【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も感謝です。ありがとうございます。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
今回は一人称、イシグロ視点です。
よろしくお願いします。
「うむ。貴様達も達者でな」
日本で言うと一月中旬。お家に帰るゲルトラウデ師匠を見送る為、俺達は西区の門前まで来ていた。
ひと通りの挨拶の後、師匠は人の流れの中に消えていった。元々、道場を長く空けたくなかったそうで、お仕事を終えたら観光なんかせず直帰するらしい。はてさて、王都に銀竜道場の支部が出来るのは何時になるやら。
ちなみに、行きも帰りも師匠の移動手段は自前の竜族魔翼だそうな。竜の鱗は冬空の風さえ無効化するのである。ホンマ竜族はチート種族やで。
「んじゃ、このまま転移神殿行こうか」
転移神殿方向に向かいながら、最近の出来事を思い返す。
去年の今頃と同様に、つい先日まで俺達はゲルトラウデ師匠に稽古をつけてもらっていた。
唯心無月流体験会。初心者から上級者まで揃った場で、俺は斥候ジョブ育成の為に無月流短剣術を教えてもらった。モーションチートの恩恵で、型自体は簡単にトレスできる。後は反復練習で身体に馴染ませるだけだ。
一党の皆は模擬戦をしつつ、習得済みの型を見てもらっていた。その中で、武術未経験のレノは翼人向けの格闘術を教えてもらったそうだ。基本は二挺拳銃で立ち回って、いざという時の近接技として扱うらしい。
「ゲルトラウデ師匠、やっぱ強かったな。全スタイル使っても勝てなかった」
「惜しかったわよ。このままいけば、そう遠くないうちに超えられるわ」
「あっちは権能封印してたッスけどね」
「ボク達もまだまだ精進あるのみですね!」
「覚える事が多いのじゃ~」
体験会終了後、せっかくだからと稽古の締めに師匠と戦わせてもらったが、案の定全く敵わなかった。
俺自身、去年よりずっと強くなってるはずなのだが、まだまだ恩返しには程遠い。なんか、どんだけステ上げても勝てるビジョンが見えてこない。
「これからは対人戦も頑張ろうな」
「ん……」
レベリングもそこそこに、無月流も体験した。諸々の準備が整ったので、ついにレノも模擬戦デビューと相成った。
デビュー戦、レノは何の容赦も遠慮もなく空中引き撃ち二挺拳銃とかいう塩試合戦法を使用し、自信満々だった鋼鉄札以下の有象無象を圧倒していた。
連戦連勝でドヤるレノだったが、ニーナさんやラフィさんといった銀細工にそんな戦法が通用する筈もなく、強者勢には存外あっさり負けてしまった。
如何せん技が直線的過ぎて、銀からすると普通に目で見て避けられちゃうのである。当然、強い人は対空手段を持ってる訳で。まぁぼちぼちやってくしかないだろう。
「あ、どうもイシグロさん! おはようございます! 今日も迷宮ですか?」
「おはようございます。ええ、そのつもりです」
なんて歩きながら回想していると、屋台が立ち並ぶ噴水広場で食事中の羊人少女一党と遭遇した。以前までは三人一党だったが、今は四人一党だ。
件の新メンバーは、オタク君が好きそうな美少女って印象の娘だった。ていうか、以前ゲルトラウデさんが庇ってた女の子である。話によると彼女は回復役だそうで、模擬戦で戦った感じ迷宮よりも対人慣れしてる雰囲気だ。
武闘家、剣士、魔術師、治癒師……。ゲーマー視点、普通にワクワクするパーティ編成である。個人的にはそこに斥候とか入れて、最後の一人はバッファーかデバッファーが欲しいかなとか思っちゃう。いや、そこは魔法戦士かなぁ。う~ん、悩ましい。
「ところで、その剣の使い心地はどうですか?」
「はい! 長さ違うんでまだ慣れないんすけど、使ってて楽しいですね!」
