【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告もありがとうございます。お世話になっております。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
前半三人称です。
氷柱迷宮。
異様に煌めく星空の下は、見渡す限り氷で埋め尽くされていた。
凍った大地に凍った大樹。天に突き立つ逆さの氷柱。その光景はさながら自然に生まれたスケートリンクのよう。
美しくも儚いこの迷宮では命の宿った氷の魔物が跋扈して、ただ侵入者を狩る時だけを使命と本能で以て待ち構えていた。
獣である。半透明の氷の獣が、凍てつく息を撒き散らし、群れを成して駆けている。
獲物を屠るべく、敵の命を刈り取るべく、魔物の本能を剥き出しに、氷の獣は迷宮の排除機構としての役割を全うしていた。
対するは、常人ならば見上げる程の人影であった。一見すると、影は全身鎧の
「バームモジュール解放、ブラッドドライブ出力上昇。いち、にぃ……第一セーフティ確認。射撃準備開始……」
首無し騎士が唸り、鎧の内部に血が巡る。
迫り来る獣へと両手を向ける。真紅の光が掌に凝集していく。炉心を触媒とする高度な純血魔術。吸血鬼族に由来する特殊な魔力を圧縮し、弾丸として成形しているのだ。
出力制限。射撃準備完了。操縦席から狙いを定め、そして……。
「ブラッド・ブラスター!」
BLAM-BLAM! 次の瞬間、二発同時に発射された魔血の銃弾が氷狼の一頭を貫通し、ものの見事に爆発四散させた。
威力は充分、しかして他の獣は見てから避けた。これが迷宮の魔物、これが魔の狼。このままでは再装填の間に接近される。
予定通り、作戦通り、そして文字通りに、首無し騎士は次のステップへ移行した。
「ステップモード!」
攻撃を止め、跳躍する。全高三メートル弱の巨体が、腰膝足首を使って斜め四十五度後方に大きく跳躍し、天高く宙を舞ったのである。跳躍の瞬間、騎士の足裏には真っ赤な光が散っていた。
BLAMBLAMBLAM! 落下中、掌を下方に向けて魔血銃を連射する。都合十二発を撃ち込んで、仕留めた数は二匹だった。連射モードは威力が低い上、命中精度に難ありといったところ。
「ぐぅっ、ホバーモード!」
巨騎士が着地し、氷の大地が僅かに沈む。次いで足裏から赤い魔力が噴き出したと同時、鉄巨人の両肩から真紅の魔力が伸び上がった。その姿、まさしくマントを纏った騎士のよう。
かと思えば。何と迫る獣に胴を向けつつ滑るようにして後退していくではないか。
爆ぜるような銃声。敵方を見ながら後退しつつ、なおも襲いくる魔物に迎撃血銃を連射する。当たれば止められるが、仕留めるには至らない。
高速で動く首無し騎士だったが、地上では魔物の方が速かった。そのうちの一匹が勢いに乗って飛び掛かる。
あわや衝突といったその時、騎士の両腕に紅が迸る。
「ブラッド・ブレード!」
後の先、一閃。握り込んだ手の甲から深紅の結晶刃を生成。風を切るように薙ぎ払い、飛び掛かった魔物が両断された。
二撃目。後退中に片足側面から氷の大地に杭を刺し、反転。両肩の推進魔力が翻り、そのままの意味の返す刀が次なる獣を切りつけた。
「一つ、二つ! このッ、ブラスタァー!」
SHNK! SLASH! BANG! 右の血刃で切り裂き、左の血銃で撃ち抜く。足裏噴射と関節駆動で小刻みに跳ね、両肩の推進装置が鉄の巨体を流れに乗せる。
やがて、首無し騎士を襲っていた魔物は一匹残らず粒子に還った。立ち止まると同時、両肩と両足首から青白い修復材が間欠泉めいて噴出する。
ふぅ、と。首無し騎士――完成型リヴクラフト一号機、エメスアルマに騎乗するヘカテーニャが緊張の糸を緩めた。
「もう来たんか。やっぱヤバいな、迷宮」
休む暇なく、パイロットの視線の先から轟音を立てて駆けてくる影が一つ。
首無し騎士の三倍はある巨大な氷象が、大地の破片を巻き上げながら古代戦車めいて突進してきたのだ。
「あかん! 連射モードは何発当てても無理や!」
BRAKKAKAKAKA! ホバーを用いての引き撃ちを試みるが、深紅の弾丸は氷の外皮に阻まれて威力を発揮しなかった。
プランを変更する。杭を突き立て急停止し、衝突する瞬間に噴射横ステップで回避。通り過ぎ際、結晶血刃で後ろ脚を切りつける。結果、バランスを失った巨大氷象は勢いよく転倒し、大地を滑って大樹に当たって停止した。
「魔力過剰充填、【逃れ得ぬ闇の茨】!」
炉心を触媒に魔法を詠唱する。巧みな魔力操作。闇の茨が藻掻く氷象の爪先を縛りあげた。
通常火力では時間がかかる。魔法を詠唱しても削り切れず、すぐに仲間が来て嬲り殺されるだろう。
