【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
 これも頂けるとシンプル嬉しいです。特にキャラが嬉しいですね。アイデアに繋がります。


ロリと緑の砦

 199X年、迷宮は竜の炎に包まれた!

 あらゆるダンジョンエネミーは絶滅したかに見えた!

 しかし、魔物は死に絶えてはいなかった!

 

「ヒャッハー! 汚物は消毒だぁーッ!」

「きひっひっひっ! 水魔法ッスー!」

「はい! どこからでもどうぞ! はぁッ!」

 

 燃え上がる大樹。炎に撒かれて出てきた魔物に、三人の冒険者が襲い掛かる。

 その上空には、四方八方に炎版内閣総辞職ビームを撃ちまくる銀髪ロリ。

 木々が爆ぜ、熱風が吹き荒び、黒い煙が迷宮を覆う。まるで森が悲鳴を上げている様だ。事実、そうである。

 

「くっ、一体取り逃したわ……!」

「グーラ!」

「はい! オォォォォッ!」

 

 見渡す限り、木木木……。

 この迷宮は、森自体がダンジョンボスなのだ。

 なら、燃やすよねって話。

 

 

 

 戒森迷宮。

 その名の通り。屋外型の森林ダンジョンだ。迷宮ランクは上位で、ボスが強いというより道中がキツい系である。天気は常時晴れの昼。気温は体感30度以上。鬱蒼とした緑からは、生臭い自然の匂いが漂っていた。

 特徴は何といってもダンジョンである森自体がボスであるという点。森というかジャングルといった風のこの迷宮は、生えている木の一本一本、草花の一つ一つ、岩や川に至るまでフィールドを形成するほぼ全てがボスの身体なのだ。実際、俺の視界には現在進行形で微減し続けているHPバーが見えている。

 

 森がボスという事は、動いて迫って攻撃してくるという事だ。根っこはしなって襲ってくるし、葉っぱはカッターになって降ってくる。岩は触ると爆発するし、綺麗な川は全部毒。爆発花粉に毒の蜜、綺麗な薔薇にはトゲがある。

 そこに追加でボスとは無関係のザコエネミーがどっさり。木系草系を中心に、獣型鳥型いろんな見た目の魔物がいっぱい。中には下位迷宮の主なんかもいたりする。

 根や葉は厄介なだけで弱いのだが、ここのザコは強いザコだ。しかも連携してくる。そういうトコが普通のギミックと違う。

 

 踏破するには、森中心にある核を壊すしかない。ボスの弱点兼本体はジャングル奥地にある何か気になる木であり、名前は知ってる“過殖成樹”。

 そいつは近づくと急速成長して襲い掛かってきて、まぁまぁ強いらしい。デカくて重くて頑丈なのだ。シンプルめんどい。

 

 さて、俺たちはそんなダンジョンを……。

 

「よし、焼き払え!」

「了解。燃えろ(・・・)……!」

 

 エリーゼの魔法で焼いた。

 ボスもザコも、皆そろって炎弱点なのが悪い。炎上の影響など、装備とポーションで如何様にもできる。千空が見たら卒倒しそうだ。

 凄い炎だ、気分は織田信長である。

 

 空中に飛んだエリーゼによる、高高度からのゴジラ砲&クソデカファイヤーボール&大佐指パッチン&分裂炎ミサイル&ムジュラ月めいて落ちて来る太陽&ほのおのうず。魔力無限の銀竜は、それらを状況に合わせてポンポン連発していた。

 遠くで大爆発。クソデカ火の玉が落ちたのだ。熱風に煽られ、銀の髪が舞い上がる。まさに邪竜。まさに自然の破壊者。完全にヴィランの所業である。環境破壊は気持ちいいゾイとでも言いたげに、その口の端は歪んでいた。竜族ってそういうトコあるよね。

 

「魔力過剰充填……“雷射”」

「よいッス!」

 

 当然、森の破壊者を森さんが許す訳もなく、空を飛べるエネミーは主犯であるエリーゼに殺到してきた。

 そういう奴は対策済みだ。エリーゼ目掛け飛んでくる飛行エネミーを、俺は下から弓で射落とし、ルクスリリアはラザニアと一緒に迎撃していた。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 燃え盛る森の中、地上では炎無効のグーラが好き放題暴れていた。時折、そこに俺も加勢する。

