【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。感想とか特に嬉しいです。
 誤字報告も感謝です。ありがとうございます。

 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。作者になかったアイデアでいっぱいです。
 出る時はほぼ別キャラ化するので、それはくれぐれもご了承ください。

 前投稿したエピソードにあるグーラのステータスを少し変更しました。
 パワーとスピードを盛りました。数値とか、そんな厳密に管理してる訳ではありませんが、イシグロ以上というのを強調する為です。

 アンケのご協力、ありがとうございました。
 今回はアンケで戦士が選ばれ、武器が決まった事で追加されたエピソードとなっています。
 買い物回ですね。



ロリを好きにならずにいられない

 検討した結果、グーラにはシンプルな戦士系ジョブに就いてもらう事にした。

 理由は単純で、これまたシンプルに強いからだ。派生先にもよるが、成長するステータスも前衛向きなグーラに合っている。

 それに、強くなるのに時間のかかる武闘家と違い、強い武器さえ持てば即強化されるし、武器を変えれば色んなエネミーに対応できる。実際、冒険者の多くは戦士系である。

 

 とはいえ、単に戦士と言っても色々ある。

 剣特化のソドマスとか、ガチタンの重騎士とか、蝶のように舞い蜂のように刺す軽戦士とか。

 その中で、グーラにどんなジョブに就いてもらうか。それは本人が使いやすい武器を見つけてからのお話で、おいおいである。

 

 俺の為、彼女自身の今後の為、グーラには凄い強い戦士になってもらおう。

 強い武器を持ち、強い装備を身に着け、適性に合ったジョブと武器でステータスを上げるのだ。

 

 けれど、それでは足りないと思った。

 短期的にはそれでいいとして、長期的な強化にはもうひと捻りいると思うのだ。

 一芸は道に通ずるというが、特化し過ぎると往々にして弱点が生まれるものだ。そこで俺は、グーラには戦士とは違うサブジョブを仕込む方針に決めた。

 隙を生じぬ二段構え。サブ武闘家スタイルだ。

 

 武闘家スキルは、とにかく使い勝手がいい。

 跳躍力を高める“軽功”、片手が空いてたら使える攻撃の“剛掌底”、武器振る時にも応用できる踏み込み技の“震脚”……どれもグーラの種族スキルと相性がいい気がする。

 格闘攻撃は武闘家じゃないとモーションアシストこそ入らないが、習得したスキルは他ジョブでも使えるのだ。実際、俺は片手に剣持ってても武闘家スキルの“軽功”でピョンピョン移動できるのである。

 

 メイン戦士で、サブ武闘家。

 戦士として立ち回り、武闘家スキルで隙を消す。

 時間はかかるが、良いと思う。

 

 ただ、これに関しては懸念がある。

 この別のジョブの時に他ジョブのスキルを使えるという仕様、これは俺限定仕様の可能性があるってところだ。一部チートが共有できてないのを鑑みるに、あり得なくはないだろう。

 これについてはまだ検証できていない。もし上手くいかなかったら、その時はさっさと戦士一本に切り替えるしかないか。

 

 まあ、ともかくだ。

 当座の方針は決まった。今はメインの事についてである。

 

 見習い戦士グーラ、今の彼女に武器はない。

 買ってあげようじゃあないの。それもめちゃくちゃ強いのを。俺は棒一本持たせて魔王倒せなんてシャバい事は言わない。駆け出し勇者におうじゃのつるぎ持たせていいじゃんである。

 だって、此処はゲームみたいな世界だけど、現実なのだ。強武器担ぐのが、最も手っ取り早い強化法なのである。アーティラートでファンゴを狩ろうぜ。

 

 てなわけで、グーラ育成計画、開始である。

 

 

 

 図書館デートの翌日、俺たちはお馴染みドワルフのお店にやってきた。

 武器工匠のアダムス。目的は、グーラの武器のオーダーメイドだ。

 あと、とても大事なモノの注文。異世界で生きる為の、である。

 

「すみませーん」

 

 異世界にアポの概念はほとんどない。俺は慣れた足取りで分厚い木の扉を潜った。ロリ三人組も後に続く。

 年季の入った木の匂い、相変わらず狭い受付スペースである。店の奥から「あいよ~」と爽やかなイケボが聞こえてきた。

 

