【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。お陰で執筆活動ができております。マジです。
 誤字報告もありがとうございます。感謝!

 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
 そのうち出てきます。

 今回は旅館回。
 よろしくお願いします。


ロリ、のち、晴れ

 異世界大都市の例に漏れず、迷宮を擁するカムイバラには三つの転移神殿が存在する。

 南西の第一転移神殿。北北西の第二転移神殿。それから東の第三転移神殿。俺は西にある門からカムイバラ入りしたので、南西にある第一転移神殿が最寄りのギルドとなる。

 が、本日宿泊を予定している宿屋は東にあるので、西口からだとちょっと遠い。でもまぁ、どうせ登録するなら滞在宿と近い方がいいよねって事で。

 

「東区の転移神殿まで、よろしくお願いします」

「ウッス! 全力でいくぜぇ! ヒヒィーン!」

 

 軽いバトルの後、俺達は東の転移神殿に向かった。移動手段は徒歩でなく、マッチョ馬人が引く馬人力車だ。

 大通りは牛車とかが往来しているので、長距離移動ならこっちのが速い。歩いて行ったらいつ着けるか分からんし。

 

「おぉ速い速い」

「でもラザニアのが速くないッスか?」

「コラ、そういうの言わないの」

「聞こえてますぜー!」

 

 マッチョ馬人さんは流石の健脚ぶりで、俺たちは景色を楽しみながら高速移動した。

 壁や門は王都アレクシスト並みに大きいカムイバラだが、他の建物は全体的に背が低い印象だ。

 木製で瓦屋根、階数は二階か三階が殆どで、四階建てや五階建てのビルディングめいた建物が多い王都とは全然違う。

 また、低い屋根の上では忍者っぽい人が走っているのをよく見かける。街中にエツィオが何人もいるとこんな感じなんだろうなって。

 

「あの忍者っぽい人はなんで屋根の上を走ってるんですか?」

「ありゃ飛脚だな。腕の良い軽業師はああやって手紙とか荷物とか届けるんだよ。ちなみに、空飛んでる翼人飛脚は宮仕えだな!」

「なるほど」

 

 で、だ。

 道中インネンなど付けられる事もなく、東区で降ろされた俺達は無事転移神殿に到着した。

 

「これがリンジュの転移神殿か」

 

 そうして辿り着いた先。目の前には、見上げる程に巨大な木造建築物があった。

 王都アレクシストの転移神殿がノートルダム大聖堂と大英博物館がポタラ合体したような感じだとしたら、首都カムイバラの転移神殿は伏見稲荷大社の社殿と東大寺の大仏殿をフュージョンさせたかのようである。

 小学生時代の修学旅行を思い出す。引率の先生がキッチリし過ぎてて何も楽しくなかったな。うん、あんま良い思い出ないわ。

 

「行こう。一応離れないように」

「あいッス~」

 

 転移神殿の中もまた、ラリスとは随分と異なっていた。

 第一印象は立体的な四角って感じ。野球場っぽいラリス神殿と比較すると、リンジュのはカッチリ几帳面で質実剛健な造りをしてる気がする。柱も通路も真っすぐで、曲線が見当たらない。

 神殿の中心には淡く光る巨大桜があり、それを囲むように転移石碑が設置されている。ここら辺に違いはないらしく、刀や槍を持った冒険者は石板にタッチして転移しているようだった。

 入口付近には例によって受付スペースがあって、今もアレコレと手続きをしていた。まさに、和風ファンタジー世界のギルドである。

 

「ラリスから来ました。手続きお願いします」

 

 観察もそこそこに、空いてたムキムキじいさんの受付に並ぶ。

 各種必要書類を渡すと、じいさんは面倒臭そうに書類を流し見た。

 

「あー、ラリスもんか。ここまで来たって事ぁ大丈夫なんだろ。ほら、さっさと行きな」

 

 ペラペラめくって、最後にハンコをポン。やけにアッサリ承認されちゃった。

 まぁいいんだけどさと帰ろうとすると、我が一党が同業者からの視線を集めている事に気が付いた。

 敵味方反応レーダーに感はない。敵意や害意はないようだが、何やらこっちを見定めているような視線であった。

 