 それから、今回は特別ゲストがいるのだ。エリーゼとゲスト、どっちも守らないといけないのが頭目の辛いところである。

 

「へっへっへっ! いやぁ~! たまんねぇなぁオイ! 長生きはするもんだ!」

「ええ、実に見ごたえがあります」

 

 全身耐火装備の武器工匠・ドワルフと、同じくフルアーマーの鍛冶屋・インヴァさんだ。

 二人は自前の全身鎧を身に着け、大きな盾と小さなハンマーで武装していた。

 完全にお荷物だが、契約の都合だ。戦闘には参加させず、防衛対象にはじっと引きこもってもらっていた。「迷宮への恐怖は忘れちゃいませんぜ」とはドワルフの言葉。それはそれとして、見たいものは見たいらしい。

 

 

 

◆烈火の宝杖◆

 

・補助効果1=自動修復

・補助効果2=魔法装填(業火熱線)

・補助効果3=魔法装填(追尾する炎の三連球)

・補助効果4=魔法装填(砕け得ぬ爆焔大球)

・補助効果5=魔法装填(爆発する炎の飛沫)

・補助効果6=魔法装填(偽太陽)

・補助効果7=魔法装填(火炎竜巻)

・補助効果8=魔法装填(火煽扇)

・補助効果9=魔法装填(聖光の極大治癒)

 

 

 

 今回、エリーゼが持っている武器は、前の銀王笏とは別の杖である。

 先端に真っ赤な宝石がある、如何にもな杖だ。例によって装填特化。中には炎属性の魔法が装填されており、現在進行形で森を焼き払っていた。

 これをお得に買うにあたって、ドワルフ達を同行させているのである。

 

「お二人とも、大丈夫ですか?」

「へへっ、大丈夫も何も、あっしぁ何もしてませんぜ」

「ご安心ください、これでも鉄札を持っております。邪魔だけは致しません」

 

 あの宝杖は、ドワルフとインヴァさんが悪ノリで作った炎特化杖だ。出来上がった後、一回迷宮連れてってくれたら金貨一枚で売ってくれるよというので、契約したのである。

 ドワルフ曰く、冒険者の武器というものの多くは、潜ると決めた迷宮にアジャストした特化武器であるらしい。汎用性重視の俺だが、炎なり何なりの属性特化武器が欲しくなかった訳ではない。

 いい杖ではある、と思うが……ちと火力に寄り過ぎてないか? あの、小回りが……。

 

「それより、オヤブンが来ましたぜ旦那ぁ!」

「アレが成樹ですか。大きいですねぇ……」

「ですね。下がってて下さい」

 

 燃え盛る森の奥、見上げる程の大樹が、もはや火の海と化した台地を行進してきた。のっしのっしと黒煙の奥から歩いてくる様は、さながら巨大特撮怪獣の様。

 そんな木に、エリーゼの炎魔法が殺到する。モンスターらしく、野太い悲鳴を上げる大樹くん。反撃に葉が変化したザコエネミーを飛ばしてくるも、俺とルクスリリアが処理していき、大規模技は攻撃を止めたエリーゼが飛行とバリアで凌ぎ切る。その隙間に、再びの炎。

 完全にワンサイドゲームであった。

 

 それから、どれくらい戦っただろうか。

 何の良いトコもなく、大きな木はどっしんと倒れて粒子に還った。

 なんかごめん。

 

「こんなものよ……」

「さ、流石竜族ですね……」

「ほとんどエリーゼが倒しちゃったッス!」

 

 この迷宮は、破壊した自然に応じてボスの強さが変わる。

 当然、可能な限りの環境破壊をしてきたので、今回のボス本体はかなり弱っていた。

 

 ヌルゲーザコダンジョンな感じはあるが、森は普通ここまで燃えない。ボスが回復するのと同様に、森は燃えても回復するのだ。火炎放射程度なら、余裕でレジストされる。

 だが、エリーゼほどの火力ならどうだろうか。高位魔術師が一日に一回しか撃てないような大技を、運動会の玉入れ感覚で連発できるのが彼女だ。ドッカンドッカンやってたら、再生が追い付かないくらい燃やせるのである。

 出て来る雑魚も魔法の余波で弱ってるし、そいつらは炎無効のグーラが蹴散らす。空のエリーゼはルクスリリアが護衛。俺は弓なり魔法なりで陸空の援護。

 開発者の意図しない攻略法でクリアした気分である。なんか複雑、複雑だが……。

 

