【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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光速の脚をもつロリコン

 入都翌日、夏休みの宿題を七月中に終わらせる系ロリコンの俺は、早速とばかりに西区転移神殿に向かって行った。

 飲み屋で決めたチーム名で同盟を結成する為である。同行者はユゥリンだけで、他の面々は自宅でゆっくりしている。

 

「“草薙の剣”だな。わかった。これで登録しとくぜ」

「よろしくお願いします」

「あと、昨日も説明したけど一応規則だからもっぺん同盟について説明するぞ? まず、同盟の代表は盟主っつって……」

 

 登録手続きの最中、俺は受付おじさんから同盟関連の諸々の説明を受けた。

 同盟とは、言ってしまえば迷宮ギルドのサブスクみたいなものだ。一定の金額を納める事で、同盟内での金銭管理や武器の保管や管理、その他同盟単位での依頼受注などの代行サービスを受けられるのである。

 現状の俺達に直接関係するところでは、同盟内での仕事にギルド経由で報酬を支払えるトコだな。具体的に言うと、草薙の剣所属のユゥリンが盟主の指示でシャロの護衛を全うすれば、その時に同盟から支払われる報酬をギルドが管理してくれるのだ。

 その他、稼ぎのいい冒険者は同盟を組んだり入ったりすれば税関連で多少の優遇を受けられる。迷宮稼業を続けるならば、どこかの同盟には入るものだと先輩冒険者であるニーナさんが言っていた。かくいうニーナさんも淫魔オンリー同盟に入ってるらしい。まぁ俺は人間関係の束縛が嫌で流れの迷宮潜りやってたんだけども。

 

「……と、こんな感じだな。同盟紋の発行もできるが、どうする? これ使って商売する同盟とかもあるぞ。そんな稼げねぇらしいが」

「それはまた今度で」

「ああぁそうだ。盟友の募集はどうする? 集めたいなら面接に使う部屋貸せるぞ?」

「大丈夫です。そのつもりはないので」

 

 そんなこんなで登録完了。祝え、新進気鋭の冒険者同盟“草薙の剣”誕生の時である。

 今のところ、メンバーは俺とユゥリンだけで、以降の新規加入メンバーは俺の関係者オンリーの予定である。なので、外部からの盟友は受け入れない方針だ。完全身内経営である。

 

「うん? まぁお前からしちゃ他所から知らねぇ奴が入ってくるのは面倒なだけか。新入りを支援してくれりゃギルドからの報酬なんかもあるが」

「はい。それも大丈夫です」

 

 手続き終えて、ギルドを出る。今日は他にも用事があるのだ。

 次、俺達は止まり木協会西区支部でシャロの護衛計画について打ち合わせ。ちなみに、当のシャーロットは中央区でルーン関連のお仕事中。

 

「奇遇だなイシグロ殿。たまたま西区に用があってな。盟主である私が直接応対しよう。その方が簡便に話が進むだろう。うむうむ」

 

 すると、偶然にも西区支部には止まり木同盟盟主であるアリエルさんがいらっしゃったので、盟主同士での協議と相成りスムーズに話を進める事ができた。

 シャロの護衛計画については予め彼女から止まり木に話を通してもらっているので、何事もなく契約完了。以降、シャロが王都にいる間はユゥリンが彼女の護衛をする運びとなった。

 

「と、ところで、イシグロ殿はこれから用事かな?」

「はい。この書類をギルドに届けなくてはならないので」

「うむ、そうか……」

 

 そんで出来上がった書類をその日のうちにギルドにお届け、これにて全ての契約が完了した訳である。

 以降、ユゥリンはイシグロ・リキタカを盟主とする同盟“草薙の剣”から、ギルドを通して給料が支払われる訳だ。

 

 

 

 そのまた翌日である。

 ユゥリンと一緒にシャーロットの家へ。スケジュール通りなら、今頃シャロは中央区の魔導院から帰ってきているはずだからだ。そこでボディーガードの挨拶をしようというのである。

