【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。モチベに繋がってます。
 誤字報告も感謝です。ああられです。
 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。

 ……なんでこんな内容で一話使ってるんですか?
 私にも分からん。


非ロリじゃないから

 鍛錬場とは、古代の英傑・魔道賢者ゼノン氏の手になる空間魔法により生成された異空間的なアレやコレやであり、要するに精神と時の部屋みたいなモノである。

 しかし、長い歴史を紡いできた異世界といえどゼノン氏以外に鍛錬場を作れるようなヤバイ級魔術師は存在しなかったようで、現在は氏が残した転移石碑を利用させてもらってるという状況だ。

 

 天才にしか作れぬ傑作。

 だが、模倣ならできたようである。

 誰あろう、天才によって。

 

 リンジュ共和国初代元首、九尾天狐シュリ。

 彼は自らが編み出した陰陽術によって、古の鍛錬場を一部再現せしめたのである。

 機能はオリジナルよりも劣っているが、間違いなく偉業である。彼以外には、ほんの僅かの模倣さえできなかったのだから。

 

 そして、本日。

 彼の英傑の子孫が、鍛錬の場に足を踏み入れた。

 

「わし、天才かもしれん……!」

 

 清廉なる森の奥、滝壺のほとり。

 武の鍛錬に丁度良さそうな場で、刀を持った天狐がバガボンドの「物干し竿と名付けよう」のポーズでドヤ顔を披露していた。

 ドヤァ~、と。そのドヤ顔のドヤ感たるや凄まじく、もはやドヤ学の教材に使えそうなレベルのドヤであった。

 

 あー、うん。そうなるよ、わかるわかる……。

 三者三幼。何とも言えない六つの瞳が、桜色のドヤ顔狐を眺めていた。

 

「わしは! 剣の天才じゃあ! はぁ~っはっはっはっ!」

 

 それから、件の狐は刀を振り回しながら鍛錬場狭しと駆け出した。さながら木刀ではしゃぐ小学生の如く。

 しかしその太刀筋は達人のソレであり、疾風めいて駆け斬る動作は飛天御剣流もかくやと言わんばかりのクオリティだ。

 言うまでもなく、モーションアシストの恩恵である。

 

「アレ、あのままでいいのかしら……?」

「いいんじゃないッスか? 今くらい」

「調整に時間がかかりそうですね。“あしすと”が無くなった時が心配です」

 

 はしゃぐロリと眺めるロリ。

 そんな空間で、ロリコンはコンソールを眺めて首を捻っていた。

 

「ふぅ~ん?」

 

 というのも、改めてイリハのステを確認してみたら、そこにちょっと変わった情報がある事に気づいたのだ。

 身請け当時、イリハのジョブは“陰陽術師”であった。が、タップして詳しく見てみたら、陰陽術師というジョブは侍やソドマス同様に中位職だったのである。

 それだけなら別に何て事ないのだが、イリハは恐らく陰陽術師の前提になるだろう基本・下位職であろうジョブのレベルが軒並み十未満だったのである。

 

 俺が知ってる限り、新ジョブは十の倍数で増えるものだ。そんな中、イリハはその前提無しで中位職である陰陽術師のレベルを有していたのである。

 一応、仮説は立てられる。イリハ母の教導により、前提ジョブをすっ飛ばしてるんじゃないかというものだ。曰く、けっこう長い間修行してたらしいし、そういう要素があっても不思議じゃない。

 そう考えると、イリハが知力以外の魔法関連ステが低い事に納得はいく。ジョブは魔法系中位でも、レベルが無いんじゃステも上がらんという話だ。

 

「イリハー、ちょっと寸止めで試合ってみるッスよー」

「ほう、このわしとか……。よかろう、圧倒的才の前には、全ての鍛錬が無意味である事を教えてやろう……」

「やべー、手加減したくなくなってきたッス……」

 

