【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。励みになっています。
 誤字報告も本当にありがとうございます。忍びねぇ忍びねぇ……。

 今回、アンケがあります。
 後書きをお読みの上、お回答頂けると幸いです。
 感想欄にて度々作者が言ってた事です。早めに決めておいた方が良いかと思い、設置させて頂きました。


竜の令嬢の家庭事情

「ご主人って、エリーゼの“すてぇたす”はまだ見てないんスかー?」

 

 朝、久しぶりに店主さんに怒られた後の食事中、ルクスリリアが訊いてきた。

 今俺たちが食べているのは“淫魔王国風シチュー”のセットという奴で、前世でいうとこの白いシチューだ。淫魔ミルクと淫魔バターと淫魔チーズをドバドバ入れたこのシチューは、此処で供されるうちの日替わり最高級メニューの一つである。

 最近は稼ぎ相応に良いご飯を食べるようにしている。実際、食事のグレードを上げてからというもの、俺もリリィも上の口が喜んでいる。なんというか、活力が湧くのだ。

 

「そういやぁ、まだ見てないなぁ」

「すてぇたす……とは、何の事かしら?」

 

 付け合わせの森人豆(エルフまめ)の焼き団子を切りながら答えると、ナイフ&フォークでパンもどきを切っていたエリーゼは小首をかしげた。

 

「ご主人は異世界人なんで、仲間の能力とかを見たり弄ったりできるんスよ。アタシからは見えないッスけどね」

「そういえば、日本という国の出と言っていたわね」

「うん。こんな感じ、見える?」

「見えないわ……」

 

 目の前で虚空をタップしてコンソールを開く。すると、案の定エリーゼも空中投影ディスプレイを視認する事はできなかったようである。

 エリーゼが見えないって事は、この機能は魔力で動いてる訳じゃないのかな。

 

「それで、何ができるのかしら」

「色々できるよ」

 

 アイテムボックスの中身の確認とか、装備の着脱とか、手に取ったアイテムの情報の閲覧とか。まぁRPGのメニューみたいなもんである。

 中でもよく使っているのはステやジョブ関連だ。試しに、仲間からエリーゼをタップして、ステータス画面を開いてみた。

 

 

 

◆エリーゼ◆

 

 

 

 竜族:レベル3

 竜魔導士:レベル1

 

 

 

 竜族権能:祈り

 

 

 

 補助スキル1:琴竜循環

 補助スキル2:竜祖回帰

 

 

 

 生命:15

 魔力:751

 膂力:10

 技量:14

 敏捷:11

 頑強:12

 知力:17

 魔攻:13

 魔防:16

 

 

 

 

「……え?」

 

 話題の一つとして軽い気持ちで開いてみたにしては、エリーゼのステにはちょっと気になる内容が多かった。

 いきなり知らんワードが出てきたぞ。お琴 竜祖?なにそれなにそれである。

 

 まず、無いといっていた竜族権能だが、“祈り”なるものがあるやんけってのと。

 次に、補助スキルの“琴竜循環”と“竜祖回帰”って何や。モンハンの顕如盤石とかに近しい分かりづらさがある。なにがどうお琴と竜で循環してどう回帰するのだよ。

 最後に、魔力751って何だそれ。え、なに? 俺の何倍だ? リリィ何人分の魔力だ? 一瞬バグかと思ったよね。

 

「何かしら、ラリススナギツネのような顔をして……」

「わー、初めてみた表情ッスー。すっごい間抜けぇ♡」

 

 コンソールを前に呆然とする俺に対し、ロリ二人は白い目を向けていた。

 視線に気づいた事で精神を整えた俺は、未だ信じきれない内容のステータスを見ながらエリーゼに向き直った。

 

「エリーゼはその……権能は無いって言ってたよね?」

「そうね、無いわ」

「その、一応……“祈り”っていう奴があるみたいなんだけど……」

「そう……」

 

 言って、朝から優雅に白ワイン――竜族はお酒大好き種族らしい――を飲むエリーゼ。

 やがて、グラスを置いて、一言。

 

「吐くならもっと面白い嘘になさい……」

 

