【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

317 / 323
感想・評価など、いつもありがとうございます。皆さまの反応が執筆の原動力でございます。
誤字報告もありがとうございます。恐縮です。
 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。


炉利憲章21条

 ラリス王国は広大な国土を誇る専制君主制国家であり、王家に認められた貴族達が武力で以てそれぞれに与えられた領地を治めている。

 王国領には土地ごと貴族ごとの特徴があり、少なからぬ差異が生まれるくらいには物理的な距離が存在する。要するに、領一つ取っても実は割と広いのだ。

 これまでは空戦車でひとっ飛びしたり、自転車で移動してた時もラリス街道を通って快適に移動していたので、未だ俺達はラリス王国の四分の一も知らないままだ。

 

「フライシュ巡り、出発!」

「「「おぉ~!」」」

 

 土地を知りたいなら下道を往くべし。そんな訳で、結婚式を終えた俺達は家族みんなでフライシュ領を満喫する事にした。

 以前も高台でピクニックしたり湖でボートを楽しんだりしたが、例によってまだ全ての町や村に行った訳ではない。コンプリートはしないにしても、代表的な町や村は見て回りたいところ。

 

「出発してからこっち何回も兵士に止められるのなんなんスかね?」

「そりゃバイクとチャリと戦車とロボの集団とか怪し過ぎるからな。職質も当然よ」

「草薙の剣って分かった瞬間に態度を変えるのは見ていて滑稽ね……」

「にゃはは、とか言いつつパパが英雄扱いされてるのが嬉しいんだよね~?」

「ん、こうも目立つ集団はラリスでも類を見ないはず」

「そろそろ偽草薙発生イベントとかあってもいい頃だな。いやあって欲しくないけど」

 

 で、何故にフライシュ領内の土地を見て回っているかというと、観光もあるがメインクエストは将来の為のお家探しである。

 幸せ家族計画の一環としての夢のマイホーム大作戦。クニュフと出会う前、皆と露天風呂に浸かりながら話していたのだ。結果、持ち家にしろ賃貸にしろ住むならフライシュ領がいいのではとなった訳で。

 何故なら、領を治める貴族とは戦友の仲だし、俺が立ち上げた慈善団体や新規の止まり木支部もあるし、飯美味いし自然豊かだし純粋に栄えてるしってな具合である。

 実際、クソ未来ではフライシュ領に住んでいた時期が長かったらしい。けれども、今回のお家探しでは未来知識はあえて知らないままする事にした。自分達が住むところは自分で行って自分で感じて自分の心で決めるべきだと判断したからだ。

 

「初めて来たけど、想像よりずっとええ街やな……」

「しみじみ。まぁ実際いい街だと思いますよ、ワタシも。賑やかなトコは賑やかで、静かなトコは静かで」

「久しぶりにゆ~っくりイチャイチャできそうッスね♡」

 

 で、だ。広いフライシュ領の中で最も好感触だったのが、リント市から見て北部にある“ミルヒク市”という街だった。俺達家族が求めていた全てが揃っていたのである。

 

「へえ、悪くない砦じゃない。設計した者は戦場を知っているようね。特に竜族の脅威を」

「ん、アレなら天使や吸血鬼も対処できる。よく考えられてる」

「そーゆー目線抜きに見栄えがええわ」

 

 まず、一目で気に入ったのがミルヒクの街並みだった。

 要塞都市ミルヒク。中世ナーロッパめいた異世界にあってなお歴史を感じる古い建物の数々に、木々に覆われた丘と要塞。南部を除く三方は浅く広い川に囲まれ、砦と川をサンドイッチして街を成している。

 なんというか、ザ・ナーロッパって感じ。異世界モノが好きな人なら確実に心を奪われるであろう風景をしているのだ。

 

「フライシュ領というのもあって、何処も美味しいお店ばかりですね!」

「米も王都より食べられとるみたいじゃ。リンジュ米にラリス米。森人米なんかもあるのぅ」

「飯もそうだが雰囲気だろ。アタイは王都より俄然こっち派だなぁ~」

 