 また、驚くべき事に、イリハは陰陽術師や魔術師の他にデフォルトで剣士や戦士といった前衛ジョブレベルを持っていたのである。

 しかもこっちは双方レベルカンストであり、一応だが侍等の剣士派生ジョブが生えている。が、これまた不思議な事に前提レベルは満たしているのにも拘わらず、侍の欄をタップしても反応がない。ジョブチェンジさせられないのである。

 ここにきて、ジョブシステムで分からないトコが出てきたな……。あと、剣士レベルはあっても“受け流し”等のスキルは生えてないようだ。

 

「エリーゼ、イリハってマジで天才剣士だったりする?」

「なによいきなり? まぁ、どうでしょう。イリハの言う事が確かなら、あの子の父は素晴らしい剣士だったようだし、力を受け継いでいてもおかしくないわね……」

「力を受け継ぐ……遺伝か」

 

 遺伝、遺伝か。もしかして、イリハはステータスだけでなく、親のジョブレベルも受け継いでいるとかあるのかもしれない。

 なるほど、そういうのもあるのかという気持ちだった。だとしたら、今現在に至るまで刀を持った事がないらしいイリハが剣士ジョブを持っている事に納得できる。

 もしかしたら、異世界には血を繋ぐ事で高ステ高レベルを維持してる家や血統とかもあるのかもしれない。それこそ貴族とか。

 

「受けてみよ! 秘剣・天狐逆流れ!」

「ほい」

「おわっと!?」

「斬り上げ見て反撃余裕ッスわ」

 

 しかし、だとしてもイリハのちぐはぐさは説明し切れない気がする。

 剣士レベルが高いのは遺伝にしても、その分のステータスは何処へ消えたのだろうか。加算された上でのステなのか。何故、前提レベルを持ってても侍ジョブに就けないのか。ステは完全母遺伝とかだろうか。

 わからん。異世界の攻略ウィキが欲しい。ジョブ一覧とか隠しジョブは見たくないが、ジョブシステムのページだけ読みたい……。

 

「くっ! わしの才に身体が追いついとらん……!」

「じゃあ、次はボクが」

「今はちゃんと寸止めするッスよ~」

「任せてください。イリハの動きは分かった(・・・・)ので」

 

 これも、何となくの仮説だが……。

 こういう遺伝によるレベルの継承では、ジョブ解放の条件が満たされない仕様とか? なくはない気がする。

 

 まとめると、イリハは先天的に剣士ジョブがカンストしてて、後天的な修行で陰陽術師が解放された。

 また、剣士がカンストしていたとしても、侍といったジョブに就くには後天的な鍛錬・経験が必要である。

 そして、修行によるジョブ解放の場合、前提となるジョブレベルは不要である代わりに、その分のステータス加算はない……と。

 

 うん、理屈はないが、納得感はある気がする。

 逆に、現地勢的にはむしろそっちのが王道なのかもしれない。俺みたいに、レベル上げだけで派生ジョブに至るのは邪道なのかな。

 

「ククク……! 視えておるぞ、その体捌き……剣の心がな!」

「では、こういうのは如何でしょう?」

「なっ、なにぃ!?」

 

 実際問題、命賭けのレベリングでジョブを生やすか、修行によるジョブ解放かで選べるなら、後者がスタンダードになると思うんだよな。

 それ以前に、レベリングの為にダンジョン潜るにしても何かしらトレーニングしてからのが良いと思うし。

 

「はい、ボクの勝ちですね」

「くっ、バカな……! 氣の流れが読めぬ!」

「イリハは動こうとしてる所に意識を向けていたようなので、心と体を切り離して動けば上手くいくかなぁと」

「そ、そんな事、あり得るのか……!?」

「イリハ、天才ってこういう奴の事言うんスよ」

 

 ふむ、修行かぁ……。

 仮にそれがガチだったとしても、此処にはイリハに武の何たるかを教えられる奴はいないぞ。

 俺が教えられるモノなんて、せいぜい小学生時代にやってたフルコン空手くらいだ。

 冬の朝にやった寒稽古、あれキツかったなぁ……。

 

