【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も感謝です。感謝感謝アンド感謝です。
キャラ募集の方もありがとうございます。良い感じにやる気に繋がっています。
アンケートのご協力、ありがとうございました。
参考になります。狐娘が人気なのは分かってはいましたが、想像以上に天使に票が集まりましたね。
あくまでも参考です。悪しからず。
他種族と比べて、人間種は色んな意味で貧弱である。
エルフほど魔法に長けていないし、ドワーフほど器用でも力持ちでもない。獣人ほど五感も優れていなければ、魔族ほどタフじゃない。
竜族や天使族と比べるなど、何をかいわんやである。
加えて言うと、人間には各種族にあるような種族特性もないのである。
馬人ピクミンは足が速い。翼人ピクミンは高く飛ぶ。淫魔ピクミンは夜目が利く。
人間ピクミンは特になし。バナージ悲しいねである。
それでも、この異世界において最も人口が多く、最も戦力が高く、最も大きな国を統治しているのは人間族である。
前世地球と同様、人間は知恵と工夫とチームワークで異世界最大の国家・ラリス王国を維持しているのだ。
あ、繁殖力があったわ。どっちかが人間なら全ての種族と子供を作れるのだ、人間は。ある意味これが種族特性なのかもしれない。ゴブリンかな?
そんな人間は、当然として自身が弱い事をよく知っている。故に、それを補う為に色んなモノを開発してきた。
人類最初の回復ポーションを作ったのも人間だし、武器に補助効果を付けたのも人間だ。魔法に頼らず日持ちのする飯を作ったのも人間で、新しい建築法や新しい鍛冶技術や新しい服飾技術を考案してきたのも大概人間である。
その中には勿論、人間の為の便利アイテムがあるのだ。
代表的なのが、肉体を各種状況に適応できるようにしてくれるポーションだ。
グーラ探索中、俺が服用した暗視ポーションなど、夜目が利く淫魔には不要だろう。グーラ探索前、俺が服用した不眠ポーションなど、三日三晩戦う事のできる竜族には不要だろう。
他にも色々あるが、ともかく人間とはこういう道具を使ってこの厳しい異世界で繁栄したのである。実際、噂によると世界の端っこはかなり修羅の国らしいし。
適応ポーションは便利である。
けど、便利なものには相応のデメリットが存在するものだ。
金がかかる、というのが一番だが、まぁ他にもあるのだ。
あと、あんまり美味しくない。
時はギリ夜。ラザニアパワーで森を駆け抜けた街道のその先には、高く頑丈そうな壁に囲まれた街があった。
ギロチンタイプの門も相応に大きく、侵入者の存在を許さないとばかりに堅く閉ざされていた。閉じた門の前には、開門を待つ人たちが屯っていた。見た感じ、商人風の人とその護衛が大半だ。
何気に、王都以外の街を初めて見たと思う。王都を発つ前はとにかく急いでたから、こういう観光資源になりそうなデカい壁自体に関心を向ける余裕がなかったんだよな。ボキャ貧な俺は、どうしても進撃の巨人みたいだぁと思ってしまう。
「あれがカトリア家が治める、第三迷宮都市ヴィンスです。開門は朝なので、しばらく待つ必要がありますね」
「凄いですね」
「ええ。外壁の一部には迷宮産の鉱石を使用しており、実際に30年前に出現した主級の魔物の攻撃を耐え抜きました。とても堅固な造りで、都市内の安全は保たれています」
「なるほど」
「王都の様な大規模な娯楽施設などはありませんが、民には活気があります。冒険者も優秀な方々が揃っています。ですが、最近は彼らも王都に流れていく事が多く、この街に根付いて下さる方は少ないです……」
「悪いのは領主ではありません」
「そう言って頂けると幸いです。今回の件を反省し、以後は今以上に街の発展に貢献していく所存です。民のおね……貴族として!」
「凄いですね」
「はい。ですので、モブノの件は……」
道中、手足を復活させたエレークトラさんは不自然なほど俺に積極的に話しかけてきた。
恐らく、一応高位冒険者である俺に街のプレゼンをしたいのではないだろうか。以前書籍で読んだところによると、迷宮ある街からすると強い冒険者なんてナンボおってもええですからねと書いてあったし。
正直、俺はロリと話したかったので、相づちもそこそこにルクスリリア達の様子を見ていた。
「なるほど、その熱っぽい魔力とパチパチした魔力は種族特性なのね……」
