【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告もありがとうございます。いつもお世話になっております。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
今回は一人称、イシグロ視点です。
よろしくお願いします。
俺が転移してきたこの異世界にはゲームみたいな仕様が沢山あるが、その全てがゲーム的である訳ではない。
バトルシステム一つ取っても魔物戦はターン制じゃないし、賢い魔物は盾役無視して後衛狙ってくるし、当然としてフレンドリーファイアが存在する。
特に、防御面は割とシビアである。例え専属前衛騎士であっても、抵抗せぬままザコモンスの攻撃を受けたら普通に死ねるのだ。だからこそ皆さん回避重視な訳で、大盾タンクは絶滅危惧種なのである。
畢竟、この世界における冒険者は、勇戦魔僧全員の足が速くないと生き残れないのだ。
そんな世界だからこそ、持ってく武器は浪漫よりも実用性。なので、初迷宮から今に至るまで俺は扱いやすい直剣を愛用し続けている。店売り武器で最安値だったってのが理由としては一番デカいのだが。
で、チート持ちの俺は剣をメインにしつつ状況次第でジョブや武器を変えていた。そうやって色んな武器など使っていると、浪漫や実用性とは別に自分にとっての“武器の好み”ってのが分かってくる。
どうやら、俺は片手で扱える武器が好みらしい。それは今も変わっていない。
多分だが、これは単独時代の名残なんだと思う。
超賢者エリーゼがいなかった当時は、いざという時すぐ治癒薬なり解毒薬なりを飲まないと死んでたから片手が空いてない状況は不安だったのだ。その点、両手武器や二刀流はちょっとねって感じ。
まぁそれこそ今とは状況は変わっている。仲間がいるし、戦いに慣れたし、実際俺の侍スタイルは打刀&脇差の二刀流だ。あと、ステータスがアップした事で殆どの武器を片手振りできるようになったので、多少重くても大丈夫。
グーラをお迎えしたばかりの頃の俺のマッスルは超重量大剣・ぶちぬき丸をデッドリフトのように持ち上げられる程度だったが、翌年の春には両手なら振り回せるようになっていた。
ぶちぬき丸・改になった後は再度デッドリフト化したんだけども。やっぱグーラの腕力おかしいよ。
ともかく、度重なるレベルアップで膂力ステータスが向上した俺は、多くの武器で俺好みの扱い方ができるようになった訳だ。
そうなると、好みと実用性を兼ねた上で浪漫と欲望が湧いてくる。子供の頃に夢見たバトルスタイルができるじゃないの。
話は変わるが、俺には前世から好きだった武器ってのがある。
即ち、長い刀だ。あるいは大太刀、もしくは野太刀。普通の刀も大好きだが、長いやつには別の良さがあるよね。
例えば、どこぞの片翼の天使とか、神社警備アサシンとか、超人気狩りゲーの太刀とか。中でも、やっぱり俺は王道を往く炎髪灼眼系ですねぇ。
ホモが嫌いな女子なんかいませんってのと同じで、長い刀が嫌いな男子などいませんのだ。
で、だ。銀細工ナイズドされた今の俺なら、長くて重い武器も片手で振れる。
なら使うしかねぇし、作るしかねぇよなぁ?