「なんスかね、めっちゃ注目されてるッスね」

「俺ら目立つからな」

 

 が、この展開、俺は俺でちょっと感動していた。

 これが異世界名物「よそ者に厳しいギルドくん」である。足引っかけられるとかあるかもしれない。オラ、ワクワクしてきたぞ。

 なんて感動しつつ、かといって絡まれる事もなく、俺たちはギルドを抜けた。

 

「そろそろチェックインしないと」

 

 時刻は昼過ぎ、もう少しで夕方である。

 シュロメさんがオススメしてくれた旅館は東区にある。だからこっちの神殿で手続きする必要があったんですね。

 曰く、上玉館なる宿屋には温泉があり、しかもご飯には味噌と醤油が使われていて、どれも美味しいというのだ。そんなの行かない理由がない。

 

「お団子以外にも醤油が使われているなんて、どんな料理なんでしょう。楽しみです!」

「リンジュのお酒も楽しみだわ。確か、米を使って作るのでしょう?」

 

 上玉館は東区の更に東にあるとの事で、俺達は歩いて向かう事にした。

 カムイバラの温泉旅館は近くの山から直で泉水を引いているらしく、少し奥にある一角は温泉街といった雰囲気だった。

 

「道行く人から不思議な匂いがします」

「温泉の匂いだな。皆は初めて?」

「私はないわ。竜族は蒸し風呂だもの」

「アタシも無いッス。けど淫魔王国にはあるッスね」

「あ、嫌な予感がする」

「どんなのなんですか?」

「子宝温泉って言って、入るとしばらく精が大量生産されるようになるんス」

「意外と有用ね……」

「保存魔法かけて輸出してるッスよ。高いんスけど、けっこうジュヨーあるみたいッス」

 

 二階建て、三階建て住宅が多かったカムイバラ西区に比べると、温泉旅館や高級嗜好の飲食店等が並ぶ東区温泉街は立派な建物ばかりだ。

 中でも、上玉館は格別だった。

 

「おぉ~!」

 

 上玉館。そこはまるで、紅ちゃん経営の閻魔亭と神隠し的な油屋を足して二で割ったような外観だった。

 目が眩むほど煌びやかで、過剰なくらい雅やか。ゴツくて、精巧。歴史ある温泉宿というよりは、出来立てほやほやの新築ホテルって感じであった。

 性根が俗悪極まる俺としては、こういう分かりやすい高級宿はテンション上がっちゃう。ぶっちゃけ、前世で泊まったどのホテルよりも豪華だ。

 

「これも木で建てられているんですね。すごい……」

「なんだか品が無いわ……」

「アタシは嫌いじゃないッスけど」

 

 各々感想を述べつつ、高級ホテルに入る。

 外がそうなら中も木製で、ツルツルの木床が天井の灯りを反射していた。靴箱が無かったので土足のままエントリーすると、フロントの受付さんが頭を下げてきた。

 

「いらっしゃいませ」

 

 受付に行き、宿泊手続きをする。ここ最近飽きるほどやった身分証明の後、宿泊プランを選択する。どうやら、部屋のランクで利用できるサービスが違うようだ。

 

「鈴桜でお願いします」

「畏まりました」

 

 勿論、選んだのは最上級。

 やがて寄ってきた従業員に案内され、館の最上階に向かう。ラリスだと上に行くほど安くなったものだが、リンジュでは上に行くほど高くなるようだ。

 道中、上玉館のサービスを紹介される。共同の温泉や、飯処について。中には娯楽ルームなんてのもあるらしい。流石に卓球台やゲーセンなんかはないだろうが、それでもかなり充実していた。

 

「こちらにございます」

 

 そうして連れてこられたのは、最上階にあるペントハウスであった。

 曰く、階全体が宿泊部屋という事で、専用の露天風呂やら何やらの最高のサービスが沢山あり、且つ喧騒から離れた静謐な空間云々で、とにかく凄いらしい。

 

「何でここ段差あるんスかね」

「リリィ、ここで靴を脱ぐんだよ」

 

