【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。お陰で続けられております。
 誤字報告もありがとうございます。感謝の極みです。
 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。


五年目・幸せ家族の黎明編
俺の妻達は最高です(上)


 前略

 父さん、母さん

 

 お変わりなくお過ごしでしょうか。

 突然連絡が途絶えてしまい、ご不安とご迷惑をおかけしてしまったことを、まずは謝罪させて下さい。

 

 現在、私は異世界にいます。異世界最大国家たるラリス王国は王都アレクシストにて居を構えています。アレです、父さんが好きだったゲームで最初にカジノが遊べる都市みたいなところです。

 

 解放軍を名乗る旧魔王軍残党と敵対したり、国家体制を揺るがす戦いに巻き込まれたり、世界規模の防衛戦に参加したり……色々ありましたが、元気に過ごしています。

 無病息災です。ていうか歳を取らなくなりました。二十代前半の肉体のまま、老いなくなったようです。親譲りの毛髪を維持できそうで、ひと安心でございます。

 

 さて、このたび私は結婚する事と相成りました。

 お互いを尊重し、支え合う決意をいたしました。

 

 お相手のルクスリリアさんはとても明るい心根の持ち主で、淫魔族の女性です。彼女の笑顔には何度も助けられました。

 エリーゼさんは伝説の英雄を祖父に持つノーブル・ブラッド・ドラゴンです。彼女の強く気高い意思は、私に一歩先を往く勇気を与えてくれます。

 グーラさんは英雄的資質を持つ獣系魔族の女性です。反面その心は素朴で純朴で、こんな素晴らしい女性に愛される私はきっと特別な存在なのだと感じました。

 イリハさんは天狐という特別な種族の女性で、温かな心を持っております。彼女はとても料理上手で、あっと言う間に胃袋を掴まれました。

 レノさんは特殊な生まれの天使族の女性で、紆余曲折あって私を選んでくださいました。彼女の話は長くなるのでまた今度。

 シャーロットさんはルーンという特殊技能を持つ森人の女性です。彼女は自立した心の持ち主で、頼りがいのある姐御肌の女性です。

 ユゥリンさんは麒麟族の女性で、嵐極拳の老師です。とても家族想いの方で、その在り方には尊敬の念を抱かざるを得ません。

 

 はい、重婚いたします。

 ハーレムです。しかも、全員少女然とした童顔の……いわゆる合法ロリでございます。

 ご安心ください、違法ではありません。これだけはハッキリと真実を伝えたかった。

 

 異世界に転移して、早四年が経過しました。

 これまでの経験で、私も成長できたと感じております。

 今後は皆と力を合わせ、健やかな家庭を築いていきたいと思います。

 

 遠く異世界の地より、書中をもちましてご報告を申し上げます。

 

 敬具

 

 

 

 PS

 

 部屋にあったサブカル系のグッズ等は全て売却してくだされば幸いです。甥か姪にケーキでも買ってあげてください。

 あと、PCは復元できないよう破壊しておいてください。そこに遺書の類いはありません。

 それでは。

 

 

 

 

 

 

 結婚とは、法律に則り二人以上の個人が夫婦の契約を交わす事である。

 ロマンチックに言うならば、愛する者同士が好き合って行う契りだろうか。

 

 日本においては婚姻届を提出して国に夫婦と認められる訳だが、それはラリス王国も同様だった。パンピーはともかく、俺のような一級国民はしっかり手続きしないといけない。

 

 婚姻届を何処に届けるべきかは身分によりけり。

 一般庶民の場合、多くは最寄りの役所である。前世日本ほどカッチリ管理されてる訳ではなく、何族の誰と誰が結婚しましたっていうのを簡潔に記すのだ。

 冒険者の場合、転移神殿で手続きするのがメジャーである。荒くれ者が役所なんか行く訳ないのだ。ちな、冒険者は冒険者同士で結婚するケースが多いらしい。

 

 そんな中、俺は冒険者身分と一級国民身分の二つ持ちである。

 なので、皆を連れて転移神殿にやってきた。役所よりこっちの方がスムーズなのだ。第三王子にもそうするよう言われてるからな。

 

「おっ、お前イシグロじゃねぇか! いや無事で良かったぜ! まぁ俺は生きて帰るって信じてたけどな!」

 

