【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。励みになってます。
 誤字報告も感謝です。推敲甘いのは仕様です。すみません。

 キャラのご応募もありがとうございます。いい感じにやる気に繋がっています。
 そろそろ次の企画をはじめたいと思ってます。まぁこっちはそんなに数集まるとは思いませんが……。

 今回は主人公の心境と、ロリ同士のお話回。
 後者は三人称です。

 我ながら、ちょっとズルい書き方をしています。


ロリとはじめての女子会

 翌朝、俺たちはエレークトラさんの一党と共に迷宮都市ヴィンスに入った。

 

 俺の一党は俺を先頭にグーラを囲んだトライフォース陣形で歩いた。一応この街は黒幕と思しきパース商会のおひざ元なので、グーラを守れるようにしているのだ。エレークトラさんの一党は皆バラバラで、トンファー少女なんかはいつの間にか買っていたフルーツを食べていた。

 ちなみに、ラザニアを街で歩かせる訳にはいかないので、モブノと爺さんは最も戦闘力の低いスキスキンさんに引きずってもらっている。とてもマッポーな光景だが、流石は異世界人といった感じで皆さんそこまで気にしてなかった。「あら、指名手配犯かしら?」「誰かは知らないけど、捕まって良かったわねー」みたいな会話が聞こえてきた。

 

「なんか、王都とは雰囲気違うな」

「そりゃ、王都は人類最大の都市ッスもん。あそこと比べるのは大間違いッス」

「そうなんだ」

 

 同じ異世界でも、ヴィンスの街並みは西区とは少し違っていた。あちらが石メインの建物が多いのに対し、こちらは木が多めに使われている。建物も三階建てがせいぜいで、四階建て五階建てが普通にあった西区よりも空が広々としている気がした。

 エレークトラさんの言っていた通り人々には活気があり、けれども西区よりは大人しい感じがする。というか、粗野な感じがないのだ。各種店舗の作りも異なり、西区よりも飲食店が少なく食材屋が多い印象で、どこか昔ながらの商店街といった感じがする。

 

「こちらが、通称“迷宮通り”です。この道を真っすぐ行って曲がったところに、転移神殿があります」

「なるほど、凄いですね」

 

 道行く人や屋台のおっちゃんなどはエレークトラさんに挨拶し、次いで俺やルクスリリアを見ては訝しげな目をしていた。

 怖がってるというより、お客さんかな? みたいな視線だ。王都では感じない類の目である。

 余所余所しさはあるが、剣呑な感じはない。これは領主の娘と一緒だからだろうか。彼ら、俺の所業を知ったらキレそうである。

 

「いい街ですね」

「でしょう? この街は三百年前に……」

 

 正直、雰囲気的には王都よりもこっちのが好みだ。あっちが東京都新宿区歌舞伎町だとしたら、こっちは地方都市の商店街である。

 煌びやかさはないが、活気はある。街並みもこっちのがRPGっぽいし、なんか安心する。

 けど、住みたいとは思わなかった。

 

「……乞食が多いですね」

 

 通りの隙間を覗くと、そこには汚れた人間が座り込んでいる姿が見えた。

 思えば、俺は日本人視点治安の悪い王都西区で乞食を見る機会がなかったように思う。探せばいるのだろうが、俺の行動範囲内では見たことが無い。

 しかし、この街には普通にいた。煤か何かに塗れた男がいれば、通りを爆走している汚い少年もいる。幸いロリはいないが、それでもちょっと衝撃だった。

 

「由々しき事ですが、そこまでは手が回り切らず……。それに、王都には“止まり木協会”がありますから……」

「協会ですか?」

「はい」

 

 初めて聞くワードに、俺は首をかしげた。

 エレークトラさん曰く、“止まり木協会”とはとある上森人(ハイエルフ)の金細工持ち冒険者が築いた孤児救済組織であり、そこでは恵まれない子供や捨てられた子供が保護されているのだとか。

 目的は、先述の通り孤児の救済。保護された子供は、簡素ながら衣食住を提供され、ちょっとした仕事の斡旋をされるらしい。見込みのある子どもは高等な教育を受ける事ができ、中には商人や貴族の養子になる例もあったとか。一応国の援助を受けてはいるようだが、その運営費の殆どは創設者のポケットマネーと、志を同じくする同盟の金で賄われているらしい。

