【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。お陰で楽しく書かせてもらっています。
 誤字報告も感謝です。ありがとうございます。

 キャラ募集についても、沢山のご応募ありがとうございます。想像以上に作者のやる気に繋がっています。
 出る時はヌルッと出るし、出たら出たでほぼ別物になるのでご了承ください。

 今回の話は、感想で頂いたネタを元に追加したエピソードとなっています。
 作者の視点だと思いつかなかった要素ですね。

 この世界にはこういうのもあるよという話です。



ロリの使い魔

「そういやー、旦那ぁ竜族のお嬢ちゃんにゃあ“使い魔”は持たせない主義なんですかい?」

 

 それはエリーゼの武器を注文した日、食後のティータイム中に言われた事だった。

 ちょっとした雑談といった感じで振られた話題だった。が、その“使い魔”なる者が何なのか俺にはよくわからなかったので、上手く返事ができなかった。

 

「すみません、その使い魔とはどういうモノなのでしょうか?」

 

 まあ、オタクのたしなみとしてゼロ使は読んだよ。そんな俺からすると、使い魔=ゼロ使的なアレである。サモンして呼び出すのかなって。

 ただ、そうなるとルクスリリアの召喚獣とは何がちがうんだとも思う訳で。

 

「あー、失礼。使い魔ってのは魔力で動く武装みたいなモンでさぁ。召喚獣ほど賢くねぇし、出来る事も少ねぇ。予め決めておいた事しかできねぇ、融通の利かない魔術師用の魔道具って感じでさぁ」

「え? なら召喚獣のが強くないッスか?」

「ま、そうだな。基本的にゃあ……」

 

 ルクスリリアの問いは、俺も気になった事だった。自分の事とあってか、エリーゼも真剣に聞いている。

 三人分の視線を浴びて、ドワルフは口を開いた。

 

「だが、召喚獣と違って、使い魔は職人が作るモンな訳よ。この、武器みてぇにな。さっきも言ったが融通が利かねぇ。が、こと一点に限れば召喚獣よりも良く働いてくれる」

 

 職人の腕次第だがな、と続けたドワルフ。次いで、男臭くニヤッと笑った。

 

「少し前、南区の方に良い職人が店ぇ構えたんです。興味あんなら、紹介状書いてもいいですぜ?」

 

 そういう事になった。

 

 

 

 ラリス王国、王都アレクシスト。

 

 王都には五つの区があり、それぞれ中央区・東区・西区・南区・北区と分けられている。

 新宿みたいな雰囲気の西区といった風に、王都は区ごとに特色があるらしい。また、中央区以外の四区には一つずつ転移神殿があるという。

 

 俺はこれまで王都西区でしか活動してこなかった。何故かというと、観光とかよりも金策を優先していたからだ。

 もっと言うと、西区も隅から隅まで歩き回った訳でもない。転移三ヵ月までは宿屋と神殿を行き来したりするだけだったし、以降も奴隷商館とか武器屋とかに行ったくらいでさほど活動範囲を広げてはいないのだ。

 西区以外の王都には、前々から興味はあった。機会があれば、観光したいとは思っていたのだ。せっかくの異世界なのだし。

 

 アイスを食べ、ひと休み。

 デートはこれからである。

 

 ドワルフさんの紹介状を手に、俺たちは一路件の使い魔屋さんを目指してあるいていた。

 使い魔屋さんは西区から歩いてすぐの南区にあるとの事で、乗合馬車など使わず歩いて移動していた。

 道中、色んな店や建物を眺めながら歩く王都は、けっこう新鮮だった。これまで如何に俺が異世界に目を向けてなかったかが分かる。お陰でルクスリリアとエリーゼに出会えたのだから結果オーライだとも思うが。

 

「多分、ここかな?」

 

 そうして歩いていると、ドワルフさんに教えてもらった住所にそれらしい看板を掲げた店を発見した。

 場所は通りから外れた路地裏で、なんか怪しい雰囲気である。扉の上には、“使い魔店・ガユウ”と書かれていた。ドワルフ氏曰く、店主はちょっとヤバめの人らしいので、念のため腰に“無銘”を装備しておいた。

 

「ええ、ここで合ってると思うわ。中から魔力が漏れ出ているもの……」

「その角便利ッスねー。アタシのと交換しないッスか?」

「貴女、発想がいちいち恐ろしいのよ……」

 