 転移神殿の受付に向かうと、そこにはお馴染み受付おじさんの姿があった。

 帰還直後に転移神殿に行った時はいなかったので、戦前以来の再会である。俺を見たおじさんは常にないニッコリスマイルを浮かべていた。

 

「帰還報告はもう済ませただろ? 今日は何か用でもあんのか? 流石のお前でもまたすぐ迷宮とかねぇよな! がははっ!」

「ええ、まぁ。とりあえず此方の手続きを」

 

 ひとしきり尖兵戦の事とかを話したところで、俺は収納魔法から数枚の書類を提出した。

 俺専用身分についての説明書と、一級国民身分の書式に則った婚姻届である。後見人の欄にはヴィーカさんの署名がある伝説の超婚姻届だ。

 

「ははぁ~ん。なるほどな、お前さん盟友全員の面倒を見るってことか」

 

 ヴィーカさんの直筆署名に目を丸くした後、受付おじさんは何かに納得したような表情を浮かべた。

 

「へっ、そういう事かよ」

 

 で、いつもの謎したり顔である。

 そのまま魔術式のハンコが捺印され、全員分の婚姻届が受理された。これで皆もラリスの一級国民になれた訳だ。

 

「あと、皆の冒険者登録をお願いします」

「あん? まぁそりゃ構わねぇが、一応言っとくがいくら強くても最初は木札からだぞ」

 

 法的な夫婦関係が認められてすぐ、俺はユゥリンを除く全員の冒険者登録と同盟の参加を申請した。

 流石はベテラン職員といった感じで、それらはそう待たされる事なくサラサラと受理された。面倒な手続きをしてるはずなのに、おじさんが嬉しそうなのは何故なのぜ。

 

「はぁ~ん、これが木札ッスか。控えめに言ってショボいッスね」

「ボク達ならすぐ銀になれますよ」

「ふへへ、ようこそ此方の世界へ」

「今ならこれ持ってても工匠資格は貰えるんだよな?」

 

 これにて、皆は俺の妻と認められ、一級国民兼冒険者身分且つ“草薙の剣”の盟友になった訳だ。

 あとは個々人が銀細工に昇格すれば、現状考え得る最高の社会的立場を得られるって寸法である。

 これでもう誰に絡まれても大丈夫だ。ちょっかいかけてきそうな奴は先制で殴れるし、政治的圧力も無効である。悔しかったら王子呼んでこいよ。

 〆として式をすれば、法律的にも精神的にも夫婦関係成立である。さてハネムーンは何処に行こうか。今度こそトラブルが起こらなければいいんだが。

 

「へ? 行っていいのか? 俺が。そうか、そうかそうか。なら一等良い服用意しとかねぇとな。昔買ったのまだ着れるかな……」

「そんな堅苦しいのじゃないですよ」

 

 そんな訳で受付おじさんを結婚式に招待すると、これまた嬉しそう。

 なんだかんだ、この人には転移直後からお世話になってるからな。皆とも顔見知りだし、招待するのは満場一致で決定した。

 

 指輪文化のない異世界にも結婚式は存在した。

 その形式は国や種族によって様々である。

 

 ことラリス王国においては、新郎新婦の家に呼んでホームパーティってのが主流である。愛を誓い合う儀式というより、結婚おめでとう会だな。どだい式場がないからね、しょうがないね。

 

 結婚式の内容は、皆で相談して決めた。

 ベースはラリス式で、他国の要素をちょこちょこ加える。そんで借家にお世話になった人を呼んで密やかに催すのだ。

 今現在確定してるゲストは、チィレンさんファリナさんヴィーカさんといった身内組に加え、受付おじさんと師匠親子とレギーナだ。流石にこれだけだと各方面に申し訳ないので、もう少し呼ぶ予定である。

 

「よぅ坊! 来てやったぜ! 元気してたかぁ?」

「こいつぁ旦那に姐御じゃあねぇですかい! 活躍してたってなぁ聞いてたが、いやぁ無事で良かった良かった! ささ、座ってくだせぇ! 他のお嬢さん方はどちらに? あっ分かった、新しい武器の注文だろぉ?」

「それもありますね」

 

 婚姻届を提出した後、俺とシャロはドワルフの店にやってきた。アダムス氏を招待する為である。

 シャロ以外の皆は別の人等を招待するべく一時離脱状態だ。

 