「へっへっへっ、どうも旦那ぁ。なんとなく、そろそろ来るんじゃないかと思ってやしたぜ。どうぞお掛けくだせぇ」

「失礼します」

 

 そうやって姿を現したのは、イケメンイケボイケエルフのアダムスさん。

 白い肌に線の細い身体付き。けれど何か雰囲気がテンプレドワーフみたいなエルフ。略してドワルフ。

 そして、これでも優秀な武器工匠さんである。武器工匠とは、武器の設計やら作成工程やらを管理してくれる人の事だ。

 

「今日はこの子の武器を見繕ってもらいに来ました」

「へぇ?」

 

 受付机を挟んで向かい合う。一通りの挨拶もそこそこに、俺は本日の用件を伝えた。

 すると、ドワルフさんは俺の背後で直立していたグーラを眺め見た。挨拶を促すと、グーラは姿勢を正して言った。

 

「えと、第三奴隷のグーラです。獣系混合魔族(キメラ)です。宜しくお願いしますっ」

「ははーん、こりゃあ……」

 

 品定めをするように、ドワルフはグーラの身体を上から下まで観察した。

 彼は魔力感覚に優れた森人(エルフ)である。そんな彼からすると、グーラが発している魔力は何か変に見えるのかもしれない。

 

「彼女は獄炎犬(ヘルハウンド)轟雷狼(らいじゅう)の混合魔族で、両者の種族特性を有しています。それから、迷宮未踏破の身で自分以上の膂力を有しています」

 

 それから俺は、武器工匠のアダムスさんにグーラの能力や種族特性について話をした。グーラの武器を作る上で、職人の理解は必要不可欠だ。

 博識な彼でも混合魔族や獄炎犬については詳しくなかったようで、色々と興味深そうに聞いていた。

 中でも“心炎”と“昇雷”については興味がそそられた様で、アレはどうだコレはどんなだと根掘り葉掘り質問された。エンチャできる武器に制限はないのかとか、素材によって壊れやすい武器壊れにくい武器はあるのかとか。

 

「……という訳で、自分としては“自動修復”と“武器防御”の補助効果のついた武器を注文したいと考えています」

 

 一通り説明したところで、今のところのこちらの要望を伝える。とはいえこれは素人考えなので、プロの意見があれば素直に従うつもりだ。

 自動修復とは武器の耐久度を回復してくれる補助効果である。これはブレワイのマスソみたいな仕様でなく、どっちかというと常時リジェネ的な感じだ。

 武器防御は武器によるガードの時に耐久度の減少を抑えてくれる奴だ。俺の様に頻繁に武器ガードするなら是非とも付けたいものだし、盾なしジョブには必須だろう。耐久の低いグーラに盾は合わないのだ。

 

「なるほどねぇ……」

 

 解説と要望、それを聞いて、ドワルフは椅子の背もたれに身を預けつつ、その美麗な顎を摩った。

 完全におじさんな仕草だが、彼がやるとおしゃれ映画のワンシーンみたいになるのだから凄い。

 

「なら、“剛性強化”とかもいいかもしれませんね。攻撃当てた時の消耗を抑えつつ、威力を少し上げる奴でさぁ」

「なるほど。じゃあ、とりあえずその三つはマストですね」

 

 打てば響くように、ドワルフのアドバイスはこちらの要望にすんなりマッチした。

 自動修復、武器防御、剛性強化……。この三つはどれも武器の破損を抑える為の補助効果だ。グーラのステ的に重量武器を振り回す事になるだろうし、火力は武器の素殴り性能とエンチャで何とかなると思う。まぁ、こんなもんか。

 それに、今回のは汎用武器なので、他に必要な補助効果は特にはない気がする。炎属性も雷属性も自前で出せるのだ。

 

「他、何か良い補助効果とかはありますか?」

「んー?」

 

 とはいえだ、プロ目線からはまだ何かあるかもしれない。

 アドバイスを求めると、彼は腕組み姿勢で思案するように天井を見た。

 やがて俺と目を合わせると、腕組み姿勢を解きゲンドウポーズになってから口を開いた。

 

