【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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サクラロリ(中)

 異世界種族最強ランキング発表ロリコンが異世界における種族単位での最強ランキングを発表します。

 一位、竜族。

 二位、吸血鬼。

 三位、天使。

 四位以降は見解が分かれるところだが、上位三種はほぼほぼこれで固定である。

 

 中でも、一位の竜族は二位との間に超えられない壁が存在する。それくらい竜族はぶっちぎりの最強種なのだ。

 竜族の種族特性として有名なのは、疑似的な不老不死および自己再生力である。加えて抜群の身体能力と魔法適性。自前の翼で空を飛べるし、防具無しでも鱗の鎧を纏える。

 そして、竜族を最強種たらしめている最も大きな要因といえば、“竜族権能”である。

 

 竜族権能とは、ざっくり言うと竜族が生まれ持つ異能である。

 通常、“異能”と言われているものとは違い、竜族権能の多くは高い戦術的優位性を有している。竜族権能=戦闘向き異能なのだ。

 

 では、ここで一つ花冠竜オイゲン氏の権能を例に挙げてみよう。

 彼の権能は有名だ。花冠竜オイゲンは、花や草木など植物を生み出し、操る事ができる。効果テキストだけ読むと「そんだけ?」って思うかもしれないが、彼はその規模がヤバいのだ。

 聞くところによると、リンジュ建国の際の戦において彼は蔦の大波で敵軍を蹴散らし、誘眠花畑の罠で敵将を捕縛したとか。その他、最前線に桜の木を出してあっという間に簡易拠点を作成し、花蜜の雨で味方の傷を癒したという。チートやチート! チーターや!

 

 そんなオイゲン氏の子孫達は、概して植物系の強力な権能を受け継いでいるらしい。

 だが、彼の孫娘であるクラウディアさんは、権能はおろか鱗や翼すら持たず生まれてきたという。

 権能未発現に加えて、鱗と翼の無い竜族。これはもうエリーゼ以上の希少例だろう。

 

 後々翼は生えてはきたが、エリーゼの場合は“竜祖回帰”という異能らしき補助スキルによる先祖返りで鱗と翼が無かったものと思われる。

 権能については、単に発動条件が分かりづらかっただけで未発現ではなく未発見というオチだった。

 

 では、クラウディアさんはどうだろうか。

 たった十年で見限られて百年幽閉されていたエリーゼと異なり、少なくとも祖父には可愛がられているように見える。

 医師にも診てもらったり、色々調べてはいたのだろう。それでも原因が見つかっていない状況なのだ。

 

 権能も、鱗も、翼もない竜のご令嬢。

 貸し借りとか、メリット・デメリットではない。損得勘定抜きに、俺は彼女の力になってあげたいと思った。

 情に竿させば流されるとは言うが、もう流されちゃってもいいさという気持ち。

 ただエリーゼの夫たる者として。

 

「クラウディアの話の前に、ちいとばかし竜族について話させてくれや。お前さんもある程度は知ってるだろうが、まぁ聞いてくれ」

 

 孫を撫でる手を止めたオイゲンさんは、改めて俺と目を合わせて言った。

 威圧するような上位者の目ではない。家族を守る男として、彼は俺を真っすぐ対等に見ていた。

 

「竜族はどんだけ遅くても十の歳には権能を見出すもんだ。これは己がこっち来る前も、こっち来てからもそうだった。他の一族も例外はねぇ。クラウディア以外はな」

 

 実際そうらしい。エリーゼも使い方が分からなかっただけで、権能が無かった訳ではないのだ。

 言われたクラウディアさんは運ばれてきた桜餅をもぐもぐ食べていた。

 

「権能を使えなかったクラウディアは、おまけに鱗鎧も翼も出せず終いだった。まぁ鱗の方は別にいいんだ。今日日、鱗のない竜なんざ珍しくもねぇ」

「え、珍しくない、とは……?」

「あん? なんだ、お前さん等ぁ知らねぇのかい」

 

 ほっこりしつつ話を聞いていたら、オイゲンさんの口から驚くべき情報が飛び出てきた。

 鱗が無い竜は珍しくない、とはどういう事だろうか。キョトンとしているエリーゼの様子を見て取って、花竜一族の長は頭をガシガシやっていた。

 

「銀竜一族はどうか知らねぇが、だいたい二千年前くらいから花竜一族やはぐれ竜の間で鱗の無ぇ竜族が増えてきたんだ。そもそも他人ん前で鱗鎧出す機会も無ぇからな。お前さん等が知らねぇのも無理はねぇか」

「そうだったんですね」

「なんだ、下界に下りた竜は特性を失くしてくみてぇな事言う奴もいたが、マジなとこ理由は分からん。だがまぁ竜族としては自然な流れだと己は思うぜ」

「それは……何故でしょうか。竜族にとって鱗の鎧を纏う事は古から続く誇りのはずですが」

 

