【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も感謝です。お陰で助かっています。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。やる気に繋がっていますし、参考にもなります。
王の一党の応募もありがとうございます。来るべき時に出てきます。
今回も検証回。エンチャについでは前回とほぼ同じになるのであえて雑にしました。
分かりにくかったら、何か適当に質問してやってください。
迷宮探索は時間がかかる……らしい。
俺は自動マッピングチートや目的地表示チートがあるので一日あれば大概踏破できるのだが、本来そんなんじゃ無理なんだと。
受付おじさん曰く、ひとつの迷宮潜るのに短くても三日は使うらしい。それも下位の狭い屋内型ダンジョンでそうだという。
一日目、侵入して周囲を探索し、マッピングする。それから“楔”という構造固定のアイテムを使い、帰還。
二日目、作成したマップを埋めつつボス部屋を探す。ボス部屋を見つけたら帰還。
三日目、まっすぐボス部屋に向かい、ボスを倒す。
こんな感じである。あくまでこれが理想であり、そう上手くはいかないのが普通で、中位・上位ともなるともっとかかるとか。
ちなみに、“楔”の効力は転移回数&人数&時間制で、一人が転移する度に効果時間が減る仕組みだ。同じ迷宮に使用できる楔は一つで、以降の延長は不可能になる。
また、迷宮内で楔の効果が切れると、迷宮が崩壊を始めるらしい。崩壊前に帰らないと帰れなくなるのだ。
チートあってよかったと、つくづく思う訳で。
さて、話は変わって。
時間のかかる迷宮探索。楔の事もあり、帰還回数は極力減らしたい。だからこそ、迷宮内で食べる飯は必要不可欠である。
腹が減っては戦はできぬ。冒険者は健啖家が多いので、戦に必要な飯は相応に多量だ。ちなみに、この“空腹”は補助効果では対策不可である。素直にご飯を食べるしかない。
そこで頼りになるのが、神殿内の弁当屋だ。
ギルドには実に色んな店舗がある。
道具屋武器屋防具屋などなど、その中には迷宮内への持ち込みを前提とした弁当屋があるのである。
命賭けの鉄火場で食う飯である。繊細なものこそ持ってけないが、それでもできれば美味いモンを食べたいというのが人情だろう。
弁当の種類は色々あり、サンドイッチモドキみたいな手軽な感じのとか、おせちみたいな凄いのとか、乾パンとか干し肉みたいなのとかがある。どれも、まぁまぁ美味い。
また、値段もまちまちで、安いのは大衆食堂くらいだが、高いのだと高級レストランのフルコースくらいする。当然、高い奴は良い弁当だ。
安い弁当はかなり簡素だが、高い弁当はかなり豪華である。そこに、別料金で保存魔法をかけてもらう事ができるのだ。
この保存魔法という奴は淫魔王国産の淫魔牛乳にもかけられている魔法で、瓶や箱の中身を保存してくれる便利魔法だ。何気に異世界の食事事情を支えている重要な要素である。
保存付与に別料金が必要なのには理由があり、色々省くが“保存”は食材にも料理にも一回しかかけられないからだというのと、ギルドの専属魔術師が一日に行使できる保存付与に限りがあるからだ。
ちなみに、保存付与は弁当の購入後に行われ、弁当を買って魔術師のトコに行き、「魔法かけてください」とお願いするのである。先述の関係で、保存を付与できない弁当もあるが、最上位は全部可能だ。
そうやって、冒険者は迷宮内でも美味しい食事で英気を養う事ができるのだ。
まあ、どれも日本で食べてたお弁当とはちょっと違うのだが……。
あの安いのり弁、また食べたいものである。
そういえば……。
それなりに高い金を払えば、好みのメニューを弁当にしてくれるサービスなんかもあるらしい。
今度試してみようかな。
「わぁ~!」
一通りの検証を終えて、俺たちは鍛錬場内で昼食休憩に入った。普通に外出て外食でもいいのだが、今日は弁当デーである。
そんな訳で、アイテムボックスから外用のベンチと机を取り出し、設置する。見た目はまんまピクニックテーブルだ。そこに弁当屋で買った最上級弁当を並べていく。一つ二つ三つ四つ、そんで最後にデカいのドン。箱の一つを開けると、グーラは目をキラキラ輝かせた。