「ご要望に沿った武器を作るんなら、何のマゼモンもない金剛鉄(アダマンタイト)を使うのが一等良い。金剛鉄ってのは、知っての通り武器の素材としちゃ最上だが、付与できる補助効果の幅が狭ぇ。それこそ、さっき言った三つが限界でしょうな」

「そうですか。ならそれでお願いします」

「おっと、そいつァ早計ですぜ」

 

 ならばと即決した俺に対し、ドワルフさんはにやりと笑んで云った。

 それはまるで、初心者ガンプラビルダーに対し、プロモデラーが自慢の技術を披露する時の様な笑顔だった。

 

「へへっ、旦那ぁ決断が早いのはいいが、ちとせっかちでいらっしゃる。話はまだ終わっちゃいませんぜ?」

 

 それから、やおら立ち上がったドワルフは「ちょっと待っててくだせぇ」と言い残し、店の奥に引っ込んでいった。

 残された四人である。さっきから立ちっぱなしの三人には悪いが、ここには客用の椅子は一つしかない。代わりに座ってもらってもいいが、それだとメインで話す俺が立つ事になる。疲れたら浮遊して空気椅子でもしてもらおう。

 

「ふ、不思議な方ですね……」

「なんかご主人と仲いいんスよね~」

「人間も竜族も、男は武器が好きなのよ……」

 

 しばらく待っていると、奥から布でグルグル巻きにされている棒状の物を持ったドワルフが現れた。

 あと、何故かその手にはさっきまで付けていなかったゴツい手袋が装着されていた。うっすら魔力を感じる。何かしらの補助効果のついた代物か。

 

「いやはやお待たせしましたね、倉庫の奥にあった奴でして。どうぞ、これを見てくだせぇ」

 

 言って、例の棒を受付机に置き、グルグルの布を解くドワルフ。

 ミイラみたいなそれを解ききると、中からは真っ黒な棍棒が出てきた。サイズは少し小さい野球バット程だろうか。

 

「どうぞ持ってみてくだせぇ。おっと、立ってからお願いしますよ」

「はい」

 

 促されるまま、椅子から立ち上がってバットを手に取った。

 持ち上げようとしたところで、それは想定とは全然違う重量をしている事に気づいた。

 

「お、重い……!」

 

 そのバットは、見た目よりずっと重かった。小さめの金属バットほどの大きさだ、金属バットくらいかそれより少し重いくらいの棒を想像していたが、実際は全然違ったのである。

 ギュッと握ってフンと踏ん張る。なんとか片手で持ちあげる事はできたが、これはかなり重い。形状的には片手で振り回す通常サイズの棍棒なのだろうが、重さ的には特大武器である。

 前衛型とはいえ、バランス成長の俺だ。持つのは片手でできるが、振るのは両手じゃないと無理。それに、そんなノロノロ動いてたら迷宮じゃ即死である。これを使いこなすにはガチなパワーが必要だろう。

 

「へっへっへっ、でしょう? そりゃあ、最近生まれたとある技術で作られた棍棒でさぁ。素材の質や補助効果に頼らず、威力と頑丈さを引き上げる事に成功したんです。まあ、代わりにめちゃんこ重くなりますがね。どうぞ、そちらのお嬢さんも持ってみてください」

「は、はい」

「けっこう重いよ」

「はい。うわっと……?」

 

 呼び寄せたグーラに手渡すと、彼女は一瞬よろけながらもしっかり保持してのけた。

 まるで卒業証書を抱く小学生みたいな姿勢である。それから剣を握るように端を握ると、今度は片手で持ち上げてみせた。

 

「どう? 大丈夫?」

「はい。少し驚きましたが、慣れてしまえば問題ありません。この程度の重さなら、父の動きも可能かと思います」

「マジか……」

「はぁ~、これで迷宮未経験ってなァ驚きだ」

 

 ちょっと振ってみて、というドワルフに応じ、グーラは棍棒を上下に振ってみせた。ネギを振るミクさんの動きである。

 彼女のステを知ってはいるが、それでも棒の重さを経験した俺からしたら戦慄モノである。異世界ナイズドされたとはいえ、俺がアレやったら肩が脱臼するだろう。

 にも関わらず、グーラの顔に苦悶の色はない。体幹もブレてないし、腕もプルプルしていない。クソ重棍棒をネギ扱いしてやがる。流石の異世界物理法則であり、流石の膂力ステだ。