であれば、今がその時だ。
「アンカー固定! デトネイターモジュール接続! ブラッドドライブ、リミッター解除!」
再度、大地に杭を突き立てる。祈るように両掌を合わせ、手と手の間に真紅の魔力を籠めていく。次いで胸の装甲を展開し、高負荷状態の炉心を曝け出す。
両手と炉心の中心点に真紅の魔力が凝集し、圧縮され、より強い純血魔術を形作る。
やがて深紅の魔力が臨界点に達し、眩い程の緋色に染まった。
「スカーレット・デトネイター!」
KABOOOOOOM! 破壊の奔流が解き放たれ。地割れの如く大地を削りに削り氷の巨象を飲み込んだ。
直撃、大爆発! 大小の氷粒が舞い上がり、真っ白な水蒸気が爆風に乗って吹き荒ぶ。
「やったか!?」
やってない。瞬きの直後、【氷の礫】が飛来する。脊髄反射で両肩ユニットから魔血を展開し、勢いを減じて装甲で受ける。
破壊し尽くされた射線の向こうから、満身創痍の氷象が駆けてきた。野生の魔物なら大人しく死んでいるだろうに、迷宮の魔物は命を賭して人類を殺すのだ。
対し、機械仕掛けの首無し騎士は動けずにいた。エネルギーの欠乏――要するにパイロットの魔力が足りなくなったのである。あぁここで終わりかと、ヘカテーニャは冷静に思考し、刹那の間に諦めた。
「ギブアップ! ダーリン助けてぇー!」
そして、宣言した。
実戦テストの終了を。
「あいよ」
頭上から声。瞬間、耳を劈く轟音が響き渡り、氷象の頭を超高速の【魔力の礫】が貫いた。
貫通弾によるヘッドショットである。氷象は項垂れるように倒れ伏し、断末魔の叫びを上げるようにして粒子へと還った。
「ナイスファイト。普通に良かったと思うよ」
空中から降り立った黒髪の男。その手には変な位置で曲がった魔法の杖――否、長銃杖があった。
魔力の足場に立ち、グリップを握って銃床を肩に、前護木に沿えた左手から魔力を流し込んでいく。遠くから入ってくる魔物に狙いを定め、心の中で引き金を引いた。
「【
術者固有の略式詠唱。三連続の疑似銃声。氷猿の頭に三発、隣の氷兎の頭に三発、一匹につき三発ずつ貫通属性を持った超音速の【魔力の礫】が三点バーストで解き放たれた。
機械じみた命中精度だった。通常の【魔力の礫】では決してあり得ぬ弾速と射程。毎日のように繰り返してきた射撃訓練によって練られた魔法は必殺の魔弾と化したのである。
一頭三点。いつしか群れは一匹となり、残る魔物は大熊だけになった。
足場を降り、大地に立つ魔導銃士。牙を剥いて迫る氷熊、至近距離、剣には遠く魔法には近すぎる。氷熊の突進に、魔弾の主――イシグロは冷静に銃杖を向けていた。
「【
銃声に似た轟音。九つに分かれた【魔力の分かれ礫】が剣の間合いで解き放たれ、氷熊の顎をかちあげる。僅かな間、あまりに無防備な状態を作り出した。
考えるより早く、イシグロは踏み込んだ。前へ、懐へ。その土手っ腹に銃杖を突き立て、致死の魔法を再詠唱。
「【
魔法による会心の一撃。カウンター散弾による怯みからの前ステ会心。パリィ致命に次ぐゲーマーの嗜みである。
会心補正の加わった魔法で大ダメージを受けた氷熊は、仰向けに倒れて粒子に還っていった。
「ヘカテ、今のうちに補給しよう」
「あんがとダーリン。はむ♡ ちゅぅ~♡」
敵影消失。通常ジャンプでリヴクラフトの肩に乗ったイシグロは、跪くようにしてヘカテーニャを抱き上げ頸動脈から吸血させた。
すると、物凄い勢いでパイロット及び機体にエネルギーが溜まっていった。
「んぅ~、ぷはぁ♡ よし、もう満タンやでウチもいけるで!」
「おっけ。じゃあここからは俺とヘカテでダブルスレイヤーだ」
迷宮探索はまだまだ始まったばかり。補給しているうちに次の群れが集まってきた。ここからは連携テストである。
イシグロは右腰のホルスターから短銃杖を引き抜き、左右同時にスピンコックして大小二挺のダブルトリガーを構えた。
「とりま当たるように誘導する。遠距離から狙撃してくれ」
「りょーかい! 炉心も正常に動いとる! いくで! ブラッド・ブラスター!」
そうして、二人は氷の迷宮の魔物を掃討するのであった。
当然、彼等の背後には一党の仲間が追従している。危なくなっても安心安全なのが草薙の剣なのだ。
〇
「ブラッドォ……ブレェェェッド!」
リヴクラフトは半分スーパーロボットである。何たって気合を入れて技名を叫べば実際に威力が上がるのだ。
常ではあり得ぬハイテンションでヘカテが魔法を大詠唱する。本体より大きな血刃がボスを切りつけ、杭を使ったクイックターンで再攻撃。二連続で攻撃を受けたボスは青白い粒子を噴出し、しめやかに爆発四散した。
「はぁ、はぁ……! 魔力使い過ぎて、もうエラいわぁ……」