 また、ミルヒクは交易が盛んだった。周囲の村々から色んな物が集まってくるそうで、流石はフライシュとばかりに特に食べ物はどれも美味しかった。

 盛んなのは交易だけではなく、二次産業もまた活発だった。主な輸出品は革製品や武器などで、大量生産の町というより腕のいい職人が集まる量より質の職人街といった様相である。酒場の兄ちゃん曰く、ミルヒクの物作りは質実剛健がウリらしい。

 

「ここなら安心して暮らせそうだな」

「うん、そうだと思うよ。パパ」

 

 交易&工芸の街。これだけでも素晴らしいのに、ミルヒクはなんとな~く雰囲気が良かったのが一等すばら。

 この“なんとな~く”ってのがミソである。なんとな~く魔都や王都ほど過剰にギラついてないし、温泉郷やケナズの里ほどのんのんし過ぎてない。ちょうどいい都会感と、ちょうどいい田舎感。自然に、ここに住みたいなと思える街だった。要塞も現役な上に駐在騎士もしっかりしてて、全体的に治安が良いのもファミリーポイント高い。

 唯一の短所は迷宮を擁する転移神殿がないところだが、リント市とは道が繋がっているので問題はない。交通の便はいいのだ。あーでも、一応迷宮無しのギルド支部はあった。ちょっくら覗いてみたところ、せいぜい鋼鉄札が数名いる程度。騎士が優秀な証である。

 

「さて、今日は北の方を見てまわろうか。弁当忘れてないか?」

「大丈夫じゃ。昨日買った米でチラシ寿司作ったのじゃ。割と自信作じゃ」

「チラシ寿司……楽しみです!」

「いなり寿司は用意できませんでしたが、ワタシも巻き寿司作ってきましたよ。寿司の美味さに限界はありません」

 

 要塞都市ミルヒク。歩けば歩くだけ好きになる街だった。

 乳製品が美味しくてルクスリリアやグーラもハッピーだし、職人が元気でシャロやヘカテもハッピーだし、リンジュやクーシェンの物も流れてきてイリハやユゥリンもハッピーだし、少し歩けば静かな所もあってエリーゼやレノもハッピーだ。

 皆がこの街を気に入った事についてクニュフが満足げにしているあたり、クソ未来でも俺達はミルヒクに家を建てたのだろう。まだまだ色んな土地を見に行く予定だが、既に優勝候補が出てしまった感じである。

 

 で、だ。

 

 なんて小旅行をしつつ、家族計画は未来の話。

 故にこそ幸せな未来を掴む必要があるとの事で、俺達は家探しの最中も強くなるのに余念が無かった。

 

「久しぶりの迷宮だが油断するなよ、三人とも。チーム名は……リトルガンナーズだ!」

「ん、リトルガンナーズ。いい名前」

「おぅ? よう分からんけど魔力切れには気ぃ付けぇな。ウチはほら? ダーリンおるし」

「盾役がんばるのじゃ~!」

 

 フライシュ巡り中盤戦、リントに戻って迷宮へ。ハック&スラッシュだ。

 兼、実弾魔法の実戦試験である。

 明日に向かって撃とうというのだ。

 

 

 

 伽藍迷宮。

 ガチ迷路系の四人用中位迷宮で、通路も部屋もめちゃくちゃ狭くて戦いにくい。ある意味、ダンジョンと聞いて多くの人がイメージするタイプのダンジョンだ。

 出現エネミーは多腕複脚のホラーチック自動人形系で、一律斬属性と魔法全般に耐性がある。代わりに打撃と刺突にはクッソ弱く、速い脆いで疑似無双体験ができる。

 一般的にはムズいらしいが、俺達にとっては楽チンだった。

 

「【空洞弾(ホローポイント)】!」

 

 薄暗い迷宮に、爆竹のような破裂音が鳴り響く。

 秒間七連射。実弾魔法の連続発動である。全て命中、全て会心。頭部を失った人形は青白い粒子に還っていった。

 発砲後、俺の持つライフル(・・・・)の銃口から、硝煙めいた魔力残滓が立ち上る。あまりにもクールだ。

 