空中戦の適応と、団体戦への順応。当座の課題にも合っとるし、子供の頃からの夢も叶う。一挙両得でハッピーハッピーやんケ。
この世界なら野太刀も実用的やしな。
黒霧迷宮。
タイプは屋外型の上位迷宮で、見上げた空はスタートからずっと逢魔が時の赤黒固定。一方大地は不快指数カンストレベルで湿っており、一部はぬかるんで走りにくい事この上ない。
荒れた湿地のあちこちには謎の木造廃屋が点在し、腐った木々が不気味な影を作っている。
出現エネミーはゴースト系やらカラス系やら生足魅惑の半魚人等、見た目は各々異なってるのに雰囲気は統一されている。ざっくり言うと和洋中の田舎ホラー詰め合わせって感じなのだ。
ここの魔物は単体で見れば強くはないが、一律で通る弱点属性が存在しない。得意属性とか一党の方向性が特化しがちな迷宮界隈において、故にこそ上位迷宮判定をされている。
要するに、ここの踏破には一党としての総合力が求められるのだ。加えて言うとボスが確定で害悪技を撃ってくるので対策必須なのである。
逆に言うと、総合力の高い一党がしっかり対策すれば楽に踏破できるのだ。
「取り巻き出してきたぞ! 小さいの任せた!」
「ええ、任せなさい」
転移早々出て来る魔物を根切りにし、そんな感じで早速ボス戦である。
今回のゲストは偽王蝙蝠さん。見てくれは極限まで悪魔王ナイズされたコウモリで、頭に王冠なんか乗せちゃっている。あまつさえ後ろ足に巨大な王笏を掴んじゃっている始末。
偽王蝙蝠は指揮&魔術師系ボスなようで、第一形態の魔法戦の後は大量の取り巻きを召喚してくる仕様だ。金ぴか英雄王の財宝めいてスクランブル発進してきたのは、これまた悪魔ナイズされた大中小の蝙蝠兵団である。
「誘導するわ!」
「ナイス援護! イッシー行きます!」
まぁ取り巻きギミックなんざ珍しくもない。エリーゼの援護射撃で手下の手下を駆除された大蝙蝠兵に、空飛ぶ突撃槍に跨った俺はブースターを吹かして突貫した。
接近に気付いた大蝙蝠兵が俺の方に振り向こうと羽ばたくが、既にこっちの間合いである。俺は右手に握った得物を構え、更に加速して振り抜いた。
文字通りの一刀両断。大蝙蝠は真っ二つになった。さながらウルトラギロチン王子を前にした怪獣のように、もしくは密林バイカーを前にした怪人のように。スパッと綺麗に切断されたのである。
「フゥーッ! 超気持ちいい!」
次の獲物に再突撃すべく旋回しながら、刃についた血を払う。
それは、一振りの刀だった。その刀身は、極めて美しい直刃だった。その刀は、あまりにも長かった。
長く、薄く、重く、そして繊麗過ぎた。
◆ムラサメブレード◆
物理攻撃力:1100
補助効果1:斬撃強化(大)
補助効果2:浮遊特効(大)
補助効果3:加速度補正(大)
補助効果4:自動修復
みんな大好き、とっても長い刀である。
刃渡りだけで俺の身長を超えており、柄を含めた全長は約二三〇センチ。もっとざっくり言えば、リメイク版最終幻想七作目のボスの刀と同じくらいだな。俺はこいつをオマージュ元と同じく基本的に片手で使う。
まさしくスーパーロングサムライソード。故に、銘をムラサメとした。故にと言いつつ特にこれといった故はない。
「しゃあっ!」
グルッと回って再突撃。ボスを守護する大蝙蝠を通り過ぎ際ぶった斬る。
このリーチ、この威力。おぉ、マジェスティック。見た目の良さも然ることながら、性能もドワルフ印のマジのガチ。
補助効果の構成は空中戦を前提に組んである。要するに空中ヒットアンドアウェイ戦法であり、もしくは馬上一騎打ちめいた真正面から叩きのめすスタイルだ。
その為にこそ、立ち回り性能よりも一撃威力を重視した。純粋に斬撃属性を強化し、空中にいる敵全般への特効を付け、攻撃時の加速度を加算してくれるようにした。刀の脆さを補う補助効果はマストである。
故に、今がある。本来それなりに硬いはずの大蝙蝠をバッタバッタと一刀両断撫で斬り祭。大型武器だけあって純粋に攻撃力も高いしな。