 すると、エリーゼが細い声音で言葉を発した。

 竜族にとって、自前の鱗鎧は権能に次ぐ竜の誇りなのだ。だからこそ、エリーゼは一族から迫害されていた訳で。

 対し、リンジュ最強の竜族は自嘲するように口の端を歪めた。

 

「己等の鱗鎧は、もう今の戦についていけねぇからだ。考えてもみろ。すぐに纏えるとはいえ、こんなもん補助効果の一つすら無ぇただ硬くて軽いだけの鎧だぜ。どう考えても工匠が作った装備のが優秀だろ。実際、己も喧嘩ンなったら自前の鱗なんざ捨てて一張羅ぁ着てくしな。鱗鎧を脱ぐのは戦闘種族にとって然るべき適応だよ」

 

 言いながら、右手に鱗の籠手を出してみせるオイゲンさん。やがて解除された籠手は、魔力残滓となって散っていった。

 確かに、言われてみればそうである。実際、エリーゼは鱗鎧を纏えなくても戦闘面で不自由してないし、今更鱗鎧を出せるようになっても使いどころがないだろう。今の時代、竜族の鎧より迷宮用装備のが強いのだ。

 

「まぁそれはいい、問題は権能と翼だ。さっきも言ったが、その二つが無ぇのは花竜一族でも初めての事例でな。医者ぁ読んだり学者に調べさせたりと……色々試してみたが、何も解決しなかった。竜族らしくなってほしい訳じゃあねぇが、こいつが無礼められんのは何とかしてやりてぇ。じゃねぇと蝶々みてぇにゃ飛んでけねぇからな」

「ちなみに、わたくしは今お家でお料理してますのよ。別に一族の中でいじめられてるとか、そんなんありませんわ」

「こいつなりに頑張ったんだぜ。最初は握り飯一つ作んのに失敗しまくってたのによ」

「今はちゃんと三角ですわ~」

 

 思ってた通り、クラウディアさんは花竜一族から迫害されている訳ではないようだ。

 鑑みるに、藁にも縋る思いで俺に頼んでいるのではなく、何とかできるんなら何とかしてほしいくらいのテンション感なのだろう。

 

「それを、私に?」

「ああ。お前さんについては調べさせてもらった。それについても話をさせてくれ」

 

 自分の分の桜餅を孫に譲りながら、オイゲンさんは苦虫を噛むような顔で続けた。

 

「あまり表には出ない話なんだが……最近、竜族が奴隷に出される事があってな」

 

 またも初耳情報である。

 竜族の奴隷と聞いて、エリーゼの魔力が僅かに揺らいだ。戦闘中でさえ完璧に制御されている彼女の魔力が。

 

「何処かしらのデカい一族はともかく、今日日木っ端竜族の生活ってなぁ厳しくてな。従者一人もいませんって家もあるくれぇだ。そこで自分んトコのガキを奴隷商に売る輩が出てきやがった。で、その殆どは鱗を出せねぇ新しい竜族ってワケよ。強ぇ奴は一族に献上ってな」

 

 腹の奥が重くなる話だった。

 いくら生活が厳しいからと、自分の子を売るなんて信じられない。人の心とかマジで無いじゃん。売られた子供の事を思うと、暗澹たる気分に苛まれる。

 

「そーゆーのを己等花竜一族は買い取って、一人前の竜として教育してから解放してんだ。そんで、つい数年前に銀髪の竜族が売りに出されたって情報を耳にしたんだが、そん時にはもう誰かしらが買っててな。調べてみたら新進気鋭の銀細工ってんで、しかも主人とは仲良くしてるし毎日毎日迷宮潜ってるってんでびっくらこいたね。でもって安心して手を引いた訳よ。なんたって、枷を嵌められたその銀竜は誰より竜族らしくなってたんだからな」

「その話を聞いてからですわ。わたくしがエリーゼ様のファンになったのは」

 

 俺の知らないところで、エリーゼは花竜一族に買われる可能性があったらしい。

 いやでも、竜族はエリーゼを買えないっていう縛りがあったはず。あるいは契約の穴を突いてお迎えしていたかもしれないのか。

 ここで、俺が先にお迎えできてよかったと思える程、俺は自惚れてはいなかった。もしかしたら、俺のところに来るよりも花竜一族に来ていた方が幸せだったかもしれない。

 

「エリーゼ……」

 

 けれどもだ。俺はエリーゼの想いを疑うような心根の持ち主ではなかった。俺は俺を信じられないが、俺が信じる皆を信じる事なら出来るのだ。

 優しく、隣の銀竜の手を握る。視線を重ねる。冷たくて小さい手は同じように握り返してくれた。ここに愛は在るのだから。

 

「あー、続きいいか?」

「すみません。つい」

 

