【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も感謝です。お陰で助かっています。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。これ、多分読者さんが思っている以上に作者のやる気に繋がっています。
王の一党はそろそろまとめるので、多分次話投稿時に締め切ります。まだ募集中なので、よろしければどうぞ。
今回はクッソ久しぶりのダンジョン回。一人称と三人称のごっちゃです。
とはいえ、少しです。戦闘描写ですね。詳しい剣の形状や性能の描写は次回。
前話の事後処理や、剣注文後の生活についても次話でやると思います、多分。
俺が転移したこの異世界は、ゲーム的仕様に満ちている。
全部が全部そうという訳ではないが、ことバトル関連は特にゲームチックだ。
攻撃力10の斧の一撃より、攻撃力100のダガーのひと刺しのが強い異世界。前の感覚を引きずっていると、痛い目を見る。見た。
いやぁ、頭殴ったら怯むと思うじゃん。全然怯まないからね、ダンジョンエネミー。目ん玉に剣突うずるっ込んでやっても、あいつら余裕で生きてるからね。
怯ませたいなら怯み値を、殺したいんならHPを削り切るしかないのである。HPがゼロになるまで、奴さん等は元気に動くのだ。
雑魚も、ボスも、いくら頭なり首なり心臓なりを攻撃したところで、それが効かなきゃ死んだりしない。
郷に入りては郷に従え……とは違うが、異世界の怪物を退治するなら、異世界の法則に順応する外ないのである。
やるならやるで、ちゃんと相手に合った攻撃をしましょうって話だ。
この世界は、攻撃ひとつひとつにゲーム的な属性付けがされていて、戦闘においてそれはとても重要な要素である。
物理、魔法、火とか水とか。特定属性への呪いに、各種状態異常。効く奴には効くが、効かない奴にはとことん効かない。
物理だけでも、斬撃・刺突・打撃に加え、全物理攻撃共通属性である“標準”の四種類。
それら属性値は武器ごとモーションごとに割合で設定されていて、攻撃力とは別である。ダクソのレイピアは刺突オンリーだが、この世界のレイピアは刺突90標準10といった具合。
覚える事は多いが、覚えやすい。ゲームっぽいからね。
しかしながら、ゲームっぽいけどリアルっぽい要素もあるのが、まぁ何とも言えない。
例えば、攻撃モーションによる威力の差。属性値の違い。
先述の通り、攻撃力10のハンマーの一撃より、攻撃力100のダガーのひと刺しのが強い。分かりやすい、基礎攻撃力がダンチだからだ。
ただ、攻撃力10ハンマーを、両手持ち大上段全力振り下ろしした攻撃の場合、単にハンマーを片手振りするよりも威力が出るのだ。そりゃ、武器は片手で振るより両手で振った方が強いだろう。まぁ分かる。それでも攻撃力100ダガーの片手斬りのが威力高い訳だが……。
同じように、攻撃力100ダガーでも、サッと振って先端で薄皮一枚切るより、思い切り振りかぶった上で深々と突き刺した方が威力が出る。
強い武器でも、ちゃんと使わなきゃあいけないんだな。
これは、俺のチート能力でも分からなかった事である。数値に載らない、所謂マスクデータだ。
俺やルクスリリア達が活用しているアシストもそれ前提で最適化されてるようである。モーションアシスト様様だ。お陰で上手にダメを稼げる。
さて、モーションの他にも色々と複雑な条件で与ダメが変わる異世界。どのように武器を振り、武器のどこを、どの敵にどう当てるかによっても威力が変動する。攻撃属性もまた同様に。
剣の場合、剣先とその周辺が最も威力が出る。スマブラのマルスの様である。物理属性の割合は、たぶん斬撃60標準40。この標準属性のお陰で、斬撃耐性持ってる敵にもまぁまぁ効く訳だ。
次に、剣の腹で殴った場合、これは打撃属性になり、モーション値が低いようであまり威力が出ない。同じ攻撃力の武器でも、ハンマーの方が強い。剣腹攻撃は打撃30標準70って感じかな。打撃弱点の敵に効くといえば効くが、普通に斬った方が威力は出る。
で、片手で突きをすれば刺突60標準40となる。刺突弱点の敵の場合、これは同攻撃力のレイピアのが強い。片手袈裟切り、これは先述と同じ斬撃60標準40。斬撃弱点の敵の場合、斬撃値の高い同攻撃力の曲剣のが威力出るよね。両手でフルスイングしてみると、あらまぁ斧のが威力が出るじゃない。
あれ? なんか剣弱くね?