 そして、ペントハウスの入り口には土間と靴箱があり、そこで履物を脱ぐのがリンジュ流であった。

 俺はあっさり受け入れられる文化だが、三人は困惑しているようだった。

 

「床が綺麗ね。靴を脱いでも汚れないわ」

「はい、とても新鮮で、なんだか落ち着きます」

 

 従業員に先導され、これまた懐かしい襖を開けてもらうと、これこれまたまたなっつかしい藺草の匂いが鼻孔を擽った。畳、タタミである。流石、東の国は期待を裏切らない。

 で、真っ先に思い出したのが岸部露伴だったあたり重症である。俺は縁を踏まないよう気を付けて入った。

 案内人が窓を開け、外を見てみるよう促してくる。言われるがまま窓に近づくと、視界いっぱいにリンジュの光景が広がった。

 

「ほう……」

 

 夕暮れに染まるカムイバラ。

 眼下の街には、色々な人がいた。お土産を選んでるカップルや、足湯に浸かって談笑している森人達。茶屋で休んでる翼人侍なんかもいた。

 また、歩いている人の多くは色鮮やかな浴衣っぽい服を着ていた。西区とはまた違う装いで、温泉街という雰囲気によくマッチしている。

 雰囲気は日本の観光地そのままだった。けれど、道行く人や細かいところが異世界だった。懐かしさと違和感。異世界情緒はそんなに無いが、まぁこれはこれでアリかな。

 

「楽しそうッスね、ご主人」

「そりゃ旅行だもんよ」

 

 その後、一通りの説明を終えると。案内人は去っていった。

 宿部屋まで来て、何時までも冒険者装備を付けている訳にもいかない。俺達は各々防具を外し、いつもの部屋着になった。

 

「これを着るのかしら」

 

 ふぅと落ち着いたところで、エリーゼが浴衣っぽい服――もう浴衣でいいか――を広げて言った。

 これは上玉館オリジナルの衣装らしく、ペントハウス宿泊客へのプレゼント品である。確かに、温泉旅館といえば浴衣だろう。余は一刻も早くロリの浴衣姿が見たい。

 

「風呂入ってから着ようか」

 

 という訳で、早速露天風呂にGOである。

 脱衣場で服を脱ぎ、生まれたままの姿になる。当然として皆も肌を晒した。直視するとスキルが自動発動して、俺の一部が石化してしまうので、努めてチラ見に抑えて抑えて……やめろルクスリリア、流し目でこっちを見るな。

 

 風呂場の戸を開けると、もわっと湯気が広がる。屋内風呂は全面ヒノキ的な造りで、片側の壁沿いに大きな湯舟があった。湯舟にはちょろちょろと湯が注がれていた。

 風呂場の奥には大きなガラス扉があり、湯に浸かりながら外を眺める事ができる仕様だ。そこは最上階に設えられた中庭の露天風呂エリアに繋がっているのだ。

 

「これが温泉なのかしら?」

「いやこれは普通の湯だな。温泉は外だ」

 

 逸る気持ちを抑えて旅の汚れを落とした後、俺達は中庭に出た。

 扉を開けた瞬間、全身を冷風が撫でた。中庭エリアの中心には岩で囲まれたザ・露天風呂があった。

 湯の色は乳白色で、沈みゆく太陽を反射してうっすら光って見えた。冬の空気も相まって地上波アニメのスケベな温泉シーンくらい湯気が立っている。

 中庭の周りは竹っぽい柵で仕切られていて、外から見られる心配はない。空を飛ぶ種族なら覗けそうだが、覗き魔は射ればいいだろう。慈悲はない。

 

「おぉおおお! 人がいねぇええッス! おしぇーい!」

 

 ルクスリリアの一人きららジャンプ。ザッブーンとやけに大きな湯柱が立ち上り、白い水しぶきが皆にかかった。

 

「おっと、大丈夫ですかご主人様」

「タンク役ありがとうグーラ。顔にはかかったけどね」

「できれば後衛も守ってほしかったわ……」

 

 一番槍を務めたルクスリリアに続き、俺達も入浴。

 右足、左足、それからゆっくり身体を湯に沈める。

 

「あぁ~」

 

