【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

27 / 322
 感想・評価など、ありがとうございます。楽しんで書かせてもらってます。
 誤字報告もありがとうございます。感謝感謝アンド感謝です。

 キャラ募集の方もありがとうございます。
 やる気に繋がっています。
 応募キャラは何食わぬ顔して唐突に現れます。気負わず構えず読んで頂けると幸いです。


あわてるな。これは淫魔の罠だ

 前世、俺は童貞だった。

 

 当然、年齢=彼女いない歴だし、異性とデートなんてした事ない。ロリコン故に風俗にも興味がなかった。

 中学は共学だったが、高校は男子校だったので俺もその周囲も女っ気ゼロ。彼女持ちはクラスで一人、彼のあだ名は“勇者”だった。

 佐藤くんも加藤くんも後藤くんも江藤くんも斎藤くんも安藤くんも須藤くんも伊藤くんも遠藤くんも、仲のいい友達はみんなみんな童貞だった。

 

 休み時間、日に一度は誰かが「彼女欲しい~」と言い、「わかる~」からのどんな彼女がいいか大会みたいなのが開催されたものである。

 まぁすぐ猥談に移行する訳だが……。

 

 そんな中、こんな話題が振られた事があった。

 彼女と、どんなデートをしたいかというものだ。

 

 佐藤くんは言った。「おうちデートで一緒にハッピーシュガーライフ観たい!」と、彼は百合豚だった。

 伊藤くんは言った。「動物園デートがしたい!」と、彼はケモナーだった。

 安藤くんは言った。「知るかばか! そんな事より“休憩”だ!」と、彼は性欲魔人だった。

 

「石黒、お前は?」

 

 俺は、その問いに、なんて答えたのだったか。

 俺がロリコンである事は、皆が知っていた。多分、ほとんどネタというかソフトな受け取られ方をしてたと思う。実際、法を犯す類の人ではなかったのだから。けれども、異世界無罪となれば即実行なあたり、まぁガチだ。

 

 デートなんて、考えた事がなかった。

 

 当時、俺は俺とロリが付き合う……という妄想をした事がなかった。スケベな事しか考えてなかったのである。

 交際など、全くもってリアリティがないし、もしリアルならポリスメン案件である。マッポ相手は股間が縮む。俺はNTRモノの次に婦警モノが苦手だ。

 そんな俺は、どのように返したのだったか……。

 

 あ、いや思い出した。

 

 どんなデートがしたいか。

 その質問に、俺は……。

 

 

 

「お待たせ、待った?」

「きひひっ、今来たとこッス~♡」

 

 王都西区、噴水広場にて。

 俺は、先行して出かけていた奴隷二人と合流した。

 この日の為、二人には先日購入したいつもと違う夏用おしゃれ服を着てもらった。とても可愛い。ルクスリリアの場合、普段からサマースタイルだが……まぁそれはいい。

 

「これ、何の意味があるのかしら……?」

 

 打ち合わせ通り応じてくれたリリィと違い、エリーゼはいつもの腕組みモデル立ちで心底不思議そうな顔を向けてきた。

 エリーゼの言う通り、意味はない。普通に一緒に出ればよかっただけである。だが、有意義なルーティンだと思うのだ。

 

「これやるとテンション上がるんだよね」

 

 世界関係なくいつも適当な服を着てる俺も、今日は二人と釣り合うように異世界ではオシャレとされる服を着ている。

 なんか、派手な青いシャツみたいなの。ブレスオブザワイルドのリンクみたいなんである。造形はシンプルだが、日本だと目立つ気がする。

 

「アタシもよくわかんないッスけど、なんかやるとご主人が喜ぶんスよね」

 

 ルクスリリアには、いつものサマーメスガキコーデではなく少し大人しい印象の服を着てもらった。

 頭には鍔の広い白帽子、服はシンプルな白いワンピースに白ブーツ。まさにサマー童貞特効スタイルである。いや童貞を卒業した俺も大好きなあたり、ロリコン特効なのかもしれない。

 

「そう……なら、次からはそうするわ」

 

 エリーゼには、所謂地雷系のファッションをしてもらった。とはいえ異世界にそういうのはなかったので、地雷系モドキだが。

 レース付のブラウスに革の靴。その他リボンとかカチューシャとかで飾り立ててみたのだ。パーツだけ見るとなかなかの地雷っぷりなのだが、エリーゼが着ると気品が勝って最終的にお嬢様ファッションになるのだから不思議だ。

 