 

「マジのガチじゃないですかい……」

 

 これまた戦慄しているドワルフに棍棒を返す。受け取る際、彼が装備してる手袋が魔力を帯びた。あれ多分、膂力ステを引き上げてるんだな。

 棒を受け取ったドワルフは、元の様に布をグルグルし直しながら続けた。

 

「これは“鉱深鍛冶”という新しい技術で作られたモンでしてね。普通の鍛錬……あー、鉄とかぶっ叩く時に特殊な槌とか色々なモンを使ってやるんです。その間にどんどん溶かした素材をぶち込みまくって叩きまくって、したら重くて硬くて強い武器が出来ちまったぜって感じです。乱暴に聞こえるかもしれませんが、これが中々繊細でしてね……」

 

 要するに、素材をぶち込みまくって質量的なモノを圧縮するみたいな感じだろうか。

 何となくは分かるが、まるでキン肉マン世界のゆで理論を聞いている気分である。まあ、出来るんならばそうなんだろう。

 

「長所は、さっき言った通り硬くて強い武器ができる事。短所は重くなっちまうのと、必要以上に金がかかっちまう事。あー、あと出来る鍛冶師が少ねぇですね」

「なるほど」

 

 原理は分かった。いや分かってはないが、そうなるんだなってのは把握した。

 その上で、ちょっとシンキングタイム。

 

 こっちには金剛鉄があるのだ。普通に作っても、要望通りのモノはできるだろう。

 加えて、それを鉱深鍛冶で作れば重さを引き換えにもっと高性能な武器が作れると……

 

「ふーむ……」

 

 グーラの膂力ステは、俺を大きく超えている。なにせ俺が持つのに苦労したクソ重棍棒を片手ブンブンできるのだ。通常の特大武器程度、余裕でブンブンできるだろう。

 それに、グーラはまだ迷宮未踏破だ。今後、レベルアップで膂力ステが上がるのは必至。それだと、ただの武器ではすぐ不足するのではないだろうか。重さ=威力に繋がり難い異世界だが、重い武器を振り回すのは強いのだ。中途半端な特化より、突き詰めた特化のが良い気もする。

 装備重量の事もある。膂力の高いグーラは重い防具を身に着ける事ができるが、種族的に重い金属系防具はマッチしない。普通の装備、普通の武器だと、せっかくの装備可能重量が空くのだ。なら、その分武器を重くするのはアリな気はする。あとあとってのもできるが……。

 まるで子供の服を買うような感覚である。すぐ大きくなるんだから少しブカブカなの買いましょうみたいな。

 

「グーラはどうしたい?」

「えっ? わ、分かりませんが、これくらいなら全然いけるかな……と」

 

 持ち主予定に訊いてみると、かなりマッスルな返答がきた。

 マジか、あの特大武器並みに重い棍棒より上、余裕でいける感じなのか……。

 なら……。

 

「では、今のグーラにちょうどいい重さの武器でお願いします。その上で、最適な作り方を検討したく思います」

「もちろんでさぁ。へへっ、んなら早速ちょっと試したい事があるんで……」

 

 方針が決まったところで、フィッティング開始である。

 

 それから、グーラには試しにいくつもの武器を持ってもらった。

 これくらいの重さはどうかとか、振りやすいのはどの形状かとか、それこそ洋服の試着の様である。

 

「お嬢ちゃん、これくらいの重さはどうだい?」

「はい、問題ありません。大きさも、もう少し大きい方が安心できます」

「ホントに言ってんスかー? ちょっと持ってみよアギャ!?」

「ぎ、ギックリ腰!? やべーぞギックリ腰だ!」

「ご主人様! ルクスリリアが!」

「腰がピキッて鳴ったわね……。アナタ、回復させたいから杖を貸して頂戴」

「へえ、魔族でも魔女の一撃(ぎっくり)食らうんですねぇ」

「あだだだだ! ひぎぃいいいい! すぐ治るッスよ! 治るッスけど痛いモンは痛いんスゥゥゥゥ!」

 

 そんなこんな。

 柄の長い斧に、大型メイスに、如何にも蛮族なクソデカ棍棒。ステに合うよう、彼女の感性に合うよう、色んな武器を持たせてみる。

 途中、ドワルフさんに促されて両エンチャを試してみたり、グーラ自身がどれだけ重い物を持てるか、その上でどれくらい動けるかを調べてみたり……。

 