 ……いや待てよ。その為の道場か。

 仮説の通りなら、前にイスラさんが言ってた事の裏付けになるんじゃないか? リンジュには道場が多いっていう。 

 道場で武器の扱いを覚え、強いジョブを解放し、それから迷宮に挑んでレベリングをするのが異世界流とか。

 

 なるほど、つまり道場=ジョブ解放スポットだと思えばわかりやすい。

 前提レベルを上げずにジョブ解放。RTAで使えそうな要素である。

 

 ん? いや、でもラリスでは道場って無かったような? 俺が知らないだけか? 文化の違いで片づけていいのだろうか、コレは。

 もしかしたら、仮称リンジュ式鍛錬法にはデメリットが存在するとか。あるいはその辺リンジュのが進んでて、ラリスが遅れてるとか……?

 

 う~ん、やっぱり分からん。

 切実に異世界攻略ウィキが欲しい。仕様周りとか、取り返しのつかない要素とかの情報が見たい……!

 

「次は私ね」

「おっと、流石にこの距離で戦うのはよろしくないじゃろう」

「いいえ、結構よ」

「剣? 魔術師のエリーゼがかの?」

 

 まぁ、それもこれもただの妄想な訳だが、試してみる価値はありそうだ。

 いずれにせよ、現状のままイリハを迷宮に連れて行くつもりはない。とりま今は準備&修行パートだな。武装を整え、武技を磨き、連携を鍛えるのである。

 

「そぉ~れ!」

「ふんぬ! 甘いわ!」

「いいえ、私の勝ちね」

「ん? いやいや、お主力つよ……えっ? 待て待て待て、なんじゃその力!」

「勘違いしているようだけれど……私、魔術師じゃないわよ」

「ぐぇ!」

 

 それにイリハを和風魔法剣士にしたい理由は、彼女の適性の他にもあるのだ。

 その検証の為にも鍛錬場に来た訳で……。

 

「よし、次は別の武器で……あれ?」

「きゅぅ~」

 

 見ると、イリハは目をグルグルにして倒れていた。

 三人を見る。スッと、リリィとグーラはエリーゼを指差した。

 

「エリーゼがやったッス」

「ボクは寸止めしました」

「受け流せると思ったのよ……」

 

 うん、まぁ喧嘩とかいじめじゃないなら別にいいんだ。

 とりあえず、先に。

 

「回復してやってくれ」

 

 俺はエリーゼに王笏を渡した。

 これがあるから無茶ができるのだ。

 

 

 

 

 

 

 さて、イリハが全快し、ちょっと休憩したところで検証再開。

 俺はアイテムボックスから、一振りの刀を取り出した。

 

「じゃあ次これ使ってみて」

「なんじゃこれ? ずいぶんと派手な刀じゃのぅ」

 

 イリハから湊――脇差の方――を回収し、代わりに豪奢な拵えの刀を手渡す。

 受け取ったイリハはちょこっと抜刀してぽけーっと刃を眺めていた。

 

「前に迷宮で拾った深域武装」

「ふぅん? しんい……き? ぎょえー!?」

 

 バッと一瞬刀を手放しかけたイリハだが、わたわたやった後に慌てて再キャッチした。

 冒険者でもないのに、イリハは深域武装のレア度を知ってるらしい。まるで壊れ物でも扱うように、渡した刀を持ち直した。

 

「し、深域武装って、アレじゃろ……? めちゃくちゃ高いっていう……」

「らしいね。けど、さっきの脇差も一億ルァレするよ」

「いちお!? ひえーっ!」

「ちなみに、アタシが使ってる鎌も深域武装ッスよ」

「ふぁーっ!? なんなんじゃそれ! ルクスリリアお主奴隷じゃろ!?」

「ふふ~ん、おうとも第一奴隷ッス!」

 

 物の価値を知ってエネル顔一歩手前を連発するイリハに対し、ルクスリリアはふんすと胸を張ってみせた。

 思えば、イリハが抱えてた借金が一億くらいだったな。それを思うと、冒険者業というのはホントに金食い虫だし、ホントに金銭感覚が狂う。

 それはそれとしてだ。身を守る武装に金をかけるのは間違っているだろうか。

 