「お疲れじゃヘカテ。よく動けてたのじゃ」
「結局、援護はいらなかったわね」
「運動下手な割に意外と戦えてたッスね」
「運動神経と戦闘IQは別って話かな」
ボスが死に、帰還水晶が現われる。しっかり残心した後、リヴクラフトは両肩から排熱して待機状態になった。
そんなロリとロボにロリーズが集まる。実際、初の迷宮でここまで動けるのは素直に凄いと思う。
上手いこと二種の特殊モードを使い分けて立ち回れてたし、何より武装の選択に迷っていなかった。ミッションランクはAにしよう。
「これがダーリンの言うとったレベルアップちゅーやつか。なんか凄い総魔力量上がっとる感じあるわ」
今回、魔物へのトドメは大体ヘカテに譲っていた。この世界にラストアタックボーナスはないが、アシストに徹した分ヘカテに多くの経験値が入ったはず。
俺はコンソールを開き、彼女のステータスを確認した。
◆ヘカテーニャ◆
妖血娘:レベル3
暗夜術士:レベル2
能動スキル:鮮血支配
生命:11
魔力:75
膂力:4
技量:9
敏捷:12
頑強:8
知力:88
魔攻:44
魔防:41
申告通り、彼女のステータスは上昇していた。上級職だけあって成長率が高い。
リヴクラフトは魔力が高ければ高いほど純粋にアドなので、普通の魔法を使うにも知力さえあれば問題ない。なので、彼女のジョブは魔力と知力が上がりやすいやつにした。
とはいえ前衛能力がカス過ぎるので、ある程度育てたら戦士育成したいなって気持ちもあったり。
「その銃杖もええ感じやね。使いこなせるんはダーリンくらいやと思うけど」
「ああ。今まで使ってこなかったのが不思議なくらい馴染む」
俺も俺で、初めて長銃杖を実戦投入していた。感想としては最の高って感じ。やっぱ良い触媒使うと世界が変わるね。
従来の短銃杖の見てくれがソードオフのレバーアクションライフルだったのに対して、この長銃杖はスタンダードなレバーアクションライフルだ。前者が魔法剣士用の立ち回り杖で、後者が魔法職用火力杖だな。
長い銃杖と短い銃杖で二挺持ちすると得体のしれない素敵パワーが湧いてくる気がする。英国面の力は素晴らしいぞ。
「まぁ問題なければ明日も迷宮行きたいけど、その前に整備せなアカンわ。炉心もそうやけど、義体のアチコチに違和感がある。計算より関節の負担が大きかったんかなぁ」
レベリングの事を考えたら連日迷宮といきたいところだが、酷使したリヴクラフトは休ませてあげないといけない。
実戦で得たデータをフィードバックしてアップデートを行う必要もあるので、これからは迷宮と工房の行き来になるかな。
「とにかく帰るのじゃ。此処は寒くて仕方ないのじゃ」
「次は温かい迷宮にしようか。砂漠とか」
「吸血鬼殺す気……あぁいや迷宮の太陽は平気なんやっけ」
「難儀なものね。吸血鬼族も」
そんな感じで、ヘカテーニャ教授はじめての迷宮は無事に踏破し、何事もなく帰還するのであった。
生でロボバトル見れたの、すっげぇ良かったゾ~これ。
それからの日々は、迷宮と工房の往復で過ぎていった。
迷宮探索でレベルアップし、工房でメンテナンス&アップデート。何たって一回迷宮行く度に動力の性能が上がるのだから、機体もそれに合わせて文字通りに魔改造していく必要があるのだ。
無論、ヘカテの愛機たるエメスアルマはそれを見越した上で設計されている。何にしても拡張性を制するモノが世界を制するのだ。
「見て見てダーリン! だいたい四秒くらい滑空できるようになったで~!」
ヘカテの魔力向上に伴い、エメスアルマの性能は底上げされていった。
まずもって稼働時間が延長され、初回と同じマニューバをしてもバテなくなったのだ。
データを基に実戦で酷使されたパーツを補強したり、調整したり、時に内部の配線を見直したり。
とにかく全体的に性能が上がったのだ。実戦データって大切なんだなって思いました、まる。
「よし、エメスアルマ改修型。ステップモード。反復横跳びテスト開始」
完成型リヴクラフト――エメスアルマは、二種の特殊モードによって巨体に似合わぬ機動力を発揮する。
一つはステップモード。脚部での通常移動に伴い、足裏から魔血を放出して瞬間的な加速を得る。
これのメリットは小回りと燃費に優れるのに加え、上方向に移動できるところだ。基本的には二足歩行の延長なので、悪路走破性も相当高い。
「ホバーモードテスト。アンカー不使用での旋回性能を確認する。ほないくで!」
二つ目はホバーモード。ステップモードと同じ機能を使い、足裏から低出力で魔血を放出し続ける。すると地面から数センチほど浮遊できるので、両肩の推進装置兼盾で足を使わず前後左右に滑るように移動できるのだ。