「はい、これくらい大きい方が、ボクとしては上手く動けると思います。その、勘ですが……」

 

 ああでもないこうでもないと検討し、そんな訳でドワルフにはグーラの身長よりも大きい剣を作ってもらう事になった。

 且つ、ただの特大剣だとまだ軽いらしいので、件の鉱深鍛冶を併用して重量プラスと……。

 まさに特盛大剣鉄硬め重量マシマシ耐久度トッピングである。間違いなく、俺じゃ両手使ってもまともに振れない。

 

「はい、どうも。工程は少ないんで、旦那の剣よりは早く出来ると思いますよ」

「よろしくお願いします」

 

 で、契約完了と共に前金と大量の金剛鉄(アダマンタイト)をお出しする。曰く、例の鍛冶には通常の倍は使うらしい。

 希少鉱石の中でも、金剛鉄は余ってるんだよな。以前、ひたすら巨像迷宮周回してた時にガッポガッポ集めたのである。

 ちなみに、俺が入手した希少鉱石についてはまだ扱いが決まってない様だった。とりあえず、ギルド主導で件の迷宮に調査しに行くらしい。

 

「へっへっへっ、ぜーんぶ金剛鉄(アダマンタイト)でやれるなんて聞いたら、鍛冶師の奴ぁ嬉し過ぎて気絶しちまうかもですね」

 

 と、そういうドワルフの顔もにやけていた。多分、例の鍛錬の場に立ち会う気なんだろう。

 楽しそうで何よりである。俺もそういうの嫌いじゃない。

 

 さて、グーラのメイン武器も決まった事だし、当座の目標も決まった。

 大剣に適したジョブ、あるいは剣全般に適したジョブ。とりま、剣士系である。

 ロリと大剣、良いと思う。炎と雷も添えて栄養バランスも良い。おまけに持ち主はケモミミだ。

 ……盛り過ぎでは?

 

 

 

 

 

 

 エリーゼの王笏の時と違い、グーラの武器注文はお昼前に終了した。

 

 さて、完成には時間がかかるとの事なので、グーラのメイン武器についてはこれでおしまい。

 もうお帰りという雰囲気になってるが、まだである。

 今日は。もう一つとても重要な用があるのだ。

 

「あの、次の注文もよろしいですか?」

 

 唐突だが、この世界は治安が悪い。マシな王都とて、刃傷沙汰は日常茶飯事だ。

 だからこそ、王都民の多くは何かしら武器を携帯している。非戦闘員の人も腰に短い剣を下げてるのは珍しくない。

 だが、道行く奴隷は皆、武器を持っていないのだ。

 

 当然ではあると思う。いくら主人が死ぬと連鎖で奴隷が死ぬ世界観とはいえ、武器を持たせてはいつでも反逆できてしまう。

 故に、普通奴隷には武器を持たせないものなのだ。迷宮探索で持たせるにしても、それは迷宮だからだ。外では主人が管理するのである。

 

 俺もそうしてきた。

 けど、これからはそうしない。

 

 今現在、彼女達にはいつか来る解放の時までに自衛能力を身に着けてもらおうとしているのだ。その前に、不用意で死んでしまうなどあっていい事ではない。

 先日、俺は主人の死と奴隷の死が連鎖するという契約を破棄した。もっと言うと、俺が死ぬとルクスリリアに俺の遺産が入ってくる状態にしてある。

 奴隷の反逆、それは前にも覚悟した事である。寝ている時、風呂に入ってる時、無防備な時なんていくらでもある。それでも俺は、奴隷に武器を持たせようと思うのだ。

 

「ええ、構いませんぜ。迷宮用の特化武器をご所望ですかい?」

「いえ、全員分の副武装を見繕ってほしいんです」

「全員分、ですかい……?」

「はい、動きの邪魔にならないような」

 

 普段から装備できて、行動の邪魔にならなくて、ある程度迷宮で通用する小さな武器。

 要するに、サブ武器だ。

 

