【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。ひとつひとつ拝見させて頂いております。
 誤字報告もマジ感謝です。ありがとうございます。

 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
 例によって、出てくる時はほぼ別キャラと化しているのでご了承ください。

 一連のエピソード、分かりやすいようにサブタイを統一しました。
 あと、後々の展開を考えて以前のとある部分を修正しました。すり替えておいたのさ!
 こういう事平気でやります。


ロリ娘ちゃんと共同浴場(下)

「ふぃ~」 

 

 蒸し暑い温浴室から出ると、肌に当たる空気がやけに心地よく感じられた。

 焼けるようだった石床が冷やっこく、歩く度に足底と床がピタピタ張り付く感じが堪らない。

 実にサウナ後って感じだ。

 

「竜族式なら、この後全身に“清潔”をかけるのだけれど……」

「いなそうだね」

 

 まぁ全身を綺麗にする為に入る風呂屋で全身を綺麗にする魔術師の出番はないよな。

 何なら俺がやってあげてもいいんだが、流石に専門家ほど上手くやれる自信はない。

 

 さて、サウナの後は水風呂に入ってから外気浴というのが定番だが、どうしたもんか。

 暑さ無効の二人にサウナルーティンにつき合わせるのもなぁって気持ちがないではないが、俺の視線は無意識に冷たい水風呂を探していた。

 

「お?」

 

 などと思いつつ屋内スペースを歩いていると、なんだか見覚えのあるモノを発見した。

 ぽつんと、それは屋内スペースの端っこにあった。シルエットだけ見ると四角い東屋って感じ。四つの柱の四角い屋根があり、その下からザーザーと雨の様に水が落ちてくる仕組みで……。

 

「じ、地獄のシャワー……!」

 

 そう、地獄のシャワーみたいなのがあったのだ。

 大きさや構造は大分異世界ナイズドされているが、アレは紛う事なき地獄のシャワーだ。あるいはレベル99のオーバーヘッドシャワーか。

 近くに行ってみると、冷たい飛沫が身体に当たった。何気に異世界でシャワーを初めて見た。説明看板には「雨露水浴」と書いてあった。

 幸運な事に、今現在雨露水浴を使ってる人はいない。特大シャワー独占とはなんと贅沢な。

 

「変なものを考えるのね、人間は」

「これは、雨を再現したものなんですね」

「だな。じゃ、これちょっくら行ってくるよ。無理そうだったら待ってて」

「あっ、アタシも入るッスよ~」

 

 結局、皆で浴びる事になった。

 学生時代を思い出しつつエントリーすると、火照った全身に上から下から冷たい水の洗礼。じわ~っと身体の芯に熱を感じる。おぉ、これはいい。

 

「あぁ~。いいッスね~」

「せっかく暖まったのに、不思議な文化ね……」

 

 シャワーを浴びているというより、雨を浴びている感じに近い。見ると、ルクスリリアはショーシャンクなポーズでシャワーを浴びていた。

 屋根全体がシャワーノズルの様なものだ。身体の一部でなく全身に水を浴びる事ができる。水の勢いはさほどでもないが、久しぶりのシャワーは実に心地よかった。

 

「ん?」

 

 ぺたっと左腕に感触。見ると、グーラが俺の前腕にしがみついていた。彼女の耳は折りたたまれ、目はギュッと閉じられていた。

 そういえば今まで意識してなかったが、グーラは種族特性で水属性が弱点なのである。冷水はダメージ判定なのかもしれない。

 

「グーラ大丈夫か?」

「えっ? あ、はい大丈夫です。なんか、びっくりしてしまって……すみません。えと……目が開けられなくって、このままでもよろしいでしょうか……?」

「ああ」

 

 どうやらダメージはないようだ。なんかシャワー嫌がるワンちゃんみたいである。俺の腕でいいならいくらでも。

 

「ふふっ、アナタは暖かいわね……」

「お? なんスかなんスか? ご主人で遊ぶならアタシも混ぜろッス~!」

 

 キャイキャイと地獄のシャワーに花が咲く。左腕はグーラに抱っこされ、右半身はエリーゼにさすさすされる。ルクスリリアは前から両乳首を攻撃してきた。

 そんな事をされると、サウナとは別の熱が身体を駆け巡ってしまう。地獄のシャワーかと思ったら天国のシャワーだった。

 

