【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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ロリース・ユア・セルフ

 文字通り、世界を救う戦いのカウントダウンが始まった。

 いつゼロになるかは不明だが。

 

 第三王子との密会の後、俺達はクニュフから殿下にお伝えした情報の一部を共有してもらった。

 殿下にお渡しした書類の中には、現時点の解放軍幹部と協力者の名簿があったそうだ。そのアジトから何から、彼女が知っている範囲の情報なんかを根掘り葉掘り。

 で、実際に調査をしてみてマジで黒となれば、然るべき準備を整えた上で然るべき機会に一網打尽にする予定であるとのお達しだ。

 さながら魔王軍残党撲滅キャンペーン。その一環として、猫又一味もとい邪眼のファンリーの秘密基地襲撃作戦が予定されている。

 俺達、草薙の剣はそこに投入されるのだ。作戦の鍵はクニュフであり、俺はそのパパなのだから。

 影空間の仕様もあり、件の秘密基地には解放軍に関する多くのデータや物証が保管されているそうだ。そこを叩けば来たる新魔王に大ダメージを与えられる見込みである。

 

 猫又一味との戦いまでに、草薙の剣は可能な限り鍛えておかねばならない。

 邪眼のファンリーと猫又長女はそこまで強くないらしいが、今後戦うかもしれない新魔王や屍王は極めて強力であるという。

 あらゆる状況に対応できるよう、如何なる強敵も打倒できるよう。これまで以上にガチで鍛える必要があるのだ。

 と、いう訳で……。

 

「ハクスラの時間だ!」

「来たわね……」

「エリーゼの目が輝いています」

 

 ハクスラである。

 レベリングは全てにおいて優先されるし、暴力は全てを解決するのだ。こいついつも同じ事言ってるな。

 

「やだぁあああ! あたしも迷宮連れてってー! 連れてって連れてって連れてってー!」

「ですがクニュフさん、あなたマトモな防具ないでしょ。老師は剣を選ばずとは言いますが、合理的に考えて良い戦士は良い武器を使うべきなんですよ。裸が許されるのは拳聖イライジャくらいです」

「当たらなければどうという事はないってパパが妙に渋い声で言ってたもん!」

「教育に悪い教えじゃ……」

「クニュフは赤くもないし角もないだろ。迷宮探索は防具が完成した後な」

「ん、クニュフはわたしがお世話する」

「むぅ、はぁ~い。じゃあ防具出来たら絶対連れてってね!」

 

 家族計画と同様に、ハック&スラッシュも計画的に行うべし。

 迷宮の定員は最大六名だ。イシグロ家はクニュフを含めて合計十名なので、フルメンバーでハクスラすると都合四名も余ってしまう。

 その中で、シャロ&ヘカテは知識の習得に忙しいのでパス。クニュフが防具待ちなのは、彼女が着ている未来防具の性能がカスだからだ。

 そんで残る一枠は休養枠だ。当座はこれで回す所存。ちなみに俺は休憩無しだ。

 

「うごごごごご……! 陰陽術使えんのほんにほんに息苦しいのじゃ! 羽捥がれた鳥の気持ちが分かるのじゃ!」

「頑張れ頑張れ♡」

「こっちも魔法しか使えないのキツ過ぎなんスけどぉおおお!」

「頑張れ頑張れ♡」

「新手の根性論か何かでしょうか……?」

 

 また、ハクスラ中のレベリングも工夫して行う。

 強くなるにはレベリングによるステータス上昇こそ重要だが、こと実戦は対応力こそ肝要なので。一旦ステ上げを捨ててスキルの習得に比重を傾けるという話。

 イリハには近接強化の為に侍系ジョブを鍛えてもらう。反復練習では習得できない有用補助スキルを覚えてもらう為だ。霊格極装になって近接戦ができるようになった訳で、だったら殴り合いも強化しないと損である。

 同じくルクスリリアも霊格極装になって魔法関連が強化されたので、魔法寄りの鎌ジョブを鍛えてもらう。淫魔は魔力上げれば生存力も上がるしな。

 

「一気に殲滅するわよ。続きなさい、グーラ!」

「はい! いつでもどうぞ!」

 

