃ができるのだ。

 

「取り巻きを追い詰めるわ。合わせなさい」

「ん……」

 

 慌てて距離を取るボスを放置し、エリーゼの攻撃を避けた統率個体にレノの射撃がヒットした。

 ガンスリンガーであり、スナイパーである。やはり、素早い飛行エネミー戦はレノが頭一つ抜けていた。

 

 

「そろそろキャパオーバーだ! グーラ!」

「誘導感謝です! はぁあああッ!」

 

 そんな中、俺はぴょんぴょん跳ねながら騎士スキルの【陽動】を使ってザコの群れと追いかけっこをしていた。

 反撃する暇はないので、これはグーラのセイバービームで薙ぎ払ってもらう。

 

「ご主人! 取り巻き以外も来たッスよ!」

「イリハ! そろそろいけないか?」

「もうちょっとなのじゃ!」

 

 次々とザコを撃ち落とすレノを警戒してか、トンボが謎の咆哮を上げた。敵味方反応レーダーに感あり、迷宮内の魔物が寄ってきた。鳥に蚕にドローンゴーレム。どいつもこいつも冷める敵。

 けれども、予想済みで、対策済みだ。丁度良く、イリハが展開していた十本目の尻尾が散った。

 

「五行相生……【水行・(まじな)い時雨】」

 

 ポンッと、天狐の両手から圧縮された雲が打ち上がる。小さな暗雲はやがて空を覆う雷雲へと成長し、瞬く間に雨を降らして迷宮全土を水浸しにしてのけた。

 無論、これは単なる雨ではない。味方へのバフであり、敵へのデバフである。主な効果は【清潔】付きの体力リジェネで、敵には大幅なスピードを主にしたステータスダウン。

 そして、副作用として全員濡れる。今回はこっちがメインである。

 

「広めでいくわよ。凍えろ(・・・)……!」

 

 水と氷は同じ水行。雨の副作用にはシナジーがある。動きを鈍くした取り巻きは、二杖流エリーゼの範囲吹雪を避けきれず一瞬にして凍結した。

 この雨に濡れると、凍結耐性がダダ下がりするのである。実はコレ、あんまり知られていないらしい。普通の水じゃこうはいかないからだと思われるが。

 

「グーラ!」

「はい!」

 

 塗れっ面に大吹雪。冷気を浴びた魔物の身体に霜が降り、慣性に乗って落下するエネミーの多くはトンボを追い詰める傍らでレノが撃ち堕とし、地面に落ちた奴はグーラが轢き殺していた。

 俺も氷魔法で援護するが、なかなか凍結が決まらない。普通に攻撃魔法打った方がコスパ良いな。

 

「そこ……!」

 

 二挺拳銃の天使による左右交互の三点バースト。引き金の無い光力銃が次々ザコエネミーを墜としていく。現在、我が一党で最もキルスコアが高いのはレノだった。

 光弾で牽制し、圧縮ビームでクリティカル。白の翼を羽ばたかせ、敵の攻撃を回避する。

 まさに、天使型戦闘用アンドロイド。その手には、長大に過ぎる拳銃が握られていた。

 

 

 

◆試製参式光力銃・クレイグ◆ 

◆試製参式光力銃・ブロスナン◆

 

・物理攻撃力=25

 

・魔力補正=D

・魔攻補正=C 

 

・補助効果1=自動修復

・補助効果2=光力制御(大)

・補助効果3=光力増幅(大)

・補助効果4=簡易聖印(要約法儀式)

 

 

 

 右がクレイグで、左がブロスナン。天使レノが持ってるレーザーガンは、杖でありつつ銃である。

 通常の魔法触媒に加え、光力や権能を補助する光力触媒機能。それから、光力を圧縮して射出する機構を持っている異世界新武器種だ。左右どちらも白銀色で、両方全く同じ性能。

 余談だが、レノは地味に両利きらしい。マジで左右の偏りがない人、前世含めて俺初めて見た。

 

