【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告もいつもありがとうございます。感謝しております。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
俺の夢は皆とイチャラブハッピーライフを送る事。そして、幸せ家族計画を過不足なく実現する事である。
俺が幸せなだけではダメだ。皆が幸せなだけでもまだ足りない。レノやユゥリンの姉達も含め、俺と皆との子供まで親類縁者みんなが心から幸せな必要がある。
それこそが、俺ことイシグロ・リキタカの夢である。
さて、その夢を現実にするには何が必要か。
結論、“力”である。
力こそパワー。暴力は全てを解決するのだ。冗談抜きに、マジで。
カジュアルファンタジーに見えるこの世界、見てくれの綺麗さの割にかなり暴力的なのである。
近所の森に野良猫レベルで魔物がいるし、銀細工持ち冒険者はやべーやつばっかだし、当然として街の治安は現代日本以下であるからして。
あまつさえ、旧魔王軍残党とかいう意味不明な†闇の組織†が裏社会――かなり大爆笑――で暗躍していて、平和な世を乱そうとしていやがる。死ね(直球)
そんな世界で、無防備なまま、心身共に健やかに安泰な暮らしができようか? 無理である。
故に力は前提で、それ以外にも予防や保険もまた不可欠と考えられるからこそ、内心モニョッてても俺は政治的な後ろ盾を得るべく各勢力に媚びまくっているのだ。
巷じゃイシグロ何某は英雄様らしいが、そんなの俺にとっては靴の汚れと同義である。
仮に、俺が冒険者を引退して、どこかの田舎に引っ込むとする。皆との間に子供を設け、静かで満たされた生活を営むとしよう。
これ、俺からすると悲劇フラグにしか見えないのだが、同意してくれる人いるだろうか。
古今東西、戦いの日々を離れて安らかな暮らしを営むキャラってのは、往々にして厄介事に巻き込まれるのが相場と決まっている。そんでもって、悪辣な悪役は当人ではなくターゲットの身内を狙ってくるのである。元兵士の筋肉モリモリマッチョマンの変態とかその典型だろう。
所詮は創作物と言ってしまえばそこまでだが、物語みたいなファンタジー異世界にいるのだから創作物みたいな危機的状況は警戒して然るべきであると思う次第。
俺がいないうちに子供が拉致され、人質に使われるかもしれない。あるいは、俺が戦いから遠ざかったせいで腕が鈍り、襲撃者に後れを取る可能性だってあり得るだろう。
可能性を突き詰めていくとキリはないが、尽くせる人事は尽くすべきだ。
結局のところ、最後にモノを言うのは力による自己救済なのである。
力が要る。それも、誰をも圧倒できる強大な力が。何度も繰り返すが、やはり最終的にここに帰結する。
ゲルトラウデ師匠からは地に足着いた武を教わった。ヴィーカさんには究極の技を見せてもらった。そして、リアルイーザ様は圧倒的な力を魅せてくれた。
アレくらい強くなければ、安心して子作りなんてできない。家内安全は超暴力と共にある。
閑話休題。
当然として、俺一人だけが強くても仕方がない。家族の安全には、家族の協力が必要不可欠だ。
だから皆ともハクスラし、レベリングしている訳でして。
現状、我が同盟のスタメンと控えメンバーにはそれなり以上の戦力差が存在する。
ユゥリンは銀細工上位層に匹敵するが、シャーロットの自衛力はハッキリ言って銀細工下位レベルである。ヘカテーニャの場合、ロボありきの戦闘力なので少々判断し難い。
スポーツの話になるが、本当に強いチームってのは控えメンバーも強いものだ。エース一人が、もしくはスタメンだけが強いチームは層が薄く、予期せぬ窮地には脆いのである。
この世界で真に安泰な暮らしができる家族とは、力の層が厚くて如何なる窮地にも小揺るぎもしない力を持った超暴力家族なのだ。
その為のハクスラであり、その為の鍛錬であり、その為の能力検証である。
元妖血娘・ヘカテーニャ。