「ふぅ、【空洞弾】は打撃属性強めな上にノックバックもスタン値も高くていいな。普通の実弾より魔力食うけど」

 

 今現在、俺は新しく生えてきた実弾魔法特化魔法職を育成していた。より厳しい実戦でも実弾魔法を運用できるように。

 それに伴い、今回俺は兼ねてから依頼していた実弾魔法の使用を前提とした銃杖を実戦投入していた。

 

 

 

◆アダムス式・魔導銃杖改◆

 

・補助効果1=自動修復

・補助効果2=魔力回復(小)

・補助効果3=魔導旋印(要約ルーン式)

・補助効果4=魔力制御(大)

・補助効果5=魔法装填(飛翔)

・補助効果6=魔法装填(降下)

 

 

 

 クルッとガシャンと一回転。このガチャガチャ感は残してもらった。見た目はまんま俺が使っていたソードオフ・レバーアクションライフルだ。

 唯一の見てくれの差異は銃腔が空いているところだ。内側に螺旋状のルーン彫刻が施されており、この疑似ライフリング機構によって元の空中戦補助の性能をなるだけ残したまま実弾魔法への親和性を高める事に成功したのである。未来知識様様だ。より精密になった固有魔力のフィッティングもしてもらって、何なら前より使いやすい。

 また、今回俺が短銃身の銃杖を使っているのには合理的な理由がある。クニュフ式にはないアーカイオン式の実弾魔法の仕様に適応する為だ。

 

「で、その杖で実弾撃ってみた感想はどうや? トレーニングやない生の感じとかさ」

「かなり良い。魔力めっちゃ食うけど、魔力めっちゃ食うけど」

「ん、実際強調したくなるくらい消耗激しい」

「やっぱ実戦じゃコントロールむずいよなぁ。普段は魔法、決め手は実弾って感じやろか」

「でも弾速がウリだから遠隔けん制にも普通に使えるんだよなぁ。ガンガン使いてぇぜ」

「わしもそーゆーパッと出してバッと当たる魔法欲しいのじゃ」

「や、イリハには発勁がある。持ち味を活かすべき」

 

 鉄の礫を撃ち出す実弾魔法。魔力消費は激しいが、速くて硬くて実戦的。何より魔法の出が早いので、近接でこそ輝く強技である。

 銃で近接? 妙だな……と思うかもしれないが、残念ながら俺が使えるアーカイオン式実弾魔法は距離による威力減衰が著しく、その有効射程は弓や他魔法より遥かに劣るのである。

 故に、近距離で取り回しのいい短銃杖を使っているのだ。【空洞弾】とかを弱点部位に直撃させたらスタン狙える上、いつものように【受け流し】からの畳みかけ連続会心はかなりのDPSなのである。銃杖単品でも【弾き返し】からの至近距離散弾とか強いしな。

 けれどもそれでも、である。レベルアップに次ぐレベルアップに加え、純淫魔契約アンド真血術でも補えない燃費の悪さがアーカイオン式実弾魔法には存在するのだ。秒間十六連射なんてとてもとても……。

 

「よっしゃ、次はウチがやってみるわ。練習しまくった新魔法、よう見とってー!」

 

 そんなデメリット込みでも実弾魔法は魅力的だ。という訳でヘカテも練習中。

 自動人形に向かい、魔法触媒である傘の先端を向けるヘカテ。骨組みに沿って赤黒い魔力が凝集していき、一発の弾丸を生成。刹那、赤の弾丸が魔力的爆発と反動を伴い発射された。結果、自動人形は爆発四散。距離減衰を無視した超威力である。

 魔血圧縮弾とも実弾魔法とも異なるヘカテアレンジ実弾魔法。仮称ブラッド・キャノンである。

 

「すっごい威力じゃの~」

「ん、かなりエグい。溜め長いけど、その分お釣り出る」

 

 曰く、魔血で剣を生成して射出する純血魔術の応用らしい。結果として、両者の性質を兼ね備えたブラッド・キャノンはこんな威力になったのだ。

 