 そして、エリーゼとグーラには深域武装の覚醒を促進すべく自前のブツを積極的に使ってもらった。

 今さら頑張って間に合うか分からないが、やるかやらないかならやっといた方がいいだろう。幸い二人共乗り気だし。

 

「とはいえ効率落ちてるのは如何ともしがたいですね。次は別の迷宮にしましょう。具体的にはワタシに有利な迷宮に」

 

 ユゥリンには深域武装の強化に加え、槍系および武闘家系スキルを覚えさせるべく両ジョブを埋めてもらっている。

 このやり方だとステータスの伸びは悪いが、元々ガチの技量型である彼女は習得した新スキルをどんどんモノにしていて実質プラスだ。また、現在のユゥリンは未来の嵐極拳の奥義書を参考にしているらしく、その立ち回りは以前より洗練されているように見えた。

 

「もう下手に【受け流し】するより素で殴った方が早くなったなっと……しゃあっ、発勁斬り!」

 

 他方、俺は最上位ユニーク職たる“迷宮狂い”のレベル上げ。ステータス重視というより、スキル重視だ。

 というのも、この迷宮狂いには一党員を増やすという補助スキルがあるからだ。俺のチートは一党員にも共有される仕様なので、一党員を増やせばチート持ちが増えるという寸法である。

 それで真っ先にチートを共有すべく考えているのがユゥリンの実姉であるチィレンさんだ。曰く、彼女は俺の身内で一番最初に死んじゃったらしい。それもかなり凄惨な死に方で。

 チートを共有できれば最低限逃げたり立ち向かったり身を守る事ができる。護衛猫だけじゃまだ足りない。チートを付与し、後々パワーレベリングも施す予定だ。当人からは「迷宮は絶対に嫌!」と言われているが、四の五の言っていられない。ユゥリンの幸せの為、義姉殿には生きててもらわねばならんのだ。

 

「ほうほう、ほうほうほう! これが例の未来リヴクラフトか! いやぁ素晴らしいね! 題材は廃材アートってとこかな?」

「くふふ、酷い言われようやな。まぁ事実やからしょうがないんやけど……」

「実際マジのガチで廃材かき集めて作ったぽいなこりゃ。こんなカスみてぇな素材でよくもまぁこんなゴーレムが作れたもんだぜ」

「素材はアレだが使われてる魔術式は狂気か執念の域に至ってるぜ……」

 

 そんなこんなで時が過ぎ、とうとう未来リヴクラフトのリバース・エンジニアリングが開始された。

 場所は以前も借りた貸し倉庫だ。現場には未来知識を共有したドワルフに加え、天才発明家パイモさんと戦車工匠ケイン氏の姿もあった。後者二人については、魔王・屍王関連のアレコレを省いた上で一部未来知識を共有している。

 

「美学も遊びもエレガントさも全くない妥協塗れの設計やけど、バラしてみて改めてウチの作品ってのが分かるわ……」

「それでも搭乗者の保護だけには一切の妥協がないね。これはこれで一種の芸術だよ」

 

 で、さっそくバラされた四脚リヴクラフトは、心臓部から配線からあらゆるパーツを精査される事となった。

 案の定、素材はクソらしいが技術や設計は宝の山だったようで、ここにいる始まりのリヴクラフト・チームは皆さん大はしゃぎしていた。

 

「足回りもそうだが、特に装甲がスゲェよ。完全に門外漢のオレもスゲェの分かるもん。完成度高ぇなオイ……」

「具体的にどう凄いんです?」

「ん~、せやなぁ。単純に硬いっちゅーよりは、普通の鎧みたいに搭乗者の能力に応じて防御力が加算される仕様になっとるんや。ダーリンが言うとこの能力補正やな」

「その代わり受けたダメージは直で搭乗者にフィードバックされる仕様らしいねぇ。まさに人機一体だぁ」

「ん、魔導人機と同じ。あれも攻撃当たると痛かった」

「地面に落下した時めちゃ痛かったニャ~」

 

 クニュフが乗ってきた未来リヴクラフトには、かつて世界を半壊させた禁忌の兵器――魔導人機の技術が使われているそうだ。

 魔導人機を操縦するには搭乗者に特殊な適性が要るらしいが、落ちただけとはいえ一応動かせてたあたりソレはクニュフにも備わっていたようだ。

 

