【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も助かっています。バーッと書いてるので誤字脱字がドバドバあります。いつもすみません。
前回、ちょっとした設定ミスを発見したので修正しました。すり替えておいたのさ!
こういう事平気でやります。
変なとこあるかもしれません。場合によっては加筆します。
今回、いつにもまして雑だなーと思わんくないです。
ルクスリリアを購入した際、俺は奴隷商人と次なるロリ奴隷の購入についてお話をした。
それは奴隷市場に回りづらい上質ロリを手に入れる為の、奴隷商人とのお話であった。ロリ探してあげる代わりに、少し高めに買ってねという。
この契約のメリットは二つ。俺が直接奴隷市場に行かなくていいところと、奴隷商人のネットワークにより幅広く良い商品を検索する事ができるところだ。
デメリットも存在する。それは、俺が直接確認できないところだ。別にはい見つけました買ってくださいつーか買えコラと押し売りされる訳じゃあないが。もしダメだったら、その時はまぁしゃあない。
あと、それによる問題もある。彼がちゃんとロリを連れて来るか分からないところだ。カテゴリーエラーは勘弁である。
ロリコンのいない異世界。俺の嗜好が生粋の異世界人であるクリシュトーさんに、ちゃんと伝わってるかどうかは分からない。彼にはロリコンという生き物について一から十まで説明はしたが、どうなる事やら。
ロリコンってこういうの好きなんでしょ? とロリ巨乳奴隷をお出しされる可能性があるのだ。いやロリ巨乳はロリコン界隈では意見が分かれる訳で……。
そうでなくても、美醜の基準なんて時代や文化によりけりだ。異世界人視点美少女でも俺視点で美少女かどうかは分からない。
というか、何となくだがこの世界の美の基準は「顔<身体」といった印象がある。前にパーティ勧誘してきたムチムチ巨乳牛人族の女性も、顔はクラスで7位くらいな雰囲気だったが、他の男性からはモテてた感があったのだ。
うん、まぁ何が言いたいかというと……。
チェンジと言える勇気を持とう、と。
そう心に留め置くべきだと思ったのだ。
以前と同じく、お高い店で買ったお高い服を着て、例の奴隷商館に行くと、俺とルクスリリア――こっちはいつものサマーメスガキファッションだ――は丁寧なお迎えと共に応接室へと通された。
相変わらずセンスの良いお部屋だった。絨毯もフカフカで気持ちがいい。思えば、こういう部屋は異世界じゃここしか知らない。ギルドの応接室も床は木だった。
「どんな奴隷ッスかねー。できれば前出て戦ってくれる奴隷だと嬉しいんスけど」
「そうだねー」
あと、事前にルクスリリアに第二奴隷購入について話すと、それは存外あっさりと受容された。
曰く、「いいと思うッス! 戦力拡充はきゅーむッス!」との事。
嫌がられたかったのか、嫉妬されたかったのか。俺という奴は、烏滸がましくも第一奴隷にやきもちを焼いて欲しかったらしい。実に浅ましい性分である。
「お待たせしました。お久しぶりです、イシグロ様。店主のクリシュトーでございます」
やがて出されたお茶など啜っていると、足の長い紳士こと店主のクリシュトーが現れた。
彼は以前とは違う服を着ており、これまた上質そうな仕立てである。俺ももう一個くらい良い服買った方がいいのかな。
「以前は我が商会の商品をお買い上げ頂き、誠にありがとう存じます。どうでしょう、あれから商品の様子は」
一通りの挨拶の後、オサレ紳士は軽い世間話をはじめた。話題はルクスリリアについてだ。
というか、当の本人が後ろで待機してるのにそういう事訊くのか。何も返答に困るものではないが。
「ええ、とても満足しています。今は迷宮で鍛錬中ですが、すぐに戦力になってくれると思います」
「それは何よりでございます」
ちらりと、ルクスリリアを見る店主。
その視線に気づいてか、高そうな壺をツンツンしようとしていたリリィはビシッと姿勢を正した。
「はっ! ご主人のお陰で中淫魔になれたッス!」
「ほう……?」
訊いてもいないのに、ルクスリリアは偉い人からの視線に慌てて返事をした。