「は、はい。あの、ボクも詳しくはないんですけど、父さんは
「ッスよね~。確かに、ハーフだとどっちかの特性しか受け継がないッスからね~。いいな~、アタシも淫魔と何かの混合魔族になりたかったッス~」
「な、何でですか……?」
「え? 何かそっちのがカッコよくないッスか? 淫魔と牛魔が合わさり最強に見えるッスよ!」
「そう、でしょうか……?」
「こういう娘よ、気にしちゃダメ」
「はあ」
三人はラザニアに乗ってお喋りしていた。ルクスリリアとエリーゼでグーラを挟んでる状態だ。うーん、何かとてもいい。壁になりたい。
ちなみに、ラザニアの体には西部劇のアレみたいにモブノと内通者ジジイを括りつけているので、今も彼らをズリズリ引きずっている。この程度じゃ冒険者は死なないのだ。
「なにより、モブノを捕らえる事ができたのはイシグロ様のお陰です。カトリア領を預かる家の娘として、彼奴は不倶戴天の敵でした。是非、お礼をさせて頂きたいのですが……」
「結構です。ギルドからの報奨金と、その証言で十分です」
「そ、そうでしたか……」
この世界の貴族価値観と、この世界の貴族事情は知っている。誉れは大事だし、貴族にこういう事言っても大丈夫なのも承知している。なので、俺は面倒事は一括でNGを出す事にした。面倒事は御免である。
ていうか、手足斬り飛ばしてきた奴相手によくここまで話しようとできるな。貴族っていうのは俺が思ってる以上に肝が据わっているのかもしれない。今になって、この状況に罪悪感湧いてきた。いや、手足切ったのには全く罪悪感はないが。合法チェストにごわす。
「月夜に失礼。イシグロ・リキタカ様でお間違いないでしょうか」
「はい。朝が待ち遠しいですね」
門前の待機エリアまで行くと、そこには一人の
彼は腰にメッセンジャーバッグみたいなのを身に着けていて、その中から数枚の紙を出して手渡してきた。
「こちら、主様からの手紙です。お受け取りください」
「はい」
簡素な手紙には、クリシュトーさんが王都で調べてくれた事が書いてあった。中には「モブノという危険人物の関与が疑われる」みたいな情報もあった。そいつ今、失われたゴールデンボールに不能札貼られて引きずられてるんスよ。
二枚目、三枚目は俺から誰かに渡す用の手紙だった。調べた事、依頼の事がまとめられている。要するに、何かあっても偉い人か話の分かる人にこれを渡せば大丈夫って話だな。
「エレークトラさん、こちらをお読み頂けますか?」
「はい。これは……」
なのでエレークトラさんにパスである。
手紙を読んで顔色を悪くしているエレークトラさんを他所に、俺はペガサスニキと事態について話す事にした。
「どうやら、商品は上手く保護できた様ですね」
「はい。色々ありましたが、何とか」
「かしこまりました。それと、あちらにいるのは……?」
「モブノと名乗っていました。事実確認はまだですが」
「なるほど、そうでしたか。これも主様に伝えましょう」
それから、今回の件で起きた事を口頭で伝えた。その後、ペガサスさんはエレークトラさんとその一党にもインタビューした。
ペガサスさんは聞き取った情報を細かくメモして、それをバッグにしまった。
「承知いたしました。この旨、主様にお伝え致します」
「よろしくお願いします」
「それから、これを……」
言って、ペガサスさんは俺の手に手紙を握らせた。
「話は通していますので、翌朝この街の支部にお立ち寄りください。それでは、私はこれで……」
そう言うと、ペガサスさんは街道を走っていき、やがて離陸した。
なんとなく他人に見られないように手紙を開けると、そこには……。
「追加依頼、グーラの護送か」
読み終えると、俺は少しばかり安心する心地がした。それから、クリシュトーさんの計らいに感謝した。
流石に、うん……流石に俺もその気はない。ないが、けどやっぱり思うところはあるのだ。このまま、グーラを商会に預けるのは不安だし、なんか嫌だ。
さすが、クリシュトーさんである。いや、わかっているけどね。
「テント張ろう」
という訳で、俺は門の前でゆるキャンをする事にした。
そう長く休む訳ではないだろうが、どうせなら屋根はほしいだろう。
〇
クリシュトーさんからの手紙によると、今回の黒幕は“パース商会”という人等であるという。