吸血鬼族の上位種――真祖になって間もない彼女の能力は、未だ不明な点が多い。
何故なら、ネザーレでは復興支援や研究に忙しく、思い切り力を振るえる暇も場所もなかったのだから。
待ちに待った検証の時間である。見せてもらおうか、真祖になった京都弁灰髪ゴスロリ吸血鬼の性能とやらを。
鍛錬場である。
何だか久しぶりな感のあるコロッセオ型鍛錬場の中は、冷房も暖房もいらない丁度いい気温をしていた。
ここならどんな技を使ってもどれだけ大規模な魔法を使っても問題ない。文字通り鍛錬にピッタリな場所なのである。
「ふぅ~! なんか懐かしい感じするッスね! 街中だと自由に飛べないし、久々に思い切り翼を伸ばせるッス!」
「ぶちぬき丸を使った稽古は場所が限られますからね」
「下手に陰陽式編むと最悪ボカンじゃからのぅ。鍛錬場無しじゃと鍛錬できん身体になってもうた」
「いいじゃない。私なんて魔物相手じゃないと外で魔法を使っちゃいけないのよ」
「ん、エリーゼの場合は残念でもないし当然」
「鍛錬は後でするとして、とりあえず真祖になったヘカテの力を見てこうか」
「任せとき! こん時の為にネザーレでも色々調べとったんや!」
此処に来たメンバーは俺を含めたレギュラーに加え、控えのヘカテーニャの計七名である。
シャロとユゥリンは以前使ってたルーン工房の大掃除。終わったらチィレンさん家の掃除と召喚猫の回収だ。フブキとシグレはうちの子なので返してもらわねば。
「さて、始めようか。え~っと、なになに?」
各々の準備運動を終えたところで、ヘカテーニャの能力検証を開始する。
妖血娘は最下級の吸血鬼であり、真祖は最上級の吸血鬼だ。前者時代の彼女の特能は純血魔術くらいで、他はデメリットばかりだったように思う。んで真祖になってからのヘカテーニャは何が出来て何が出来ないのか。それを知らない事にはハクスラできぬ。
「ステータス的には魔力が倍近く伸びてる以外そんな変わってないけど」
「マジ? ウチ、普通にめっちゃ力強ぅなっとるで?」
コンソールを開き、いつものようにヘカテのステータスをオープン。始祖の血を飲んだお陰で、種族の欄にはしっかり“真祖”と書かれている。
基本ステータスに関しては“魔力”が倍近く伸びているが、それ以外に大きな変化はない。肉体能力は向上しているとの自己申告だったが。
で、能動・補助スキルの欄にこれまで存在しなかった【真祖権能】ってのが追加されており、恐らくここに全部の特殊能力がぶち込まれているのだと思われる。
「じゃあまず、【
「了解! ほい、【変身】っとな!」
市販の吸血鬼本を見ながらお願いすると、ヘカテは全身から魔力を放出してシームレスに姿を変えた。
一秒かからなかった。身長約百四十センチのロリ美少女から、二十センチくらいの黒猫になった。おぉ、マジで変身している。服ごと無くなってるあたり、竜族の鎧と一部似た仕様なのかもしれないな。
「これが【変身】や。練習すると他の動物にもなれるらしいけど、今んとこウチは猫にしかなれへんな」
「ん、猫ちゃん! 猫ちゃん可愛い! 猫ヘカテ! にゃーっ!」
「うにゃっ!?」
黒猫と化したヘカテ先生は、テテテッと寄ってきたレノにむぎゅっと抱っこされた。
ニャーニャー言わず普通に人語を喋ってるのを鑑みるに、普通に不思議キャットである。そういえば馬に変身したクリシャナさんも馬の口で人語しゃべってたっけ。
「動物に変身して何か良い事あるんスかね? 猫の身体ってネズミ狩るくらいしかできねぇと思うんスけど」
「斥候としては優秀なんじゃないかしら? 他にも狭いところに逃走するとか」
「前にそうやってクリシャナに逃げられたしのぅ」
「逆に猫になれるんは少数派らしいで、基本は蝙蝠とか狼なんやって。馬とか便利やと思うんよな~」
「馬になれば長距離移動とかできますもんね。御者要らずで馬車を引けます」
「や、猫は可愛いから問題ない。ヘカテはずっと猫でいるべき」
「猫の舌じゃあお茶飲めへんから勘弁やな……っと!」
猫吸いしてくるレノを肉球で押しのけ、ロリの腕から逃れたヘカテはヌルッと元のゴスロリ吸血鬼に戻った。
