【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。いつもお世話になっております。
 誤字報告もありがとうございます。感謝です。
 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。

 今回は一人称、イシグロ視点です。


ナンクルロリサ

 ネザーレの最も長い日、偉大なる始祖が復活した。

 幽界は閉じ、飢喰徒は消え、突如襲ってきた旧魔王軍の脅威は討伐された。勝利の雨が戦士の傷を癒やし、失踪者達は家族と再会する。

 吸血鬼の街に、笑顔と筋肉の花が咲いたのである。

 

 しかし、光あるところに影は差す。

 旧魔王軍との戦いで歴史ある建造物の多くは崩れ去り、国の象徴だったリアルイーザ城は半壊した。猫又スライムが暴れていた場所など、殆ど更地になっていた。

 何より、命である。家は建て直す事はできるが、飢喰徒に殺された人は戻ってこないのだ。

 始祖復活の影で、飢喰徒の被害者遺族は悲しみに暮れていた。

 

「聞け、ネザーレの民よ! 失ったモノを数えても何にもならん! 未来に恐怖するだけでは現在を生きられぬ! 故に! 今日この日を、予の復活祭とする!」

 

 けれども、真の英雄の輝きはそんな彼等をも明るく照らし出した。

 力ずくで、真の大団円を見せたのである。

 

「差し当たって、とりあえず予の中で眠る同胞を蘇らせる! うむむむ……【真祖創造】!」

「「「えぇ~っ!?」」」

 

 ネザーレ最初の復興は、失われた人命の救済だった。

 リアルイーザ様が両手を掲げると、いきなり空中に血の卵が生成され、やがて殻が割れて中から数人の男女が出てきた。

 というかモロにヘカテ真祖化時と同じエフェクトだった。

 

「ふわぁ~、良く寝た……って何で外!? 俺、裸なのなんで!? てゆーかお前そんなに筋肉あったっけ……!?」

「お、お兄ちゃん! お兄ちゃんなの!?」

「あ、あぁ……これは一体? ぼ、僕は飢喰徒の捜索をしていたはずだけど……」

 

 あまつさえ、復活した人たちは、いずれも記憶を保持していた。

 確認を取ったところガチで本人だったらしく、多少の時間差こそあれ彼等も家族と再会し、今度こそネザーレは愛と歓喜に包まれたのである。

 

「うむ! これで泣く子はいなくなったな! では、これよりリアルイーザ復活祭を開催する!」

「うぉおおおおおおお! よくわかんねぇけどめでてぇええ!」

「ネザーレ万歳! リアルイーザ様万歳! 我等が始祖に栄光あれ!」

「「「グレート・ネザーレ! ナイスバルク!」」」

 

 暗夜のネザーレに歓声が響く。筋肉が弾け、おっぱいが揺れた。

 このようにして、ネザーレ再建の祭が始まったのである。

 どんな時でもポジティブに。それが彼女の英雄たる所以なのだと感じ入る心地だった。

 

「グーラ!」

「ご主人様!」

「「会いたかった~!」」

 

 翌日の事である。

 俺はグーラ達地上組と地下塔のターミナルで合流した。

 リアルイーザ様が言ってた通り、地上も地上で厳しい戦いがあったそうだ。そのへんも含めて話したい事とかいっぱいあったので、俺達はラドゥ侯爵の屋敷に行って上下の口で熱烈に語り合った。

 

「なるほどなぁ、やっぱギルドで待機してたのが正解だったワケか。実際アタイ等がいなかったら地下はともかく地上はヤバかっただろうしな」

「うぅ、ボク一人だったら勝手に突っ込んでいたと思います。ありがとうございます、ユゥリン」

「いえいえ、所詮は結果論ですよ。それにワタシからするとグーラさんの心はとても尊いと思いますので、変に顧みず是非そのままでいてください」

「ん、結果論で言うと地下にはわたしとシャロが行くべきだった。そしたら猫又も人工粘体も一撃」

「あの時にはあの時の最適解ってのがあったんじゃ。それにレノが地上にいなかったら助けられん命もあったじゃろう」

 

 それから、俺達はお決まりのホウレンソウを行い、満場一致でネザーレ復興の手伝いをする事を決定した。

 尖兵戦でもそうだったが、戦いは後始末が一番大変なのだ。当事者の身でこれを放置するなんて、到底俺にはできそうにない。

 

「悪い! こっち応援来てくれ! 一回細かくするから爆破系の魔法使える奴!」

「障壁魔術いくぞ! せーの!」

「お母さん、お腹空いた~。ご飯食べたいよ~」

「今日はお外で食べるのよ。ほら、あそこで真祖様が炊き出しを……えぇ! 真祖様がトマトスープを配ってるぅ!?」

「ノスフェ様、後がつかえております。もっと早くよそって下さい」

「くっ、何で始祖の血を引く妾が侍女なんぞの真似事を……!」

「わぁ、綺麗な人……! ありがとうございます! ノスフェ様!」

「ふっ、ふん! 別に貴様等民草の為によそってる訳ではないのだからな! 仕方なく、そう始祖に命じられて仕方なくやっておるだけじゃ!」

 