「そっか~、あの姐御がねぇ?」

「あんだよ。まさか坊、嫉妬してんのか? 流石にお前さんの気持ちには応えられねぇなぁ。ははっ」

「んな訳ねぇだろ。ちっ、浮かれてやがる……」

 

 結婚式に招待すると、ドワルフは快く了承してくれた。

 元々、彼の実家はシャーロットの家に仕えていたそうで、弟分だったらしい彼は姉貴分の結婚に感慨深そうにしていた。

 

「姐御ぁ嫁の貰い手なんかいねぇと思ってたからよ。ありがてぇ話だぜ」

「そりゃお前、巡りに巡った運命だよ。それより坊もいい歳だよな? どうだ、いい娘紹介してやろうか? ルーニアの娘ならいつでも呼べるぜ」

「うざ。あっしは仕事一筋なんでぇ」

 

 結婚報告で浮かれているのか、そのうちシャロは親戚おばちゃんムーブをかまし始めた。

 対するドワルフも慣れたもんで、森人天狗のシャロを軽くあしらっていた。

 

「これなんですけど……」

「こいつぁ……」

 

 そんなこんなでわちゃわちゃした後、俺は武器工匠のアダムスに先の尖兵戦で破損した無銘のロングソードを見せた。この店に来た二つ目の理由がこれだ。

 この世界の武器は、全損すると別アイテムに変化する。折れた直剣こと折れ直くんだ。半ばで折れた刃も持ってきて、その他の細かい破片も一つ一つ拾ってきた。

 

「直せますか?」

「そいつは無理だ」

 

 問うと、ドワルフはきっぱりと即答した。

 神妙な眼差しで、ドワルフはハンカチ越しに細かい破片をつまみ上げつつ言葉を継いだ。

 

「例えばだ。こいつが何の補助効果もねぇ昔ながらの普通の剣なら、打ち直すなり短剣にするなりできたがよ。だが無銘の造りは柄から切先までマジのガチでスペシャルなんでぇ、形を失った時点で、もう二度と剣としての本懐は遂げらんねぇや」

「そうでしたか……」

 

 てっきり、折れた刃を熔かして無銘改ないしは短剣として蘇るものと思っていた。

 思えば、無銘を作ってからこっち雑に使っていたように思う。戦闘中はともかく、もっと普段から大事に扱うべきだったか。

 

「すみません。自分が至らないばかりに」

「いや、これでいいのさ」

 

 柄を撫でながら、断ち切れた剣身を見るでもなく眺めるイケメンエルフ。常になくシリアスな双眸には、刃に刻まれた歴戦の傷が映っていた。

 

「旦那はこいつが壊れるまで使い潰した。こいつは壊れ切るまで旦那を守り抜いた。蔵で錆びずに、戦って散ったんだ。武器としちゃあ最高の幕引きだよ」

 

 言って、清々しそうに笑んだ。同意を示すように、シャロもうんうん頷いている。同じ職人同士、通じ合うところがあるのかもしれない。

 それはそれとして、こういう武器はそのまま廃棄できないらしいので、折れ直くんの処分はドワルフに任せる事にした。

 

「さて、旦那には新しい剣が必要だよな。あとその鎧も」

 

 しんみりした空気を切り替えるように、ドワルフは一つ柏手を打った。

 ん? 鎧も? メインウエポンの新調は分かるが、鎧もそうすべきなんだろうか。耐久度に異常はないのだが。

 

「これは全然大丈夫ですよ」

「んな事ぁねぇ。あっしが見るに、そいつはもう限界だ」

 

 ガタは来てないように思うのだが、ドワルフには限界が見えているらしい。これについてはさっぱりなようで、シャロは頭の上に疑問符を浮かべている。

 

「アタイの目にはまだまだ余裕に見えるぜ? 自動修復も生きてるだろ」

「素人は黙ってな。見るに、旦那は尖兵戦で相当な無茶をやったみてぇだな。一見じゃ分からねぇ鎧の奥に傷が溜まっちまって、次デカい攻撃食らったら壊れちまうぜ。戦ってる最中に使えなくなるなんて嫌だろ」

「確かに……」

 

 ごもっともである。

 特定の補助効果のついた防具は、使用者の治癒に反応して再生する仕様である。腕が取れて籠手が外れても、治癒魔法かければ元通りになるのだ。

 恐らくだが、レギーナの虚無斬撃を防いだ時にマスクデータ的な耐久値が削れたのではないだろうか。脆くなったとか、そんなノリで。

 

