【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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飛び出して、炉利魂島

 俺が転移したこのカジュアル風バイオレンス異世界において、湯を使った入浴は日常であると同時に最高の娯楽であるらしい。

 何故ならば、異世界人の魂に入浴文化が強く根付いているからだ。

 それは血の気の多い迷宮潜りも同様で、例え如何にも荒くれ者でございって冒険者でも不衛生な奴は見かけないくらいと言えば伝わり易いか。こっちの肩パッド世紀末モヒカン君は清潔なのだ。

 

 故に、この世界の風呂は洗練されている。中でも異世界スーパー銭湯はマジで凄い。

 どれくらい凄いかと言うと、質と量共に現代日本のソレを軽く凌駕しているくらい凄いのだ。

 サウナや露天風呂は当然として、ファンタジー異世界なのに流れる温水プールが普通にある。何より、プラシーボ効果ではなく実際に心身を全快にする風呂が存在しているのだ。もはやSF世界の医療用ナノマシンポッドである。

 

 異世界の入浴文化には地域差があるようで、ラリス人は芸術的な造形の広い風呂を好み、リンジュ人は静かな天然温泉を好むそうだ。アルヴの森は清浄な泉にザブーンだったな。あと竜族はサウナ大好きらしい。

 ともかく、異世界における入浴文化はそれくらい親しまれているのである。

 

 ほな、皆で行こうとなったのだ。

 テーマパークに行くみたいだぜ。

 

 

 

 在る春の日の事である。

 シャーロットを含めたチーム草薙は、王都東区にある“テオファノ大浴場”にやってきた。

 朝からタクシー馬車に乗って直通移動。受付してからお着換えし、黒一点たる俺は一足早く脱衣所すぐの広場で待機中。

 

「う~ん、股間がスースーする……」

 

 そんな中、俺は脱衣のついでにテオファノ大浴場の醍醐味たるオプション水着を購入し、現在進行形で着用していた。

 一言で言うと、葉っぱの腰蓑である。やったー的な葉っぱ一枚スタイルではなく、重ねて束ねた葉っぱをスカートみたいにして巻いてる感じだ。なんだっけ、なんか南国舞台の映画で見た事あるんだよな。

 腰蓑の着用者は俺だけではなく、広場にいる人の半数は葉っぱ族だった。全身入れ墨褐色マッチョのおじさんはネイチャーな腰蓑が実によく似合っているし、グラマラスな魔族お姉さんも葉っぱの水着で大事なところを隠していた。

 

「これも異世界情緒か」

 

 ネイチャー腰蓑もそうだが、テオファノ大浴場は如何にも南国っぽい雰囲気に満ちていた。

 時たま通っていたニカノル大浴場が古代ローマのテルマエだとしたら、こっちは自然いっぱいの南国風。広場の地面はきめ細かい砂場になってて、等間隔にヤシっぽい木が聳え立っている。四方を囲う壁もそれっぽく削られた茶色の岩壁で、どことなく3Dアクションゲームの侵入禁止壁みたい。

 そして、雰囲気が穏やかで賑やかだ。広い砂場スペースでボール遊びをしている人がいれば、集団で踊っている一団もいる。お立ち台の上では、唄翼族の巨乳美女が美しい歌声を響かせていた。

 

「ご主人、おまたせ~ッス」

 

 怪しまれぬ程度に周囲を眺めていたら、そこに草薙の皆がやってきた。

 皆の姿を目にした次の瞬間、俺の心は青く青く晴れ渡った。この日の空のように。

 

「ご主人様、いつもの水着ではありませんが……どうでしょうか?」

「安心なさい。顔を見れば一目瞭然よ」

「すまんのぅ主様、わし等に合うの探しとったら遅くなってしもうた」

「な、なんか恥ずかしくねぇか? 大衆の面前でよ……」

「リキタカさん以外誰も興味ないらしいんで緊張するだけ無駄ですよ、シャロさん」

「ん、これも異国情緒」

 

 それもそのはず、俺と同じく皆もテオファノ大浴場の醍醐味たるネイチャー水着を着てくれていたのである。

 各々、何というか南国チックなのだ。いつも通り露出度が高いルクスリリアに対し、エリーゼは丈の長いドレスのような衣服を纏っている。色んな文化がごちゃ混ぜになっている、まさにカオス状態だ。だが、このカオス具合こそがいいのである。可愛いは正義。可愛ければ何でもいいのだ。