カワイイパラダイスを享受していた俺だったが、ふとグーラとイリハを見て思い浮かんだカワイイ光景があった。
「それ、耳だけ獣に変えるとかできないの?」
「え? あぁなるほど、動物の能力だけ借りるって考えやな。やってみるわ」
全身動物化できるなら、身体の一部を獣化できないものか。理由は勿論、カワイイからだ。
そう思って問うてみると、彼女はうぬぬと目を瞑って唸った。真祖の魔力がうねうねネジネジ泳いでいる。
やがて、灰髪吸血鬼の頭にピョコンと猫耳が屹立した。
「「ヘカにゃん!」」
俺&レノ、大興奮である。
ほう、猫耳ロリですか。大したものですね。猫耳属性とロリ属性は極めて相性が良いらしく、愛用しているロリコンもいるくらいです。それがこの俺、イシグロ・リキタカよ。
見れば、猫耳の生成に伴ってか、彼女のヒトミミ部分は消失していた。
「あっ、無くなってもうた。まぁ普通に猫になる方が楽やし、あんま使い道ないかなぁこれは」
で、魔力が途切れると猫耳は引っ込んでヒトミミが戻った。実に不思議な生態であり、不思議な権能だった。プレイの幅が広がっていいと思う。
その他、ドラグーシュ氏がやっていたような人狼形態とかも試してもらったが、耳だけ変化と違って出来そうな雰囲気が一切しなかったという。アレは狼血鬼の専売特許なのだ。
「んじゃ次いってみよう。え~っと、他は……眷属か」
「あいあい、【
次である。ヘカテが手で作ったお椀の上に、深紅の球体が生成された。
すると、球体の中から一羽のカラスが出現した。
「これは現代ラリス式の召喚術とか深域武装の守護獣とは根本的に違うねんな。どっちかっちゅーと身体から分かれた手足を動かしとる感じなんよ。やもんでめちゃくちゃ自由自在に操れるんや」
伝書バトを飛ばすように放り投げれば、手の上のカラスは鍛錬場を飛び回り出した。面白いもので、飛行中のカラスは両の翼を羽ばたかせておらず、カラス型のミサイルのように飛んでいるではないか。
続いて、彼女の足元に深紅の血だまりが広がっていき、さっきのカラスと同様に中から猫やら狼やら鼠やらが工業製品のように這い出てきた。とんでもないアニマルハザードだよ。
「凄ぇ! 獣使いじゃん! しかも召喚数に制限ないのか!」
「もう全部ヘカテ一人でいいんじゃないッスか? 一匹一匹普通に強そうッスし」
「確かに弱い魔物なら囲んで圧殺できそうね」
「鑑みるに、眷属で牽制して純血魔術で倒すといった戦い方が基本になるでしょうか」
通常、召喚獣は逐一指示を出して操るそうだ。技を使わせたいなら技名を詠唱して使わせるのである。それこそ、前世でよく見たモンスター育成ゲーのように。
対し、ヘカテの眷属は何の指示もなく規律正しく動いていた。曰く、頭ん中で命令しているらしい。召喚獣というよりビット兵器。しかも脳波コントロールできるとな。
パッと見でも分かるが、グレートですよこいつは。戦いのバリエーションが広がりまくりで、純粋な自衛力アップと言えよう。
「なんだっけ、心臓を食った後の猫又がやってた変わり身の術はできないの?」
ふと、ネザーレで戦った猫又の戦法を思い出した。
奴は攻撃を受ける度に蝙蝠を召喚し、ダメージを肩代わりさせていた。恐らくアレも【眷属創造】によるものだったのだろう。
もしアレを出来るなら、いざという時のヘカテの耐久性能はかなりのものになるが。
「あぁ~、アレな。要は当たる直前に眷属召喚して切り離す感じやと思うから、まぁ頑張れば出来ると思うけど……どんくらい練習すればええんか分からんな。出来てもあんな上手く使える気ぃせんし」
柏手ひとつ。全ての眷属を雲散霧消させたヘカテーニャ。どうやら、あの変わり身の術を実戦で使うのは難しいらしい。
逆に言うと、練習すれば出来るかもしれないのだ。これは修行パート確定ですね。
「はいはい、次いくでな。こっちはあんまりコツ掴めてないから、ちょっと皆さん離れてもらってええ?」
言われた通り、皆と一緒に彼女から距離を取る。