「ん、当たっちゃった……」

「おっと、ラッキーヒットか。体力半分、来るぞ皆!」

 

 そんな中、狙撃かまぐれかレノの圧縮光弾が遠くにいたボスの頭部に直撃した。したらゴッソリ減るもんだから、やはりトンボは異様に脆い。

 異常事態は想定内。思ってたより早く第二ラウンドが始まった。体力七割……厳密にいうと怒り状態になると、翅龍蜻蛉は必殺技を解禁するのだ。奴の方向から凄まじい魔力反応。本気のドラゴンブレスが飛んでくる。

 ドッと放たれた炎弾。流石にエリーゼでもガードできない大火力。ああいう技は何かに触れると爆発する。グーラは地上を離れ、俺やエリーゼも反射的に上に逃れた。火球が迫る、狙いはレノだ。

 

「レノ!」

「問題ない」

 

 着弾の寸前、レノは一瞬姿を消した。見ると、純白の天使はエリーゼの隣に出現していた。天使権能、【瞬間転移(テレポート)】である。

 轟ッ! 背後の岩山がブレスの直撃によって破壊される。大小の石礫が散り散りになり、土煙が盛大に舞い上がった。遠くに行ってるルクスリリアと地上に降りたグーラはノーダメージだ。

 

「ん、光力使い過ぎた。ちょっと休ませて」

「はいはい」

 

 言いつつ、エリーゼはレノに回復をかけてあげていた。

 魔導人機に頼らない転移回避。以前よりも生身のテレポートが上手くなってるのには、銃の性能だけでなく専用の鎧にも理由があった。

 

 

 

◆聖天装甲・コントレール◆

 

・物理防御力:350

・魔法防御力:400

 

・補助効果1:全状態異常耐性(小)

・補助効果2:自動最適化

・補助効果3:自動修復

・補助効果4:光力制御(中)

・補助効果5:蓄光補助(大)

・補助効果6:環境適応(小)

・補助効果7:闇属性耐性(小)

 

 

 

 見てくれは露出度高めの近未来ボディアーマーといった感じ。各部を保護する装甲に、腰回りには立体機動装置めいたホルスターが映えに映えている。翼を広げて舞う様は、まさに武装少女といったところ。

 たぶんレノのフィギュアは四万弱すると思う。三個買います。

 

「しゃあ! ザコ操ってた奴倒したッスよ!」

「ナイスぅ!」

 

 そうこうしていると、ヘラジカ組が残る強モブを殺してくれた。

 指揮官の統率を失ったザコモブは好き勝手に襲ってくる。ああも無軌道に動いていれば、得意の回避もできまいて。

 

「皆、エリーゼの後ろに!」

「任せなさいな。さぁ、いらっしゃい」

 

 銀竜の身体に莫大な魔力が迸る。彼女の正面に巨大な氷壁が生成された。俺達は回り込むようにしてエリーゼの後ろに集合した。

 すると、翅龍蜻蛉の言う事を聞かない雑兵がバカみたいに氷壁に激突し、瞬時に凍結されていった。知能の高い魔物やしっかり統率された魔物は引っかからないが、多くの魔物はアホなのだ。

 

「レノとルクスリリアは回り込んでくる奴を警戒。トンボの爆撃が怖い。落ちたのは遠距離から潰すぞ」

「わかったのじゃ!」

「ボクは大技しか撃てませんが……ヤァーッ!」

 

 壁に隠れつつ、次々落ち往くザコを遠距離から砕いていく。グーラの炎雷衝撃波が大部分を消滅させ、残る氷像をイリハの土苦無が粉砕。

 ザコの反応が減ったところでトンボの様子を確認すると、そいつは遠くで此方を観察していた。体力が回復している。ブレスより治癒を優先したらしい。

 

「逃げないらしいな。ザコ消えたら散開。大技来るぞ」

 