 本部は王都中央区にあり、それぞれ支部が四つ。それらの施設が各区にいくつか。見た事はないが、もしかしたら視界に入ってたかもしれないくらいには大きい組織であるようだ。

 

「確か、その冒険者の名は……」

「“翡翠魔弓”のアリエルだよ。金髪の上森人で、すっげぇ綺麗な髪してんだぜ! 顔もめっちゃ良くてな、目もすっげぇ綺麗なんだ!」

 

 そこに、鬼人少年ラフィが割り込んできた。

 彼はそのアリエルさんとは顔見知りらしく、語り口からして美女エルフなのだろう。彼女の事を話す表情は親しい者へのソレ……というか、がっつり鼻の下を伸ばしていた。

 

「アリエルさんとは、どういった方なのですか?」

 

 大体わかった。協会とは、要するに前世地球のアレとかコレとかソレとかに似た組織なのだろう。あるいは、ハイファンタジー系の作品でたまに見るアレとかコレとかソレとかだ。

 国の援助を受けているとの話ではあったが、それでも設立を自費でやるなんて大したものである。金細工だというし、強くて美人で高潔なんて凄いわね、キライジャナイワ。

 

「えーっと、すっげぇ美人で! すっげぇ髪綺麗で! すっげぇ強ぇ!」

「そうですか」

「あと、とにかく“子供第一”だな! 前会った時なんか、街中でガキ蹴ってた冒険者殺したんだよ。こう、短剣で! いやー、流石のオレもあれにゃビビッたね! だっていきなり、しかも無表情で殺ってたんだぜ? 戦ってる時のイシグロみたいだったな!」

「そ、そうですか」

 

 なんとなく、分かった気がした。多分、アリエルさんは近くて違う俺の同類モドキだ。もし蹴られてたのがロリだったら、俺も何かしらアクション起こしてただろうが、ショタだったら100パー無視した。

 それに、俺は別に子供第一って訳ではないしな。

 

 俺は極めて俗なロリコンであり、グーラにしたように可哀想なロリは全力で助けたいと思う。けれども、あまねく全てのロリを救いたいとか、一人でも可哀想なロリを減らそうと活動する気は全然ない。

 そもそも、奴隷を購入してる時点である程度の線引きはしているのだ。美少女か、否かである。実際、ルクスリリア購入前に見た大衆向け奴隷市場で売られてたロリ奴隷には、何かをしようとは思わなかったのだ。

 

 確かに、目の前でロリが蹴られてたり、手の届く範囲のロリの命が危ないとなったら、ついカッとなって助けにいくだろう。

 だが、それだけだ。グーラ級美少女ならともかく、そうでもないならそれじゃあバイバイとクールに去るだろう。後の事に想像を膨らませる事もなく。

 

「あ、そっか……」

「どしたッスか? ご主人?」

「いや、なんでもない」

 

 ここにきて、俺は近頃の俺の変質に気が付いた。

 思えば、俺のロリコンは日本からのモノだが、俺のロリコン的戦闘動機は異世界からのモノであった。

 要するに、手が大きくなったのだ。戦闘力、ステータス、チートの存在により、俺は俺の手の届く範囲が広くなって、けれども視点は前のまま。だから、前の手の感覚で顔見知りでもないロリのグーラの命を助けようとした。命賭けで。 

 

 前世、俺は普通のロリコンだった。世にあるロリコンテンツで欲望を満たし、法が許さないから犯罪をしてなかっただけの一般人。だからこそ、異世界で弾けた。

 俺は決して善人ではない。所有欲と独占欲に塗れたクズで、ロリの為なら命を賭けられるヤバい奴だ。異世界に来てから、これを自覚した。

 ほんと、クソな奴だね、俺は。そんな自分が嫌いじゃないし、今の環境も気に入ってる。

 

 ルクスリリアを見る。俺が最初に購入した、第一の奴隷を。

 それから、やっぱり思う。買って良かった。異世界来て良かった。出会えて良かった、と。

 

 ふぅと、ひと息。

 

 そう、改めて自身の性根を思い知り、俺は……。

 

「それでも、立派な方なんですね。アリエルさんは」

「ま、高位冒険者にしちゃ優しいのは確かだな。おっかねぇけど……」

 

 特に顧みる事はないなと思った。

 俺のスタンスは変わらない。奴隷制度は享受するし、ガチになるのは美少女限定で、遠くの悲劇には関わらない。

 場に居合わせたらカッとなるかもだが、長い目で見て動く気なんてサラサラないし、ロリを救う事で自己実現はできない。

 俺がいいなら、彼女等がいいなら、それでいいじゃん。そう思う。

 

