【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

20 / 322
 感想・評価など、ありがとうございます。励みになってます。
 誤字報告もありがとうございます。ホント申し訳ない。

 今回はこんな感じになりました。
 解釈違いなら申し訳ない。

 今回、最後にアンケあります。
 気軽にお答えください。



◆現在の状況◆

・主人公=手のひらドリル。このロリ……可愛すぎる……!
・エリーゼ=約100年ぶりの愛に内心大パニック。この下等種族、私の事好き過ぎだろ……!


竜族襲来

「人間の貴方に、この私を愛でる覚悟はあるのかしら……」

 

 言って、小さな竜族少女は白銀の長髪を掻き上げてみせた。

 

 美しい少女だった。

 美しい声だった。

 そして、あまりにも洗練された、美しい立ち振る舞いだった。

 

 俺に相応の教養があれば、あるいは異世界流の礼儀作法の知識があれば、上手く返せたかもしれない。

 場に静寂が過る。何か、とにかく何か返事をしなきゃ感が湧いてきた。

 

「あ、うん……?」

 

 けど、初対面の子にこんな事言われて即返事ができる程、俺のアドリブ力は高くなかった。

 決まった、とばかりのドヤ顔の少女――奴隷商品のエリーゼは、ドヤ顔キープで何故か俺の双眸へ向け真っすぐ鋭い眼光を向けていた。なんで?

 敵視されてる感はない。侮蔑とか、そういう負の印象もない。なんだろう、何か期待されてるような、そうじゃないような……?

 

「あー、イシグロ・リキタカです。イシグロが苗字で、リキタカが名前。こっちは奴隷のルクスリリア、淫魔だよ」

「ど、どもーッス……」

「そう……」

 

 小さく頷くと、次いでエリーゼは腕組みモデル立ちになった。

 その容姿はあどけない幼女そのものだが、芯の通った立ち姿はとても様になっていた。

 

「ふむ……」

 

 それにしても、エリーゼは本当に可愛いロリだと思う。

 可愛いし、綺麗だ。綺麗系が極まり過ぎて、一周回って可愛い系だ。

 

 髪は腰に届くほど長く、ボリューミーだった。髪色は血統通り白銀で、どこかブルームーンを思わせる静謐な美しさがあった。

 瞳の色は夏の青空のような紺碧で、漆黒の瞳孔は縦に細長い形をしていた。綺麗で、澄んでいる。しかし、その眼差しには如何にも上位者然とした怜悧さと高慢さが根付いているように見えた。

 リリィがメスガキの目だとしたら、こっちは女王様の目だ。女王様アイズだが、ロリの目なので可愛い以外の何物でもない。おかわいい事。

 

 身長はリリィよりは大きいが、その差は5センチくらいしかない。ロリコン計測で142センチといったところか。身体つきはリリィより幼い印象で、リリィよりも華奢だ。

 肌はいっそ病的と言えるほど白く、けれど不健康な印象はない。血色の良い健康的な肌というより、白真珠のような肌だった。

 

 何より目につくのは、側頭部から生えた左右一対の角である。

 それはリリィのような羊然とした形ではなく、ゆるくS字状を描いて上を向いたパブリックドラゴンイメージの形状であった。角の生え際は太いが、先端にいくにつれ細くなっている。色は濃紺で、白銀の髪によく栄えている。

 

 幼い丸顔。小さな身体。丸く大きな瞳に、存在感のある髪と角。

 少女というより幼女。幼女というより淑女。ロリであり、レディである。エリーゼは、そういう女性だった。

 ロリコン的にはオールオッケーである。

 

「イシグロ様は、竜族の名乗りについてご存じですか?」

「……ええ、一応は」

 

 慌てて頷くと、奴隷商人は営業トークをはじめた。ロリに夢中で反応に遅れてしまったが、仕方ない。

 

 続くクリシュトー氏の話をまとめると、こうだ。

 竜族とは力と誇りと契約を重んじる種族なので、自身の名を偽る事は絶対にない。だから、今さっきの名乗りはマジなんだよ、と。

 

「ふぅむ……」

 

 エリーゼ・フラム・ミラヴィーカ・アヴァリツィア。

 長い名だが、記憶しやすい。詠唱の一種だと思えば難しくない。

 エリーゼとは彼女個人の名。フラムは生まれた場所で、ミラヴィーカは銀竜一族の一員という意味。最後のアヴァリツィアはアヴァリさんの娘って意味だ。

 これに偽りがないのなら、商人の言ってた血統に間違いはないという事だ。まぁそんなのどうでもいい事だが。肝腎な事はその身に宿すロリ性であり、血ではないのだ。

 