「はい、飲み物はこれな」
「えーっと、コレがご主人で、これがアタシで……」
「私はこれね。グーラはこの大きいのと、あと全部よ」
「えっ? こんなにですか!? よ、よろしいのですか……!? てっきり、これはご主人様用かと……」
「グーラ用に買ったんだよ。俺はこっち」
「あ、ありがとうございます……!」
今回、ルクスリリアに買ってきてもらったのは、美味しさ重視携帯性軽視の最上級弁当である。完全に落ち着いて食べる用であり、且つアイテムボックス使える人用の弁当だ。
俺とルクスリリアはこの前食べたラリスサンドのセットで、エリーゼは野菜とかフルーツとかが入った弁当。グーラは肉と魚と野菜と穀物とその他諸々てんこ盛りの一日一個限定弁当に加え、最高グレードの弁当を各種一つずつ。
ちなみに、グーラのおせちめいた弁当は本来パーティメンバー全員で食べる奴である。
「こ、これも食べてよろしいのですか……?」
「いただきますっと。いいよいいよ、午後も検証が待ってるからさ」
「それにしても、よくこんなに買えたわね」
「文句つけてきた人もいたッスね。けど、アタシの
「えっ、マジ?」
「ど、どうしてなのでしょう……?」
「そりゃ、アタシ等がご主人の奴隷だからッスよ! お陰でデカい顔ができるッス!」
「えぇ……そんな事ある?」
「あるッスよ~。屋台の買い物の時も割り込みされないッスもん」
「そんなの普通……いや普通じゃないのか?」
「畏れあってこその強者よ。慣れなさい」
「まあ、あんまり威張らないようにな。俺も気を付けよう」
「分かってるッスよ~」
「ご主人様……す、すごい方なんですね……」
コロッセオの隅、ピクニックテーブルを囲んで弁当を食べる。
そのうち一人はロリコン日本人で、残る三人はみんなロリ。羊みたいな角と尻尾を生やした金髪美少女と、一対の角を生やした銀髪の美少女と、黒髪褐色ケモミミの美少女。
どれもこれも地球じゃあり得ない光景である。まさに楽園だ。
「アナタ、髪の毛長くなってきたわね……」
「あぁ……切ってもらったのが結構前だから、そろそろ邪魔になってきたなぁ」
「また切ってあげるッスよ。今度はどんな髪型にするッスか?」
「恥ずかしくない感じでお願いするよ」
「髪の毛? あ、そっか、ご主人様は人間の方でしたね」
「ええ、髪が伸びるなんて羨ましいわ……」
「えぇ~、面倒臭いよ?」
「ご主人様の髪はルクスリリアが切ってるんですか?」
「そうッス。アタシ、結構上手いんスよ~。グーラも切ってあげてもいいッスよ」
「あの、ボクも魔族なので、髪は伸びないんです」
「あ、そうッスね。いやー、角がないとつい……」
「魔力でわかるでしょう?」
などと、他愛ない会話をしつつ。
そんな感じで、お昼休憩は過ぎていった。
〇
さて、食後の休憩が終われば検証の続きである。
炎の方はあらかた終わったので、午後からは“昇雷”についての検証だ。
「雷はそこまで得意ではないんですけど……こんな感じです」
という訳で「雷見せて」と言うと、グーラは指先にバチバチした光を灯してみせた。
それは雷……というよりも、“でんき”という印象のバチバチで、なんというかピカチュウカラーの雷属性だった。それこそ、ソウルシリーズとかSEKIROの雷の色である。
炎も雷も、暴走時とは色が違う。あの時はもっと黒っぽかった。何か違いがありそうだが、それもいずれ調べよう。
「それ、炎みたいに投げれたりする?」
「できます。投げるというか、こんな風に……」
言って、まるでデスビームでも撃つようにしてピカチュウ雷を発射するグーラ。ビャッと飛んでバチッと着弾。そう、発射と着弾である。
それは前世の理科で習った電気というより、この世界での“魔法の雷”であった。銀細工ナイズドされた俺にかかれば余裕で目で追える速度で発射され、着弾するとバチッと爆ぜたのだ。
昇雷の発射。それはダクソの“雷の槍”、それをミニマムサイズにしたような技だった。
「それはどれくらい強くできる?」
「えーっと、こんな感じです。えいっ!」
最大出力を! とお願いすると、グーラは「破ァーッ!」みたいなポーズで黄色の雷を放射した。まんまスターウォーズのフォースライトニングだった。素直にカッコいいと思った、まる。