「あら、こんなところで……なんて節操のない」

「あはー♡ ご主人乳首立ってるッスよ~♡」

「お、お舐めした方がよろしいでしょうか……?」

「大丈夫だ、問題ない。男は皆、己を静めるビジョンを持っているのだ」

「え? なんッスか? もっぺん言ってみるッス♡」

「おぅふ……!」

 

 いや、流石に吸精はしない。メスガキに負けかけただけで、完全敗北は免れた。

 整うというか、余計均衡が崩れるシャワー体験でした、まる。

 

 そんなこんな。

 

 天国のシャワーを抜け、俺たちは一旦外に出て屋台のあるエリアに向かう事にした。

 魔族は平気かもしれないが、人間は水分補給をしないといけないのだ。

 

「四つください。味は……」

 

 せっかくなので、古代の賢者様が作ったという件のクリスタルヤシのジュースを飲む事に。

 注文すると、翼人族の店員さんは空を飛んでヤシの実をもぎ取ってきてくれた。そうしてグラスに注がれたヤシ水はシュワシュワと泡立っていた。これ飲んで大丈夫か?

 それから泡立つヤシ水にシロップを入れて混ぜ混ぜ。最後にデカい氷を一個入れて渡してくれた。コップはキンキンに冷えてやがった。ありがてぇ。

 

「んっ! これ美味いな!」

 

 いざ飲んでみたクリスタルヤシジュースは、まさに炭酸ジュースといった感じだった。

 なんと、あのクリスタルヤシは炭酸水の実だったのだ。染みこんできやがる、身体に。

 

「ん~、こりゃ頑張ればコーラが作れるかもしれないな……。えーっと、ドクターストーンではどうやって作ってたっけ……」

「ん~! これ良いッスね~! ハーモニーっつーんスかぁ? 味の調和っつーんスかぁ? とにかくこのシュワシュワ感がたまんねぇッス!」

「はい! とっても美味しいです! こんなに美味しい飲み物があったんですね!」

「ええ、美味しいわね。これで火酒を割ってもいいかもしれないわ……」

 

 クリスタルヤシジュース、皆も気に入ってくれた様だ。

 ちなみに、ルクスリリアは淫魔ヨーグルト味。エリーゼは葡萄味。グーラは林檎味だ。

 

「コーラ、ラムネ、ジンジャーエール……」

 

 時折吹く風を感じながら、ジュース片手に光を浴びる。エネルギーが湧いてくるし、何か知識チート欲が湧いてきた。

 試行錯誤すれば、俺でも何かしら地球の料理や飲料の再現ができるかもしれない。幸い、異世界には代用品があるのだ。全くの無からやろうというんじゃあない。ならできるかもじゃん。

 おぉ、俺の心の奥底の創作意欲が唸りを上げている。血を吐き続けるマラソンじゃない、もっと健全で楽しい希望が見えてきたな。

 

 サウナ、冷水、日光に炭酸ジュース。それと異種族美少女。

 本日何度目になるか分からないが、ホントに異世界来てよかったと思うね。

 

 

 

 それからも、俺たちは色んなお風呂を満喫した。

 シンプルに広いお風呂に、打たせ湯みたいなの、地獄の様に熱い風呂などなど……。

 

 せっかくなので、追加料金を払って入る特別なお風呂にも挑戦してみた。

 異世界スーパー銭湯にあるスペシャルバス、こっちもこっちでなかなか凄かった。

 

 最初に入ったのは、天使が生み出す聖水を沸かした“聖水風呂”。

 聖水と聞いて良からぬ事を妄想しそうになった俺だが、いざ入ってみると普通にいいお湯だった。お湯もうっすら発光して綺麗だった。

 天使族の種族スキルで生成された聖水には、HPリジェネと精神異常回復の効果があった様で、入ってると癒やし効果がハンパない。リラックスとはこういう事だと教えられた気分である。

 

「ふんぇぇぇ……もう出たくないですぅ……」

 

 中でも、グーラは聖水風呂をたいそう気に入った様だった。耳といい尻尾といいふにゃふにゃである。

 他の客も皆そんな感じだった。入浴前は今にも倒れそうな顔してた人も、聖水風呂に入った途端にヘブン状態になっていたものである。服用しない、浸かる抗うつ剤だ。

 

 続いて入ったのは、浴槽に何か良い感じの花々をぶち込みまくった“魔菜風呂”。

 これは前世テレビで見た事ある薔薇を敷き詰めたお風呂って感じで、湯はかなりねっとりしていた。美肌効果凄そう。

 実際、浸かってみたら徐々にMPが回復していくのが分かった。もしかして、これに入りながら魔法の練習したら効率的に熟練度上げられるのでは……?