野球でいうピッチャーとキャッチャーくらいまで離れると、投手ヘカテから「多分そこで大丈夫」と来た。
「ほないくで……【
瞬間、ヘカテを中心に漆黒の魔力が放射された。
まるで危険な毒ガスが散布されたかのようである。危機察知に反応はないが、なんか生理的に触りたくない感。見た目的に、攻撃というか範囲デバフ技って印象である。
「お、恐ろしい氣なのじゃ……!」
「少し雰囲気が違うけれど、闇の魔力のようね。攻撃ではなさそうだけれど」
「問題なさそうやな。そんじゃこのまま薄~く範囲広げてくで、少しでもキツかったら言うて~。ふんぬ~!」
「うっ、これは……」
宵霧なる毒ガスが俺達まで達すると、イリハとレノが拒否反応を示した。
一方で、他の面々には影響が薄かった。臭くないしダメージないし魔力感覚も平常だ。はて? 何かのデバフ? 状態異常? コンソールを見てもよく分からない。
「【宵霧】ゆーてな、真祖だけが出せる特殊な魔力らしいねん。効果は色々あるけど、特に天使に効くらしいで」
「ん、すごく息苦しい。あんまり使わないでほしい」
「マジっぽいな。ほな弱めてくわ」
広がりに広がった霧を掃除機みたいに吸い込んでいくヘカテ。毒ガスの範囲から逃れた天狐と天使は安堵の息を吐いていた。
「こいつの主な効果は吸血鬼族の強化なんよ。これをバーッと出して戦場の日光防ぐとかもやっとったらしいわ。あと、草とか木ぃとか食べ物を分解する事もできるらしいで」
「な、なんという技を使ってくれたんじゃ……」
「よし、さっそく実験だ」
実験の為、彼女の手にちぎったパンを握らせる。
それから手のひらに宵霧を集中させると、件のパンはみるみるうちに黒ずみ、やがて煤のようになって散っていった。実験は成功だ。
それにしても恐ろしい技である。こんなん森でぶっ放したら相当な被害が出ちまいそうだが。
「あぁ、もったいない……」
「フード理論的にヴィランの技だよね、それ。迷宮外だと封印安定だなこりゃ」
「それ人類にも効くんじゃないッスか?」
「それが分解できるモンは割と限定的やねん。何でもかんでも分解できたら今頃ネザーレが天下取っとるで」
よく分からないけど、なんか凄い技である。
ちなみに、残ったパンはグーラが美味しく頂いた。
「おぉ、問答無用で木が枯れていく……」
「わしが視るに、極まった陰氣で木行と陽氣を克しておるようじゃ。あの魔力に触れた瞬間、清の氣が濁に反転しておる。とんでもないのじゃ」
「ん、光力も防がれる。天使族が聖輪郷に引きこもってる理由分かった」
その他の宵霧の効果だが、食べ物をダメにする以外にも陰陽術の木行や光力など聖属性への一方的な特効を有しているようだった。
まぁこんな極悪能力持ってたら種族ごと何かしらデメリット付けなきゃバランス取れんわな、ゲーム的には。
「それ、ブワーッて前方に撃てたりしない?」
「できるらしいけどやった事ないわ。とりま試しに……」
性能確認が終われば応用である。指向性を持たせて撃ちだす事はできないか。濃度を変える事は可能か。エリーゼの権能のように魔法に混ぜて使えないものか。
いくつか試してみた結果、実戦で使えると判断されたのは宵霧によるエネルギーシールドだった。実際に宵霧盾を使ってみたところ、エリーゼによる聖属性魔法の一切を無効化する事に成功した。
威力や魔力に関係なく、聖属性なら問答無用で無効化らしい。なお、聖属性魔法に祝福か呪詛を付与すると宵霧側が一方的に負ける模様。うーん、このチートドラゴン。
「真祖の権能な、実はまだあるねん、ちょっと実験台になってもらてええ? ダーリン」
「いいよ! こいよ!」
「ぬぬぬ……オラッ、【催眠】!」
「あっ! それ淫魔の十八番!」
真祖権能は多種多様。次に行ったのは、目を合わせる事で発動する催眠能力だった。
喜んで使ってもらったものの、イマイチ催眠にかかった実感はなかった。普通に自由意思あるぞ。
「ダーリン♡ 血ぃ吸わせて?」
「
言われ、考えるより先に首を差し出す。
ハッ、身体が勝手に……! 動けん!