 無表情だが、その声色には少しばかりの怒りが含まれていた。

 言ってしまった後だが、確かに権能がなかったとして見下されていたエリーゼに、今のはNGだったと思う。配慮に欠けた発言だ。

 が、異世界をチートありきで生きてる俺である。コンソールに書いてある事はとりあえず在るモノとして扱う訳で。

 

「うん、いきなりごめんね。けど、ステータスにはそう書いてあるんだ」

「本当かしら……?」

「まぁ疑う気持ちは分かるッスけどねー。アタシもいきなり飛べるよって言われた時も何のこっちゃだったッス」

 

 もう一度ステを見て、“祈り”のトコをタップする。すると、新しくポップしたウィンドウに権能の概要が表示された。

 えっと、なになに……?

 

「なんか、祈る事で“呪詛”と“祝福”を付与する事ができる……みたいだよ。んー、それしか書いてないなぁ……」

「そう……」

 

 コンソールくんは便利だが、親切という訳ではない。淡々と効果とかを教えてくれるだけで、それが何でどう使うかとかは書いてないのである。

 例えばゴーレム相手に使った能動スキルの“剛剣一閃”も、強力な一撃だよって書いてあるだけだったのだ。それがどんくらい強くてどんなモーションなのか、確かめてみないとよく分からなかったのである。

 なので、とりあえず試そうというのだ。実際気になるし。

 

「確か、両親の権能が呪詛と祝福だったんだよね? どんな感じだったの?」

「ふぅ……そうねぇ……」

 

 一度食器を置いて、顎に手を当てるエリーゼ。

 いうて約100年前の記憶だ。俺のような人間種とは脳も心も時間感覚も違うんだろうが、それでも実際昔々の記憶である。長寿族の脳構造でも、思い出すのには時間がかかるっぽい。

 

「お父様の呪詛は、武器や魔法に“呪詛”を籠めて、当たった相手に重篤な負傷を負わせる権能だったわ。とても強力で、竜族相手に使うと再生能力を弱める事ができたらしいわ。他にも色々と応用できたようだけれど、詳しくは知らないわね……」

「へえ。デバフとか毒属性みたいな感じなのかな」

「お母様の祝福は、竜族鱗鎧(よろい)や回復魔法に“祝福”を籠めてそれらを強める事ができる権能よ。祝福をかけた竜族鱗鎧(よろい)はより堅牢になって、祝福付きの回復魔法を受けると通常では治らない類の負傷も治療できたらしいわ。だから、戦う時のお母様は自分とその味方に祝福をかけて、絶対に負けない戦いをしていたそうよ」

「へえ。バフと強化回復って感じかな」

「その、デバフとバフって何なんスか?」

「弱化と強化、みたいな? ふぅむ……」

 

 エリーゼの話を聞いて、大体わかった。ゲーマー的に理解の容易な権能である。

 要するに、どちらも自分とか武器とか魔法とかに付与して発動する権能で、それぞれパパ権能がデバフ系でママ権能がバフ系な訳だ。攻めと守りの強化とも言えるか。

 で、エリーゼの“祈り”はその両方を使う事ができると……。

 

「言っておくけれど、これでも私は色々と挑戦して、一度も権能が表に出た事がないのよ。普通、自然に使えるようになるものなのに、私にはそういう経験も無かったわ……」

「それでも発動条件が分かりにくかったとか、そういうのあるかもしれないじゃん?」

「そう、まぁアナタに従うわ……」

 

 気になったのが、パパは武器に、ママは鎧に権能を付与していたというところだ。

 それなら今すぐ確認できるんじゃないのと。

 

 なので、食後にアイテムボックスから一本の短剣を取り出してみた。

 これは駆け出し時代に買ってみた短剣で、試しに一度使ってからずっと放置していた店売り武器だ。ぶっちゃけ弱い。

 

「はいコレ」

「これを、どうするのかしら……?」

 

 俺はその短剣をエリーゼの前にお出しした。さながらコース料理のように。

 エリーゼは突然お出しされた武器に首をかしげていた。

 

「試しに祈ってみて。聞くに、両親は武器に権能籠めれたんでしょ?」

「そう言われてもね……。祈るというのも、よく分からないわ」

「確かに何をどうすれば祈りになるのか、俺も分からないな」

「こう……お願いします何でもしますから! みたいな感じじゃないッスか?」

「お願いしますって……。こう、かしら……?」

 

