【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も感謝です。我ながら凄い誤字多いですね! すみません。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。とても嬉しいです。
ていうか、ボズ案は予想以上にもらえて驚いています。そのうち出ます。
自分、あんまり思いつかないんですよね。
ロ ッ テ リ ア ー !
朝起きると、俺の股間にはオベリスクの巨神兵がそびえ立っていた。
今にも遊戯王の神BGMがかかってきそうである。その威容はまさに“熱き決闘者”……いや“神の怒り”こそ相応しい。
本能に従い、今すぐアクセルシンクロしたいところだが、俺のAIBOは別部屋にいる。ならばとソウルエナジーマックスをゴッドハンドクラッシャーしようにも、ダイレクトアタックする先がないのではどうしようもない。
仕方ないのでベッドから起き上がっても、俺のカタパルトタートルは未だ射出準備を続けていた。
「……着替えるか」
どうしようもない。俺は寝間着を脱いでそれをアイテムボックスにしまった。
そうしていると、ふと視界に過るものがあった。
「姿見か……」
鏡だ。そういえばこの世界で鏡を見たのは高級防具屋くらいであり、宿屋や転移神殿には置いていなかったように思う。結構高級品なのかもしれない。
その鏡は異世界では小柄な方である俺の全身をしっかりカバーできるくらい大きく、鏡面は約半年に及ぶ迷宮探索で鍛えられし我が肉体をくっきり映していた。
全裸で鏡の前に立つ。
それにしても、良い身体になったと思う。ボディビルダーの様なムキムキではない。プロレスラーの様なガチムチでもない。強いて言うなら、自衛官の身体に近い気がする。リリィ購入直後より、気持ち筋肉量が増してるか。
逞しく、それでいて美しい身体である。前までは小さな傷跡が沢山あったが、エリーゼのお陰でそれらは消えて以前よりもツルツルお肌になった。なお、当のエリーゼは「古傷のある身体の方が煽情的だったわ……」との見解だった。俺とルクスリリアは困惑した。
「ふん……!」
なんとなく、サイドチェストしてみる。うん、キレてるな。
この世界、見た目と膂力ステが一致しないなんてのはよくある事である。リリィなんてベッド程度ひょいっと持ち上げれるし、エリーゼも余裕だろう。けれども、俺の経験がこうやって肉体に反映されているのを見ると感慨深いものがあった。
「はい、ダブルバイセップス!」
楽しくなって、次々とマッスルポーズを取っていく。
なるほど、サンレッドのOPの歌詞の気持ちが分かる。これは結構自己肯定感のアガる行いだ。我ながらウットリする肉体美である。
あと、俺の股間は未だに元気はつらつだった。雄々しいダブルバイセップスの真ん中では、寂しそうなダンベルが次の使用を待っていた。
「……止めよう」
うん、仕上がった肉体には感慨深いものはあるが、出来上がった巨塔を見ると虚しくなる。
俺はマッスルポーズを終え、コンソールを開いて、防具を装備し……。
「おはよ~ッス。愛しの第一奴隷ちゃんが起こしに来たッスよ……お?」
「あ……」
振り向いて、目が合う。
それから、ルクスリリアの視線は少し下に向かい……。
「あは~♡♡♡」
満面のメスガキスマイルになった。
目がハートである。
その朝、俺はメスガキに負けた。
こういうのも良いなと思った、まる。
イシグロの じょうたいいじょうが かいふくした!
〇
襲撃とか、闇討ちとか、破れかぶれの特攻とか……。
特に何事もなく、俺たちは迷宮都市ヴィンスを出る事ができた。
朝食後、諸々の支度を終えて一度ストゥア商会に挨拶して、そのまま門に向かった。
道中、俺は腰の無銘を確かめつつ歩き、ルクスリリアとエリーゼにもしっかり武装させていた。
来るなら来い、というテンションだったが、結局誰一人来る事はなかった。街の様子も変わらない。いい感じの活気がある。
「リリィ、ラザニア呼んで」
「うッス。来るッスよ、ラザニア!」
門を出てしばらく歩き、近くに誰もいないのを確認してから、ラザニアを召喚する。
やがて召喚陣からヌルッと出てきたヘラジカには、門番や行商人たちからの注目が集まった。一応、ギルドからはOKが出てるのでこの大型動物は合法である。
「今から空飛んで王都向かうから、これに乗ってね」
「は、はい……!」
先日、グーラは一度ラザニアに乗ってもらっていたが、流石にこれで空を往くのは緊張するらしい。
浮遊して騎乗したルクスリリアを先頭に、グーラとエリーゼと俺の順番で乗り込む。
鐙とかシートベルトなんてのはないが、そういうのはラザニアの風魔法でなんとかしてくれるので問題ないのだ。
「よし、行こうラザニア」
合図を出すと、賢いラザニアは軽やかに駆け出し、翼を広げ勢いに乗って離陸した。
グングンと高度を上げていき、あっと言う間にヴィンス全体を見下ろせる高さになった。
「うわぁ……!」