 

「「んあぁ~」」

 

 とか考えてたら、魔族二人は肩までしっかり浸かって溶けていた。すっげぇ幸せそうな顔してやがる。

 見ると、この風呂の利用者は魔族多めだった。マジ悪魔って感じのチョイ悪お兄さんもふやけた顔で入っている。どうやらここは魔族特攻らしい。

 

 次に入ったのは、上森人の職人が作ったという“澄森風呂”。

 これは浴室全体が箱庭というかビオトープというか、とにかく風呂場が一つの森を切り取ってきたかの様な浴室だった。

 そこの奥にある小さな滝からは温水が流れており、下流部分にある浅瀬に寝そべって入るのだ。聖水風呂とはまた違う癒やし効果がある。

 

「悪くないわ……」

 

 これには誇り高き竜族のエリーゼさんもご満悦。

 上森人が作っただけあり、この人工森林風呂の客層は森人が多めだった。都会住みエルフの憩いの場って感じである。

 

 他にも色々あったが、それはまた今度。

 

「おぉ、広いな!」

「ほぇ~、水がこんなに……! 声も響きますね……!」

「あの者共は何をしてるのかしら……?」

「水ん中であんなに速く動けるなんて凄いッスね~」

 

 風呂の後は、これまた有料の屋内プールに行ってみた。

 いざ入ってみたそこは、用途別の様々なプールが沢山あった。足の届かないプールに、競走馬の調教で使いそうな遠泳プール。あと時速20km以上出てそうな流れるプールなんかもあった。

 外のプールがエンジョイ勢向けなら、内の此処はガチ勢向けって印象だ。種族柄水泳が好きって種族もいるんだろう。そういう人たちが伸び伸び泳げるように作られてるのだ。

 

 実際、ここを利用してる人は皆さん泳ぎが達者でいらっしゃる。明らかにオリンピック超えてる人とかザラであり、何とびっくり勇次郎プールでバタフライしてた獣人なんかもいた。

 さすが異世界人、オリンピック選手でも不可能な芸当である。マグロ……いや、シャチみたいな泳ぎっぷりだ。

 

「ほら、力抜いて~」

「む、難しいわ……」

 

 そんなプールで、俺は三人に水泳を教えていた。

 なんと、三人は泳げなかったのだ。

 

 最初は驚いたが、いや考えてみればそうだろうなと思った。俺は学校で習ったが、彼女等は初プールだ。ならば泳げる訳もなし。

 曰く、淫魔にも竜族にも泳ぎの文化はなく、グーラは川に入った事はあるが泳いだ事はないのだという。

 

「こんな感じでしょうか?」

「おぉ、すごいなグーラ! 泳げてる泳げてる!」

「魔力飛行みたいな感覚でいけばいいんスね」

 

 が、そこは異世界人クオリティ。グーラはすぐにスイスイ泳げるようになったし、ルクスリリアも少しずつ泳げるようになっていった。

 対し、エリーゼだけは全然だった。無駄に力んでるし、教えたフォームもすぐに崩れる。水しぶきはバシャバシャと凄まじいのだが、本人はほんの少ししか進んでいない。なかなかシュールなバタ足だ。

 

「ビート板とかがあればいいんだけどな」

 

 まあ、そんなものはないので、地道に練習である。

 エリーゼはそんな感じだが、気づいた時にはグーラはスーパー犬かきで50メートルプールを高速往復しはじめ、案の定ルクスリリアはエリーゼを煽りだした。

 

「ヘイヘーイ♪ 高位種族のくせに水の中じゃあ人間以下なんスね~♪」

「ゴボボ……かとうしゅぞく……! ゴボゴボ……」

「見て下さいご主人様! 水の上歩けるようになりました!」

「凄いなグーラ! いや凄いなマジで! えっ、それどういう原理……!?」

 

 で、だ。

 

 水泳もそこそこに、小腹が空いてきたのでフードコートに引き返す。

 入浴と水泳で消費したカロリーを補充だ。

 

「皆は何食べる?」

「ラリスサンドあるッスね! アタシそれにするッス!」

「な、ならボクも同じので……」

「私は……あら、果実の清浄果汁漬けなんてのもあるのね」

 

