【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も感謝です。非常に助かっています。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
彼とか彼女とか早く出したいですね。
王の一党のご応募もありがとうございました。
十分数集まったので、募集はここで終了とさせて頂きます。
今回は剣注文から現在までの話。
時系列が行ったり来たりします。
今現在、俺たちが住んでいるところは、お高めの飲食店の上にあるお高めの宿屋である。
自然、食事には下階の飲食店を利用する事が多く、最近はほとんど店から出来立てを直接部屋に運んできてもらっている。
お高め異世界メシ、けっこう美味い。技術・文化の割に、食に関しては存外進んでるのは幸いだった。
とはいえだ。お高めの飯屋であっても、当然として頼めないメニューというのは存在する。
カレー食べたいならカレー屋。パスタ食べたいならイタリア料理店。焼き鳥食べたいなら焼き鳥屋に行くべきなのである。
異世界でもそうだった。国ごと、種族ごとに特有の食文化があり、メニューの数は膨大。いくらお高い料理店でも、それら全部を網羅できる訳ないのである。
「改めて、初踏破おめでとうグーラ。よく頑張ってくれた」
「ッス! よく動けてたと思うッス!」
「ええ、立派な戦いぶりだったわ」
「ありがとうございます……!」
そんな訳で、俺たちはグーラの迷宮初踏破を祝して外食をしていた。
本日の主役たるグーラはトウモロコシのスープが食べたいとの事で、ならばと農業ガチ勢種族たる
「あら、この小さいのは何かしら……?」
「アタシも見た事ないッス。蜜柑の親戚ッスかね?」
「とっても美味しいです! 味は蜜柑に似ていますね……!」
席は二階、所謂VIP席だ。一階には森人の客が多い印象。居酒屋ほどではないが、下からは静かな活気とでも言うべき喧騒が聞こえてくる。
荒っぽさのないお店である。喧嘩なり何なりをしている客なんていない、良い店だ。
そんなお店で、俺たちは迷宮用防具を装着し、護身用の武器を身に着けていた。
ルクスリリアは短い細剣。刃渡りといい何といい、パッと見ちょっと豪華になったダクソ鎧貫きだ。別に奇襲用という訳ではないので、ある程度目立つよう邪魔にならない範囲の装飾も付けてもらった。
エリーゼは短杖。ハリポタ風の木の杖だ。細く軽く短い指揮棒めいた奴で、中身は魔法装填特化。王笏との併用は考えていないので、防御・回復をメインとした完全時間稼ぎ構成である。
グーラの腰にも石器めいたゴン太ダガーが装備されている。動きの邪魔にならないよう、刃渡りは短めで肉厚。ちなみに、これに全力で雷エンチャすると疑似ライトセーバーができる。
で、俺は腰に無銘を装備している。これくらいのサイズなら帯剣が許されているのだ。
「にしても、なんか最近は色々あったッスねー」
でっかいトマトみたいなのを食べながらしみじみ言うルクスリリア。
彼女の言う通り、迷宮探索こそしていなかったが、確かにグーラが来てからの一ヵ月はそれなりにイベントのあった日々だった。
ロリたちの会話を聞きつつ、俺はここ一ヵ月の事を思い出していた。
〇
剣の注文から完成まで、約一ヵ月。
それまで、やる事はいっぱいだった。
巻き込まれたのもあったが……。
まず、エリーゼにかけられた呪いの解呪。
結論からいうと、これは上手くいかなかった。
呪術店に行き、専門家に診てもらったところ、どうやらエリーゼにかけられた呪いは極めて強固であり、解呪は難しいと診断されたのだ。
少なくとも、並みの呪術師では呪いを弱める事さえ不可能であり、解き方も分からないと。
「仮にもお父様を殺した竜族の呪いよ。そう容易ではないでしょうね……」
