【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告にも感謝です。助かってます。
アンケートのご協力、ありがとうございました。
結果、エリーゼの使い魔は魔導書になりました。どう描写しましょうか。
キャラのご応募もありがとうございます。作者のやる気に繋がっています。これ、マジで良い刺激になるのでとても有難いですね。
登場の際は何食わぬ顔してヌルッと出て、且つ殆ど別キャラみたいになってます。ご了承ください。
あと、レギュレーションにある通り応募者様は匿名ですので。出てきたキャラが作者作なのか応募キャラなのかは作者しか知りません。
魔法装填。
この世界に存在する不思議要素の一つで、武装やアイテムに“魔法”を籠める事のできる機能だ。発動には本来のより魔力を消費するものの、魔術師以外でも魔法が使えるようになる素敵オプションである。
魔法の威力や効果は固定で、その値は装填した魔工師の腕前による。また、術者が違えば一つの魔法で色んな事ができるように、装填した魔法でも魔工師次第で色んな事ができるとか。
威力を犠牲に連射性能をアップさせたりとか。弾速を犠牲に追尾性能をアップさせたりとか。魔力消費を犠牲に威力をアップさせたりとか……。
魔法装填とは、そんな夢いっぱいの補助効果である。
ところで、ゲームっぽいこの世界には、ゲームっぽくないところがある。
何かというと、フレンドリーファイアが存在するところだ。
まあ、そりゃあそうだろうとは思うが……。
それでもこんな不思議異世界、味方が撃った魔法が味方すり抜けるくらいいいじゃないとも思わんでもない。
以前、その事をリリィに話すと「何言ってんスかこの人……?」と戦慄されたものである。
ともかく、この世界にはフレンドリーファイアがあり、矢も魔法も投擲物も味方に当てないよう……誤射しないよう気を付けないといけないのだ。
ゴッドイーターの誤射姫は、この世界だと殺人姫になっちゃう訳だな。魔法のご利用は計画的にである。
故、エリーゼの武器に装填する魔法には、色々と悩む事となった。
もしFFがなければ、エリーゼには大規模魔法ドッカンドッカンの連射めぐみんみたいになってもらうところだったが、それは危ない。俺とリリィが死ぬ。
ああでもないこうでもないと、ドワルフ氏と一緒に楽しく悩んだものである。
悩んだ結果、ひとまずエリーゼの第一武装には――ひとつを除き――汎用性の高い魔法を装填する事にした。
特化武器がマンセーされる異世界、そんな強くはならんやろ……。
そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
曇天の空、広漠たる荒野に一人、白銀の髪をした少女が歩いていた。
歩く姿はあくまで優雅、まるで舞台の壇上を往くが如し。紺碧の相貌、竜族を象徴する左右一対の角。美しい銀の長髪は彼女の魔力循環に呼応して風もなくなびいていた。
右手には銀の王笏。左手には分厚い魔導書。頭には宝冠の如き銀の髪飾り。竜の王の様な、月夜に舞う姫の様な、あるいは闇を纏う騎士の様な可憐さと威厳を兼ね備えた戦装束。
「
ぶわり、と。立ち止まった彼女の体内から、莫大な魔力が放出された。次いで、戦装束に装填された魔法が起動する。少女の痩身に、月明かりの如き燐光が灯った。
その名を、“血沸肉躍”。体内魔力のほぼ全てを消費し、肉体能力を引き上げる強化系最上位魔法である。
「ふぅ……」
閉眼、小さな溜息。次の吸気にて、失われた魔力は補填された。滝の下に置いた水瓶の様に。
目を開く、遠くそびえる敵を見据える。全高10メートルにも及ぶヒトガタ巨像。対する少女の、如何に矮小な事か。