 そんで魔導チャイムをプッシュ。一回鳴らしても出なかったので間隔空けて何度か押すと、やがてガチャリと鍵が開いた。

 

「お~ぅ、入ってくれや……」

 

 そうして現れたのは、不死者(アンデッド)めいて生気のないシャーロットだった。

 モフモフの赤髪はボサボサで、ルビーみたいだった深紅の瞳がセーヌ川の如く濁っている。ついでに何だか酒臭く、頭痛がするのか片手で頭を押さえていた。

 軽度の二日酔いです。本当にありがとうございました。

 

「どうしたん? 治癒魔法使おか?」

「ああ、ちぃとばかし呑み過ぎたんでぇ。すまねぇが、後で一発やってもらっていいか?」

「万能のルーンもお酒の飲み過ぎには無力なんですねぇ」

 

 どうやら、昨夜魔導院から帰ってきてからこっちストレス発散に暴飲暴食していたらしい。仮にも銀細工ボディを手に入れたのに未だ酒を引きずってるあたり、相当な量を摂取してしまったようである。

 で、いざいざ彼女の家に入ってみたら……。

 

「「うわぁ……」」

 

 なんという事でしょう。いつの間にやらシャーロット宅が汚部屋になっているではありませんか。

 いや、厳密には汚部屋とは事情が異なる。別に不衛生って訳ではないのだ。とにかく物が散乱してて、足の踏み場が無いのである。

 一階の工房エリアと二階の住居エリアの両方に所狭しと未開封の木箱が置かれている。それなりに広いはずの部屋が今となっては狭く感じる程だった。まるで密林通販のダンボールに支配されてるみたいだぁ。

 

「うへぇ、よくこんな場所で生活できますね。掃除し辛くて余計面倒になりますよ」

「色んなトコから贈り物があってよ。断る訳にも行かねぇからさ……」

 

 悲しい哉、部屋に物が散乱する状況には共感できてしまう。俺とて前世借りてたアパートには大量のフィギュアやグッズが置いてあったのだ。電子書籍に切り替えて尚、本棚には床が抜けるくらい本並べてたし。

 

「ぴえっ……!? お皿出しっぱなし! 服脱ぎっぱなし! シャロさん貴女どんな神経してんですか! せっかく便利な魔道具があるのに、なんで使ってないんですか!?」

「面倒臭くってよぉ……」

「食べかす見るに、飯は殆ど酒のアテみたいだな。空き瓶だけ綺麗に並べてんの草生える」

 

 これまた、家事を後回しにする気持ちも分からなくはなかった。洗濯物を放置する感覚も理解できる。一人暮らしをするシャーロットは、何だか他人の気がしなかった。

 

「何はなくとも片付けましょう! こんなトコにいたら足先からカビが生えてきちゃいますよ!」

 

 言いつつ、ユゥリンはテキパキと掃除の準備をし始めた。

 

「とりあえず箱開けようか」

「ああ。なんか情けねぇとこ見せちまったな」

 

 当然、俺も手伝う。散乱している荷物を分別し、要る物は倉庫に運んで行った。要らない物はポイーで。

 

「見て下さいこの洗濯魔道具! 超が三個付くくらいの高性能っぷり! やっぱり本場ラリスの魔道具は凄いですねぇ! うちにも欲しい~!」

 

 一方、新米護衛官ユゥリンは最新式の魔導家具を駆使して素早く部屋を掃除していた。

 放置されてた服を畳み、放置されてた皿を洗い、綺麗になった服を干す。自称怠け者で家事炊事を面倒臭がっているユゥリンだが、それはそれとして生活環境は清潔にしたい派らしい。

 

「もう家事もユゥリンにしてもらう?」

「流石にダメだろ、ユゥリンはケナズ家の使用人って訳じゃねぇんだし」

「あ、いいですよ。ワタシ、護衛だけじゃ貰い過ぎなくらい貰ってるんで」

 