 ネザーレ再建祭? リアルイーザ復活祭? イマイチ名前は定まってないこのフィーバータイムは、終始明るい雰囲気で進行していた。

 復興作業というよりは、街全体で行う一大イベントの様相。そこには貧富も貴賎も存在せず、皆が一丸となって事に当たっていた。力仕事は筋肉兵士が行い、真祖ご令嬢が炊き出しの給仕をする。美しい真祖令嬢にご飯をもらった人々は男女共に嬉しそうにしていた。

 

「さっき外を見てきたが、なんか今のネザーレはごちゃごちゃしておるな! 故にいっぺん全部ぶっ壊してもっと住みやすい街にしようぞ!」

 

 ボロボロになった街だが、ちょうどいい機会なので全部作り直す勢いで再建していくそうだ。

 というのも、元々ネザーレは長年の無理な増築や開拓であちこちに不具合が起きて不合理が積み重なっている状況だったらしく、それを騙し騙し運営していたそうなのだ。

 昨日まで瓦礫の山だった区画が新築塗れになってるスピード感。元よりネザーレは良質な石の産出国だったので、石材自体はいっぱいあるのだ。

 当然、半壊したリアルイーザ城の設計も建て直す予定である。せっかくだからとリアルイーザ様主導でデザインコンテストを行ったりと、これまでの鮮血公国にはないエネルギーが国全体に渦巻いていた。

 

「瓦礫は一旦まとめるのだ! 空き地を用意せよ! くれぐれも道は塞ぐな! 規律正しく、リズミカルに行うのだ! 声を出せ声を! そこ休んでないで働けぇ! 仮にも真祖であろう! 民草に後れを取ってどうする!」

 

 現場ではリアルイーザ様が顔を出し、手が足りないとなれば積極的に監督していた。

 曰く、乱世時代に取った杵柄でこういう作業は慣れっこだそうで、統治よりずっと得意なのだという。現場監督リアルイーザだ。

 何なら復興用純血魔術とかあるらしく、偉大なる始祖はそれを使えない現代吸血鬼達に呆れていた。

 

「お、お、畏れ多いお願いではございますが、もし宜しければこの子にお名付けの栄を賜れましたら幸甚に存じます」

「うむ! よかろうよかろう! そうだな……では予の名を取ってルイーザベトとするがよい!」

「わ、私の子供にもお願いします!」

「予のネーミングセンスは抜群である故な! 任せるがよい! なーっはっはっはっ!」

 

 君臨すれど支配せず。畏敬は持たれど畏怖されず。自ら進んで民と交流するリアルイーザ様は、何時でも何処でも笑っていた。そんな彼女を見た人々の顔にも自然と笑顔が浮かぶ。

 また、彼女は聖母のように優しい人でありつつも鬼教官のように厳しい人でもあった。特に真祖や貴族にはドがつくくらいスパルタで、「てめぇ等はタフなんだから休むな」とばかりに働かせていた。けれども決して無理はさせず、且つ最適な役割分担をしているようでもあった。実際、炊き出しやってってる美女真祖は民にチヤホヤされてまんざらでもなさそうだったり。

 

「う、美味過ぎる! 何だこのスープは! 苦くない! 酸っぱくない! 草って感じのエグみがない! とにかく美味としか言いようがないではないか!」

 

 聖母か鬼か、毎日アグレッシブに働きまくっていた始祖だったが、食べ物の美味しさにはそのへんの町娘のように感動していた。別に高級でも何でもない炊き出しメニューに、である。

 彼女の話によると、乱世当時はとにかく食べるのに必死で味は二の次と言った料理が殆どであり、庶民がこうも美味しい料理を食べられるなんてあり得なかったらしい。

 

「我々吸血鬼族が他者を襲わずに生きていけるのは、汝等の働きあっての事である。予が許す、存分に誇るがよい」

 

 と、彼女は牧場主や農場主を褒めていた。

 褒められた側はガチガチに固まりつつ、どこか誇らしそうにしていた。

 日常も戦闘も全力全開全身全霊、とかくアグレッシブでバイタリティ溢れる英雄なのであったとさ。

 

「「「行ってらっしゃーい!」」」

「「行ってきま~」」

 

 そんな中、俺は恒例の運搬作業に従事していた。

 地下都市ほどではないが、地上部も結構な被害が出ている、いくら石材があったとしても、他にも足りない物はいっぱいあるのだ。

 ちなみに、今回もまた二組に分かれる事と相成った。ルクスリリアと俺が外に出て、他は地下ネザーレでお手伝いだ。

 復興以外にも色々とやる事があったのである。そのへん、シャロとヘカテが頑張ってくれた。

 

「はぁ~ん、今年の春は何もねぇと思ったがネザーレでそんな事がな。へっ、そういう事かよ……」

 

 運搬ついでに王都やリンジュへご報告。第三王子派閥を中心に、ギルドやら何やら各地のメッセンジャーとしても働きまくった。

 どうにも尖兵戦を思い出す光景だ。しかし、あの時はマイナスをゼロにする為に急いでいたが、今回はマイナスからプラスにする作業なので気が楽だ。

 

「ご主人! ムラッときたッス! ついでに超淫魔化も切れそうッス!」

「オッケィ!」

 