「そっちはどうよ?」

「ああ。アタイの方はある程度検証が終わったから、とりあえず見せられるモン出来上がったぜ」

 

 一方、シャロは新しいルーン彫刻の技術を身につけたようだった。

 というより、これまで表に出てなかった初代ルーン王の手記を読んで色々と学び直しをしたらしい。そんで、ヘカテ同様ようやく完了した、と。

 

「これだ。安心しな、偽造貨幣じゃあねぇぜ」

 

 そう言ってお出ししてきたのは、なんて事のない一枚のコインだった。

 よくよく見ると、その表面には細かなルーン文字が碑文のように彫刻されていた。

 

「で、ここに刻まれたルーン文字に有資格者が接続して魔力を籠めると……ほいっ」

 

 シャロの親指に魔力が籠り、それこそコイントスのようにルーン硬貨が弾かれた瞬間、それは凄まじい速度で保持者の正面方向に直進し、そこにあった的を貫通した。

 チートによると、速さはあるが威力はカスだ。俺の肉体なら、たとえ眼球に当たってもノーダメージだろう。

 けれど、その光景はまさに……。

 

「とある森人の超魔導砲(ルーンガン)……」

「ルーンガン? いやまぁ攻撃手段としちゃあ下も下なんだがよ。肝腎なのは全てのルーン文字をこのサイズまで縮小できて、尚且つ起動までできちまえるってトコなんだよな」

「ほう。詳しく」

「今までは大小に関わらず一つの枠に一つのルーン文字しか描けなかったんだが、今は一枠につき大小関係なく四つ六つ描けちまえるんだ。したらルーンで起こせる事象に細かい指定できるから前よりずっと安定するし強力にできるっつー仕組みだな」

「凄いじゃん。よく分かんないけど」

「まっ! やり方は分かってもやれる奴が少ねぇからルーン彫刻の欠点は相変わらずで要は腕がねぇといけねぇんだがよ! だが、今まで勘でやってた部分を理論立てて説明できるようになったから、勘の鈍い落ちこぼれも落ちこぼれじゃなくなるって話だ」

 

 ざっくりまとめると、ルーン文字のフォントサイズが統一された事で今まで使えなかった大フォントルーンも組み込めるようになった……みたいな感じか?

 よく分からんが、とにかく以後のルーンは安定化&精密化していくらしい。職人芸的な課題は解決されてないらしいが、下限を底上げできるのは良い事だ。

 

「クニュフはどんな感じ?」

「ボチボチでんなって感じかニャ~。覚醒前だから色々と鈍いけど、そこは反復練習でなんとかなるからさ」

 

 他方、留守番組のクニュフは倉庫の隅っこで未覚醒の深域武装の権能を練習していた。

 深域武装の覚醒には該当武器を使ったレベリングが肝要なのだが、最も重要なのは所持者と深域武装の魂を共鳴させる事……らしい。

 その点、クニュフは未来で一度覚醒させているので、同調のコツを掴んでいるとの事。

 

「てゆーか、クニュフの銃杖には銃腔開いてるんだな。魔攻補正落ちるだろ」

「うん、でも問題ないよ。あたし、射撃魔法以外あんまり使わないから」

「射撃魔法には銃腔あった方がいいの?」

「多分そう、部分的にそう。射撃魔法に適した銃杖の銃腔にはライフリング機構を参考にした簡易魔術式が施されるんだ~。これのお陰で射撃魔法が強化されるってワケ」

「へぇ……ん? つまり、クニュフは首飾りから銃杖出す度にその術式も再現してるって……コト!?」

「あたし天才だから」

 

 言って、クニュフは自分の身長より大きな対戦車ライフルを構え、専用の的に向かって無詠唱射撃魔法を撃ってみせた。

 彼女の言う通り、射撃魔法特化の銃杖から放たれた【魔力の礫】は、射撃魔法の短所である威力不足を解決しているように見受けられた。

 いやだってクニュフの【魔力の礫】ってば螺旋回転してたし、俺のより弾速あったし、私いじけちゃうし。

 

