【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も感謝です。助かっています。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
ボスはもう少し待ってください。
今回、何故か長くなったので無理やり切りました。
あと、ステの数値は「だいたいそんなもん」程度に見て下さい。
あくまで参考です。
異世界に来て、約半年。
分かっていたつもりだったが、改めて思い知った。この世界は、割と物騒だ。
がっつり武装した犯罪組織が活発だし、お出かけすると確定で喧嘩見かけるし、現場を見た事はないが都内での銀細工同士の殺し合いなんかも頻繁に起こるらしい。王都民も王都民で、殴り合いとか見て楽しんでるんだよな。神室町かよ。
意識していなかったが、王都民の多くは武装している。冒険者は言うまでもないが、ドワルフさんもセオドロスさんも外に出る時はいつも武器を装備していた。あれは最低限自分の身を守る為の備えだったのだ。
エレークトラさんに曰く、それでも王都の治安はかなり良い方らしい。
ヴィンスという、王国でも屈指の都会を見て、なんとなく思った。これ、王都から離れれば離れるほど世紀末なんじゃないのと。
異世界は何が起こるか分からない。
すれ違った銀細工にいきなり攻撃されるかもしれない。突如出現した主級モンスターに襲われるかもしれない。いつ何時、犯罪組織から狙われるかわかったもんじゃあない。
異世界、かもしれない運転でいこう。
だから、強くなろうと思った。リリィ達にも、強くなってもらおうと思った。いや、なるべきだ。
銀細工冒険者と戦ってみて分かったが、アレは怖い。なんとか勝つ事はできたが、おそらくあの鬼人はリリィやエリーゼよりも強いだろう。
あんな奴がうようよ居て、みんな武装してるんだ。今更だが、海外旅行の気分じゃいられない。
これまで俺は、レベルアップが楽しい金策ゲームの気分で迷宮に潜っていた。
それ自体はそんなに悪い事じゃないと思う。ゲーム感覚でやるからこそ、捗るものもあるだろう。怖れが過ぎれば行動できぬ。
そこに一個明確な、強くなる動機をつけようというのだ。楽しく生きる為、強くなる事自体を楽しむのだ。
方針は変えない。埋まっていないツリーを埋めて、スキルを獲得し、隠しジョブの発掘なんかに期待して過ごす。この方針は変わらないし、変える必要もない。何故なら、こっちのがしっかり強くなれるからだ。
ステだけ伸ばすなら、強いジョブだけを育てればいい。だが、行き過ぎるとソレしかできない特化型になってしまう。実戦で分かったが、剣士スキルと格闘家スキルの組み合わせは対人戦においてはとても有用だったのだ。
長い目で見ると、これは十分アリだと思う。一生こっちで過ごすなら、尚の事。
異世界で楽しく生きる為、強くなる。
強くなる為に、迷宮に潜る。
迷宮に潜って金策し、ロリに投資する。
うん、良いと思う。
他にもやるべき事はあるけど、それはおいおいだな。
杞憂しても仕方ない。気楽にいこう。
来年の事を言うと鬼が笑うのだ。
引っ越しから二日後、昨日は必要な日用品やら何やらを買って、本日はグーラを連れて転移神殿にやってきた。
なんだか久しぶりな感のある神殿内は、いつもと同じで人がたくさんいた。朝っぱらからバーで呑んでる人とか、マッサージ受けて気持ちよさそうにしてる人もいる。弁当屋さんも出来立てを並べていた。
人混みに不慣れなグーラとはぐれないよう気を付けながら受付に行き、鍛錬場の使用許可を得る。
「えーっと、イシグロ……リキタ、カ……よし」
「あ? イシグロお前、字ぃ書けるようになったのか?」
「まだ名前くらいしか書けないですけどね。合ってますか?」
「ああ、問題ないぜ」
今現在、俺はこっちで生きる為にとグーラに異世界文字を教わっている。
お陰でこれからは代筆してもらわなくても自分で自分の名前が書けるのだ。小さいけど大きな一歩だと思う。
なにより、天帝ロロナ……ロリ先生って良いよな。ロリ師匠もすごく良いと思う。グーラ先生のお陰で、俺のお勉強はとても捗っている。モチベがダンチだ。