新武器の使い心地を訊いてみると、大剣使いの少年は背中の深域武装に触れつつ答えてくれた。先日よりも笑顔が眩しい。
ドロップしたその日に見せてもらったのだが、少年の背負っている深域大剣は俺が今まで見た事のある武器の中でもぶっちぎりの高性能だった。それこそゲーム的に表現するなら“厨”とか“壊れ”とか言われる類いのソレであり、なるほどレアドロ武器の神髄を見せつけられた気分だった。
正直とっても羨ましい。気持ち的には“言い値の買い取り”か“殺して奪い取る”あたりの選択肢を選びたいところだが、流石にヴィランムーブ過ぎるので止めといた。多分、実際そういう選択肢を選ぶのが銀細工らしい銀細工なのだと思う。
「それでは、これで」
「ご武運を」
物欲を抑えるには、欲しい物には近づかないのが一番だ。俺は将来有望な一党を離れ、転移神殿に続く階段を上っていった。
「ご主人はああいう剣も使う気なんスか? パワー足りてるッスかね?」
「ボクとお揃いですね」
「悪くはないと思うけど、ただあの剣欲しいなって思っただけ」
「ん、使う気ないのに……?」
「
「歴史ある方がいいと思うがのぅ」
最近、以前にもまして武器に対する財布の紐が緩んでる気がする。コレクター魂といえば、そうなのかもしれない。サバゲーやらんのにアニメに出てきた銃のエアガン買いたくなるような、そんな感じ。
元々そういう気質ではあったが、にしたって使わない武器まで欲しがっちゃってるのはどうなんだ。売れば金になるモブノの槍も、使わないのに持ち続けているし。でも、以前ライドウさんに見せてもらったゴミ深域武装は別に欲しくないんだよな。やっぱ、性能の違いなんだろうか。
「前にも言ったじゃない。男は武器が好きなのよ。いくつになっても、ね?」
「イェァ……」
「深域武装のぅ」
「アタシの鎌もイリハの太刀もそうッスよ。強ぇ武器はあればあるほどいいんス」
深域武装で言うと、我が一党は既に六人中四人が使用している。
ルクスリリアが持つ“ラザファムの大鎌”。エリーゼが持つ“リギゥの偽宝剣”。グーラの持つ“レダの短剣”。イリハが佩いてる“綾景之太刀”。あと、使ってないけどモブノの槍で計五つ。
他に見た事あるのはニーナさんの眼鏡とグレモリアさんの剣あたりか。あと何かあったっけ? ヴィーカさんが持ってた妖刀っぽいの、多分アレも深域武装だろう。何にせよ、レア武器見ると心がぴょんぴょんするんじゃ。
いつか、俺もベストマッチなやつが欲しいもんだ。
「新しいものが欲しいなら、自分の腕で掴まないとね」
「だな」
レアドロの為には、迷宮に行かないと。
そうして、俺達はその日も迷宮に潜るのであった。
ハック&スラッシュである。
〇
はい、という訳でやって来ました焔岩迷宮。
見上げるとゴツゴツした岩の天井が見え、遠くを見ると景色が熱で揺らいで見える。そして足場の各所にはぐつぐつ煮えるマグマ池。各種熱対策をして尚、真夏の日本くらい暑いこの屋内型火山エリアは、以前にも行った事のある炎&岩系固定のダンジョンだ。
そんな迷宮で、今現在俺達はダンジョンボスと戦っていた。
四方をマグマ滝で囲まれたボス部屋で出現した魔物は、全身が煮えたぎる溶岩で構成された巨大マンモスだった。凶悪な形の牙はメラメラと炎が滾っており、呼吸をする度に大きな鼻からマグマを吹き出している。こいつの名前は忘れた。
攻撃方法は脚と体当たりと鼻から出す炎、動きは遅く技も少ないが、こいつが歩いた跡は暫く地面がマグマになる近接殺しクソモンスだ。おまけに物理耐性を持っており、火力を出したいなら魔法で攻めるのが良いとされている。まあ、どのみち俺達の敵ではない。
油断せずにハメるので。
「はあッ!」
暴れる巨象の正面で、炎無効のグーラが殴る蹴るの暴行で敵のヘイトを取っている。