そういえば、この技……グーラを落ち着かせる時に、暴走グーラが撃ってきたんだよな。なんとか反応できたけど、受け流し難易度は高かった。受け流し続けないといけなかったから、拘束性能が高かったのだ。
「他はできる?」
「すみません。あとは、こう、手をバチバチさせるくらいしか……」
「そっか、なるほど……」
雷属性。多分、属性別人気投票をした場合最上位に食い込むだろう人気タイプ。
禁書目録みたいなリアル寄りだったり、ダクソみたいなファンタジー寄りだったり、その扱いは作品によりけりだが、その使い手の多くは強キャラな位置づけをされていたように思う。
電気ビリビリ、とにかく画面映えするのである。雷の呼吸とか、ソーとか。そういえば、俺の初恋の子も雷属性だったな……。
そんな雷だが、自然現象以外のソレはこの世界にも存在する。雷属性と、その魔法だ。
武器についてるのはあくまでモンハンみたいな“そういう属性”であり、これは割愛。
魔法に関していうと、割と明確な特徴がある。
撃つ系の雷魔法の場合、初速に優れ追尾してきて受け流しが難しいという、厄介な魔法である事が多い。その代わり、威力は控えめでガード時のノックバックは殆どない。
前、エレークトラさんのパーティで魔術師の爺さんが撃ってきたのがそうである。あれは下手にガードするとビリビリ拘束される奴だったので、ガードせずに受け流したのだ。失敗してたらとんでもない隙を晒して、最悪死んでたと思う。キレてやったとはいえ、かなり危うかった。
「えと……炎と違い、雷は足からのが出しやすいです。手だとこの程度で」
「飛べるんだよね。やってみてくれる?」
「は、はい……!」
そんな雷属性。これを扱う種族である
それから、グーラが「ふん!」と力むと、その足関節から下が例の黄色い雷を纏った。そのまま踏み込むと、まるで透明な坂道でも上るように宙を駆け出した。
「「おぉ……!」」
例によって、俺とルクスリリアは感嘆の声を上げた。例によって、エリーゼも興味深げに見ていた。
宙を蹴り、雷が爆ぜる。確かにグーラは雷で空を駆けていた。前に見たのは暴走中の小刻みな奴だったので、これはなかなか壮観である。まるで空中ウマ娘だ。
4メートルほどの高さで闘技場を一周するグーラ。その軌道は直線的で、曲がる際は少し止まって方向転換をしていた。その曲がり方には覚えがあった。これ、カービィのエアライドのルインズスターだ。
雷のルインズことグーラは、カクカクした機動でこっちに戻ってきて、途中で雷を切って落ちてきた。慣性に従い、ズサーっと地を滑る。
「ふぅ……こ、こんな感じです……!」
「ありがとう、すごいな」
「なかなかやるッスね! こりゃ、エリーゼより上ッスよ」
「競っていないわ。まあ、認めましょう……?」
「どうも、えへへ……」
実際凄かった。空を走れるだけで凄いが、旋回性能とか最高速ならともかく、こと加速力においてはルクスリリアやラザニアよりも上である。
しかし、走り終わったグーラの顔には少し疲労の色があった。コンソールで彼女の状態を見てみたが、MPはそんなに減っていない。HPも満タンだ。
なるほど、昇雷ダッシュはスタミナ制か。魔力燃費は良いっぽいが、そう長くは使えないか。
「いいねぇ……!」
長所と短所である。なるほどこれは、と心が躍る。
グーラは一応空を飛べるが、ルクスリリアほど自由じゃないらしい。ルクスリリアがACfAだとしたら、グーラはエクバなのだ。そんで動きはルインズと……。
「それ疲れるんスか?」
「あ、はい。なんというか、あまり長くは走れないんです……」
「魔力は減っていない様だけれど」
「はい、ボクもそう感じています、よくは分からないですけど、村じゃあまり練習する機会もなかったので、慣れてもいないんです……」
しばらく息が整うのを待って、次に気になった事を試してもらう。
「グーラ、空中でステップはできる?」
「ステップですか?」
「うん。こんな感じで……」
「やってみます」
「あ、それと出来たら空中で止まるのもやってみて」
「はい……! こうですかっ?」
そんな感じで実験してみたところ、グーラの“昇雷”での空中機動は、どうやら足を動かさないと維持できない様だった。