 咳払いが聞こえ、慌ててオイゲンさんの方に向き直る。

 呆れたような花冠竜の隣で、孫娘さんは口元を隠しながら赤面していた。ちょっと気まずい。

 

「ごほん……で、その後だな。いくら銀細工でも迷宮潜りが権能持ちの竜族奴隷を買える訳がねぇ。クソ高ぇからな。鱗や翼が無かったとしても銀竜だ。んなら相応の瑕疵があるもんだとばかり思ってたが……」

「エリーゼ様が“祝福”に似た権能を使えるという情報は調べればすぐわかりましたわ」

「つまりイシグロ、お前さんだ。他人の才覚を見抜くお前さんが、エリーゼの隠された権能を暴いたんじゃあねぇかってな」

 

 つまり、無いとされていたエリーゼの権能を俺が見出して、クラウディアさんにも同じ事できないものかと思って今に至ってるんだな。

 恐らく、草薙の門が決め手になったのだろう。俺には異能もしくは才覚を見抜く能力があるなら、ワンチャン竜族権能も何とかならんか、と。

 

「己もクラウディアも折り合いはつけてる。一つ気楽に診るだけ診てやってほしいってだけだ」

「かしこまりました。謹んでお引き受けいたします」

 

 諸々の事情を話してもらった今、俺に断る理由はなかった。

 ただ診るだけ。絶対解決しなきゃいけない訳ではない。気楽にはじめて真剣に取り掛かろう。

 

「ありがとうございますわ。で、わたくしはどうすればよろしくって? とりま脱げばよろしいのかしら?」

「バカ野郎、未婚の女子がはしたねぇ事すんな」

「あぁっと、今ここで大丈夫です。クラウディアさんの了承さえあれば」

「秘中の秘って訳じゃあねぇのか」

 

 ステータス看破についてだが、これの可否は俺と対象との関係性によって決定される。

 敵味方反応レーダーで敵判定かどっちでもない判定の奴は無理で、味方判定の人だけ俺のコンソールに表示されるのだ。

 あと、細かいところで言うと対象が近くにいないといけないとか、俺に敵意がないとか、その他にも細かい条件がいくつか存在する。

 

「え~、わたくしはイシグロ様の味方です……本当にこれでよろしいのかしらん?」

「ええ。大丈夫ですよ」

 

 クラウディアさんの了承を得ると、コンソールに彼女の名前が表示された。

 そんでタップしてみる。展開されたウィンドゥに種族やジョブのレベルが表示された。

 

「ふぅむ……」

 

 結論から言うと、クラウディアさんにも竜族権能は存在した

 同時、何でソレが発動しないのかも判明した。俺の考察が正しければ、すぐにでも解決できるはず。

 こういう時に思うのは、やっぱり鑑定系能力はガチでチートじみてるって事だ。そりゃ色んな異世界モノで重宝される訳だよ。

 

「ど、どうですの? わたくしの権能は? ありましたか……?」

 

 不安半分、期待半分といった表情のクラウディアさん。

 オイゲンさんはどちらとも言えない無表情で、エリーゼとイリハは信頼しきった目で俺を見ていた。

 コンソールを閉じ、皆に頷いてみせた。

 

「ええ、クラウディアさんにも権能はありましたよ。原因についても分かりました」

「本当か……!? 使えるようになるのか、竜族権能を……!」

「やりましたわ! 原因って事はわたくし病気だったりしますの? 具体的には何をすればいいんですのっ?」

「それについてですが、検証の為に何処か使える場所はありませんか? ここは少し雅に過ぎますので」

「それならちょうど空いてるトコがある。ついてきな」

「あっ、お祖父様お待ちになって……!」

 

 すると、いち早く立ち上がったオイゲンさんは一人で歩きだした。その後ろをクラウディアさんと翼竜の従者が慌てて追いかける。一度顔を見合わせた俺達も後ろからついていった。

 そうして辿り着いたのは、四方を高い壁に囲まれた武練場だった。壁の表面には陰陽術式の結界が張られてあり、生半可な魔法では突破できそうにないくらい頑丈に思われた。

 

「急くようですまねぇが、早速クラウディアの権能について教えてくれねぇか?」

「ワクワクですわ……!」

「かしこまりました。結論から申しますと、クラウディアさんは竜族権能とは別に一つの異能をお持ちでした。これが悪さをして竜族権能の発動を邪魔していたようです」

「異能ですの?」

 

 異能の発現率については竜族がワースト一位らしい。が、すぐ近くに前例があるのでクラウディアさんに異能がある事に驚きはなかった。

 エリーゼは権能とは別に“琴竜循環”なる異能を有しているのだ。それと似たような感じで、クラウディアさんにも異能があったのである。

 

「診たところ、クラウディアさんの血には竜殺しの毒が含まれているようで、その毒のせいで竜族権能や翼の生成といった種族特性が阻害もしくは弱体化されているようです。他にも傷の再生が遅いとか、魔力感知が苦手といった症状はございませんか?」