「っと、レノ! そろそろアレやってくるぞ! 準備!」
「ん、任せて」
ご機嫌に雑魚を斬りまくっていると、群れのボスたる偽王蝙蝠が奥の手を発動した。
コウモリらしく逆さになって全身に闇バリアを生成。すると、そこからブワッと毒ガスめいた暗黒瘴気を放散した。次の瞬間、ボスの周囲は真っ暗闇に包まれた。
暗視無効のクソスモッグ。この技は以前に戦った餓者髑髏くんもやってきた暗黒瘴気の上位互換である。その上、偽王蝙蝠くんは素でステルス能力が高く、この状況から好き勝手に奇襲をしてくるのだ。これは対策しないとヤバい。
そんな中、レノは慌てず焦らず専用ポーチに収納していた水晶を念力で浮かび上がらせ、同じく念力で以て天高くへと放り投げた。
「あまねく、
その時、迷宮の空に太陽が昇った。
太陽の正体は水晶だった。光り輝く球体は蝙蝠産の闇を払い飛ばし、薄暗かった迷宮全土を明るく眩く照らし出した。つまるところ照明弾である。
これこそがクーシェンで貰った水晶の異層権能である。暗視ができる種族にとっては言わずもがな、暗視ポーションのある現代ではあんまり使いどころがない。そもそも使い捨ての照明弾あるしってな具合で、例によってハズレ深域武装されてた水晶である。
だが、レノには相当アドである。
「ん、乱れ撃つぜ……」
太陽が在るという事は、天使族に光力リジェネを与えるという事だ。
外連味たっぷり二挺拳銃映えポーズ。白銀の拳銃杖を構えたレノは、光力消費を気にせずドッカンドッカン乱射し始めた。
乱れ撃ってリロード。乱れ撃ってリロード。その姿、まさに破壊天使。普段が熟練ガンマンのスナイプだとしたら、現在は二挺マシンガンによるヒャッハーフルバーストの様相だ。
「ああも撃って流れ弾の心配がないの、ほんに凄いのぅ」
「援護も的確ですし、どれだけ鍛錬しても真似できないと思います」
地上組にも誤射ってないし、俺の移動も邪魔しない。ヒャッハー状態でも射撃精度を維持してるのは流石としか言いようがなかった。
「で、わしもコレ待っとったってワケ! ぐぬぬぬ……【水行・鏡蓮華】!」
太陽の恩恵を受けているのは天使だけではなかった。キラリと仙狐の目が光る。
陰陽式を編み上げたイリハが自身の周囲に水の鏡を多重展開。合わせ鏡は日光を反射し続け増幅し、終いにボゥッと発射された。結果、太陽光線がヒットした偽王蝙蝠は全身が炎上し、空中ネズミ花火のように藻掻き苦しんだ。
アルキメデスの鏡か、あるいはオタク的には機動戦士のアレを彷彿とさせる陰陽術だ。これ分類上は水属性なのだが、与えるダメージは火属性なのが面白い。
「ルクスリリア! バフいくぞ! 突撃ぃ!」
「淫魔魂を見せてやるッス!」
そして今こそ攻撃チャンス。新しく覚えた指揮系スキルを発動し、ヘラジカに乗ったルクスリリアを蝙蝠目掛け突貫させる。
「
ドゴォオオオッ! ヘラジカタックルは破壊力。ヘラジカホーンは貫通力。守護獣ラザニアの突進を受けた偽王蝙蝠は、大きな翼膜に穴を空けられ落下した。
「あっ、ダメだ! 妖怪ミリ足りない!」
が、死にかけた奴は何とか途中で是正して、バリアを張り直してから反撃を試みた。
エリーゼはザコを散らしている。レノもボスに集ってきた小者を狙い撃ってる。イリハは陰陽術の技後硬直中で、グーラは地上の取り巻きを相手している。
俺しかいない、俺が行く。
「うぉおおおおおおおインド人を右に!」
急旋回から再突撃。アクセル全開で突っ込みながら、俺は右手に持ったムラサメちゃんを構え、腹に意識を集中させた。
ユゥリン直伝奥義発動。柄から茎へ、刃を通して切先へ。刀身表面を魔力で覆い、鋭利な刃を氣で以て充実させる。
そして、成った。長大なムラサメブレードが純白の発勁エフェクトを纏う。虚空を切り裂く長刀が流星のような尾を引いた。
「こっちを見ろォ!」
ズッバァアアアアン!