パース商会とは、クリシュトーさんの所属しているストゥア商会ほどではないにしろ、まぁまぁそれなりに大きな商会であるようで、尚且つ黒い噂が絶えないらしい。拠点はカトリア領だが、王都にもいくつか支部を持っているとか。
理由も経緯も不明だが、その彼らが何処かしらから情報を得て、モブノと契約して事件を起こしたと。まあ、実際動機なんてどうでもいい。なんなら事実かどうかもどうでもいい。
現在、王都西区ではストゥア商会とパース商会が静かに抗争中。まるでヤクザ映画の様である。クリシュトーさんは護衛に守られながら筆を振るって戦っているそうな。
なので、パース商会の拠点であるカトリア領内の護衛もよろしくという依頼を俺に投げてくれたのだ。俺からすると、とても有難い申し出である。
実際、商会の人らに任せるより俺の近くにいる方が安全ではあると思う。
まだ商会の荒事担当を見てはいないが、流石に俺やルクスリリアやエリーゼほどステの高い人はいないだろう。例え元でも銀細工冒険者は、雇うのに金がかかるのだ。
故に、俺が守護る。
「それじゃあよろしくお願いします」
「承りました。我が家名に誓って」
という訳で、事の中心にいながら蚊帳の外である俺は、実行犯の片割れのジジイをエレークトラさんに引き渡し――貴族権限で門を開けてもらう事はできないようである――、俺の一党+グーラと彼女の一党は門が開くまで離れて待機する事になった。
残るモブノは朝までラザニアにお任せである。いくら元銀細工持ちでも、武装と手足と目と鼻と耳と舌と金玉を失った状態でクソデカヘラジカには勝てないだろう。
「リリィ、そっち持ってて」
「あい~ッス」
「これは、ここでいいのよね……?」
「合ってる合ってる。そのまま……」
という訳で、俺はアイテムボックスから自慢の最高級テントを取り出し、三人で協力して設営した。
この高級テントは以前ルクスリリアと巨像迷宮で使ったモノと違い、いくつかの補助効果を付与してある魔法のテントだ。
見た目は前世地球でいうデカいA型テントといった感じ。支柱も幕も魔法が施されているので、恐らく地球のより頑丈だ。何より設営がとても楽だ。ファンタジー舐めんな地球である。
「す、すごい……」
そうして組み立てたテントに入ると、グーラはその内装に感嘆の声を上げた。
俺も思う、このテントは実際凄い。天井には照明魔道具を吊るしてあるのでテント内は仄かに明るく、下にはダンジョン産の毛皮を使った絨毯が敷いてあるのでふかふかだ。
おまけにテント自体にかけられた補助効果のお陰で防風防寒防暑がされてるので非常に快適だ。それに、これは一党六人用なのでとても広い。
無論、サイズ相応に値段も重量もなかなかだが、それはそれである。俺にはアイテムボックスがあるし、武器に比べると安いからそこまででもない。なにより、ルクスリリアたちと快適なキャンプができるようになるのだから実質無料である。
「まぁ適当に座って」
「は、はい……ありがとうございます」
テントの中、四人でトランプでもするかのようにして座る。
それから、俺たちは改めてグーラと挨拶し、色んな話をした。どこそこ出身で、どんな事してたとか。
俺が日本という国出身の異世界人である事を言うと、グーラは「はあ」と何言ってんだコイツ顔を返してきた。うん、これが普通だと思う。
「え!? エリーゼ様ってヴィーカ様の孫娘なんですか……!?」
「ええ、そうよ」
「ちなみに、アタシは勇者アレクシオスの子孫ッスよ~」
「すごい……! 皆さんとても尊い血を継いでるんですね……!」
「淫魔は大体そうよ。珍しくはないわ」
「それでも、獣拳記の英雄たちの血が続いてるのを知ると、なんだか感動です……!」
「獣拳記? なんスかソレ?」
「え? 知らないんですかっ?」
「英傑イライジャの生涯を記した英雄譚よ。私も古式のモノを一度読んだきりだけれど、内容は覚えているわ……」
「読んだ事あるんですね! 感動です……!」
「え、えぇ……」
と、女子三人集まればうんたらかんたらは異世界でもそうだったらしく、いつの間にか俺は話の外に追いやられてしまった。
だが、それでいい。俺は女の子同士が仲良くしてるのを見ると健康になる生態をしているのだ。
ぐぅ~。
するとその時、グーラのお腹から盛大な空腹音声が流れ始めた。
そういえば、グーラは馬車襲撃以降逃げ通しで何も食べていないんだったな。
「保存食ならあるけど、食べる?」
「い、いえ! 空腹には慣れてるので……!」
