【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。やる気ゲージが溜ってます。
 誤字報告も助かってます。感謝しかない。

 募集企画の方、ご応募頂きありがとうございます。良い刺激になっています。作者が想像してたよりやる気に繋がりますねコレ。
 出す時は何の脈略もなく現れるので、あんまり構えないで頂けると幸いです。いきなり登場します。登場キャラが作者作なのか募集キャラなのかを把握してるのは作者だけです。
 レギュにも書きましたが、頂いた案は盛大にアレンジしてナーフして誇張してメタクソに弄り倒してから出すので、ほぼ別キャラになります。ご了承の上、ごあんしんください。


剣とロリ

 水晶迷宮。

 

 タイプは屋内型で、洞窟スタートで洞窟ゴールという、比較的オーソドックスな構成のダンジョンだ。

 例によって外に通じていない洞窟だが、それほど暗くはない。そこら中に生えてるクリスタルがぼんやり光ってるからだ。まるでラスダンみたいな雰囲気である。こういうダンジョン、ゲーム終盤だとよくあるよねって感じ。

 

 そんな水晶迷宮は、転移神殿から転移できる迷宮の中では相当高難易度なダンジョンで有名である……らしい。理由は単純で、エネミーが強いからだ。

 名前の通り、出て来るエネミーは全部何色かの水晶みたいな半透明の何かしらで、クリスタル馬とか浮遊するクソデカサイコロとか形は色々。種々様々なコイツ等は皆、硬い速い手強いの三拍子。

 まず硬さ。ゴーレムほどじゃないが確かに硬い、というか弱点属性がないのがクソだ。おまけに状態異常全般も効かない。速さはダンジョン基準で中の上くらいで、攻撃と攻撃の間に隙が少ない上、物魔近遠あらゆる間合いで攻撃してくるから手強いと。

 

 そんなクソエネミーのクソダンジョンだが、実入りはいい。

 どんな使い道があるのかは知らないが、ボスがドロップする謎水晶玉は驚くほど高値で売れる。道中エネミーが落とす品々も結構美味いし、ついでに経験値もなかなか。

 バランスを取るように罠の類はないのが救いである。けどまぁ、此処はその上で高難度って言われてる訳で……。

 

 持ってく武器は、しっかりしたのじゃないといけないのである。

 

 

 

 キン! キン! キン! 硬い物同士が激しくぶつかる音が鼓膜を震わせる。

 それは俺の両手に握られた剣と、青白い半透明の刃が連続で衝突し、擦過する音だった。

 

「1、2、3……!」

 

 半透明の怪物――水晶カマキリの斬撃をリズム良く“受け流し”ていく。

 青白い鎌が振られる直前、視覚と感覚に危険信号が送られ、慣れた反射で以て剣を振るう。目の前に盛大な火花が散り、例の音が響く。

 間髪入れず迫りくる連撃を、俺は努めて冷静に剣士系能動スキルで“受け流し”ていた。

 

 受け流し。これは剣を使った能動スキルの一つであり、相手の攻撃タイミングに合わせて使用する事で素晴らしい防御性能を発揮できるのだ。ぶっちゃけ、隻狼の弾きみたいなもんである。

 これは普通の剣ガードと違い、使用者側に貫通ダメージとかノックバックとかの戦術的不利を齎さない優秀スキル君だ。剣士系で多分一番大事で重要なスキルである。盾があれば別だが、剣士系は盾を持てないのだ。

 しかし、これまで俺はこのスキルをそんなに使ってこなかった。あくまで、ジャスガできそうにない敵への、且つ回避ができそうにない状態での緊急策として運用していたのだ。

 何故か? 武器耐久度が削れるからだ。だから、あんまり使ってこなかったのである。いやだって、武器壊したくないじゃん。

 

「1、2、3……4、5、6……!」

 

 リズム良く、次いでリズムから外れた攻撃も受け流していく。

 本来、こんな使い方をしてたら剣なんざ一瞬でおシャカである。が、この剣は別だ。耐久度もほんの少ししか減っていない。だから、こうして相手の動きを見る余裕を持てる。

 

 ギィン! と、強攻撃を“受け流し”た拍子に盛大な火花が散った。

 前世の剣なら、恐らくさっきので折れるなり曲がるなりしていただろう。例え異世界ブレードでも、今のは流石に耐久度がかなり削れたはずだ。

 が、俺の剣には傷ひとつない。耐久度減少もごくわずかだ。

 

 今俺が握っているのは、前に工匠でオーダーメイドした俺の専用剣だ。名前はまだない、無銘の剣だ。こういうのは買い手が付けるもんらしいが、現在保留中。俺にネーミングセンスはないのだ。