「じゃあ行こうか」

「はいッスー」

「ええ……」

 

 三人、俺を真ん中に並んで歩く。地球オタク視点、リンクとリーリエとお嬢様のコスプレイヤーが歩いているように見える事だろう。

 だが、異世界じゃこんなの普通である。いや、どっちかというと地味めである。異世界人はみんな割と派手だ。地球とは別方向に。

 

 

 

 さて、買い物デートとは言うが、実際はただの買い物デーである。

 前は武器を注文したが、今回は別の物。RPGにおいて武器くらい重要な装備、防具とアクセサリーの購入だ。

 

 ルクスリリアは元銀細工冒険者の淫魔剣聖女史の装備を付けているが、エリーゼにはまだない。俺も俺で、良質だけれど何の補助効果もついてない店売り品装備である。

 あと。これまで無視してきた装飾品も買うつもりだ。同業者の中には指輪とかピアスとかしてる人がいたのだが、彼ら彼女らはゲームで言うトコのアクセサリーの欄もしっかり埋めてたのだな。俺は空欄のままだったが。

 良い武器の良さを知った今、良い装備を揃えない理由がない。多分、遅すぎるくらいだ。

 

「お久しぶりです。素材持ってきました」

「これはイシグロ様、ようこそいらっしゃいました。お久しぶりです、店主のセオドロスでございます。さぁ、こちらにどうぞ」

 

 まずやってきたのは、防具屋さんだ。

 ここは以前ルクスリリアの防具を買ったところで、当時は知らなかったが此処でもドワルフ店みたいに防具をオーダーメイドできるサービスがあるというのだ。

 曰く、店主のおじさん紳士――セオドロスさんという――は防具と装飾品の工匠資格を持っているとかで、二度目の来店時に相談と見積をしてもらったのだ。

 何の相談かというと、エリーゼと俺の防具。あと三人分の装飾品についてだ。今の俺は、もうただ質の良い装備じゃ満足できねぇのだ。

 

「えーっと、コレとコレとコレとコレと……」

 

 招かれた個室にて、アイテムボックスから集めたボスドロップ品を取り出していく。

 白雲羊(がいあくひつじ)の毛皮に、暴れ草蛇(くされクソスネーク)の茎、巌鎧猛牛(ザコウシ)の革。貪食毒花(どくどくウンコフラワー)の花弁と、火吹き大樹(やみおちウイスピーウッズ)の樹液。大首領蜥蜴(ザコトカゲ)の鱗と、あと暗黒蝙蝠(ザココウモリ)の翼膜。最後に色んな希少鉱石を必要個数……。

 それを、台の上に次々載せていく。個数自体はさほどでもないが、一個一個がデカいので人間用装備など余裕で作れちゃうのだ。

 

「……で、コレで最後ですかね」

「はい。しかと確認させていただきました。こちら、契約書となります」

 

 デザインとか性能とかは既に相談済みなので、あとはこの契約書にサインすればOKだ。サラサラ~で終わりである。

 

「それでは。出来上がり次第、使いの者を向かわせます。今後とも、我が商会をご贔屓に」

 

 お見送りをされ、店を去る。多分、三十分もかかっていないと思う。

 デートなら完全に減点だろうが、地球で童貞だった俺が異世界で気の利いたデートプランなど組めるはずもない。ぶっちゃけ、いつもの買い物を少しオシャレして行っただけである。

 

「いやー、これでやっとご主人がちゃんとした装備つけてくれるようになるんスねー」

「リリィもオーダーメイドの存在は知らなかったじゃん」

「アタシが言ってるのは見てくれの話ッスよー」

 

 今回、俺が注文したのは、エリーゼと俺の防具。それと三人分の装飾品である。

 ルクスリリア用の装備は「え? もうコレあるしいらなくないッスか?」という当人の一言で一旦無しになったので、とりあえず装飾品のみ。

 ちなみに、今の今まで知らなかったのだが、紳士店主曰く装飾品は一人一つが常識らしい。どうやら、補助効果付きのアクセを二つ以上付けると、どの効果も発動しなくなるんだとか。

 つまり、当初俺が考えていた指輪十個装備フルアーマー・エリーゼ計画は無理だったという事である。

 

「防具のデザインを考えるというのは、思いの外楽しい経験だったわね……」

「それは良かった」

「ええ。これまでは用意された服しか着てこなかったし、竜族に防具はいらないもの」

「そういやー、鱗纏った竜族って、元々着てた服とかどうなるんスか?」

「どうって、そのままよ?」

 