なんか悲しい事を返された。しかもマジでそうっぽいのが心に来る。
なので、俺はアイテムボックスからありったけの保存食を放出する事にした。
「そういや、長期戦になるかもって店で買いこんでたッスよね、ご主人」
「そうだったわね。ダメになる前に食べないといけないわ……」
「え? え? え?」
困惑するグーラを置いて、俺たち三人は率先してそれぞれ好きな物を食べ始めた。
まるでパジャマパーティの様である。俺たちの真ん中には大皿に盛られた大量の食べ物。チーズに燻製に堅パンモドキ。中には保存魔法のかかった淫魔牛乳なんてのもある。
俺とルクスリリアは淫魔チーズを、エリーゼはドライフルーツを手に取った。グーラはまごまごしている。
「グーラも好きなの食べていいよ」
「そ、そんな! 私、食べ物を恵んで頂ける程の働きは……」
「あー、もうそういうのいいッスから! オラ! 淫魔チーズ食え!」
「もごぉ!?」
開いた口におつまみサイズの淫魔チーズを突っ込まれたグーラは、少しの抵抗の後に固まってしまった。
どうしたのかと思って見ていると、グーラは口に入れられたチーズをゆっくりもぐもぐ咀嚼し、嚥下した。
それから、陶然とした面持ちで呟いた。
「美味し過ぎます……」
「でっしょ~」
グーラの率直な感想に、ルクスリリアは上機嫌そうだ。
それから、グーラにはひとつひとつ各々の好物を試食させた。その度に彼女は静かに、けれど感情の籠った「美味しい」を言った。
「こんな、こんな美味しい物、この世界にあったんですね……!」
曰く、ド田舎村育ちのグーラにとって、ご馳走と言えば父が狩ってくる獣の肉か、あるいは森に自生している野イチゴみたいな果実だったらしい。
そんなグーラからすると、農業に特化した
「まだ残ってるから、どんどん食べていいよ」
「ありが、ありがとうございます……!」
加えて、グーラはこれまで慢性的に空腹を感じていたそうである。ルクスリリア曰く、グーラは種族上もっと多くの魔力を吸収するか、多くの食事をするかしないといけなかったとか。
だから大きくなれなかったのだと、背の低いルクスリリアは言った。その胸は平坦であった。
「え? じゃあ、ボク、いっぱい食べたら大きくなれるんですか……?」
「いやー、それは無理ッスね。アタシと同じで、もう大きくなるタイミング過ぎちゃってるッスよ」
との事。グーラはこれ以上大きくならないのだ。
いっぱい食べるロリの姿は最高である。エゴだが、できればそのままでいてほしい。
「アナタ、
「少しだけな。はい」
「ありがとう。ルクスリリアは?」
「アタシももらうッス。ご主人は飲まないんスか?」
「一応護衛してるからね、人間は酒に弱いから。グーラはどうする?」
「え? お酒ですか? の、飲んだ事ないです……」
「あれ? 飲んだ事ないんスか? 飲酒処女ッスか?」
「しょ? あ、はい。父さんも飲んでなかったので、どんなものかも良く分かりません……」
「そう……。いい機会だし、少し飲んでみてはどうかしら?」
「え? でも……」
「注いであげるわ」
言うなり、エリーゼは返事も聞かずにグーラのコップに酒を注いだ。
「あ、ありがとうございます……」
酒に強いエリーゼである。酔ってる訳ではなく、アレはあえてやってるんだな。多分だが、多少強引に行った方がいいのだ。
やがて勢いに乗せられるように、グーラは酒の入ったコップを傾けた。
「んっ、ふぅ……あ、美味しい……」
「ふふっ、でしょう?」
率直なグーラの感想に、エリーゼも上機嫌そうだ。
ルクスリリアもエリーゼも、なんかグーラをかわいがって遊んでるみたいな雰囲気である、まぁ悪い感じはない。
「まぁお酒は程々にね」
俺の忠告もそっちのけで、女子三人はその後もキャイキャイと騒いだ。
一応、このテントには防音機能もあるので声は漏れてないと思いたいが……。
まあ、外にはラザニアがいるから大丈夫だろう。
「すぅ……すぅ……」
しばらくすると、グーラは座った状態のまま、気を失うように眠ってしまった。
怒涛の一日、美食の衝撃、初の飲酒で疲れたのだろう。俺は彼女を寝かせると、上から毛布をかけた。
「寝ちゃったッスね」
「子供だもの、仕方ないわ」
と、見た目子供二人が会話している。とても愛らしい。
「二人も眠かったら寝ていいよ。俺は番してるからさ」
実は俺、出発前に服用した不眠ポーションの影響で全く眠くないのである。