振り回される鼻を避け、牙や前足の攻撃を華麗な跳躍で捌く様はまさに熟練回避タンク。ベルセルクめいた剣技の目立つグーラだが、彼女はこういう曲芸も得意なのだ。
「思ってたより時間かかりそうだなっと……!」
巨大象の足元、俺は地を這うように移動しながらナイフによる斬撃を加えていた。
最近お気に入りのナイフスタイルである。今回はちょっとやりたいハメ技があったので、麻痺ナイフの鈍亀を使って行動阻害系状態異常を蓄積させていた。
「鼻の動きに注意ッスよ」
「ん、わかってる」
空中ではマンモスを中心にルクスリリアとレノが左右からの遠距離攻撃を加えている。
ルクスリリアは脚や鼻を狙ってお邪魔魔法を打ち込み続け、レノはひたすら弱点部位を狙い撃つ。空のメスガキに対し、背中から噴火攻撃を試みる象だったが、二人は動じる事なくひょいひょい回避。
「イリハ、準備はまだかしら?」
同じく、空中要塞と化しているエリーゼは妨害特化の黒杖でデバフをかけまくっていた。
泥沼、黒茨、電気ビリビリなどのデバフお子様ランチがマンモスを襲う。俺の麻痺ナイフも相まって、ただでさえ足の遅い象さんは更に鈍重になっていた。
「よしよしよし、いけるのじゃ! 五行相生、【呪い時雨】!」
術式構築の後、十本目の尻尾が散ってイリハの大陰陽術が完成する。敵にデバフを味方にバフをかける広範囲環境変動陰陽術だ。
はらはらと、やがてザーザーと。暑くて熱いマグマフィールドに呪いの豪雨が降りしきる。周囲から熱地形エフェクトが消え、マグマ溜まりが解消される。象の身体に雨が当たるが、触れた瞬間蒸発していた。
よくよく観察して、見えた。マンモスが水濡れ状態になっている。これを合図に、各々所定の位置に着いた。後退した俺の隣に月光翼で瞬間移動したエリーゼが現れる。
鬱陶しい雨の元凶に気付いたか、怒れるマグマンモスがイリハ目掛けて突進してきた。その横腹にグーラのマイティキックが炸裂。凄惨な自動車事故のように、大型トラックめいたマグマンモスは転げて倒れて滑っていった。
「今です!」
「ん、【聖水】……!」
雨の中、宙に浮かぶ天使が二挺拳銃をクロスさせ、翼を広げて権能を行使した。ブワッと、左右の光力触媒から霧状の聖水が放散される。
天使の生み出す聖水に攻撃能力はない。目くらましの効果もなければ、何かしらのバフ・デバフもない。けれども雨に聖水が触れた瞬間、一滴の泥水が入っただけでワインが汚水に変わるように、呪いの雨はレノの聖水に成った。
「お、重い……!」
地に落ちた雨水が持ち上げられる。聖水を操作する要領で、レノはこの場の水を操っているのだ。
そして、低きに流れるはずの水を象ただ一点に凝集させる。四方八方、雨聖水がマグマの象に殺到。その光景は、半透明の粘体が獲物を捕食しているかのようだった。
当然、すぐに立ち上がって暴れまくる溶岩象。マグマを吹き出そうとする鼻に、ルクスリリアの捕縛魔法がヒットし、マグマの噴出を一拍止めた。
「いくわよ、退きなさい……!」
冷血竜が微笑む。杖を持ち替え、二挺を構え、押し潰すような流水と格闘する象に二重吹雪を叩き込んだ。
呪いの雨を浴びた魔物は凍結耐性が下がるのだ。そこに吹雪が直撃し、みるみるうちに霜が降りる。全弾ヒット、殆ど凍ってるが、まだ足りない。
「グーラ!」
「はい!」
グーラに武器を手渡した俺は、象の横腹に飛び乗って逆手に持ったナイフを突き刺した。そして、装填された【針雷】を起動。バチッと、ナイフの先端から迸った雷が傷口の中へ侵入した。完全に、
某名作育成ゲーで言うとこの“麻痺”と“氷”が入った状態である。麻痺は被クリティカル率が上昇し、凍結状態の敵は物理耐性が下がるのだ。そこに、大剣を構えたグーラが迫る。
「やああああッ!」
バッギィイイイイッ!