別に失礼って事は……いや異世界マナーなんざ知らねぇが、ともかく奴隷商人は彼女の返事に意味深な頷きを返した。
「クリシュトーさんには感謝しています」
「左様にございますか。奴隷商人冥利に尽きるお言葉と存じます」
何か詮索される前に会話を打ち切る。
別に探られて痛い腹はないが、俺はさっさと第二ロリについての商談をはじめたかった。
そんな俺の態度に気づいてか、クリシュトーさんはお茶で舌を湿らせると、声色を少し堅くして云った。
「契約通り、イシグロ様に自信を持ってお勧めできる商品が見つかりました。現在、別室にて保護しております」
来た! 俺はお膝のお手々を拳に変えた。
もうバレてるし、バレていいと思っている。カモられてもいい、それがロリ奴隷商売であるならば。
クリシュトーは一拍空けて、これまた声色低くして続けた。
「さっそくお見せしたいところなのですが、先にお伝えしたい事がございます」
その言葉に、俺の胸に緊張感が走った。
別に騙されてもいいとは思っちゃいるが、ロクでもない取引がしたい訳でもない。
俺は彼とは良好な関係を構築したいと思っている。彼も俺を良い客かカモと思っていてほしいものだ。
願わくば、今から彼の言う言葉が、俺からの信用を崩さないものであらん事を。
「それは何でしょうか」
俺の緊張感は把握しているはずだ。その上で、彼はこれまた一拍空けた。
やがて、彼としっかり目が合った。目を見ただけで嘘が分かるとか、そんな技術は俺にもアクセシビリティにもない。けれど、彼の瞳には真摯さがあると感じた。
「少々、値が張ります」
少々、というところは気になったが、俺が想定していた言葉の中では全然余裕で受け止められる言葉だった。
前提として、ここの奴隷は高い。また、曰くちんちくりん少女奴隷は需要がなく安価であるとも言ってたはずだ。にも関わらず、値が張ると。
これはどういう事なのだろう。俺はその謎を探る為、アマゾンの奥地へと足を進めた。
「少々、とは?」
「私が取り扱ってきた商品の中で、最も高額な商品という事です」
それは少々じゃあないだろうとは思った。
そも、ここの奴隷は高い。安いのでルクスリリア級で、中くらいのだと注文中の俺専用オーダーメイド剣くらいする。最高の奴隷にもなると、俺剣の倍はするとかしないとか。
となると、俺剣の3倍か、あるいはそのまた倍の値段なのかもしれない。
「そうですか」
でも、大丈夫だ、問題ない。
いうて、俺は億万長者である。伊達に三ヵ月命がけでダンジョンアタックしてきた訳ではないのだ。
ルクスリリアを買い、防具を買い、専用剣を買って尚、ダメージは軽微なのだ。それに、金策に不向きとはいえ巨像迷宮である程度補填できている。普通のダンジョンに潜りさえすれば、黒字にするのも難しくない。
クリシュトー史上最高額でも、それがロリなら構わんよ。俺は我知らず強張っていた身体を解した。
「もちろん、それには理由があります」
ロリ奴隷は安いのに、俺にオススメする奴隷が高い理由。
そりゃ相応の理由はあるのだろう。クリシュトーはなおも俺の目を見ながら云った。
「個体数の少ない種族の奴隷は相応に高価であると、以前お話したと存じています」
「ええ、覚えています」
「今回の商品は、まさにその典型でございます。例え容姿が幼くとも、所有する事に価値が発生する類の商品なのです。ですが、私はこの商品はイシグロ様にこそ相応しいと考えています」
まるで宝石か調度品のような扱いであるが、まぁ異世界倫理と現代日本倫理を同列に考えるべきではない。そういうもの、と認識すべきだろう。
実際、俺は既にその恩恵を享受しているのだ。それは俺の後ろでテーブル上の茶菓子を見つめている存在である。
「その種族とは?」
問うと、熟練の奴隷商人は小さな怖れを吐き出すように、僅か低声で云った。
「……竜族の娘にございます」
その言葉に、背後のルクスリリアの身体が震えたのが分かった。それは発言の主である奴隷商人も同じで、彼は気を静めるように一口お茶を飲んだ。
が、俺にはさっぱりだった。竜族? ドラゴン? なにそれスゲーくらいの気持ちである。個体数が少ないってのも、まぁそんなもんかって気持ちだ。