「ん、実弾魔法はちょっと扱いが特殊でまだ慣れない」

 

 同じく、レノも実弾魔法を練習中。彼女の場合、俺のジョブツリーを参考に実弾魔法習得RTAをしてようやっと実弾魔法を使えるジョブにたどり着いたところだ。

 触媒は愛用光力銃をそのまま流用している。リベリオン&メイトリクスの光弾強化術式は実弾魔法にも作用するとの事で。

 レノの弾捌きはというと、案の定凄まじかった。連射重視の俺や溜め一撃重視のヘカテとは異なるカウンタースナイプ戦法。百発百中とはレノの為にある言葉だ。

 けれども例によって実弾魔法は純粋に魔力消費が激しい上、圧縮光弾とは勝手が異なるからと、レノの場合は物理が有効な際のサブ技運用を想定している。

 いずれにせよ、俺を含め攻撃の択が増えたのは良い事だ。

 

「ほい、【受け流し】! からの発勁砲! 破ァーッ!」

「ん、ナイス発勁。距離稼げた。あとは……!」

「最高強度でぶち抜いたる!」

 

 ちなみに、俺達が実弾魔法を試し撃ちしている間、本来後衛なはずのイリハに盾役をやってもらっていた。

 だってと言うか何というか、イリハは防御特化の無月流剣術の免許皆伝で、先兵戦前に覚えた【受け流し】をチート込みで使いこなしてるからルクスリリアやグーラよりタンク適性高いんだよね。地味に一番安心して盾任せられるまである。発勁も強いしな。

 

「よし、このままガンガンいくぞ。リトルガンナーズ、ゴーゴーゴー!」

「ごー」

 

 トリガーハッピー三人衆&タンクフォックスで迷路迷宮を探索。

 どんな迷路でもマッピングチートで迷う事はない。何ならヘカテの探査魔術である程度の道は分かる。四人で死角をカバーしながら迷路を進む姿、さながら特殊部隊の突入作戦の如し。

 魔物が見つかったら先制でレノが狙撃って俺が切り込みヘカテが重いのズドンで制圧できる。魔法に強いオートマタ君だが、実弾魔法は物理威力が出るのでビックリするくらいカモである。

 

「早っ! もう終わりかいな! ダーリンおると迷路なんてちょちょいのちょいやな!」

「ん、主の前に羽休め。ククク……天使ギャグ、おもろ」

「レノも初めて会った時とは別人のように情緒が育ったのぅ」

 

 そうこうしてたらボス戦である。

 この世界の迷宮に宝箱はないので、迷路なんてさっさと最奥行くに限るのだ。草薙セオリーの小休止の後、いざいざボス部屋へエントリー。

 相手はブリッジウォークでカサカサ動く双頭オートマタ君だった。禍々しい見た目も相まってちょっとビビッてたヘカテだったが、俺が「キンタマみてぇな頭だな」って言ったらラリススナギツネみたいな顔になって平常心を取り戻していた。

 

「完全に別ゲーだな。そろそろスタン入るぞっと、はい今ぁ!」

「頭もらうで、【ブラッド・キャノン】!」

「のわぁ~! 今ちょっと掠ったのじゃ! わしに当てんよう気ぃ付けてほしいのじゃ~!」

「ん、問題ない。イリハの動きは計算に入れて撃ってる」

 

 という訳でボス戦開始。

 つっても特筆すべき戦闘ではなかった。つかず離れずの距離で銃弾をブチ込みまくり、キンタマヘッドにショットしまくりスタンを入れて、固まったとこをフルボッコ。

 アレだ。これ全員ガンナーで挑む狩りゲーだ。一方的な戦いに見え、その実一切のミスが許されないギリギリ感がたまらんですな。前衛イリハも添えて栄養バランスも良い。尚、当のイリハは後衛魔法職な模様。

 