残り体力ごく僅か。凍結が溶けて起き上がろうとする象を、九尾の追撃者が視ている。
「あんま上手に制御できん! 出来るだけ離れとくんじゃ……【万雷裁き】!」
追い打ちの連鎖陰陽術。瞬間、呪いの雨を生み出す雲から毎秒二十五個の連続落雷が迸った。威力は高いが当て難いこの雷陰陽術だが、複数の移動阻害を付けてやればこの通り。これまたゲーム的に言うと、命中=死のロマン技なのだ。
やがて青白い粒子に帰った象は、経験値となって俺達の身体へと吸い取られていった。レベルアップの感覚が気持ちいい。
徹底的なデバフと足止め、それから弱点単体技の猛攻でぶちのめす。ちまちま削るのが王道なのだが、こうやって一気に削るのも快感である。
「んほぉ♡ これこれ♡ 強くなってるのが分かるッス~♡」
「私も久々にレベルアップしているわ」
「ボクもです。一回上がるだけで前よりも強くなった確信がありますね」
「とりま雨止めるのじゃ」
ボスが消え、ダンジョン内のエネミーの反応が無くなったところで警戒を解く。
今回、六人皆が大活躍だった。ルクスリリアは皆が気付きづらいトコを押さえてくれるし、エリーゼは杖を持ち替えてデバッファーを全うしてくれた。グーラも武闘家タンクから剣士アタッカーまで最後までチョコたっぷりだし、イリハは雨からの雷で気持ち良すぎるコンボを決めた。事前の練習通り聖水を操ってみせたレノも、象の足元で動き回る俺に誤射一つも当てなかった。
パーフェクトゲームだ。一から十まで素晴らしい戦いである。
「うん、皆レベルアップしてるな」
コンソールを弄って確認すると、各々レベルが上がっていた。
ルクスリリアは最上位職の“淫魔妖妃”がレベル二になった。エリーゼとグーラの二人は、現在最上位職のレベル三だ。
三人共最上位職に就いてるだけあり、一回のレベルアップでのステータスアップが半端ではない。
「お、イリハも最上位なれるぞ」
「お~、どんなんがあるんかの?」
さっきの戦いで、イリハも最上位職に就けるようになっていた。
最上位職はこれまで就いてたジョブレベル次第で選択肢が増える仕様である。グーラの場合、大剣特化とか色々あって、その中から大剣+短剣+格闘の獣系魔族専用職である“魔獣勇士”を選んだ訳だ。
イリハの場合、陰陽術師と剣士の複合ジョブを育成してたので、ちょうどその上位互換が生えている、えーっと、“天道士”に“剣仙”……。他にも天狐族専用のジョブなんかもあるな。
「……って感じかな」
「よぅ分からんから、今度色々試してみるのじゃ」
「オッケー」
一応、俺もレベルアップしていた。斥候系中位職の“スカウトマスター”が二十の節目を迎えた事で、色々な派生ジョブが生えてきたのだ。
順当に武器や戦法が特化していく派生ジョブに加え、他ジョブとの複合なのか刀を使う“中忍”や魔法を使う“トリックスター”なんてのもあった。下位ジョブを埋めてきてよかったと思える瞬間である。一旦、俺も保留かな。
「ん、わたしは?」
「レノも上がってるぞ。あと三回で派生が生えて来る」
「楽しみ」
現在、射手育成を完了したレノは、天使固有下位職の“光使い”を育成している。これは天使版の魔術師ジョブで、光力に特化してる感じだ。
これによって、聖水を操れるようになったのだ。そのうち他の権能も強化されていく事だろう。
「じゃあ、帰ろうか」
「あいッス!」
レベリングも順調、武器の性能も上々。実に気分が良い。
ドロップアイテムを拾ってから、俺達はホクホク顔で帰還水晶に触れた。
転移神殿に戻ると、さっきとの温度差も相まって冬の寒さが突き刺さるようだった。
暑さ寒さは防具の補助効果でマシになってはいるのだが、それでも寒いもんは寒いのだ。我が一党員はどうかというと、イリハ以外は割と平気そう。天使も魔族も竜族も、皆さん寒暖差に強いのだ。
そもそも、異世界人自体が一年中元気なんだよな。現代地球でも冬なのに半袖短パンの子供とかいたが、そんなノリで冬でも上半身裸の冒険者とか普通にいる。