なので寝ずの番を申し出たのだが、我が愛しの奴隷たちは二人して顔を見合わせると、やおら俺にしなだれかかってきた。
「そういえば~♡ 今日の分の吸精がまだッスよね~♡ いっぱい頑張ったんだし、ご褒美ほしいッス~♡」
「それもあるけれど、今宵のアナタはよく戦い抜いたわ。だから、私からはご褒美をあげるわ……♡」
そうやって迫る二人に、俺は応える以外の選択肢がなかった。
あ、でもノリで言いたい事がある。
「でもグーラいるし、外には冒険者も……」
「音立てなきゃいいんスよ♡」
「そうよ。それに、アナタのここは正直みたいだけれど……?」
まぁテンプレである。
俺は三人に、最も使い慣れた魔法である“清潔”をかけた。
それから、テントの照明をオフにした。
〇
「ん……」
ピクリと耳が揺れる。僅かな物音を感知して、グーラはぼんやり目を覚ました。
ゆっくりと、状況を認識していく。過去と現在を仮縫いして、五感の情報から自分の今を把握する。
テントの照明は落とされ、辺りは暗くなっていた。けれど、夜目の利くグーラには問題なく見える明るさだった。
目だけを動かし、物音の方を見る。
そして、グーラはそれを見た。
否、グーラの鋭敏な五感全てが、テント内でのソレを認識したのだ。
僅かな水音。押し殺されて籠った声。謎の匂い。
あえて何とは描写しないが、要するにアレの真っ最中を目撃したのである。
それを見て、グーラは……。
(三人とも、何してるんだろう……?)
よく分かっていなかった。
ある意味、仕方のない事である。父はいるが母のいない家庭で育ち、且つ友達もいないグーラは男女のアレコレには極めて無知だった。
彼女のソレ関係の知識など、せいぜい獣拳記にて描かれたほんのちょっぴりのラブコメ要素程度であり、その他書籍でも幸か不幸かそういう情報を目にする事はなかったのである。
森に出た事も少ないので、動物同士のも見た事がなかった。
父は亡き母に操を立てていたので、ばったり夜のレスリング現場に居合わせた事もなかった。
村の隠れスポットでズポッとしてた若い男女も、家にいがちだったので見た事がなかった。
そんなグーラは、テント内の三人が何をやってるのかを全く理解できなかった。
そのうち、「寒いのかな?」みたいな事を考えていた。
しばらく見ていると、事の真っ最中である赤い双眸と目が合った。淫魔のルクスリリア先輩である。
視線が合うと、彼女の目が三日月に歪み、唇の前で人差し指を立てた。これは知っている。父がたまにやっていた、「静かに」のサインだ。
頷くと、素直なグーラは、ルクスリリアの指示に従った。
それから、ルクスリリアはまた三人で謎の行動を開始した。
その姿を、グーラはじっと眺めていた。
何をやってるのかは分からないが、皆必死になっていて、楽しそうだ。
イシグロからも、ルクスリリアからも、エリーゼからも、嫌な感じの匂いがしなかった。
そして何より、幸せそうであった。
グーラは思う。
ルクスリリアは、良い人だ。口下手な自分にアレコレと話しかけてくれるし、一緒にいると明るい気持ちにしてくれる。
エリーゼも、良い人だ。最初は竜族と知って怖くなってしまったが、引っ込み思案な自分をリードしてくれる優しいお姉さんだ。
イシグロという男も、多分良い人だ。沢山食べ物をくれたし、自分に生きてほしいと言ってくれた。こんな自分を肯定してくれた。
まだ不安だし、怖いし、全然心を開いているとかではないが……。
昔、皆から除け者にされた記憶が過って、自分から何かを言う勇気はでないけど……。
楽しそうに、仲良くしている三人に、いつか自分も混ざりたいなと思った。
感想投げてくれると喜びます。
現在、本作に登場するキャラクターを募集しています。
興味のある方は是非、お気軽にご応募下さい。
詳しくは活動報告にて。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=296177&uid=59551
これも投げてくれると喜びます。
一応、捕捉しておくと、エレークトラがイシグロに話しかけていたのは、別に色恋云々ではありません。
貴族の責務からくる行動です。イシグロの推理は半分間違いで、半分正解です。
当然ですが、主人公の考えてる事は必ずしもその通りではありません。
実際、主人公は前話まで自分の事を普通の人だと思っていました。