「エリーゼは別室で待機を」

「かしこまりました」

 

 しばらくの営業トークの後、血統書付き竜族は相手の山札に戻ってしまった。

 正直もうちょっと眺めていたかったが……。

 

 いや、いい。

 どうせすぐ眺め放題コースになるのだ。

 

「じゃあ、待っているわね……」

 

 去り際、エリーゼはこう言い残した。

 その言葉は絶対的な自信に満ちているように感じられた。本当に、よく分からない心理だが、彼女は俺が自分を買う事を確信しているようだった。

 

「ひょえー、マジもんの竜族ってあんな感じなんスねー。んー、でもなんか、ご主人に向ける目が変だったような?」

「うん、なんか睨まれてたね……」

「うーん、戸惑ってる? みたいな?」

「そうかな、自信たっぷりって印象だけど」

「それは……そうッスけどぉ、なぁんか違和感あるんスよねー」

 

 少ししか話してはいないが、彼女の言動ひとつひとつにはしっかりと芯が通っているように感じられた。

 声は大きくないのに、相づち一つ取ってもしっかり耳に響く良い発声をしていたのだ。教育の賜物か、あるいは竜族特性なのか。それに加えてあの立ち振る舞い、否が応でも自信自負自尊心というものを感じ取ってしまうね。

 

「あと、名前が長かったッスねー」

「エリーゼ・フラム・ミラヴィーカ・アヴァリツィア。フラム城生まれ銀竜育ち、アヴァリさんの娘のエリーゼちゃんって意味だね」

「わ、すごいッスねご主人!」

「ま、多少はね?」

 

 この程度、オタクからすると余裕である。

 俺はドラグスレイブも黒棺もインディグネイションも少佐の演説もルイズのフルネームだってカンペ無しで言えるのだ。

 

「もし、イシグロ様がご契約なさる場合、彼女はエリーゼ以外の名を失う事になります」

「そうなんですか」

「奴隷ですから」

 

 などと話しつつ、せっかちな俺は、さっそくクリシュトーさんに顧客として相対した。

 相手も俺の変化には気が付いているのか、対面前とは違い緊張の糸を緩ませている風だった。

 

「エリーゼですが、喜んで買わせて頂きます」

「……ありがとう存じます」

 

 クリシュトーさんは、ひと儲けの喜びというより、安堵の息を漏らして礼を述べた。

 逆鱗とか値段とか色々あるが、全部どうでもよくなった。

 目の前にクソかわロリがいるのだ。10億でも余裕で出しちゃう。

 

 

 

 さて、契約書やら何やらはつつがなく……とはいかなかった。完了はしたが、時間がかかったのだ。

 ルクスリリアの時は軽くサインするだけで済んだのに対し、エリーゼの場合値段的なアレか種族的なソレなのかで色々あったのだ。

 書類ひとつひとつの解説とサインと指印。同じような書類の内容の説明や、どこそこに向けた契約書とか色々。

 お金の用意にも時間がかかった。なんせ10億ルァレだ。それに関してもまぁ色々あったが、紆余曲折ありつつその日のうちに10億きっかり一括払いした。こういう支払いは現代日本ほど便利じゃないし、異世界なりの決済法があるのだ。実に面倒臭かった。

 

「これがエリーゼの奴隷証となります」

「はい」

 

 ややあって、俺はようやっとリリィの時と同じくドッグタグめいた奴隷証を渡された。

 魔力を流したドッグタグには、イシグロさん家の奴隷・エリーゼと書いてある。長い名前はなくなったので、これから彼女はただのエリーゼだ。

 

「随分遅かったのね……」

 

 そうして再会したエリーゼは、奴隷とは思えぬお嬢様風の服装で現れた。

 なんというか、露出度少なめのお上品お嬢様スタイルといった印象の服だった。露出してるのは顔とお手々のみで、細いおみ足も靴下とブーツで隠れている。

 リリィの服がサマーメスガキだとしたら、こちらは京都観光中のお嬢様といった雰囲気だ。露出度バトルじゃリリィの圧勝だが、お清楚バトルじゃエリーゼの圧勝である。俺はどっちも好きだ、可愛いから。