 野外エリアに戻り、フードコートで軽食を食べる。

 サウナに入浴に水泳と、お腹が空いたらしい三人は割としっかり食べていた。これならエントランスにあったレストランで食べてもよかったかもな。

 談笑しながら軽食。やっぱ運動した後の間食は一段と美味いな。

 

「おっ、イシグロじゃねえか」

 

 そうこうしていると、後ろから聞き覚えのある声。

 振り向くと、そこには三人の同業者がいた。

 

「うっすイシグロさん、こんなトコで会うなんて珍しいっすね」

「よぉイシグロ! 前模擬戦やったぶりだな!」

 

 そこにいたのは、犬人戦士のリカルトさんと犬人斥候のウィードさんと鬼人剣士のラフィさんだった。

 リカルトさんとは例のストーカー事件から、ウィードさんはグーラの一件から、ラフィさんとは前やった訓練以降ちょくちょく話をするようになったのだ。

 

「どうも。皆さんも風呂に?」

「ん? まあそうっすわ」

「集まってきた訳じゃないんだけどさ、さっき会っちゃって」

「それよりさ、ちょっとこっち来いよ。良いトコあるぜ」

 

 どうやら、連れ立ってきた訳ではないらしい。

 まあ、ここでそうなのはいじゃあバイバイというのは心情的に良くないか。少し話そう。

 

「ちょっと待ってて」

「あい~ッス」

 

 俺はロリ三人にしばらく知り合いと話す事を伝え、飲み物持って野郎三人について行った。

 ロリとの交流も大事だが、同業とのコミュニケートも大切だろう。俺も俺なりに成長しているのだ。

 

「いい眺めだろ」

「そうですね」

 

 男四人、銀細工三つ、何も起きないはずはなく……と内心ビビりつつ、連れてこられたのは広場を一望できる歩道橋の様なところだった。

 そこの真ん中あたりで、男四人が並んで下界を眺望していた。確かに、こういう高いトコはテンションが上がる。人がゴミの様だ。

 

「ホントに良い景色だよなぁ。おっさんの目の保養になるわ」

 

 言いながら、犬人戦士のリカルトさんは鼻の下を伸ばしていた。あ、そういう事ね。

 俺はこの先の展開を読み切り、王都の秋の空を見上げた。良い青だ。ジュースも美味い。

 

「なぁウィード、お前はどんな女が好みなん?」

「そうっすね……」

 

 ウィードさんとラフィさんは中学生男子の様なテンションで盛り上がっていた。

 異世界人は美男美女ばかりだ。ぶっちゃけタイプの違う美形しかいない。ある程度いくとほとんど好みの話になってくると思うのだが。

 

「俺はやっぱ、胸がデカいのが一番っすね。ほら、見てくれよあそこの牛人族! 笑う度に胸揺れてるぜ!」

「うおっ! すんげぇ胸! 乳牛系かな? 正体見たりって感じだな」

「おぉいいねぇ~、しかしその肉体誉れ高い!」

 

 どうやら、ウィードさんはおっぱい星人らしい。

 前世の友人でもおっぱい教徒は最も大きな勢力を誇っていた。俺には分からないが。

 

「ん~、でも髪が好みじゃねぇかなぁ~」

「おっさんはいいと思うけどな。んじゃあお前はどうなんだよ」

 

 問われ、ラフィさんは手すりから身を乗り出して右斜め下を指差した。

 そこでは複数の女性たちがお上品に談笑していた。比率的にはエルフ多めって感じか。

 

「やっぱ髪だよ髪! 長くてサラッとしてる髪が一番! その点、あそこにいる娘は皆最高だな!」

 

 彼は髪フェチらしい。まぁ全く分からないではない。黒髪ぱっつんロングのロリとか最高よね。

 

「まぁ確かに悪くねぇが、ちと肉付き足りなくねぇか? 全体的に細いっつーかよ」

「まず髪の毛だろ、身体は二の次!」

「毛並みの良い女の子は俺も好きっすわ。リカルトさんはどうですか?」

「あぁ? おっさんはなぁ……」

 

 問われたリカルトさんは耳をぴこぴこさせながら顎をしゃくってみせた。

 そこには屋外プールでボール遊びをしている女子集団の姿。バレー? いやドッジボール? 分からんが、運動中の彼女等は楽しそうにしていた。

 