 ちなみに、全部子供用である。それは御年四桁のシャロさんも同様である。年甲斐なくて可愛いね。

 

「本当に似合ってるよ。サイズだけじゃなくて、デザインも皆に合うよう吟味してくれたのが分かる」

 

 そのまま滔々と本心からの賛辞を伝えると、皆さん照れ照れと喜んでくださった。最高である。

 そんなこんなで合流したので、早速銭湯エリアへゴーである。ネイチャーな我々は件区画の入り口へと足を進めた。

 

「雨漏りしてますよ、ここ」

「雨漏りっていうかシャワーだな。アルコール消毒でもされてる気分だ」

 

 広場から銭湯エリアへ続く通路、そこは薄暗い洞窟になっていた。

 洞窟の道中は前世水泳の授業で味わった地獄のシャワーみたいなのを浴びつつ進み、やがて出口が見えてきた。

 

「ここを潜るのか」

 

 終点兼出口兼入口に辿り着く。穏やかな滝と言おうか。銭湯エリアの入り口には水のベールが張られていた。

 緊張こそしないが、否応にも身構えてしまう。俺達は意を決してお手々繋いで滝を潜った。さながら闇魂シリーズのボス戦のように。

 

「おぉ~」

「なんだか温かいですね!」

「み、見たことない景色なのじゃ……!」

 

 薄暗い洞窟を抜けた先、そこはまさしく南国の森林リゾートだった。

 緑いっぱい木々いっぱい。太陽を反射する広い湖に、絶えず流れる綺麗な川。ぱっくり切り取られた青空からは、暖かい陽光が降り注いでいる。中心の湖には水上コテージがあって、そこはオープンカフェみたいになっているではありませんか。

 大衆浴場とは何だったのか、ニカノル大浴場と比べて雰囲気がまるで違う。デッカい花もヤシっぽい木も雰囲気ばっちりで素晴らしい。木登りして金のバナナを探したくなるね。

 

 テオファノ大浴場というように、当然として風呂もある。

 壁際の丘を少し登った先には、湖を一望できる温泉があった。これまた岩を繰り抜いて造ったかのようなデザインで、ここにも匠の拘りが感じられる。

 

「あそこにも洞窟あるッスよ。なんでいちいちエリア分けてるんスかね?」

 

 見れば、出入り口から見て東西南の方に洞窟があり、それぞれ別エリアに繋がっているようだ。

 ここは中央、露天風呂&湖エリア。最も人が集まる場所だ。ハンモックで丸くなってる猫人母娘に、トロピカルジュース片手に日光を浴びている天使。水上コテージのバーで酒を呑む紳士や、滝に打たれながら正拳突きをしている獅子人集団なんかがいた。見てるだけで楽しくなる光景である。

 

「せっかく銭湯に来たんだから、風呂に入ろうぜ」

 

 何はなくとも風呂である。とりあえずとばかりに入り口近くにある小さな滝で身を清め、さっそく丘の上の風呂に向かった。

 そこは海外の天然温泉って感じで、それこそたこ焼き器みたいなクレーターに湯が流れている構造をしていた。湯の色は水色で、なんだか幻想的である。

 

「んぁ~、疲れが溶けてく感じがあるぜぇ~。ここに酒があったら完璧なんだけどなぁ」

「今日はお酒呑まない約束でしょう。自制してください」

 

 湖の見える露天風呂である。空いてる所があったので、そこにみんなで入浴した。

 同盟単位で風呂占有。俺は両手にロリで勝ち組気分を満喫していた。最高のロケーションで、最高のシチュエーションだ。まさに勝ちまくりモテまくりである。

 

「へぇ、ここにも水練用の区画があるんですね。ニカノル大浴場にあった激流水槽もあるのでしょうか」

「あれは怖いのじゃ。二度と入りたくないのじゃ……」

「つかレノとエリーゼはいい加減泳げるようになるべきッスよ。普通に」

「や、手足をバタつかせて移動するなんて非効率的。天使特性の水中移動で充分。必要性を感じない」

「いざとなったら沈んで歩くわ。竜族は息をしなくても戦えるもの」

 