「あぁヤバい。魔力切れそう。いや実際にはまだまだ残ってるけど一気に失ったせいで気持ち悪い……」

「急性の魔力欠乏症やな。キツなったら一旦引いて深呼吸や」

「ん、実弾魔法の検証は充分。イリハあとよろしく」

「よろしくってのぉ! 凌ぐのでやっとなんじゃけどー!」

 

 まぁでも、取り巻きいたらもっと苦戦していただろう。ただでさえ魔力消費が激しいのに、ザコにまで回すリソースは無さそうだ。この成功体験は切り離すべきだろう。

 

「はぁ、はぁ……なんかドッと疲れたのじゃ……」

「ん、お疲れ。天使の聖水を飲むべき」

「お疲れ~っと……おっ、俺ちゃんレベル上がってんじゃ~ん」

 

 ってな感じでキンタマタ撃破。同時、レベルアップした俺に新しいジョブが生えてきた。

 中位職“ガンスリンガー”レベル20で生えてきたのは、上位職の“スナイパー”と“ラピッドシューター”だった。

 見た感じ後者は短杖に特化しているようで、俺はラピッドシューターにジョブチェンジした。さて、これの次は何が生えてくるかなっと。楽しみである。

 

「ダーリンダーリン! ほれ見てみぃ! 深域武装出たでー!」

 

 なんてニヤニヤしていると、ヘカテがボスドロップを持ってきた。

 ほう、深域武装とな。そいつはめでたい。

 と、思ったのだが……。

 

「なんだこれ?」

「さぁ? レノちゃん見た事ある?」

「ん……お茶会用のワゴンについてる車輪? や、全然違うね。武器じゃないし」

「なんか前に似たような形のケーキ食べた気がするのぅ。アレの名はなんじゃったか……」

 

 パッと見、武器には見えない。普通にドロップアイテムだと思ったが、手に取った感じ全然違う。聖遺物特有の異物感ないし、完全に深域武装の感触だ。

 ソレは俺の知る武器のどれにも該当しなかった。強いて言うならちょっと分厚いお土産クッキー缶? 側面の中心には円を一周するように深い切れ込みがあり、見ようによっては二枚重ねのバウムクーヘンのようでもある。

 深域武装ではある。けど武器っぽくはない。それでいて、なんとも言えない既視感のある形をしていた。この既視感の正体は……?

 

「とりま調べてみるか」

 

 てなわけで、俺はコンソールを開き、手に持った武器の詳細のデータを閲覧した。

 

 

 

◆ディオニの手車◆

 

・物理攻撃力:600

・属性攻撃力:350(雷)

 

・異層権能:投殻報戯

 

・補助効果1:自動修復

・補助効果2:膂力補正(大)

・補助効果3:技量補正(大)

・補助効果4:物理会心促進(大)

・補助効果5:魔法会心促進(大)

・補助効果6:状態異常付与(気絶)

・補助効果7:状態異常促進(感電)

 

 

 

 う~ん、よく分からん。

 そもそも手車ってなんだ? 権能タップしても投げる的な事しか分からんぞ。これ投げるのか? 円盤投げみたいに? でも円盤にしては妙に分厚いんだよなぁ。

 でも武器としてのコンセプトはハッキリしててイイネ。要するに、力技魔補正のあるバランス武器で、当て続けて気絶と感電狙ってどっちか入ったら会心ぶち込んで〆るみたいな感じだろう。ソロでも強いだろうし、パーティ戦ならもっと強そうだ。

 

「で、どうやったん? 魔法触媒? ウチが見るにそんな事ないやろうけど」

「投擲武器らしい。とりま投げるか」

 

 異層権能は魔力を流すと大体起動するのだ。謎手車に魔力を流すと、不思議な事に掴まずとも手にフィットする感じがした。

 試しに手のひらを下にして指を開いても落ちなかった。磁力的な何かでくっ付いてる?