一応、ナルガクルガめいたステップはできた。けど、空中で立ち止まると落ちてしまうのだ。踏み込む時などに少し止まる事はできるが、ホバリングはできなかった。その場で足踏みをしても、なんか上手くいかなかったのである。
「じゃあ、次は反復横跳び試してみよう」
「はんぷくよことび?」
それから、グーラには色々な動きを試してもらった。
空中でけんけんぱをしてもらったり、ムーンウォークをしてもらったり、できるだけゆっくり歩いてもらったり……。
面白い事に、その制御は速度が下がれば下がるほど困難になる様で、歩くような速さでは3秒程度しか空中移動を維持できなかった。逆に通常ダッシュなら30秒ほど維持できて、全力ダッシュは10秒の維持ができた。
「はぁ……はぁ……! なんでしょう、この汗……! ボク、はじめて汗かきました……!」
「一応水分摂っとこうか。落ち着いたらこれ飲んで」
「はぁ……ふぅ、ありがとうございます……」
「あーほら、汗拭くッスよ」
そんな雷ダッシュを何度かやらせてみると、グーラは疲労困憊といった状態に陥ってしまった。
汗をかかない魔族なのに、昇雷では汗をかいていた。不思議である。今度図書館で調べよう。
「一応、回復しておくわね。
「ほぅ……ありがとうございます」
「どうッスか? 疲れ取れたッスか?」
「はい。お陰でまた動けるようになった気がします……!」
「とはいえ、少し待とう。集中力は回復しないからね」
ゲーム的法則がまかり通る異世界である。鑑みるに、“昇雷”での空中移動はあくまで戦闘機動用のスキルといった風の仕様であり、ルクスリリアやラザニアの飛行の様に普段使いするのは難しそうだった。
運動部に所属していた訳ではないが、休憩が大事なのは身体で理解している。他にも試してみたい事があるので、一旦休みである。
その間、エリーゼはルクスリリアと一緒に飛行訓練を始めた。俺は手元のメモ紙の実験データを見るでもなく眺めていた。
「……っと、なに?」
「あっ、すみません……」
そうしていると、横合いからグーラの視線をもらっていた。
ロリの視線には敏感である。訊いてみると、グーラはおずおずと問うてきた。
「あの、ご主人様も飛べたりするのでしょうか……?」
何てことのない疑問だった。確かにこの一党の半分は飛べるからな。ルクスリリアは自前の能力で、エリーゼは装備で。なら俺も飛べるんじゃないのと。だとしたら自分だけ飛べないとか気にしてるのかもしれない。いやこれは考えすぎか?
表情に陰りはない。これは単にふと思っただけの事なんだろう。そう詮索するもんでもなかったか。
「まぁ、一応飛べるよ」
「そ、そうでしたか」
「下手だけどね……っと、“魔力飛行”」
なら、まぁ良い機会である。ジョブを変更して“魔力飛行”を発動する。
瞬間、俺の身体がふわりと浮き上がった。
「す、すごいです……! ご主人様は人間なのに……あっ、これは人間族をこき下ろしてるとかではなく……!」
「わかってるよ。さっきも言ったけど、下手なんだよね。足が下じゃないと平衡感覚が狂ってロクに動けないんだ」
ちょっと浮いて、降りる。実際、ルクスリリアはまるで宇宙空間にでもいるように上下左右自由自在に飛べるし、エリーゼもリリィ程じゃないけど割と器用に飛べる。今現在、空の二人は逃げるリリィをエリーゼが追っかけるという空中鬼ごっこをしていた。
対し、俺はいざ宙に浮くと頭が上で足が下という状態を維持しないと飛べないのだ。アトムとかウルトラマンとかなのはとかお兄様の様にはいかない。なにより魔力の燃費が悪いので、移動するだけなら走る方が断然速い。
それに……。
「それに、俺もグーラみたいな感じで空中走れるから。そっちのが便利なんだよな」
「そっ、そうなんですか?」
「ああ、ちょっと見てて」
言って、ヒョイッと小ジャンプし、空中で二段ジャンプしてみせた。
「えっ!?」
「こんな感じ。当然歩けるし、走れる。こうすれば留まる事もできる」
三段、四段ジャンプをして、いい感じのところで走ったり歩いたりしてみる。グーラが宙を駆けるとして、ルクスリリアが飛ぶんだとしたら、俺のコレは宙を跳んでいるのだ。
これは防御魔法“浮遊する魔力の盾”と、格闘家系スキル“軽功”の合わせ技である。浮遊する魔力の盾は文字通り魔力で出来た盾を創る魔法で、軽功は身軽に跳躍するスキルだ。