 という訳で、ユゥリンにはシャロの護衛の一環として護衛対象の家事を代行してもらう事になった。

 ついでに料理もしてもらおうとなり、最近乱れがちだった護衛対象の食生活も少しずつ改善していく所存。曰く、最近は酒とつまみしか口にしていなかったらしい。はっきり言ってそれって異常だからお前死ぬよって感じである。これからはユゥリンシェフの野菜ましまし健康食コースを食してもらおう。

 

「じゃあ、これからよろしくお願いしますね。あとお酒は程々に。シャロさんに死なれるとワタシ職失うんですから、健康的に長生きしてください」

「お、おう。なんか護衛に管理されてる気がするぜ……」

 

 新居同然になった部屋で、改めましてのご挨拶。その後は契約内容の確認をしておしまいである。

 

「いやぁ場末の貧乏料理屋から要人護衛官への転身って感じですねぇ。休みもいっぱいあるし、お金もいっぱい貰えるなんて、本当に有難い限りです。ふへへ……」

 

 帰路、ユゥリンは例のにっちゃりスマイルを浮かべていた。

 怠け者で面倒臭がりで可能な限り働きたくないらしいユゥリンだが、仕事は仕事で真面目にやるあたり好感持てるし共感できる。

 

「ただいま~。大黒柱に進化したワタシが帰ってきましたよ~っと」

「おかえりなのじゃ」

「あれ? どっか出かけてた?」

「ええ。イリハとグーラがね」

 

 帰宅である。皆に温かく迎えられ、ユゥリンの就活成功をご報告。そんでお次はチィレンさんの就活を支援する予定だ。

 言うて王都はその日暮らしでいいなら働き口に困る事はないという話だ。勿論、ちゃんとしたとこで働きたいならコネという名の信頼が必須な訳だが。まぁ暫くはユゥリンのヒモになるのもいいと思う。焦らず急がずゆっくり探そう。

 で、その旨をチィレンさんにお話したところ。

 

「あ、それならさっき決まったよ」

「はやっ! さ、流石はチィ姉というべきか何というか……」

「疾風迅雷やね」

 

 あっけらかん。チィレンさんは既に仕事を見つけていた。

 詳しく聞いてみると、なんと彼女は初王都祝いで行った飲み屋の店主と交渉し、ウェイトレスの内定をゲットしたというのだ。で、本日出かけて給仕スキルを見せて即採用と。その護衛にグーラとレノがついて行ってたらしい。

 王都とはいえ場末の酒場は治安が悪いが、あそこは高級店なので迷惑客の出現率は低いはず。ちゃんとその辺も考えてたようだ。

 

「凄かったですよ。チィレンさん、お店の人とあっという間に仲良くなっちゃって」

「見習いなのにチップもガンガン貰っとったのぅ」

 

 やっぱ世の中コミュ力なんだなぁと思いました、まる。

 

 

 

 そのまた翌日である。

 

「ここがワタシ達のハウスですね。あ、男連れ込む時は先に言ってね。リキタカさんの家に避難するから」

「しないわよ。イシグロさん、何から何までありがとうございます」

「いえ、大丈夫ですよ。それより魔道具はどうしましょうか。何なら立て替えますよ」

「いえいえ、大丈夫です。当座は貯蓄で何とかして、少しずつ揃えていきますので」

 

 麒麟姉妹は第三王子に用意してもらった部屋にお引っ越しした。

 場所は同じく王都の西区で、シャーロット宅の近くの集合住宅だ。この周辺は治安の良いエリアで、衛兵の巡回もマメなのでご安心。

 部屋の広さはそんなでもないが、二人で住むなら充分だろう。嵐極拳の鍛錬は公園でも出来るしな。

 

「さて、一応全部済んだかなと」

 