「その協会は、同盟者以外からの寄付は募っていますか?」

「あ? まぁ多分な。そんな物好きいねーけど、イシグロはその気なのか?」

「微力ながら、そのつもりです」

 

 高尚な理念もないし、確固たる信念もない。クズだしゲスだしヤバい奴の自覚も最近した。

 そんなんだけど、少しくらい協会を応援しようと思った。

 偽善で結構、そういうのどうでもいいんで。

 

 人生、気持ち良い方にベットするのが一等良い。それだけである。

 

 

 

 

 

 

 それから俺たちは、まずギルドに行ってモブノを引き渡し、色んな書類を書いたり提出したりした。

 取り調べは後という事だったので、俺の一党は一旦退出してストゥア商会に行き、グーラ関連で色々やった。

 支部長にクリシュトーさんからの手紙を渡すと、グーラの護送は正式に俺が引き継ぐ事になった。出発は早い方がいい。さっさと報奨金もらって、下山するぜ。

 

 が、転移神殿に戻った俺を待っていたのは、取り調べという地獄だった。

 嘘を見抜く能力を持つという人の前で事実確認をされ、それはグーラとついてきたストゥア商会支部長にも及んだ。

 その時間はとても長く、午前から始まってお昼休憩なんかも挟んでまだ続いた。ルクスリリアとエリーゼは俺のアイテムボックス内にあった本を読み始める始末だ。

 

「揃っておるな、失礼する!」

「お待ちくださいお父様! まだ皆さんにはお伝えできてません!」

 

 そして、奴が来た。

 

「君がイシグロ・リキタカか! この度は娘が迷惑をかけた! この通り! 許されよ!」

「あ、いやそんな! 自分の方も荒っぽ過ぎ……」

「否! それもこれも弱い娘が全て悪い! 勝者がそのような態度を取るものではないぞ、リキタカ殿!」

「えぇ……!?」

 

 エレークトラさんの一党は既に終えているとの事だったが、さてそろそろ終わりかなという所にエレークトラ&エレークトラパパがエントリー。

 娘と同じ赤毛を持つエレークトラパパは、如何にもラリス貴族といった筋肉おじさんだった。彼は領主権限でギルド長やら当日勤務の職員やらを呼び出して伯爵流マッスル尋問を開始したのである。

 尋問の末、怒り狂った伯爵は強権を発動して件のパース商会の長を呼び出した。

 

「よし! 乗り込むぞエレークトラ! 名誉挽回の時だ! 気合を入れよ!」

「は、はいぃ……!」

 

 そうして、招集に応じなかったパース商会にしびれを切らした御領主様は。何か物騒な事を言い放って転移神殿を出ていった。すごい迫力だった。

 嵐の様な人だった。ギルド長、職員、ストゥア商会の支部長、あと俺たちはポツンとその場に残されてしまった。

 多分、異世界流の統治法が始まるんだろう。やはり、ラリスの貴族は極道である。

 

「もう帰っていいですか?」

「どうぞ……」

 

 結局、俺たちが解放されたのは夜になってからだった。

 この頃になると、服用した不眠ポーションの効果が切れていて、俺は眠くて仕方がなくなっていた。ご飯は転移神殿内のバーで軽く済ませ、今日はもう寝ようぜである。

 気持ち的には早めに西区に帰りたかったが、流石にこの状態で戻るのは色々と拙いだろうとの事で、俺たちはウィードさんおすすめのセキュリティーがしっかりした宿屋に泊まる事にした。

 

「普通、銀細工持ちはこれくらいの宿屋に住むもんですぜ?」

 

 とはウィードさんの談。

 そんな彼とはこの場でバイバイだ。報酬を手渡すと、機嫌よく振られた尻尾はヴィンスの街に消えていった。

 

「宿屋か……」

 

 道中、眠い頭で考える。

 確かに、稼ぎ的には今の宿屋よりもっと良いトコに住む事は可能である。

 これまでは俺とルクスリリアとエリーゼの三人でちょっと広めのワンルームみたいな部屋に住んでたが、グーラが来て四人となればいくら三人がロリでも手狭な気がする。

 引っ越し、考えとこう。

 