 

「じゃあ、付けるよ」

「ええ……」

 

 前回と同じくらい緊張しつつ、前回と同じように彼女の首にドッグタグを付ける。

 髪を分け、絡まらないように鎖を通し、首の後ろで連結させる。奴隷証が繋がると同時、魔術的束縛が機能してエリーゼは名実ともに俺の奴隷となった。

 

「今後ともよろしく」

「ええ、わかったわ……」

 

 胸の前に下がったドッグタグに触れ、エリーゼは小さく頷いた。

 商品の時も、俺の奴隷になった時も、エリーゼという竜族少女は変わらず凛としていた。

 

 

 

 そんなこんな。

 

 俺たちが店を出る頃には、辺りはすっかり夜になっていた。

 奴隷商館には朝食後すぐにやってきたのだが、契約書やらお金やらで色々と時間を食ったのだ。とはいえだ。10億の商品を取り扱うのである。本来ならもっと時間がかかって然るべきだったのかもしれない。今日中に終わって良かったと思うべきだろう。

 

「じゃあ帰ろう」

「はいッス!」

「ええ」

 

 俺の一歩後ろ、右にルクスリリア、左にエリーゼで歩く。

 当初はエリーゼは俺の三歩くらい後ろを歩いていたのだが、遠慮なく主人のほぼ隣で歩くリリィを見て位置を直していた。俺としてはそっちのが嬉しい、両手にロリだ。

 

「へぇー、竜族の角って魔力感知の機能もあるんスねー。だからあの時……」

「ええ。淫魔の角は何の為に?」

「何の為なんスかね? 飾り? なんかあった気するッスけど、ド忘れしたッス!」

 

 一歩後ろでは、エリーゼはルクスリリアとお話していた。物怖じしないルクスリリアと竜族お嬢様の相性は悪くないようである。

 二人の仲が良いのはとても嬉しい。いじめっ子のリリィなんて見たくないからね。

 

「ん? おう、イシグロか」

 

 そうして帰路を歩いていると、リリィ購入時と同じ場所でギルドの受付おじさんと遭遇した。

 彼はこれまたオフっぽい私服姿で、右手にデカい焼き鳥みたいなのを持っていた。休日をエンジョイしてるみたいで何より。

 

「こんばんは。良い夜ですね」

「おう……。あーっと、そっちの嬢ちゃんは新しい奴隷か?」

「はい。エリーゼ、こちらはギルドの受付をしてくれるおじ……職員さん。挨拶して」

「ええ……」

 

 後ろにいたエリーゼを前に誘導すると、彼女は大人相手に物怖じせず名乗りを上げた。

 

「我が名は、エリーゼ。イシグロ・リキタカの第二奴隷よ。姓はさっき捨てたわ」

 

 どうやら前の長い挨拶はしないらしい。が、前と同じくらい堂々と名乗った。

 堂々と、自身が奴隷身分である事を表に出したのだ。リリィもそうだったが、もしかしたら異世界人視点奴隷身分ってそこまで悪い立場じゃないのかもしれない。いや、でも街中の奴隷っていつも忙しそうに働いてるんだよな、うぅむ……。

 

「おう……こりゃどうも。イシグロ、こいつは竜族か?」

「はい」

「銀の竜族、か……。へっ、そういう事かよ……」

 

 おじさんは何かしたり顔で頷くと、エリーゼの方を見た。

 何がそういう事なのか分からないが、おじさんは竜族奴隷にいたく感心してる風である。竜族の奴隷なんて凄いわねといった感じだろうか。

 

「じゃあなイシグロ、次も生きて帰って来いよ。お嬢ちゃんたちもな」

 

 そう言って、おじさんは焼き鳥をひらひらさせながら去って行った。

 

「人間種って、歩きながら食事をするのね」

「基本的に座って食べるッスよー」

 

 などと話しつつ歩き、宿屋に到着。

 店主に住人が増えた事を伝え、追加料金を払って借りた部屋に向かう。

 道中、エリーゼは宿屋の内装を無感動に眺めていた。お嬢様視点、何か言いたい事があるのかもしれない。

 

「ただいまッスー」

「リリィ、服脱ぐの手伝って」

「あいッスー」

 