風を切って飛んでいくと、グーラはルクスリリアの胴体にしがみついていた
高所恐怖症という感じはないが、それでも初見のコレはびっくりするよな。俺はバカなので高いとテンション上がっちゃうが。
「あら、貴女飛べるんじゃなかったかしら?」
「ぼ、ボクのは走れるだけで自由自在じゃないんですよぉ……。ここまで高く飛んだ事もないです……!」
「まぁいざとなったら空中でキャッチしてあげるッスよ」
「お、お願いしますね……!?」
などと会話をしながら、森越え山越え名前の知らない町を越え……。
街道を無視してショートカットしまくった結果、一度休憩を挟んだ上で、俺たちは昼前に王都に着く事ができた。
「こ、怖かったけど……面白かったです……。ありがとうございます、ラザニアさん……」
召喚獣を戻す前、そう言ってグーラはラザニアを撫で撫でした。
ラザニアはフンと鼻息を吹いて大鎌に戻って行った。
どうやら、俺やエリーゼ同様、グーラもラザニアチェックが通った様である。なお、契約者であるルクスリリアの事は今でもちょっと下に見てる模様。
さて、門をくぐって王都西区。
手紙によると、昨日からストゥア商会とパース商会で抗争中との事だったが、街の様子はいつもと変化がなかった。相変わらず賑やかで、相変わらず人が多い。良くも悪くもヴィンスとは大違いだ。
そんな西区に、田舎育ちのグーラは目を回している様だった。人混みの中、無意識だろうか、何かを避けた拍子に俺の手を握ってきた。
「あ、すみません……!」
「いいよ、このまま行こう」
「じゃあアタシはこっちッスね」
「バランスが悪いわ。私はこちら側ね」
「え? え、あの……?」
そのまま、四人で手を繋いで西区を歩く。
向かう先は、クリシュトーさんの奴隷商館だ。
「イシグロ様、よくぞご無事で……」
久しぶりに来た奴隷商館にて、つい先日会ったばかりのクリシュトーさんとご対面である。その表情は以前会った時よりも疲れているように見えた。
いつもの応接室では俺とクリシュトーさんがソファで向かい合っていて、ルクスリリアとエリーゼには後ろで待機してもらっていた。
グーラは今、専用の魔法施術室で契約魔術をかけられている最中だ。別れ際、リリィ達とは「またね」みたいな会話をして、俺には「行って参ります」と覚悟の決まった言葉が贈られた。
「こちらこそ、クリシュトーさんが無事で安心しました」
「はは……何とか生き延びております」
しばし、お互いの近況報告をする。
曰く、手紙にあった通り昨日のクリシュトーさんは相当な鉄火場に身を置いていた様だった。秘密の通路で拠点から拠点を移動したり、一度あちら側の手練れに襲撃を受けたりもしたらしい。
しかしそこは大手のストゥア商会。専属の元冒険者たちは見事クリシュトーさんを守り抜き、何とか生き延びる事ができたのだ。
「結局、抗争の方はどうなったのですか?」
「現在は沈静化しています。元々、パース商会でも一部の者のみの犯行という事で、多くの従業員は何も知らされていなかった様です」
調査の結果、事はパース商会のトップと一部幹部がモブノ等犯罪者組織と組んでストゥア商会を蹴落とす長期作戦の前準備であったらしい。が、発動前に情報が洩れ、上はもみ消そうとしたが現場が暴走してなあなあで開戦。もうどうしようもねぇとなって上も下も右も左もてんやわんやの大激戦になったとか。
で、モブノと契約する際の報酬がグーラの存在だったと。いまいち実感はないが、モブノという男はこの世界では名の知れた悪党であったらしい。冒険者時代からレアで強力な魔族奴隷を調教して感情のない戦闘マシーンにするという性癖の持ち主だった様だ。が、いつしか性癖が暴走し、冒険者を辞めて山賊モドキになったと……。
「今後はどうなると思いますか?」
「先ほど届いた情報によると、本部もカトリア伯爵の手が入った様ですし、向こうの力は大きく減じる事でしょう。商会自体は存続するかと思われますが、業界からの信頼は地に落ちました。優秀な者には前々からスカウトをかけているので、そのうち細かく分裂するのではないでしょうか」
「報復とかしてきませんか?」
「可能性はあり得ます。が、それはストゥア商会への報復でしょう。今イシグロ様に手を出しても、全く利益がありませんからね」
「そうですか……」
クリシュトーさんの言葉に、俺は無自覚に入ってた肩の力を抜く事ができた。
ま、これにて一件落着といったところか。RPGとか活劇とかだったら、むしろ今からボスが登場してどったんばったんするんだろうが、俺は主人公ではないのだ。こういう終わり方でいい。
「さて、今回の取引についてですが……」
俺の安心を察してか、クリシュトーさんは気持ち軽快に奴隷売買用の書類を出してきた。
契約魔術用の書類に、決裁用の書類。後は俺の名前を記入するだけで完了する状態だ。
「ん?」
確認もそこそこにサインしようと思ったが、ふと気になるところがあった。
決済用書類、グーラの値段が王都出発前の見積もりと違うのだ。