ホバーのメリットは水平方向への機動力が極めて高いところだ。浮遊+推進装置のお陰で重い巨体をスムーズに移動させる事ができるのである。
問題は燃費の悪さだが、いずれ解決すると思いたい。
「ほいほいほいっとな。どや、ウチも上手いもんやろ」
「ん、ただ乗っただけで動けてるの素直に凄いと思う。わたしは尻尾で五感繋げてたから」
「ぶっちゃけこれセンセ以外にゃあ操れねぇんじゃねぇか? いくら吸血鬼族っつってもそこまで血の制御できる奴ぁいねぇだろ」
「ヘカテさんは手より先に血が出るタイプの人ですからねぇ」
そんなエメスアルマに乗ったロリ教授は、それはもう楽しそうにテストを続けていた。
ホバー移動からの疑似走り幅跳び。推進装置を併用した垂直飛び。フィギュアスケートみたいな片足滑りにトリプルアクセル。
現状でも銀細工並みの機動力と言えよう。実戦で試した感じ火力はそこそこだったので、良い具合にヘカテの弱点を補ってくれている。何よりカッコ良し。
「こうも力持ちなら大きな武器を持たせてみてはいかがですか?」
「そうしたいのはやまやまやけど、上手くいくかなって感じやな。この手で持って武器としての真価が発揮できるか否か」
現状、エメスアルマにはまだ進化の余地が残っている。当座の強化案として手持ち武器を装備させる予定だ。
あと、今のリヴクラフトは純血魔術で駆動しているのだが、いつかそれ以外で動いてくれると嬉しいなって。俺もロボに乗りたいのだ。
「魔力も上がったし、好きな研究もできた。ダーリンのお陰でホンマに毎日楽しいわぁ」
本当に、ヘカテーニャは楽しそうに研究生活をエンジョイしていた。
ロボの他にも、発酵食品の研究や地球由来のアイテムの開発。研究とは無関係のプライベートでも、今まで出来なかった事にチャレンジしている。
ヘカテーニャは、その日その日をかみしめているのだ。
そう、彼女は誰よりも今のこの一瞬を大切にできる人なのである。
眩しくて、憧れる。
その輝きが……。
風前の灯火であった事に気付いたのは、もう少し後になってからだった。
〇
年明けから迷宮に通いまくり、ハックアンドスラッシュアンドビルドで正のループが完成していた。
レベリングしてたのはヘカテだけではなく、俺も中位魔法職“ハイウィザード”を育てて上位職の“アサルトメイジ”にジョブチェンジした。
アサルトメイジはより攻撃魔法に特化した魔法職で、完全にヘタッている魔力・魔攻を上げる目的で選択した次第。いずれ治癒特化のジョブも鍛えたいところ。
あと、合間合間にシャロ&ユゥリンも迷宮に連れて行き、スタメン以外を鍛えるのも忘れない。
迷宮、整備、訓練&ナインピース……。
そうこうしていると、いつしか春が近づいてきて、ヘカテーニャ教授は第三王子に提出するレポートに専念し始めた。
このリヴクラフト・プロジェクトには、当然として出資者にレポートを提出する義務があるのだ。レポートを送り、向こうで実験され、検討の末に追加の研究資金がもらえるかもしれないって仕組みなのである。
「で、出来たぁ~! はぁ~肩重腰痛……! 足だるんだるんで歩けへん~!」
「研究職ってのも大変なんじゃな~」
ちょこちょこ取ってたデータをまとめ、よく分からん参考書籍を山のように積み上げ、そうして書き上がったのはラノベ一冊分ある紙束だった。
曰く、これでもタイプライターのお陰で早く済んだ方らしい。で、これをエージェント・メイドさんに渡して……。
「はい、確かにお受け取り致しました」
終了である。レポート地獄を抜けたヘカテは空気の抜けた風船みたいになっていた。
レベリングもやって、メンテもやりまくって、一つの区切りとしてレポートを提出し終えた。
という訳で……。
「「「宴だぁ~!」」」
解放後の宴会だ。
場所は自宅である。ロリにロリィタファッションをしてもらい、ついでに俺もおニューのスーツ。中庭を使っていつもよりオシャレな立食会だ。
この日の為に色んなところから色んな食べ物やお酒を取り寄せたのだ。今回ばかりは量より質で、中庭も綺麗に飾り立てた。
「ん~、深みのある香りに豊かな葡萄味、素晴らしい余韻……」
「そんな酸っぱくて渋いお酒よく呑めますね。ボクにはハチミツが入ってない葡萄酒はちょっと難しいです」
「なら、この桃のお酒なんてどうかしら? 甘くて美味しいわよ」
レポート期間中ずっと禁酒してたヘカテは、抑圧の反動か高いワインをパカパカ開けていた。
食べるというより呑む宴会といった様相。立食形式というのもあってか、皆もお酒片手にお喋り優先だ。いつもより酔いが回るの早い。
「にしても。この猫も強くなりましたねぇ。今なら木札程度撃退できそうです」
「武器持たせたらもっと強くなるんじゃねぇか? 靴履かせて帽子も被せてよ」