 言いつつ、エリーゼは短剣に手のひらを向けてぶわぁ~っと魔力を放射した。

 凄まじい魔力である。魔法こそ発動していないが、単に出しただけでこの魔力はやっぱとんでもない。

 魔力を出し続けるエリーゼと、魔力を受け続ける短剣くん。当然、何にもならない。魔力とはそれ単体では何にもならない人間視点不可視のエネルギー。感じる事はできても、それ単体では何も起こらないのだ。

 

「……できないわ」

 

 やがて魔力放出を止めたエリーゼは、ふぅと一息吐いた。

 コンソールにあるエリーゼのHP・MPはミリも減っていないが、彼女は少し疲れたような顔をしていた。ある意味トラウマになっているのかもしれない。精神的に滅入ってないといいが、それでももし使えるのだとしたらそれは彼女にとって良い事だと思うのだ。

 

「ふぅむ……」

 

 短剣を持ち、調べてみる。

 確かに、呪われてもいないし祝われてもいない。ごく普通の短剣のままだ。できていない、発動していないのか。

 詳しく情報を見てみると、安物故だろうか、一回しか使っていないのにも関わらず、短剣の耐久度がごくわずかになってるのに気づいた。畜生あの店員クソ商品掴ませやがったか……?

 

「ん?」

「ご主人?」

 

 いや、何か引っかかる。うん、やっぱ変だ、何が変なのかというと、耐久度だ。

 この世界の武器は、地球のソレよりも頑丈である。手元に異世界産と地球産のナイフがあったとして、それらを岩にたたきつけまくったら、地球産ナイフは間違いなく刃こぼれするだろう。しかし、異世界ナイフは刃こぼれひとつないし、耐久度もほんの少ししか低下しない。実際試した事があるのだ。

 逆に、刃こぼれ等がなくとも耐久度が0になったらぶっ壊れるのが異世界ナイフなのだが、それまでは元気に切れ味を維持してくれるのである。ブレード自体の頑丈さも凄まじく、普通に牛くらいのモンスの突進をガードしても壊れないし曲がらないのだ。持ち主はノックバックするが、ナイフには傷ひとつない。耐久度は減るが。

 

 もしかして、である。

 呪詛とか祝福とか、祈りの仕様は分からないが、この耐久度減少とエリーゼの権能には何か関係があるのでは、と。

 気になる、試してみるべきだ。

 

「エリーゼ、もっかいやってみてくれる?」

「まあ、アナタが言うなら……」

 

 今度はアイテムボックスから取り出したピカピカの曲剣を置く。ちゃんと確認した、耐久度マックスの新品である。

 で、さっきと同じエリーゼ流の祈り魔力放出。ぶわぁ~っと出してもらったところで一旦止めて、対象物を見てみる。

 

「やっぱ減ってるじゃないか」

 

 魔力を当てられた曲剣は、しっかりと耐久度が減っていた。

 呪いも祝いも宿ってはいないが、それでも何かしらが発生しているんだな。

 

「減ってるって、何がどうなったんスか?」

「権能か何か、ちゃんと発動してるっぽいんだ」

「そう……」

「エリーゼ、次はちょっと強めにやってみてくれる?」

「わかったわ……」

 

 再度、同じ曲剣に同じ事をしてもらう。

 しばらくやってもらうと……。

 

「あら……?」

 

 バキンと、剣が折れてしまった。いや折れたというか分かれたというか、とにかく刃の真ん中あたりで分断されたのだ。

 真っ二つになった部位はそれぞれ“破損した曲剣の刃”と“折れた曲剣”という別個のアイテムになったのだ。

 ちなみに、俺のアイテムボックスには似たようなアイテムが大量にある。おのれゴーレム……。

 

「おぉ……これがエリーゼの権能ッスか!? 武器破壊とか超強いじゃないッスか! ん、いやでも……“祈り”の姿ッスか、これが……?」

「多分。確かに、祈りっぽくはないけど……。副作用的なものなのかもしれないね」

「単に、魔力を浴び過ぎたから壊れた、というのではないかしら……」

 