残念がる俺に対しエリーゼは思いの外落ち着いている様だった。
可能なら解呪してほしいと言っていたエリーゼである。彼女のその振る舞いは、慣れ切った諦観の様に見えた。
だが、この程度じゃ諦めきれない。俺は他の優秀な呪術師を探す事にした。並みの呪術師でダメなら、並みじゃない呪術師に頼めばいいだけの話である。
その後も色んな店に行ってはみたが、どこもうちじゃ扱えないとの一点張り。
むしろ、下手に弄るとエリーゼに反動が来て余計酷い事になるかもしれないとか。
こういう時、呪いをかけた張本人を殺せば治るのがお約束ではなかろうか。
そう思って訊いてみると……。
「そんな訳ないでしょう? 普通、呪いはかけ捨てよ。わざわざ復讐される理由を作る訳ないじゃない」
との事。
乗り込んでぶっ倒してハッピーエンド! とはいかない様だ。
あっちもこっちも、ままならない事ばかりである。
それからいくつかの呪術店に行き、南区一だという呪術師さんに紹介状を書いてもらい、王都一の呪術師さんに診てもらえる事になった。
で、予約した日に行ってみると、並みじゃないらしい呪術師さんは色んな魔法や魔道具を使ってエリーゼの呪いを診てくれた。
検診の結果、触媒さえあれば何とかなるという診断だった。
「本当ですか!?」
「はい。ですが……」
詳しく訊くと、件の触媒はとても希少で、お金で買えるものではないらしい。生産地はラリス王国の外であり、入手ルートも確立してないんだと。
そもそも、呪術はマイナージャンルの魔術体系。使用者が少ない分、対処法も普及してないというのだ。そんな中、極めて強力な術者がかけた呪いを解く方法は限られてくるのだとか。
「望みは薄いですが、ツテを頼って探してみましょう」
王都一の呪術師さんは、そう言ってくれた。
これ以上俺が行動してもどうしようもない。俺は後の事を呪術師さんに任せ、その時を待つ事にした。
とりあえずは、一歩前進としておこう。解呪法が存在する事を知れただけヨシとするしかない。
「私の為に、アナタが動いてくれただけで、私はとても嬉しいわ……」
実際に解呪できるかどうかは、まだわからない。
それでもエリーゼはそう言って微笑んだ。
今は希望を持って待つしかない。
呪いについては、そんな感じ。
あと、ストーカー被害にあった。
時は王都一位の呪術師さん検診前。
事の発端は呪術店巡りをしている最中だった。
ストーカーの発見は、あまりにも容易かった。というか、意識せずに見つけられたのだ。
まず俺のチートレーダーに引っかかり、ルクスリリアの性欲センサーに引っかかり、エリーゼの魔力センサーに引っかかり、グーラの「視線を感じます」という格闘漫画センサーに引っかかったのだ。
とはいえだ。前世、詳しくはないがストーカーというのは被害が出てから対処されるものであると聞いた。あっちとこっちじゃ事情は違うだろうが、それでもいつ何処にどうやって相談すればいいか、俺にもルクスリリア達にも分からなかった。
とっ捕まえて止めろなんて言っても仕方がないだろう。如くのサブシナリオじゃあないのだ。仕方なく、俺たちは極力離れないよう行動する事にした。
例のパース商会からの刺客という線も無いでは無い。警戒し過ぎて損はないはずである。その間、外に出る時はずっと武装していた。
「あのぉ……イシグロさん、お久しぶりっす」
そうやって悩んでいると、宿屋に犬人斥候・ウィード氏が訪ねてきて、ヤバい奴がルクスリリアたちを狙っているかもと教えてくれた。
ウィードさん曰く、そういうのはギルドに相談すればいいらしいので、とりあえずとウィードさんの勧めでギルドに相談すると……。
「お初にお目にかかります、イシグロ様。私は西区迷宮ギルドの役員のマトリョーナでございます」
あれよあれよと、ギルドの偉い人が出張ってきて、なんか盛大な計画に巻き込まれてしまったのだ。