 この剣は極めて高い基礎性能に加え、複数の補助効果を付けている。そのうちの一つに、“武器防御”という補助効果がある。これは武器によるガードの際、耐久度の減少を抑えてくれる便利な奴だ。加えて“自動修復”も付いているので、戦闘中おじゃんになる事はないのである。

 だから、思いっきり雑に使って大丈夫なのだ。

 

「1、2、3……!」

 

 余裕を持って、凌ぎ続ける。回避は最小限、淡々と受け流す。どっしり構え、必殺を狙う。

 やがて、水晶カマキリが大技体勢になった。来た、もう飽きるくらい受け流してきてようやくだ。チートに集中する。感覚アシスト、視覚アシスト、危機察知が警鐘を鳴らし始めた。

 頭上からクロス斬撃が迫る。タイミングは分かっている。深呼吸する暇はないし、異世界慣れした身体はもうそのような心の準備を必要としない。殺す、殺すのだ。

 1、2の……!

 

「さんッ!」

 

 ギィィィィン! 掬い上げるようなジャスト“受け流し”が成功し、ボスの体勢が崩れた。これを待っていた。

 この世界、ジャスガが成功すると、された敵は姿勢を崩す。すると、よろけてる間だけ特定部位が“弱点”になるのだ。加えて、よろけ中の敵には確定で会心の一撃(クリティカル)が入る。

 とはいえ、普通ボスにジャスガ決めるだけじゃこうもいかない。これは、完璧なタイミングで“受け流し”たからこそのチャンスなのだ。

 

 時間が引き延ばされる。刹那の間、スローになる。

 流れるように構えを替える。大上段、踏み込む。狙いは弱点部位。カマキリの首。そこに、ソドマススキルの“剛剣一閃”をぶち込むのだ。

 

「スゥーッ……!」

 

 ところで、俺のオーダーメイド剣には先述の補助効果の他に、あと四つの補助効果を付けてある。

 そのうちの三つは、火力アップ系だ。

 

 一つ、“弱点特効”。これはそのまま、弱点部位へのダメージが増加する補助効果だ。

 二つ、“会心特効”。これもわかりやすい。会心の一撃の与ダメが増えるのだ。

 三つ、“無防備特効”。これまた文字通り、パリィなりジャスガなり受け流しなりで体勢を崩している敵への与ダメが増加するのである。

 

 さて、今現在、クソ堅水晶ボスは体勢を崩して無防備な状態を晒している。

 この状態になった敵へは、会心攻撃が確定する。かつ、時間制限付きで弱点部位が露わになるのだ。

 そこに、三つの特効が載った単発高火力技を入れると……!

 

「……死ねェエエエッ!」

 

 ズバァン! 剣を振り下ろす。狙いは完璧、鉄と水晶が激突し、されど感触は濡れ手拭いを断つが如し。

 使用者の戦闘術、製作者の運用思想が噛み合った一撃は、いとも呆気なくボスの命を刈り取った。

 

 ……が、まだだ。

 

 キン、と今度は控えめな金属音。眼前に飛んできた物体を、俺が剣身で以て受け流した音だ。勢いそのまま後方に逃げたソレは、水晶カマキリの頭部だった。

 そう、ここのボスは全種類HPを全部削った後に第二形態があるのである。といっても、やってくる事はどこぞの山犬君よろしくヘッドアタックだけなのだが、その動きは其処らのスピード型エネミーより速い。多分、ルクスリリアでは厳しい相手だ。こうなったコイツは流石に脆いが、速くて痛くて厄介だ。控えめに言ってクッソうざい。

 しかし、今回は二回目。以前は壮絶な追いかけっこが開幕したが、もう対策済みだ。ダクソでもエルデンでも、二周目ギミックボスは余裕で倒せるものである。

 

 二度目のアタック。受け流し、反撃する事なく反転。握りを替え、姿勢を整える。

 構えは片手。握りは逆手。それはさながら、陸上選手の槍投げの様。というか、この能動スキル(これ)は名称そのまま“投剣”だ。

 

「フン!」

 

 ピッチャー振りかぶって、投げた。ストライク! バッターデッドである。ド真ん中に剣を生やしたカマキリくんは粒子となって俺に吸い込まれていった。経験値が入ってきて気持ちがいい。

 

 さて、往生際の悪い水晶カマキリはこうして死んだとさ。ボスを倒した事で、部屋の真ん中に帰還クリスタルが生成された。

 これに触れれば帰れる訳だが、その前に剣を回収しなきゃいけない。

 

