来週はどうなるか分からないので今のうちに投稿しときます。
今回は三人称、ルクスリリアの過去編。雰囲気は軽いです。
ヒロインの過去編はルクスリリアしかしないかもという保険をかけておきます。
ルクスリリアは大罪を犯した。
小淫魔ルクスリリアは落ちこぼれサキュバスである。
ルクスリリアは同じ小淫魔の母から生まれた下級淫魔だ。平民淫魔など殆どが小淫魔でありぶっちゃけ弱いのだが、ルクスリリアは中でもぶっちぎりのザコサキュバスであった。
あまつさえ、生まれて一年で身体の成長限界を迎える淫魔にあってルクスリリアは一年経っても幼い容姿のままであった。小さくて細くて胸がないクソザコ淫魔、それがルクスリリアだった。
「えーマジ処女!? キモーい!」
「処女が許されるのは一歳までだよねー!」
「う、うるせぇえええ! アタシだって好きで処女やってんじゃねぇんスよ!」
この世の美とは即ち豊満さである。巨乳にあらずんば淫魔にあらず。おっぱいが正義であるならば、ちっぱいは悪になるのだろうか。
当然のように、ルクスリリアは他種族の男から全然モテなかった。同い年の淫魔がどんどん処女を卒業していく中で、ルクスリリアだけが処女を捨てられずにいた。
淫魔は処女のまま10歳を迎えると最強の魔術師になれるという言い伝えがあるが、それは嘘だった。何故嘘だと分かるかというと、ルクスリリア当人がそれを証明してしまったからである。
「こんなに悲しいのなら……こんなに苦しいのなら……愛などいらねぇッス!」
と、10歳の誕生日で一念発起したルクスリリアは、淫魔王国兵として軍隊に志願した。
が、ダメだった。一応入隊自体はできたものの、ルクスリリアに兵士の素質はなかったのである。
「このクズどもめ! トロトロ走るんじゃない! なんたるザマだ! 貴様らは最低の処女だっ! ヴァージンだっ! この世界で最も劣った魔族だ! そうじゃないと言うなら腰振ってケツの穴絞めろ! エルフの処女みたいにひんひん鳴きおって! みっともないと思わんのかこの純潔吸精鬼ども! 童貞が喰いたいなら強くなれ! 強くなって吸精しろ! 強請るな勝ち取れ! さすれば与えられん!」
「んんぐぉおおおお……! 童貞……! アタシも童貞食べたいッスゥゥゥ……!」
「ルクスリリアァ! ペース落とすなぁ!」
「はいッスゥ……!」
前述の通り、ルクスリリアは身体が小さく、細い。体格相応に体力がなかった。重い物も持てないし、足も遅かった。
ホントにそれだけなら魔力でどうとでもできるはずなのだが、ルクスリリアにはどうにもできなかった。何故なら、処女だから。吸精した事がないから、魔族にとっての一番大事な魔力が致命的に少なかったのである。
「はぁ……はぁッ! き、キツいッス! 無理ッス! なんでみんなそんな動けるんスかぁ!? ヴォエぇぇぇ……!」
「ルクスリリアァ! 何をチンタラやっとるかァ! 貴様ちゃんと男食ってンのかァ!?」
「処女なんスゥゥゥ!」
「あ、悪い。そういうつもりじゃ……」
ぶっちゃけ、処女のルクスリリアには新兵訓練も厳しかった。
でもガッツはあったので、毎日ヘトヘトになりながらも続ける事はできた。
しかし、そんなルクスリリアの心をへし折る事件が起きたのだ。
「お久しぶりです、レギン卿。今年もどうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ。この日の為に新兵どもには禁欲を命じておりました」
「おや、それは頼もしいですな」
淫魔軍の隊長と、人間軍の隊長が握手している。
淫魔王国兵お楽しみの、他種族との合同訓練(意味深)であった。ついに、この日が来たのだ。ルクスリリアはこの日の為に頑張って来たといってもいい。
「それでは、これより合同魔術訓練を行う! 名前を呼ばれた奴らは前に出ろ!」
大きな広間で、淫魔軍と人間軍の新兵たちが向かい合っていた。
それから、名前を呼ばれた淫魔軍の兵士たちは列になって人間軍の兵士の前に立ち、人間に向かって誘惑魔法と淫奔魔法をかけるのである。人間はその魔法に抵抗し、淫魔はその抵抗を破るべくガチで魔法をかけるのだ。