それから色んな人と話をして、何やかやあって決行日……。
「死ねよやァーッ!」
「グワーッ!」
「待て! 殺すな! 俺はまだ殴ってねぇ!」
「アバーッ!?」
「お前のせいでなぁ! 娘の婚約がオジャンになったんだよなぁ! この腐れゴミカス野郎がぁ!」
「オボボーッ!」
「貴方の子よ! 認知して!」
「いやどうみても耳がエルフじゃな――」
「イヤーッ!」
「グワーッ急所!」
詳細は省くが、例の演習はなかなか悲惨だった。
目だ! 鼻だ! 耳! とばかりに、俺も最初はやる気満々だった。が、次第に「もういいか」と怒りが萎えてきたのである。去勢したところですぐ治せる世界である。これ以上やっても仕方ないかと思ったのだ。
そうして冷静になると、むしろ周囲の雰囲気に軽くビビッてしまった。
ストーカー男に恨みがあるという男女複数名によるリアルリンチ会場。
報復と悪罵、頽廃と混沌とをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはラリス王国の王都。西区の広場。
暴行アンド回復アンド暴行。同情とか共感とかはないが、さんざん斬ったし俺はもういいかなって……。
痴情の縺れって怖い。俺は心底そう思った。
その日、俺はみんなに良い子良い子してもらって心を癒やした。
平たい胸に抱かれる安らぎよ。
で、それから。
剣が出来るまで鍛錬場でグーラのトレーニングなどしつつ、一ヵ月と少し。
ついにグーラの装備が完成したのである。
〇
宴は楽しい。
前世、酒のアテというとコンビニのレンチンおつまみというイメージだったが、酒と一緒に食べるお野菜というのも悪くないと思った。
こうやってご飯と一緒に酒を飲む文化が異世界にもあってよかった。何よりルクスリリアたちと一緒だ。気分は上々である。
酒が入ると何話しても楽しくなるもので、店の雰囲気もあって俺たちはゆったり盛り上がっていた。
「ところで、どうして皆さんの装備は黒なのでしょう?」
「無難だから?」
「素材の味?」
「私のは趣味よ」
話題は二転三転し、そのうち各々の装備についての話になった。
グーラの言う通り、俺たちの武装はみんな黒い。俺は剣含めて全部黒いし、ルクスリリアも肌面積以外は黒だ。エリーゼは黒基調で青や銀を混ぜてオシャレに着こなしている。
FF15かペルソナ5か。ともかく俺たちゃ黒いのだ。
「その色合いは、エリーゼが考えたんですか?」
「ええ、洒落ているでしょう?」
「センスの良い中二病って感じだよね。俺は好きだよ」
「ちゅーに? 何スかそれ?」
「グーラの剣みたいなのとか」
武器の後、例によってグーラの防具もオーダーメイドした。
そうして出来上がったグーラの装備は、かなり軽装である。
武器は重量級だが、頑強ステの低いグーラに重装させるメリットは薄い。
それと、グーラは獣系特性で鉱物の鎧を装備できない。勇次郎ではないが「持ち味を活かせ」という話で、専門家との相談の結果、動きを邪魔しないよう布と革の装備になったのだ。
「剣も、鎧も……こんなに上等な装備を着せていただき、ありがとうございます」
そう言って、革製の胸当てをぺたぺた触るグーラ。その胸は平坦だった。
今のグーラは迷宮探索用の防具を身に着けている。とはいえ、無骨さはない。お腹もおみ足も丸見えだ。
要するに、エロかっこ可愛い防具なのである。
◆グーラの軽革鎧◆
・物理防御力:600
・魔法防御力:600
・補助効果1:自動最適化
・補助効果2:自動修復
・補助効果3:魔力回復(大)
・補助効果4:簡易伸縮
・補助効果5:水属性耐性(大)
・補助効果6:銀耐性(大)
・補助効果7:対獣耐性(大)
・補助効果8:魔法防護(大)
胴は心臓を守る為の最低限の革鎧のみで、遠目に見るとノースリーブのレディース用トレーニングウェアに見える。