巨人が少女を見る。敵対者が相対する。巨影が動く。白銀の竜姫は手にある王笏に魔力を籠めた。
「……
構えられた魔法は“破城槌”、零れた言葉は“呪詛”。所持者の魔力に共鳴し、銀の王笏が術式を組み上げる。
そして、放たれた魔法は呪詛の籠った破城の槌となった。
狙うは、足。
轟! という破砕音。それは少女より放たれた、指向性を持つ黒い魔力の圧により引き起こされた。
敵意ある者を潰すべく足を動かした巨人だったが、その一歩目は矮躯の少女により妨げられてしまった。
一撃で、巨像の片足が破壊されたのだ。
ずしんと、片方の足関節を損傷した巨人が片膝をつく。しかし巨人は迷宮が生み出す理外の怪物、この程度すぐに再生する。
その単眼は、ただ少女を排除すべく排除対象を捕捉し続けていた。愚直に、当然として無感情に。
「
そこに、少女の魔法が殺到する。大曲剣ほどある刃に、青白く光る騎士槍、三重螺旋の線を引いて迫る魔力の礫。
それらを、玉遊びでもするように順繰りに放っていく。その全てにごくわずかな呪詛を籠めて、巨人の残る片足にぶつけ続ける。
絶え間ない魔法の弾雨。蓄積していく呪い。破損した足の再生が追い付かない。
「
再度、破城槌。今度こそ、巨人の両足が破壊され、見上げるほど大きな影が崩れ落ちるように倒れた。
だが、まだだ。まだ塵に還っていない。巨像の戦闘ルーティンは、このようになってなお十全に動いていた。修復しつつ、這いずって敵を殺せと。
「
似たような事を、竜族の姫も考えていた。まだ死んでいない。故に殺す、故にトドメを刺す。
少女の背の魔法陣、放たれたのは三本の大鎖。獲物を狙う猛禽めいた軌道で飛んだそれらは、なおも藻掻く巨像の身体に巻き付き、拘束した。ぎりぎりと、魔力で生成された鎖が悲鳴を上げる。流石に長くは保たない。
だが、それでいい。充分である。何故ならば……。
トン、と。王笏の石突が大地を叩く。
瞬間、少女を中心として巨大で複雑な魔法陣が展開された。大中小と三つ、いや九つ。なおも複雑な文様を描き続ける陣は瞬きの度に数を増し、かと思えば役目を終えた陣は呆気なく消失する。魔法陣に覆われた少女は、顔色一つ変えず静かに魔力を汲み上げていた。
やがて魔法陣は一つに収束し、少女の眼前に展開された。ここに、殲滅の準備が整った。
「
何食わぬ顔で、放つ。
一条、眩い程の光。それは、まさに魔力の奔流。特殊な効果もない。変わった発動条件もない。難易度もさほど高くない。使い勝手の悪い、ただ威力が高いだけの魔力系最上位魔法。
名を、“魔導極砲”。建国の英傑、魔道賢者ゼノンの十八番である。
光が収まると、そこには超ド級の大蛇が通った後の様に抉れた大地と、赤く溶けた土と焦げた匂い。それから、今まさに粒子に還っていく巨像の残骸……。
「……大した事ないわね」
あと、若干イキりはじめたエリーゼが残った。
「うわぁ……」
その一部始終を、俺とルクスリリアとラザニアは遠くで見ていた。
まさかここまでヤバい事になるとは思っていなかった。
いや、良い事……なんだけどさ。
「もうエリーゼひとりでいいんじゃないッスか?」
「……少なくとも、ゴーレムだと的にしかならないな」
MP無限はヤバい。俺は改めてそう思った。
〇
ガユウ氏の店で魔導書を買ってから、大体一ヵ月後……。
セオドロスさんの防具屋で、俺たちはオーダー装備の開封の儀を行っていた。
ついでにドワルフに注文したブツも同時に開封する事にした。何故かついてきたドワルフ氏も開封の儀に参加していた。
フルの場合、前世のオーダースーツは大体二か月以上かかるところ、異世界オーダー装備は一ヵ月で完成なあたり魔法の凄さが分かるというものだ。
「どうかしら、アナタ……?」
注文した装備を纏ったエリーゼは、まさに戦うお姫様といった雰囲気であった。