申請を終え、鍛錬場行きの転移石碑へ向かう。途中、お弁当を買いに行かせたルクスリリア&エリーゼと合流し、石板を弄る。
鍛錬場に転移するには、専用の石碑前にある石板をスワスワしてステージを選択する必要があるのだ。迷宮なら適当に全員分の手を乗せるだけでいいのだが、ここはそうじゃない。
「て、転移って、どんな感じなんでしょうか?」
「ファッとなってフワッとなってスタッと終わるッスよ」
「まぁ慣れれば怖くないから」
「石板が光ったら手を置くのよ」
「こ、こうですか……? わっ……!?」
そんな感じで、いつものコロッセオ風鍛錬場に転移である。
景色が変わった事に耳と鼻と目を忙しくしてるグーラに、先輩風を吹かせた二人は色々と解説していた。
その横で、俺はコンソールを開き、操作する。 仲間→グーラとタップして、彼女のステータスを表示した。
◆グーラ◆
混合魔族:レベル6
獣戦士:レベル12
能動スキル1:心炎
能動スキル2:昇雷
補助スキル1:獄炎
補助スキル2:轟雷
生命:45
魔力:68
膂力:157
技量:19
敏捷:134
頑強:31
知力:13
魔攻:34
魔防:25
「ふむ……」
見てみると、グーラのステはこれまた興味深いものだった。
一番気になるのは、四つの謎スキルだ。なんとなくは分かるが、検証が必要である。
ていうか、ボス倒したとはいえほぼほぼ初期値でこれとか、如何に転移直後の俺が弱かったかが分かるな。
「グーラは足の速いパワーキャラなんだな……」
「ぱわぁ……?」
スキルは後で確認するとして、まずはステータスだろう。
ジョブの名前や知力の低さからして、グーラの元の能力値は技量の低い前衛型なんだろう。魔力が高いのは魔族の特性か。
そんで、抜きん出てるのが“膂力”と“敏捷”だ。それぞれシンプルにパワー&スピードであり、“技量”がないグーラは精密動作性の欠けたスタープラチナみたいな能力をしているという訳だ。
「まあ、とりあえず……グーラ、これ持ってみて」
「はい」
まずは共有チートの確認である。アイテムボックスから安物の鉄剣を取り出し、グーラに手渡した。タップして見てみたが、獣戦士は剣を使えるのだ。
グーラは手渡されたそれを何故か恭しく受け取ると、その柄を両手で持った。
何てこともない刃を潰しただけのロンソだが、身長150以下のグーラが持つとどうにも不釣り合いである。しかし。彼女は剣の重さに負けている感じはなかった。膂力ステのお陰だ。
「あの、これをどうすれば良いですか?」
「適当に振り回してみて。それだけである程度分かるからさ」
「は、はい……!」
少し下がって、三人で見学である。
根の真面目さ故か、グーラはよく分かってないなりに集中していた。一度目を瞑って、何かを思い出している様である。
眼を開ける。それからロンソを片手持ちにして、剣を持った右手を後ろに、左手を前に出した構えを取った。外連味のある映えポーズだが、それは存外堂に入った構えに見えた。
「はあッ!」
そして、それこそテニスのサーブでも打つように剣を振った。対人じゃない、対怪物の軌道であった。
かと思えば姿勢を低くして横薙ぎをし、足と手で加速して剣を振った。身軽に、荒々しく、それでいて流麗。それはまるでダンス……いや、ダンスの様な武術の動きに見えた。
グーラの剣捌きはまるで、剣でやるカポエイラだった。あるいは、ダクソ3の狼の剣技。そんな印象を受けた。
「はぁーッ!」
最後に、大ジャンプしてから片手大上段攻撃をして、彼女の剣舞は終了した。
パチパチと、自然に拍手してしまった。ルクスリリアとエリーゼも釣られて拍手をした。
当のグーラはというと、技後硬直の姿勢を維持しつつ、視線を手と剣で往復させていた。俺には分かる。次にお前は、「ボク、剣の天才なのかもしれません」と言う。
「……ボク、剣の天才なのかもしれません」
知ってた。グーラは姿勢を戻して、剣身に映る自分の瞳を見ていた。うっすらドヤっている。
その感想が出るって事は、彼女にもモーションアシストが共有されてるって事だな。こっちとしてはひとまず安心である。
「いやでも実際凄かったッスよ、今の動き! いくらご主人の恩恵があるとはいえ、ただの村人には無理ッスよ!」
「いや! あ、えと、あの動きは父さんので……。教えてもらった訳じゃないんですけど、見様見真似というか……」