 やがて住み慣れた我が家に入ると、俺はルクスリリアに手伝ってもらって外行き用のお高い服を脱いでいった。

 これが装備品だったらコンソールポチポチで簡単に着脱できたのだが、こういう普通の服はいちいち着たり脱いだりしないといけない。

 もし異世界から地球に帰還したら、俺はまともにお着換えができなくなってるかもしれないな。まぁ仮にマジでそうなったら、俺は即自殺するがね。二人のいない世界に未練はない。

 

「ふぅ……あれ、エリーゼ?」

 

 息苦しい服から着替えると、エリーゼが立ち止まっている事に気づいた。

 放置していて戸惑わせちゃったか。いや、そんな感じはないな。奴隷初日の彼女は、初めての部屋で泰然自若と何かを待っていた。

 

「どうしたの?」

「侍従を待っているわ」

 

 淀みない返答に、俺はなるほどと納得した。

 よくは知らないが、聞くに彼女は良家の生まれ。単純なオタク思考だが、そういうトコのお嬢様は身の周りのお世話をメイドさんとかにやってもらってるイメージだ。お着換えもまた同様に。

 なるほどお嬢様だぜ、という気持ちである。

 

「えー? 竜族の人って自分でお着換えもできないんスかー?」

「できるわ。けれど、すべきではないわ。下の者の仕事を奪ってはいけないのよ」

「なんスかそれ~?」

 

 言いたい事自体は分かるが、まぁ残念ながらうちにメイドさんはいないので、これからは自分で脱ぎ脱ぎしてもらおう。

 俺がしてもいいのだが、それはもうそういうプレイだろう。お着替えが汚れてしまう。

 

「ごめんね。うちにそういう人はいないから、自分で脱いでもらえる?」

「わかったわ」

 

 言うと、エリーゼは存外あっさりと衣服に手をかけた。

 それからぱさりぱさりと服の留め具を外していき、やがて全裸になった。

 全裸になった。なんで?

 

「それで……私は何に着替えればいいのかしら?」

 

 そのまま、一糸まとわぬエリーゼは、誰憚る事なく俺の方を向いた。

 想定通り、エリーゼの身体は未成熟だった。当然のように胸は平坦で、お尻まわりにも肉がない。

 女性的膨らみに欠けるものの、全体的に丸く柔らかそうな印象で、手足も細く華奢だ。実際、左右の肋骨はうっすらと浮き出ていた。肌が白い分、陰影がはっきり見える。

 

「んー? また変わったッスか……?」

 

 何故か首をかしげるリリィだったが、俺の方は唐突なロリ全裸案件に完全硬直してしまった。

 見とれていた、という方が正しいか。

 

「貴方、やっぱり……」

 

 と、エリーゼの言葉にハッとなって、俺は慌ててアイテムボックスに手を突っ込んだ。

 危ない危ない、非童貞じゃなかったら即死だった。

 

「あ、あぁ……着替えはここに……」

 

 クリシュトーさんが付けると言っていた竜族購入特典には、エリーゼのお世話セットや竜族生態本が入っているのだ。その中には季節ごとのシーンごとのお着換えも入っている。至れり尽くせりである。

 俺はアイテムボックスから服の入ったカバンを取り出し、その中から適当な服を手渡した。

 

「これ着て」

「わかったわ……」

 

 エリーゼは渡された服をひっ被り、もごもごしながら着衣……できていない。

 順番が間違っているのか、さっきから頭から被った布がスライムめいて蠢いている。

 

「あ~、もうしょうがないッスね~!」

 

 どうしようか見ていると、見かねたリリィが加勢した。

 そのまま幼児のお着換えをサポートするように袖を通させていく。

 

「こんくらい自分でやってほしいッス~」

「ええ、そうするわ」

 

 まるで幼女が幼女の世話をしている様。見ようによってはキマシタワーが建ちそうだが、残念ながら幸運にも俺は間に挟まるロリコンポジであった。キテルグマには気を付けよう。

 

「ま、まぁ……とりあえず座って」

 

 俺はダイニングテーブルの椅子を引き、お嬢様を誘導した。

 お嬢様は「わかったわ」と言って、優雅に腰を下ろした。その対面の席に、俺とルクスリリアが並んで座った。

 すると、目の前のエリーゼから何故か鋭い眼差しを受けた。なんで?