「竜族ですか」
「はい」
イージャン、である。
無論、ロリコンの俺が思うイージャンポイントは、その希少性や能力が云々ではなく、その種族特性のひとつに由来する。
ルクスリリア購入前、王都西区の有料図書館で調べた事がある。色んな種族の事と、それら生態についてだ。
希少だがメジャーな竜族については、割としっかり記載があったのだ。
俺はその内容を思い出しながら、膨らみそうになる股間を気合で抑え込んでいた。
〇
――竜族。
竜族とは、かつて暗黒時代の異世界を暴威によって支配した半神的存在である。
しかし彼らは、大災厄の謎の奇病によって、大きくその数を減らした。
奇病が収束した後、彼らは絶滅一歩手前まで追い詰められた。
やがて竜族の命脈も絶たれようとしたその時だった。
勇者・アレクシオス。
後に王となる男が現れ、共に世界の危機に抗おうと、竜族の戦士をパーティに勧誘したのだ。
しかし、御多分に漏れずプライドの高かった竜族は首を縦に振らなかった。竜族視点、下等生物と共に戦うなんて恥だったんだろう。
それでも諦めなかったアレクシオスは、当時竜族最強だった男と決闘し、力を認めさせ、彼と友誼を結ぶ事に成功したのである。
勇者と決闘し、勇者と共に戦った竜族の男こそ、後の英傑の一人。
銀竜剣豪・ヴィーカである。
まあ、その後については竜族史というより王国史になるので割愛するとして……。
ともかく、竜族というのは、昔から居て傲慢で支配者意識の強いプライド高すぎ長生き種族なのだ。
この世界には、色んな種族がいる。
俺やクリシュトーの様な人間族。ルクスリリアの様な淫魔。それぞれ、人間族は人間種。淫魔は魔人種とカテゴリー分けされる。
一言で獣人といっても、獣人にも色々あるのだ。
虎っぽい特徴を持った虎人族。これは獣人種虎人族になる。
で、これまた虎人族でも色々分かれるのだ。白虎とか赤虎とか。魔虎というのもいるが、こっちは魔人族だ。ややこしいね。
そんな中、竜族は特別扱いで。なになにのなにというものがなく、竜族は竜族というカテゴリー。で、種類も2パターンしかない。
旧支配者の血を引く竜族と、竜族に支配されていた
まぁ翼竜族については今はどうでもいい。
竜族である。
それは、ロリコン視点で見てなかなか良い種族だと思うのだ。
何故か? エタロリだからだ。ロリであるならば、の話だが。まぁこの世界での不老特性は珍しくないが、それはそれ。
例によって、彼らに老化現象は発生しない。
大体10年で成長限界を迎え、そこからは成長も老いもない。不老の種族であり、おまけに魔族に似た特性もあるのでほぼ不死である。
竜族は凄い。何が凄いって、生命としての平均能力値が人間とはダンチなのだ。
まず身体能力。無論の事、人間とは比較にならず、その比較対象は獣人種で、一等マッチョな熊人族と同等である。
それと魔法適性。これまた人間とは比べものにならず、比較対象は森人とかその辺。パワーも精密動作性も持続力も、森人の上澄みと同等である。
んでもって生命力。当然人間とかカスであり、比較対象は魔力生物である魔族。まぁ1でも魔力があれば生きてる魔族と違い、竜族は心臓潰されると死ぬらしいが、それでもお腹真っ二つになろうが頭パーンになろうが心臓さえ無事なら普通に全快するらしい。
とかく、竜族は他種族より遥かに強い種なのだ。
まぁ、それでも勇者アレクシオスとか現ラリス国王とかよりは弱いらしいが、平均値は高いのである。
あと、もうこれだけで十分チート種族な気もするが、それに加えて竜族には個体ごとの“竜族権能”なる能力があるらしい。
なんじゃそれって思ったが、要は異能かスタンド能力みたいなもんだった。
権能は魔法とは別種の力。触れたモノを金に変える力とか、毒霧を生成し操作する力とか色々。
こいつら、世界観違くね? って思ったよね。
そんなアルティミット・シイング・ドラゴン様だが、運営からナーフでも食らったのか一個明確に弱いところがある。
繁殖力の無さだ。
竜族はマジで子供ができない。
いや不老不死のめちゃ強種族が量産されるとかそれはそれで怖いが、その強さ故か竜族同士の子供はかなり珍しいのだとか。ピュアドラゴンベビーが生まれた際など、一族総出でお祝いするんだって。