「ふぅ、楽しかったわね……」

「ッスね! こうも燃えると派手で良いッス!」

「そ、そうでしょうか……? でも、エリーゼはホントに凄いと思います……!」

「ええ、お見事です。職人冥利に尽きます」

「へっへっへっ、良いモン見せてもらえましたぜ」

 

 まあ、スッキリはした。

 不謹慎というか罰当たりというか背徳感みたいなのはあるが、こうも破壊された跡を見ると逆にスッキリする。

 現代日本で違法な事でも、異世界迷宮だと合法なのである。

 

「おっ……」

 

 ドロップアイテムをしまい、コンソールを見る。

 するとそこには、エリーゼがジョブチェンジ可能な状態であるとの情報。

 

 どうやら、中位職の竜戦士長から、上位職の“竜将”と“ドラゴンロード”になれるようだ。

 竜将はこのままの進化。ドラゴンロードは戦士長よりバフデバフに偏るって感じか。どっちもステはバランス成長。

 まあ、どっちに行くかは後で決めるとして……。

 

 ルクスリリア、淫魔姫騎士。上位職。

 エリーゼ、そろそろ上位職。

 グーラ、ソードマスター。中位職。

 

 なかなか強くなったと思う。

 そろそろ、考えていた事を実行してもいいかもしれない。

 

 対策はしたのだ。

 いつまでも、今のままじゃいられない。

 

 

 

 

 

 

「武器持った?」

「持ったッスよ」

「警笛魔道具は?」

「あるわ」

「集合場所は?」

「転移神殿、ですよね?」

「もういいかしら……?」

「あ、財布! 財布持った?」

「も~。あるッスよ、ほら」

 

 宿屋前、俺は三人と相対して最終確認をしていた。

 現在、俺たちは防具を装備しており、各々護身用の武器を携帯していた。ルクスリリアは細剣。エリーゼは木杖。グーラは短剣だ。武器の他にも、財布やハンカチや防犯グッズも持たせている。

 それというのも、今から別行動をする為である。

 

「いい? 銀細工には近づかない。ヤバそうな人は避ける。知らない人にはついてっちゃダメ。いざとなったら攻撃していい、覚えてるか?」

「これ、いつまでやるつもり……?」

 

 が、ここにきて俺はロリ限定の心配性を発動してしまった。

 心配のし過ぎだ。分かってはいる、分かってはいるが、それはそれとして、心配なのだ。

 避けては通れない、必要な事なのだ。何度決意したつもりでも、いざ前にすると腹が決まらない。

 

「あの……でしたら、ボクは宿屋に残った方が……」

「それよりは皆といてほしいかな」

「はあ」

 

 確かに、別行動中の安全だけを考えるなら、彼女等には宿屋でじっとしてもらった方がいいのだろう。

 だが、エリーゼの過去を聞かされた身としては、そういった事は避けるべきだと思うし、そうでなくてもしたくない。エリーゼの言う通り宝であっても、物ではないのだ。

 前までは普通に屋台で買い物とかしてもらっていたのだが、グーラの件やストーカー被害を受けた事で、俺の過保護スイッチは入りやすくなってしまったのである。

 

 王都は治安の良い街……らしい。

 個人規模の喧嘩こそあれ、よほどの事でもない限りエグめの犯罪に巻き込まれる事はない。それは、三ヵ月一人で過ごしていたから分かる。

 

 例の対人訓練の実施から約一ヵ月、ルクスリリア達は既にニーナさんから「皆さん、既に並の銀細工を超えていますよ」とのお墨付きをもらっている。三人がかりなら、余裕をもって“剛剣鬼”のラフィにも勝てるだろう。それも分かっている。

 迷宮鍛錬鍛錬迷宮鍛錬……。こっちの就労感覚は分からないが、いい加減で自由な休息は必要だろう。それを、今こそ提供できる。強くなったから、できるのだ。

 

 俺視点、異世界生活は毎日が休日の様なものである。

 命賭けのダンジョンアタックも、鍛錬場でのトレーニングも、西区の散策も、どれも疲れるが楽しいのだ。ほとんど遊びの延長である。

 が、現地人からしたらどうだろう。俺の感覚で仕事をさせるのは、かなりの苦行なのではないだろうか。そも、夜の運動会は無休なのだ。普通におかしい。

 