下はベルト付きのホットパンツに、靴は運動できそうな革のブーツ。
ヘソも肩も膝も丸出しで、ついでに手袋も五指が露出しているタイプである。これだけだと、淫魔のルクスリリアよりも肌面積が多い恰好だ。
「凄く着やすくて、動きやすいです。魔力を使ってもすぐ回復できるので、戦っている最中はどんどん火とか使っちゃいました」
とはいえ、淫魔ファッションって訳ではない。
その上にもう一つ装飾品を重ねて、グーラの武装は完成するのだ。
さながら、ソシャゲの露出規制対策の様に。
◆混沌魔糸のマント◆
・補助効果1:自動修復
・補助効果2:水属性耐性(中)
・補助効果3・銀属性耐性(中)
・補助効果4:対獣耐性(中)
・補助効果5:魔法防護(小)
・補助効果6:雨避け(大)
ヘソ出しスポーティスタイルの革鎧。それらを覆う形で、グーラにはフード付きのマントを羽織ってもらったのだ。
このマントはダンジョンボスの白蜘蛛羊の毛をメイン素材にし、迷宮産の絹とか糸とかをフルに使って作ってもらった奴だ。丈は適正サイズのポンチョくらい。
黒マントの縁には金色の糸で刺繍がされており、グーラの希望でちょこちょこ拳聖イライジャ氏の意匠もある。
「一緒にデザインを考えるのは楽しかったわね」
「ええ、エリーゼはとても博識で……」
全体的に、グーラの装備の色は例によって黒基調。金と赤の差し色が入って何だかオシャレだ。黒銀青のエリーゼとは好対照である。
色や中身はともかく、シルエットだけ見るとどことなくプリコネのムイミちゃんの様である。
「特にフードがいいよね、フードが。うん、フードは良いよやっぱ」
「にしても、そのフードって何の為にあるんスかね?」
「デザインよ」
「一応、被ると“雨避け”という補助効果が発動する様です。雨に濡れなくなるらしいですね」
ちなみに、マントについているフードは、被るとしっかりとグーラの犬耳をカバーしてくれるデザインだ。
ケモミミフードである。とてもかわいい、
補助効果は魔力回復系と、各種属性耐性を少々。
獄炎犬は水に弱いらしいし、轟雷狼は銀属性に弱いのでそこもカバー。
あと、両弱点の獣特攻にも一応耐性をつけた。それでも、四倍弱点が等倍になるくらいだったが、そこは仕方がない。
「あまり詳しくないのですが。とても良い剣でした。ありがとうございます、ご主人様」
そう、そんな装備で大剣を振るうのだ。すごい良い。
ガッツといいムイミちゃんといいゲール翁といい、マント+大剣はとにかく映えるのだ。
ザ・ボーイズやインクレディブルではマントはディスられてた気もしたが、ここは異世界である。こっちのは某神経外科医のマント君並みに空気を読んだ動きをしてくれるのだ。
勝手に動く事はないが、装着者の邪魔をしないムーブをしてくれるのである。流石の異世界物理法則だ。
「グーラには強くなってほしいからね。金剛鉄くらいいくらでも出すよ」
マントも凄いが、グーラの武器にはもっと凄いインパクトがある。
俺は件の剣の初お披露目の日の出来事を思い出していた。
〇
「へっへっへっ! お久しぶりでさぁ!」
ストーカー騒動の後、剣が完成したという報告を受け、俺たちは西区のとある鍛冶屋まで来ていた。
曰く、運ぶの大変過ぎるからゴメンだけど取りに来てという話だった。
「どうも、お久しぶりです」
「へへっ、こっちでさぁ! 打った奴も挨拶したいってんで、是非会ってやってくだせぇ!」
やけにテンションの高いドワルフに案内され、注文した剣が置かれているという倉庫に向かう。
鍛冶屋の裏手の倉庫に入ると、広々とした空間の中心に、まるで棺桶の様な箱が置いてあった。
また、その棺桶の前には如何にもなドワーフ男がいて、俺と目を合わせると彼はビシッと姿勢を正した。軍人というより、サラリーマンといった佇まいだ。