加えて、竜族は竜族同士でしかドラゴンベビーを作れないらしく、他種族との間の子供は大概相手側の種族になり、運よく竜の子ができても弱いドラゴンベビーとして生まれ、不老特性を除く殆どの竜族パワーを失うとか。竜族視点、そんなのドラゴンじゃないやいとなるのかもしれない。
だからこそ、純粋な竜族の子供は貴重なのだ。
それが、どういう訳だか人間族の奴隷商会で商品になっていると。
レアもレアである。お金持ちの好事家なら、例えロリでも買うのだろう。知らんけど。
「だから高いのですね」
「ええ……。ですが、イシグロ様にとってもお値段以上の価値がある商品であると自負しております」
おやおや、おやおやおやおや……。
この男、ずいぶん竜族奴隷を推してくる。よほど買って欲しい理由でもあるのか、さて……。
「彼女の名前はエリーゼ。父は彼の傲魔竜アヴァリ。母は宝銀竜テレーゼ。歳は140。容姿は幼く、処女でございます」
「ほう」
親の説明とかされても困るが、140歳幼女とか滾らない訳がない。
俺は続く奴隷商人の奴隷紹介に耳を傾けた。
「そして、母方の祖父は彼の大英雄……銀竜剣豪のヴィーカ様でございます」
しばしの静寂。
決め顔のクリシュトー。
御茶菓子をくすねて食べようとしていたところでビックリして固まったリリィ。
別に変化のない俺。
ごほんと咳払いひとつ。クリシュトーは仕切り直した。
「……イシグロ様は、ラリス王国の歴史についてはご存じでしょうか」
「図書館で読める分は。ヴィーカ氏の存在も知ってます。勇者様の次に強かったらしいですね」
「さ、左様にございますね。えー、はい。エリーゼはそのヴィーカ様の孫娘にあたります。容姿が幼く性奴隷としての需要はなくとも、その希少さと血統には相応の価値が発生します」
「なるほど」
俺視点、血統とかどうでもいい。別に祖父が英雄だろうが、そのロリ性に影響はないだろう。大事なのはロリな事であって、カワイイに関係ない項目はどうでもいいのだ。
レア中のレア中のレアなのは分かった。スネークじゃないが、「で、味は?」と訊きたいところである。
「それで、そのエリーゼはいくらなんでしょうか」
なので、ぶっこんだ。
血統だの希少性だのブランド性だのは知らないが、例え高価でもエタロリならば検討に値する。
最終的には見て決めるだろうが、俺は先に値段を訊く事にした。
「ええ。もしイシグロ様にご購入いただけるのであれば……」
そして、クリシュトーはゆっくりと口を開いた。
「10億ルァレとさせて頂きます」
………………。
…………。
……。
ん?
いや、待て、おい……。
こいつ、さっき“10億”と言ったか?
安くしときますみたいなニュアンスで、「10億にしときまっせ」と言ったのか?
こんなに高くてごめんねっていうニュアンスなのか? 分からん!
……いや、高くね?
「10億ですか」
「はい」
無表情のおじさん。何故に無の顔なんだ。
明らかに何かまだ言ってない事あるぞ、この人。
これまで、俺はずっと貯金をしてきた。
ルクスリリアも専用剣も買って、それでもまだまだ余裕あるぜってくらいには貯金してきたのだ。
冒険者は儲かる。ヤバいダンジョン行けばめっちゃ金入る。私生活も切り詰め、こつこつ貯金した後、それなりの買い物をした上で。
今の俺の残高は……。
約11億ルァレ。
ほとんどなくなるやん、である。
「安いッスね……」
「え?」
背後でルクスリリアが呟いた。
マジかよ、これ俺の感覚がおかしいのか?
いや、でもリリィの感覚がおかしい可能性は十分あるし、クリシュトーがめちゃくちゃボッてる可能性もあるじゃあないか。
「ご主人、純粋な竜族なんて、買えたとしても10億じゃ絶対無理ッスよ。安いというか何というか、赤字覚悟? みたいな?」
「え、そうなの?」
訊くと、その問いにはクリシュトーが答えた。
「ええ。約200年前、この店で取引された竜族の奴隷の値段が、こちらになります。開示には許可を頂いています」
言うと、古めかしい雰囲気の契約書を見せてきた。そこには、竜族御一人1000億ルァレと書いてあった。爆撃機かな?