 身体が温まってきたところで軽く散策。遊園地にあるような案内板を前に、俺達はアレコレお話していた。

 見るに、やはり此処はニカノル大浴場とコンセプト自体が大分異なる。あっちが湯を楽しむところだとすれば、こっちは自然を楽しむ場所なのだ。実際、湯の数よりレジャースポットのが多そうだ。

 

「これに入るのかしら? 余計に汚れそうなのだけれど……」

「意外と気持ちいですよ? それに何だか落ち着きます。ふへへ……」

「凄まじい量の土氣じゃな。ここで瞑想したら何か目覚めそうじゃ」

 

 せっかくなので、件の大浴場にはない湯に入ってみる。

 第一弾は某ねるねるお菓子みたいな色の泥風呂だった。どうにもゲテモノ感は拭えないが、入って見たら意外とサラサラしてて気持ちがいい。

 

「ここも見た目がやべぇな。本当に入っていいやつなのか?」

「見てくれほど熱くはないッスよ。この泡がゾワゾワして気持ちいいッス」

「ああ、でも冒険者以外の人には辛いかもしれません。温度はそれなりなので」

「ん、迷宮潜りだけが入れるお風呂……」

 

 泥を落としての第二弾は、小さな火山みたいな形の火口風呂。まぁ言う程熱くないし、ぶくぶく浮いてくる細かい泡が良い感じである。油じゃないがメンズ塾名物みたいだ。

 

「ん、この場所は街中より光力が回復しやすい気がする。なんでだろう?」

「銭湯全体に陽の氣が集まっておるんじゃよ。見た感じ、あの変な形の木が集めとるのじゃ」

「清浄樹の一種ね。ニカノル大浴場にあったモノとは大分違うようだけれど」

 

 どうやら、広場にも生えてたヤシの木っぽいやつは清浄樹の亜種らしく、水の浄化と同時に空間全体を温めてくれているらしい。ホント何でもありだなこの世界。ファンタジー舐めんな地球である。

 

「ああ、空手の稽古で入った事あるよ。こういう滝」

「つべたっ! 普通に水ですねこれ!」

 

 正拳突き集団が退いた後、俺達も大きな滝に打たれてみた。

 滝に打たれながら、座禅を組んで目を瞑る。そうしていると何となく悟りが……うん、全く開かん。俺、煩悩の化身だしね。多分、俺が仮面外したり頭に銃撃ったりして出て来るのはマーラ様だと思う。いや、俺はあそこまでご立派じゃない。ご立派過ぎたら入らないからね、ハハッ。

 なんて考えてたら、無性に各方面に申し訳ない気持ちになった。巫女のジョブも生えそうにないし、私いじけちゃうし。

 

「アレがテオファノ大浴場の蒸し風呂かしら?」

「グウィネスの放浪部族みたいですね。あるいはディングの魔族文化でしょうか」

「ご飯食べられるトコもあるッスよ。やっぱ好きなんスね~」

 

 すっかり縮んでしまったお粗末君をご立派様に戻すべく、洞窟を潜って別エリアへ。

 サウナを求めて入ったそこはキャンプ場みたいな広大な芝生区画になっており、売店や焚火台の他にいくつか天幕が設えてあった。で、その天幕がサウナになってるらしい。テントサウナなんて初めての経験である。

 

「ふぅ、熱ぅ~」

「この暑さがいいんだ」

「やっぱり、お風呂といったら蒸し風呂よ……」

 

 いざいざサウナテントにエントリーである。これまで、俺達の中のサウナ好きは少数派だったが、シャロとユゥリンが加勢してくれたおかげで拮抗している。

 時に、現在は七人のロリに一人のロリコンという状況。普通にぎゅうぎゅうである。アロマっぽい蒸気が湧きたつ中、狭いテントに皆の匂いが充満してきた。

 拙い、性欲をもてあます。いくら銀細工ボディでも血が下にいくとヤバい気がする。諸事情あって今日の上様は暴れん棒なのだ。

 

「あれ? ご主人、もうその気なんスかぁ?」

 

 なんて考えつつサウナに集中していたら、ルクスリリアが俺の腰蓑をガサゴソし、やがてヤシの幹を触ってきた。おめでとう、冷えて縮んだ友達は完全体になっていた。油断してると究極体だ。