そして、見事人間を誘惑できた淫魔は晴れて合格となり試射場(意味深)で寝技鍛錬(意味深)ができるのだ。
ちなみに、負けた側の兵士は翌日訓練場全体の掃除をさせられるのだが、人間側が掃除するのが慣例だった。
「ふぅ……ふぅ……! やるッスよルクスリリア……! アタシはこの日の為に訓練してきたんス。今日こそ処女を捨ててやるッス……!」
合同訓練はつつがなく進行し、試射場では既に何人もの男女がウォークライを上げていた。
やがてルクスリリアの番が来た。相手は優しそうな印象の兵士だった。隊長の「はじめ!」の号令と同時、ルクスリリアは最高最強の魔法をぶっ放した。
魔力も練った。魔法も発動した。手応えが、あった。
「……あの、すみません。やっぱ無理みたいです」
「ッス……!?」
が、ダメだった。
誘惑魔法は効いた。淫奔魔法も効いた。実際、彼の股間にはズボンを突き破らんばかりの聖槍が屹立していた。
けれど、彼の視線はルクスリリアの隣の淫魔新兵にくぎ付けだった。
ルクスリリアのロリ性が、ルクスリリアの魔法を相殺してしまった様だった。
「あーっと……明日、お前は掃除しなくていいぞ」
「はいッス……」
結局、ルクスリリアが誘惑した兵士は、隣の淫魔がペロッと平らげてしまった。
それどころか、皆が徹夜でお楽しみしてる中、ルクスリリアは淫魔用の部屋で一人寂しく丸くなっていた。
そんな事があって、ルクスリリアは兵士を辞めた。
軍を抜けたルクスリリアだが、縁には恵まれていた。上官の勧めで、とある貴族の召使いとして雇ってもらえる事になったのだ。
決して好待遇という訳でもなかったが、そこまでキツい仕事ではなかった。休日もあったし、給金もそれなりにもらえた。処女こそ卒業できなかったが、何気に良い暮らしができるようになっていたのだ。
しかし、召使いの仕事には一つめちゃくちゃキツい時間があった。
「本日は猪人族のガチデ・ハラマース様の一族がお越しになります。失礼のないように」
「はいッス」
ルクスリリアの主人は、頻繁に他種族を招くのだ。すると決まって、夜はレッツパーリィをするのである。
その間、ルクスリリアは何をしているか。ナニもできないのだ。
大広間では淫魔VS屈強な他種族男衆がドンパチ賑やかにやっているというのに、ルクスリリアは家畜小屋併設の宿舎でひと眠り。朝が来れば下級使用人一同で大掃除である。
「うぅ……アタシも男食べたいッス……! もう童貞じゃなくてもいいッス……! ヒトオスなんて贅沢言わないッス……! せめて死ぬ前に吸精してぇッスよぉ……!」
そんな日々が続き……。
いつの間にか、ルクスリリアは20歳の誕生日を迎えていた。
そして、奴は弾けた。
「あぁ~! 童貞ヒトオスの性奴隷になってご主人様にめちゃくちゃにされてぇッス~!」
「リリィ、馬鹿言ってないでこれ運んできて」
「あいッス~」
ルクスリリアは処女をこじらせていた。
通常、淫魔は位階が低い程性欲・精力共に弱く低燃費であると言われる。
しかしながら、ルクスリリアは生まれつき性欲だけは並外れて強かった。そんな性欲激つよ処女サキュバスは、20を超えた瞬間なにかどこかがおかしくなっていた。
それから、しばらく。
悪い意味で運命の出会いがあった。
ある日、いつものように主人の淫魔が他種族男性を招いた時の事。
そのご一行の中に、如何にも童貞な人間族の少年がいたのだ。
仕事の最中、その少年と目が合ったルクスリリアは……。
「そろそろ狩るッスか♡」
完全に危ない淫魔になっていた。
夜、ルクスリリアはトイレ中の少年にこっそり接近し、誘惑魔術を使った。
しかし、失敗した。普通にレジストされ、他の人を呼ばれ、同意なく客人に手を出そうとしたとして大問題になった。
かつて、淫魔はあらゆる種族の女性からウンコのついたお菓子の次に嫌いな種族と言われていた。
なにせ勝手に男を誘惑して連れて帰るのである。そんで絞り殺す。何気にヤバい。男特効だ。男が大半を占める軍相手の場合、サキュバス軍はマジで強かった。