 この世界には、ゲーム的法則がまかり通っている。

 右手に剣、左手に斧を持ったとして、両方に適したジョブじゃないと片方の攻撃力が下がるのだ。また、二刀流ができるジョブじゃないとボーナスが乗らず意味がない。

 だが、武器のマウントには制限がないのだ。やろうと思えば、どこぞの武蔵坊弁慶みたいに身体中に武器を装備する事もできる。腰に剣、足に短剣、背中に斧みたいに、その気になればいくらでも。

 

 しかし、武器というものは凄く嵩張るのだ。現実問題、そんなに持てない。

 剣一つ腰に帯びるだけでも、それはもう邪魔である。帯剣して歩けば椅子にゴチン。座れば干渉し、狭いところじゃ引っかかる。剣を携帯する場合、何につけ腰の剣を確かめながら動かないといけないのだ。全身武装など、何をかいわんや。

 だからこそ、メイン武器と同時に身に着けるサブ武器は、邪魔にならない小さいモノに限る訳で。

 

「するってーと、街中でも持っていい奴って事ですかい?」

「はい。街でも迷宮でも、自衛できる程度の武器が欲しいんです」

「そりゃ、できますが」

 

 俺は普段、街でも無銘を装備している。最近だと腰に剣の重みがないと落ち着かないくらいだ。

 けれど、ルクスリリアは無手だ。エリーゼもである。それは彼女らのメイン武装が街や転移神殿内での持ち運びに不便なサイズだからだ。

 彼女らのステは高い。素手でも一般ピーポー相手にゃ負けないだろう。だが、銀細工相手ならどうか。武闘家でもないのに、素手で応戦できるものだろうか。

 異世界は何があってもおかしくない。誘拐犯か、狂った冒険者か、かもしれない思考で可能な限り備えるべきだろう。むしろ、今までが無防備過ぎた。此処は日本じゃないのである。

 

「既に、どんなのが良いかは決めてあります」

 

 求めるのは、携帯性と自衛性能だ。

 想定しているのはメイン武器が使えない状態且つ、俺が近くにいない時。迷宮の内外で、孤立無援の状況だ。

 敵を倒す必要はない。俺と合流する時間を稼げるような性能があればいい。俺には味方の位置が分かるチートがあるのだ。故に、求めるものは生存力の向上。

 

 この世界、使える武器はジョブ次第である。

 モーションアシストの仕様もあるが、実際問題合わない武器だと火力が下がる。

 故に、メインだけじゃなくサブ武器もしっかりジョブにマッチした奴じゃないといけない。

 

「彼女用の、短い細剣と……」

 

 ルクスリリアのジョブは、“淫魔姫騎士”だ。

 これは大鎌や楽器以外にも、鞭や杖が装備できる。その中で最も携帯性に優れた武器は“細剣”だった。

 細剣、たしかに姫っぽい。ルクスリリアにはサブ武器に短い細剣を持ってもらう事にした。

 

「彼女用の、短杖と……」

 

 エリーゼのジョブは“竜戦士長”である。

 これは魔法ではなく、スキルで味方にバフをかけるジョブであり、魔術師よりは前に出られる性能をしている。今は王笏型の杖を持ってもらっているが、携帯用の魔法装填特化武器として、彼女には“短杖”を携帯してもらおう。

 それこそ、吹奏楽の指揮者が持ってるような奴だ。これなら動きの邪魔にはならない。

 

「で、彼女用には出来るだけ頑丈な短剣をお願いします」

 

 グーラには、今日買った武器の小さいのを持たせようと思う。

 メイン武器が大剣なので、サブも剣カテゴリがいいだろう。これまた丈夫さ極振りの奴がいいか。自衛できればそれでいいのだ。

 将来的に短剣が装備できなくなったとしても、その時はまた別なのを作ればいい。余った短剣は俺が使おう。

 

 あと、ついでに俺の予備武器も。

 俺の場合、緊急時は素手でやれるのでサブ武器という訳でもないが、無銘でどうしようもない敵相手用に、打撃武器を買おうと思ったのだ。

 補助効果に炎エンチャと聖属性を付与したメイス。アンデッド絶対殺すメイスだ。アンデッド対策というより、俺自身の汎用性の向上という意味合いが強い。

 

「なるほど……あいわかった。ちょっと図面描かせてもらいますよっと」

 