「どうも、私がこの剣を打った鍛冶師です。名をインヴァと申します」
インヴァと名乗ったドワーフは、さながらパブリックイメージとしてのジャパニーズサラリーマンの如き折り目正しいお辞儀をしてきた。
髭といい身長といい筋肉といい、如何にもなドワーフなインヴァさんは、とても几帳面そうな人だった。シムズの特質でいうと、「完璧主義」「工作好き」「生真面目」といったところか。
「このような場所までご足労頂き、誠に申し訳ありません。打った手前情けない話ですが、ここまで運ぶのがやっとでして……」
という挨拶もそこそこに、俺たちは棺桶の前に集まった。
どうぞ開けてくれという職人二人に促され、俺は吸血鬼が眠ってそうな棺桶の蓋に手をかけた。
背中に視線。前でも異世界でも、こういうのは初めてである。見られながらだが、ゼルダの宝箱を開ける時みたいだった。
脳内にあのBGMが流れる。ドキドキしながら棺桶めいた箱を開けると、中にはザ・大剣と言わんばかりの代物が収まっていた。
「グーラ、持ってみて」
「え? ボクですか? あ、はい……!」
見るからに重そうである。本能的にギックリ警戒をした俺は、人生初ごまだれをグーラに譲る事にした。
ちょこちょこと寄ってきたグーラは、何の感慨もなくザ・大剣の柄を握り、無造作に持ち上げてみせた。後ろから、男二人の「おぉ……!」という野太い歓声が聞こえた。
「流石に、ちょっと重いですね」
ちょっとじゃないだろう。
と思いつつ、俺はグーラにそのまま持ってるよう指示して、柄に触れて性能を確認してみた。
◆無銘の特大剣◆
・物理攻撃力:1200
・補助効果1:自動修復
・補助効果2:武器防御
・補助効果3:剛性強化(大)
俺の剣と比べ、デカさ重さの割に攻撃力が控えめなのはこの世界の仕様である。
表記上の攻撃力はこうだが、実際殴ってみると俺の無銘よりもずっと高い威力が出るはずだ。モンハンの片手剣と大剣、一発が重いのは後者だろう。
「いいよ、ちょっと振ってみて」
「はい」
性能は見た、要望通りだ。
それから少し離れて、振ってもらう。上げて、降ろす。上げて、降ろす。ちょっと重いですねという申告通り、小枝を振るというような感じではなかったが、それでも重さにそぐわぬ軽やかさだ。
ひと振りする度、グオンブオンと如何にもな重低音が聞こえてくる。何度振ってもグーラの表情は変わっておらず、重たそうにしている感じはない。
「おいおい、マジですかい……」
「もしかして、あの方は王の血族でいらっしゃるとか……?」
OKもういいよと言うと。グーラは某勇者の様に剣を掲げてみせた。
ハートもがんばりゲージも消費せず、グーラはお強い剣を手に入れたのである。
だが、それはマスターソードと言うには、あまりにも大きすぎた。
大きく、分厚く、重く、聖剣というか魔剣っぽかった。
グーラの剣の色は使用した素材の関係で鈍い黒色であり、神々しさよりも質実剛健さが勝っているように見えるのだ。
出来上がったグーラの剣は、まさに特大の剣であった。
ロリじゃないので正確な大きさは分からないが、刃渡りだけでもグーラの身長――145㎝だ――を超えているように見える。背中に斜め掛けしても、多分マウントできないくらい大きい。
形状はドラゴンごろしよりむしろファランの大剣に近く、厳つさとスタイリッシュさが矛盾なく同居しているイケメンブレードだ。
「悪くないデザインね……」
「なんか肖像画で見た古代魔王みたいッス」
色といい、デザインといい、大きさといい、なんか主人公サイドにはいないタイプの剣だと思った。
なんか、ちょっとオシャレめな魔王が振り回してそう。火も雷もエンチャできるし、魔王適性高いと思うな。
「ど、どうでしょうか……?」
虎眼流“流れ”のポーズで、上目遣いして見てくるグーラ。