「悪い事ぁ言わねぇ、剣と一緒に新しくしな。セオドロスんとこに一筆書いといてやるよ」

「お願いします」

 

 まぁ専門家が言うならそれに従おう。まさかこの職人が悪質営業マンみたいな事やらかすとは思えないし。

 新武器と新盾で済むと思っていたが、まさか鎧も新調する事になるとはね。必要経費とはいえ、尖兵戦での儲けが溶けに溶けて脳まで溶けそう。まぁ早期発見できて幸いと思っておこうか。

 

「話を戻すぜ。新しい剣はどんな感じにするよ」

 

 どうすると問うてくるドワルフだが、そんなのは決まっている。

 

「同じのお願いします」

「いやまぁ無銘は最高の剣だが」

 

 歯切れ悪く返すドワルフは、エルフ耳を掻きながら続けた。

 

「全く同じってなぁお勧めできねぇぜ」

「何故でしょう? 俺としては使い慣れたのがいいんですけど」

「気持ちは分かるが、ちぃとばかし旦那ぁ強くなり過ぎたんでぇ」

 

 それはそう。純然たる事実として、無銘作成当時と現在の俺のステータスは倍以上も違っている。

 当時の無銘には剣らしい重さを感じていたものだが、今はアルミのオモチャソードと同じ感覚で振るえるのだ。

 とはいえ、やっぱり命を預けるメインウエポンは使い慣れたやつがいい。初めて乗る最新鋭ロボより、長年乗り続けた量産機のが望ましいのだ。

 と、ふと思い出す事があった。そうだそうだ、これも伝えとかなくちゃ。

 

「そういえば、俺の新しい武器を造るの王家が手伝ってくれるらしいですよ」

「ん? そいつぁどういう?」

 

 訝しむドワルフに王子から貰った手紙を渡す。そこには王家秘伝の技術とか流通しない素材を提供する用意がある旨が書かれてあった。

 王子視点、俺が強くなるのは派閥的に大歓迎なのだろう。

 

「マジか、マジか! マジかよ、オイ……!」

 

 読み進めるにつれ、ドワルフの頬は興奮により紅潮していった。

 やがて興奮が臨界に達し、イケメンエルフはムフーッと鼻息を吹いた。

 

「へっへっへっ! あっちがその気なら、こっちもやりたい放題してやるぜ! 頼む旦那、あっしに任せてくんねぇか!?」

「最初からそのつもりです。命預けるなら、ドワ……アダムスさんの武器がいいので」

「かぁ~っ! あっしが女なら惚れてたね!」

「うぇっ! 何言ってんだ坊!?」

 

 で、だ。

 無銘の後継剣についてはシャロも加えてねっとりじっくり打ち合わせ、やり方は全てドワルフに任せる事にした。

 その後は店のフィッティングルームで現在の俺の能力値を調べ、使いやすい重さや長さなどを計測したりした。オーダーメイド武器製作で二番目に楽しい時間だな。一番楽しいのはスキル構成考えてる時だってそれ一番言われてるから。

 

「へへっ、へっへっへっ! こいつぁたまんねぇ! 過去現在未来のあっし史上最高の剣に仕上げてやるぜぇ!」

 

 完全にキマッておられる。

 さっそく準備に入ったドワルフと別れ、俺とシャロはそのまま防具屋に向かって行った。

 

「お久しぶりです、イシグロ様。お噂はかねがね……」

 

 ドワルフの言う通り、俺は贔屓の防具工匠のセオドロスさんに紹介状と王家のお手紙をお渡しし、新しい防具の製作を依頼した。

 現在の鎧と同様に、デザインはプロにお任せである。とにかく動きやすいのでよろしく。依頼だけしてバイバイである。

 ドワルフはともかく、セオドロスさんは式には呼ばない。呼んだところで向こうさんも困るだろう。

 

「亭主殿はあんま交流ないんだな」

「なくはないけど、忙しい人多いからね。特に今は」

 

 身内以外の招待客はこんなもんだろう。

 まさか、一介の冒険者のホームパーティに貴族や金細工を呼ぶ訳にもいくまい。妹枠としてリュドミーラを招待したいところだが、彼女も忙しいだろうしなぁ。あっ、酷使した空戦車をメンテに出さなきゃ。その時にケイン氏も招待しようか。