 なので、俺はおもむろに右腕を広げ、手を開いた。さながらそれは、マイティ・ソーがムジョルニアを呼び出す時のポーズの様。

 やがて、俺の剣は手のひらにすっぽり納まった。ていうか、ホントにマジでまさにソー。

 これ、超お気に入りである。

 

 俺の剣には、耐久度スキル二つ、火力スキル三つ。最後にこの“魔法装填(武器の呼び出し)”が付いている。

 呼び出しを付けるのだぜとドワルフに言うと、「もったいなくねぇですかい?」と返されたものだが、いやいやこれはいるでしょうと。実際使える。

 なによりカッコいい。俺はMCUも好きなのだ。勿論、ソーも大好きである。キャップの盾といい、アイアンマンの飛んでくるパーツといい、戻ってくる武装ってロマンじゃんである。

 

「あ~、やっぱカッケェなぁ……」

 

 こう従順に戻って来てくれると、愛着も湧こうというものだ。

 造形も性能も俺好みの、俺専用の剣。男の子心にグッとくる。

 改めて、俺は俺用の剣を眺め見た。

 

 

 

◆無銘のロングソード◆

 

 

 

・物理攻撃力:950

 

 

 

・補助効果1:弱点特効(大)

・補助効果2:会心特効(大)

・補助効果3:無防備特効(大)

・補助効果4:魔法装填(武器の呼び出し)

・補助効果5:武器防御

・補助効果6:自動修復

 

 

 

 

 

 

 オーダーメイド専用武器、無銘ロンソくん。

 形はシンプル十字のオーセンティックロングソードスタイルだ、飾り気もないので、パッと見ただの店売りの数打ち品に見える。

 全長は大体1メートルちょいだろうか。前世、授業で使った事のある竹刀と同じくらいである。使い慣れた異世界ロンソより少し長いが、今はステも上がってるので片手ブンブンも余裕である。

 剣身の色は暗い銀色だ。いや何それって感じだが、実際そんな例えがしっくりくるのである。なんというか、光沢あるけどキラキラしてないシルバーというか……。もっと言うと光を当てる角度によっては色んな色に見えるし、実に不思議カラーである。

 素材は金剛鉄(アダマンタイト)をベースに真銀(ミスリル)を混ぜた特殊合金で、曰くめちゃくちゃ手間と技術が要るんだとか。お陰でこんな不思議な剣身になったらしい。

 ブレードはそんな感じだが、柄全体はツヤのない黒統一である。握りの部分には金剛鉄(アダマンタイト)製の極々細い鎖が溶接されていて、滑り止めになってくれている。神は細部に宿るというが、まさにソレ。こういうトコに職人技のロマン感じちゃうよね。

 

 総合して、俺のオダメ剣はなんか黒っぽいシンプルロンソなのである。

 けど、中身はドワルフ曰く「モノホン中のモノホン」だ。

 俺はロトの剣みたいな武器も好きだが、こういう渋い武器も好きなのだ。

 うん、とても良い……。

 

「買ってよかったなぁ……」

 

 本当に、そう思う。いざ使ってみて分かったが、強い武器使うとマジで世界が変わる。エルデンで戦技縛りやってた俺が、マレニア戦で縛り解除した時並みに世界変わる。

 これまで店売りの安物ばっか使ってたから補助効果ナメてたけど、やっぱあるのとないのとでは全然違う。もし弱武器でさっきのボス倒そうと思ったら、多分剣何本もへし折ってたと思うし、そのうち隙晒して死んでた可能性あるアルヨ。

 上手く特効入れりゃHPごっそり持ってけるし、何より戦闘時間が短くなったから集中力が途切れないのがいい。チートは強いが、俺は弱いのだ。十全にチートを使うには、使用者の集中力が必須なのである。

 

 うん、これからは良い武器良い防具を使おうと思う。

 良い冒険には良い装備が必須だって、多分ばっちゃが言ってたし。多分飛べる方の豚もそう言うよ。

 

「……と、さっさと帰ろう」

 

 剣に見とれるのはこれで何度目だろう。なんか初めて原付買った時みたいだ。いい加減慣れねば……。

 俺はボスの聖遺物(ドロップアイテム)収納魔法(アイテムボックス)にしまうと、帰還クリスタルに触れて神殿に転移した。

 

 ロリが待ってる。

 

 

 

 

 

 

 神殿に戻ると。昨日と同じく多くの視線を感じ取った。

 最近、帰る度にこうである。いくら銀細工が珍しいからといって、そう注目しないでほしい。できれば前みたいに一般冒険者Bくらいの扱いをしてほしいものだ。

 辟易しつつ、いつもの受付へ向かう。

 