「胸も良い、毛艶も分かる……が、一番は健康的な肉体だろとおっさんは思うワケ。見ろよあのケツ筋! たまんねー!」

 

 筋肉フェチとは違うか、彼は健康的な感じが好きらしい。

 分からなくはない。元気な女の子が素晴らしいのは万国共通だろう。俺もデレマスの晴ちんとか好きだよ。ロウきゅーぶは俺のバイブルだ。

 

「意外っすね。リカルトさんはもっとイジメ甲斐のある女の子が好きなんだと思ってました」

「それはそれ、同業以外はいびらないって決めてんの」

「ん~、悪くはねぇけど、やっぱ髪の毛が短いのはなぁ」

 

 わいわいがやがやと、地球でも異世界でも男は女の話題で盛り上がるらしい。

 性癖語りは蜜の味。学生時代、俺も休み時間はそうやって過ごしていたものである。皆、どうしてるかね……。

 

「イシグロはどうなんだよ?」

「え?」

 

 昔の事に思いを馳せていると、こっちにパスがきた。

 話を聞いていなかった。今何の話?

 

「ほら、あん中なら誰がいい?」

 

 リカルトさんが指し示す方、そこでは煽情的な衣裳を着た踊り子たちがステージでパフォーマンスをしていた。

 踊り子たちの種族はバラバラで、人間もいれば鬼人もいた。彼女らはアイドル的な人気があるのか、ステージ前には男女のファンらしき人たちが黄色い悲鳴を上げていた。

 

 ステージで踊ってるのは美形の女性ばかり。肉感的な人から、スレンダーな人まで。より取り見取りという奴だ。

 けど、そこにロリはいなかった。

 

「あの中にはいないですね」

「マジかよ。お前どんだけ変わり者なんだ……」

 

 確かに皆さんたいそう美人でいらっしゃるが、ロリではない。

 見た目だけでなく、その内面にロリ性が感じられないのだ。

 あれはロリではない。私がそう判断した。

 

「あら、こんにちは」

 

 その後もアレコレ話していると、これまた背後から声をかけられた。

 バッと、異世界生まれの三人組は同時に振り返った。なんか拙いものでも目撃された様な反応である。

 一拍遅れて振り向くと、そこには見知った女性がいた。

 

「皆さんお揃いで、珍しいですね」

 

 淫魔のニーナさんだった。彼女は普段かけている眼鏡を外していて、水着も露出度控えめの奴だった。物腰といい何といい、実に清楚である。

 

「お、おう、まぁな……」

 

 応じたリカルトさんがもじもじしている。その目は若干泳いでおり、ニーナさんの胸と足をチラチラ行ったり来たりしていた。

 どっしり構えてたリカルトさんらしくない。童貞でもあるまいに、凄く童貞っぽいムーブである。ナンデ?

 

「イシグロさん、一党の皆さんの様子はどうですか?」

「ええ、ニーナさんの指導のお陰で前より腕を上げています。また今度手合わせお願いできますか?」

「ええ、よろこんで。報酬は無料で構いませんよ」

「そうはいきませんよ」

 

 一通り挨拶を交わした後、俺とニーナさんは訓練の進捗について話をした。

 最近は彼女と対人訓練をやっていないので、またやろうねという話だ。ウィンウィンな関係を維持できていて結構。

 

「それでは。また転移神殿でお会いしましょう」

「はい、お気をつけて」

 

 それから二言三言話すと、ニーナさんは去って行った。

 ふと見ると、お三方は前かがみになって硬直していた。

 

「どうしたんですか?」

「いやよぉ? 不意打ちであの身体はやべーっすわ」

「髪も綺麗だったしなぁ……」

「良いケツしてやがったぜ、ホントに……」

 

 しかしね、君たち……男子中学生じゃあないのだから。

 理由は察するが、話してる女性の前で前かがみになるとかどうかと思うよ。多分バレてるし、俺まで同類だと思われたくないんだよな。

 

「いやいや、例え相手が淫魔でも公衆浴場でおっ始めるのはマジでダメなんっすよ。ふぅ~、事前に娼館行ってなかったら即死だったっすわ……」

 

 そりゃそうだ。なら尚の事、俺も気を付けなくてはいけないか。シャワーでは危うく敗北するところだったし……。

 

「じゃあ、自分は戻りますんで」

 