 あれこれ相談した結果、エリーゼは指揮系のジョブを育てる事にした。

 指揮系というと、割と作品によりけりな気がするが、この世界では戦士レベル20で生えてくる“指揮官”がソレにあたる。

 ちょっと触ってみたが、当時ソロ専だった俺には全く関係のない、スキルで味方を強化するタイプのジョブだった。一応、魔術師よりは前に出て殴れるっぽい。

 なので、エリーゼ用防具はソレっぽいのを注文した。完成が楽しみである。

 

「エリーゼの防具にはあれだけ時間かけてたのに、ご主人の防具は一瞬で決まったの何なんスかね」

「動きやすいのでって……もう少し、銀細工相応の装備にしたいとは思わないのかしら」

「動きやすさは大事でしょ。俺は俺が着飾る事に興味はないの」

 

 ちなみに、俺の防具注文は「軽くて堅くて動きやすいの」である。

 結果、やっぱりというか何というか革装備になった。完成予想デザインを見せてもらったが、地球基準だと派手で異世界基準だと地味なビジュアルであった。

 しかし性能は最高峰。黄金の鉄の塊にも負けないくらい強力な革の装備である。

 

「で、リリィはホントに何もいらないの?」

「え? あー、そうッスね。特には」

 

 そして、コレである。

 最近はエリーゼ用の買い物しかしてなかったので、ルクスリリアにも何か買ってあげようとしたら……何も欲しい物はないというのである。

 真のイケメンなら相手の欲してるモノをクールにプレゼントするのかもしれないが、俺にそんな能力はない。訊いてもこうである。チートがあってもわからない。チートは俺に何も言ってはくれないのだ。

 

「ルクスリリア、貴女の主人は貴女が喜ぶ顔が見たいのよ」

「ん~、つってもマジで無いんスよね~。いや、前は欲しいモンいっぱいあったんスけど……」

「え、じゃあそれでいいんじゃ?」

「ヒトオスの童貞♡」

 

 それはもう売却済みだし、もうルクスリリアのカートには俺発送の商品がいっぱいである。

 それに、申し訳ないが他男の童貞は俺の脳みそが破壊されるのでNGだ。

 

「あとは……エロ本? でももういらないんスよね~」

「他は?」

「……強さ?」

「今鍛えてるところじゃない」

 

 ルクスリリアさん、メスガキというキャラ性の割には、存外無欲な気質なのかもしれない。

 というか、もう満たされていると捉えていいのだろうか。

 

「ん~? あっ、じゃあアレ買ってほしいッス」

 

 そう言って指差した先には、如何にもな魔術師さんが店員をやってる屋台があった。見るに、何かお菓子の販売をしているようだ。

 ちょうどそこにカップルっぽい獣人男女が現れ、何かを注文した。店員魔術師は簡素な器を手に、見たことない魔道具を操作して、そこからニュルニュル出てきた白いものを器に入れ、出来上がったものに木匙を差してカップルに手渡した。

 カップルは近くのベンチで仲良く食べ始めた。ソレは白くてクリーミーで、そんな素晴らしい氷菓を買える二人は、きっと特別な存在なのだと感じた。

 

「アイスじゃん」

「知っているのかしら、アナタ?」

「多分……。王都にあるとは思わなかったけど」

「ほえー、ご主人よく知ってたッスねー。アレ、淫魔王国で最近出来た“淫魔氷菓(サキュバス・アイス)”ッスよ」

「食べたら発情しそうなお菓子だぁ……」

 

 それはそれとして、ロリのお願いは聞かねばならぬ。

 俺は早速、異世界アイスクリームを注文する事にした。

 

「すみません。淫魔氷菓ふたつ」

「え、銀細工……あっ! はい、氷菓二つですね! 承りました!」

 

 一瞬驚かれたが、魔術師店員はすぐに営業スマイルになった。彼の笑顔は引きつっていた。なんかもう銀細工外したくなってきたな……。

 けど、ギルドから街では出来るだけ付けてるようにって言われてるんだよな……。

 

「あの……ふたつで2000ルァレになります……」

「はい」

 

 アイスふたつで2000ルァレ……。内心ぼったくりじゃねとか思ったが、まぁそうならしゃーない。

 やがて出来上がったアイスを持って、人気のないとこのベンチに座る。それから二人にアイスを渡した。

 

「はい」

「あざーッス」

「あら、私もなの?」

「実は俺、甘すぎるお菓子苦手でさ……」

 