 が、ここは心頭滅却のターンである。強いて快感を無視していると、突然頬に手を当てられた。サウナにあってヒンヤリハンド、即ちエリーゼの手である。

 

「こっち向きなさい。ん、ちゅ……♡」

 

 そのまま横を向かされて、唇を重ねられた。

 互いの唇の柔らかさを感じるような優しいキスである。普段ならこのままベロチューに移行するところ、今回は唇同士の触れあいだけで終了してしまった。

 

「おいおい、ここ銭湯だぞ」

「誰も見ていないわ。密室を楽しみましょう?」

「ならボクもお願いします。はむ、ちゅ~♡」

 

 確かにここは密室で、誰も何も見ていない。

 エリーゼに促されるまま、俺は一人一人順番にキスを交わしていった。

 

「ちゅっ、ちゅぅ♡ ちゅぅぅぅぅ……♡ きひひ♡ 続きはお預けッスよ♡」

 

 ルクスリリアとのキスを終え、最後にぺろりと唇を舐められた。

 言われた通り、続きは後の楽しみに取っておこう。それはそれとして、立派に育った愛息を如何にして鎮めようか。

 仕方なく、俺は目を瞑って広場にいたグラマラス美女を思い浮かべるのであった。スゴイ・シツレイ!

 

「冷たっ! が、これがいいんだなぁ~」

 

 それから暫く、サウナを出た俺達は井戸みたいなトコで行水し、いつものサウナルーティンをこなした。実に爽快である。

 

「っと、何か飲もうか」

「あそこの店で木の実を飲めるそうですよ。皆で飲みましょう」

「いいね、飲もう飲もう。ああいうの憧れてたんだよ、俺」

「汗かいたら水飲まなきゃいけないなんて不便ッスよね~」

「知らないんかの? 蒸し風呂の後の水が一番美味しいんじゃよ」

 

 そんな訳で、サウナ後の飲み物を得るべくそれっぽい看板の店に向かう。

 簡素な売店の横には一際大きなヤシの木があり、魔術師っぽい夜森人の兄ちゃんが店員をやっていた。実の中身を飲ませてくれるらしい。

 

「あいよ! 一個五〇〇ルァレだから全部で四〇〇〇ルァレな!」

 

 人数分の木の実ドリンクを注文すると、夜森人店員は持ってた杖でヤシの木を突いてみせた。

 すると、ヤシの幹の先端らへんにポンポンポンと実が生じ、次いでポトポト落ちてきた。

 落ちてきた木の実をキャッチした店員さんは、これまたドリルっぽい風魔法で穴をあけ、「あいよ」と言って渡してくれた。

 

「おぉ、なんか感動……」

「このまま飲むのかしら」

「そうだぜ。お嬢さん方もグイッといっちまいな」

 

 ダイナミック&ファンタジックである。ニカノル大浴場の清浄樹はクリスタルヤシで、その実も単水晶みたいだったが、こっちのはリアルココナッツにそっくりである。

 前世からコレ飲むの夢だったんだよな。天元突破の最終回を思い出すよ。

 

「んじゃ、いただきます」

 

 並んで揃って両手で持って、皆でグイッと一気に飲んだ。

 すると、どうだ。とっても甘くてフルーティ。意外や意外、ココナッツミルクかと思えばそうではなく、パイナップルジュースのような味だった。ていうか中身ほぼ液体だ。

 

「うんめぇ~」

「だろぉ? なんたって、このテオココはオイラが子供の頃から育ててたんだからな!」

 

 ともかく、サウナ上がりだけあり柑橘系っぽいドリンクがよく染みる。中でもフルーツ大好き天使さんは相当気に入ったみたいで、普段変化の少ない表情が満面の笑みになっていた。

 

「オイラの木はこの味だけどよ。他のトコなら違う味が楽しめるぜ」

「へぇ」

 

 ファンタジック・ココナッツを飲みつつ、気のいい夜森人店員からテオファノ大浴場についての話を聞いた。

 曰く、そもそもこのテオファノ大浴場はこういう環境の天津島――テオ島に住んでた鳥人文化を模したものであるらしく、そこの人達は今でも南国っぽいところで暮らしているそうだ。