契約書は保存魔術の匂いがプンプンしていて、リリィの契約時にも使っていた紙によく似ていた。
了解を得てから手に取り、こっそりコンソールを起動。アイテム情報を見ると……。
「マジじゃん」
マジだった。この契約書は偽造書類じゃなく、マジで200年前に契約した取引の証拠だった。
チートに生かされてる俺だ。チートを疑ってもしょうがないと割り切っている。これはガチだ。
取引相手はどこの誰だよと思ったら、当時のラリス国王だった。国のお金で奴隷買ったのか……。
「エリーゼの、この値段には理由があるのです……」
色々と愕然としている俺に、奴隷商人は言葉の濁流をぶつける気らしい。
ちょっと処理が追い付かないぞ。
「先ほど申しました通り、エリーゼはヴィーカ様の孫娘です。そうなると、本来ならば以前販売した竜族奴隷と同等かそれ以上の値段で然るべきです。しかし、そのような値段は妥当ではないと判断しました。理由は三つあります」
「そうですか」
「第一に、この奴隷の未成熟さです。容姿だけではありません。エリーゼは成竜済みであるにも関わらず、権能を発現していないのです」
「へー」
「第二に、受胎不可という点です。元の所有者は彼女に不妊の呪いをかけたようで、エリーゼは死ぬまで子を成す事ができないのです」
「それは惨い」
「これが一番大きな事なのですが……。第三に、ヴィーカ様の孫娘である点です」
「それは……それは何故?」
ショートしていた脳を再起動し、俺はクリシュトーと目を合わせた。
ちょっとおかしい。ヴィーカの孫娘である事が高価な理由なのに、ヴィーカの孫娘である事が値下げ理由になるなど、どういう事だ。
「……竜の逆鱗です」
「ああ~、そういう事ッスか」
重々しいクリシュトーの言葉に、背後のルクスリリアは納得いった風の声を漏らした。
視線をやると、ルクスリリアは一度クリシュトーと目を合わせた後に、口を開いた。
「えーっと、ヴィーカ様ってまだ生きてるんスよ。どこにいるのかは分からないッスけど」
「うん」
「で、奴隷になった孫娘を、祖父であるヴィーカ様が見たら……」
「キレる?」
「かもしれないッスね~」
銀竜剣豪・ヴィーカ。伝説の英雄だ。間違いなく俺より強いだろう。俺でさえその気になれば東京タワーを破壊できるのだ。彼がその気なら北海道を二分割する事だってできるのではないだろうか。知らんけど。
そんな人が奴隷化した孫娘を見てキレて暴れたら、間違いなく主人は死ぬ。ついでに一族郎党皆殺し。関係者も根切りゾ案件。王都も爆発四散しちゃうかも。
奴隷契約でエリーゼちゃんも死ぬかもしれないが、人質ならぬ竜質になるかは怪しいものだ。いっそもろともとエリーゼサイドが言う事だってあり得る。ヤバ過ぎィ!
「伝説の通りの方なら、ヴィーカ様が激昂される可能性は低いでしょう。ですが、彼の逆鱗がどこにあるかは分かりません。もしかしたら、孫娘を販売した我が商会にも刃を向ける可能性もございます」
「怖いですね」
「怖いのです」
なら、そんな奴隷をなんで商品化したんだよと思って見てみると、クリシュトーの無表情が更なる虚無顔になっていた。
「お客様の情報故、詳しく申し上げる事はできませんが……」
紅茶を飲むクリシュトー。その手は少し震えていた。
「所詮、私の様な人間は、竜族の方には逆らえないのです。法を犯した訳でもない相手に、商会や王家が口を出せる訳もなく……。この値段は、イシグロ様が銀細工持ちの冒険者であるからでして、前述の理由を加味しても本来もっと高価にせねばならないのです。あまり安くし過ぎると、うちだけでなく多くの方の面子が……」
なんか知らんが、どうやらエリーゼは押し付けられた商品であるらしい。彼的には、エリーゼはもうさっさと手放したい奴隷なのかもしれない。じゃあタダでくれよと思うが、それはできないっぽい。
あと、俺だから10億ってのは何なのだろう。冒険者相手だと、奴隷を安く売ってもいいのだろうか。竜族特有の事情でもあるのか?