 今回は空戦車を使わず俺とリリィの二人乗り移動だったので、移動中は常時トップスピードを維持できて楽しかった。

 魔力が切れたら休憩して満タンにすれば即復帰できるしな。割とマジでファストトラベルめいている。

 

「すみませ~ん。イシグロで~す。ハンコお願いしま~す」

「これはイシグロ殿、よくぞ参られた。さっそく検めさせてもらおう」

 

 鮮血公国を出て、

 

「ハンコお願いしま~す」

「ああ、今回も迅速だな。いや早過ぎるな」

 

 ラリス王国を飛び回って、

 

「ぺったんこ~」

「うむ。ハンコだな」

 

 地下で荷下ろししてから皆とコミュ。発注書をまとめてもらってる間は復興作業を手伝った。

 なお、この頃には吸血鬼達の筋肉は大分萎んでおり、幼女吸血鬼は元の幼女ボディに戻っていた。

 そうやって働いていると……。

 

「やぁ。お待たせ、待った? 僕が来たよ」

 

 女装してない第三王子がやって来た。

 

 

 

 

 

 

 ネザーレにあるラリス大使館。その一室にて。

 俺は第三王子と対面していた。室内にはルクスリリア達も勢ぞろいで、対する王家側は王子と爆乳メイドのみ。数的にはこっちが有利なのに、戦って勝てるビジョンが見えないの何かのバグでは?

 

「お話の前に言っておきたいんだけれど、僕はイシグロさんを罠に嵌めようと思ってネザーレに送った訳ではない。その事はどうか信じてほしい」

「承知しております」

 

 ともかく、彼が来たのは例の一件……つまるところ幽界とか飢喰徒とか旧魔王軍とかリアルイーザ様復活のアレコレの始末の為である。

 何やかんや王家で一番乗りしたのは第三王子だったらしい。早い者勝ちというルールはないが、早い方が政治的なほにゃららが色々と有利なんだとか。そのへんは知らん、知らん方がええ。

 

「ふ~む。本当に、本当にイシグロさんは色んな事件に遭遇するね~。しかも今度はリアルイーザ様を復活させてしまうとは」

 

 事の顛末を改めて説明すると、彼はネザーレ・ティーを飲みながら言った。ワイもそう思います。

 ヴィーカさんとは王子の計らいで顔合わせし、ジュスティーヌさんとは大冒険の末に遭遇。今回のリアルイーザ様復活と合わせ、これで勇者一党の半分と出会った計算である。

 同じくらい旧魔王軍所属の猫又一味と遭ってるんだよね。陰陽術師っぽいのと、科学者っぽいのと、武闘家っぽいのと、将校っぽいのと、呪術師っぽいのと、ほんでネザーレで戦った剣士っぽいので都合六人である。何人おるねんって話だ。コンパチはエネミーの宿命とはいえ、頼むからもう出てこないでくれと言いたい。

 

「さて、お堅い話はおしまい。報酬の話に移ろうか」

 

 諸々の確認の後は、お楽しみのご褒美タイム。

 王子が指示すると、キルスティンさんが胸の谷間に手を突っ込み、中から――恐らく収納魔法だろう――一枚の羊皮紙を取り出した。

 

「倫叡塔に所蔵されていない古代の魔導書。まぁ最悪外に漏れても構わない程度の代物ではあるけどね。禁書を要求されても応えられないけど、本当にこれでいいのって気持ちさ」

「あるんですね、禁書」

「あるよ。勝手に開いたら死刑確実なのとか、沢山」

 

 お出しされた羊皮紙には、一連の事件の報酬一覧が載っていた。旧魔王軍の討伐とメッセンジャー関連の報酬だ。残念ながら猫又の捕縛は叶わなかったが、それでも相当である。

 主な報酬は金銭だったが、中にはヘカテが要求した王家秘蔵の魔導書の写しなんかもあった。これは、事前に「クリスマスプレゼントは何がいい?」みたいなノリで訊かれた問いの答えである。ヘカテのパワーアップは一党全員のパワーアップに繋がるのだ。

 ちなみに、王子とは別枠でネザーレからも公式にご褒美をもらった。うち一つは後々に頂くとして、当座の報酬として書庫に保管されている魔導書の閲覧許可を頂いた。最近のヘカテは本の虫である。あとグーラも世に出てないネザーレの伝記を読ませてもらってたらしい。

 

「イシグロさんは旧魔王軍の猫又を討伐し、あまつさえ復活したリアルイーザ様の命を救ったんだ。誇っていいと思うよ」

 

 地上部の騒動についてだが、時系列的に猫又スライムが死んですぐに街で暴れていたスライムは撤退を始めたらしい。

 そこを陰に隠れていたエージェント・メイドさん達特殊部隊が襲撃し、旧魔王軍の関係者らしき人物を一人捕縛したそうだ。結果だけ聞くとアッサリしているが、多分めちゃくちゃな激戦があったんやろなって。

 

「あの、すみません。報酬の使い道について、少しご相談させていただけますでしょうか?」

「構わないけれど、何かな?」

 