「はぁ~! 凄い部屋ッスね~!」

「確かに、人間の宿にしては上等ね」

「は、入って良いんでしょうか……?」

 

 通されたのは、広々としたホテルめいた部屋だった。

 宿泊人数に対して妙に椅子やソファの数が多く、照明魔道具もデザインがおしゃれである。床には絨毯が敷いてあり、壁も傷ひとつなく綺麗だった。あと、なんかマ・クベが喜びそうな壺が置いてあった。

 寝室は人数分あり、聞いた話によると、ここには部屋付きのお風呂があるらしい。入るのが楽しみである。

 

「リリィ、お風呂入ろう」

 

 ポーション切れでぼんやりしていた俺は、いつもの様にルクスリリアを風呂に誘った。

 しかし、いつもならすぐ乗ってくれるはずのルクスリリアは、隣にいたグーラを抱きしめて否を示した。

 

「きひひっ、今日はアタシたち三人で入るんで、ご主人はまた今度ッスよ~」

「え?」

 

 唖然としていると、エリーゼはすたすたとお風呂に向かって行った。

 

「そういう事よ」

「えっ……? い、いいんですかそんなの……!?」

 

 それから、三人は揃って風呂場に入った。俺、主人、二番風呂……。

 ルクスリリア購入からこれまで、ずっと一緒に風呂に入ってきたものだから、俺は俺で微妙にショックを受けていた。

 いや、奴隷の癖に増長するな! とかそういう事を言いたいのではなく、ただただロリとのお風呂タイムの除け者にされたのがショックだったのだ。

 俺、グーラにNTR食らった……? 俺はNTRモノが嫌いだ……。

 

「お先~ッス」

「なかなか広かったわね……」

「申し訳ありません、申し訳ありません……!」

 

 しばらくして、三人が風呂から上がってきた。ほかほかしていた。目の保養になる。

 

「淫魔牛乳置いとくね」

「あざーッス!」

 

 結局、俺は一人風呂に入った。一人の入浴など、いつぶりだろうか。

 

「今夜は私達三人で眠るから。アナタはあっちの寝室ね」

「お、おう……」

 

 風呂を出ると、寝室から出てきたエリーゼからそう言われてしまった。

 流石に今グーラに手を出す気はないが、それはそれとして二人は俺と寝るものと思っていたので、これまたショックである。

 よほど物欲しそうな顔をしていたのか、言葉の後にエリーゼは軽いキスをしてくれた。

 

 ぱたん、と閉じられた扉の先では、一つのベッドに美少女三人が乗っかっていた。

 幸せの光景である。

 

「……寝よう」

 

 こうなったら仕方ない。俺は一人で別の寝室に入った。

 襲撃とかあると怖いので、一応すぐ近くに無銘を立てかけておくのを忘れない。

 それから、怠い身体をベッドに沈めた。

 

「一人寝なんていつぶりだろう……」

 

 思えば、俺はこれまでそれなりの時間を二人とベッタリで過ごしていた。

 寝食を共にし、身体を洗い合い、迷宮では一党を組んで戦った。

 ここ最近の俺にとって、二人と離れる事は非日常になっていたのである。

 

 非日常といえば、昨日は本当に色々とあった。

 

 夜、クリシュトーさんが現れ、馬車襲撃の報を知り、居ても立っても居られずカッとなって飛び出した。

 森では生まれて初めてグロ死体を発見し、初めて冒険者と戦い、初めて人の身体を斬った。

 前世でも、異世界でも、完全に非日常である。

 

 こういう時……戦いが一段落した時というのは、アニメとか漫画なら大体主人公の心境描写が入るものだ。

 初めての戦いがフラッシュバックして寝れないとか。人を斬った感触が手から離れないとか。気が昂って仕方ないとか……。

 

「そうでもないな……」

 

 なのだが、今の俺にはそういう感傷はなかった。

 初の対人戦も、まぁ迷宮でヒトガタモンスターと戦う感じと似てたし。人斬るのもソレと同じだった。戦いの後に眠れないなんてのは、異世界に来てから一度もない。ずっと快眠だ。

 まあ、現実はそんなもんだろうと思う。俺は、俺。他所は他所である。そんな奴もいるだろう。

 

「これ、どうしよう……?」

 

 懊悩しないのは都合がいい。ちゃんと眠いのはよろしいが、それはそれとして困った事があった。

 戦闘後の昂り、これは確かにあったのだ。

 股間の方だが……。

 