 麒麟姉妹をお部屋に残し、帰路は一人でぶらりである。隣に誰もいない状況は久しぶりだ。

 ユゥリンに仕事を斡旋し、諸々の手続きをやり終えて、上京した二人に社会的立場を用意できた。ユゥリンには余裕ある生活を送れるくらいの給料を渡す事になってるので、姉妹が金に困る事はないだろう。

 

 ひとまず、俺のやるべき事は終わったと言える。

 ならば、後はやりたい事をしようと思う。

 

「久しぶりだな旦那ぁ! へっへっへっ! もしかして、また新しい注文かい?」

 

 まず行ったのは、ドワーフみたいなエルフこと武器工匠・アダムスが経営するオーダーメイド専門武器店だった。

 例によって武器をメンテに出し、同時に新しい武器を注文した。クーシェンでの戦いを経て、次にクリアすべき課題を見出した為である。

 これまた件の課題について相談し、適当な武器を検討していると、例の如く夜遅くまでかかってしまった。一人で来て正解だったな。

 

「イシグロの旦那! 帰ってきてたのか! ちょうど空いてたところだぜ! とりま座ってくれよな!」

 

 そのまた翌日は戦車工匠・ケイン氏のところに行って、戦車のメンテ依頼と新たなる空戦車の製作を注文した。

 というのも、クーシェンからの帰り道で思い知ったのだが、現状の空戦車だと我が愛するロリ達全員を乗せる事ができないのだ。これは由々しき事態である。

 場合によってはチィレンさんを含めて草薙全員大移動をするかもしれないので、全員乗れるようもう少し大きいのを買おうと思ったのだ。勿論、これはホウレンソウで決まった事である。

 

「了解だ! 最近は自転車関係の仕事ばっかだったからな! 久々の戦車造り、腕が鳴るぜ!」

 

 そのような注文をすると、ケイン氏は快く承諾してくれた。

 ラッキーな事に、今回の注文には以前の空戦車で培ったノウハウが利用できるらしく前より安く済むそうだ。既存の空戦車がセダンだとしたら、新しいのはミニバンになる予定である。

 

「ふぅ~、散財の罪悪感~」

 

 武器と戦車の注文で、ポケットマネーが溶けていく。気持ち的にはハクスラ金策で補填したいけど、クーシェンの一件から働き詰め故我が一党は休暇中だ。

 迷宮探索は新武器が出来た時に再開しようかな。それまではゆっくり英気を養おう。やりたい事はまだまだあるしな。

 

「言われた通りのモン仕上げたけどよぉ、本当にこれで良かったのかい? 後々文句とか言わねぇでくれよ?」

「いいえ、完璧ですよ。ありがとうございます」

 

 その為に、俺は金物屋で予てから注文していたブツを受け取った。

 武器でも防具でもない特注品である。

 

 皆、喜んでくれるといいんだが。

 

 

 

 

 

 

 思い返すと、俺がこの世界に転移してから実に三年の月日が経過していた。

 一年目の春にルクスリリアとエリーゼの二人と出会い、同年夏にグーラと邂逅。冬にはエセジパングっぽい国で狐っ娘のイリハをお迎えした。

 二年目の春は淫魔王国で魔導人機に乗ったレノと出会い、同じく秋にお迎え。三年目の冬にシャーロットを迎え、同じ年の秋にユゥリンと出会った。

 そして現在、四年目の春である。

 

 JCがJKになる時間、俺は異世界で冒険者をやっている計算だ。

 その間、冒険者の俺は冒険だけをしている訳ではなかった。時に現代知識で無双すべく挑戦し、その多くに挫折したりしていた。ぶっちゃけ半分以上遊びである。

 

 中でも頑張っていたのが、前世俺が食べてた料理の再現だ。

 カツにコロッケにその他色々。再現レシピの多くはご好評を頂いて、美食貴族にレシピを売った事もある。

 で、この日も新たなる料理の一つをお披露目しようじゃないかって話だ。

 

「よし、やろう」

 