 そろそろ戻らないと幼素欠乏症になりそうだ。

 俺は前かがみ三人組に別れを告げ、その場を離れた。

 

「お帰りーッス」

「随分話し込んでいたわね……」

「つ、追加で注文させて頂きました……! とっても美味しいです!」

 

 フードコートに戻ると、ロリ美少女三人組はデザートを食べていた。ロリとスイーツ、最高に尊い。

 美味しそうに匙を動かしているグーラの口元には、淫魔氷菓の白いミルクが付いていた。

 

「グーラ、ここ付いてるよ」

「あっ、すみません……!」

 

 指摘すると、彼女は反射的に舌でペロリと白くべたつく何かを拭った。それから、恥ずかしそうに口元を手で隠した。顔が赤い、かわいい。

 うん、シンプルにエロい。勃起しそう。俺どうかと思うね。

 

「じゃあ俺も軽く食べようかな。すみません」

 

 俺は未完成の封印されしエクゾディアを隠す為、席に座った。

 生理現象だもの、仕方ないよ。誰にも責められないさ。

 

「いや~、あの魔菜風呂もっかい行きてぇッス! マジで気持ち良かったッス! こう、魔力が回復してくんスよ、最高ッス!」

「私は発汗室に通いたいわ……」

「プール楽しかったです……! また泳ぎたいです!」

 

 そろそろ良い時間である。軽食を食べながら、本日の思い出話をした。

 心地よい倦怠感と共に、俺は楽しそうな三人の様子を眺めるのであった。

 

 また来たいものである。

 

 

 

 

 

 

 イシグロが去った、しばらく後。

 ニカノル大浴場、魔菜風呂にて……。

 

 色とりどりの花が浮かぶ、ねっとりと白濁した湯の浴槽。

 魔力回復に適したその片隅で、二人の魔族が並んで入浴していた。

 

「はい、先ほどイシグロさんにお会いしました」

 

 一人は眼鏡をはずした眼鏡っ子淫魔のニーナ。

 白く濁った湯が彼女の谷間に小さな池を作っていた。その胸は豊満であった。

 

「“黒剣”のイシグロ様……わたくしもお会いしてみたいですわ~」

 

 もう一人は、金髪縦ロールの豊満美女。

 その頭には羊めいた角があった。ニーナと同じ淫魔である。

 

「以前、訓練を一緒する機会があって……」

 

 二人は友人同士である。こうして魔力回復の時に近況を話すのは初めてではなかった。

 今回の話題はとある冒険者についてだ。淫魔的に、優秀なオスについての情報なんてナンボあってもええのである。

 

 強いオスの話題。これが淫魔のガールズトーク。

 ターゲットにしろオカズにしろ、強い男は良いネタになるのだ。

 

 イシグロ・リキタカ。優秀な剣士であるニーナを容赦なくボコボコにしたという、おもしれー男。

 直に会って戦ったのだというニーナの話に、金髪縦ロール美女は聞き入っていた。

 

「え? 貴女、今なんて……?」

 

 が、会話の途中、ニーナの言葉を縦ロール淫魔が遮った。

 楽しい話題の中に、聞き捨てならないワードが飛び出てきたのである。

 

「淫魔の奴隷……?」

「そう! その奴隷の名前は何と言いましたの……!?」

 

 訳も分からず、ニーナは口を開いた。

 イシグロ・リキタカ。“黒剣”の二つ名を持ち、超絶優秀な若いヒトオスの奴隷になった淫魔の名を……。

 

 

 

「はぁあああああ!? ルクスリリアですってぇえええええええ!? あぁンのちんちくりんが! 若いヒトオスちゃんの奴隷ぃいいいいい!?」

 

 

 

 他の客もいる魔菜風呂に、淫魔の驚声が響き渡った。

 しょうもない過去の因縁が、ルクスリリアに狙いを定めた。

 

「うっ……」

「う?」

 

 ムギュッと、自身の乳房を鷲掴みにした爆乳淫魔は、魂の叫びを上げた。

 

「羨まけしからんですわよッ……!」 

 

 淫魔王国生まれの彼女は、女王の許可を得てラリス王国への入国を許された理性的淫魔である。

 王都在住の銀細工持ち冒険者にして、生まれながらの中淫魔。エリート中のエリート戦士。

 人呼んで、“夢胡蝶”のグレモリア。

 

 ルクスリリアの幼馴染である。




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