「こんな感じで催眠できんねん。ほな魔力補給に、はむっ♡」
検証ついでに吸血された。僅かにHPが減った感覚。吸った方の魔力はググッと回復している。
「ぷはぁ♡ あ~、いつでも吸血できる生活の快適さ♡ もう元には戻れまへんわ♡ これはもう一生面倒見てもらわんとな♡」
「さっきから見ていたけれど、貴女本当に魔力消費が激しいわね。短期決戦はともかく、長期戦では妖血娘時代の方が強かったんじゃない?」
「魔族にとって魔力は命ッス。これからは節約しながら使うッスよ」
「あー、だから吸血鬼族に真血術のような魔力運用技術が生まれたんですね。納得です」
「そういえばラドゥ侯爵は攻撃する時以外は魔力節約してたな」
これまで低燃費ボディだったが、今は馬力が上がった代わりに燃費が悪くなった感じだろうか。前と同じ感覚で魔法をブッパしてたら一瞬でガス欠するだろう。
今後はスーパーカーでのエコ運転を心がけてもらうしかないな。
「あるいは魔力量そのものをガン上げして燃費問題を解決するか……」
「ん、合理的ではある。そうでなくても容量を増やすのは大いにアリ」
「魔力は多いに越したことないからのぅ」
それはそれとして、結局のところ節約より魔力総量を底上げする方が実戦的ではあると思う。
ホントにヤバくなった時って魔力消費とか気にしてられないだろうしな。レベルを上げて魔力で殴ればいいのだ。
「まぁ真祖権能はこんな感じやな。他は普通に身体が丈夫になったり~とか、再生能力が上がったり~って感じやから。あっ、そうそうウチ目ぇめっちゃ良うなったんよ! 遠くまで見えるし近くのモンも細か~いとこまで見えんねん! こいつは調薬とか色々捗るでぇ!」
「それで真っ先に出てくるのが戦いじゃなくてモノづくりなあたりヘカテの吸血鬼性が表れてるッスよね」
一旦、ここまでの真祖特性をまとめてみよう。
変身能力。迷宮潜り視点、これは偵察とか逃げる時とかに役割が持てるか。耳だけ変身も可能だが、こっちは通常より費用対効果がよくないので後回しでいいだろう。
眷属創造。まだ詳しい検証はしてないが、超優秀なのは濃厚確定バレバレである。オールレンジ攻撃の獲得は純粋にアドだし、戦いは数だよ兄貴。
宵霧。これはまぁ……ピンポイントに聖属性へのメタにはなるが、イリハの陰陽術メタみたいなもんであんまり使い道はないな。戦争だったら色々と悪さ出来そうだが。
催眠能力。これも微妙だな。迷宮というより戦争とか謀略で使えそうな。っていうか、催眠ってラリスの法で禁術指定されてたはず。淫魔も催眠持ってるけど使ったら即逮捕らしいし、封印安定かな。
「実に面白い……」
ひとまず、こんなもんだろう。
俺は吸血鬼本片手にヘカテの能力をメモっていった。
その時、これまたふと思いつく。
「そういえば、リアルイーザ様がやってた霧の転移は?」
「ん? あー、アレは始祖の御業やでウチには無理や」
内心ちょっと期待してたが、リアルイーザ様が使ってた霧による転移・転送能力は無いらしい。
レノの転移能力は彼女単体が移動する感じだからな。集団転移ができるなら超便利だったんだが。
「そういえばヘカテってまだ本気で魔法使ってないんスよね? ついでにそっちも調べとくッスよ」
「せやな。ほなウチが消費触媒なしに使える大魔法を一発……【深淵の氾濫】」
ふいっと、手指を振って適当に魔法を使ってみせる真祖様。したらば魔法陣からドバッと放出された黒い激流が鍛錬場の壁にぶち当たり、勢いそのまま突き抜けていった。
ほう、という感嘆の声。元々彼女は魔術師なのだ。真祖になって色々と能力が増えたとはいえ、それに拘る必要はない。魔法だけでも強いのだ。
「おぉ、魔力返しとか全然ないやん。さすが真祖の身体やな」
「水のないところでこのレベルの水魔術を? サスガダァ……」