 これも異世界に来てからの変化の一つだ。

 前世、俺はここまで絶倫じゃなかった。一体なにがどうしてこうなったのかは分からないが、俺の股間のロックバスターは今宵も点滅状態だった。

 眠いというのに、疲れているというのに、ベッドに入るとすぐ臨戦態勢()ちやがる……。

 

「寝よう……」

 

 が、今になってクリスタルボーイ化する気にはなれなかった。

 俺は努めて股間の昂りを無視しつつ、眠る事にした。

 

 早く治まるよう、ボーボボの事など考えながら……。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、ルクスリリアたちは……。

 

「い、良いんでしょうか、ボクがこのようなベッドを使って……」

「いいんスよ。ご主人、そういう人じゃないッスもん」

「そ、それに……ご主人様よりも先に湯浴みをするなど……」

「まあ、普段は一緒に入ってるわね……」

「洗いっこしてるッスよ~」

「洗いっこ……!?」

 

 ベッドの上、淫魔と竜族と混合魔族のロリ三人は、寝っ転がりながら真夜中のお喋りをしていた。

 部屋に灯りはない。真っ暗だ。けれどこの中に夜目の利かない種族はいないので、お互いの顔から表情までしっかりと見えていた。

 ベッドの並び順は、右からルクスリリア、エリーゼ、グーラである。

 

「とても、信頼なさっているのですね、イシグロ様の事を……」

「ん、そッスね~」

「奴隷と主人ではあるけれど、決してそれだけの関係ではないと思っているわ……」

 

 それから、三人は色んな事を話した。

 テントでの会話の続きである。何気にルクスリリアもエリーゼもグーラ同様友達のいない身だったので、こういった事には飢えていたのだ。

 それも、相手が新しい奴隷仲間(かぞく)候補ならば、親睦を深めるのは無意味ではないだろう。

 

「二人は、普段はご主人様と寝ているんですか?」

「そうよ」

 

 グーラからの問いに、エリーゼはこともなげに答えた。

 その隣で、ルクスリリアは如何にもメスガキらしい笑みを浮かべていた。

 

「きひひっ、毎日寝てるし、毎日仲良くやってるッスよ~。グーラも見たッスよね、昨夜♡」

「はい。途中からですけど」

「あら、見ていたのね……」

 

 ん? と、ルクスリリアは首をかしげた。

 あら? と、エリーゼは疑問を抱いた。

 

 ルクスリリアは思う。そういえばと、今朝から観察していたが、グーラの様子は昨夜とさほど変化がないような気がした。

 努めて気にしないよう振る舞っていただけで、突っつけば可愛い反応が返ってくるものと思っていたのだ。けれど、実際にはとても淡泊なお返事である。

 

「ところで、昨夜のあの行動は、一体何なのでしょうか?」

「「え?」」

 

 そして、その時両者は知った。グーラが無知キャラである事を。

 二人ともグーラの境遇は聞かされていたが、聡明な彼女には当然として相応の性知識があるものと思っていたのだ。

 が、実際はそんな事はなかった。グーラの知識には偏りがあり、ルクスリリアのおちょくり大作戦はここに頓挫したのである。エリーゼはメスガキの企みに嘆息した。

 

「んー、あーっと……何なんスかね?」

「貴女の場合、“吸精”というのが適当なのではなくて?」

「ま、そッスね」

「吸精、ですか? 淫魔の種族特性の……。あれ? エリーゼ……は、竜族でしたよね? エリーゼも吸精を?」

「いいえ、私は違うわ」

「違うのですか? では、エリーゼは何の為に裸になってイシグロ様の舌をねぶっていたのですか?」

「よく、見えてたのね……」

 

 言うと、エリーゼは瞑目し、やがて答えた。

 

「愛を確かめ合っていたのよ」

「愛ですか?」

「ええ」

 

 愛、愛、愛……? グーラの褐色ケモミミボクっ娘ロリ思考が明後日の方向に飛んでいった。

 愛とは、勇者アレクシオスが度々女性に対して向ける感情の事ではなかったか。愛とは、好きの延長ではなかったか。つまり、恋とかそういうのではないのか……?