「血に毒……わたくし、生まれてから元気いっぱいですけれど」

「……いや、己はクラウディアの再生能力が弱ぇ事までは言ってねぇ。どうやらマジみてぇだな」

「これを検証するにあたり、血に詳しい真祖の仲間を呼んで改めて検査させていただきたいのですが……」

「あん? んなもん己の身体にクラウディアの血ぃ付ければ何となく分かんじゃねぇか? ほれ、血ぃ出せ」

「い、痛いのは嫌ですわ……!」

「えぇ~っと、権能だけなら別の方法で検証を……」

「先に血だ。さっさとやるぞ」

「さ、先ほど申しました通りクラウディアさんの血には竜殺しの毒が……」

「花冠竜舐めんじゃねぇ」

 

 孫娘の血に毒があると言われたからか、花冠竜氏は焦っているようだった。

 とかく祖父を実験台にしようとなり、クラウディアさんの指から針で血を一滴採取する。それをオイゲンさんの右掌に落とした。

 

「オイゲン様、権能をお使いください」

「ああ分かった。あと、もう“様”はいらねぇよ」

 

 言って、オイゲンさんは今まで完璧に調律されていた魔力を漲らせた。

 竜族特有の攻撃的な魔力が花冠竜の右手に集まっていく。しかしそれは焼け石に水を垂らしたように雲散霧消した。

 

「な、なんだこれ全然花ぁ咲かねぇじゃねぇか……! 毒っつーか栓っつーか、このクソ! うぉおおお……!」

 

 オイゲンさんの手から出来損ないの花びらが噴出し、形になる前に消えていく。明らかな権能の不調である。

 痛いとか苦しいとかは無いようだが、少なくとも権能封じの効果はあるらしい。いや地球人の俺からすると血から感染する病気とかそのへんが気になるんだけども。

 

「……マジで毒あるみてぇだな。浴びて死ぬようなもんじゃあねぇが、魔力の流れがぐちゃぐちゃになってら」

「お祖父様、大丈夫ですの?」

「これくれぇ何でもねぇよ。にしても、まさかクラウの血にこんな()があったなんてな、これが権能って言われても己は信じるぜ……」

 

 従者に手渡された布で手を拭ったオイゲンさんは、その手から花吹雪を舞い上がらせてみせた。どうやら蓄積するタイプの毒ではないらしい。

 

「この血のせいで権能使えねぇってのは分かった。要は自分の毒で苦しんでる魔蛇族みてぇなもんだろ。どうにかなるとは思えねぇが……」

「異能封じの枷を使えばある程度は何とかなるかと存じます。クラウディアさんの毒血は異能由来なので、異能を縛れば無毒化できるのではと」

「おぉそうか! お前さん賢いな! 異能封じの枷で竜族権能は封じれねぇからな! おい、異能封じと治癒術師連れてこい! あと魔法薬もな!」

「はわわわわ! なんかドえらい事になっていますわ……!」

「最近こういう光景よく見るのじゃ~」

「彼の英雄たる所以の一つでしょう。強いだけじゃないのよ、あの人は」

 

 ややもあり、武練場にドタドタと薬箪笥を背負った治癒術師がやってきた。また、その手には異能者を逮捕する時に使うらしい厳つい手錠が握られている。

 

「まさかわたくしがお祖父様にお縄を掛けられる事になろうとは……」

「いいから嵌めるぞ。成功したら洒落た枷ぇ作らせっから」

 

 そうして、クラウディアさんは祖父手ずから物理的な枷を嵌められた。

 これで血の異能は封印されたはずだ。コンソールを確認してみたところ、件の異能の項目は文字化けしている。恐らく大丈夫だ。

 

「ってな具合で嵌められちゃいましたけれど」

「何か変わった事とかありませんか? 魔力の乱れとか、体調不良とか……」

「ん~? 寧ろちょっとずつ元気になってる気がしますわ。片頭痛も収まってきますし、気持ち肩も軽く……」

「少なくとも魔力の流れはスムーズになっているようね。角の感度も上がってるんじゃないかしら? ほら」

「うおっまぶし!」

 

 エリーゼがボワッと魔力を出した瞬間、それを見ていたクラウディアさんは角を抑えて目を瞑った。種族特性が復活したお陰で魔力感知力が上がったようだ。

 

「こ、これが皆様の見ている世界ですのね……! めちゃくちゃ魔力感じますわ! あらあらお祖父様ったら嬉しそうな魔力しちゃってまぁ!」

「当たり前だろ。で、どうだ? 権能の方は使えそうか?」

「あ、そうでしたわね! むむむ……ところで権能ってどうやって使うんですの?」

「普通なんとなく使い方分かるもんだが……」

「クラウディアさんの竜族権能は蜜を出すモノのようです。詳細は不明ですが」

「そこまで分かんのかよ、やべーな……」

「蜜? ハチミツ? 花のミツ……わぁ!?」

 