そんな元気な冒険者達を掻き分けて、いつもの受付に足を進める。今日も転移神殿は人が多い。
「あっ、こんにちはイシグロさん。模擬戦の方、またよろしくお願いします!」
「ええ、また」
顔見知りの冒険者と挨拶を交わしていると、先日知り合ったばかりの新米同業者からも声をかけられた。
彼等とは無月流の稽古を通して知り合った仲である。その中にはゲルトラウデ師匠に脳を焼かれたか「いつか銀竜道場に行きたい」と言う若者なんかもいたりした。
もう少しレベリングしたら、俺もリンジュに行こうかな。トリクシィさんいるらしいし、今の道場の様子も気になる。
「緑の一番な。あと、これお前宛てだ」
「はい」
いつものようにドロップアイテムを渡し、いつものように番号札を受け取ると、受付おじさんからお手紙を渡された。
差出人はドワルフだった。どうやら、注文していたアサシンナイフシリーズの新作が完成したらしい。今度取りに行こう。
「マスターは本当に武器が好きだね」
「今度のはマジで必要なやつだから」
アサシンナイフシリーズの新作は、趣味や実用性よりも保険といった意味合いが強い。
使う機会が無い事を祈るばかりだ。注文した時、ドワルフにドン引きされたし。
「今日は家にある食材を使ってお鍋にするのじゃ」
「いいわね。リンジュ酒は余っていたかしら……」
「締めはうどんがいいなぁ」
「雑炊がいいッス! 卵ぶっかけるッス!」
「雑炊が食べたいです!」
「ん、雑炊に一票」
「雑炊でいいんじゃないかしら?」
「うどん派ワイ、静かに咽び泣く」
「じゃあ今日の締めは雑炊にするのじゃ」
それから、俺達は何事もなく神殿を出て、借家までの帰路を歩いた。
夕食は皆で大きな鍋を囲んだ。イリハ特製異世界ちゃんこだ。フライシュ産の卵をかけた雑炊が最高だった。
今日は迷宮デーだったので、食後の勉強は無しでゴロゴロ。食休みの後、皆で風呂に入った。
「ふぅ……やっぱり、蒸し風呂は良いわね……」
「エリーゼの魔力あっての贅沢だよ」
「この後のフルーツ牛乳が美味しいんじゃよな~」
この借家にはサウナがあるので、春夏秋冬目一杯に活用させてもらう。残念ながら、我が一党におけるサウナ利用者は俺とエリーゼとイリハだけだった。
で、身体の芯まで温かくなったら就寝である。寝室に移り、ランタンの灯りで各々リラックス。キングを超えたキングサイズのベッドで、グーラとエリーゼが読書をしている。窓際にあるテーブルでは、レノとルクスリリアがカードゲームを遊んでいた。
「んぐぅ~♡ 主様、もう少し強めに……んぉ~♡」
そんな中、ベッドの縁に座った俺はイリハを膝に乗せて彼女の尻尾を毛づくろいしていた。
お尻ペンペンでもするような体勢で、ふわふわもふもふのフォックス・テールにブラシを通していく。種々様々な獣人がいる都合上、この世界には尻尾用のブラシが普通に売っているのだ。
「くぅ~ん♡ くぅ~ん♡ きゅぅうううう……♡」
ブラッシング中のイリハが気持ちよさそうに喉を鳴らしている。
普段の彼女は世話焼き狐なのだが、ふんにゃりと脱力中の現在は野生を失った甘えん坊狐になっていた。
書籍に曰く、一部の獣人は本当に大切な人だけに自身の毛づくろいを許すらしい。今こうしてリラックスしてる状況こそ、俺にとっては最高の幸福だった。
それに、イリハの尻尾は凄く良い匂いがするのだ。獣人ではないが、尻尾吸いは良い文明である。そのうち各種状態異常を解消する効果が認められる事だろう。
「ご主人様、イリハが終わったらボクの尻尾もお願いします」
「もうちょっと待ってね」
「嫌じゃ~、わしはここで寝るんじゃ~」
リラックスタイムが終われば、ベッドに集合して布団を被る。
俺を中心に、右にエリーゼ、左にレノ。胴体にルクスリリアが乗っている。獣組は布団の真ん中で丸くなるのが好きらしい。