 

「ニーナパイセンは淫魔王国に向かったって言ってたッスよ」

 

 家に帰り、ルクスリリアから報告を受けた。招待予定だったニーナさん達は淫魔王国にいるらしい。

 なら、次の行動は決まりだな。

 

「んじゃあ、援軍ありがとうの挨拶回りやっとくか」

 

 ルクスリリアの母親にも今一度報告をしなければ。荷物をまとめて、淫魔王国にゴーである。

 草薙の剣はフットワークが軽いのだ。

 

 

 

 

 

 

 俺の気持ち的には式の前に皆の冒険者位階を上げておきたかったのだが、無銘だけじゃなく鎧まで限界なら休まざるを得ない。

 仕方ないので、俺達は挨拶回りの旅に出た。結婚式に呼ぶかどうかは置いておいて、尖兵戦でお世話になった関係者に菓子折り持って挨拶する為だ。

 

 まずは淫魔王国だ。尖兵戦では女王陛下自ら戦場に来てくれたし、招待予定のニーナさん達もそこにいるのである。

 ていうか、俺は純淫魔契約者であり準淫魔騎士なのだ。意外と俺個人との関係も深いのが淫魔王国だったりする。

 何よりルクスリリアの母親をお呼びせねば。旅券を持たぬ彼女が外に出る場合、同行者が必須なので。

 

「皆様ご覧ください。これが真実の壁尻でございます。こちらにイチモツを挿入し、嘘吐きかどうか判断します。どうぞご自由にお挿入れください」

「まさか、ワシのような温厚篤実な大聖人が嘘などオォン♡ んほおおおお♡」

「嘘吐きは見つかったようだな」

 

 そんな感じでケフィアムに到着したらば、相も変わらず同じ世界とは思えない光景が広がっていた。

 俺はこの光景を守る為に戦っていたのだ。そうかな、そうかも。

 

「おっ、やってるやってるッス」

「……相変わらず賑やかね」

「賑やかでいいんかのぅ」

「アタイはもう慣れちまったよ……」

 

 ボーイハント中の淫魔さん達は置いといて、そのままホテルにチェックイン。淫魔騎士経由で陛下に面会希望の打診をして、待ち時間にニーナさんを捜した。

 

「それは素敵ですね! ぜひお祝いさせてください!」

「おめでとうイシグロ! 本っ当におめでとう! お前は最高だよ、うんうん!」

 

 するとだ。なんとニーナさんとはホテルで鉢合わせした。曰く、グレモリアさんと三人で旅行中だったらしい。

 ちょうどいいので結婚式に招待すると、彼女等は快く応じてくれた。クリシャナさんがニッコニコな理由は察するに余りある。

 

「まさか貴女が結婚するなんて、予想外にも程がありましてよ」

「まぁ性奴隷はともかく、淫魔にとって結婚を幸せに思うかどうかは淫魔によるッスよね~」

 

 一方、グレモリアさんはルクスリリアに悪友を見送るような目を向けていた。

 一部例外を除き、淫魔は恋人を作らない。その性質上、結婚の概念も理解できないそうだ。理解できないなりに、グレモリアさんはルクスリリアを祝福していた。

 

「ようこそおいでくださいました。こちらで陛下がお待ちです」

 

 翌々日、俺達はケフィアム城に入った。そんなに急いでなかったのだが、急遽時間を作ってくれたみたいだ。

 通されたのは謁見の間ではなく、以前も使った会議室だ。対面して挨拶した後、俺は淫魔女王に援軍ありがとうと頭を下げた。

 

「んぅ~」

 

 そんで流れるように結婚式についてお話しすると、彼女は巨大な乳を持ち上げるように腕組みしながら何とも言えない表情を浮かべてみせた。

 はて、何か拙い事でもあったろうか。俺とルクスリリアが結婚する事自体は既にご存じなはずだが。

 

「ねぇ、イシグロくん、それからルクスリリアちゃん達」

 

 ややもあり、彼女は大きな胸をバルンと揺らし、上の口を開いた。

 

「それ、ウチでやってくれない?」 

「え? それっていうと」

「結婚式。淫魔王国でやらない? それなりに広い会場でさ」

 