 王都に帰って数日後、借りてる屋敷の厨房で、俺は夕食の準備を開始した。

 用意したのは小麦粉と鶏卵と、事前に取っておいたお出汁である。

 これらを使って、アレのタネを作ろうというのである。

 

 やり方は単純で、それでいて存外難しい。

 まずボウルに薄力粉っぽい粉を入れ、出汁と卵を加えてかき混ぜる。塩と醤油と米酒もプラスし更に混ぜ混ぜ。我が家は食べる量が多いので、使用するボウルもグーラ仕様だ。

 うん、まぁ混ぜるだけなんだけどね。美味しくするにはこれが意外と難しく、けっこう試行錯誤したんだよね。

 

「こんなもんか」

 

 ややもあり、生地が完成した。

 複数並んだボウルの中には、黄ばんだホワイトのサラサラ液があった。

 一旦これで完成である。

 

「おまたせ」

「ううん、今来たとこッス♡」

「此処お家なんですけど」

「おう亭主殿! 先に始めちまってるぜ!」

「ふへへ、タダ飯ありがとなーす」

 

 例のブツを中庭に持って行くと、各々くつろいでいた皆が迎えてくれた。

 現在、屋敷の中庭にはシャロと麒麟姉妹を含むフルメンバーの姿があった。

 そんな彼女達の前で準備を始める。屋台用のコンロ魔道具を置き、その上に金物屋で受け取った鉄板をセット。机を用意して、その上に食材を置いていく。

 

「ずいぶんと変わった形の鉄板ね」

「これで何が作れるんかのぅ?」

 

 宴の用意を進めていると、皆さん俺が持ってきた鉄板を興味深そうに見ていた。

 件の鉄板には小さなクレーターが等間隔に並んでおり、そうと分かっていなければ何に使うのか分からない造形をしていた。

 

「よく見てな」

 

 準備完了、調理開始である。

 鉄板を温めつつ刷毛を使って全穴ぼこに油を敷いて、続いて先ほどのボウルの中身を注いでいった。

 そこに斥候ジョブ由来の投擲スキルで穴の数だけ刻んだタコ脚を投入する。

 

「わぁイシグロさん器用ね。そんなポイポイと」

「ん、四本指で四つ投入。効率的」

 

 ジュージュー焼ける生地とタコ。香ばしい匂いが広がるにつれ、皆の期待が高まっていくのが分かる。

 ちなみに、淫魔王国でタコはペットとして買われているそうだが、それはそれとしてタコを食べる文化はあるらしい。

 

「美味しそうですね! これを掬って食べるんですか?」

「いいや、むしろここからが本番」

 

 ここで取り出したるは、これまた特注で注文したピックである。

 その先端を液溜まりと化したクレーターに突き刺して、焼き上がったタネをクルッと裏返した。

 

「「「おぉ~」」」

 

 歓声が湧く。鉄板で焼かれていた液体が、くるりと反転しボール状に成形されたのだ。

 そのまま、他のもヒョイヒョイひっくり返すひっくり返す。育ててよかった斥候ジョブってな具合で。

 そんで完全に球形になったブツを手漕ぎボート型の器に計八つほど投入し……。

 

「はいどうぞ」

「わぁ~、なんだか可愛いですね!」

 

 たこ焼きの完成である。

 残念ながら例の黒いソースはなく出汁強めの味付けなので厳密には明石焼きの方が近い気もするが、ともかく異世界たこ焼きだ。誰が何と言おうとコレは異世界たこ焼きなんだ。

 調味料は複数用意してある。好きなの付けておあがりよ。あとカツオ節はあるが、青のりはない。地味に天かすも用意しているので、天かす過激派も安心してほしい。刻みネギも沢山ありますぜ。

 さぁ、(タコパ)のはじまりだ。

 

「いただきます!」

 

 記念すべき第一弾。興味津々といった風のグーラはツイン爪楊枝に刺したたこ焼きに醤油ベースのタレを付けて、勢いよくパクッと頬張った。

 