分からん、分からんが、彼が俺にエリーゼを買わせたがってた理由は分かった。爆弾の押し付けだ。普通の好事家に売っちゃうと起爆の確率が高まっちゃうのか。じゃあ仲間内で……てのも、してないあたり無理なんだろうな。
「エリーゼは様々な方からのあつ……意向で、我が商会にやってきたのです……」
ぱさりと、今度は真新しい契約書を見せられた。
それはエリーゼの契約書だった。そこには色々と細かい事が書いてあったが、その中には「こいつを適当なモンに売るんじゃねぇぞ!」みたいな記述があった。なんじゃそりゃ。
どうやら、予想通りラリス王家や貴族や竜族など、一部販売相手には制限がされている様だった。なんじゃそりゃ、よく分からん。
「どう思う?」
「いいんじゃないッスか? ぶっちゃけ、ヴィーカ様と会う事なんて死ぬまでなさそうッスし。ご主人の好みで決めちゃっていいと思うッス」
「そう? ん~、でもな~」
うーん、まあ、値段はいいのだ、値段は。
やっぱ、そんな怖い人の逆鱗に触れる(かもしれない)契約は、したくないなぁという気持ちが湧いてきた。
エタロリドラゴンとか最高やんけと思わなくもないが、それでも英雄様の大暴れは怖い。そも、ルクスリリア一人でいいじゃんとか考えてたのである。もうがっつくもんでもないのだ。
「……報復の可能性についてですが、エリーゼの主人がイシグロ様であるならば問題ないと考えられます」
「それは何故ですか?」
絶対に大丈夫というなら考え直すかもしれないが、そんなのあるとは思えない。相手はろくに人となりも知らない英雄様だ。その感情など、推し量れるもんじゃないだろう。
「ヴィーカ様は生粋の武人。エリーゼの主人がイシグロ様であるならば、きっとお認め頂けるはずです。それに、一党の頭目である銀細工持ちのイシグロ様が彼女をいち戦士として遇しさえすれば、例え逆鱗に触れたとしてもイシグロ様を害する事はないでしょう。彼が彼自身の伝説を穢すというのは考え難いです」
「そうなんでしょうか」
色々と言ってはくれたが、どれも確信のない事である。
俺はチキンなので、そう言われても怖いものは怖い。
10億で爆弾を俺に売りたい商人と、買ってもいいけど爆弾が怖い俺。
聞くに、俺が買うのが最も起爆確率が低いんだろうが……。
「……これ以上値下げする事はできませんが、商品価格以外のサービスは全てこちらで請け負う所存です、勿論、可能な限りのサポートもご用意いたします」
「うーん……」
残念ながら、それでも俺の天秤は買わない方向に傾いていた。
玉無しロリコンと笑いたきゃ笑え。オイラぁ爆弾は怖いんだ。
「……では、一度お見せいただけますか?」
「ええ」
うん、もう断って帰って寝よう。
どんなロリが来ても、俺は爆弾を抱えたくない。
けど、見るだけは見ようと思った。
買うつもりはない。商品を見もせずに帰るのは、流石に今後に差し障ると思ったのだ。
例え今回はダメでも、次の商品に期待したいものである。
ロリハーレムはまだ諦めてねぇんだ。今回は御縁が無かったという事で……。
「エリーゼを此処に」
「かしこまりました」
ベルを鳴らして現れた従業員に、クリシュトーはロリを連れて来るよう命じた。
どうせ買わないのに、ちょっと申し訳ない事をさせてると思う。
「はぁ……」
せっかくのロリ奴隷だが、やっぱり爆弾付きじゃあ買う気になれない。
エリーゼちゃん、君は良いロリなのかもしれないが、君のおじい様がいけないのだよ。
「連れて参りました」
しばらくして、ドア越しに従業員の声。
主の許可の後、がちゃりとドアが開かれ……。
「我が名は、エリーゼ・フラム・ミラヴィーカ・アヴァリツィア。月夜に生まれし竜。傲魔と宝銀の娘。銀竜剣豪ヴィーカの孫。人間の貴方に、この私を愛でる覚悟はあるのかしら……」
………………。
…………。
……。
来てよかった。
感想投げてくれると喜びます。
以前、歴史上の人物は主人公たちとは全く関係ないとか書きました。
あれは嘘になりました。
申し訳程度に関わります。とはいえガッツリって訳じゃありませんが。
こういう事平気でやります。