エメスアルマ強化の為にレベリングしてたヘカテだったが、彼女と魂で繋がっているセキュリティ猫こと召喚獣のフブキ達も宿主と共に強くなっていた。
面白いもんで、その成長には設計上の個体差があった。家猫フブキは探知特化。チィレンさんにプレゼントしたアケボノは探知・戦闘のバランス型で、工房防衛のシグレは夜間警備特化である。
まぁ性能は措いておいて、今やフブキは我が家のアイドルだ。人生初猫の俺にも懐いてくれてるし、猫のいる生活ってなぁ良いもんだね。何より虫や鼠をぶっ殺してくれるのが素晴らしい。
「こう魔術刻印で動くリヴクラフトとかできねぇんスか? 陛下が使ってる玉座みたいな」
「あぁ~、あの玉座は戦前の遺物やで現代やと再現できひんねん。そもそもアレは魔族しか扱えへん代物やしなぁ」
「ん、やっぱり魔血なり聖水なりを動力にする必要あり?」
また、リヴクラフトが一段落ついたので、そろそろ吸血鬼以外が乗れるリヴクラフトに着手しようという話にもなっていた。
とりまDLC第一弾は聖水で動く天使用リヴクラフトを検討中だ。開発者に曰く「実用的ではないやろけど、こういうのは造る事に意味があるからな」との事。
「ネザーレか。どういうトコなんだろうな。前に本で読んだ感じ結構良さそうだったけど」
「まぁ観光地とは言われているわね。大きなカジノもあるし」
ややもあり、酒も回り、皆さんフワフワとほろ酔い気分でご機嫌になっていた。
思えば、尖兵戦が終わって以降は楽しくて嬉しい事の連続だった。レベルキャップ解放に、ヘカテのお迎えに、最近だとシャロの銀細工授与。最近は無駄遣いもしてないので金も溜まっていく一方だ。
漠然と続けてたマイホーム貯金も王都の一等地買えるくらいには溜まっている。せっかく一国一城の主になれるのだから、時代遅れと言われようが夢のマイホームと洒落こみたいところ。
「夢やった新型魔導人機も作れたし、好きな人できたし、ウチもう思い残す事ないわ~。幸せっちゅーんはこういう事なんやね」
「ヒトの欲は尽きないものよ」
「そうやなぁ。強いていうなら、皆の子が見れたらええなぁ。リリィちゃんならすぐ産めるやろ? サクッと懐妊してくれへん?」
「出来るッスけど、アタシは皆に合わせるつもりッスから」
妄想に耽っていると、女性陣の話題は子供一色になっていた。
そう、子供だ。エリーゼの呪いも解けた訳だし、レノの健康診断も良い感じ。そろそろ家族計画を考えないと。
どんなマイホームを建てるかってのは重要だが、どこに住むかも重要だと思う。田舎ライフには憧れるけど、ドが付くと不便が勝つから悩ましい。
家族計画かぁ。子育て支援……は異世界には期待できないから、平民でも通える教育機関があるとこがいいな。勉強だけなら家庭教師で良いかもしれないが、やっぱり色んな人と関わるのって大事だと思うし。
「ん、天使族は子孫繁栄に不利だから困る」
「ボクも早くお母さんになりたいです!」
「それこそ自分の子でええじゃろ。今さら嫌って訳じゃないんじゃろ?」
俺も、皆も、浮かれていた。
酒に酔っていたのもあるが、尖兵戦明けで気が抜けていたのだと思う。
そして、ヘカテもまた。
「いやアカンやろ。産むにしても、最悪ウチ妊娠中に死ぬかもやし」
そう言って、ヘカテは上機嫌そうにワインを呑んでいた。
そのまま、会話が続きそうになった。
けれど、彼女の言葉を聞いた面々は固まっていた。ヘカテと話してなかったシャロとユゥリンも、俺達が固まっている事に気付いて会話を止めていた。
「え?」
急に静まり返った中庭で、当のヘカテが困惑していた。
驚愕、混乱、色んな感情を湛えた瞳が、困惑中の吸血鬼を見ていた。
「なんやウチがスベッたみたいな。皆どしたん……あっ」
やがて、ヘカテの顔色が悪くなっていった。
妊娠中に死ぬとは、どういう事だろうか。失言だったのかもしれない。けれど、聞いてしまった。これを聞き流すなんてのは、流石に無理だ。
「寿命問題は解決したって言ってなかったッスか?」
硬直している中、いち早く復帰したのはルクスリリアだった。
数秒の沈黙。何度か瞬きした後、ヘカテーニャは初めて会った時みたいな顔になった。
本心を隠す、虚無の微笑みだ。
「せや、解決しとるで。寿命伸びたんも本当」
「つまり、伸びたけどもう長くないって事ッスか?」
「早くて来年、遅くて再来年には死ぬんとちゃうかな~」
恐る恐るの問いに、平坦な肯定が返って来た。
呆気に取られる一同に対して、一度溜息を吐いたヘカテは魔術を講義する口調で続けた。あるいは、堪忍したかのような声音でもあった。