「んぅ~! ご主人様、これとっても美味しいです!」

 

 瞬間、褐色ケモミミ黒髪文学少女ロリは幸せそうな表情を浮かべた。耳ぴこぴこ、尻尾フリフリで実に満足そう。

 

「ぶほぉ!? 熱ッ! あっつぅ! 今口ん中にダメージ入ったッスよ!」

「そりゃ熱いからな。レノも気を付けろよ」

「ん、ありがとう。ちょっと冷ましてから食べるね」

 

 どんどん作り、どんどん配る。俺はたこ焼きを作る事だけに特化したたこ焼きマシーンと化した。

 一口で平らげるグーラに対し、レノは小さな口でハムハム食べている。熱耐性のないイリハとユゥリンはたこ焼きの熱に苦戦して、口の中でハフハフやっていた。そんな二人をチィレンさんが微笑ましそうに見ている。

 

「んっ! かぁ~! いいなぁこれ! 酒にも合うじゃあねぇの! 外がカリカリしてんのがまたいいんだ!」

「そうね。これに一番合うのはラリスビールかしら」

 

 たこ焼きは酒呑み二人にもご好評で、シャロはハイボール、エリーゼはビールのアテにしていた。

 俺も俺で酒を呑みつつ、たこ焼きの作成を継続した。うん、いい感じで外カリ内フワになってる。

 

「こんな串一本でどうやって回してんスかね?」

「やってみるのじゃ! 主様、ちょいと借りるのじゃ!」

 

 たこ焼きを味わった後はその工程の方にも目がいったようで、皆もたこ焼き作りにチャレンジする事に。

 なので、やってみせた俺は言って聞かせてさせてみた。

 

「あっ! すまねぇ失敗しちまった!」

「ゆっくりやると余計難しいと思いますよ。無駄な力入れずに、こんな感じです」

 

 面白いもんで、技量ステータスが高いはずのシャロは何度もたこ焼き回しに失敗していた。一方、イリハとユゥリンは見稽古でマスターし、俺より綺麗なたこ焼きを焼き上げていた。

 意外と上手かったのがルクスリリアで、魔眼を併用しつつ綿密な計算のもとチャレンジしたレノは大失敗して「何故、何故?」と首をかしげていた。

 ちなみに、エリーゼ作のたこ焼きは半もんじゃと化していた。もちろん美味しく頂いた。

 

「で、こいつはこういうのもできる」

 

 と、ここに来て味変カンフージェネレーション。空いた穴に【清潔】をかけ、そこに丸っこく成形した肉団子を投入。たこ焼き機で作るハンバーグのエントリーだ。

 他にもネギやキャベツなどを混ぜた野菜増し増しタネや、唐辛子入りの激辛タネも用意。変わり種にオムレツとかも作っちゃって、可愛らしい一口サイズの料理に皆さんお喜びだ。

 

「美味しいです! 美味しいです! 美味しいです! 美味しいです!」

 

 ちな、出来上がった料理の多くはグーラが美味しく頂きました。

 

「これ次にフライシュ領に行った時にお出ししましょうよ! 屋台料理にぴったりだと思います!」

「ああ。その時はお好み焼きとかもんじゃ焼きとかも紹介するか」

「それも日本の知識ですか? リキタカさんの故郷はお料理が発展してるんですねぇ」

 

 今回はたこ焼き用の鉄板を作ってもらったが、平たい鉄板さえあればお好み焼きとかもんじゃ焼きとかも出来るか。

 まぁでも魅惑の漆黒ソースが再現できてないんで、どうしてもモドキ感は残るのだが。残念ながら、俺にその手の知識チートは搭載されていなかった。

 

「イシグロさん、本日はありがとうございます。ううん、クーシェンからずっとお世話になりっぱなしだから、ありがとうございますだけじゃ足りないかな」

「いえいえ、お気になさらず」

 