いや、闇堕ちした姫騎士といった感じのが近いかもしれない。
◆残月の聖鎧◆
・物理防御力:500
・魔法防御力:500
・補助効果1:全状態異常耐性(小)
・補助効果2:自動最適化
・補助効果3:自動修復
・補助効果4:魔法装填(血沸肉躍)
・補助効果5:魔法装填(魔力飛行)
全体的に、色は黒っぽく――竜族のお嬢さんの趣味である――、メインが黒でサブが群青。差し色に白といったカラーリング。
防具の種類としては軽鎧にあたるようだ。
デザインは一から十までエリーゼの要望が満載であり、彼女の趣味が垣間見える。なんとなく。邪ンヌっぽい印象を受けた。
◆月明かりの銀杖◆
・補助効果1:自動修復
・補助効果2:魔法装填(追尾する魔力の分かれ礫)
・補助効果3:魔法装填(破城槌)
・補助効果4:魔法装填(魔力の騎士槍)
・補助効果5:魔法装填(両断する魔力の刃)
・補助効果6:魔法装填(斬滅の魔導剣)
・補助効果7:魔法装填(聖光の極大治癒)
・補助効果8:魔法装填(束縛する魔力の鎖)
・補助効果9:魔法装填(魔導極砲)
結局、エリーゼの武器には各部を
王笏とはいえ本物ほど煌びやかではないが、使われた素材が輝銀魔石と聖鋼なので質感の良さが特に装飾もない武器に王笏めいた威厳を与えている。
当然、中身は魔法装填特化だ。汎用性重視の構成は、魔法耐性のないほとんどの敵に有効である。攻撃面だけでなく、最強クラスの回復と妨害系魔法も付けておいた。
◆欠け月の宝冠◆
・補助効果1:自動修復
・補助効果2:魔法装填(聖光の極大快癒)
・補助効果3:魔法装填(魔力の大盾)
・補助効果4:魔法装填(魔力大砦)
・補助効果5:魔法装填(拒絶する魔力の嵐)
アクセサリーは、輝銀魔石製の冠にした。
これには攻撃系でなく、防御や状態異常回復の魔法と、近寄られた際の拒否技も入れておいた。身を守るためのアイテムだな。
フル装備のエリーゼは、どことなくfateのジャンヌと邪ンヌがフュージョンしてロリ化したみたいな見た目になった。サンタではないが。
中身は頭からケツまで魔法魔法魔法の魔法特化武装。攻撃にはやや弱いが、そこは武装にある防御魔法で何とかするしかない。そも、近づかせなければいいのである。
「すっごい似合ってるよ!」
「なんかウチの将軍様みたいッス!」
「はぁ~ん、アンタんとこも良い仕事してるじゃあないですかい」
「感謝の極み」
とても中二っぽいが、とても似合っている。着られてる感が一切ないのは、エリーゼの素材が良すぎるからだろう。
カッコいいし可愛い。ソシャゲなら間違いなく最高レアのビジュアルである。
「ふふっ……アナタも似合ってるわよ」
珍しく、年頃の少女みたいに微笑むエリーゼ。
お返しといった感じで俺の装備も褒めてくれた。
◆石黒の鎧◆
・物理防御力:800
・魔法防御力:750
・補助効果1:全状態異常耐性(中)
・補助効果2:自動修復
・補助効果3:自動最適化
・補助効果4:簡易伸縮
・補助効果5:環境適応
・補助効果6:体温保護(中)
デザインはどうでもよかったので、堅くて動きやすい服を注文したらこんな感じになった。
迷宮産素材と希少鉱石を使ったインナーと鎖帷子に、胴体を守ってくれる革の胴鎧。上に鱗で補強した革ジャンみたいな革外套を纏い、同じく希少鉱石で補強した革手袋。下は
見た目は革革革&鉄で出来た往年のバイカーファッションといった感じである。色は全部黒で、艶あり艶なし濃淡の違いでなかなかおしゃれ感のある全身黒である。いざ着てみると、補助効果のお陰で見た目よりずっと動きやすい。ジャージより快適まである。
「ていうか、アタシ等みんな黒いッスね!」
「FF15かな?」