背後からの全力奇襲。体感時速三〇〇キロ超えの斬撃を食らった蝙蝠は、バリア諸とも大切断された。
残心。速度を緩めて旋回する。真っ二つになった蝙蝠は、今度こそ落下しながら粒子に還った。
帰還水晶が現れ、聖遺物を落とし、取り巻き達も消滅した。これにてクエストクリアである。
「ふぅ、みんなお疲れ~」
重賞レースを勝利したジョッキーのようにウイニングランをして、速度を緩めて地面に下りる。こいつの操縦にも慣れたもんだ。
一方、レノは光が収まった水晶を回収していた。太陽が無くなった黒霧迷宮が暗くなる。
「ふぃ~、サンキューご主人。もうダメかと思ったッスよ」
「やっぱり超淫魔化を攻撃に使うのは危険ですね。その後の隙が大き過ぎます」
「その刀、使いこなせてるじゃない」
「ああ、何とかな」
突撃槍を収納し、右手に持った長刀を掲げてみせる。見ての通りムラサメちゃんはクッソ長いので間合い管理は難しいが、空中戦なら可動域が広いので使いやすい。今回みたいなデカブツ相手なら無銘よりも頼もしいまである。
製作過程では紆余曲折あったが、最終的にはいつものドワルフクオリティで最高だった。今回、刀身を打ってくれた刀鍛冶は、橘と湊を打ってくれた人と同じらしい。ドワルフ曰く、「有名になる前に恩売っとくんでさぁ」とか何とか。
「マスター、聖遺物はこれ。小さいね」
「ありがとう。っと、レベルアップしてるな」
見れば、俺の指揮官系上位職“ジェネラル”がレベル一〇になっていた。
これはとにかく広範囲にバフを撒けるジョブで、支援系能動スキルの他にも戦場全体の把握や分析を可能とする補助スキルを覚える事ができた。
そのお陰か、最近俺は将棋の多面打ちができるようになった。なお、知能は据え置きなので一面でも多面でもボロ負けする模様。
「指揮出し役もいいッスけど、ご主人はいい加減最上位職にしないんスか?」
ルクスリリアの言う通り、そろそろ純粋なステータスアップの為に最上位職になってもいい気がしなくもない。
クーシェンから帰還してしばらく、俺はミヅチ戦の反省から空中戦への適応と団体戦への順応を課題としていた。思うに、武器が揃った現在はある程度クリアできていると思う。
「まぁ成ろうと思えば成れるけど」
実際、剣士系上位職“ソードエスカトス”が二九なので、あと一回レベルアップすれば何かしらの最上位職にはなれるのだ。
ただ、内心ちょっぴりためらっていた。
彼女達の状況から鑑みるに、最上位職は当事者のジョブ遍歴によって特別なジョブが生えてくる仕様だ。
エリーゼは竜族固有指揮官職を鍛えてたから、その上位互換である“ドラゴンルーラー”になった。対して、剣士と武闘家を経由して条件を満たしたグーラは獣系魔族固有剣士+武闘家の“魔獣勇士”になれたのだ。なら、俺の場合はどうなるのだろう。
そんで俺が何を懸念しているのかと言えば、条件を満たした段階で新規最上位職が固定されるのではないかというものだった。
例えば、ソードエスカトスを三〇にして、最上位職の条件を満たしたとする。恐らく、ソードエスカトスの上位互換の他にも、俺に合ったジョブが生えてくる事だろう。
その後、俺が新しく別のジョブを経由したら、そのジョブは新規最上位職の獲得にちゃんと反映されるのかってのを懸念しているのだ。俺はゲームにおける取り返しのつかない要素恐怖症に罹患しているのである。
「ですが、ご主人様の言う器用万能型にはもうなってると思います。そろそろ地力を上げるべきではないでしょうか」
「それでも足りん時は他に頼ればええしのぅ」
「アナタの心配は分かるけれど、何でも一人でやる事ないじゃない」
「実際ステゴロならご主人よりグーラのが強いッスからね~」
「ん、マスターはもっと甘えるべき」
そう、現状でも充分な気はするのだ。
現時点で俺が及第点を出したジョブを列挙すると、剣士系をメインに戦士系弓系武闘家系魔法系騎士系斥候系治癒系侍系指揮系等々だ。中には魔法剣士系とかランサー系とかの回り道もしたが、大きく分けてコレである。残っているのは何かしらの特化ジョブだ。
当然として、それらで習得可能なスキルは網羅してある。使えないスキルは封印しているが、使えるスキルは厳選して愛用している。
習得したのは能動スキルだけじゃない。侍系補助スキルのお陰で先制攻撃やカウンターに常時補正かかってるし、斥候系補助スキルのお陰で常時会心に補正が入ってるのが今の俺、イシグロ・リキタカよ。
まだ埋めたいと思うゲーマー思考と、もういいだろという戦士思考。心が二つある~。
「よし、なっちゃうか」
逡巡一秒。なっちゃいましょう、最上位職。
恐らくメイビー大丈夫だとは思うが、もしそうなったらその時だ。
「ん、いい選択だと思う」
「まぁその前にキリのいい所まで育ててからだな。習得スキルも気になるし」
「ッスよね~」
そうして、俺はステータスアップのフェーズに移行するのであった。
〇
黒霧迷宮を潜ってから、俺は本格的に最上位職を習得すべく行動を開始した。
かもしれない運転で杞憂を晴らすべく、レベルが中途半端だったジョブをキリのいい数字まで持っていき、最上位職獲得時の最終調整をしたのである。
「ふへへ、こんなん発勁連打で余裕じゃないですか。これで強くなれるんだから楽なもんですよねぇ」
時にユゥリンを連れて巨像迷宮を潜り。
「やっぱり戦いは圧倒的じゃないとね」
時にエリーゼのリクエストで怪森迷宮を焼き払ったり。
「間違いなく、お前は
初心を忘れぬように単独でナックルベア君と殴り合ったり……。
「実に面白い……」
途中、今にも死にそうだった少年冒険者に指導し、その過程で新たにスキルの仕様を発見したりもした。
詳しく調べてみたところ、対応したジョブに就いている状態で反復練習すれば、能動系に限ってスキルを習得できるという事が分かったのだ。確かに、俺は反復練習によって発勁のアレコレを習得した。それと同じだと思えば理解しやすい。
という事は、これまで俺が無駄に覚えてきた能動スキルの数々を皆に伝授する事ができるんじゃあないか?