 暫く唸った後、クラウディアさんの手からピューッと謎の液体が発射された。

 

「こここここれ! 魔法ですの!? 魔力そのまま良い匂いの水になって出てるんですけれど! 止められませんし止まりませんわ!」

「いや、権能だ……マジで使えるようになったじゃあねぇか! クラウディア!」

「やりましたわ嬉しいですわーってギャアアアア!? オキニの着物が蜜でびしょびしょですわー!」

「はははっ! 祝い酒みてぇでいいじゃねぇか! めでてぇめでてぇ! おい今晩は赤飯だ! 若ぇもん呼んで宴するぞ宴!」

「ちょっち恥ずいですけどパーティは大歓迎ですわ! 盛大に祝ってくださいまし!」

 

 笑顔を弾けさせながら、花竜の祖父と娘は喜びを分かち合っていた。見れば、従者や治癒術師の人も感極まったように涙ぐんでいる。

 それから、クラウディアさんは俺達そっちのけで蜜を出しまくってはしゃいでいた。新体操選手みたいに蜜のリボンをくるくるし、蜜のシャボンを大量生産。蜜のついた指を舐めては「甘ェですわ!」と大歓喜。そんな孫娘を、オイゲンさんは顔をくしゃくしゃにして寿いでいた。

 

「ところで竜族権能って戦う為にあるんですのよね? これでどうやって戦うんでしょう?」

「思い切り撃ち出すとかじゃねぇか? それが攻撃になるかは知らねぇが」

「思い切り思い切り……えい!」

「ごぶぇ! ま、まさか己に痛みを与えられるとはな。やるじゃねぇか」

「よかったのぅ、ほんに。オーディションの度思うんじゃけど、わしこういうの見るの好きなんじゃよなぁ」

 

 経過観察は必要だろうが、ひとまず解決の目途が立ってひと安心だ。

 イリハの言う通り、オーディションの関係で最近は隠された異能を見出す事多いんだよな。すると皆さん喜んでくれて、こっちとしてもこの謎チートを他人様の役に立てられて嬉しい限り。可哀想なのはいけないからな。

 

「イシグロ様ーっ!」

 

 なんて思いながら眺めていると、クラウディアさんが蜜ジェット噴射で突撃してきた。

 

「っと、危ない危ない! おさわり厳禁ですわよね!」

 

 激突の寸前、眼前に蜜バリアを張って急停止。早速使いこなしている。

 やがて、さっきまで権能を使えなかった彼女は、完璧なお嬢様仕草で若草色の頭を下げてきた。

 全身蜜まみれで。

 

「この度は誠にありがとうございました。わたくしにとって、イシグロ様は真の英雄ですわ。なんとお礼を申し上げればよいか……」

「いえ。お礼ならオイゲンさんに」

 

 頭を上げた彼女の双眸には、うるうると涙が湛えられていた。

 自己肯定感の高いように見えるクラウディアさんとて、これまでの境遇に何も思わない訳ではなかったのだろう。あるいは、傷つかないよう自信の殻を纏っていたのかもしれない。

 

「オーディションの前に使いこなせるよう、今から猛特訓ですわ! 絶対合格してやりますわーっ!」

 

 やがて、若草色の竜は涙を振り払うように権能トレーニングを再開し始めた

 どうやら、オーディションには正規ルートで挑むつもりらしい。まぁあの祖父がコネ入団を許す訳ないだろうし当然か。

 

「良かったわね、クラウディア」

 

 他方、エリーゼは複雑そうな目でクラウディアさんを見ていた。

 悲しいとか、妬ましいとか、そういった負の感情は見受けられない。

 

「不思議な気持ち。なんだか、アナタと出会った日の事を思い出したわ……」

「そうか」

 

 もう一度、俺は銀竜の手を握った。

 自分を重ねた竜が救われた様を、自分の事のように喜べる彼女の精神性に、俺は心の底から尊敬の念を抱いた。

 本当に、エリーゼは良い女だと思う。

 

 

 

 

 

 

 カムイバラに来てからそれなりの時が過ぎ、異世界八年目を継げる年越しは似非ジパングで迎える運びとなった。

 その間、色んな所で色んな事があった。

 

 カムイバラに来る前から預かっていた、ランベール組とゲパルト組の候補生の卒業。それに伴い、新たなる同盟“天群雲”を結成した。盟主はフライシュ組のヘルガに担ってもらった。

 天群雲の参加条件は、草薙の門の卒業生である事。ここに入るかどうかは本人次第なのだが、今のところ卒業生全員そっちに入っていった。

 天群雲の目的は、大きく分けて二つ。いずれ来る災厄への対応と、草薙の門の支援である。要するに俺の私兵だ。盟友全員銀細工級。その殆どが異能持ち。自分で言うのもなんだけど、ちょっと個人に与えていい戦力じゃないよね。