ベッドにロリの熱が充満している。凄く温かい上、左右からはダウナーコンビによる生呼吸ASMRが聞こえてくるのだから堪らない。
「ん、マスター、そのまま……ちゅ♡」
左頬に僅かな湿り気。珍しく、レノの方からキスをしてくれた。お返しすると、彼女はくすぐったそうな声を漏らした。次いで右耳に痛み。悪戯っぽい顔のエリーゼが耳たぶを甘噛みしてきたのだ。
もぞもぞと、他の娘達も身体を擦り付けてくる。ルクスリリアが乳首を弄り出し、布団の中で獣組二人がパンツ越しの匂いを嗅いでいた。荒い息遣いが俺の下着を湿らせる。
こうなると、もういつも通りの流れだった。
その夜、俺は斥候ジョブで習得した手先の器用さをフルに駆使する事となった。
鍵穴に指を挿し入れ、錠前に触れながら仕掛けを解いていく。同時に、舌を使って竜を宥めていた。弛まぬ鍛錬の成果で、肌を通して房中術も行使できる。
そして、腰の聖剣が揃えば究極体だ。純淫魔契約のお陰で、弾数も殆ど無限だしな。
毎日、満足感に満ちている。
求められる事の喜び。愛されているという安心感。絶える事なく、好きという気持ちが溢れてくる。
六人一党。夢のハーレム。
気持ち的にも、現実的にも、これが俺の手の届く範囲の限界と言えよう。
異世界生活、最高である。
〇
休みの日ほど気分よく起きられる朝はない。
昨日は迷宮に行ったので、今日は一日中お休みである。
早起きした俺はルクスリリアに目覚めの一発を献上した後、借家の中庭で朝錬を行っていた。
「ん?」
そうして格闘術の型をこなしていたところ、誰か来たようで魔導チャイムが鳴り響いた。
「イシグロ・リキタカ様ですね。どうぞ、お手紙になります」
朝から何だと出てみると、そこにいたのは仕立ての良い服を着た配達人だった。パッと見の戦闘力からして、元冒険者ってところか。
配達人が持ってきたのは、何の変哲もない紙片だった。魔術的仕掛けも無いし、第三王子からの手紙って事はないだろう。
はて、ドワルフからの連絡はもらってるし、空戦車のメンテも終わってるんだが。自転車が完成したとか、そんなんだろうか。
「えっ、誰この人?」
なんて思いつつ差出人を確認すると、なんか“足の長い紳士”って書いてあった。
本文には一言、「準備が整った」との事。
なんじゃこれ、である。
「それ奴隷商人ッスよ。アタシが居たとこの」
「奴隷商人? あぁ、クリシュトーさんの事か。なんで連絡してきたんだ?」
「新しい奴隷を見つけたのでしょう……?」
「奴隷を? ……あっ」
瞬間、記憶の扉が開かれた。
ロリ奴隷の捜索契約。ルクスリリアを購入した後、そんなの交わした気がする。
その契約で、エリーゼとグーラを見つけてくれたんだよな。グーラの時はひと悶着あったのだが、結果的には助かった。
イリハはリンジュで出会って、レノは本当に色々あった結果の一党入りだ。うちの一党、半分が彼の店の奴隷なのか。
ていうか……。
「どうしよう、忘れてた……!」
異世界生活は最高だが、相応の力は必須である。
完全に、手に余る。
どないしよ、である。
感想投げてくれると喜びます。
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作者のやる気に繋がります。
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この世界の冒険者は位階が上がるにつれ薄着になり、露出度が上がっていく傾向にあります。
ガード・耐久が弱い世界観というのもあって、防具を着込んで関節可動域を狭めるより最低限身体各部を守って動きやすくする方が結果的に生き残る確率が高くなるからです。昔に比べると防具の性能が上がったってのもあります。同じ理由で、兜を被ってる人も絶滅危惧種レベルで少ないです。
昔気質の獣人なんかは殆ど裸だったりする事も珍しくありません。まだ影も形も出ていませんが、ラリス最強の冒険者は裸族の獣人ですね。