「クリシュトーさん、これなんですけど……」
「間違っていません」
訊いてみると、疲れを隠して真剣そうな表情を作ったクリシュトーさんは、丁寧に深々と頭を下げた。
俺視点、英国紳士風おじさんの頭頂部が見える構図だ。
「この度は、イシグロ様に大変ご迷惑をおかけしました。もしイシグロ様のお力がなければ、私は……いえ、我が商会にはもっと多くの被害が出ていた事でしょう。イシグロ様がグーラを救出してくれたからこそ、今の私が在るものと思っています。これは、せめてもの償いでございます」
本来、グーラの値段は5億ルァレだった。
流石にエリーゼほどではないが、それにしても高額だ。この店の平均は大きく超えているし、今館にいる高級奴隷の誰よりも高額だろう。
その上での、5億である。グーラには、それだけの価値があったのだ。それを、今回のクリシュトーさんからの依頼の報酬と同額にしてくれたのだ。あまつさえ、追加依頼分の報酬で経費もチャラにできる状態である。俺からすると、少し貰い過ぎな感がせんでもない。
「いいんですか? 自分は半ば無理矢理クリシュトーさんから依頼を出させた様なものなのに……」
「むしろ、受け取って頂かないと私が困ってしまいます。冒険者には冒険者の、商人には商人の矜持や面子というものがございます。どうか……」
「そう仰るのであれば……」
なんか申し訳ない気持ちになりつつ、俺はこれを受ける事にした。まあ、損はないのだ。
それから、未だ書けない異世界文字ではなく日本語で契約書にサインし、お金を渡して契約成立である。
あとはグーラにドッグタグめいた奴隷証をかければ、完了だ。
「入ってください」
しばらく、ヴィンスで起こった事など話していると、応接室のドアがノックされた。
クリシュトーさんが許可を出すと、ガチャリと扉が開かれた。
「し、失礼します……!」
開いた扉の先には、少しおしゃれになったグーラの姿があった。
健康的な印象の褐色肌に、艶のある黒髪。狼の様な金の双眸は、集まった視線から逃げるように下を向いていた。柴犬の様な三角耳はピンと立ち、俺視点見えない二股の尻尾も耳と同じく上を向いているのだろう。
グーラという美少女は、厳つい種族名や物騒な種族特性に似合わず、大人しそうであどけない顔立ちをしている。初対面時、暴走状態の彼女の目は限界まで吊り上がっていたが、普段の彼女は丸っこいタレ目である。
身長はエリーゼより少し高い程度で、ロリコン計測で145あるかないかくらいだ。身体付きはエリーゼよりもなお華奢で、胸にもお腹にもロクな脂肪がついていない。
また、奴隷商館にてグーラに着せられた服はルクスリリアとは別ベクトルで露出度が高かった。上はヘソ出しのタンクトップみたいなので、下は太もも全開のショートパンツ。その上から申し訳程度のジャケットを羽織っている。
なんとなく、異世界スポーツ少女といった印象の服である。中身は文学少女だが、俺はそういうの嫌いじゃない。
「あ、改めまして、グーラです……! 獣系の
そんな服だけスポーツ少女は、緊張マックスの上ずった声で頭を下げた。
多分、これまでこんな服を着た事はなかったのだろう。恥ずかしそうではないが、着慣れない感じがあった。
ジャケットといい、靴といい、どれも質の高い物で揃えてある。ちなみに、これも購入セットに含まれている。
「イシグロ様、奴隷証はこちらに」
「はい」
クリシュトーさんから奴隷用ドッグタグを受け取ると、俺はグーラの前まで歩いた。
跪き、目線を合わせる。グーラの大きな丸い瞳が、弱々しく俺の目を見ていた。それからゆっくりと、小さくて細い首に鎖を通していった。
やがて、かちゃりと魔法式の鎖が繋がった。
「これからよろしく、グーラ」
「は、はい……!」
すると、待ってましたとばかりに背後から淫魔と竜族の二人が寄ってきた。
「いいッスか? これからビシビシ鍛えていくッスよ! 後輩!」
「はい……! せ、精一杯、お役に立てるよう頑張ります……!」
「大丈夫よ、貴女なら……」
「はい……!」
その光景を、クリシュトーさんは安堵した様な表情で見ていた。
俺も、ようやっと地に足がついた気分になった。
帰ってきた、という感じだ。
何はともあれ、騒動はおしまいである。
さて、色々あったけど、これからやる事は多い。
引っ越しもしなきゃだし、日用品も買わないといけない。分からない事も多いので、彼女の種族についても調べよう。
グーラの特性の確認や、オーダーメイド装備も買わないといけないし、当座のジョブと育成方針も決めないとな。
何より、しっかりとグーラからの信頼を得ないと……。
やっと、異世界の日常に戻ってきた気分だ。
異世界ハクスラ生活、再開である。
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詳しくは活動報告にて。
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