 そうして楽しいタコパを続けていると、皆に焼き係を任せた俺にチィレンさんが声をかけてきた。

 確かに、端から見れば彼女等姉妹に対する俺の施しは破格である。けど、俺からしたら別に大した事はしてないのだ。嫌味じゃなく、マジで。

 なんたって、俺にとってはロリの笑顔が最高の報酬なのだ。可哀想なのは抜けないのである。

 

「ラリスに来て思ったんだけど、イシグロさんって良い意味で変わってるんだね。ラリスの冒険者って、もっとその日暮らししてると思ってたから」

 

 実際、冒険者は刹那的に生きている人が大半だ。少し留守にするだけで、つい先日まで挨拶を交わしていた新人が消えるなんて珍しくないのだ。

 未だに生き残っているのは本当に強い人だけで、そういう人もいつ死んでもいいとばかりに好きなものを好きなだけ食って宵越しの銭は持たない傾向にある。

 迷宮ドリームに成功してすぐ引退するのが真に健常な人なのだ。それでも好き好んで迷宮潜りをやってる人は、やっぱり人として箍が外れているのだと思う。

 

「だから安心できるんだよね。前にも言いましたが、ユゥリンのこと……よろしくお願いしますね。イシグロさん」

「はい。チィレンさんこそ、ユゥリンの為にも幸せになってください。そうじゃないとユゥリンさんが幸せになれないと思いますので」

「ん~まぁ、そうね~。いつかね~」

 

 任されたので、即快諾。

 

「それはそれとして、ちょっとお願いがあるんだけど……」

 

 かと思えば、チィレンさんはもじもじし始めた。

 彼女の視線の先、そこには我が家の風呂があった。

 

「今日、このあと蒸し風呂使わせてもらっていい?」

「ええ、ご自由にどうぞ」

 

 どうやら、彼女はたった数回の使用でサウナにどっぷりハマッてしまったようだ。サウナ仲間ができて嬉しい限り。ちなみにユゥリンもドハマリしている。

 ふと、サウナと聞いて思い出した事があった。

 

「今度、皆で東区にある大浴場に行くんですけど、チィレンさんもどうですか?」

「あー、あの大きいの?」

 

 慰安の為、シャロの予定が合う日に皆でスーパー銭湯に行こうと画策していたのだ。

 目的地は以前のニカノル大浴場ではなく、東区にある大浴場だ。西区のトコとは別の魅力があるらしい。

 

「ありがとね。けど、止めとくわ」

 

 そこでチィレンさんも誘ってみたが、断られた。ユゥリンは姉がいる方が嬉しいと思うのだが。

 

「私はユゥリンのお姉ちゃんだからさ」

 

 そう言って、チィレンさんはたこ焼きタイムアタックで優勝するユゥリンの笑顔を見ていた。

 彼女の意図を、俺は惑わず受け止めた。

 

「ご主人ご主人! 焼きに入れるタコが無くなっちゃったッス!」

「それはどうかな?」

「ひょ?」

 

 こんな事もあろうかと、チーズやイカやウインナーなども用意してあるのだ。

 第二の味変として、ボール状のおにぎりも用意した。たこ焼き型焼きおにぎりである。味噌ダレを付けながら焼くと最高にハイってやつだ。ついでに〆にはデザートのカステラまで用意してあるんだぜ。

 

「これはまた可愛い卵糖(カステラ)じゃのぅ! 一口で食べられるのが良いのじゃ!」

「カステラも美味しいです!」

「へへっ、デザートまで頂いちまって。本当に甲斐性の塊だな亭主殿は」

 

 こうして、その日の夜は皆でタコパをして過ごすのであった。

 実に平和である。こんな日がずっと続けばいいし、俺はその為の努力を惜しむつもりはなかった。

 

 今日はとっても楽しかった。

 明日はも~っと楽しくなるよね。

 ねっ、ロリ太郎。




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