 まぁそんな事があったりして……。

 

「草薙オーディション! 最後尾はこちらで~す!」

「イシグロ公認、草薙団子あるよ! おいしいよ~!」

「甘酒完売しましたー!」

 

 年明けすぐに、祭が開催された。カムイバラの英雄候補生オーディションである。

 事前に宣伝しまくっていただけあり、これにはフライシュやゲパルトの比にならないくらい人が集まった。

 期間中は警備として組合や法院が手伝ってくれたお陰で、特にこれといったトラブルは起こらず安心安全に進行する事ができた。

 

 俺達も俺達で審査には慣れたもの。フライシュの時よりスムーズに参加者を選抜していった。

 面白いもので、こういうところにも国民性が出ていた。流石リンジュ民というべきか、誘導には従ってくれるし整然と列に並んでくれる一方、ガチで草薙に入ろうとしている野心家はラリスより少数派のように見受けられた。成りあがりチャンスというか、オーディションにかこつけた年明け祭の様相である。

 あと、どういう訳かロリを含めた草薙の剣の女子人気が凄かったのには驚いた。イリハなど有名インフルエンサー扱いである。

 

「ふぅ~! カムイバラのオーディションも無事終了っと。今回もキャラの濃い奴が集まってきたッスね~」

「にゃあの知らない英雄候補がいっぱいだったニャ~」

「皆さん気になった人はいらっしゃいますか?」

「ん、天狗の三つ子。あの三人は間違いなく化ける」

「明らかにカタギじゃない人いたんですけど、アレは大丈夫なんですかね? ホントに英雄指数高いんですかあの犬人」

「英雄指数はあくまで統計やで絶対値ではないけど、まぁ大丈夫ちゃう?」

「寧ろあれくらい元気じゃねぇと。若いうちから冷めてたら人生楽しみ切れねぇぜ」

 

 結果、規模の大きさも相まって合格者数は過去最多となった。

 また、カムイバラ組にはクーシェン・オーディションの合格者も統合する予定なので、一ヵ所における同時育成人数も過去最多である。

 具体的には、カムイバラ六名クーシェン一名の都合七名である。天群雲を含めたら二十名だ。野球しようぜ。

 

「蜜竜クラウディア、見事合格してみせましたわー!」

 

 候補生の中には、花竜一族であるクラウディアさんの姿もあった。朝から列に並び、真正面からオーディションを受け、忖度無しで英雄指数を測られ、全ての条件を満たして突破したのである。

 彼女の左手にはオシャレなブレスレットが巻かれていた。これは異能封じの枷で、オイゲンさんが特注に造らせたものである。

 竜殺しの血を封印して種族特性を発揮できるようになったクラウディアさんは、竜族権能に加えて通常よりワンサイズ大きい翼を出せるようになったらしい。なお鱗鎧は全くダメだった模様。

 

「こんな感じの孫娘だが、まぁ程々によろしく頼むぜ。己の孫だからって特別扱いはしてくれるなよ」

 

 オイゲンさんからはそのように仰せつかっている。

 自分で飛べるようになった孫娘については、彼女のやりたいようにやらせる方針らしい。

 お望み通り、ビシバシ行こう。

 

「え~、君達は今日から草薙の門の一員だ。これから始まる訓練は厳しいものとなるが、これは我々が理想とする英雄になるのに必要な過程だ。君達は選ばれた者だが、未だ雛未満の卵である。くれぐれも増長せず、先達に恥じぬよう謙虚・堅実を心がけること。いいな」

「「「はい!」」」

 

 そのようにして、英雄育成計画カムイバラ編は始まったのである。

 

 

 

 カムイバラでの英雄育成計画は、これまでの反省を生かして様々な変更を加えている。

 最も大きな変更点は、各候補生の基礎トレーニングをゲルトラウデ師匠に監督してもらっているところだ。

 とりま集団で無月流を習うのだ。流石はプロ指導者だけあり、師匠の教え方は俺よりずっと上手かった。

 

「クラウディアだな。オイゲン様には厳しくするよう言われている。早速だが貴様の剣の腕を見せてもらおうか」

「了解ですわ! これでもオーディション前は実家でシゴかれまくってましたのよ!」

 

 クラウディアの育成方針については、オイゲンさんから一任されている。

 で、気になる彼女の育成方針はというと……。

 

「蜜と剣が合わさり最強ですわ! しゃあですわ!」

「うむ、方向性は間違ってないな。蜜の権能も優秀だ」

 

 蜜の呼吸の剣士……である。

 育成方針を決めるにあたり彼女の権能検証結果を見せてもらったのだが、クラウディアの権能“天元花蜜”は純血魔術に似た使い方が出来るらしい。凝集した蜜を発射する蜜カッターや水属性の蜜バリア。加えて、その気になれば甘くて美味しい回復蜜を出す事も可能。その他、蜜アロマとか蜜ジェット加速等々。オイゲンさん曰く、権能鍛錬中のクラウディアさんはそれはもう楽しそうにしていたそうで。