 こちらの確認も済んだところで、俺は内心ドキドキで口を開いた。

 これ言っちゃっていいかなぁという心境である。大丈夫だとは思うが、やっぱ怖い。

 

「頂いた金銭を、ネザーレに寄付しても構いませんか?」

 

 俺は、今回の金銭報酬の多くをネザーレ復興に使うつもりだった。

 それは王家からの報酬だけではなくて、ネザーレから贈られたお金も含まれる。後者については確認済みだ。

 

「理由を聞いてもいいかな?」

 

 寄付の理由。それは一言で言えば罪悪感だ。

 確かに、俺達の活躍で旧魔王軍を討伐できた。俺達がいなければ、リアルイーザ様は復活しなかったのかもしれない。

 同じように、俺達が来なければ幽界は拡大せず、街に被害は出なかったのではと考えてしまう。

 ヘカテーニャの寿命問題の事もあり、どのみちネザーレに行かない選択肢はなかったのだが、どうしても素直にお金を頂く気にはなれないのだ。復興作業の様子などを見ると、尚の事。

 

「なるほどね。謙虚と見るか、卑屈と見るか。相変わらずだね、と言っておこうか」

「恐れ入ります」

 

 対し、第三王子は呆れ顔だ。この事については、実は皆からも呆れられてたりする。

 無論、寄付については家族会議でお話し済みだ。勿論、皆の自由意思を尊重し、ルクスリリアとユゥリンとヘカテーニャは自分用に確保している。結論、寄付するのは金銭報酬の三分の二である。

 

「結論から言うと可能だよ。けれど、王家からの褒美をそのまま他国に贈るのは拙い。理由は分かるよね?」

 

 貰ったお金の使い道は此方の自由だが、俺への報酬をそっくりそのまま他国に渡すのはラリス王国への不義理と見られる可能性がある。

 だからこそ、言わないで寄付するのも悪いと思い事前に許可を取ろうと思った次第なのだ。そう思っている俺の前、王子は一転して悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 

「実はそう来ると思って、事前に準備してきたよ。キルスティン」

「イシグロ様、こちらを」

 

 緑髪爆乳デカ尻むちむちメイドことキルスティンさんは、またも胸の谷間から羊皮紙を出して俺の前に置いた。

 その紙には“ネザーレ復興基金”と書かれてあり、既に止まり木協会等複数の支援者の名前が載っていた。

 

「ラリス主導の復興支援だね。これに送る形でいいかな? 要は筋を通せばいいんだから」

「あ、ありがとうございます……!」

 

 確かに、という納得感。俺のようなパンピーが何も考えず寄付するのではなく、公的な組織が公的にお金を使う方が良いに決まっている。

 どうやら、俺の思考と行動は読まれていたようだ。

 

「ああ、そうそう。人形と代替する深域武装についてだけどね、こちらは準備ができたから王都に帰ったら僕の侍女を訪ねるといい。僕が選べる範囲で良いモノを揃えたからね」

 

 お次は別件についてである。

 最上位迷宮を踏破した後、ドロップした深域武装と王家保有の深域武装を交換するという契約を交わしていたのだ。

 空飛ぶ突撃槍の時と異なり、今回は複数候補の中から選ばせてくれるらしい。こっちはもう純粋に嬉しい。武器自体は間に合ってるが、ユニーク武器なんてナンボあってもええのである。

 

「少し遅れたけれど、真祖になれたんだね。おめでとう、ヘカテーニャ教授」

「あ、ありがとうございます。お陰でお日様の下歩けるようになりまして」

 

 それからは、軽く世間話をして過ごした。

 パイモさんが新開発した魔道具がどうのとか、最近の聖輪郷と保護した天使達の動向とか、先日たまたま空を飛んでいるヴィーカさんを発見したとか。

 割と穏やかな時間が流れていた……その時だ。

 

「ここにアレクの子孫がいるって聞いたんだけど~!」

 

 どーん! と、ラリス大使館の応接室にリアルイーザ様が現れた。

 彼女の背後、吸血鬼騎士があたふたしていた。王子付きのメイドさんは顔を真っ青にしている。

 他方、これには第三王子もビックリ顔だ。俺もビックリ。お互い彼女がここに入ったのには気付いていたが、まさか乗り込んでくるとは思ってなかったのである。

 

「うむ! 汝がアレクの子孫だな! 凄まじい魔力! 戦ったら普通に負けてしまうな! 名を教えてくれるか? 予はリアルイーザである!」

「お、お初におめにかかりま……」

「なにを他人行儀な! 予と汝は遠い親戚みたいなもんであろう! あ、イシグロ君もいたのだな! 汝の働きのお陰でネザーレの再建は順調である! 礼を言うぞ!」

 

 驚愕&困惑する一同の中、リアルイーザ様はずかずかと第三王子に接近し、やおらムギュッとハグをした。

 伝説の英雄とはいえ、一国の王子に何たる所業だろうか。騎士は白目剥いてるし、爆乳メイドさんは困り顔だ。

 

「むっ? 汝、もしや……」

 

 すると、僅かに身を離したリアルイーザ様は王子の目を覗き込むように顔を近づけた。

 さながらキスする数秒前といった距離感。対する王子は薄い笑みの困り顔だ。

 