やり方は単純。まず、足から出した“浮遊する魔力の盾”を“軽功”で蹴ってジャンプする。これを繰り返すのだ。途中、急ブレーキとか急カーブがしたい時は別種の武闘家スキルの“剛掌底”をすればいい。すると大・爆・殺・神ダイナマイトみたいな機動ができるのだ。
「どど、どうやってるんですか? ご、ご主人様ってその、魔法剣士様だったと記憶してるのですが……そういう魔法があるんですか?」
「似たようなもん。まあ、これも長距離移動には向かないし、普通に走った方が速いんだけどね」
言いつつ、魔法とスキルを解除して着地する。
前、エリーゼの飛行訓練中に、ルクスリリアに「これで飛べないのご主人だけッスね♡」という煽りをいただき、わからせ心をカチンとさせて死に物狂いで練習したのである。
とはいえコレ、あんまり使いどころがない。せいぜい、図体デカい奴の弱点部位に攻撃する時くらいだろうか。空中でも踏ん張れるから、しっかり攻撃できるんだよな。
「まだまだ練習の余地あるよなぁ」
それは俺のもそうだし、グーラの空中移動もそうだ。
しばらくは、その訓練に充てようかな。
その後、やってみて出来たグーラの雷エンチャを少し試してから、俺たちは宿屋に帰る事にした。
雷エンチャはほとんど炎エンチャと同じ仕様で、蓄積溜まるとスタン入るみたいなゲーム的ファンタジーサンダーだった。
雷迸る剣を持ったグーラは、やっぱカッコ可愛かった。それで例の動きをするのだからなお素晴らしい。
「なんだか、ボクも戦える様で安心しました……。早く迷宮に行きたいです……!」
帰宅後、グーラは笑顔でそう言った。
〇
今日も一日がんばったぞい。
グーラが。
宿屋に帰り、たくさん検証に付き合ってもらったご褒美に大量のウーバーをして、ちょっと異世界文字勉強してからお風呂タイム。
前世日本の銭湯みたいな湯舟で、俺たち四人はゆったりしていた。
エリーゼは湯舟の縁で足湯をしていて、グーラは隅でちょこんとしている。ルクスリリアは全身脱力してぷかぷか浮いていた。
ロリとのお風呂である。幸せの中、俺は右手でグーラのステータスを眺めていた。
眺めつつ、考える。グーラの育成方針についてだ。
以前、いずれ来る解放の時までに、俺は責任もって彼女等を強くする事を決意したのだ。
俺は俺で、長い目で見たビルドを楽しんでいるからいいとして、残る三人には三人の生があるのだ。彼女等相手に、今後も以前までのゲーム感覚を持ち込むのは不誠実だと思えた。リリィとエリーゼは上手くいったから良いものの、グーラもそうなるとは限らない。
とはいえ、ゲームめいたこの世界、ゲームめいて思考するのはそれほど間違ってはないと思う。その上で、彼女らの今後に最善の方針を考えようというのだ。二人にも、今度改めて聞いてみよう。
一応、考えた結果として、グーラには三つのルートがあるように思う。
グーラの能力と、その特性を加味した方針だ。
その1、オーソドックスな戦士タイプ。それもガッツめいた大剣とか、バルバトスめいた大型メイスを持った奴だ。
鬼人少年と戦ってみて分かったが、膂力特化マンが振り回す重量武器というのはちょっとあり得ないくらい怖い。
なにせ片手剣みたいなノリでデカい武器をブンブンしてくるのだ。シンプルに強いし、シンプルだからこそ良いと思う。そこにあのパパの剣技と炎雷エンチャが加わり最強に見える。
街での自衛に関しても、サブに小さめの膂力武器を持てば解決だ。小さい棍棒くらいなら何処へ持ってっても怒られない。
その2、格闘家スタイル。中でも、“剛拳士”というパワー重視の格闘ジョブ。あるいは、獣戦士の派生先に恐らくあるであろう武闘家ジョブ。
これは大型武器マンほど膂力ステが活かされるジョブではないが、それでも立ち回りにおいて格闘ジョブは中々強いのだ。
何より、武器がなくても強いという点が大きい。今後、もしもグーラが誘拐なんかされても、武器なしで十分強いので自衛できる。心炎と昇雷との相性も良さそうな。
もう一つ言うと、彼女は熱心な“獣拳記”ファンガールだ。その主人公であるイライジャ氏と同じジョブというのは、ファン心理的にはそそるのではないだろうか。いや知らんけども。父からも格闘術の手解きはうけていた様だし、悪くないと思う。