 壁を消し、各々飛んでボスに向かう。次の瞬間、ざわざわする魔力が豪雨の岩山を覆った。

 見ると、翅龍蜻蛉が大量の分身を生み出し、その分身が新たなトンボを生成。やがてその数は目測で百を超えた。

 が、惑いはない。予習している。アレはどれかが本物なのではなく、分身の全てが本物なのだ。

 つまり、範囲攻撃しか勝たん。

 

凍えよ(・・・)……!」

 

 銀竜の連続氷魔法が迎え撃つ。対する分身トンボは回避もせずに突っ込んできた。奴等はすぐに凍るのだが、かかった瞬間消滅する。分身のHPはミリなので、一体倒したところでダメージ自体は渋いのだ。

 分け身を斬らせて骨を断つか。吹雪に構わず突貫してくる。そのうちの一団が一斉にブレスを吐いてきた。

 

「大丈夫! これ別に痛くないぞ!」

 

 着弾コースの火球を切り裂き、高校球児のように声をかけつつ皆の様子を確認する。

 守護獣に乗ったルクスリリアは、どこぞのサーカス団員めいてブレス弾幕を避けていた。グーラは全方位バリアを張るエリーゼに守ってもらっている。

 そんな中、レノは巧みな飛行術で全ての攻撃を避けていた。見ているこっちは不安になったが、彼女に無理してる感じはない。冷淡な瞳のまま、その手の銃に光力を溜めていた。

 

『安全確認。一掃するよ……』

 

 その時、俺の脳裏に【念話(テレパシー)】が届いた。

 短距離転移。おびただしい数の分身トンボ群の真ん中に出現したレノは、純白の翼を展開しつつ大きく両腕を広げてみせた。限界まで圧縮された光力が、左右の銃口から漏れている。

 

「セーフティ確認。発熱量も問題ない。発射……!」

 

 やがて、それは解放された。

 眩い程の閃光が、天地を裂くように薙ぎ払われる。ビームというよりゴン太ゲロビ。ゆっくりグルグル回るレノは、トンボの抵抗を嗤うように光による破壊を撒き散らした。哀れ、分身トンボは余波だけで爆発四散!

 

「ろ、ロリバスだ……!」

 

 ゲームでめちゃくちゃお世話になるやつ。人混み見ると撃ちたくなるやつ。ローリングでバスターな圧縮光条が、トンボの分身を一掃した。

 光が止むと、翅龍蜻蛉は一体だけになっていた。

 

「ひゃ~、派手なもんッスね~」

「私だって似たような事できるわよ」

「いえ、レノは前後のリスクを計算して撃っています。下手に使えばただの的になるかと」

「エリーゼは雑なトコあるからのぅ。ああも綺麗にお掃除できまい」

「ぐぬぬ……」

 

 照射後、光力銃のスライドが後退し、排熱孔から一気に熱が溢れ出た。おじさんねぇ、そういうギミックが大好きなんだよ。

 

「レノは退避。畳みかけるぞ」

「ん、リロードする」

 

 とりまそれより追撃戦だ。リロードタイムは隙になるので、エリーゼを除く面々は逃げようとするトンボに殺到した。

 エリーゼ・ピットに転移したレノは、見えざる手を使って発熱マガジンを取り出し、腰の装備から出した予備マガジンと交換した。熱くなってる方は同装備の冷却魔道具に収納。

 シャキンと排熱スライドを戻し、リロード終了。後衛組が戦線復帰する。

 

「イリハ!」

「オッケーじゃ!」

 

 無論、レノのリロード中も俺達は戦っていた。

 逃げようとするトンボに、イリハのソリティア済み陰陽術が迫る。回避不可能なスピードデバフが、トンボの逃走を許さない。

 

「オラッ、【妖姫淫魔緊縛】!」

「もっとよく狙うのじゃ!」

「避けてんスよ!」

 

 トンボとヘラジカによる激しいドッグファイト。下からグーラと俺が援護するが、エースパイロットめいた機動をするトンボはこれも避けてくる。ニュータイプか何か?