 

「え~っと? 魔力籠めて、大きく振りかぶって……そぉい!」

 

 次いで軽く投げてみると、ソレは高速回転しながら飛んでいき、そのまま糸を撒き戻すように戻ってきたのでバシッとキャッチ。

 

「おお! 凄い綺麗に戻ってきたのじゃ! アレかの? 誰も使っとらんというブーメランってやつかのぅ?」

「や、魔力の紐で繋がってた。ブーメランというより鎖付き鉄球とかの類いと考えられる」

「戻す時は魔力で引いとるみたいやな。でも投げる時は自前の力っぽいな。ふぅ~ん?」

 

 ザワつくロリ達。一方、俺はこの時点で既視感の正体に思い至っていた。

 何故なら、こいつを投げて手放した時、俺の手掌と本体の間に青白い雷の糸のようなものが繋がっていたのが見えたから。

 それは、幼少の頃割と好きな玩具だった。男の娘好きの友人の推しキャラが使ってた武器で、ロボアニメ好きの友人が好きだった主人公機も武器として運用していた。

 そう、それはまさに……。

 

「ヨーヨーだこれ!」

「ヨーヨーて……なんか変な響きやな。てかダーリン知っとったんやな。分からんかったん?」

「いや、俺の知ってるヨーヨーよりゴツいんだよ。しかも本来ヨーヨーは武器じゃないし……いや武器に使ってたキャラはいたけどさ」

 

 ヨーヨーである。ヨーヨーなのである。

 ともかく一気にテンション上がっちゃう。投げて戻す投げて戻す。ああ、これだけで楽しい。

 ふと思いついて投擲中のヨーヨーの糸に触れてみると、リアルヨーヨーのように軌道を変えた。で、魔力籠めたら引っ張れると。

 

「そいっ、よっと! いいな! めっちゃ楽しいじゃん!」

「ん、マスターすごい」

「これ宴の席でやったら大ウケじゃな!」

「ふむ、魔力の紐は使用者の指では干渉できるのに他のモンではすり抜ける。外部からは魔力干渉もできひん。どういう事や?」

 

 しかも脳波コントロールできる。知っている技を再現してみたところ大いにウケた。

 自由度はグーラの鎖のが高いだろうが、俺視点こっちのが扱いやすい。極論、投げたら戻ってくるだけなので。

 

「主様主様、わしにも投げさせてほしいのじゃ」

「ん、次わたし」

 

 次いで三人にも試してもらった。

 どうやら、投げる時は膂力・技量が参照されて、巻き戻す時は魔力・知力が参照されるようだ。三人とも俺より戻したり軌道を変える速度&精度が良さげな一方、投げは俺のが上手かった。

 

「なんかウチ等が使っても勢いないな。あ~このまま帰るとモヤモヤしてまいそうやで、一回だけ調べてかん?」

「おっけー。じゃあ投げた時の威力をだな」

 

 ややもせず。テンションの上がった俺達はボスを倒したボス部屋でヨーヨーの威力検証をする事に。

 ダメージ計算用の的を用意し、二十メートルほどの距離を取る。

 

「ん? てゆーか投擲スキル乗るのかコレ。前は野球投げだったから今度は円盤投げみたいに……しゃあっ!」

「「おおっ」」」

 

 投げる直前、ふと癖で【投剣】を使おうとしたらヨーヨーにも適用されるっぽい。そんで投げたら威力倍増。

 というか、投擲系スキル全部重ねられるぞこいつ。剣でも槍でも投げナイフでも、ジャンル関係なく投擲系なら全てだ。

 いや待て、もしやこれブーメランとかの投擲武器専用スキルを重ねればもっと威力出るんじゃないか?

 

「いいゾ~これ」

 

 おぉ、夢が広がる。是非これも使いこなしたい。

 なんてやってたら迷宮が閉じそうだったので慌てて帰還。転移神殿に戻り、ザコドロップを換金して宿へ。

 帰路、俺はヨーヨーを上下にビヨンビヨンしながら歩いた。

 

「ただいま。お土産持ってき~たよ」

「おかえりなさい。迷宮の魔力が染み付いているわよ。いい戦をしたようね」

 

 借りた宿に戻ると、ユゥリンとエリーゼが迎えてくれた。他の面々はお出かけ中である。

 