デメリットを言うなら、武闘家系は強くなるのにすごく時間がかかるところだ。何せ武器=肉体なのである。強い武器作って即戦力とはならない。だからこそ、武器持ちが主流な訳で。あと、汚いモンスターに触れるのとか生理的に無理って人もいる。剛拳士は打撃特化で、切断・刺突属性は別の武闘家ジョブじゃないと使えないのも痛い。そうなると膂力が活かせない訳で……。
その3、上記ふたつを並行する。
これは、確かに強くはなれると思う。一旦武闘家を経由し、“軽功”とかの優秀な立ち回りスキルを習得。それから戦士を目指すみたいな。あるいは、あるかどうか知らないが武器と格闘の複合職みたいなのを目指すとか。風花雪月のウォーマスターみたいなの。
ただ、これは武闘家ルートよりずっと長い道のりである。大器晩成型とはよく言うが、完成するまでキツいだろう。やっぱ、手っ取り早く強くなるには一つのジョブを極めるのが良い。
いや、何かを極めてから寄り道というのもあるか。うーむ……。
その他、ナイト系とかも考えてみたのだが、曰く魔族含む獣人系の人は金属防具を付けると鼻が利かなくなるらしいので、せっかくの探知能力を失う事になる。これは最適とは言えないと思うのだ。
それから、狩人系も可能ではあるがあまり合っていない、この世界は武器ごとに能力補正というのがあり、それに合ったステであれば火力が上がるのだ。それでいうと、基本的に技量補正が乗りがちな狩人系武器は、グーラには合わない気がする。まあ、レベルアップで何とかなる話ではあると思うが。
いずれにせよ、やってみないと分からないか。俺とてツリーの全部を埋めてる訳ではないのだ。
経験則で大体何がどうなるかは分かるが、それでも必ずそうなるとは限らない。
現ジョブからしてグーラは獣人系ジョブを使えるようだが、魔族専用ジョブに派生するとかいうのも考えられる。うーむ、うーむ……。
とりあえず、まずは本人の希望を聞いてみてからだな。
後々どうなるかは分からないが、とりあえずの指標は決めておきたい。
風呂を上がって、ちょいと話があると三人を集め、ダイニングテーブルを囲む。
それから、俺はグーラに彼女自身の育成方針について話をする事にした。
「今後、皆で迷宮を潜るにあたって、グーラはどんな感じの事がしたい……とかはある? 目指したい目標というか」
「目標、ですか?」
「ああ」
ルクスリリアについてや、エリーゼの特質と克服について、俺の方針についても色々と。ジョブについての説明もしておいた。
参考として、リリィとエリーゼの解説を交えつつ、知り得る範囲の獣戦士の基本や魔族の戦闘術についても話した。
「申し訳ありません。ボクにはよくわかりません……」
というのが、彼女の反応だった。
ある意味、仕方のない事だとは思う。ずっと村で生きていたのだ。迷宮探索には意欲的な様だが、だからといって急に「ユーはどんな戦士になりたいんだい?」と訊かれて即答はできないだろう。
「一応、どんな感じがベストか俺なりに考えたのはあるけど、最終的にはグーラに決めてほしいんだ」
「は、はい……」
続いて、彼女自身の特質についての話をする。
まず、グーラの能力値は力と速さに特化した前衛型である事。種族特性も相まって、魔術師の選択肢はかなり厳しい事。
その上で、色んなジョブについての説明と共に、俺が思う彼女に合った方針についてを話した。
「う~ん……」
考え込むグーラ。重要な決断である。納得いくまで考えてほしい。
途中、二人からもアドバイスがあった。
「アタシの教官は上から近づいて鎌で強襲! そんで逃げる! みたいな戦い方するって言ってたッスよ。速いんならそういうのもアリじゃないッスか?」
「竜族にも、力のみで戦う戦士がいると聞くわ。多くは、大きな武器を振り回すと聞くけれど」
「武器については用意するから、そこは気にしなくていいよ」
「うぅ~ん……」
そうすると、グーラは余計混乱してしまった様だった。
これじゃ焦らせている様である。ちょっと反省だ。なに、今決めなくてもいいのだ。
「ちょっと触ってみて、何か違ったらすぐ変えるっていうのもできるけど。そうやって、グーラにとって最適なのを探すのもアリだと思う」