 エリーゼのお墨付きももらったところで、俺は勇気を出して件のお店に入る事にした。

 ドアノブに手を掛けると、扉は存外スムーズに開いた。チリンチリンと耳に心地よい鈴の音が鳴った。

 

「おぉ……」

 

 そして、いざ中に入ってみると、なんか前世で見たような光景が目に入った。

 視界いっぱい、物モノもの……。お香の焚かれた店内には、所狭しと置かれた謎アイテムが陳列してあった。いや陳列、というか割と乱雑に投棄されてる印象だ。

 木箱の中には謎のガラクタが山のように積まれているし、陳列棚にもとりあえず押し込んどけみたいなノリで玩具みたいなのが置かれている。なんか、異世界ヴィレヴァンとか異世界ドンキみたいな印象である。

 

 ちょっとビビリながら足を進めると、入り口周辺とは打って変わって受付周辺の商品は綺麗に陳列されていた。

 ガラス瓶に入った謎液体や、ボウリング玉サイズの水晶玉。中には恐らく金剛鉄製と思われる剣なんてのもあった。なんとなく、こっちのが本命商品なんだと思う。

 

「あのー、すみませーん」

 

 まぁそれはいいのだ。商品があっても店員がいないんじゃ始まらない。

 店の奥に呼びかけると、受付の奥からオウムサイズの鳥が飛んできた。一目で分かる、これは人工の鳥だ。魔法で動いてるらしく羽の動かし方がおかしいし、見た目もメタリックである。ガンダムSEEDにこんなんいたよな……。

 

「その鳥、魔力が流れているわね……」

「へー、これが使い魔ッスか?」

「多分ね。で、その魔力は店の奥と繋がってるわ……」

「へぇ~え? 良い“眼”してるじゃあないですか、竜族のお嬢さん。いや、良い“角”でしたっけ? ククク……」

 

 やがて怪しげな微笑と共に、それはヌルッと現れた。

 見上げるばかりの背丈。心配になるくらいの痩身。塗料を塗り込んだような濃ゆい青の髪に、死人の様に白い肌。猫背で曲がった細い首には、冒険者の位階を示す銀細工が下げられていた。

 聞いた通りの見てくれである。彼こそ、この店の主だ。

 

「おやまぁ、貴方も銀細工でいらっしゃる……」

「はじめまして、イシグロ・リキタカと申します」

「どうも、あたしは“傀儡廻し”のガユウ。見下ろしてると首が痛いんで、ちょっと座らせてもらいますよ……」

 

 言って、南区の銀細工持ち冒険者・ガユウは受付の椅子に座った。

 よっこいしょっと座した様は年寄りにも思えるが、その所作はいちいち優雅であった。

 

「あぁ~っと……? で、何がほしいんです?」

 

 傀儡廻しのガユウ。

 正確な年齢は不明だが、俺より年上なのは確定している。種族は魔山羊族(バフォメット)。大きな角と、くすんだ金の瞳が特徴的だ。

 南区の転移神殿を拠点とする冒険者で、使い魔のスペシャリスト。今は趣味と実益を兼ねて使い魔専門店を営んでいる。単独(ソロ)にして一党の頭目(パーティ・リーダー)という異端者。

 彼こそ、ドワルフ氏の言っていたモノホンの使い魔職人だ。

 

「今日はこの娘の使い魔を買いに来たんです」

「まあ、魔力的にゃあそうでしょうね。そっちの淫魔のお嬢さんは……」

 

 チラッとルクスリリアを見るガユウ氏。

 使い魔バードを突っつこうとしていたリリィは強者の眼力にビビッて「ペヤッ!?」と鳴いて直立不動になった。

 

「……もう何かしらと契約してますね」

「分かるものですか?」

「ええ、それはもう、鼻の曲がるような召喚獣の匂いがプンプンと……」

 

 よくは分からないが、彼は召喚獣が嫌いなんだろうか。鼻をつまんでは手を振っている。昔のハリウッド映画みたいなオーバーリアクションだ。

 

「多分、イシグロさんは知らないでしょうから説明させてもらいますとね。召喚獣は一党につき一匹と決まってるんですよ。専門の人員がいないと、召喚獣同士で喧嘩してしまうからですね。他にも誓約がありましてね。召喚獣と契約している奴は、使い魔との契約もできないんですよ。召喚獣が嫌がりますし、使い魔も怖がって不能になってしまう。契約者が別なら問題はありませんが、それでも獣系の使い魔は高位召喚獣にビビリやすいのでご注意を。あと、使い魔も一党につき一個ですんで、そこんトコよろしく」