「はいはいはい、じゃあもう行くッスよ。適当なトコで神殿前にいるッスから。ご主人もごゆっくり~」

「あ、ああ……」

 

 過保護になる俺に対し、サバサバしたルクスリリアは二人を連れて去って行った。

 

「ええ。心配いらないわ、この杖があるもの」

「い、いざとなったらボクが前に出るので……」

 

 三人が遠ざかる。俺はどんどん意気消沈していった。とても寂しい。

 寂しいが、我慢だ。慣れねばならない。そもそも、前はソロだったし、日本では一人暮らしをしていただろう。

 

 休息日を設けると宣言した時、喜んだのはルクスリリアだけで、エリーゼとグーラはピンと来ていなかった。

 曰く、エリーゼはずっと父に従っていたので休みと労働の感覚が理解できず、グーラは休みの日という感覚が理解できなかったという。

 そんな彼女たちに、ルクスリリアは休息日の何たるかを叩き込むのだと言って張り切っていた。とても頼もしい。

 

 やれるだけの事はやった。ステータスも、装備も、準備も、俺にはこれ以上どうしようもない。

 しっかり満喫できるよう小遣いも渡したし、身分上行けない場所以外は自由に行動できるはずだ。

 前にルクスリリアが言っていた。奴隷証は役に立つと。自信はないが、あとは銀の威光に頼るしかないか……。

 

「行くか……」

 

 

 ルクスリリアとは反対方向に歩く。俺も俺で、用事を済ませよう。

 騒がしい人の話し声が、風と一緒に通り過ぎていくような気がした。

 

 夢にまで見た異世界を歩く。

 

 王都の街並みは、なかなかにカラフルだ。

 屋根は勿論、コンクリっぽい建物の壁には赤や青といった塗料が塗られていて美しい。広い通りには、建物と建物の間のロープに店舗の宣伝旗みたいなのがヒラヒラしている。

 少し外れたところに行くと、歩道の邪魔にならない程度に街路樹が植えられていた。橋の下、水路に流れる水も綺麗だ。こういう水路は凄い汚いイメージがあるのだが、流石の異世界ファンタジーぶりだと思う。

 広場には過去の英雄を象ったと思しき大きな銅像があり、その周りでは待ち合わせをしていたらしいカップルが「お待たせ、待った?」みたいな事をやっていた。前にあの銅像を見た時、グーラが興奮していた。拳聖イライジャ像である。

 

 右を見ても左を見てもファンタジー。異世界と言わずとも、異国情緒のある綺麗な街である。

 食べ物、建築物、多種多様な人の往来。どれひとつとっても観光資源になりそうだ。

 

 転移直後は、結構感動していたように思う。

 街往く異世界人に、店で売られてる魔道具に、王都の美しさに。

 だが、今の俺はそれらに感動する事はできなかった。

 

 理由は分かる。見慣れたとか、飽きたとかじゃない。

 単に、隣にルクスリリア達がいないから、楽しくないのだ。

 

 旅行は何処に行くかより、誰と行くか。そんな感じだろうか。

 ある意味、依存してしまっているのかもしれない。俺はもう、彼女達だけが生きがいになってるのだ。

 

 けど、いつか。

 解放すべきだろう。

 その為に、色々とやっているのだから。

 

「はあ……」

 

 ため息が出た。

 それから、努めて気分を切り替えた。

 

 深い事は考えない。悪い妄想はしない。

 もし、そうなったらそうなったで、その時は思いっきり泣こう。抜け殻みたいになるかもしれないが、その時はその時だ。

 

 とにかく、俺は俺の課題をクリアしていこう。

 今日のところは、前からやろうと思ってた事だ。

 義務でも課題でも何でもないが、まぁ少しくらいならと思える行い。

 

「あそこが止まり木協会か」

 

 孤児院への寄付だ。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、ルクスリリア達は……。

 

「はあ~、ご主人、大丈夫ッスかねぇ~」

 

 クソデカ淫魔氷菓(サキュバスアイス)を食べながら、ルクスリリアは空を仰いで呟いた。

 好物を食べている最中だというのにも関わらず、その表情は物憂げだった。

 

 最近、王都では空前の淫魔氷菓ブームが起きており、資金のある店は競うようにフレーバーを増やしてガンガン業績を上げているのだ。彼女達が今食べているのは、屋台ではなく専門店で買った淫魔氷菓である。