実際にやってみた。
「はぁ~、ふぇ~、これまだやるんスかぁ? アタシもう疲れたんスけどぉ~」
「剣士技能はどれも良いのぅ。貧弱じゃったわしの剣捌きが一段も二段も上がっておる。特に【受け流し】は主様が愛用するだけあって最高じゃな。無月流と併せれば鉄壁じゃ」
「弓系技能も良い。使うと純粋に射撃が当てやすくなる」
「魔力を消費する技能は私にピッタリだし、結果的にアナタのレベリングは無駄ではなかったようね」
「なぁ、これアタイもやらなきゃダメか? こんだけ動いたら明日ぁ筋肉痛確定なんだが」
「シャロさんは普段からもう少し運動しましょう。短剣術の型、サボッてるんじゃないですか? ほら、チィ姉もサボらない」
「サボッてるんじゃなくてヘバッてるのぉ~!」
「チィレンさん、麦茶飲みましょう。麦茶」
そんな訳で、草薙一同で修行パートに入った。
ルクスリリア、エリーゼには移動系スキルを。グーラには武闘家と斥候と剣士のスキル。イリハは剣士の技を片っ端から詰め込みまくり、レノには未収得だった弓系の照準補正系スキルを覚えさせた。
ちょうどいいのでシャロとユゥリンとチィレンさんも巻き込んだ。麒麟姉はいざという時の逃走手段として移動系スキルを覚えさせた。
「おぉ! わし斬れとる! 斬れとるのじゃ! 陰陽術無しでも戦えるのじゃあ!」
「なるほど、【震脚】と【軽功】を使って踏み込めば普通より威力が高くなるようですね。そこに炎雷と【剛剣一閃】を併せて……えい!」
「えいじゃないが」
「ん、余波で雑魚が死んでる」
「ちょっとグーラ、私にも獲物を残しなさいな」
「もう全部グーラでいいんじゃないッスか?」
覚えた技は使いたくなるもんで、ある程度したら再度のダンジョンアタックタイム。
その際、俺のソドエスレベリングは一回の踏破では足りなかったので、ちょっと俺一人で戦うべく巨像迷宮にやってきた。
「今の技、もう【受け流し】不可じゃなくなってるのか。俺も強くなったもんだ」
今現在俺が戦っているのは、転移一年目に新発見したゴールデンゴーレム君だ。
以前までは奴の一部の攻撃は受け流せなかったのだが、今の俺なら問題ない。悪質タックルもスライディングキックもダイナミック田植えも全部受け流せる。まぁ本気サッカーボールキックはまだダメらしいが、そのうち受け流せるだろう。
「はい、ズバァン!」
で、【受け流し】た後は会心である。俺の十八番戦法に最適化された無銘ロンソは、存分にその威力を発揮した。
ゴールデンゴーレムが倒れ、ドロップアイテムの希少鉱石がどっさり。そして経験値が吸収され、同時にえも言われぬ快楽を覚えた。
異世界来てから何度も味わったレベルアップの確信。ソードエスカトスが三〇になった瞬間である。
「ついに来たな!」
「ようこそ、アタシの世界へッス」
周囲を警戒しつつ、コンソールを弄ってジョブの欄をタップした。
すると、ズラッと並ぶ最上位職の数々。案の定いっぱい生えてきた。
「え~っと? なになに?」
最初に目についたのは、剣士系最上位職であろう“アルティメットセイバー”だ。これなんか雰囲気変わったな。名前からソードが消えてるじゃないか。
他は……大剣のみ使える“ランツクネヒト”。いや何故にツクネ? 確かランツクネヒトってヨーロッパあたりの傭兵の事だったと思うけど、大剣職ナンデ? いやまぁこの世界の言語は謎翻訳によってドイツ語とかフランス語とか混じってるんだけども。
その他、剣士系を土台に色んな剣メイン汎用職が並んでいる。ジョブごとに適正武器が増えたり減ったりしてて、全部見るのは時間かかりそうだ。