 これは、既に三人とは話し合って決めた事だ。

 内容もある程度固まっている。エリーゼの短杖に関しては少し長くなったが、前ほど時間はかからなかった。

 解放の時も、彼女等にはメイン武装共々渡そうと思う。そうじゃないと意味がない。

 

 とはいえ、何だかんだ殺されるとは思っていない。

 覚悟をしているだけだ。

 

 

 

 それから、俺たちはドワルフの店を出て、宿屋に向かい歩いていた。

 

 帰り道、いつものように他愛のない会話をしながら歩く。

 前世ではあり得なかったロリと一緒の帰り道だ。異世界来て、俺の歩幅は狭くなって久しい。

 

「ゆーて、予備の武器ならその辺の店売り品で良くないッスか?」

「ぼ、ボクもそう思います。その、なんだか凄い剣まで買っていただいて……」

「できれば良いの持ってほしいじゃん」

「過保護ね、アナタも……」

 

 あっちとこっちでは、価値観が違う。前正しいとされてた感覚が、此処ではクソの役にも立たないなんてザラである。

 日本で培われた倫理観など、そんなものだ。元々、絶対視なんかしていない。崇高とも、上等だとも思ってない。

 持ってた方が便利だったから、守っていただけだ。

 

「慣れるかなぁ……」

 

 だが、それでも俺はまだ前の感覚を引きずっている。

 食前にはいただきますをするし、目上の人に敬語を使うし、善悪の基準が現代的だ。だから無意識に自罰的にもなる。

 振り払ったつもりでも、こびりついている。一歩進んで二歩下がってるのだ。

 こんなのからは、さっさと解放されたいものである。

 

 ままならんね、まったく。

 

「ご主人、明日はどうするんスか?」

「いくつか行ってみたいトコがあるから、そこに行こう」

「へえ、どこかしら?」

「とりあえず呪術店に行く」

「じゅじゅつ……ですか? それは、何の為でしょう……?」

 

 まあ、そのうち何とかなるだろう。

 それに、やる事はいっぱいなのだ。忙しくしてりゃ気もまぎれるさ。

 

 まだまだやりたい事も、やるべき事もある。

 一つ一つやってこう。

 

「二人にかかった呪いを解く」

 

 ギュッと。

 

 その時、繋いだ手に力が籠められた。

 その手は俺の手よりもひんやりしていた。

 

 

 

「あ、ご主人ご主人」

「なに?」

「気持ちは嬉しいんスけどぉ、アタシの呪いは解かなくていいッス」

「えっ? 何で?」

「いや、普通に便利ッスし?」

「便利?」

「アタシの呪い、枯渇状態になったら寿命削って無理やり魔力作る奴じゃないッスか。あと、誘惑魔法とかの封印」

「あぁ」

「でも、枯渇ってご主人と過ごしてりゃまず起こらないんスよ。それに、魔族は魔力があれば死なないんで、女王の呪いがある限り死ぬに死ねないんス」

「そうだな」

「で、仮に枯渇して寿命削ったとしても、また吸精すれば寿命戻るんスよ。つまり、実質不都合なしで利点しかないんス!」

「そうかな、そうかも……?」

「そうッスよ。だから、呪いはあったままの方がアタシ的には嬉しいッス!」

「そうか? まあ、リリィがそう言うなら……」

「それに、そこまで長生きする気も無いッスからね~」

「いや、できれば長生きしてほしいんだけども」

「淫魔基準ッスよ~」

「私は……」

「ん?」

「私は、解いてほしいわ……」

「ああ」

「……孕みたいもの、アナタの子を」

「……あぁ」




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https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=297777&uid=59551

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 興味のある方はお気軽にどうぞ。
 詳しくは活動報告にて。

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◆ステータスについて雑な解説◆

 生命=HP、スタミナなど
 魔力=MP,MP回復量など
 膂力=パワー、装備可能重量など
 技量=テクニック、精密動作性。コンボの速さなど
 敏捷=スピード、ジャンプ力など
 頑強=耐久、体幹、防御力、各種状態異常耐性。ガード時の受け値など
 知力=魔法等の記憶数。精密操作、連射性能など
 魔攻=魔法の威力。範囲。効果時間など
・魔防=魔法、属性攻撃への防御力。一部状態異常耐性など
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