 思ってもみない提案だった。皆もびっくりしている。

 予定では身内だけの慎ましやかなホームパーティにするつもりだった。というのも、グーラを筆頭にうちの一党は若干陰キャ寄りの集団であり、人の多い場所を苦手としているのである。

 

「親しい人だけっていうけど、その親しい人は皆とっても偉いじゃないの。逆に呼ばないと失礼かもかも。イシグロさんの存在自体も大きくなっちゃったからね~」

「そうでしょうか? 私は一介の冒険者なのですが。戦功はともかく、そういう扱いをしてもらう契約でしたし」

「後々はそれでいいとして、一回はデッカくアピールしておかないと。こっちは公私ともに偉い人と仲良いんだぞ~って」

「そんなもんでしょうか? お忙しいでしょうし、アリエルさん達を呼ぶ予定はなかったんですけど」

「偉い人が忙しいのは色んな所に顔を出すからよ。イシグロさんの結婚式なら普通に空けて来るはずだわ。家でやるのは別の日でいいんじゃない?」

「あー、外向けの披露宴みたいな」

 

 てっきり、アリエルさん達お偉いさん相手には事後報告でいいと思っていたのだが、立場上それは拙いそうだ。

 一応、俺は正式に第三王子派閥に所属する事になったのである。放っておいてくれというスタンスは尊重されるものとして、一回は周囲にアピールしといた方がいいらしい。ヴィーカさんが来るなら、尚の事。

 

「ですが、私には高貴なゲストを。それも多人数をもてなす器量はありません。分不相応かと」

「安心して。万事抜かりなく私がやるわ!」

「それは悪いような……」

「ううん。実のところ、淫魔王国にこそメリットがあるのよ。ウチとしては純淫魔のルクスリリアちゃんを通して結婚はいいものですよって宣伝できるわ。そしたら結婚に、ひいては純淫魔契約に憧れる娘も増えるでしょう? イシグロくんは派閥の内外にアピールできる、私は国内の淫魔にアピールできる。ウィンウィンだと思わない?」

 

 淫魔女王はそう言うが、皆としてはどうだろう。

 皆を見る。こういう時、嫁さんに「好きに決めていいよ」って言ったら喧嘩になるって聞いたから、いつも通りに報連相だ。

 

「要するにデカいパーティになるって話ッスよね? あんま堅い感じにならねぇならいーんじゃないッスか?」

「ルクスリリアのお義母さんも呼びやすいでしょうし、ボクはいいと思いますよ」

「お祖父様は騒がしいのは苦手だと思うのだけれど。そのあたりは配慮して頂けるのかしら?」

「まぁそこまで空気読めん奴はおらんじゃろ。そういう輩とは絡んどらんし」

「つか、今更だけどヴィーカ様が来る宴に坊呼ぶのか。あいつには言ってねぇよな? それヤバくねぇか? 主に坊の心臓が」

「ならもう武帝代行とか呼び出しちゃいます?ラリスの重鎮は来てるけどクーシェンの重鎮は来ないんですかぁ?って。血相変えて飛んでくると思いますよ。おもろ」

「ん、ファリナは喜ぶと思う。あの人達、騒がしいの好きだから」

 

 報連相の結果、俺達の結婚式は淫魔王国で執り行う事と相成った。どっちかというと披露宴だな。

 で、それが終わったら人数搾った身内オンリーのパーティを行う。これなら八方丸く収まるというもの。

 

「決まりね! ささっ、今日中に大枠の計画だけでも立てちゃいましょう!」

 

 式場を何処にするか。誰を呼ぶか。あの人を呼ぶならこの人も呼ばなきゃ。そういう政治バランスは淫魔女王にお任せし、譲れない部分は都度お伝えした。

 その他、詳しい内容は後日相談する事となり、それまで考えといてで解散である。

 

「まぁ平民の結婚式だから、格式も何も言われないわよ。そのへんは安心して」

 

 結婚式の事を話す陛下は、何故だかすごい楽しそうだった。

 最初は面倒臭そうにしていたエリーゼも、陛下主導でデカい宴やれるならとそのうちやる気になってくれた。

 