 要するに、治癒も出来る水魔法剣士である。翼からも蜜噴射できるし中々ビジュが良い。

 

「「「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」」」

「全身力めばいいってもんじゃありませんよ。正しいフォームを意識して、今はそれを身体に馴染ませてください。実戦で使うのはその後です」

 

 勿論、クラウディア同様に他の面々についても真剣に育成している。

 基礎体術は全員参加。刀が得意な候補生には刀の鍛錬を。槍が得意な候補生には槍の鍛錬を。下はショタから上はおじまで、候補生達は種族も年齢もバラバラで多様性に満ちていた。

 

「押忍! ただいま到着したっす、イシグロさん!」

「盟主様! お久しぶりでございます! あぁ皆さんお揃いで……」

「きゃは♪ あれがルル達の後輩ちゃん? 一生懸命で可愛いね♪」

 

 あともう一個大きな変更点。以降の英雄育成計画は天群雲メンバーにも手伝ってもらう事にした。

 これは俺達の負担を減らすのとヘルガ達の技能向上を目的としている。教える事で覚える事も出来るからな。

 後々の為、今のうちに新旧メンバーで交流した方がいいってのもある。同盟内で変な派閥争いとかあってほしくないし、何より烏合の衆じゃあいけないからな。そのへんはヘルガにお任せだ。

 

「うん、そうそう動き自体は合ってる。けど動く前に考えちゃってるから結果的に負けてるだけ。さぁもう一回」

「トゥイさん張り切ってるなぁ」

 

 右を見れば没落令息。左を見れば元旧魔王軍。下を見れば未就学児、上を見れば身長二メートル超えの一般森人八尺様。いつの間にやら大所帯である。

 学生っぽい制服も相まって、天群雲+草薙の門のトレーニング風景は学園部活モノめいていた。

 

「あん? オメー今、ワシに負け犬ゆぅたか? よりにもよって犬人のワシに!」

「いや言ってねぇよ! 聞き間違いだって!」

「いや聞いた! ワシにはそう聞こえた! もう喧嘩は始まっとんんじゃボケェ!」

 

 人が集まる所にトラブルあり。時には訓練中に喧嘩が起こる事もあった。

 多くはヘルガが仲裁してくれるのだが、こと女子勢のコントロールはクラウディアがバチクソ上手かった。ヘルガが人情家の生徒会長だとしたら、クラウディアはスクールカーストトップの善良お嬢様である。

 

「ごきげんよう、お姉さま方」

「「「ごきげんよう」」」

「よ~ッス! ごきげんようッス!」

「お姉さま……? ボク年下なんですけど」

 

 コミュ強陽キャのクラウディアは、我が妻達とも仲良くやっていた。彼女に倣う形で、候補生達も皆に敬意を払って接してくれる。

 ちょっと面白かったのが、クラウディアはルクスリリア達を含めた先輩女子勢を「お姉さま」呼びするので、なんかそこだけ誰か様がみてるような雰囲気になっていた。

 

「ごきげんようって何だ? カゲ先輩、オレらもああいう挨拶した方がいいんですかい?」

「アレはちょっとした流行みたいなもんだよ。さぁ僕達も行こう。美味しいラーメンが待ってるからね」

「やったぜ! メンカタメヤサイマシアブラマシマシニンニクマシぃ!」

「おや餃子とチャーハンはいいのかい?」

「「「ごちんなります!」」」

「ははは、凄いな若い子の胃袋は……僕も抹茶があればイケるんだけど」

「無理して食べるもんでもないと思いやすぜ」

 

 男子勢は男子勢で、カゲロウ君の善なる陽キャオーラにより健やかに統治されていた。

 こっちはこっちで男子校のノリなんだよな。差し詰め、おじ勢は先生か保護者枠か。

 

「よぉし揃ったな。今日の訓練はあーしが監督する。メニューは決めてあるから、一人ずつ発表してくぞ。返事忘れんな」

 

 そうして幾日が過ぎ、候補生達は無月流の基礎を身に付けつつあった。

 今のところ、男女混合の育成計画は順調である。

 けどまぁ、男と女が集まれば何か起きるかもしれないよね。人を好きになるのは禁止はしてないけど、私情を持ち込むのはルールで禁止してある。恋愛するなら相応の覚悟を以てやってもらわなきゃ。以前リカルトさんと話してたところによると、男女のアレコレで死んだ冒険者は相当数いるらしいし。

 