 来店時、ルクスリリアの奴隷証を見た店員はめちゃくちゃ態度が悪かった。が、証に書かれている主人の名前を見た瞬間に揉み手をして接客してきた。そういうのを、ルクスリリアは割と楽しんでいた。

 

 無論の事、いくらファンタジーとはいえ色々な事情で甘味は高級品だ。ピンからキリまであるが、今彼女たちが食べているのは異世界基準でアホほど甘い最上級グレードの淫魔氷菓である。奴隷が、というか並の王都民が気軽に食べられる菓子ではない。イシグロ氏、小遣いと言いつつ普通に豪遊できるくらい渡していた。

 ちなみに、ルクスリリアが頼んだのはシンプルイズベストの淫魔ミルク味である。

 

「なによ、ルクスリリアまで過保護?」

「ご主人様なら、何も問題ないと思いますが……」

 

 珍しいルクスリリアの様子に、二人はそれぞれ違う言葉を返した。

 ちなみに、エリーゼは青白い見た目の森人薬草(エルフハーブ)味――ミントアイスに近似――で、グーラは各種果実を混ぜに混ぜたフルーツミックス味だ。

 

「いや、そっちの心配はしてねぇッスよ。ただ……」

「ただ……?」

 

 エリーゼが促すと、ルクスリリアは匙ですくった氷菓を一口食べて、ため息混じりに云った。

 

「ご主人、アタシ等いないと元気無くしちゃう気がするんスよね~」

 

 当たりである。

 今現在、“剛剣鬼”と“風舞”を下した異世界基準相当な強者であるはずのイシグロは、ハイライトのない瞳で歩いていた。それを見た西区民は「やべ! 迷宮狂いが狂ってる!」とビビッていた。

 そんなルクスリリアの予想に、二人はこれまたきょとんと首をかしげた。

 

「そうかしら? 彼は銀細工を持っているのよ? それに、貴女を買う前は単独だったのだし、独りには慣れているんじゃない?」

「はい、ボクもそう思います。ボクの父さんよりもご主人様の方が強いでしょうし」

「そうじゃないんスよねぇ、そうじゃあ……」

 

 ある意味、感覚の違いであった。

 強い種族として生まれ、けれども弱い存在として生きてきた二人にとって、イシグロという男は完全無欠の超強者に見えているのだ。そんなイシグロが、一人でやっていけないとは思えないのである。事実、やっていけない訳でもない。

 だが、それはそれなのだ。何気に、童貞卒業の際にイシグロが涙を流していたのを見ているので、ルクスリリアはイシグロがそんなに強靭な精神をしていない事を理解している。

 なお、狂人な事は皆が把握していた。

 

「まっ、寂しがってるだろうし、今日は甘やかしてあげるッスかね♡」

「そういえば、あの時は随分喜んでいたわよね……」

「はい、とても安らかなお顔をされていました」

 

 エリーゼとグーラが言っているのは、例のストーカーリンチ事件の夜の事である。

 痴情の縺れにビビッたイシグロが皆に良い子良い子してもらった時の事であった。

 イシグロは随分と喜んでいた……と微笑ましげに回想するエリーゼだったが、この中で最もノリノリでプレイを楽しんでいたのはエリーゼであった。

 当時、ルクスリリアは喜んでママをやってたエリーゼを見て「こいつ将来子煩悩になりそうッスね……」と考えていた。

 

「多分、今晩はそうなるッスよ~」

 

 まあ、そういうのも嫌いじゃないのだ。予行演習にもなる、多分。皆、その気なのだ。

 実際、ルクスリリアは何時でも可能な状態をキープしている。何気にこの淫魔も将来の事を考えているのであった。

 

「じゃ、次は前行った古書店ッスね。できれば早めに終わらせてほしいッスけど」

「せっかくだし、貴女も読んでみるといいわ」

「ほ、本当に買ってもよろしいのでしょうか……? いくら何でも、勝手過ぎじゃあ……?」

 

 そんなこんな。

 

 淫魔氷菓を食べ終えると、三人の奴隷は意気揚々と街の散策に戻るのであった。

 キラリと、それぞれの奴隷証が光を反射した。手入れは欠かしていないのである。




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 アンケ三回目。一回目と二回目を混ぜました。
 あくまで参考です。これでヒロイン確定とかじゃないです。一位が報われるとかそんなん全然ないです。
 あくまでも参考ですのでご了承ください。
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