 

 ガユウ氏の語りは、ドワルフのソレとは毛色が違う印象を受けた。

 ドワルフの語りがガノタだとしたら、ガユウ氏の語りはやる気のない理科の先生といった印象である。科学自体は好きだが、授業は好きじゃないみたいな。

 前世、似たような先生がいたのだ。

 

「それに、使い魔は召喚獣ほど燃費が良くない。淫魔のお嬢さん程度の魔力だと、まぁ一瞬で枯れちまいますね」

 

 言って、「ククク……」と笑うガユウ氏。

 一瞬失礼な物言いだと思ったが、多分この人にはそのつもりはないのだろうとも思った。馬鹿にしてるとかじゃなく、事実を述べて何故か自分でウケてるだけだ。

 

「なら、竜族のこの娘ならどうですか?」

 

 まぁ彼の人柄や接客態度はどうでもいい。使い魔関係の話に興味がないではないが、今日はオーダーメイド使い魔を注文しにきたんじゃなく、使い魔を買いに来たのだ。

 ちなみに、ドワルフ氏曰く此処は使い魔のオーダーメイドはしてくれないらしい。気の乗らない仕事はしない主義なのだろう。

 

「竜族ねぇ……。種族上、鱗系は無理ですし、獣系も淫魔のお嬢さんのせいで無理と。せっかく魔力もバカ高い訳ですから、あそこの棚のとかどうですかい?」

「そうですか」

「ま、分からない事があったら訊いてください」

 

 そう言うと、ガユウ氏は客そっちのけで本を読みはじめた。

 ドワルフさんともセオドロスさんとも違う、ずいぶん癖の強い商人キャラである。

 

「エリーゼはどれがいいと思う?」

「そう言われてもね……」

「どうせなら最強の使い魔選ぶッスよ」

 

 とりあえずと、入り口付近のガラクタコーナーではなく、店主おすすめの綺麗に陳列されてる棚を見る事にした。

 中でも一等綺麗なエリアには、如何にも高級そうなアイテムが並んでいた。俺程度の魔力感覚でも分かる、本命商品には相当な魔力が籠っていた。

 

「ここら辺が強そうだけど」

「そう思うわ」

 

 商品を眺めながら、俺は片手でコンソールを弄った。

 そして、商品を調べてみた。

 のだが……。

 

「……分からん」

 

 コンソールに表示されたのは名前とか耐久度だけで、それがどういう使い魔なのかは分からなかったのである。

 便利は便利だが、やはりコンソールは万能ではない。俺は読書中のガユウ氏に質問する事にした。

 

「すみません、これらについて訊いてもいいですか?」

「はい? あぁ、まぁそうなりますよね。えっと……」

 

 それから、さっきの面倒臭そうな態度とは一変、ちょっと楽しそうな顔になったガユウ氏は商品のプレゼンをし始めた。

 

「棚の一番右、その霊剣は契約者の護衛に特化した使い魔ですね。飛んできた攻撃や魔法を自動で斬ってくれたり、魔物の攻撃に反応して防いでくれます。召喚獣みたいにアレやれコレやれって命令はできませんが、ちゃんと指示すりゃ攻撃くらいはしてくれますよ。もちろん、使用中は浮遊してついてきてくれます。素材は金剛鉄(アダマンタイト)で、柄頭と鍔には真銀(ミスリル)を使ってあります。傑作ですよ」

 

 それは中でも結構目立っていた謎剣であった。どうやら、これも使い魔判定らしい。

 全長は俺の無銘剣より長く、太い。どこぞのドラゴン殺しほどデカくはないが、ダクソ基準の大剣くらいのサイズだ。

 形自体はシンプルな十字剣で、剣身や鍔には謎の文字列が彫刻されている。色は全体的に黒っぽく、艶がない。

 

「で、その隣のは使い魔の割に色々できる器用な人工粘体(スライム)君です。今は瓶サイズですが、魔力流すと豚くらい膨張しますよ。壁になっての護衛に、突撃して足止めと色々できます。浮遊こそできませんが、ちゃんと這いずってついてきてくれますよ。あと、荷物持ち機能まで付いてます。傑作ですね」

 