「今の魔法はなにかしら? 見た事のない魔法だったけれど」
「せやせや。読ませてもろた魔導書のお陰で色々新しい魔術が使えるようになったんやで、ウチ」
どうやら、ネザーレとラリスからご褒美で貰った魔導書によって、彼女はいくつか新たな魔術を習得したらしい。
この世界の設定に準じるなら、新たなアーカイオンに接続できるようになったって感じか。
「でな? こっそり練習しとったヘカテ・オリジナルのゴッツい魔術があってやな。本邦初公開や。誰かウチに魔法使ってみて~」
「私がやるわ」
「いやエリちゃんは怖いから止めて」
「仕方ないわね……」
エリーゼは火力オバケなので一ターン休み。代わりに俺が【雷網】を使ってみた。
あえて弾速を遅くした【雷網】に、ヘカテーニャはそっと右手を向けて……。
「【
パチン! 音高く指パッチンが響き渡ると同時、【雷網】は空中で静止した。
「と、止まった……!」
「え? 今の、リアルイーザ様のやつじゃないッスか?」
「ふふ~ん、せやで。厳密に言うと【
「ホいつの間に……」
「なんや本読んどったら急にリアルイーザ様が稽古つけたる言わはって」
「な、な、何ですかそれ、ボクは今冷静さを欠こうとしています……!」
「そーゆー人だったんスよ、リアルイーザ様って」
特徴的な指パッチンに加え、独特な魔力波。発動した後の魔法を止めたその光景は、ネザーレでの戦いで見せたリアルイーザ様の【魔血掌握】に酷似していた。
あの時と違うのは、純血魔術ではなく現代ラリス式の攻撃魔法を止めたところだ。
「んで、握った魔法はこうやって動かす事もできるんや。めっちゃ疲れるけどな」
ラジコンのように操作された【雷網】君は、さんざん弄ばれた後にボロ雑巾のように捨てられてしまった。俺の【雷網】はヘカテに寝取られてしまったのだ。
「ふむ。エリーゼ共々、対魔術師戦だと超強いな」
「けどコレ魔法一個につき一手使ってまうから、大魔法には強いけど連射には弱いんよな。実はそこまで実戦的やなかったり?」
「私の場合、いっぱい当てて貰わないと大した威力がでないのよね」
「切り札なんてそんなもんじゃよ。わしもいくつか持っとるけど、実戦で使ったの【天意流転領域】くらいじゃもん」
「ん、【天意流転領域】が強すぎる」
エリーゼの魔法当て身共々、いずれにせよ対魔導士戦には有用だと思われる。
ていうか元々ラドゥ騎士団の魔導士であるベアトリスさんを一方的に完封できるのだ、彼女は。そこにきて単発大魔法メタを使えるのは普通にヤバいと思われる。宵霧を使えば聖属性無効化できるし、魔術師タイプの天使は泣いていい。
「よし、じゃあ次は応用編だな。色々やってくぞ」
そんなこんな、以降も色んな検証を行った。
現在の肉体能力を測ったり、レノの太陽水晶で日光の耐久実験を行ったり、軽く再生能力を試してみたり。
結果としては、どの項目もポジティブだった。ネガティブだったのは魔力消費だけだ。
「いいねぇ……!」
逆に言うと、魔力消費の問題さえ解決すればヘカテは第一線で活躍できる。第一線に出られるなら、ハクスラできる。ハクスラができるなら、もっと強くなれる訳で。
「まっ、真祖になった後もウチはエメスアルマ使うつもりやけどな。実際、アレ乗った方が足速いし」
「空中は生身、地上はエメスアルマで立ち回るのがベターっぽいな。その為にもヘカテにこそ収納魔法を覚えてほしいもんだが」
「んぇ? 収納魔法って後付けで覚えれんの? あれ異能やろ? どゆこと?」
「おっとその先は危険ッスよ」
実際、いざヘカテが戦うとなったらエメスアルマに乗るべきだと思う。
それは単に彼女の好みってのもあるが、いくら肉体スペックが上がっても彼女の運動神経はシャロ以下なのである。ヘカテの場合、ロボに乗る事でクソザコ立ち回り能力を補えるのだ。