いいや、弱くはない。
俺が剣を使うのには、理由がある。
バランスが良いからだ。
先述の通り、剣はモーション値や物理属性の特化具合が他武器よりも控えめだ。
攻撃力が同じなら、刺突はレイピアに負け、斬撃は曲剣に負け、当然打撃も槌以下だ。両手攻撃も、斧のが強い。
だが、全部できる。だから気に入った。標準属性が多めに入る=どんな敵にもある程度効くのである。
刺突弱点の敵には突き攻撃。斬撃弱点の敵は普通に斬る。打撃弱点の奴ならば、普通に斬って突けばいい。
打撃こそロクにカバーできないが、それでも一つで二種の物理属性攻撃ができるのは便利だろう。
あと、使いやすい。初期武器というのもあるだろうが、何となく手に馴染むのである。
さて、その上で、我が一党の攻撃面のバランスを見てみよう。
俺、主に剣を使う。斬撃、刺突が可能。武闘家パンチや戦士メイスで打撃もできる。一応魔法もできるし、突けない弱点属性は多分ない。
ルクスリリア、主に大鎌を使う。大鎌攻撃は斬撃と刺突の複合属性で、標準属性は控えめ。魔法も撃てる。使う機会はそんなに無いが、一応デバフもできる。守護獣のラザニアも風属性特化だが魔法も物理も可能である。
エリーゼ、完全魔法特化。しかし、魔法+打撃属性の“破城槌”や、魔法+刺突属性の“魔力の騎士槍”で対応力はそれなり。魔力耐性が高い敵の場合、バフに専念すれば一党全体のDPSを上げる事ができる。
そして、グーラ。
先日注文した彼女の主武装は大剣である。完成予想図を見るに、長さはグーラの身長を超えるサイズ。ダクソで言うとこの特大剣である。
そんな剣を、グーラは片手で振り回せる。まるで傘でも振るように、片手でブンブンできるのである。
大剣の場合、直剣よりも標準属性が多めに乗る。もっとデカくて太い剣の場合、申し訳程度に打撃属性が乗ったりもする。
斬撃、刺突、標準、それから少しの打撃属性。特化武器には劣るが、大抵の敵には攻撃が通る。
つまり、何が言いたいのかと言うと……。
大剣ブンブン、相手は死ぬ。
氷柱迷宮。
一面、氷の世界。濃紺の空、不自然なほど過剰な星明りの下、芯まで凍った冷たい大河の中心地。
そこに、戦いがあった。
否、蹂躙だ。
ひと振り。氷の牙持つ熊の頭が、いとも容易くぶっ壊された。
ひと突き。氷の盾持つ大蟹が、甲殻諸ともぶっ潰された。
ひと薙ぎ。獲物を囲んだ氷の鼬が。五匹纏めてぶっ飛んだ。
肉を切らせる意味はない。殺られる前に殺ればいい。
先に仕掛けた氷の魔物が、後から応じた黒の暴威に蹂躙される。
猛る事なく、淡々と、ぞっとするほど怜悧な金瞳が、邪魔な奴等を睥睨した。
炎が爆ぜ、雷が奔る。漆黒の獣剣士が、鉄塊の如き剣を振るう。