 確かにエリーゼの言う通り、その可能性はあるな。

 検証の為、俺もさっきの短剣に色のない魔力を放射する。イメージはドライヤーの風である。

 

「エリーゼ、ちゃんと魔力流れてる?」

「ええ、できてるわ」

 

 念の為魔力が見えるエリーゼに確認してもらいながら行う。

 俺とエリーゼの魔力はダンチなので、ちょっと強めにやる。魔力ドライヤーの風量を弱中強と上げていき、手のひらから出せる最大の魔力をぶっ放す。

 

「ふんぬぅぅぅぅぅ!」

「うわー、エリーゼも大概ッスけど、ご主人もご主人ですっごい魔力……! あぁ……もうご主人の魔力から童貞の匂いがしないッスぅ……」

「ええ……人間にしては凄い魔力ね。童貞の匂い、というのは分からないけれど……」

 

 やがてHUDに表示されてるMPゲージがレッドゾーンに突入したところで、俺は魔力放出を止めた。

 如何に俺とエリーゼの間に隔絶した魔力差があるとはいえ、エリーゼの言う通りなら多少なり短剣の耐久度は落ちてるはずだ。

 さてさて、変化はあるかなーっと……。

 

「……変わってないな」

 

 変化はなかった。

 耐久度も攻撃力も変わっていない。あれだけ魔力ぶん回したのに、体感的には一度目のエリーゼチャレンジくらいの魔力籠めたつもりだったのに、短剣の耐久度は微塵も変わっていなかった。

 こうなると、やっぱ曲剣を壊したのは魔力でなく権能と考えるべきなんじゃあなかろうか。もっと検証すべきだろうが、一旦そういう事にしておこう。魔法も権能も一歩ずつトラエラだ。

 

「エリーゼは魔力放出してる時って、どっち混ぜてるの?」

「どっち、とは何の事かしら?」

「呪詛と祝福。多分、どっちもはできないんじゃないかな、勘だけど」

「あぁ、その“祈り”の……? 分からないわ、なんとなくこうなのかしらと思いながらやっているだけだもの。祈る、というのもいまいち理解できていないのよね」

 

 ふむ、なんとなくだが、こうなんじゃないのというモノが見えてきた。

 まるでヒロアカの個性訓練をしてる気分である。明確なビジョンを持ってやらないと、“祈り”の権能はまともに発動しないんじゃないだろうか。

 

「じゃあ、次はこれに“呪詛”を籠めてみて」

「呪詛を?」

 

 次に出したのは、これまた新品のレイピアである。

 後々試してみようと思って買ったものの、機会がなくてアイテムボックスの肥やしになっていた武器だ。

 

「呪詛、呪詛ねぇ……。できるとして、どうやって籠めれば良いのかしら……?」

「そりゃあ、あれッスよ。殺してやる! とか、あいつゼッテェ許さねぇ! みたいな気持ちを籠めるんスよ」

「そうなのかしら……」

「アヴァリさんの魔力を真似るとか?」

「お父様の魔力……」

 

 うんうん唸って、とりあえずはとエリーゼ式魔力ドライヤーが始動した。

 彼女ほど敏感じゃない俺の魔力感覚でも、かなりの魔力が飛んでいるのが分かる。それはさっきまでと同じ色というか匂いというか雰囲気の魔力で、俺やルクスリリアが魔法を使う時と同じ感じだ。無力の魔力である。これじゃ耐久度に変化はないはずなのだが……。

 

「お父様の、お父様の、呪詛……。魔力の色は……なっ!?」

 

 その時、エリーゼに電流走る。

 といった反応をしたエリーゼ。魔力を出し続けたまま、その視線はレイピアに注がれておらず何にもない虚空を見ていた。

 

「エリーゼ?」

 

 心配になって声をかけてみた……その時だった。

 ブワッと、彼女の放つ無味無臭の魔力が、禍々しくドス黒い魔力に変化したのである。

 

「ひえ!?」

 

 魔力変化にびっくりしたリリィが俺の背に隠れた。俺も俺で反射的に目の前に“魔力障壁”張っちゃったよね。

 リリィが怯えるのも分かる。確かに、怖い魔力だ。色で言うと赤混じりの黒といったこの魔力は、まるでガス状のモンスターが獲物を補食するようにしてレイピアに絡みつき、その全体を覆っていった。