「……ほう? ラリスにも色々と闇が潜んでおるようだな。なに、心が光なれば何も問題はない。そういう時代なのであろう? 今は」

「はい。僕はその為に生まれてきましたので」

 

 で、何か意味深な会話をするお二人。今の、俺が聞いても良かったやつなんですかね。

 まぁ偉い人の考える事は知らん方がええからスルーで。

 

「そうであった! イシグロ君にコレを渡しにきたのだ!」

 

 言って、今度こそハグを解いたリアルイーザ様は、収納魔法から食べかけのパンを取り出した。

 

「あっ、これではなくて……」

 

 違ったようで安心だ。次いで彼女は劇場版の青タヌキのように収納魔法からゴミをポイポイ出しまくり、やがてお目当てらしき物を掲げてみせた。

 

「予からのお礼である! 受け取るがよい! ほら、城がぐちゃぐちゃになっていて探すのに手間取ってなぁ!」

「有難く。え~っと、これは……?」

 

 そうして手渡されたのは、ゴルフボール大の真っ赤な宝石だった。

 いや、ただの宝石じゃないな。仄かに魔力を感じる。どことなく始祖の心臓に似てるような。はて、これは何だろう?

 

「そ、それは、まさか……」

「知っているのかエリーゼ」

「ええ。それはネザリンド石。古代、始祖リアルイーザの友たる証として贈られていた宝よ。私の知る限り、これを持っているのは勇者一党と、ほんの数人程度だったはず……」

 

 心臓が跳ねた。要するに、銀竜盟友剣とかそういう歴史的なお宝なのでは。

 リアルイーザ様を見ると、彼女は腕組み仁王立ちでうんうん頷いている。

 

「戦いの後なぁ、なんか身分とか色々保証するブツが要るって話になってなぁ。面倒だったんでその辺にあった石をそういうモノって事にしておいたのだ」

「へ、へぇ……ありがとうございます」

「ちなみに、ネザリンド石は二度と手に入らない貴重品だよ」

「らしいな! 昔はもうその辺の石ころと変わらんくらい採れたのであるが! むっ、よいこと考えた! ほれ、盟友剣を出せ!」

「は、はい……!」

 

 言われるがまま、収納魔法から出した盟友剣を手渡す。

 すると、彼女はさっきの宝石を俺から取り上げ、両手に魔力を漲らせて……。

 

「ふんぬ!」

 

 ガッキーン! 柄と石を合体させた。何だ今の魔法? 地味に大魔法並みの魔力が迸ったぞ、今。

 

「ほれ! ヴィーカ君の剣とネザリンド石が合わさり最強に見えるな! 安心せよ、予の魔力でガッチガチに固めておいた故な!」

 

 で、戻された盟友剣の柄頭には、件の宝石が嵌っていた。

 なんかもうビックリ通り越して反応に困る。この人、勇者一党のお騒がせ枠だったのでは。

 

「盟友剣にネザリンド石か。とんでもないものを手に入れてしまったね、イシグロさん」

 

 何やかんやありつつ。俺は伝説の英雄から認められたのであった。

 イシグロ家の家宝にしよう。

 

 

 

 

 

 

 光陰矢の如し。

 例の事件から何日が経過しただろう。瓦礫の街は新生ネザーレへと姿を変えつつあった。

 古風だった街並みは、クラシックさを残しつつ現代的に。趣深かったリアルイーザ城は美と威厳が矛盾なく同居した新デザインに。当初は難色を示していた貴族達も、この光景には満足しているそうだ。

 現在、ネザーレは以前とは別種の活気に満ちている。街のあちこちでラリスの職人が闊歩し、建築魔導士がチームを組んで家を建てている。これまで城に引きこもっていた真祖が街を歩いている姿なんかも見られた。

 まだまだ時間はかかりそうだが、それでも遠からず蘇る。そういう確信を持てる光景だった。

 

「よし、どうかな? エリーゼ」

「素敵よ。アナタ」

 

 そんな中、俺達はとあるイベントの準備をしていた。今日はその当日なのである。

 何を隠そう、ヘカテとの結婚式だ。

 

「行こうか、ヘカテ」

「ええんかな? ウチ行ってもええんかな? かあ~、緊張するわぁ~!」

「今さら何言ってんスか! 真祖になったんスから、もっと堂々とするッス!」

 

 俺とヘカテーニャは、式を挙げ、結婚する。勿論、既に奴隷証は返却済みだ。

 この結婚式はネザーレ側からの報酬でもあった。要するに彼等に俺達草薙の後ろ盾になってもらおうというのである。

 けれど、式を挙げる主な理由はそれではなかった。ヘカテだけ式無しってのは寂しい。ただそれだけである。

 

「……その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」

「誓います」

 

 再建中のリアルイーザ城。その門前広場に設けられた簡易式場。

 そこに、フロックコートを着た俺と、ウエディングドレスを纏ったヘカテ。それからブレザーめいたスーツを着た皆の姿があった。

 仲人はリアルイーザ様だった。別に頼んでないのだが、「面白そうであるな! 予がやる! やらせてくれ!」と言って譲らなかったのである。

 