「なら、尚の事すごいじゃない。私にはできない事よ……」
「グーラは運動神経が良いんだろうな」
「そ、そうでしょうか? えへへ……」
褒めちぎられ、指で頬を掻いて照れるグーラ。褐色の肌に赤みが差す。かわいい。
実際、チートの持ち主の俺だからこそ分かるが、イメージできるからってそう簡単に他人の技をラーニングできる訳ではないのだ。最適な動きを、完璧にこなさないといけないのだから。
グーラ、恐ろしい子である。
「じゃあ、次はスキルの確認がしたいんだけど」
「すきる、ですか?」
一通り褒め殺しをしたところで、次にいく。
チートの次は、地球舐めんなファンタジーである。
それから、小首をかしげるグーラに、俺から見えるゲーム的仕様についての話をした。
能動スキルとは、補助スキルとは。途中、先輩たちからの証言も加える。グーラはその一つ一つを熱心に聞いてくれた。ロリ先生も良いが、ロリ生徒もやっぱ良い。
「多分、
「四つですか?」
グーラには、四つの謎スキルがある。
それぞれタップして説明を見ると、相変わらず簡素な説明だけが表示されたのだ。
一つは“心炎”。魔力を消費して炎を生み出し、操るスキル。あと、膂力にバフがかかる。
一つは、“昇雷”。魔力を消費して雷を生み出し、操るスキル。あと、敏捷にバフがかかる。
補助スキルの二つは“獄炎”と“轟雷”で、それぞれ体内で生成される魔力の全てが炎か雷に自動変換されるよという奴だった。また、体外に出す魔法とかにも、両属性がのるらしい。
なのはシリーズのアレみたいな感じだろうか。これらにはもう少し詳細な説明があり、曰く一部属性の魔法は覚える事も使う事もできなくなるとか。もしグーラを魔術師にした場合、使う魔法は炎と雷で固定される訳だ。
「で、今からその“心炎”……ヘルハウンドの火を出してみてほしいんだ」
「かしこまりました。これでよろしいでしょうか」
ポッと、それは存外呆気なくお出しされた。
剣を持ってない手のひらに、人魂の様な炎が生成された。それは以前に見た赤黒い炎でなく、火って感じの赤色だった。
詠唱のない発火能力。これが、恐らく“心炎”という奴なんだろう。
「上手に制御されているわね」
「ありがとうございます。子供の頃は何でも燃やしちゃって……」
「どれくらい自由に使えるんスか?」
「えーっと、いいですか?」
頷くと、グーラは丸めたティッシュを放るようにして火の玉をポイした。
すると、火は砂の地面に着弾して小さな爆発を起こした。だが、爆ぜた炎は地面を舐める事なく消退した。まるでソウルシリーズの呪術の様に。
「他にもブワーッと出したり、こうやって全身を燃やす事ができます」
そのまま、グーラは全身を燃やした。だが、これまた不思議と着ている服に引火はしてない様である。
この服は何の補助効果もないただの服だ。にも関わらず引火も燃焼もしていない。
「ちょっと失礼……アツゥイ!」
「え!?」
ならば熱くないのかと思って触れてみると、俺の手袋に引火した。
一応、それなりに火耐性のある魔物の骨やら革やらで出来た手袋である。なのにめっちゃ熱いし、継続ダメージもある。
「それは熱いでしょう……」
「もー、何やってんスかご主人~」
「だだだ大丈夫ですかご主人様!?」
慌てて手袋を外すも、その火は手袋をすり抜けて俺の手に燃え移り、そのまま皮膚を焼き続けた。カルシファーでもそれは無理だぞ。
あーもうこれ理科の先生が見たら発狂しちゃうよ。
「あっ! すみませんご主人様! 今消します!」
火のついた手をパンパンしていると、グーラの炎化解除と同時に俺の皮膚を燃やす火は掻き消えた。同時、手にあった熱も痛みもなくなった。
手を見る、火傷はない。HPを見る、少し減っていた。不思議ファイヤーである。
「すみません。あの、大丈夫ですかご主人様……?」
「ああ、大丈夫。にしても凄い火だな。実に興味深い」
「とりあえず回復しておくわね」
その後、俺は彼女にいくつか質問し、“心炎”についての情報を集めた。
曰く、前はなんでもかんでも燃やしていたが、制御できるようになってからは物を燃やすかどうかを自分で決められるようになった。
曰く、手から離れた火でも鎮火可能。そのままにする事もできる。