その動きはあくまで俊敏。踏み込み難い氷河の上を、雷纏う脚で駆け回る。
駆ける、振るう、殺す。大牙を与えられた矮躯の獣は、あまりにも野性的に、かつ理性的に殺戮をこなしていた。
鉄剣が炎を纏う。剣の間合いに、獲物は三匹。右から左、剣の軌道が眩い烈火の弧を描く。
絶死の円、氷の毛を持つ狼群。一匹目は雑に両断されて死んだ。二匹目は頭蓋を粉砕されて死んだ。三匹目、野生の勘で炎を避けた。魔狼の鼻先を死が過る。
火がかき消える。剣の暴威が収まった。先に体勢を整えたのは、狼だった。
狼が走る。爪を立て、牙を剥き、同胞を殺した怨敵に襲い掛かった。
その目に、小さな細剣が突き刺さった。狼が転倒する。投剣だ。鎌片手に空を飛ぶ淫魔が嗤っていた。すぐさま、時間を巻き戻すように剣が抜け、持ち主の下へと帰っていった。
呼気。余裕はあったが、お陰で深く踏み込めた。殺せる確率が上がった事に、黒の戦士は我知らず犬歯を剥いた。
眼窩から血を流す氷狼。だが、この程度で死にはしない。氷柱迷宮の守り手は、残る瞳で獲物を殺すべく再度駆け出した。それが本能だからだ。
そして、次の瞬間、哀れ狼は脳漿をぶちまけて殴殺された。今わの際に見たのは、迫りくる炎の柱だった。剣の刺さった逆側から、燃え盛る剣の腹が叩きつけられたのである。
肉を焼き、骨を砕き、氷の鼓動を終わらせた。炎を消した剣に、焦げ臭い命の残滓がこびりついていた。
この程度なら、訓練の方が過酷だ。漆黒の獣剣士は超重量の剣を握り直し、主のいる最前線へと向かって行った。
与えられた指示は、湧いて出た雑魚の掃討。随伴ありの、安全で楽な命令だった。
急ぎ走って三秒半、頭目が相対する敵を捕捉した。
迷宮の支配者は見上げる程大きな狼だった。身にまとう毛は全て氷柱であり、手足と牙に冷気を纏っていた。
氷柱牙狼。この迷宮の主である。
相対するのは、三人と一頭。正面に一人の男。その後ろに竜族の少女。空には巨大な四足獣と、ついさっき助けてくれた淫魔の姿。
狼が吠える。爪を振るい、身体全体を叩きつける。一党の仲間達は、危なげなく立ち回っていた。
猛る狼を前に、頭目の男は左手の剣で防御を続けていた。常の動きではない。その右手には真新しい槌があった。
突進を避ける。その瞬間、まるで時が止まったように躍動。槌に浄化の火が灯る。それを、氷柱が生えそろった腹に、叩きつけた。
苦悶の声を上げ、大きく後退する狼。その眼前に迫った魔法の槍を避け、続けて迫る魔弾の雨を甘んじて受ける。その隙に、頭目の男はあえて狼の眼前に陣取った。
幸運にも、矮躯の獣は気付かれていない。勘に従い死角に潜り、獲物を見据えて思いつく。
今、後ろからやれば、一撃では?