「ほら、早いし速いし強いでしょ?」

「さすがクニュフ、さすクニュ。う~ん、なら俺の銃杖も孔ぁ開けた方がいいのかな……」

「どうだろ。パパは射撃魔法以外にも色々使うから、別にいいんじゃない?」

「まぁそれもそうか」

 

 クニュフのソレは幾度もの戦いを経て磨き上げた究極の一である。対する俺の射撃魔法は数ある手札の中の一つに過ぎず、わざわざそれに特化した杖を使う理由は薄いか。

 実際、彼女の射撃魔法ひいては射撃技術は大したもので、勘と反射で撃ってるらしいレノと違ってクニュフの射撃は地に足ついた理論と血の滲むような鍛錬の形跡を見て取れた。

 天才と言いつつ努力家なのだろう、クニュフは。

 

「へっへっへっ、出来やしたぜぇ。新しい光力銃がよぉ!」

「ん、待ってました。これで勝つる」

 

 そんなこんなでまたまた時が過ぎ、待ちに待った新型光力銃が完成した。

 新型光力銃は未来知識の塊である。てっきりもっと時間が掛かるものと思っていたし、実際そのように伺っていたのだが……。

 

「早かったですね」

「寝てねぇからな! 安心しな! 遊びのノリで実験しまくったから信頼性はバッチリだぜ!」

 

 例によってそう言うドワルフの双眸は、例の如く不眠ポーションでパキパキにキマッていた。

 曰く、諸々の事情を隠した上で未来知識をお出しされた開発チームは誰一人として例外なくプレミアム・フィーバータイムに突入し、最高にハイになって実験と修正を繰り返しまくり、当初予定していた五分の一の期間で完成させちゃったそうだ。

 なお、開発チームの一人であるパイモさんは今もフィーバー継続中で、完全にイッちゃってる目で新型リヴクラフトを弄っていた。

 

「どうぞ、こちらが新型光力銃でさぁ。名前はまだ無ぇ。付けてやってくれ」

 

 そうして開かれた楽器ケースの中には、以前と同じように二挺の光力銃が入っていた。

 相変わらず銃身が長く、相変わらずカッコよかった。パーフェクトだ、アダムス。

 

「見た目はあんま変わってないですね」

「中身が凄いんでぇ。ほれ、持ってみな」

「ん、分かった」

 

 促され、レノは手持ちの光力銃とよく似た銃を一挺手に取った。

 握り込み、構え、やがて天使はハッと目を見開いた。

 

「……鏡のように磨き上げられた装填斜面。前の遊底より軽くて頑丈。フレームとの噛み合わせの精度が上がってる。わたし用に最適化された滑り止めグリップに……付け根を削りこんだガード。弾倉導入部も広げられてて、戦闘中の再装填でモタつかないようにしてある。それだけじゃない。ほぼ全てのパーツが入念に吟味されて、完璧に調律されている。完成度高いね、うん」

「へっ、さすがレノ嬢だ。あっしの台詞全部取られちまいやしたね。実際、ガワはこれでも中身は別モンなんでさぁ」

 

 ドワルフの徹夜テンションに引っ張られたか、レノもまたふんすふんすと鼻息を荒くして新型光力銃を矯めつ眇めつしていた。

 

「中身の話をすると、まず銃腔に光弾を強化する魔術式を施したんでぇ。これはクニュフ嬢が使ってる射撃強化の簡易術式に似たモンで、こっちは魔工師手ずから施したマジのガチでさぁ。光力の廃熱機構も改良したから、前より長持ちすると思いやすぜ」

「リロードの間隔が長くなったのは良いですね」

「中でも一等進化したのが弾倉でさ。名付けて“ネオライト合金”。こいつぁライト合金を素材の段階から光力に関係あるトコだけ純度を高めたモンで、そのネオライト合金を更に鉱深鍛冶で圧縮したのが……こちらでさ」

「ん、凄い輝き。通常の五割増しの光力蓄積量がある……」

「へっへっへっ、物資不足の未来じゃあ絶対試せねぇ超ハイエンドなクッソ贅沢合金だぜぇ」

 