「いいじゃない、お揃いの色って感じで……。私はこういうの好きよ」
あと、俺とルクスリリアの装飾品は殆ど補助効果が同じ別アイテムにした。ルクスリリアが淫魔用の角飾りで、俺がベルトである。
補助効果の内訳としては、まぁ状態異常とかの対策とか無難なのである。特に変わったものではない。
モンハンでもそうだったが、俺はテクいスキル構成より堅実な生存スキルのが好みなのだ。実際、異世界だとそっちのが重要だと思うし。
「とりあえず、装備も揃ったし、明日はエリーゼのダンジョンデビューだな」
「きひひっ、迷宮は怖いッスよ~? ビビッて漏らすんじゃねぇッスよ~」
「むしろ楽しみね。この私でも、迷宮を踏破すれば強くなれるのかもしれないし……」
そんなこんな、俺たちは勇んでいつもの巨像迷宮に挑んだ訳だが……。
ドゴォォォッォォオン!
「ゴーレムが死んだッス!」
「この人でなし!」
「大した事ないわね……」
ボゴォォォッォォオン!
「ウワッ、巨像が死んだッス!」
「そうだ、もう一回倒してみよう」
「ふぅ……運動すると気分が良いわ」
ドッガァァァアアン!
「あーもうめちゃくちゃッスよ……」
「これもうどっちが怪物か分かんねぇな」
「強くなるって、こういう事なのかしら……」
エリーゼは強かった。
ひたすらに強かった。
というか、ゴーレムとの相性が良すぎた。
開幕“破城槌”で片足部位破壊からの、呪詛入り魔法ぶっぱで機動力を奪って“魔極砲”でトドメ。初陣から続くこのルーティンは、鈍足の人型ゴーレムにはばちこり刺さった。
おまけに、エリーゼは機動力高めの動物系ゴーレムにも相性が良かった。捕捉して魔法連打、ついでに魔導書くんも援護射撃。突進攻撃は正面から“魔力の大盾”で受け切り、ゼロ距離“破城槌”でフィニッシュ。
何がヤバいって、ゴーレムレベルの攻撃でもエリーゼの防御魔法を崩せないところである。加えて言うとエリーゼは飛べるので、その気になれば逃げる事もできちゃうのだ。
「お、“竜族戦士”から“竜戦士長”にジョブチェンジできるな。これが竜族版の“指揮官”なのかな? 言ってた通り変えるけど、いい?」
「ええ……。あら、前より杖が馴染む感じがするわ」
「ふむ……戦士長も指揮官と同じで、杖が使用武器に含まれてる訳ね。うん、書いてある通りだな」
「えっ、じゃあエリーゼまた強くなったんスか?」
「そういう事になるわね……」
ゴーレム戦は報酬は渋いが経験値は美味い。ソロで何体もゴーレムを討伐したエリーゼは、すぐに竜族版指揮官である“竜戦士長”にジョブチェンジできた。
こうもレベリングがスムーズだと、通常の指揮官のスキルも使えるようにそっちも鍛えるのアリだなと思える。まぁでも、とりあえずはステ上昇重視で竜族版を先に進めよう。
「ゴーレムって、思ったより脆いのね……」
そう言うエリーゼは、ゴーレムを倒す度にイキり度が上がっていった。
まぁでも、ゴーレム以外のザコ戦はそうでもないのかな……。
と思っていたが、そんな事はなかった。
ザコの数が多い“鱗群迷宮”……。
「行くわよ。
空中からの呪詛入り“魔導極砲”ぶっぱで虐殺。
俺とルクスリリアは地上でちまちまザコの相手をしていた。向こうがACfAだとしたら、こっちはACVである。
次、暗所不意打ち上等“闇牙迷宮”……。
「常に“魔法大砦”を使っていれば怖くないわね……」
常時全身バリアという、とんでもないゴリ押しで解決。此処でのエリーゼは前でタンクを担当し、火力は魔導書くんが頑張ってくれました。
俺とルクスリリアはエリーゼの後ろからちまちま攻撃していた。
次、魔法なんて効かねぇよ!“聖甲迷宮”。
「対象指定、魔力過剰充填……“竜令鼓舞”」
「「うぉおおおおおッ!」」
祝福付きの指揮系ジョブスキルでガンギマリになった俺とルクスリリアが無双。