「おめでとう。君の周りには幸福感が満ちてて素晴らしいね」

 

 会場には錚々たる面々が参列していた。ラリス王国の第三王子に、何とびっくり淫魔女王。その他、リアルイーザ様の命令で沢山のネザーレ貴族が参列していた。

 あと、“止まり木同盟”のアリエルさんと“荒野の牙”の新盟主になったエフィーエナさんも参列してくれた。よかったら名代送ってくれない? って言ったらトップが来ちゃったよ。

 

「うむ、うむ、実にめでたい日である」

 

 そんな中、ラドゥ侯爵とその騎士団はお耽美モードで祝ってくれた。ヘカテの教え子であるベアトリスさんなど、ボロボロと涙を流している。

 彼等は共に戦った戦友であり、滞在中は積極的に交流した仕事仲間である。あとラドゥ家秘伝の拳闘術も学ばせてもらったり。

 

「「「ヘカテ先生~! おめでと~!」」」

 

 偉いさんの他、呼べる範囲でヘカテの教え子達もお呼びしたところ、その殆どが来てくれた。

 皆さん先生の事が大好きだったようで、混じりっ気無しのお祝いモードである。ていうか友達の結婚式に呼ばれた子みたいだった。

 

「貴殿等の勇敢な行動はネザーレに多大なる恩恵を齎した。ここに、わが国の名誉ある勲章を授ける」

 

 結婚式では、草薙全員にネザーレの何か凄いらしい勲章が贈られた。ついでにラドゥ侯爵家の家紋入りのメダルなんかも貰った。これにて、俺達は正式にネザーレの後ろ盾を得た訳である。

 銀竜盟友剣に、ネザリンド石。準淫魔騎士勲章に加え、止まり木協会バッジに荒野の牙の身内の証。そんで今回ネザーレの武功勲章である。もはや歩く広告塔だ。

 

「さぁ! ここからは宴である! 皆の者、思う存分に飲んで騒ぐがよい!」

 

 それからはもう、完全にお祭りだった。

 古代流のどんちゃん騒ぎで、文字通りの無礼講である。リアルイーザ城に貯蔵していたワインを始祖命令で大放出し、ネザーレ伝統のローストビーフが振る舞われた。吸血鬼族とは思えない庶民派パーティの様相だ。

 今日を楽しめたから明日を頑張れる。リアルイーザ様からは、そういうマインドを感じた。

 

「なぁ、ダーリン?」

「ん?」

 

 祝福の喧噪の中、純白のドレスを纏ったヘカテが俺を見つめていた。

 喪服のようだったゴスロリから、無垢なる純白の装い。彼女の生き様を否定する訳ではないが、今の彼女はかつてより活き活きして見えた。

 

「ん~、あぁ……ごめん、さっきまで考えとった台詞飛んでもうたわ。もう、あんまりに嬉しくって」

「そうか」

「その……ありがとな。本当に、あの時にダーリンに出会えて、本当に良かった。ありがとうなぁ、ウチの太陽♡」

 

 屈託のない、幸せに満ちた笑みだった。

 死を眼前にして諦観に呑まれ、赤く濁っていた目が輝いている。

 

「ダーリンに出会えてよかった。妖血娘として生きてきてよかったわぁ。ホンマに……」

 

 二つの紅月が三日月になる。

 見ているだけで、こっちが幸せな気持ちになる。

 そんな、最高の笑顔だ。

 

「ああ、俺もヘカテに会えてよかった。今後ともよろしく」

「せやね。今後とも、よろしゅうお願いします」

 

 真祖になったヘカテーニャは、今までに倍する時を歩む事となる。

 ゆっくりと歩んでいこうと思う。

 末永く幸せになる為に。

 

 

 

 

 

 

「探索! 戦闘! そんで長かった復興作業! いやぁ色々あったッスね~!」

「イシグロ・リキタカの英雄譚に新たな一ページが追加されたわ」

「とても光栄ですけど、ボクとしてはネザーレ牛が思い出深いですね。また食べたいです!」

「地下温泉気持ち良かったのじゃ~」

「戦いの影響で新しい温泉見つかったらしいですよ」

「ん、温泉は良い文明。戦いの疲労を癒やす為にも湯治に行くべき」

「休むのはいいけどよぉ、アタイは王都での仕事溜まってンだろうなぁとか考えちゃうワケ」

「安心して、細かいのはウチも手伝うから。印字機使えばパッパやで」

「うへ~、アタイあれ使うの苦手なんだよ……」

 

 ネザーレを出る頃には、外はすっかり初夏になっていた。

 そういえば、ヘカテをお迎えしたのも夏だったし、ちょっと最近時が過ぎるの早すぎない? これも年をとった証拠なのかね。

 

「白昼のネザーレも復興が進んでいますね。前よりも綺麗になっています」

 

 地上部・白昼のネザーレもまた、地下同様にリノベーションされつつあった。

 真っ先に行われたのが塔の補修で、今は広場を中心に少しずつ元に戻しているそうだ。

 ちなみに、現在地上部は下水道を探索中なんだとか。何たって旧魔王軍が隠れてた訳で、そのへんしっかり洗わないと。

 