曰く、炎は身体のどこからでも出せるが、手が一番出しやすい。
曰く、火の熱さ……というか多分威力は自由自在。最小は冬に暖を取れる程度で、最大は不明。
曰く、これでお肉を焼くのが得意。父さんに焼き加減を褒められた事もあるらしい。
「いいねぇ……!」
「い、いいんでしょうか?」
「こういう人ッスよ」
グーラの話を聞いて、俺は“心炎”なるスキルへの興味が抑えられなくなっていた。まるでサブカル作品の炎使いみたいである。魔法というより、異能である。浪漫だ。
俺はキュアサニーとか烈火とかマスタング大佐とかマジシャンズレッドとかエンデヴァーとか森羅とかクー子とかアルフェンとか唯一王とかゴーストライダーとかシャナとかが結構好きなのだ。
闇属性とか氷属性とかに人気で負けてる気はするが、いいだろう炎。カッコいいだろう。シャナほんと好き。
「ん?」
ふと、シャナで思い出したが、心炎で武器エンチャはできないのだろうか。発火ヤスリとか、そんな感じで。
こうも不思議な異世界ファイヤーである。武器に纏わせて攻撃とかできてもおかしくはないと思う。実際、魔法剣士の魔法に“炎の武器”という炎属性付与の魔法があるのだし、スキルでもできるんじゃないか?
「グーラ、それを物に纏わせたりっていうのはできる?」
「物ですか?」
「そう、その剣とか。一回やってみてよ」
「剣、でしょうか……。や、やってみます」
むむむと集中するグーラ。例として“魔力の武器”を見せるべきかと思ったが、それは後でもいいか。
やがてグーラが力むと、ボッと勢いよく剣身が燃え上がった。
「「おぉ……!」」
お見事である。俺とルクスリリアは大口開けて感嘆した。エリーゼも興味深げに見ていて、グーラはポカンとしている。
燃える炎の剣、なんてカッコいいのでしょう。それはさながらダクソのグウィン王、ダクソ2の溶鉄デーモン、ダクソ3の王たちの化身。何の変哲もない剣は、グーラの手によりフロムボスが持ってもおかしくない様な風格を得たのである。
「どどどどうしましょう! 剣が燃えてしまいました!」
興奮する俺とリリィだったが、当のグーラは燃える剣を持っておどおどしていた。鎮火は任意なのだからいつでも消せるはずだが、使用者は気が動転して電源をオフにできないようだった。
「落ち着いて、グーラ。手から流れてる魔力を断ち切ればいいだけよ」
「あっ、そうでした。えーっと……!」
そうこうしていると……。
バギン!
「「「あっ……」」」
重なったのは、俺とグーラとルクスリリアの「あ」だった。
そして、今のバギンは聞き慣れた剣の破壊SEだ。今も続けているエリーゼの権能練習、それでよく聞く音だ。失敗するとアイテムが破損し、剣の場合は状況に関わらず真っ二つになり別個のカスアイテムへと姿を変えるのである。
なるほど、グーラの炎エンチャには武器耐久度を下げるデメリットがあったようだ。耐久度が0になった剣は、真っ二つになって地面に落ちた。これも異世界の不思議である。
「あ、あぁ……そんな……!」
折れた剣をつつく、熱はない。へぇそうなるんだと思って折れた剣を見分していると、グーラが微振動しているのが見えた。彼女は全身をわなわなと震わせ、目に涙をためていた。
おっとフォローが先だった。俺は慌てて口を開いた。
「大丈夫だよ。安物だし、有益な結果だ。僕のデータも喜んでいるよ」
「で、ですが、このような上等な物を……!」
なおも震えが止まらないグーラを、三人で寄ってたかってフォローする。
「そこの竜族なんて何十本という剣に何百本という矢を壊してきたんスよ。剣の一本くらい何スか」
「言い方……。けれど、そうね。気にする事はないわ。貴女の主人はそれほど狭量ではないもの。ねえ?」
「もちろん。そんなんじゃ怒らないし、飯抜きなんて言わないよ、むしろご褒美モノだ」
「すみません! 本当にすみません!」
それから、俺たちはグーラの気が立ち直るまで大丈夫と言い続けた。
なんか、小学生の時に似たような事があった気がする。
「うぅ、すみません。以後気を付けます……」
「いいって。そういうものなんだから、どんどんやってこう」
小休止を挟んでしばらく、もう一度炎エンチャの検証を再開する。