「っと、これは?」
そうやってスクロールしていくと、ちょっと気になるジョブを発見した。
剣士系とは異なる雰囲気。パッと見で分かるスペックだけ見ても、他とは一線を画している。
「はあ、“勇者”ねぇ……?」
そこには、魔法や回復や剣や盾を使えるらしい“勇者”なるジョブがあった。
ステータス上昇幅はガチバランス型で、魔法剣士の上位互換って印象。剣も魔法も使えるし、例によって最上位職専用スキルも完備している。
「で、こっちは筋肉版の勇者か」
次に目についたのは、“
こっちは己が肉体のみで完結する勇者って感じだ。ガチ武闘家かと思えばそうでもなく、気配遮断とかの斥候スキルや触媒無し魔法なんかも使えるらしい。成長ステも勇者と同じ。固有スキルは何だろう?
「おっ、なんかカッコいいのあった」
次、武器特化っぽい“
「これは……」
スクロールしてみると、勇者とも超越者とも毛色の異なるジョブがあった。
なんだこれ、名前からしてジョブっぽくないぞ。
「“迷宮狂い”って……おいおい、なんだこの最上位職。何から派生したんだ? 踏破数とかか? そういう条件あるのかな?」
だったら最上位職探しの旅がますます楽しくなる訳ですが。
え~っと? 性能は勇者の少し尖った版か。全体的に前衛ステに偏ってて、魔法関連ステが低いと。
「あら、アナタにピッタリじゃない」
「そうですね」
「じゃな」
「ん、右に同じく」
「そうかなぁ?」
良さげなジョブについてお話しすると、困惑する俺に対して、みんな納得しているご様子。
そんな中、ルクスリリアは真顔で。
「てか、それご主人の二つ名ッスよ。非公式の」
なんて言ってきた。
「……え?」
素直に困惑です。俺そんな風に言われてたの?
なんかショックだ。コンプラに厳しい現在、そういう二つ名はもう悪口じゃん。
……っと、ちょっと待て。
そういえば、初めてルクスリリアと防具屋行った時、店主に二つ名の言い間違えをされた記憶がある。
確か、その時に呼ばれた二つ名が“迷宮狂い”だったような……?
ま、別にいいけど。誰に何て呼ばれようが俺の知った事ではない。
「しばらくはジョブの検証をするから、それまで鍛錬場だな」
「またトレーニング祭なんスね~」
「あら、積み重ねるのは楽しい事よ?」
一部の最上位職には強力な固有スキルが付いてるやつがあるので、ひとまずそれを見ていこう。
王子が言ってたように、尖兵戦が近いのだ。
俺は裏方に回されるらしいが、ナターリアさんの言う通り本番じゃあ何があるか分からない。
それまでに、皆さんの役に立てるよう頑張らないと。
それはそれとして、強くなるのは快感なのだ。
筋トレと同じである。
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作者のやる気に繋がります。
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原作セフィロスの正宗が約2.4メートル。リメイク版は約2.3メートル。スマブラ版は約2.8メートル。FF7AC版は約3.1メートル。ディシディアとキンハーはもっと長い。
贄殿遮那が全長約1.3メートル。再現企画で造られた狐刀カカルクモナキが約3メートル。太郎太刀も全長3メートルくらい。
イシグロのムラサメブレードは全長2.3メートルくらいを想定。刀身は中反りの直刃で薄くて細い。
イシグロはこれを片手で振るう。ぶっちゃけセフィロス。空中戦での使用を想定。あと鞘はない。