 肩までお湯に浸かると、実におっさん臭い声が漏れた。

 エリーゼはゆったり、グーラはちょこんと湯に浸かった。ルクスリリアは絶対に笑ってはいけない新機動戦記2話ラストの主人公みたいにプカプカ浮いていた。つづく。

 

「貴女何やってるの?」

「せめて逆にしませんか?」

「ぷはっ! いや、窒息状態になるといつ魔力が消費されるようになるかなって実験してたんスよ」

「此処でやる事じゃないわね……」

 

 それにしても、素晴らしい光景である。

 露天風呂は湯気がモワモワのモワだ。そのせいで、あるいはそのお陰で、三人の大事なところは絶妙なラインで隠されていた。

 故に、エロい。乳首権を発行されてる漫画より、そのギリギリを攻めるスタイルのが股間にこないものだろうか。それと同じ原理で、俺のスケベ心は掟破りの淫コースを爆走していた。

 

「肌がスベスベしてる気がします、これが温泉?」

「芯から温まるわね。魔力の流れが活性化しているわ……」

「ッスね。流石に精の量は増えそうにないッスけど」

 

 視界いっぱい、本当に綺麗だ。絶景かな、実に美しい。これ以上の芸術は存在し得ないでしょう。

 ルクスリリアの肌は血色が良く艶めかしい。濡れたエリーゼの肌には神秘性すら感じてしまう。何よりグーラの褐色肌とミルキーホワイトの相性が最強である。ヒューッ! 見ろよあの胸と湯の境界線!

 

「うーん、グッドアップ」

 

 中庭は竹っぽい仕切りで閉ざされている為、誰にも見られる心配はない。心配は、そんなにない。

 なので、やろうと思えばお風呂でやりたい放題できる訳だが、流石にこの白濁を更に濁らせるのはNGだろう。

 慎重な司令官である俺は潜望鏡偵察を控え、股間のろーちゃんを温泉深くに隠れさせた。魚雷ターンはもう少し後だ。

 

「わぁ~! すごく美味しそうです……!」

 

 さて、お風呂の後は飯である。

 浴衣に着替えた――着方が分からないらしいので、全員俺が帯を締めてあげた――俺達は、これでもかと運ばれてくる料理の数々を眺めていた。

 ある意味当然かもしれないが、上玉館さんは当初は一人分の料理を持ってくる予定だったそう。けど俺は四人分を大盛でよろしくと言ったので、長机の上はさながらビュッフェである。

 メニューも多種多様で、肉に魚に野菜に色々。寿司に天ぷらお鍋に網焼き。お酒やジュースもドンドン運ばれ、聞いてた通りに味噌も醤油もハイドーゾである。

 

「では、ごゆるりと……」

 

 追加する時は言ってねと、メニューの紹介をしてくれた女将さんは去っていった。

 冒険者は健啖家が多い。実際、俺も転移前より明らかに食事量が増えている。前世ならお残ししていたであろう旅館飯も、今なら余裕を持って完食できる確信があった。

 色とりどりのリンジュ料理。皆に箸の使い方を教えた後、手と手を合わせていただきます。

 

「うまぁ!」

 

 一発目に口にしたのは、見るからに寿司って感じの料理だ。生っぽいネタの下に冷えた酢飯があり、もう完全に寿司である。そこに醤油をつけて、頂く。

 異世界に寿司があるのはもうそういうもんだと思っておこう。細けぇこたぁいいんだよ、それより味だ、味である。久しぶりに食べた酢飯は最高だった。米の栄養素が染み込んできやがる、身体に。

 特に、このいなり寿司が美味い。シュロメさんの言ってた通りだ。形は関西風で、中身は色んな具材が入った五目飯である。いなりが入ってるやん!

 

「美味すぎる! 最高だ! もっと食わせろ!」

 

 天ぷらも上手い! 鍋も美味い! 炭火焼のナスに醤油かけるともう最高!

 そして酒が進む進む。ラリスから来た俺に配慮したのか、中にはビールとかワインとかがある。気分良いからビールと焼酎ちゃんぽんしちゃうもんね!