 

「えーっと……」

 

 帰宅して、お着換えさせて、座らせた。

 このまま食事でもしながら親睦を深めようかと思ったが、なんかそんな雰囲気じゃあないぞ。俺まだ睨まれてるし。幼女の目なので怖くはないが、居心地は悪かった。

 うん、食事の前に、もう少し話そう。一歩進んで二歩下がる作戦だ。

 

「改めて、俺はイシグロ・リキタカ。この街で冒険者やってる。一応、銀細工っていう上の階級だよ」

「そう……。今の私は、貴方の奴隷のエリーゼよ。傲魔竜の娘で……その銀細工に彫刻されてる剣の持ち主の孫ね」

「え? そうなの?」

 

 いきなりの新情報である。俺は今一度自身の首にかかった銀細工を見た。

 これまであまり気にしてこなかったが、確かにハガレンの銀時計めいた円盤には、クロスした二本の剣が彫刻されていた。それぞれ長い剣と短い剣だ。

 これが銀竜剣豪マークなのだとしたら、ヴィーカ氏は二刀流の使い手だったのかな。

 

「そうだったんだ」

「ええ。剣の彫刻という事は、貴方は銀竜の年に昇格した事になるわ。その銀細工は建国の一党を象徴する彫刻をされるのよ……」

「へー」

「まー、アタシらご主人以外の銀細工持ち見た事ないッスからねー」

 

 流石は年の功というべきか、140歳幼女のエリーゼは博識だった。

 それからエリーゼと色んな話をすると、彼女は特に古の知識に詳しい事がわかった。

 異世界あれこれのルーツとか、どこそこの種族の歴史や文化など。まるでロリペディアである。

 

「ええ。だから貴女は、勇者アレクシオスの遠い遠い子孫って事になるわね。珍しい事ではないけれど……」

「ほえー、全然知らなかったッス」

 

 みたいな感じで話している間、何やらエリーゼからチラチラと視線を頂く事があった。先ほどの鋭い眼とは違い、今度は「チラチラ見てただろ」と因縁付けたくなるチラ見だ。

 一体全体、それはどういう視線なのだと考えても、よく分からない。

 会話中の彼女は姿勢正しく、如何にもご令嬢といった雰囲気だ。話し姿もピシッとしていて、淀みがない。けれど時折、俺とルクスリリアを交互に見るのである。ちょっと不自然なタイミングで。

 

「んー?」

 

 その謎視線にはルクスリリアも気づいているようで、彼女は時たま首をかしげていた。

 思えば、ルクスリリアはちょくちょくエリーゼに訝しむような目を向けていた気がする。何か異世界人特有のアレやコレやがあるのかもしれない。

 

「……寒いわ」

 

 やがて、会話にひと区切りがついたところで、エリーゼは小さく呟いた。

 寒い……寒いのだろうか。曰く、ラリス王国にも四季があるらしいが、今はちょうど夏の始まりといったところである。その割に着込んでいたあたり、もしかしたら竜族は寒さに弱い種族なのかもしれない。

 

「暖炉つける?」

「……そこまででもないわ」

 

 魔法式暖炉をつけようと提案すると、断られてしまった。

 よく分からない。寒いんじゃないのだろうか。

 

「ん-? 竜族って魔力で……あっ」

 

 隣でルクスリリアの頭上に電球が灯った。

 すると、やおら浮遊したルクスリリアはエリーゼのところまで行くと、その耳に唇を寄せて何かごにょごにょ囁いた。対するエリーゼも僅か唇を動かしていた。

 異世界ナイズドされて強化された俺の耳でも分からないこそこそ話。とても気になる。

 

 やがて内緒話が終了すると、ルクスリリアは浮遊したまま一歩分後退した。

 そして、俺と目を合わせたエリーゼは、先ほどと同じく強い眼差しで俺を射抜いた。

 見つめ合うこと1秒、2秒、3秒後……エリーゼはいっそう目つきを鋭くして、云った。

 

「あ……貴方、今すぐ私を愛でなさい……」

「へ?」

 

 唐突なビックリ発言に困惑していると、エリーゼの後ろにいたリリィがクレーンゲームみたいにエリーゼを宙へと掴み上げた。彼女は飼い猫めいてされるがままだ。

 

「さ、ご主人こっち来るッスよ~♡」

「え? あぁ……」

 

 アームに引っかかったぬいぐるみみたいに運搬されるエリーゼに続き、誘導されるままソファの前まで歩く。

 

「ご主人、ここ座るッス!」

「うん?」

 