「結局、あの霧とか何だったんじゃろうな。また旧魔王軍の仕業かのぅ?」

「どうなんだろうな」

 

 一連の事件、実際のところ何が原因であんな事が起こったのか誰も分かっていないのが現実である。

 当人曰く、微睡んでたリアルイーザ様が無意識に使った魔法によるものではないかと言っていた。

 けれど、例によってそれが事実かは誰も証明できないでいる。ネザーレ上層部は必死に犯人捜しをしているそうだが、今のところ見つかりそうにないとの話だ。

 

「にしても残念だったッスね~。あんなに手間暇かけてたのに」

「ん~、まぁそうやね~」

 

 門を目指して歩きつつお話する。

 ルクスリリアが言っているのは、エメスアルマの事である。

 

「ぶっちゃけ半々や思とったよ、ウチは。いつの時代もウチ等研究者がやりたい事とお上が欲しがっとるモンは別なんや」

 

 結果から言うと、リヴクラフト・プロジェクトの支援は取り消しとなり、以降は研究費を支給されなくなってしまった。

 理由は複合的だが、一言でまとめるとヒトガタに拘る理由なくない? って話だった。

 そもそもリヴクラフトを使いこなすにはヘカテ並みの魔力操作能力が必要だし、今のところ吸血鬼族でしか使用できないのである。ラリス的には使い道が無さ過ぎるのだ。

 

「でも細けぇ技術とかは凄ぇって褒められてんだよな? な~んかモヤモヤするぜ」

「そんなもん、そんなもん」

 

 けれども、リヴクラフトに用いられた各種新技術は非常に好評だったらしい。

 極めて高度な学習型智核に、洗練された義体構造。新規設計の炉心構造等々。それら技術は既存のゴーレムに即応用できるそうで、全く新しいゴーレムとして造られたリヴクラフトは、皮肉にも既存のゴーレムの完成度を上げる結果となった。

 

「ん、でも一番評価されたのはケインのホバー技術。ヘカテあんまり関係ない」

「いやぁしゃーないってアレは。ウチもあれ見た時はびっくらこいたもん。何で今まで誰も思いつかんかったんや~って」

 

 中でもケイン氏が開発したホバー技術はめちゃくちゃに高評価で、今後ラリスはこっちの研究を進めていくそうだ。

 で、ヘカテはそれに参加してはどうかとの打診もあったが、案の定彼女はすっぱり断っていた。

 

「まっ、ええねん。ウチの目的はあくまでヒトガタのゴーレムに乗って動かす事やったんやから」

「まだまだ続けるのかしら? リヴクラフトの研究は」

「もちろん! その為にもウチもウチでお金稼がなアカンな~。どないしよ」

「迷宮行こう、な?」

「ダーリンがそう言うてくれるなら甘えさせてもらおっかな。まぁそれとは別の資金源があってもええやろ思ってん」

 

 ケラケラ笑って語るヘカテの顔に、かつてのような焦燥感はない。

 そういえば、彼女が太陽の下で日傘を差さなくなって久しい。去年は辛い辛いと言っていた夏の日差しも、真祖となった今では余裕なのである。灰色の髪が陽光を反射して煌めいていた。

 

「ん? あそこにいるのって……」

 

 そんな風に話していると、ふと見やった方向に見覚えのある影があった。

 鮮やかなマゼンタの髪に、豊満で肉感的な肢体。肩に担いだ真紅の大鎌。傍らでは軍馬程もある大きさの有翼オオカミがお座りしている。

 いやいや、まさかね……。

 

「えぇ~っ! これ使えんなっておるの! 言うて予の時代では最上級の金貨ぞ?」

「骨董品としての価値はありますが、今の通貨は殆どルァレなので……」

 

 リアルイーザ様である。

 しかも、なんか商人と揉めていた。

 一同、啞然である。何やってんすか大英雄。

 

「お金に替えるったってなぁ。予、そういうのよぅ分からんし」

「ぐふふ、よろしければ私が買い取りましょうか。そうですなぁ、この時代の通貨ですと……ちょうどこれくらいで」

「そこの商人、ちょっと待ちなさい」

 

 と、なんか騙されそうだったので慌ててインターセプト。普通に価値のある古代金貨をエリーゼの目利きで妥当な価格で買い取り、クソ商人を撃退した。

 もしリアルイーザ様を騙してたら、あの商人の命が危うかった。命拾いしたんだぜ君は。

 

「リアルイーザ様、地下にいたのではなかったのですか? お一人でどちらに?」

「うん? あぁ、ちょっと旅にでも出ようかと思ってな」

 

 リアルイーザ様が何故ここに? 一人で脱出を?