 とても感覚的な例えだが、スプラッタホラーの怖いシーンでも見ているかのような気分である。レイピアという何の変哲もない鉄の塊が、そうではない恐ろしいものに取り憑かれていくかの様。

 

「……こんな感じ、かしら」

 

 やがて魔力ドライヤーが終わると、エリーゼは一息吐いて背もたれに体重を預けた。

 疲れてそうなので背中をさすりつつ、件のレイピアを調べてみると……。

 

「補助効果に“呪詛”が付いてる……」

 

 攻撃力も品質もそのまま安物剣だが、そのレイピアにはお値段不相応に補助効果が付いていた。

 その名も、そのまま“呪詛”。説明によると、攻撃ヒット時に対象に呪いのデバフを蓄積するらしい。呪いが何なのかは知らないが、なんか強そうだ。

 あと、耐久度はミリしか残っていなかった。これはやっぱ副作用なんだろうか。

 

「エリーゼ、成功したよ!」

「え、えぇ……。“権能”を使う、というより……しっかりと“呪詛”を使う感じじゃないと、ダメだったのね……」

 

 その旨を伝えると、エリーゼは呆然とレイピアを眺めていた。

 手渡すと、魔力感知に優れたエリーゼはその剣身に宿った呪詛をまじまじと観察していた。

 

「私にも、あったのね……」

「やったじゃないッスか! こういう時は喜んどいた方が気持ちいいッスよ!」

「そう、そうね……」

 

 エリーゼの周りをグルグル回るリリィ。対するエリーゼは何か重たいものを吐き出すようにして脱力していた。

 これまで、ずっとなかったと思っていた、皆が当たり前に持っていた権能(もの)を、今になって自分も持っていたという事を知ったのだ。

 今の彼女の心には、俺なんぞには分からない複雑な感情の動きがあるのだろう。

 

「なによ、あったんじゃない……」

 

 天井を仰いだ彼女の瞳は、一体何を見ていたのだろうか。

 空白の100年を過ごした彼女にとって、この経験が良いものである事を願わずにはいられない。

 いや、きっと良い事だ。彼女の性格的に、過去を悔いる事はないだろうから。

 

 

 

 それから、同じ要領で“祝福”の方もチャレンジしてもらった。

 ぽーっと噴き出す綺麗な魔力。それを浴びているのは何て事もない安物の手斧だ。

 

「できたわ……」

「やはり天才か」

「大した奴ッス!」

 

 調べてみると、祝福の付いた斧は、呪詛とは逆に攻撃を当てる事で自身にバフを乗せる事ができるようだった。

 で、今度は防具に祝福してもらうと、祝福兜には所謂リジェネ効果が付き、祝福手袋には状態異常耐性が付いた。

 で、一度祝福したアイテムに呪詛を籠めてもらうと、そのアイテムは一瞬にして壊れてしまった。どうやら呪詛と祝福の重ねがけはできないらしい。実に興味深い。

 それと、成功しても効果が同じじゃないのは何故かと思っていると……。

 

「恐らく、練度だと思うわ……。お父様もお母様も、持って生まれた権能を訓練して多彩な術を編み出していたもの。だから、私も練習次第で決まった効果を付与する事ができるのだと思うわ」

 

 なるほど、そういう事か。

 つまり、今のエリーゼはランダムでバフ・デバフを付与している訳だ。使いこなす事で安定化させられると。

 実に伸び代と汎用性のある権能である。夢が広がるな!

 

「嬉しそうね……」

「ご主人、ああいうトコあるんスよ」

 

 ふと、ここで思いついた。

 天啓、まさしく天啓である。

 

 コンソールを開き、ジョブを弄り……あった。

 侍や武闘家系同様、これまで育ててこなかったジョブツリー。ソロだとちょっと使い勝手が悪く、どうにも後回しになってたのだ。

 今こそ、鍛える時なんじゃあないのという話だ。

 

「エリーゼ、私にいい考えがある」

「何かしら?」

 

 戦士レベル20で生えてきた下位職。

 その名も、“弓兵”。

 これを育ててみようじゃあないか。

 

「権能の練習には、矢を使おう」

 