実験したい事はまだあるのだ、炎エンチャして威力は上がるの? とか、エンチャした炎は操れるの? とか。こういう検証は大好物である。
「はい、次はこれにやってみて」
「はい。これは、鉄? いえ、何でしょう……?」
渡したのは、つい先日の事件で回収したモブノ氏が持っていた深域武装の槍だ。
長さは大体2メートルくらいで、当然グーラよりも大きい。先っちょには肉厚な刃があり、石突きから先端まで真っ白。色や雰囲気は違うが、何となくうしおととらの“獣の槍”に似ている気がする。
「これにさっきのやってみてくれる? ああ、別に壊してもいいよ」
「は、はい……」
先のエンチャ時と同じように、グーラは気合を入れて集中した。すると、柄は燃えずに刃の部分だけが炎に包まれた。
うん、燃える剣もかっこいいけど燃える槍もかっこいいな。
「あ、あの……本当に付けっぱなしで良いんでしょうか……?」
「いいのいいの、できるだけやってみて」
実際、壊れても惜しくはない。
レア武器とはいえ所詮拾い物、何の思い入れもないのだ。壊れても失くしても特にショックは受けない。せいぜい、換金アイテムがなくなったよ程度だ。取り返しのつく要素である。
「結構経ったな。一回消してもらっていい?」
「はい」
しばらくして、件の槍を回収する。槍の状態を見てみると、その耐久度は全く減っていなかった。
気になったのでもう一度普通の剣を燃やしてもらい、すぐに回収。案の定、剣の耐久度は大きく減じていた。
モブノの槍には、リリィの鎌と同じく耐久度リジェネがついている。深域武装の特性で、耐久度も並みの店売り武器よりずっと高い。なんなら俺の無銘よりも頑丈まである。
鑑みるに、成程どうやら炎エンチャの耐久度減少より“自動修復”の回復量のが多かった様である。
「いいねぇ……!」
なんか夢が広がる感じである。駆け出し時代だったらクソスキルだったろうが、今なら普通に使えるスキルだ。そんな気する。
それからも、グーラの心炎の検証を続けた。
結果、グーラの炎エンチャはなかなか強力である事が判明した。
第一に、単純な攻撃力の上昇。エンチャすると武器に炎属性が乗り、かつその威力は使用魔力次第で増減するのだ。
固定値ではないが、爆発力がある。持ってきた鉄板が何枚もオシャカになった。
第二に、意識して炎エンチャ武器で攻撃した物には、先ほど俺の手に付いた火みたいな継続ダメージを負わせる事ができた。
また、燃え移った火は魔力を吹き付けたら消火できた。消火器ならぬ消火魔力だ。エリーゼが魔力を浴びせ続けてた薪には引火させる事はできなかった。
第三に、エンチャによる耐久度減少は発動時間のみであり、攻撃時や出力アップ時などに追加で減少とかは起こらなかった。
最小の火力を付与した剣も、最大の火力を付与した剣も、威力は違っても減少した耐久度は同じくらいだったのだ。
第四に、武器付与の炎は操れない様だった。
槍先から炎を操作して釣り竿、とかはできない訳だ。
第五に、炎エンチャは自分の武器以外には出来なかった。
試しに俺が持ってる状態で無銘に炎エンチャしてもらったが、それはグーラが離れると自然に消えてしまったのだ。
第六に、意識すれば割とスムーズにオンオフができる様だった。炎を消すと耐久度減少は止まるし、発火時に多く減少する事もなかった。
ガンダムのビームサーベルみたいな、あるいは白べたみたいな時限強化でなく、アーマード・コアのレーザーブレードみたいな運用ができるという事だ。これには練習がいるな。
「いいねぇ……! いいねぇ……!」
「あ、ありがとうございます……?」
「よし、次は“昇雷”の検証だ」
「はっ、はい……!」
「ご主人、そろそろお昼にするッスよ~」
「グーラも疲れてるでしょう? 無理させちゃダメよ」
「あ、ごめんごめん。今机出すね」
そんな感じで、鍛錬場での午前は過ぎていくのであった。
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はい、ジノヴィオス王子のパーティメンバーを募集します。
王子以外の王族の一党も募集します。
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