 

「まぁこれで終わりでしょう。追い詰めるわよ、レノ」

「牽制は任せる。二発あれば当たる」

「大した自信ね。だったら私も二つ持ちよ」

 

 冷たい流星が飛来する。エリーゼの二連誘導魔法がトンボの尻尾に被弾。間髪入れずレノの圧縮光弾のダブル狙撃が直撃した。

 追撃の蛇腹鎌が鱗を削ぎ、イリハの陰陽術が肢を焼く。適当に撃った俺の【魔力の礫】がトンボの片目を貫いた。

 ボスの残り体力は少し。ブレスを吐く隙は与えない。このまま殺すとなった瞬間、トンボは狙撃組を見た。

 

「やべ! エリーゼ!」

 

 次の瞬間、翅龍蜻蛉は身体の半分を切り離し、後衛の方へと突貫した。その速度はデバフ込みでも万全状態と同等。上から下へ、猛禽のように突撃する。

 構えるレノ。前に出たエリーゼが盾を張る。衝突する寸前、トンボは垂直上昇し、グネッと曲がって落雷のようにレノを襲った。

 起死回生のボディプレス。対し、レノはグリップを強く握って……。

 

「問題、ない……!」

 

 瞬時に作った光銃剣で、迫るトンボを切り裂いた。

 スーッと、翅龍蜻蛉が両断されて、真っ二つになって落下する。土煙が舞い上がり、非常に大きなクレーターが出来た。残心をするように、レノが銃口を下に向けている。

 

 静寂の後、ボスの反応が消える。ぶわっと、爆発のような青白い粒子が舞い上がり、土煙が晴れたクレーターに帰還水晶が現れた。

 レノ、初めてのラストアタックである。

 

「皆、大丈夫か!? レノも掠ってたりしないか?」

「一応、回復しておくわよ」

「ん、大丈夫。それより、やっと活躍できた」

 

 これまで、レノはレベリングの関係で活躍させてもらってた感があったが、今回はマジの活躍だった。本人的には納得のいく働きができたと誇らしい気持ちなのだろう。随分と生真面目な精神性だが、それもまた情緒が育った証左だ。

 ちょっと冷やっとしたトコはあるが、ともかく褒めねば。

 

「頑張ったな、レノ」

「ん……」

 

 光力銃は火力があり、ガンスリンガー・レノはチート無しのマニュアル操作で西部劇ヒーロー級の射撃ができる。

 結論、レノは運用思想通りの能力を持ちつつ、一党の苦手とする分野を埋めてくれる逸材だった。

 

「まぁでも、大技ん時はちょっと危なっかしかったッスね~。あそこは訓練通り動くべきだと思うッス」

「ん、考慮はしたけど、あの時はアレが最善だと思った」

「レノもそうだけれど、私達ももっと連携を練習する必要があるわね……」

「ですね。最後、ボクも前に出過ぎてしまいました」

「一朝一夕にはいくまいて。反省会は今度にして、今日はもう帰って休むのじゃ」

 

 確かに、もっと連携を密にすべきではあるだろう。

 そんな話をしつつ、ドロップアイテムを拾い、俺達は翔翅迷宮を去るのであった。

 

「ねぇ、マスター」

「ん?」

「今夜は何を教えてくれるの……?」

 

 勿論、こっちの連携も訓練中だ。

 レノは学習能力が高いのだ。




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◆クレイグ&ブロスナン◆
 レノの光力銃。色はどちらも白銀。形は全長40㎝の超大型拳銃で、右がクレイグで左がブロスナン。
 魔法・光力の触媒機能と圧縮光弾射出機構を持っている。
 グリップ内の弾倉には光力を圧縮する為のライト合金が収められており、光力を溜め過ぎると熱を発する。その為、光力銃には排莢機構を基にした排熱スライドが存在する。
 予備のマガジンは腰部のホルスター兼冷却魔道具に格納されており、レノはこれを念力でリロードする。
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