 言われるがままソファの真ん中に座ると、運搬クレーンと化したルクスリリアは商品を俺の上に持ってきて、ゆっくり下ろしはじめた。

 

「ご苦労様、ルクスリリア……」

「きひひっ、こういう時はお礼ッスよ~」

「そう、ありがとう……」

 

 ぽすん、と。

 そのまま、俺の膝の上にエリーゼが収まった。

 

 お膝の上のエリーゼはお上品に座っており、俺視点彼女のうなじと角の先端が見える構図だ。

 小さな竜族少女は、実際に触れてみると想像よりも細く、柔らかかった。

 

「え……これどういう状況?」

「……近い方がいいでしょう?」

 

 すぐ真下から返事。彼女の視線はソファ前の暖炉に向いている。

 

「いやー? 人間種のご主人にはちょっと分からない感覚ッスかねー?」

「そうなのね……」

「はあ」

 

 どうやら、二人には分かって俺に分からない事のようだった。

 

「悪くないわ……」

 

 何がどう良し悪しなのかは分からないが、俺は今日初対面の没落令嬢を膝の上にお乗せしていた。

 膝の上には布一枚隔てたエリーゼのお尻があり、ルクスリリアとはまた違うロリの匂いが俺の鼻孔を直撃していた。

 すると、異世界で箍が緩んでいる俺の息子がむくむくと元気になり始める訳で……ボタン連打で鎮静化しないと。

 

「じゃ、アタシご飯取ってくるッス! 一番良いのでいいッスよね?」

「あ、ああ、よろしく」

「ごゆっくり~♡」

 

 言うと、ルクスリリアは部屋を出ていった。

 自然、部屋には俺とエリーゼのみ。彼女は相変わらず綺麗なお嬢様座りで俺の膝にいる。かと思えば、たまにもじもじしてお尻を揺らしていた。

 やめろエリーゼ、その動きは俺に効く。

 

「えっと、これは……?」

「貴方、やっぱり変なのね……」

 

 控えめな問いには、変人認定が返された。いや変態認定か?

 何のこっちゃと思っていると、エリーゼはそのまま俺の背に体重を預けてきた。

 

 すとんと、俺の胸に彼女の後頭部が預けられた。

 量の多い髪がくすぐったく、幼竜の匂いが濃くなった。ふぅと吐いた彼女の息が、とても官能的に感じられた。

 

「あのー」

 

 どういう訳か、本日初対面の奴隷は、初対面の主人に身を預けて安らいでいた。

 やけに早い俺の心臓と、ゆったり鼓動する彼女の心臓の対比がおかしかった。

 

「私はもう、貴方の財宝(もの)よ……」

 

 しばらくそうしていると、不意にエリーゼは口を開いた。

 黙って聞いていると、彼女はゆったりと言葉を紡いだ。

 

「竜族にとって、宝は飾るものではないわ。愛でるものなのよ……」

 

 膝の上に置いていた彼女の手が動き、所在なく垂らしていた俺の手を取った。

 そしてそのまま、アトラクションの安全ベルトを締めるようにして、自らのお腹の前に持ってきた。

 

「宝を愛でるのは、主人の務め……」

 

 ドクンドクンと、まるで童貞卒業前のように心臓が早鐘を打っていた。

 対するエリーゼの体温に変化はない。本で読んだ通り、竜族は体温の変化に乏しいのだ。心拍もまた、一定である。

 

「私は……孕む事は、できないけれど……」

 

 クロスした手の上に、エリーゼの手が重ねられる。

 手まで熱くなってる俺と、ひんやり冷たい白い手。竜の手は、僅かに震えていた。

 彼女はなおも暖炉を見つめながら、云った。

 

「その覚悟は、あるのでしょう……?」

 

 よくは分からないが……。

 本当に、よく分からないが。

 現代日本人に、異世界竜族の思考回路はサッパリだが……。

 

 そういう事というのだけは、分かった。

 童貞だったら踏み出せなかっただろうが、今の俺は違う。

 欲望に負けた訳でなく、愛しさが勝って、据え膳食う覚悟を決めた。

 

「エリーゼの事、もう少し聞かせてもらっていい?」

「ええ。10年分しか、ないけれど……」

 

 あすなろ抱き、あるいは後ろ抱き。

 俺は膝上のロリ竜姫を、優しく抱きしめた。

 幼竜の、冷えた身体を暖めるように。




 感想投げてくれると喜びます。



 次回、エリーゼ堕つ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。