どうやら、魔法は使えないエリーゼも、魔力を消費する類のジョブスキルは使用可能らしい。
鎧を纏えず、翼もなく、権能もない。
脆く、弱く、竜にあらずと蔑まれていたエリーゼは、今は……。
「ふぅ、存外呆気なかったわね……」
「はぁ……! はぁ……! つ、疲れたッス……! 強くはなったッスけど、まだ身体が追い付いてない感じッス……!」
「よく頑張ったわね、ルクスリリア。ほら、
「ああ~! しゅ、祝福しゅごしゅぎッスうぅぅ……!」
「パーティ・リーダーの姿か? これが……?」
「敗北を知りたいわ……」
イキりが極まっていた。
エリーゼ? 強いよね。魔法、支援、回復、隙がないと思うよ。
いや、マジでそう。
「ぐぬぬ……! おいエリーゼぇ! ちょっとツラ貸せやッスゥ!」
しかし、だけどアタシは負けないよと立ち上がる淫魔がいた。
「何かしら?」
「決闘ッス! 鍛錬場でタイマン張るッスよ!」
これまでエリーゼの強化や成長には一緒に喜んでいたリリィだったが、イキり始めたエリーゼには何か思うところがあったのかもしれない。
まあ、普段からそんな調子に乗ってる訳ではないんだけどね。ベッドでは相変わらずカワイイし、それに夜はルクスリリアのが強いし。
「決闘? 私は、いいけれど……」
「いいんじゃない? 今のエリーゼの動きも確かめておきたいし」
そんな訳で、ダンジョン帰りに鍛錬場へゴー。
バトルフィールドは例のコロッセオ空間。何もない場で、二人の決闘者が向かい合う。
「
さて、どうなるかなと思いつつ、俺はいつでも回復魔法を使えるよう準備しておいた。
まあ、詳細は省くとして……。
「はぁ! はぁ! あ、アタシの勝ちッス……!」
「ええ、私の負けね……」
意外というか何というか、決闘はルクスリリアが勝利した。
二人のバトルは、とても見ごたえがあった。
弾幕を張るエリーゼと、魔法を掻い潜って接近を試みるルクスリリア。その光景はまさにハイスピードバトルファンタジー。ACで例えると高火力の重二とブレード主体の軽二の戦いであった。
中盤、ルクスリリアはけん制しつつ隙を見てラザニアを召喚し、挟み撃ちで攻め立てていった。すると途端にエリーゼの動きが鈍くなり、ラザニアを警戒すればいいのかリリィを警戒すればいいのか分からなくなっている様だった。全方位バリアを使えば負けなかったろうが、勝てなかっただろう。
そして、最終的に一瞬の隙を突かれて武装解除させられ、イキリエリーゼ物語は終焉を迎えるのであった。
「お疲れ二人とも、はいジュース」
「あざーッス! ん~! 勝利の美酒は美味ぇッスね~!」
「そう……。私は武装が強いだけで、私が強い訳ではないのね……」
台詞だけ聞くとすごく落ち込んでそうだが、どういう訳かそう言うエリーゼの表情は常よりも晴れやかだった。
「まぁルクスリリアには従軍経験とかもあるし、レベルも上だからね。なにより空中戦がホントに上手いから」
「ええ、そうね……。良い経験をしたわ」
薄く笑んで返したエリーゼは、とても楽しそうな顔になっていた。
どうやら、勝ったり負けたりという経験自体が楽しいらしい。
そうして、俺たち三人パーティのダンジョンアタックの日々は過ぎていった。
前衛の俺と、遊撃のルクスリリアと、馬鹿火力&支援&回復のエリーゼ……ていうかエリーゼの負担やべぇな。
ともかく、良いパーティだと思う。とても楽しいハクスラ生活を送ってるね。
ダンジョン潜って、叡智をして、デートして、買い物して、またダンジョン潜って……。
毎日が充実している。
願わくば、これからもずっとこういう生活が続けばいいと思った。
ロリコンと奴隷少女の楽しい異世界ハクスラ生活。
俺たちの戦いは、これからだ……!