 そう思って訊いて見ると、彼女は晴れ渡る青空を見上げて言葉を継いだ。

 

「ぶっちゃけ、予ってもう充分に頑張ったと思うのよ。めっちゃ戦ったし、国造りもやったし、今回の責任も果たしたと思うし~。まぁ後の事は後々の子がやってくれるって信じておるし~」

 

 確かに、である。

 幽界で彼女の記憶を見た側からすると、今回の一件があってなおネザーレへの貢献は多大であると考えられる。感傷かもしれないが、彼女は相応に報われるべきだと思う。

 一方で、ネザーレの吸血鬼達は大英雄に導いてほしそうではあった。彼女には圧倒的なカリスマがあるのだ。けれども、当の本人にその気はなさそう。

 

「久々にヴィーカ君にも会って話したいのだよな。食べ物も色々あるみたいだし、今のラリス料理はどんなもんかと。リンジュとかクーシェンとか、そのへん予は全然知らんから行ってみたい。それに、イシグロ君が愛する世界なのだから、予もきっとまた愛せるようになると思うのだ」

「……ええ、素晴らしいですよ、この世界は」

「で、あるか。で、あるよな!」

 

 未来へのワクワクを抑えきれないというような、快活な笑顔。勇者が惚れた理由が分かるというものだ。

 実際、リアロリーザ形態の彼女はマジで可愛かったしな。うっ、急に頭が……。

 

「ではな! また何処かで会おうぞ! 黎明の英雄達よ!」

 

 ややもせず、狼に跨ったリアルイーザ様はネザーレの門を潜って行った。

 狼一頭と気ままな旅。勇者を失くしたその背に、一切の悲壮感は見受けられない。

 かつて世界を救った英雄は、自分の為に新たな冒険に出かけたのだ。

 

「俺等も行こうか」

「そうね」

「てゆーかグーラさんはイライジャ様の話を聞かなくて良かったんですか?」

「めめめ滅相もない! リアルイーザ様にそんな失礼をする訳には……!」

「や、訊いたら嬉々として話しそうな雰囲気あった」

「次会った時の楽しみにしておくのじゃ」

 

 最近は地下と地上を行き来してばかりだったので、皆とやりたい事が溜まりに溜まっているのである。

 まだまだレベリングをしたいし、白昼のネザーレから行ける迷宮も気になる。真祖の性能も検証したいし、リヴクラフト用の武器も造るべき。あの戦いで何かこう戦闘の神髄的なサムシングを掴んだ感覚もあって、最近はトレーニング欲が再燃している。

 それだけじゃない。せっかくの夏でヘカテも真祖になったんだから、水着を着てプールに行こう。ヘカテの故郷に行くのも良いな。確かリンジュらしいし。クーシェンの様子も気になる。秋になったらフライシュ祭もあるんだよなぁ。

 あと、そろそろ楽しい家族計画の為に何処かで居を構える準備をしなければ。その為に世界を回るってのもアリだろう。

 

「さて、皆乗ったな? 出発進行~!」

「あいッス! ゆけラザニア! 遥か万里の彼方まで!」

 

 とにかくだ。ようやっと、日常が戻ってきたのである。

 リアルイーザ様に負けないくらい、この世界を楽しもう。

 かけがえのない、皆と一緒に。




・鮮血公国ネザーレ
 第一大災厄時に魔族が逃れた人工の地下世界。誰が造ったのかは不明。
 しばらくは魔族同士の殺し合いをしていたが、そこに地下魔族全ての特性を持った最強種“吸血鬼族”が生まれ、天下を取る。
 勇者の救世伝説の後、地上に後のディング魔族国に繋がるディング帝国を建国。リアルイーザを大公とし、以降ネザーレは公国となった。
 空には紅月と白月が交互に浮かび、二つの月が並ぶ時間は割と眩しい。

・吸血鬼
 魔族の血から生まれた魔族。最初の始祖は数人いたが、現在はリアルイーザのみ。
 地下世界の王。というより、地下世界に最適化された種族である。なので侵略戦争はあまり強くなかったりするのだが、真祖等は隙あらば領土を拡大しようとしていた。
 裏で旧魔王軍と協力していた貴族が消される予定。うち一人は自首して事なきを得た。

・幽界
 目覚めかけていたリアルイーザが無意識に生み出した精神世界。
 復活する為の血と夢の再現の為、人々を閉じ込めていた。
 もし放置してたらそのうちネザーレは霧に閉ざされ、地上を侵食。復活したリアルイーザが飢喰徒を率いて王都アレクシストに侵攻していた。

・飢喰徒
 幽界からの使徒で、末期のリアルイーザから見た同胞の姿。
 主な役割は幽界に人を連れ込む事だが、同時にリアルイーザ復活の血の採取もあった。

・ポルフェロス
 キメラオオカミ。リアルイーザが持つ深域武装、ポルフェロスの鎌から召喚される守護獣。
 幽界の中、リアルイーザを復活させられる人物を捜していた。

・人工粘体
 ホムンスライム。かつてラリス王国が生み出した知性ある粘体で、街一つを飲み込み当時のラリス王に討伐された。
 以降は禁忌として製造を禁止されたが、旧魔王軍は人工粘体を再生させて利用している。
 一応、魔王軍幹部だが、元の知性は制限されている。

・捕縛された魔王軍関係者
 猫又でも人工粘体でもない。地上部の指揮官。作戦失敗を悟って逃げようとしたところ、ラリスの特殊部隊に捕縛された。
 現在は第三王子派の収容所で大人しくしている。



 次話はシャーロット編以降のキャラ表プラス現在のイシグロ達のまとめにしようかと思います。
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