全員間合いである。そのまま振られたら凄惨な事件に発展しそうだ。
「かわいい」
「あ、ありがとうございます。えへへ……」
素直な返答をすると、グーラは照れ照れと頬を掻いた。
スイカに塩とは違うが、無骨&ロリの組み合わせは大変よろしい。とかく、デカい武器と女の子は相性がいいのだ。
前世でそういうのに馴染んだ俺からすると、今のグーラは最高に可愛かった。ソシャゲならリセマラ必須級である。
「うん、すごい良い……」
なにより、素敵性能が高い。もしくは寝室性能が最高だ。
そう思うのだが……、
「やっぱご主人ってズレてるッスよねー」
「可愛い、とは少し違う気はするのだけど……」
「あっしぁそういうのには疎いんですが、ありゃ可愛いんですかい?」
「ど、どうでしょう? 私も剣に可憐さを見出した事はなく……」
異世界人にはピンと来なかったらしい。
〇
「そういやぁ、その剣にはまだ名前つけてないんスか?」
宴もたけなわ、馬乳酒片手に顔を赤くしたルクスリリアが云った。
今現在、ご飯を食べているのはグーラだけである。俺はビールを呑んでるし、エリーゼも白ワインを吞んでいる。
問われたグーラは、野菜スティックをポリポリ食べてから答えた。
「はい。その、ボクが名付けるとのお話でしたが、どうにもよく分からなくって……」
グーラの剣は、まだ銘を刻んでいない。俺のロンソと同様、無銘のままだ。
ドワルフ曰く、「命預ける武器は使い手が名付けるもんですぜ」らしい。せっかくだからとグーラに任せてみたが、どうやらこういうのは初めてだったらしく、なかなか決められていない様だった。
頭目としては適当で良かったのだが、真面目なグーラは未だに悩んでいた。
「好きなのでいいのよ。有名な剣に肖ってもいいし……。アレクシオスの剣は、なんて名だったかしら?」
「聖剣テイラウスですね。でも、それだと丸パクリになっちゃって、それは何か嫌だなーって思います」
「難しいよねー、名付けって」
ある意味、だからお任せしたというのもある。
このままだとグーラの剣は無銘のままになってしまう。それは俺のと被るので、出来れば違うのでお願いしたいところ。
俺は俺のネーミングセンスを信用していないのだ。ガンダムブレイカーの愛機に「ガンダムメロンソーダ」と名付ける男だ。そんなんならグーラ自身で付けた方がナンボか良いだろう。
ラザニアの時とは違う、ありゃ向こうからお願いされたのだ。
「じゃ、じゃあ……」
食器を置き、何やら声を上ずらせたグーラが云った。
「よ、よろしければ、皆様のご意見を伺って、それから決めたい……です」
控えめな彼女にしては珍しく、能動的な提案だった。
促されないと意見を言えなかったグーラが、何気に一歩目を踏み出してくれたのである。
良い兆候だと思う。俺的には可能な限り尊重したいところだ。
「うん、じゃあそうしよっか」
「まあ、アタシもアタシでそんな得意じゃないんスけどねー」
「ふふっ、この時の為に考えていたのよ……」
最近、グーラは笑う事が増えた気がする。
少しは心を開いてくれたと、そう思っていいのかもしれない。
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします……!」
そんな感じで、俺たちは剣の名付け……なんていう中学生みたいな話題で、まったりと盛り上がるのだった。
感想投げてくれると喜びます。
現在、本作に登場するキャラクターを募集しています。
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作者のやる気に繋がります。
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あと、キャラ募集に関して、レギュレーションを少し追記しました。