 異世界アイス、興味がない訳ではないが、注文を二つにしたのはそれが理由だった。

 前世、高校生あたりから何故だか甘い物を美味しく感じなくなったのである。別にお菓子の全部が嫌いになった訳ではないが、アイスクリームとかパフェとかはキツくなった感じである。実際、今でもチーズケーキとかは好きだ。

 

「私に買い与えたらルクスリリアへの労いにはならないんじゃないかしら……?」

「わ! めんどくせー! いいじゃないッスか別にそういうのー!」

「そう……貴女がそう言うなら、いいのでしょうけど……」

「ごめん、俺もあんま考えずに注文しちゃった」

「ご主人も真面目っつーか律儀っつーか。二人とも、もっと気楽に生きれんもんスかね?」

 

 そうこう言いつつ、溶ける前にと食べ始めるロリ二人。俺的にはその光景だけでお腹いっぱいである。

 淫魔氷菓という名の異世界アイスクリームを食べるロリは、とても幸せそうな顔をしていた。

 

「美味しいわね……。冷たくて、甘い……」

「淫魔の乳は世界一ッスからね!」

「なんか別の意味に聞こえるな」

 

 雑談しつつまったりしていると、ふいにルクスリリアが俺の方を見てきた。

 それから何か思いついたらしく、ニタァ~っといつものメスガキスマイルを浮かべた。

 

「ご主人様ぁ♡ はい、あ~ん♡」

 

 かと思えば、匙にすくったアイスを差し出してきた。

 なので、食べた。

 

「あ、アナタっ……?」

 

 よく味わって、飲み込む。幸せの味がした。

 ロリに「あ~ん♡」されるなど、全ロリコンの夢だろう。

 

「きひひ♡ 予想通り、ご主人こういうの好きなんスねー♡」

「うん、生きてて良かった……」

「そんな、はしたないわ……」

「あれぇ? どしたんスかエリーゼ様ぁ? 氷菓(アイス)食べないんスかぁ? もしかしてぇ、羨ましいんスかぁ?」

「くっ……」

 

 幸せを噛みしめていると、もう一人のロリから魔力の籠った視線を頂いた。

 見ると、エリーゼが無言で匙を差しだしてきた。

 

「えっと、食べていいの?」

「……早くなさい」

 

 そう言うエリーゼの顔は真っ赤になっていた。恥ずかしいらしい。

 まぁロリの「あ~ん♡」なんてナンボあってもええですからね。早速エリーゼの匙からアイスをもらった。

 

「ど、どう……?」

「すごく嬉しい」

「なら、いいのだけれど……」

 

 隣では、ルクスリリアがメスガキスマイルでエリーゼを眺めていた。

 その時、直感した。あ、コイツこういうの欲しがってるんだなって。

 

「ご主人様♡ もひとつどーぞッス♡」

「か、かとうしゅぞく……!」

 

 その後も、ルクスリリアは俺を経由してエリーゼで遊んでいた。

 恥ずかしがるエリーゼが面白かったらしい。俺視点かわいい以外の感想が持てないのだが、まぁ喧嘩じゃないしいいや。

 俺、得しかしてないし。

 

 それはそれとして、少し前まで童貞ロリコンだった俺が、どういう訳だか異世界ロリ美少女に挟まれて交互に「あ~ん♡」されるなど、誰が予想できただろう。

 幸せ過ぎる。俺、明日死ぬのかもしれない。

 

「異世界来てよかった……」

 

 しみじみ、そう思う。

 命賭けてダンジョンアタックした甲斐あるよ、ほんとに。

 

「ほらご主人様♡ こっち向いて~♡」

「もう、恥ずかしいわ……」

 

 結局、淫魔氷菓はほとんど俺が食べる事となった。

 甘いのは苦手だが、とても美味しい思いをした。




 感想投げてくれると喜びます。



 現在、本作に登場するキャラを募集しています。
 ご興味のある方は是非、気軽にご応募ください。
 詳しくは活動報告にて。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=296177&uid=59551

 一緒に世界観を広げていきましょう。



◆本作におけるtier◆

・tier1:銀竜剣豪ヴィーカ(伝説級)
・tier2:現ラリス国王(環境トップ)
・tier3:フルチンブラザーズ(種族代表)
・tier4:淫魔女王(種族屈指)
・tier5:宝銀竜テレーゼ(金銀最上位)
・tier6:グレイソン(金銀上位層)
・tier7:イシグロ(平均銀細工)
・tier8:銀細工下位層


 参考までに、能力値だけ見るとこんな感じです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。