 

「くっ、非合理的な食器だわ……」

 

 ふと見てみると、エリーゼは箸の扱いに苦戦していた。東の国ではこっちが主流らしい。

 食前にレクチャーしたのだが、それでも慣れない食器ではいつもの流麗な食事はできないようである。

 

「フォーク使えばいいじゃないッスか」

「それは負けた気がするわ……」

「こうですよ、こう」

 

 ルクスリリアは最初からラリス食器を使ってて、グーラは危なげなく箸を使っていた。

 というか、グーラはエリーゼのレクチャー中に箸の持ち方をラーニングしてあっと言う間にマスターしたんだよな。

 

「手で押さえるんじゃなくて、柔らかく支えてあげるんだ」

 

 さっきと同じように、エリーゼの手を取り教えてあげる。

 エリーゼは色々と知っているが、そんなに器用な方ではないのだ。実は努力の人なのである。

 

「こうかしら」

「そうそう。挟む時もそんなに力まなくていいから」

 

 そんな感じで時間が経ち、机上の料理が半分ほど無くなった――ほとんどグーラが食べた――頃。

 さて、そろそろかなと思って、真ん中にある小さなお釜の蓋を開けた。

 

「おぉ……!」

 

 この日、何度目かの感嘆。

 ぶわり。蓋を外すと、炊き立ての釜めしが湯気を立てた。中身は茸とか肉とか色々入った五目飯だ。

 皆の分をよそってあげると、早速口を付けた。

 

「美味い! 美味い! 美味い!」

 

 思わず煉獄さん化してしまうくらい、ここの釜めしは美味かった。

 半分ほど食べたところで、だし汁かけてアジヘンカンフージェネレーション。これも美味い! 美味すぎて馬になる! もうだし汁単品でイケるじゃんね!

 皆も釜めしには満足しているようだった。グーラなんか頬袋をパンパンにしている。ハムスターかな?

 

「何スかこれ! 超美味ェ!? 身体中に精が溜まってくッスよ!」

 

 どうやら、ルクスリリアはイクラっぽい寿司がお気に召したようである。

 そういえば、淫魔は乳製品とか卵料理で精を摂取できるらしいんだよな。他にも卵焼きにおろしと醤油をセットして食べるスタイルも好きらしかった。

 分かるよ、美味いよね。サイモンに対するガーファンクルみたいなもんだよな。

 

「ふぅ……醤油によく合うのね、この料理は」

 

 エリーゼは謎魚の刺身が好きらしかった。

 何となく、生魚に抵抗ありそうなイメージがあったのだが、そうでもないらしい。実に美味しそうに魚を肴に酒を吞んでいた。

 やはり、刺身&米酒のコンビは最強。ウッチャンに対するナンチャンみたいなもんだよな。

 

「ハムッ、ハフハフ、ハフッ!」

 

 グーラは……うん、何でも美味しそうに食べていた。

 白米を中心に色んなおかずを順序よく往復。こういうの慣れないと難しいらしいが、彼女はごく自然にやっていた。

 ナイスですね。高森朝雄の原作に対するちばてつやの「あしたのジョー」くらい素晴らしいと思う。

 

「ふぅ~、食った食った……」

 

 もう限界……。

 とでも思ったか!

 追加注文だ!

 

「どうぞ、お鍋の具材盛り合わせでございます」

「どうぞ、炭火焼の食材盛り合わせでございます」

「どうぞ、リンジュ酒の飲み比べ一式でございます」

 

 いちいち注文とか面倒臭いので、単品単品じゃなく、鍋やら米やら一気に大量に持ってきてもらった。

 煮える湯に各種野菜を守備表示で投入。お肉を網にセットしターンエンド。醤油や味噌ダレを付けてダイレクトアタック。まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ。

 

「ご主人様ぁ♡ はい、あ~ん♡」

「ぐふふ、あ~ん♡」

 

 何故かそういうプレイをしているルクスリリアにあ~んされ、おちょこに酌してもらってクイッと一気。

 気分は完全にバブルである。頭にネクタイ巻いて歌って踊りたいところだ。何という成金ムーブ。実際、俺は迷宮ドリームを叶えた成金冒険者である。なお金の殆どは武装に消える模様。

 

「こっちのお酒も悪くないわ……」

 