「言うたやろ? 吸血鬼には強いのと弱いのがおるって。吸血鬼族が不老不死なんは上級吸血鬼だけなんや。残念ながら妖血娘は下級吸血鬼やで、人間族よりちょい長生きってくらいやな。こればっかりはしゃーない。どんだけ血ぃ飲んでも延命にはならへん。魔族の良いとこ継いでへんのや、妖血娘は」
無意識だろうか、ヘカテは自身の太腿を撫でていた。
お迎えした日に、教えてもらった。以前に魔力暴走を起こし、飛行能力を失った後に足が動かなくなったのだと。
そして、思い出す。魔力暴走とは、魔族が精神の均衡を失った際か魔力制御を誤った際に発症する。それは幼い魔族か年老いた魔族に好発し、ヘカテーニャは後者なのである。
「例えるなら、ダーリンの血は消えかかった蝋燭に火を灯してくれた感じやな。お陰で最後まで元気に燃え続けるようになったんや。けど、蝋燭の長さは変わってへん。流石に明日すぐ死ぬなんてないやろけど、子供産んで、まして育てるなんて……ウチにはとてもとても」
面白くないジョークを笑い飛ばすような、暗いニュースを吹き飛ばすような、口の端を歪めた明るい笑み。
ヘカテ以外、誰も笑っていなかった。恐らく、ヘカテ自身も。
「何か、解決方法はないのか」
我知らず口から出た言葉は、俺が放ったとは思えないくらい低く弱々しいものだった
問題は解決せねばならない。何たってここはファンタジー世界なのだ。それこそエリクサーとか、延命アイテムの一つや二つあって然るべきだろう。
そうでなくとも、ルクスリリアの時みたいに特殊な儀式で何とかできないものだろうか。
「ウチはな、か弱い妖血娘なんや。いずれ絶滅するであろう、まだ絶滅してへんのが不思議なくらいの弱小吸血鬼なんやで」
種としての寿命はどうにもできない。ヘカテーニャ教授は当然の事を諭してきた。
原則、魔族は不老不死である。吸血鬼は魔族から派生した存在だ。条件付きの不老不死なのだ。
だが、妖血娘はその限りではない。彼女自身が何度も強調していたではないか。妖血娘は弱い種族なのである。
「はぁ~。せっかくのパーティやのに、空気ぶち壊してもうてゴメンなぁ」
「それはいい。もっと早く言ってほしかったけど……」
「ぶっちゃけ言う勇気はなかったんよ。皆とおるのが楽し過ぎたから。ヤバなったらフラッと家出でもしよかなぁと。ウチがおらんなったら引き出し開くようにしといたで、そん時はぜひぜひ見てな」
冗談ではないのに、未だに冗談めかしている。
この時、俺はヘカテの焦燥感の正体に思い当たった。元気なうちに、死ぬ前に、リヴクラフトを完成させたかったのではないか。
既に覚悟をしていたのだ。そして、だからこそ「もう思い残す事はない」と言ってたのである。彼女にとって、現状はウイニングランなのだ。
あるいは、死ぬまでの暇潰し。あるいは、恐怖から逃れる為の現実逃避なのかもしれない。
「本当に、何もできないのか」
「知らんなぁ」
「今からでも、皆で調べたら……」
「調べたで。ウチこれでも賢者やから、王家が隠しとる事以外の知識には触れられる立場やったんよ」
「足掻こうぜ、もっとさ。手伝うから」
「悪いよ。もう疲れたし、それに……」
しつこく言い募るも、彼女の返答に変化がなかった。
抑揚のない声。表情も不自然なくらい完璧に調律されていた。その態度が俺達の神経を逆なでする事くらい分かっているだろうに、彼女自身も辛いだろうに。
この期に及んでも、ヘカテーニャは本心を隠し続けていた。
「ウチはもう充分幸せやから」
宴の会場は、重たい沈黙に覆われていた。
楽しそうにしていたグーラも料理を食べる手を止めている。絶句するシャーロットの肩の上、ヘカテ手ずから生み出した猫が小さく鳴いた。
「ヘカテ……」
何か、何か言うべきだと思った。
頭目として、建設的で、希望のある言葉を。けれど、鼻の奥が熱くて、喉が狭くなってて、何も言ってやれなかった。
愛する人の死を前に、俺はあまりにも無力だった。
「……嘘ね」
沈黙を切り裂くように、決然とした声が響く。
エリーゼだった。注目を集めるように、小さな竜族が月光に煌めく銀髪をかき上げる。
その双眸は、戦闘中と同じくらい輝いていた。
「貴女、嘘を吐いているわ」
言って、ヘカテの前に立つ。
二人に然程の身長差はないのに、今はエリーゼの方がずっと大きく見えた。
「本当は知ってるんでしょう? 貴女の命を繋ぐ方法。でも理由があって言えない。違うかしら?」
「いやいや知らへんって。なに? ウチのことバカにしてはるん?」
「さっきから魔力が乱れているわよ」
言われ、笑顔を引っ込めたヘカテは強いて即座に魔力を収めてみせた。
「ちょっち酒に酔うてしもうたみたいですわ」
「黙りなさい。そして言いなさい。皆で解決するのよ。私達はいつもそうしてきたわ」
「……言う必要あります?」