訓練の日々を思い出す。何となく、殺れそうだ。習っていない、古獣剣術の奥義のひとつ。
姿勢を低くし、腰をねじる。地を踏みしめ、ただ速く駆けるべく構えを取る。身の丈以上ある剣を、逆手に持った。
ひと呼吸、剣に炎が宿る。両脚に雷が迸る。戦っている仲間の邪魔にならぬよう、壊して良い軌道を見つけ出す。
ぶわりと、獣の全身から
死闘の中、魔力を感知した氷狼が振り返る。目が合う、もう遅い。一直線、雷が轟き、氷河が亀裂を生んではじけ飛ぶ。瞬きの間、逆手に持った炎の剣が、氷狼の胴に叩きつけられた。
激突、轟音。氷柱が溶ける。鉄が食い込む。だが、命に届かない。経験が少ない。まだ足りない。ならば加減は必要ない。裂帛の気合と共に、炎雷を全解放。瞬間、確かな感触が返ってきた。氷柱が溶け、肉がえぐれ、筋と骨がはじけ飛ぶ。
安心した、これなら殺せる。
最後の一撃は、せつない。
水袋を割った様な快音。骨が断たれ。魂が砕かれ、氷柱牙狼の目から光が消えた。
切り抜ける勢いそのまま、雷電の尾を引き氷の地を滑る獣。炎を消した剣を突き立て、勢いを止める。
訓練を思い出す。心を残す。剣を構え、敵を見据えた。
剣先の向こう、断末魔の悲鳴もなく、氷の狼は粒子となって消えていった。
それから、獣の主人たる頭目の男は、呆然と呟いた。
「アバンストラッシュじゃん……」
あばん……? グーラは首をかしげた。
その手には、めちゃくちゃ物騒な剣が握られていた。
幸い、彼女に付いた返り血は“心炎”のお陰で綺麗さっぱり消えていた。血塗れじゃなくてよかったね。
〇
結論を言うと、グーラは強かった。
予想を超えて、強かった。
ステータス云々でなく、何というか“戦い”が上手かったのである。
何だろう、心技体の“心”が戦闘行動にジャストフィットしてるというか……。
戦い方に、素人特有の危なっかしさがなかったのである。
「凄いなグーラ! めっちゃ強いじゃん!」
「ええ、初めての迷宮とは思えないわ……」
「迷宮処女卒業、おめでとッス!」
色々あって、剣が完成し、慣らし訓練も終えた後……。
それから、満を持しての初迷宮。グーラは見事ラストアタックを決めて。ボスを倒してみせたのである。
ハイエナではない、アレは立派な不意打ちだ。どうやったんだ、センスがあるとしか思えない。
氷柱迷宮、一面氷の屋外型中位ダンジョン。出て来る敵は氷柱を纏ったエネミー限定。御多分に漏れず炎が弱点。
グーラの初迷宮。レベル的には下位の迷宮のが良いかと思ったのだが、対策してればここは下手な下位迷宮よりも簡単なので、俺たちはこの氷ダンジョンに決めたのだ。
何たって、此処は寒いだけで面倒なギミックがない。シンプルに敵倒せばいいだけの迷宮なのである。寒さ無効のグーラにはぴったりだし、炎特性で弱点入りまくり。敵は多くて硬いけど、火力は低いからそこもグーラ向きだ。
「えへへ……ボク、上手くできましたか……?」
照れたように、頬を掻くグーラ。とても可愛い。
その手には大剣。とてもかっこいい。
要望通り、注文して出来上がった剣は極めて頑丈で、かつ火力が高かった。
なにせ、ちょっと振るだけでザコ敵一撃死だもんね。だからといって、誰もが使える強武器ではないのが男心をくすぐる。
実際、同じ前衛の俺でも持ち上げる事しかできないのである。それこそ、デッドリフトの様に。振り回すなんてとんでもない。
「よし、じゃあ今日は約束通り、グーラの好きなものを食べに行こう」
グーラ。炎と雷を宿し、超重量の大剣を振り回す近距離パワー型ロリ。
それでいて足が速く、攻撃の出も速く、父のを見て覚えたアクロバティック剣術のお陰で隙がない。
近づいて斬る。斬ったら逃げる。チャンスがあれば死角からバッサリだ。
「えと、あの……じゃ、じゃあ、トウモロコシのスープが、飲みたいです。えへへ……」
そんな彼女は、最近知った大好物に胸を躍らせていた。
野生を理性で乗りこなす、戦に秀でた天才少女。
けれども、その素顔はとても純朴だった。
……ホントにマジで強い。
だって、俺のチートが言ってるもん。
グーラの通常攻撃、あれ全部ガー不だゾって。
「あ、グーラ、さっきので戦士10になったから剣士に替えとくな」
「強くなれたという事でしょうか? はい、よろしくお願いします」
「なんスかね、一応アタシのが上のはずなんスけど……ぜってぇ戦いたくねぇッス」
「そうね、障壁張っても、壊されそうだし……」
なお、まだまだ強くなる模様。
王の一党、募集中です。よろしければどうぞ。
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こっちも投げてくれると喜びます。
グーラには王の一党に入れるくらいの才能があります。