 だが、そんなパラダイスが他種族に狙われないはずもなく、第二大災厄までテオ島は長らく天使族に支配されていたらしい。時代は流れて人類平和条約締結後、ラリス王国が天使からテオ島を解放し、テオ島民はこの大浴場を造ったという。

 

「そんで木々の扱いとくりゃオイラ達夜森人の十八番だろ? だから、オイラみてぇな粗忽者もこうして王都で暮らせてるって訳よ」

 

 確かに、テオファノ大浴場の従業員は夜森人が多い印象だ。実際、ふと見た先では夜森人従業員がカラフル鳥人と親しげに話している。

 

「くぅくぅお腹が空きました」

「あー、もうそんな時間か」

 

 そんなこんな過ごしていると、時間はすっかり昼食時である。

 どうやら、テントサウナのあるキャンプ場エリアでは焚火台のレンタルサービスがあるとの事で、お金を払って貸してもらう事にした。

 別途購入した食材を焼き、いざ実食。

 

「うむ! この芋、何にでも合うのぅ!」

「そうですね! 淡泊なのに味気がない訳ではなくて、とっても美味しいです!」

「こんな都会でお魚食べられるなんて、王都ってホントに何でもありますねぇ」

「ん、小骨が無いのが良い」

「これ空の島の魚なんだよな。やっぱ凄ぇよ異世界は」

「不思議と魚臭さがないわね」

 

 件の鳥人文化の伝統料理である練り芋を食べたり、テオ島で穫れる野菜や果物を食べた。異世界バーベキューだ。どれも美味しい。

 中でもテオ島の魚は絶品で、塩オンリーで焼いただけでも最高に美味しかった。なんか食べるだけで健康になれそうだ。

 

「グーラ、もっと早く泳ぎなさい」

「わかりました! はぁああああッ!」

「水中であんなに速いのおかしくないですか?」

「グーラだからな。ほら、水に顔つけてみて」

「シャロも慣れてきたのじゃ」

「まぁアタイは川で泳いでたからよヒギィ!? あだだだだ! 足攣った!」

「まったく、しょうがないッスねぇ。ほら、掴まるッスよ」

「ん、無理するからそうなる。黙って背泳ぎに集中すべき」

「浮かんでるんだよなぁ」

 

 食後、ひと休みした後は水泳エリアに行って泳ぎまくった。

 バナナボート代わりの丸太にエリーゼを乗せて、それをグーラが牽引したり。激流プールに挑戦してみたり。人生初水泳のユゥリンの練習をサポートしたり……。

 

「いい風ね……」

「ここは森人が多いですね。静かです」

「だからエリア区切ってたのか。静かなトコが好きな人もいるから」

「ん、眠くなってきた……」

 

 遊び疲れたら森林浴エリアに移動して、ハンモックに揺られて休憩である。

 遊び、休み、食べ……以下ループである。

 最高に楽しい。

 こんな贅沢な生活があろうか? いやない。

 

「まぁ結局はコレじゃよなぁ」

「プールの中でも汗かきますもんね」

 

 で、最初の温泉でリラックス。

 傾いた太陽が湖面でキラキラ煌めいている。

 遊びまくった充実感と、遊びが終わった寂寥感が胸を満たしていた。

 

「また来よう」

「ッスね!」

 

 今日もたくさん思い出を作れた。

 満足のいく休暇と言えよう。

 

 実に幸せだ。

 

 

 

 大浴場を出た瞬間、俺達の居場所は夢から覚めたように森から街に切り替わった。王都に帰ってきたって感じがする。

 こういうとこもマジでテーマパークみたいだった。

 

「あら、待ちきれないって顔ね」

「流石ご主人! 淫魔の期待を裏切らねぇッス!」

「わしもう眠いんじゃけど」

「右に同じくです。うつ伏せで寝るんで、そのまましちゃってもらっていいですか?」

「それ単なるユゥリンの希望でしょう」

「ん、光力の貯蔵は充分」

 

 だが、今日のこの日はまだまだ続く。

 遊園地の楽しみは日中だけじゃないのである。

 

「いつも思うけどよぉ。マジでやべーよな、亭主殿は」

 

 此処は東区で、ここからはナイトパレードだ。

 ラブなホテルへレッツゴーである。




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