それから色々と歴史的なアレコレがあったりして……。
現代、サキュバスの大半はひとつの国に引きこもって暮らしている。
人間族の国で住んでる淫魔もいるが、彼女等は極めて強い理性を持っている希少種だ。
同意のない吸精の禁止。一方的な淫魔特性の行使の禁止。他国での誘惑行動全般の禁止などなど……。
こういった条約を結び、淫魔はようやっと他国や他種族と手と手を結んで生きる事ができるようになったのだ。
今の淫魔は大人しい。そうであれと教育される。
時たまやってくる観光客や行商人、あるいは国が招いた人たちを食べて生きる。もちろん、両者同意の下で、決して絞り殺さないよう加減をする。
それを破った淫魔は重罪人として扱われる。まして、高位淫魔の客人に対して誘惑魔法を行使しようものなら……。
「てなわけで~! リリィちゃん? キミぃ、奴隷堕ち!」
「ひえぇええええええ!」
残念でもないし当然の裁きであった。
むしろ温情ある処置とも言えた。相手側が怒ってないというのもあるが、ルクスリリアが処女であるというのもある。
えぇ……その歳で処女なの? あ、そうなんだ……。じゃあ、我慢難しいよね……という同情意見が多数寄せられたのだ。
でも、罪には罰が必要であった。
「安心して。奴隷って言っても人間族のところに売るから、運が良ければ性奴隷にしてもらえるかもよ?」
「それ本気で言ってるッスか?」
「ん~? 世界は広いから、もしかしたらリリィちゃんみたいなちんちくりんが好きっていうヒトオスちゃんもいるかもよ?」
「いる訳ねぇでしょうがぁああああ!」
そんなこんな。
晴れて奴隷身分となったルクスリリアは、淫魔女王直々にいくつかの呪いをかけられ、出荷される事となった。
檻に入れられ、ドナドナされるルクスリリア。遠ざかる淫魔王国を見ながら、ルクスリリアは……。
「クソソソソソソ……! いつか絶対伝説の超ビッチになってアタシを馬鹿にした奴全員見返してやるからなぁぁぁ! 角洗って待ってろッスゥウウ! これで勝ったと思うなッスよぉぉぉ!」
不屈の精神で己の処女魂を燃やしていた。
そう、ルクスリリアにはガッツがあるのだ。
さて、時は進んで奴隷商館。
ルクスリリアは、運命の男と出会う。
今度は、良い運命だ。
「ルクスリリア、こちらは銀細工持ち冒険者の“黒剣”のイシグロ様です。貴方のご主人様になるかもしれない方です、失礼のないように」
閉ざされていた瞳が開くと、目の前には二人の男がいた。奴隷商人の男と、もうひとり。
黒髪黒目。並みの淫魔以上の魔力量。如何にも高そうな服を着て、首に高位冒険者の証である銀細工を下げていた。
そして、驚くべき事が二つあった。
「うぁ……ぉぇあ……」
イシグロという男は、童貞だった。
ひと目で分かった。彼はピチピチフレッシュの汚れなき童貞だった。その身に巡る魔力に混じって、童貞特有の香りがぷんぷんしていた。これまで見てきた男の中で最も美味しそうだった。
そして何よりも、イシグロはルクスリリアを見て、性的に興奮していたのだ。
「あぅえ……ぉあぁぁ……、ぉうぁい……ぃあぁぁ……!」
一瞬、ドッキリかと思った。故郷のいじめっ子が良い感じのタイミングで現れて「ドッキリ大成功~!」ってやった後に目の前でこの男を喰い始めるのだと思った。
だが、それはなかった。イシグロの曇りなき瞳には、ルクスリリアへの強すぎる情動が満ちていた。
それはルクスリリアが一度として感じた事のない感覚だった。いつも他の淫魔が向けられていた情欲に満ちた瞳だった。羨ましかった。妬ましかった。いつか自分もと渇望し、ついぞ手に入れられずにいた視線だった。
イシグロという男は。
童貞で、ヒトオスで、ルクスリリアに欲情できるご主人様候補だったのだ。
だから……。
「アタシを買って下さいッスゥゥゥーッ!」
こうなった。
感想投げてくれると喜びます。
ちなみに、サキュバスは平気で100年以上生きます。淫魔の20歳はまだまだヒヨッコです。
軽い口調で話してる淫魔女王は1000歳超えてます。