 少し触ってみてわかった、この世界の弓の仕様。

 この世界の矢は、モンハンとかと違い消耗品である。矢を店で補充する都合上、一矢放てば矢一本分のお金が消費される訳だ。貧乏性の俺、無事死亡。

 矢筒嵩張るじゃん問題はアイテムボックスのお陰でなんとかなるのだが、それでも剣一閃で倒せるエネミーに安価とはいえお金を消費して攻撃するのには抵抗があったのだ。

 だが、今の俺は違う。如何にエリーゼ購入後とはいえ、銀行には一億ルァレあるのだ。矢の100本や1000本、余裕でまとめ買いできちゃう。

 

「矢ッスか? なんでそれを? ていうかご主人、弓使えるんスか?」

「まだ使えない。けど使えるようになる。頼むよ、エリーゼ」

「矢に権能を……。ええ、わかったわ。さっき思い出したけれど、お母様も似たような事をしていたわ。軍団の弓兵部隊に祝福を施した矢を撃たせていた、と」

「やったぜ」

 

 前例があるなら、頼もしい。

 エリーゼについては、まだまだ考えるべき事も多いが、とりあえずやる事は決まった。

 これから忙しくなるぞ、エリーゼが。

 

「ふふっ……楽しそうね」

 

 そう言って微笑むエリーゼこそ、楽しそうな顔をしていた。

 

「あ、そうだ。エリーゼにも俺たちと一緒に迷宮に潜ってほしいんだった」

「ええ、聞いているわ。どれだけ役に立てるかは分からないけれど、何とかしてくれるのでしょう?」

「ありがとう。勿論、私にいい考えがある」

「ええ、よろしくね……」

「あと武器の練習もしよう」

「そうね。武技の鍛錬は好きよ」

「武器の注文もしよう」

「あら、注文するのね」

「魔法の練習もしよう」

「使えないわよ」

「私にいい考えがある」

「そう? なら、いいけれど……」

「防具の注文もしないとな!」

「大変ね」

「お金も稼がないとな!」

「大変ね……貴女も」

「まあ、そういう人ッスから」

 

 そうして、三人の初めての朝は過ぎていった。

 

 

 

 人生を捻じ曲げてしまう程だった彼女の欠陥は。

 単に、使い方を間違えてただけだったと。

 そういう事であった。

 

 これからは、楽しくガンガン使っていこう。




 感想投げてくれると喜びます。



 アンケですが、作者がなんとなく考えていたヒロイン募集企画についてです。
 事前に細かいレギュレーションを設け、活動報告かメッセージとかで募集します。その後、お送りいただいたヒロインを作者がなんやかんやして作品に登場させます。
 所謂、ぼくのかんがえたさいきょうのヒロインですね。そもそも応募が集まるのかよといった問題もあるので、事前に。
 レギュレーションは後々。募集ヒロインを出す時に、応募者様の名前を出すかどうかも後々、

 作者的には一度チャレンジしてみたい気持ちがあるのですが、こういう企画を嫌う人がいるというのも把握しているつもりなので。
 以降全部そうじゃなくても、都度アンケで決めるのもアリでしょうか。
 うじうじ悩んでたら一生決まらないと思うので、とりあえずここで三人目の方針について決めてしまおうと思います。



◆追記◆

 アンケートを設置して少ししか経っていませんが、一旦ここで終了とさせて頂きます。アンケートのご協力、ありがとうございました。

 結論から言うと、三人目のヒロインは募集しない事にしました。
 というのも、頂いた感想や頂いたメッセージを見て、これはノリでやるべき事ではないなと思ったからです。
 作者はこういう催しに肯定的な気持ちも、否定的な気持ちも分かりますので。ほんとに時と場合によると思うんですよ、それでいうと、いや流石に3人目は早いかとそう思った次第です。

 なので、ヒロイン募集にしては「今は」やらないと判断いたしました。
 何故「今は」としたかというと、やっぱそのうちやりたいからです。そんだけです。

 多分そのうちやります。ただ、今ではありません。作者がやる気になったらやると思います。
 とりあえず、3人目ではやりません。

 3人目は明日作ります。
 現時点でどうなるかは分かりませんが、それは明日の作者がやるべき事なので今の作者には無関係です。今日はもうクソして寝ます。
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