「はぁ……」

「ひっ……!?」

 

 我知らず溜め息を吐くと、すれ違った小柄な冒険者が小さく悲鳴を上げて肩を震わせた。

 それにビックリした俺が振り向くと、目が合った。

 

「え?」

「え?」

 

 彼は俺と目が合うと、サッと顔色を悪くした。固い笑みがひくひくしていて、連動した頬のタトゥーが震えている。

 俺でも分かる、何故だか彼は俺に怯えているのだ。迷宮帰還後は汚れが落ちるので血塗れホラー殺人鬼スタイルなんて事もないし、前みたくパンイチって訳でもない。同じ冒険者なのに、何故?

 

「えっと、すみません……」

「あ、いや……」

 

 よく分からないので、さっさと先に行く事にした。

 どこまで行っても俺は地球人、異世界人の感性は分からない。何か、俺が異世界倫理的に良くない事をしてしまったのかもしれない。歩きながら溜息は威嚇になるとか? 分からん……。

 なら、異邦人は異邦人らしく振る舞おう。郷に入りては郷に従えとはいうが、それはそれとして何もかんも合わせる必要はないのだ。こういう時はスルーである。

 

「すみません、換金お願いします」

「おう、イシグロか。緑の2番な」

 

 慣れた手つきで札を受け取る。おじさんとこういうやり取りをするのには慣れた。たまに異世界の常識にはびっくりさせられるけど、ルーティンをこなすと安心するね。

 

「ん?」

 

 ふと思って辺りを見渡してみて、ルクスリリア達がいない事に気づいた。最近、迷宮帰りにはすぐ見つけて寄ってきてくれたのに。

 俺が迷宮に籠っている間は、彼女たちには鍛錬場でトレーニングするよう命じているのだ。いつも通りならもう神殿に戻ってると思ってたが……。

 

 誘拐、とかじゃないよな?

 ある意味、そういう対策の為にパーティメンバーのレベリングをしてる側面もあるのだ。ルクスリリアは大丈夫だろうが、エリーゼはまだ弱い。

 心配である、何もなければいいのだが……。

 

「あのー、うちの奴隷二人が今何処にいるか知りませんか?」

「奴隷? あー、あの……。いや、昼飯食った後は、また鍛錬場んとこに行ったな。それきりだぜ」

「そうですか」

 

 となると、単にまだ鍛錬場にいるってあたりだろうか。思いの外、俺のダンジョンアタックが早く終わったのかな。異世界は時間がわかりにくい。ここからじゃ外の様子分かりづらいし、今はまだそんな時間じゃないのかもしれない。

 

「ほらよ、番号札返せ」

「ありがとうございます」

 

 お金をもらうと、俺は急いで鍛錬場の方に向かって行った。早くロリに会いたい。

 と思ったら、件の転移石碑の出口側から見知ったふたつの影が転移してきた。

 金の髪と銀の髪、後ろ姿だけでもう可愛い。最高である。

 

「ルクスリリア、エリーゼ」

 

 名を呼ぶと、二人は振り返って歩いてきた。

 片方はぶんぶん手を振って、もう片方はおしとやかにゆっくりと。

 約束通り、二人とも渡した武器を布でグルグル巻きにしている。えらい。

 

「よッス~、今日は早いッスねご主人」

「あら、もしかして敗走でもしたのかしら……?」

「んな訳あるかい」

 

 などと言ってきた奴隷には、右手に持った金貨袋を見せつけてやった。

 水晶迷宮、ホントに儲かる。ま、これすぐ無くなるんですけどね。

 

「わぁ! 大漁大漁~! ご主人~、アタシ今日は美味しい夜森人(ダークエルフ)料理が食べたいッス~♡」

「いいね、そうしよう。エリーゼもそれでいい?」

「ええ。できれば、夜森人葡萄酒(ダークエルフ・ワイン)のヴィンテージが呑めるお店がいいわ」

「わかった。まぁ前と同じ店になるけど」

 

 合流し、諸々を終え、夜ご飯の話などしながら神殿を出る。

 夕陽が近く、夜はまだ遠い。少し早いが、今日はもうおしまいにしよう。

 一旦宿屋に帰って、ひと休みだ。

 

 明日は、お買い物デートである。




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 活動報告にて、キャラ募集企画を行っています。
 ご興味のある方は是非、お気軽にご応募下さればと思います。
 詳しくは活動報告にて。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=296177&uid=59551

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