 獣拳記由来の極小ラブコメ回路が乱回転し、グーラの思考をぐちゃぐちゃにした。グーラの中で、奴隷と主人との間に“愛”が成立するとは思えなかったのである。

 

「ふ、二人は、イシグロ様の事が……好きなのですか?」

 

 なので、訊いてみる事にした。無自覚に、頬が少し赤くなっていた。それはそれとして、興味はあるのだ。

 訊かれた二人はキョトンとした表情になっていた。

 やがて、ほとんど同じタイミングで答えた。

 

「そッスね」

「ええ……」

 

 素直な返答に、素直なグーラの心は「そーなんだ」とひとまず納得する事にした。

 それから、獣拳記第三部外伝を読んだ時の様な胸のもぞもぞが鎌首をもたげてきた。

 

「リリィはイシグロ様を、どう好きなんですか?」

「ど、どうッスか? んー、そう言われると、どうなんッスかね? なんというか、一日目? いや二日目? にはもう大好きになってたからとしか……」

「じゃ、じゃあ……どんな感じで好きなんですか?」

「どんな感じッスか……?」

「こう、雄々しい鬣を見るとメスの本能が騒ぐとか。戦場での勇姿を見ると屈服したくなるとか……」

「ずいぶん偏っているわね……」

「あー、まあ……何というか、一緒にいるだけでいいとは、思うッスね……。できれば、一生……多分、知らないッスけど……」

「おぉ……!」

 

 素直な内心を口にすると、一部素直ではないルクスリリアは恥ずかしくなってしまった。

 ベッドの上での「好き♡」は簡単に言えるのに、向かい合っての「好き♡」は恥ずかしくて難しいものなのだ。

 

「エリーゼはどうなんですか?」

「私? 私は、そうね。愛しているわ」

「おぉ……!」

 

 顔を赤くして黙ってしまったルクスリリアに対して、エリーゼの反応はとても堂々としたものだった。

 恥じる事などないと言わんばかりのドヤ顔には、ある意味竜族らしい傲慢さがあった。

 

「ど、どういう風に、好きになったんですか……?」

「好き、というか。あっちが先に私を好きになったのよ。私はそれに応えたに過ぎないわ……」

 

 と、このように返すドヤ顔には、竜族らしい高慢さがたっぷりと含まれていた。

 この娘も、ルクスリリアとは別方向に素直ではない性質を持っているのだ。

 

「へぇー? 出会ってすぐ抱っこ要求してたじゃないッスかー」

「それは……! 彼の魔力が漏れ過ぎていたから、中てられたのよ……」

「えー、本当でござるッスかー?」

「うるさいわね……!」

 

 言うなり、ベッドの上で寝技を掛け合う二人。

 しかし、そこは前衛と後衛。寝技勝負は淫魔が勝利した。

 

「へへーん、ベッドの上の淫魔は世界最強なんスよーだ!」

「か、かとうしゅぞく……!」

 

 仲良しだなーと眺めていたグーラだったが、その時ふと思った。

 二人はイシグロが好き。話を聞くに、イシグロも二人が好き。好き合ってる同士、愛があるから裸の格闘訓練をしていたはずなのだ。

 

「今日は、吸精はしないんですか? エリーゼも、愛を確かめなくていいんですか?」

 

 なら、二人はなんで今、自分と一緒のベッドにいるのだろう? したいなら、今日もするものではないのか?

 もしかしたら、昨夜のアレは野外専用なのか。あるいは毎日はしないものなのか。その点、知識のないグーラにはさっぱりだった。

 

 グーラの問いには、エリーゼの背中に乗ったままのルクスリリアが答えた。

 

「アタシはしたいッスね。淫魔ッスもん」

「じゃあ、何で今日はなさらないんですか?」

「それはね、貴女と話す為よ」

「のわ!?」

 

 一瞬の隙を突いて上体を起こしたエリーゼは、ルクスリリアを押しのけて再び元の位置に戻った。

 ベッドから落ちたルクスリリアはふよふよ浮いてベッドに帰還した。

 

「ボクと話す、ですか?」

「ええ、そうよ……」

 

 今も話してるじゃないかと思うグーラだったが、そもそも本題に入ってはいないのだ。

 テンションの上がった三人の話題が二転三転していただけである。

 

「きひひっ、それはッスね……」

 

 そんなグーラに、ルクスリリアはこれまたいつものメスガキらしい笑みを向けた。

 エリーゼも、少しドヤっとした顔になっていた。

 グーラは困惑した。

 

 すぐに眠った主人と違い、奴隷少女たちの夜は長く続くのであった。




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