 次に説明されたのは、ジャム瓶みたいなのに入った薄緑の液体であった。

 コンソール時点でこれがスライムなのは分かっていたが、ちょっとガッカリな気がせんでもない。俺にとってのスライムは目と口がある可愛いアイツなので、こういうタイプのスライムには馴染みがないのだ。迷宮でもまだ出くわしていないので、この世界のスライムがどんなんなのかもよく分かっていない。

 説明によると、これは汎用性重視の使い魔であるらしい。多分、使い方としてはランサーに自害命じた方のエルメロイさんが連れてた水銀くんみたいな感じなんじゃないだろうか。アニメのあれ、なんか可愛かったな、うにょーんって。

 

「その隣の隣、それは使用者の魔力で魔法を使ってくれる自動魔導書(オート・スペルブック)です。計3種類の攻撃魔法が使用可能で、状況に合わせて上手に使い分けてくれます。護衛機能こそありませんが、使用者の攻撃能力を底上げしてくれますね。当然、追従してくれます。傑作ですね」

 

 三つ目は、まるで金色のガッシュベルに出てきそうなサイズの魔導書であった。

 どうやらこれは装備とは別枠の魔法装填特化武装であるらしい。コンソールで分かった事だが、魔法の内訳は“魔力の礫”と“魔力の槍”と“魔力の槌”であった。

 イメージでいうと、ニーアオートマタのポッドくんが近いんじゃないだろうか。火力はそこまででもないだろうが、弾幕は張れそうである。

 

「で、下にある奴、その玉。それは人工粘体とは別方向に色々できる奴です。探索に便利ですね。周囲に敵はいないかとか、この先に毒や罠はないかとかを調べてくれるんです。まあ、攻撃も防御もできないんですが、それはそれ。当然ですが、魔導書みたいに浮遊してついてきますし、それなりに遠くに飛ばす事もできますよ、傑作です」

 

 示されたのは、ボウリング玉サイズの半透明の水晶玉であった。

 色は青白く、中心にはゆっくり明滅している光球がある。コンソールで見たが、これは先の使い魔と比べると耐久度があんまりない。

 運用の仕方としては、探索とか索敵専用なんだと思う。アーマード・コアで言うレーダーの役割といった感じだろうか。ついでに罠の感知もできるらしいし、疑似的なシーフ職の仕事もできるのかもしれない。

 

「と、まぁ……竜族のお嬢さんに似合いの使い魔はこれくらいですね。あ、一応言っときますが、さっきの使い魔はイシグロさんや淫魔のお嬢さんじゃあロクに扱えませんよ。んじゃ、決まりましたら持ってきてください……」

 

 言うと、唐突にエンジンの回転数を下げたガユウ氏は再度読書タイムに入った。

 説明を聞くに、どれも一長一短な印象である。

 

「エリーゼはどれがいい?」

「そうねぇ……?」

「何でもできる最強使い魔なんていないんスねー」

 

 護衛に特化した浮遊剣くん。

 特化はしてないけど多機能なスライムくん。

 火力を底上げしてくれる魔導書くん。

 探索や索敵をしてくれるボウリング玉くん。

 

 ドワルフ氏の言う通り、確かに召喚獣と使い魔はモノの方向性が違うようだ。

 召喚獣がポケモンなら、使い魔はロボットって感じだ。

 

 俺は正直何でもいいと思ってるので、エリーゼにお任せである。

 気に入ったのを選んでくれるといいけど……。

 

「そうね、これがいいわ……」

 

 しばらくして、エリーゼはその中から一つの使い魔を選択した。




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 現在、本作に登場するキャラを募集しています。
 興味のある方は是非、お気軽にご応募ください。
 詳しくは活動報告にて。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=296177&uid=59551

 一緒に世界観を広げていきましょう。



◆ラリス王国の設定補足◆

・基本的に、種族問わず王族貴族の戦闘力は高いです。
・ラリス王国の爵位は戦闘力と貢献度で決まります。公爵級は銀細工持ち冒険者を数人まとめて相手できます。
・どれだけ優秀な冒険者でも、あたおかが過ぎると王族が抹殺しにきます。
・領地を守れない弱い貴族も同様に王族が抹殺しにきます。
・貴族の入れ替わりがそれなりにあるので、金細工冒険者が貴族になるルートも割とよくあります。優秀な冒険者は、未来の貴族候補として常にウォッチされています。
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