「なんかえらい事になってるな……」

「淫魔王国なら丁度いいと思います。政治的にはラリス寄りですが、ラリスそのものではないのでご主人様の立ち位置も言外にお示しできるかと」

「はえ~、グーラってそういうの分かるんスね~」

「本で読みました。第二大災厄前、王のいない国と王が統べる国の戦争を歴史群像劇風にまとめたもので、それぞれの国の栄枯盛衰を……」

「もう完全に文学オタクですね。全身が活字中毒を体現してますよ」

「アタイこういう時のグーラ結構好きなんだよな。好きなこと話してる時の若者ってなぁいい顔するんだ」

 

 前世、姉の結婚式は喫茶店を貸し切って行われていた。

 てっきりあんな感じになるかと思ってたが、予定より随分と大きくなる見通しである。

 

 そんな感じで、結婚式の内容を改めて決め直すのであった。

 皆が楽しそうで何より。俺もちょっぴり現代知識披露しちゃうぞ、と。




◆尖兵戦あれこれ◆

・統率個体“笛吹き”
 圏外に自然発生した鼠の魔物で、尖兵戦に備えていたところを猫又一味に捕縛される。
 以降は猫又呪術師の傀儡となって人類殲滅の本能のまま生きていた。

・呪術師の猫又
 例によって他の姉妹と全く同じ容姿をしている。
 蛮族竜兄弟を唆し、エリーゼの不胎の呪いをかけた張本人。その際、エリーゼの血を採取した。
 現在はラリスの研究所に収容されている。

・魔銀龍
 猫又一味が開発した人工魔物の一種。竜族を生贄に魔龍を生成する。棺桶にいたのはレギーナを造る過程で生まれた廃棄予定の竜族。
 その強さは素体となった魂の性能で変動する。その為、小魔銀龍は不完全だった。

・宝銀竜テレーゼ
 ヴィーカの娘にして、美形の多い異世界でも最上位の美女。その美貌と能力から蝶よ花よと育てられ、見事に増長していった。アヴァリとは政略結婚だったが、一応愛し合ってはいた。
 以降、子ガチャに失敗しリセマラしようとしたらアヴァリに拒否られ、キレて旧魔王軍と繋がるようになる。フラム城の警備やアヴァリの権能の詳細を漏洩し、猫又経由で蛮族竜兄弟をけしかける。アヴァリが勝つだろうと思ってたら負けちゃってビックリ。エリーゼを殺すとパパに怒られるかもなので、生かさず殺さず奴隷落ちさせた。それから銀竜一族を出奔し、新魔王の事を知って完全に解放軍入りした。
 現在はラリスの拷問官に訊問を受けている。実際のところ、過去から現在までテレーゼは全く病んでおらず、ただ性根が腐ってて精神年齢が幼いだけである。責任転嫁の天才。

・傲魔竜アヴァリ
 一般通過はぐれ竜。幼竜期から全体的にスペックが高く、その強さ故に銀竜一族にスカウトされて一族入りした。テレーゼの事はその幼稚さ含めて財宝として愛していたが、当のテレーゼが娘であり財宝であるエリーゼを間引こうとしたため対立。エリーゼを守る為、彼女を宝物庫に隔離した。
 尖兵戦時点のイシグロとタイマン張っても余裕で勝てるくらいには強いのだが、如何せん当人の傲慢過ぎて蛮族竜兄弟に敗北した。二対一でも油断していた上、蛮族竜兄弟の権能がチート過ぎたせいである。竜族同士の戦いはスタンドバトルめいているのだ。

・レギーナ
 楽園の技術と箱庭のノウハウを応用して造られた人工銀竜の成功例。一応、テレーゼから生まれてきた。
 見た目はエリーゼそっくりで、エリーゼをそのまま成長させたような美少女。身長はイシグロより少し高いくらい。両眼に低級魔眼が移植され、その際に目の色がエリーゼと同じ夏空のような青になった。以降、テレーゼは娘と目を合わせなくなった。
 歩けば即武術で虐待じみた訓練を課せられてきたが、レギーナなりに母の事は愛していた。ただ過酷な訓練のせいで心身ともに限界を感じ、母は好きだけど休みたいとで反抗期に突入した。
 権能は“虚無”。武器や魔力に虚無属性を付与し、任意に指定した値をゼロにする。主な使い方は自身の空気抵抗をゼロにしたり、接触した物体の耐久値をゼロにしたり。テレーゼ的には自分と同じ祝福にしたかったが、性能は高いのでまぁヨシとなった。
 現在はヴィーカに稽古をつけてもらっている。主に手加減する方法を練習中。
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