とはいえだ。彼女には、出来る限り早めに自衛能力を手に入れてほしい気持ちがある。
最速で最強を目指すなら、最適なジョブツリーを選ぶのが良いと思うのだ。
「う~ん、最適……というのが分かりません」
ここで、俺はふと思い至った。俺にとっての最適が、彼女にとっての最高ではない事に。
彼女の人生である。別に、最適じゃなくてもいいはずなのだ。グーラにとってどうなりたいかがベストなのであって、俺にとってのベストは最優先じゃない。才能がなくとも、やりたい事をしていいのだ。それを責任持ってサポートすればいい。
まあ、ホントにやりたい事は解放後にやってもらうとして、その前に生きる為の力を身に着けてもらいたいのだが。異世界、強けりゃ何とかなるし、弱けりゃ何にもなれないのである。
「なら、こうなりたいっていうのはある? なりたい自分というか……」
「なりたい自分、ですか?」
訊いてみると、これまた考え込んでしまった。
なんかドツボにはまったっぽいぞ。こういう言い方はよくなかったか?
思えば、思春期の時分の俺も「将来の夢」という質問には頭を悩ませたものである。有るのではなく、無い方向で。どう答えるべきかを考えていた。
ある意味、やりたい事とか、なりたい自分がある人はそれだけで幸せなのである。
少し残酷な質問だったか……。
「な、なら……」
と思ったら、ややあって彼女は上目遣いで口を開いた。
少し躊躇っているのか、彼女は口をもごもごさせた後、呟くように云った。
「……み、皆さまの、お役に立てるように、なりたいです」
「そうか」
あー、なるほど。それを聞いて、根っからこういう子なんだなと納得した。元々、彼女にとっての目標は既にあったのだ。
俺は俺の価値観で、「パパみたいな剣士になりてぇぜ!」とか「英雄みたいな武闘家になりてぇぜ!」みたいなのが自然な発想だと思っていた。けど、それは所詮俺の思い込みだった訳か。ある意味、転移者脳である。
リリィが強くなる事に意欲的だったから忘れていた。ある意味、エリーゼと近いのだ。どう成りたいかでなく、どう在りたいかである。
「これはもう、ご主人が決めるべきなんじゃないッスか?」
「そうね。主人らしく、決めてあげなさい」
「ああ……」
相手の意思を尊重するというのは、全部相手任せにするという事ではない。
お任せしたいというなら、それも尊重されるべきだろう。自由や選択というのは、時に単なる苦痛でしかない時もあるのだ。
それに、グーラはまだ子供だ。異世界基準だと大人だが、俺からしたら可愛いロリだ。
「なら……」
俺は、しっかり考えた上で、彼女の育成方針を決定した。
とりあえず、ではある。なに、焦らず急げばいい。
責任持って、強くしよう。
感想投げてくれると喜びます。
王の一党、募集中です。よろしければどうぞ。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=297777&uid=59551
現在、本作に登場するキャラやボスを募集しています。
興味のある方はお気軽にどうぞ。
詳しくは活動報告にて。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=296177&uid=59551
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=297167&uid=59551
こっちも投げてくれると喜びます。
◆グーラの情報まとめ◆
・基本性能はパワー&スピードタイプ。
・イシグロは気づいていないが、レベルアップにより膂力と敏捷が伸びやすく、技量と耐久と魔防が伸びにくい。
・生まれつき高い戦闘感を持ち、運動神経も良い。また、戦闘に関わる学習能力が高い。
・心炎は手から色々できる炎キャラ異能みたいな感じ。エンチャ可能。
・昇雷はほとんど移動用スキル。瞬間加速みたいなもん。一応、手から撃ったりエンチャしたりもできる。
・魔族なので、MPがあれば怪我や欠損は回復する。
・獣系魔族なので、鼻と耳が敏感。デメリットとして、金属防具を着ると弱体化する。
・武器は金属でも可能。
・空中機動はスタミナ制。長くは飛べないし、止まれない。