 食事モードから呑兵衛モードになったエリーゼは、リンジュの酒を飲み比べていた。おう、にごり酒を独占するんじゃあないよ。

 

「これ焼けましたけど誰か食べます? あ、いいんですか? じゃあボクが……ん~っ、美味しい~!」

 

 グーラは煮るなり焼くなり好きにしている。いっぱい食べる君が好き。

 

 やはり、皆で宴会すると最高やで。

 俺もグーラもまだいけそうなので、無くなり次第ドンドン注文する。

 

「申し訳ありません。本日の魚がなくなってしまいました……」

 

 それから、何品目か在庫切れを起こしたところで、宴会は終了した。

 しかし、宴の本番はこれからだ。

 

「よし! 俺は風呂に行く! 入浴の意思がある者は我に続け!」

「おぉー!」

 

 食後休憩の後、もう一度風呂に入った。

 

「あ~れぇ~♡」

「よいではないか、よいではないか!」

 

 風呂上り、帯をクルクルして遊んだ。

 野球拳もした。

 もう完全に酔っぱらいだった。

 

 めっちゃ楽しかった、まる。

 

 

 

 

 

 

 夜、俺は目を覚ました。

 上体を起こす。周囲を見渡すと、俺含め皆裸で寝ていた。

 清潔魔法のお陰で布団も浴衣も綺麗なままだ。

 

「うぅ、トイレトイレ……」

 

 旅館の夜は静寂に満ちていた。皆を起こさないよう部屋を出ると、俺はトイレを求めて廊下に出た。

 

「ん?」

 

 瞬間、違和感があった。

 違和感? いや、少し違う。俺のロリコン的第六感がビンビンに反応しているのだ。

 人の気配はない。視線も感じない。敵味方反応レーダーも問題ない。

 目を凝らす。耳を澄ます。スンスンと、嗅覚に意識を集中させる。

 

「……ロリの匂いがする」

 

 間違いない、これだ。

 ルクスリリア達の匂いは覚えている、それとは別の、甘酸っぱいロリスメルが残留しているのだ。

 腰を屈め。匂いの根源を探った。俺の審判の瞳(ジャッジアイズ)が光り、この場にロリがいたという証拠をあぶり出す。

 

「これは……髪の毛?」

 

 僅かな幼気を辿った先、靴箱の隅に一本の毛を発見した。

 色は桜色で、けっこう長い。艶はないが、荒れてもいない。トリートメントはしてないか。

 匂いを嗅ぐ、股間に来て確信した。ルクスリリアでもエリーゼでもグーラでもない幼気を感じる。間違いない、これはロリの髪だ。

 

「味は……」

 

 桜色の髪を口に含み、じっくりとテイスティングした。

 瞬間、俺の脳裏に膨大な量の情報が流れ込んできた。

 

 魔力残滓はごく微小だ。ルクスリリアやグーラの髪には魔力が沢山含まれているので、この髪の主は魔族ではない事が分かる。だが、少しだけグーラに近い味を感じ取れた。

 香油や石鹸の味はない。そういった手入れはされていないようだが、しっかり清潔に保っているようだった。だからこそ、ピュアなロリの味がする。

 しかし、透き通った幼気の中にある、この芳醇な香りは何だろうか。まるで年季の入った木の家を思わせる、この香しさは……。

 

「はっ……!?」

 

 髪を嚥下すると同時、俺の脳裏に強烈なイメージ映像が再生された。

 

 夏の田舎、夕暮れ、ひぐらしの鳴き声。

 遊びに行った帰り道、少年イシグロは古い家の庭に足を踏み入れた。

 縁側に、人ならざる人影。座した彼女が小さく手を振っていた。

 俺は彼女に走り寄った。小さな手で頭を撫でられる。安心感が心を満たした。

 風鈴の音、蚊取り線香の匂い。それから、見上げた彼女の頭には……。

 

「ケモミミロリババアだ……」

 

 それも和系の獣人だ。狐か。狸か、はたまた鹿か。狼とかその辺も候補に入るか。

 この中に、いやこの街に、クッソ可愛いケモミミロリババア(ファンタスティック・ビースト)がいる。

 そう、俺は確信した。




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