「この……!」
天高く、エリーゼは右手を振りかぶった。
あまりにも分かりやすい予備動作。引き結んだ唇の奥、ヘカテは歯を食いしばっていた。一発くらい甘んじて受ける、そういう顔だった。
「下等種族が!」
「ぐべらッ!?」
が、そんな覚悟は無意味だった。
青白い頬に竜の拳が突き刺さり、一メートルほど飛んだ妖血娘は半回転して地面に倒れ伏した。
グーだった、さっきまでパーだったのに。そうなのだ、エリーゼは銀竜一族のご令嬢なのだ。
「痛くないでしょう? その強さは貴女の愛した主人のお陰で得たものよ。ならできるでしょう。立ち上がって現実と向き合う事くらい」
「いや今のは普通に痛かっぐふぅ!?」
故に、それだけでは収まらなかった。倒れたヘカテの胸ぐらを掴み上げ、エリーゼは怒りに満ちた顔を近づけて凄んでいた。
我知らず介入しようとした俺は、ユゥリンによって止められていた。見ればグーラとレノもルクスリリアに止められている。
「気を遣っているつもりなのかもしれないけれど、貴女がいなくなる事で彼がどれだけ傷つくか理解していないようね」
「か、考えへんかった訳では……まぁでも七人もおるし平気かなぁと」
「彼に愛された貴女が、貴女自身を安く見積もるんじゃないわよ。貴女こそ、私達の王を舐めているの?」
「で、でも迷惑かけるのは本意やのうて……」
「死なれる方が迷惑なのよ。いい年なんでしょう、罪悪感くらい飲み込みなさい」
「のわ!?」
半ば投げ飛ばされるようにして、ヘカテが俺の前に押し出された。
眼前に立たされたヘカテは、なかなか俺を見上げてくれなかった。
「だ、ダーリン……」
ヘカテーニャは、百年生きた吸血鬼は、寿命の近い妖血娘は、誰あろう俺の視線に怯えていた。それが、何よりも悲しい。
俺は溢れそうになる感情を飲み込んで、努めて優しい声音を意識した。
「言えなかった理由は理解できる。俺は言ってほしかったけど、どうしても言いづらいよな。そりゃ」
「う……」
そして、彼女の頭に手を置いた。
愛らしいヘッドドレス。よく手入れされた髪の毛。
心を解きほぐすように、彼女の頭を優しく撫でる。
「……ヘカテがどうしても死にたいのなら、俺にそれを止める権利はない。けど、俺はヘカテに死んでほしくはない。俺達と、ずっと一緒に生きてほしい」
背後で誰かが息を飲んでいた。多分、イリハとシャロだ。
理論上、この世に他者の自殺を止める方法は存在しない。当事者ならぬ他者にできるのは、死んでほしくないと伝えるだけなのだ。
「もし、もっと生きたいって思ってくれてるなら言ってほしい。頼ってくれたら、俺はそれが嬉しいからさ」
どうか、願いだけでも。
俺への迷惑とか考えないでほしい。素直に助けを呼んでほしい。家族なのだから、何であれ苦難は分かち合いたいと思う。
レノの時もユゥリンの時もそうだった。ロリコンはロリを救う為に生きているのだから。
「……知っとるだけで、無理やねん」
俯いたヘカテから、小さく弱々しい声が漏れた。
考えなくはなかったのだろう。可能性が低いからこそ、言わなかったのだ。
手の届かないところに希望があればこそ、耐えがたい絶望は存在し得るのである。
「徒労になる可能性が高かったから言わんかったんや。言うて死にぞこないやし、そこまでしてもらう程のモンやない。所詮ウチは新参者で、皆にとっては主人に寄生するお邪魔虫やから……」
一粒、中庭に滴が落ちる。ヘカテーニャは涙を流していた。ごく自然に、俺は誰よりも冷たい少女を抱きしめた。
そうして、皆を見た。俺よりも先に、もうその気だった。当然だ。何故なら、彼女達は俺なんかよりずっと善性の人なのである。
胸に、熱い火が灯っている。それを伝えるように、俺は口を開いた。
「……この中に、ヘカテを邪魔だって思う奴いる? この中に、ヘカテ助けるの日和ってる奴いる?」
覚悟を確かめるように、内なる自分に問いかけるように。俺は勝ち確の言葉を放った。
胸の中、弱い吸血鬼だけが怯えていた。
「いねぇよな」
小さな肩に手を置いて、優しくヘカテを反転させる。
皆、彼女を見ていた。皆、良い顔をしている。
一人は皆の為に、皆は一人の為に。
共感力の高いグーラは涙を流しながら発奮しているし、効率厨気味なレノなど光力銃のスライドを確認している。シャロの肩から降りたフブキが、ヘカテを見上げてニャーと鳴いた。
思えば、エリーゼには辛い役目を押し付けちゃったな。俺がしっかりしなくちゃいけない場面だったのに。
「安心して、信じなさい。一緒に迷宮に潜った戦友でしょう?」
「ボクはやりますよ。ボクだって、死にかけていたところを拾ってもらった身です。ヘカテーニャの気持ちは分かるつもりですから」