 レノが受け取ったマガジンは、一見するとリアルハンドガンと同じように見える。が、本来銃弾が入っている部分には仄かに光る合金が詰まっていた。

 それを慣れた手つきで光力銃にセットしたレノは、重さを確かめるように右へ左へ構えてみせた。ふと見ると、レノのケーブル尻尾が楽しそうに揺れていた。

 

「撃っていい?」

「いいゾ」

 

 という訳で早速実射。

 ふぅと息を吐いたレノは、一つ一つの工程を確かめるように弾倉に光力を装填していき、圧縮し圧縮し圧縮し……。

 

「狙い撃つ」

 

 一条。銃口から解き放たれた光弾は、専用に作られた的のド真ん中に直撃した。

 素晴らしい腕前だ。ブランクがあるとは思えん。

 

「んっ……控えめに言って、凄い。光力籠めてから発射までのラグが殆どない。威力もそう。もはや別物」

「代わりに普通の魔法は死ぬほど弱くなりますがね。そのへんはご愛嬌って事で」

「や、天使権能は強化されるから問題ない。どのみちラリス式魔術は全然使わないし」

 

 言いながら、新型光力銃を二挺持ちしたレノは膨大な銃撃戦のデータ分析から生まれた型のような動きをしてみせた。

 光力銃の事はよく分からんが、レノが満足そうで何よりです。

 

「で、名前はどうしやす?」

「ん、マスターが付けて。わたしは重さを慣らすのに忙しい」

「俺か。そうだな……」

 

 現状、レノの光力銃は固定砲台含めて俺が好きな映画の俳優から取っている。例に倣うなら別にそれでもいいのだが、どうせならクソ未来に繋がらないよう縁起のいい名前にしときたいな。尚且つカッコいい名を。

 地球の英雄や神様の名前はやめとこう、悲劇多いし。なんかこう巨悪を打ち倒す勧善懲悪的な、スカッとするような、そんな名前は……。

 

「じゃあ、“リベリオン”と“メイトリクス”で」

 

 キビキビしたレノの動きを見て思い浮かんだワードである。

 世界を支配しようとする奴等をぶっ倒すんだ。ドンパチ賑やかな勧善懲悪劇といきましょう。

 

「ん、よろしくね。リベリオン&メイトリクス」

 

 そういう事になった。

 

 

 

 

 

 

 またまた時が流れ、来たる戦いに備えて……暫く。

 まず、俺は迷宮狂いのジョブレベルを上げる事に成功し、一党員追加スキルが強化された。

 ……ので、即チィレンさんを一党に加えた。

 

「いやぁあああ! 怖い怖い怖い怖い迷宮なんか行きたくない助けてユゥユゥウウウウ!」

「これもチィ姉の為です。猫ちゃんの運動も兼ねて潔くお腹括ってください」

 

 そんで早速チィレンさんを強制的に迷宮に潜らせ、無理やりレベリングを行った。

 が、当のチィレンさんはいつぞやのリュドミーラ同様に迷宮毒過敏症だったので、そこまでのヘビロテは出来なかった。

 しかしそこは妹ユゥリン。嫌がる姉を物理的に引きずってレベリングを強行、結果、元々ステータスだけはそれなりにあったチィレンさんは、あっと言う間に逸般人に仕上がった。

 

「あぁんネコチャンネコチャンネコチャンネコチャンうへへ猫ちゃんかぁいぃねぇうへへへへ……!」

「ひぃぃぃ! 何なの何なのマジ何なのチィレンさん! この人の狂気って猫好きの方向に振り切れるのぉ!?」

 

 なお、下町のアイドル・チィレンさんは案の定不可逆な狂気を発症し、自前の猫好きを拗らせてクニュフをモフり倒していた。コラテラルダメージだ。

 ついでにチィレンさんの魂と紐付けされた召喚猫も強化されたし、最終的にはプラスなんじゃないかな。

 

「わし、剣の天才じゃったかもしれん……」

「この魔法使い勝手良いッスね! しかも伸びる鎌だとキラキラして綺麗ッス!」

「え~なにその魔法。普通にウチが知らん魔法なんやけど、何のアーカイオン? それ」

 

 また、サブジョブを育成してた二人も成果があった。

 イリハは侍系補助スキルや刀系能動スキルを覚え、ルクスリリアは鎌限定で発動できる魔法なんかを習得した。後者は俺もヘカテも初見だった。

 