「じゃあ、今晩ご主人の上はアタシが貰うッスね~♡」
「なっ!? そんなの賭けていないでしょうッ……? もう一回よ、構えなさいルクスリリア……!」
まあ、二人は切磋琢磨してくれてるし、レベル上げも順調だし、タカキも頑張ってるし。
この先、そうそう変な事は起きないだろ。
異世界の日常、多いにアリだ。
平和が一番! 勝ったな、ガハハ!
〇
「イシグロねぇ? で、そいつは強ぇのか? 噂通りってんなら、ぜひとも
深い森の奥、猛き女戦士が犬歯を剥きだしにして笑う。
「“迷宮狂い”さんかぁ、どんな人なんだろ……。一党に淫魔連れてるんだよね……。奴隷、奴隷かぁ……私もなりたいなぁ……」
王立第一図書館、目深にフードを被った変わり者の淫魔が想いを馳せる。
「使える冒険者っつってもよォ。ったく、人使いの荒い……。つっても、奴さん方だって情報集めてんだろ? この仕事、無意味なんじゃあねぇの?」
「師、先日の武器代、流石にそろそろ返済しませんと」
「わーってるけどよぉ……。なんかやる気出ねぇんだよなぁ……」
王都地下、雇われの魔人が怠そうに依頼書を眺める。
「ふむ、こんなところか……。ところで、イシグロという男の動向については……。いや、焦らなくていい。下手に刺激はしたくない。奴の身辺については、慎重に探っておけ。まだ幼い人間なのだろう? 何をしでかすか分からんからな」
豪奢な屋敷、美の化身の如き
「はい。噂の“迷宮狂い”氏については、こちらに」
「うん、ありがとうキルスティン。よくまとまっているね」
「ありがとう存じます、けれど、調べても彼のお人柄はいまいち見えてこないのですよ」
「それは仕方ないさ、クリシュトーさんも頑なだったしね……。いずれにせよ、誰の誇りも傷つけるべきではないよね。アホやらかしそうな兄上や姉上の動向には、気を付けておかなくては……」
王城の中庭、幼き王子が国の未来の為に思索に耽る。
転移者、石黒力隆は知らない。
この世界にとって、自身が如何なる存在なのかを。
冒険者、イシグロ・リキタカは気づかない。
この世界が、如何に英雄を欲しているかを。
王家。金細工。傭兵。淫魔。種族長、他多数……。
彼らから、如何に“迷宮狂い”が注目されているか。
英雄の卵、その価値の程を。
「ん……ちゅ♡ ご主人様、大好きッス♡」
「ほら、私にも……ちゅっ♡ 愛してるわ、アナタ……♡」
ロリ奴隷相手に鼻の下を伸ばしている男は、自分が勇者アレクシオスを超える器を持つ事を、まだ知らない。
「あ~、幸せだな~」
多分、一生気づかない。
例え気づいても、「あ、そう?」で終わる。
何故ならば……。
この男、ロリコンにつき。
感想投げてくれると喜びます。
現在、本作に登場するキャラクターを募集中です。
ご興味のある方は是非、お気軽にご応募ください。
詳しくは活動報告にて。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=296177&uid=59551
一緒に世界観を広げていきましょう。
別にシリアス路線に行くとか、そういうのじゃないです。