「右に同じくじゃ。前も言ったと思うがのぅ? ここの女は皆そうなんじゃって」
「ん、わたしなんて比較にならないくらい危険な目に遭わせてた。それ以前に二回も殺そうとしてたし」
「おいおい、迷惑度で言ったらアタイがトップだろ。思い出したくもねぇが、ガキのフリして誑かそうとしてたんだぜ」
「なにそれオモロ。今度話してくださいよ。あ、ワタシも同意です。問題はさっさと解決しちゃいましょう」
「よく分かんねぇんスけど、やるだけやってみればいいと思うッス。で、ホントにマジでダメって時は、好き放題遊びまくって笑って死ねばいいと思うッス」
「みんな……」
冷えきった吸血鬼に、温かい言葉が投げかけられる。
光に目を焼かれたように、ヘカテーニャは再度俯いた。さっきまでとは別の涙を流している。
「……始祖の血」
やがて、ぽつりと言う。
ゴスロリの袖で涙を拭い。吸血鬼は皆の熱が移った顔を上げた。
「吸血鬼族は、始祖の血を賜る事で真祖へと位階を上げる。そしたら今よりずっと長生きできる。けど始祖の血は地下都市にしかなくて、本当に特別な吸血鬼にしか下賜されん」
正直、始祖の血が何で、どれだけ入手難易度が高いかはイマイチよく分からなかった。
確かに、知っているだけではどうにもならないのかもしれない。
今はただ、そう言ってくれた事が嬉しかった。
「なぁんだ、簡単じゃないッスか。要は地下の偉いさんに頼めばいいんスよね? 余裕っしょ」
「か、簡単やない。始祖の血は余程の理由がない限り下級吸血鬼には下賜されへんねん。金で買えるもんでもないんや。まして、ウチみたいな混血には……」
難しいらしい。
金で買えない重要アイテム。恐らくだが、必要なのは身分とかコネとか。
なら、何とかなるんじゃねと思った。
「いや、俺達なら出来る」
かもしれないではなく、あえて力強く断定してみせる。
実際、できなくないと思うのだ。
冒険ファンタジー的には邪道な手口のようだが、第三王子に頼めば何とかなる気がする。
彼は俺の性癖を知っている。俺がヘカテを放っておけない事も分かっているはずだ。だったら協力してくれるのでは、と。
第三王子は何か俺に頼みたい事があるのかもしれない。それを見越してヘカテを紹介してきたのかもしれない。彼は俺を謀ったのかも、しれない。
「命を運んでくると書いて運命……ヘカテが俺達の所に来たのは、運命だったんだよ」
「ダーリン……」
王子はそんな事しないって気持ちと、王子ならやりかねないという気持ちが俺の中で両立している。
あるいは、王子自身もヘカテの寿命については知らなかったってパターンもあるか。そりゃ一国の王族がいち教授の寿命なんていちいち気にしないよなとも。
いずれにせよ、一度コンタクトを取るべきだろう。何でも思い込みで決めつけてはいけない。
「何でや、何でウチなんかの為に、そこまで……」
「そういう男なんスよ、ご主人は」
「知らなかったかしら? イシグロ・リキタカは当代最優の英雄なのよ?」
俺は、彼女を、必ず守ると決めたのである。
その為なら、労力を惜しむつもりはない。
「よし……」
とはいえ、シリアスに寄り過ぎてはいけない。そうじゃないと、人生を楽しめない。
気楽に始めて、本気で挑む。サクッと華麗に解決して、また楽しい異世界生活を再開しよう。
まだ人事は尽くしていない。悲観するのは、その後だ。
「ヘカテ」
「な、なに?」
「寿命が戻ったら、結婚しよう」
死亡フラグなど知った事か。そんなもの、俺がへし折ってやる。
何故なら……。
「う……うん♡ ウチもダーリンと結婚したい♡」
ロリコンがロリを守護るからだ。
いざとなったら、手段を選ぶつもりはない。
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◆エメスアルマ◆
サイズ:S
地上適性:B
移動力:5
ブラッド・ブレード
威力:3000
BN:15
射程:1~1
属性:水・闇
解説:手の甲から生成する純血魔術の刃。威力・燃費ともに良好だが、大振り故に見切られやすい。
ブラッド・ブラスター(連射)
威力:1200
BN:18
射程:2~3
属性:水・闇
解説:両掌から撃ちだす純血魔術の弾丸。連射性能は高いが、その分命中精度は低い。
ブラッド・ブラスター(高出力)
威力:2300
BN:20
射程:2~4
属性:水・闇
解説:両掌から撃ちだす純血魔術の弾丸。威力・射程共に良好で、僅かに貫通力を有する。
スカーレット・デトネイター
威力:4000
BN:32
射程:3~5
属性:水・闇
解説:胸部装甲を展開し、露出した炉心から直接純血魔術を撃ちだす長射程・広範囲殲滅技。素晴らしい威力だが、使用後は炉心の性能が低下する。