「おぉ~、すっご~い! たかが補助効果って思ってたけど、実際着てみると全然違うね!」

「いいじゃない。少し地味なような気はするけれど」

「完成度高いのじゃ、うむ」

 

 その他いろいろありつつの後、ついに待ちに待っていたクニュフの防具が完成した。

 注文通り、彼女の新装備は既存装備と同じデザインにしてある。前を開けたオーバーサイズの灰色パーカーに、これまたゴツめのブーツ。そんで胸にヘーファの首飾り。

 うん、凄いまとまってると思う。サイバーパンク世界でハッカーとかやってそう。

 

 

 

◆クニュフの戦闘服◆

 

・物理防御力:450

・魔法防御力:650

 

・補助効果1:全状態異常耐性(大)

・補助効果2:自動修復

・補助効果3:自動最適化

・補助効果4:簡易伸縮

・補助効果5:環境適応

・補助効果6:体温保護(小)

・補助効果7:魔力回復(大)

・補助効果8:聖属性耐性(小)

 

 

 

 先述の通り、以前の防具と見た目は同じだが、性能はマジでダンチである。

 どんくらい違うかというと、正義(ジャスティス)陰者(インジャ)くらい違う。大型の弩(アーバレスト)破壊の杖(レーバテイン)くらい違う。BLACKとRXくらい違う。

 

「動きやすい! 邪魔しない! そんで可愛いし最高! にゃは、コレ着ちゃったら前のには戻れませんニャ~!」

 

 また、その性能は俺の革鎧と同じコンセプトで作られていた。

 下手に強力な補助効果を付けるより、とにかく動きやすさを重視して、慣れた動きのまま立ち回りたい。そういうクニュフの意向で仕上がったのがこの防具だ。

 もしクニュフがロボットアニメのキャラだったら、エース専用機とか最新試作機とか乗りたがらなさそうだと思った。

 

「アクセサリ枠はそのままでいいのか」

「うん、この首飾りを霊格極装にしないとだからね。それは絶対かな」

 

 なお、現代防具でもクニュフの紙装甲をなんとかする事はできなかった。

 何故なら、属性耐性面で重要なアクセサリ枠がヘーファの首飾りに占有されてしまっているからだ。

 深域武装を覚醒させるには、相棒となる深域武装を装備しないといけないのである。

 

「防具も揃った。武器もある。なら、もう迷宮行ってもいいんだよね?」

「いいぞ。おかわりもあるぞ」

「やったー! パパ達とハック&スラッシュするの夢だったんだー!」

「ウチもいくで! 試作リヴクラフトのテストさせてーや!」

「アタイも連れてってくれよ。ヘカのセンセが魔改造した符操霊を実戦で試してみてぇからさ」

「ん、わたしのリベリオン&メイトリクスが火を噴く」

「そろそろご主人様も休むべきだと思うのですが……」

「大丈夫だ、問題ない」

「本当に問題ないのマジでおかしいと思うッス」

 

 ハクスラは続くよ、どこまでも。

 と、いう訳で……。

 

「人事は尽くした」

「あとは勇気でなんとかする! でしょ?」

 

 クニュフ参戦! である。




 クライド&サンダンスという案で迷いましたが、最終的にリベリオン&メイトリクスになりました。



 しゃあっ、更新!
 先週水曜、書籍版一巻が発売されました!
 よろしくお願いします!


【挿絵表示】


 というわけで店舗特典情報!
 ゲーマーズ様は、書き下ろしSSとルクスリリアとエリーゼのアクリルスタンドになります。
ゲーマーズ様はこちら

 とらのあな様は、書き下ろしSSとタペストリーになります。
とらのあな様はこちら

 メロンブックス様は、書き下ろしSSとタペストリーになります。
 また、メロンブックスノベル祭りには本作の特典もございます。ポイントを使って、本作のSS付きクリアファイルと交換できます。
メロンブックス様はこちら
メロンブックスノベル祭り公式ページはこちら

 物理版をお求めの際は、ぜひぜひ特典付きをどうぞ!

・電子版
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 その他、各電子書籍販売サイト様でも配信されます。


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