「ん? てかその物体は何なんです? 聖遺物というより深域武装の気配がしますが」

「ん、マスターの新しいお気に入り」

「どんな武器なのかしら? 少し使ってみせなさいな」

 

 ヨーヨー見せてと言われたら応えてあげるがパフォーマー魂よ。

 俺は異世界ナイズドされた身体能力と思念操作のゴリ押しで前世で見た事のあるヨーヨートリックを再現してみた。キャッキャと喜んでくれたリトルガンナーズと異なり、宿組二人は微笑ましそうな表情をしていた。解せぬ。このヨーヨーけっこう強いんだぞ、知らんけど。

 

「ただいま~ってなんでぇその塊? そんなん土産にあったっけか? 完成度高ぇなオイ」

「いやいや、魔力的に普通に深域武装ッスよ。なんかグーラのそれと似た感じするッス」

「そんなに似てないと思いますが……」

 

 なんてやってたら、お出かけ勢が戻ってきた。収納魔法持ちのグーラがいてなお大荷物なあたり、相当量の買い物をしたようだ。

 

「えっ? あのパパ、それって……」

 

 そんな中、お出かけ勢にいたクニュフが俺を凝視していた。

 厳密に言うと、俺じゃなくヨーヨーを見ている。キョトンというか、ガビーンみたいな顔で。

 

「そ、それ! ディオニの手車だよね? どこで手に入れたの!? 土産屋とかで売ってたのッ? それともニセモノ!?」

「どこって、普通に迷宮だけど……」

 

 ブルブルと人差し指で示されたのは、案の定ヨーヨーだった。

 迷宮でドロップした旨伝えると、やがてクニュフが震える唇を開いた。

 

「そのヨーヨー! ヘーヒェン・ヘイブンを屍王から守り続けた“武血義理(ぶっちぎり)”のヘルガの代名詞だよ! 話した事あるし助けてもらった事あるもん! 大戦犯がニコレッタならヘルガは大恩人の大英雄! 育成予定の英雄リストにも載ってるよ!」

「え? 英雄って……未来の?」

「そのとおりでございますニャ!」

 

 続く説明を要約すると、こんな感じ。

 このヨーヨーは未来の英雄の代名詞ともいえる深域武装で、時系列的にまだヘルガ氏は覚醒してないが、後々たまたまヨーヨーを拾った事から英雄譚が始まるのだ……と。

 とにかく、これがなきゃあヘルガは覚醒しないらしい。

 

「どどど、どうしよう! また歴史が変わっちゃったよ~! これじゃ正史通りヘルガが英雄にならないじゃ~ん!」

 

 俺は屍王に備える為、未来で活躍する善の英雄に先行投資する計画を立てていた。

 で、俺はそのうちの一人にとってのキーアイテムを入手してしまったらしい。

 慌てるクニュフ。目を見合わせる一同。

 けど、まぁ……。

 

「いやファンリー殺した時点で正史もクソもなくないか?」

「……あっ、それもそうだね」

 

 ヨーヨーをひと振り。思考一秒、特に問題はないと判断。

 そのようにして、俺は努めてお気楽に構えるのであった。

 

 まぁ、ヨーヨー手放すのは寂しいけどね。でも未来の為なら仕方ない。

 ロリの幸せが最優先さ。




 しゃあっ、更新!
 書籍版一巻が発売され、続刊企画も進行中です!
 よろしくお願いします!


【挿絵表示】


 というわけで店舗特典情報!
 ゲーマーズ様は、書き下ろしSSとルクスリリアとエリーゼのアクリルスタンドになります。
ゲーマーズ様はこちら

 とらのあな様は、書き下ろしSSとタペストリーになります。
とらのあな様はこちら

 メロンブックス様は、書き下ろしSSとタペストリーになります。

メロンブックス様はこちら

 物理版をお求めの際は、ぜひぜひ特典付きをどうぞ!



・電子版
BOOK☆WALKER様はこちら

Amazon Kindleストア様はこちら

 その他、各電子書籍販売サイト様でも配信されます。



KADOKAWAたのハク公式ページはこちら
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。