「ごきげんようヘルガお姉さま。ノエミお姉さま、ルルお姉さま」

「「「ごきげんよう」」」

「お、おう……何なんだこの挨拶」

「上流階級の万能挨拶ね。私も草薙の皆様に恥じぬよう使っていこうかしら。ごきげんよう、ルルお姉さま」

「きゃはは、そう仏頂面で言われるのは普通に怖いかな~」

 

 朝に集まり、日中は訓練漬けで、夕方になったら女子と男子に分かれて寮に帰る。

 その日の訓練もまた、厳しくも暖かい空気の中で終了した。

 前世、俺は体育会系の部活に入った事はなかったが、質の良い部ってこんな感じだったのかな。今の草薙の門には、そういう爽やかさがあった。

 

「エリーゼ様、ごきげんようですわ~」

 

 帰り道、クラウディアが別れの挨拶に大きく手を振っていた。

 明日は休みという事もあり、これから女子達とちょっとばかし遊びに行くらしい。夜遊びっつってもノエミがついてるし大丈夫だろう。

 

「ふふっ、あの子ったら……」

 

 そんな彼女の様子を見て、エリーゼは聖母のように微笑んでいた。

 かつて自分を重ねていた同族を見る目ではない。今のエリーゼは慈愛の表情を浮かべていた。

 

「あの子、私に元気出してほしいのよ。私が無意識にクラウディアに気を配っているのを知っているのね……」

「元気にっていうと?」

「いえ、素直になってほしいのかしら……」

 

 少し分からない話だった。

 言葉を探って首を傾げる俺に対し、銀竜令嬢が小さく微笑む。

 

「ねぇ……アナタ?」

 

 そっと、冷たい竜の手が触れる。

 夕陽にきらめく青い瞳は、例えようもないくらい美しかった。

 やがて、小さな唇が震えた。

 

「今日はやきもちを焼いてみてもいいかしら?」

 

 普段あんまり見せない、悪戯っ子のような笑顔。

 かわいい。それしか言葉が見つからない。あまりにも可愛くて、俺は自分でもわかるくらい顔が熱くなっていた。まるで、初心な青春時代に戻ったかのように。

 桜の舞う冬の街で、俺の心には最高にトキめく思い出が刻まれた。

 

 今夜は制服プレイをしよう。

 鼻息荒く、俺は心に留め置いた。

 

 

 

 

 

 

 眠らない街、カムイバラ。

 夜の帳に隠された影に、ひときわ強い熱気を発する集い場があった。

 沢山の蝋燭が灯された部屋の壁に、沢山の人影が浮かび上がる。

 

「これが本日の成果物ですのね?」

「間違いなく。獲れたて新鮮なネタですわ」

 

 人影Aが差しだしたブツを、人影Bが受け取る。すると、人影CDEFGが件のブツに殺到し、眼を爛々と輝かせた。

 

「オぅイエス! あぁんすーはーすーはー! イイですわ! 捗りますわぁ!」

「あぁ~、たまりませんわ! もう一度やりたいんですの!」

「ほぁあああ♡ 盟主様もヘカテ様も素敵ですわぁ……♡」

 

 彼女等は一様にお嬢様口調で会話していた。

 あるいは大阪おっちゃん口調に聞こえるかもしれないが、ここにいる人影A~Zは全員うら若き女性なのでお嬢様口調ってことでいいだろう。

 ともかく、語尾に「ですわ」なり「おほほ」と笑ったりして、怪しい人影達はむんむんと盛っていた。

 

「ありがとうございますわ、お姉さま! 私、一生お姉さまについていきますわ!」

「いいえ、黎明の輝きは万民に授けられるもの。これは決して施し等ではなくってよ」

 

 人影B~Zの狂喜乱舞の傍ら、リーダー格と思しき人影Aはティーカップの中身をごくごく飲みながら応えた。

 そんな彼女の慈悲に、人影Bは感動に身を震わせる。

 

「ありがとうございますわ。草薙の剣の導きのあらんことを……」

「「「草薙の剣の導きのあらんことを……」」」

 

 やがて聖句が唱和され、怪しいお嬢様の集団は各々の世界にのめり込んでいった。

 

「熱中するのもいいですけれど、皆さんくれぐれも盟主様達に迷惑をかけないこと。よろしくて?」

 

 人影Aの忠告に、お嬢様達からは「は~い」と生返事。

 分かってるのかしらと呟いて、人影Aはカップに新しいお茶を淹れた。

 少し甘くする為に、自前の蜜をちょいっと落とす。一口飲んで……。

 

「甘過ぎィ!?」

 

 と叫んだその時、人影Aの背中からバサッと翼が展開された。ビックリして出ちゃったのだ。

 

「わたくしの蜜ったら甘過ぎて困っちゃいますわ。おほほ~」

 

 若草色の髪に、優美な着物姿。そして見事な竜の翼。

 人影Aの正体は、あからさまにクラウディアであった。




 しゃあっ、更新!
 書籍版一巻が発売され、続刊企画も進行中です!
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