しかし、けれどもだ。だからと言って、エメスアルマに乗らないと戦えませんとはしてはいけない。エメスアルマがない状況で敵が襲ってきたらどうするって話だ。雨の日に無能になるような炎使いになってはならぬ。
「ヘカテ、ちょっといい?」
「ん? なになに~? デートのお誘い?」
「似たようなもん」
と、言う訳で……。
「やってきました“魔陣迷宮”! 夜ご飯の前に迷宮探索だ。運動した後の飯は美味しいぞ~」
「なんでやぁああああああああ!」
さっそく迷宮にやってきた。
魔陣迷宮。此処は魔法系エネミーしか出現しない特殊な中位迷宮だ。
ギミック無し。迷路無し。ただただ魔物の数が多いだけなので、ぶっちゃけ全然難しくない。位階は中位迷宮って事になってるけど、実質下位迷宮だと思うよ俺は。
敵倒せばすぐ終わるし、晩飯前の運動にはちょうどいいのだ。
「せ、せめてエメスアルマ使わせてぇな! あんな大群相手すんの初めてやねんて!」
「ダメ。真祖特性使って上手くやって。これもトレーニングだからさ」
「あーもうやったろやないけぇえええ!」
やけになったヘカテーニャは、魔法触媒の日傘を地面に突き立てて様々な体系の魔術を多重発動し始めた。
彼女の足元から血だまりが広がっていき、大量の眷属がドバドバと出撃していく。カラスミサイルが魔物に突っ込み、狼群が魔物の群れに突撃していく。ドゴッと、群と軍が激突した。
純血魔術の巨腕が迫ってきたカボチャヘッドモンスを殴り飛ばし、多重展開された魔法陣から七種七色の魔法弾幕が解き放たれる。敵からの聖属性魔法は宵霧シールドで無効化し、砲撃めいた大魔法を指パッチンで投げ返す。
まさに、ワンマンアーミーだった。
「いいねぇ……! いいねぇ~……!」
その光景を、俺は【魔法の盾】の椅子に座って眺めていた。
エメスアルマ・ヘカテーニャが中衛物魔アタッカーだとしたら、真祖ヘカテーニャは物量系召喚魔導士といったところ。ゲームだったら別キャラか換装キャラになってそうな性能である。
なんか面白そうだな。俺もああいう戦いやってみたいゾ~。
「ちょちょちょ、流石に限界! ダーリンも手伝ってや!」
「しょうがないにゃあ」
いい感じに拮抗しているが、流石にキツくなってきたっぽいので俺も参戦。まぁ近づいてきた魔物を迎撃する程度で、殆ど彼女にお任せしたが。
戦闘が終われば吸血で補給。気持ち多めに吸われたが、まぁ仕方なし。
「補給も済んだところで、ボスも一人で倒してみようか。大丈夫だって、俺が見るに余裕だから。恐らくメイビー」
「え、英雄の姿なんか? これが……」
そんなこんな。
家内安全の為、俺は新たに家族となった真祖を鍛えるのであった。
ヘカテーニャ先生の活躍にご期待下さい。
感想投げてくれると喜びます。
現在、本作に登場するキャラクターを募集しています。
ご興味のある方は是非、気軽にご応募ください。
作者のやる気に繋がります。
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こっちも投げてくれると喜びます。
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味方キャラの能力検証だけで一万字使う作品があるらしいっすよ(n回目)
◆真祖ヘカテのアップデート内容◆
・魔族特性を獲得しました。
・不死に近い再生能力を獲得しました。
・肉体能力を全体的に上方修正しました。
・純血魔術を全体的に上方修正しました。
・新技【宵霧】を追加しました。
・新技【眷属創造】を追加しました。
・新技【変身】を追加しました。
・いくつかの新しい魔法を習得しました。
・魔力消費を恒常的に高くする仕様を組み込みました。
・その他、真祖化に伴い様々な調整を行いました。