「まぁいいから使ってみてよ」

「う、うむ……」

 

 言われて、何とか気を落ち着けたイリハは慎重な手つきで刀を抜いてみせた。

 スラリと晒された深域の刃が、再現された陽光を反射し煌めいた。

 

 鞘といい、刃といい、キラキラと美しい刀である。

 橘&湊がガチ実戦用だとしたら、深域武装の方は儀礼用って印象。

 実際、刃物として見た場合は橘の方が高性能である。しかし総合力を鑑みると、こちらの方が優れている。

 この刀は、刃物であると同時に魔法触媒。ルクスリリアの大鎌と同じポジなのである。

 

 

 

綾景之太刀(あやかげのたち)

 

・物理攻撃力:500

・属性攻撃力:300(魔)

 

・異層権能:憑依(守護霊)

 

・補助効果1=自動修復

・補助効果2=魔力収奪(大)

・補助効果3=魔力蓄積(大)

・補助効果4=魔力回復(中)

・補助効果5=魔力消費軽減(中)

・補助効果6=魔法会心促進(大)

・補助効果7=物理会心抑制(大)

・補助効果8=会心補正無効(物理)

 

 

 

 うん、みるからに強い。

 前述の通り、この刀――綾景(あやかげ)は、ルクスリリアの大鎌と同じく魔法触媒である。加えて刀カテゴリの近接武器であり、魔法の使用を前提とした補助効果のセットが組まれているのである。

 

 ラザファムの大鎌にもあった“魔力収奪”は、与ダメ時に魔力を回復できるし、同じく“魔力回復”も読んで字の如くMPリジェネの促進効果がある。“魔力蓄積”は魔力の予備バッテリーのようなもので、予め使用者の魔力を武器――綾景の場合、鞘である――に溜めておく事ができ、任意のタイミングでこれを使用できるのだ。

 当然のように“自動修復”はついてるし、“魔法会心促進”のお陰で魔法クリ率が上がっている。おまけに技量・魔攻・知力の補正値も鎌より高い。

 深域武装全体で見てどうかは知らないが、少なくともラザファムの大鎌より強い気がするのは俺だけだろうか。

 

「美しい刀じゃ……。というか、深域武装なら主様が使うべきなんじゃないかの?」

「う~ん、それがなぁ……」

 

 魔法が使える頑丈な刀。取得当時、そんなん俺用武器じゃんねとか思ってテンションを上げていたのだが、これにはトンデモない罠があったのだ。

“物理会心抑制”と“会心補正無効(物理)”、これ……マイナス補助効果だったのである。効果はまんま、物理クリ率の低下とクリ補正の削除だ。

 つまりこの刀、敵に攻撃当てても会心の一撃が出にくい上、仮に出たとしてもその補正が乗らないというクソ仕様なのである。

 刀といえばクリ威力。弱点部位に会心入れて、すんごい火力を出すのが気持ちいい武器なのだ。それが出来ぬとはどういう事だ。クリアタッカーワイ、無事死亡。

 

 要するに、この“綾景之太刀”という深域武装は、魔法が使える刀というより、刀としても使える杖なのだ。

 当然のように武器カテゴリーは刀なので、魔術師にはロクに扱えない。マジで魔法剣士専用武器。ガチでジョブをアジャストさせるなら、魔法が使える侍用の武器なのだ。 

 

「……って感じで、今のところ誰も使いこなせないんだよね」

「うッス。アタシは刀ぁ使えないッスもん」

「私は魔法がさっぱりね……」

「ボクは魔法も刀もさっぱりで……」

「ふぅむ、難儀な話じゃのぅ」

「しかも、それだけじゃなくてだな……」

 

 お蔵入りの理由はまだある。

 深域武装といえば“異層権能”。鎌のヘラジカや、エフィーエナさんの岩石ドローン。あとストーカー・ダークエルフの風操作。当然として、この綾景にも権能があった。

 が、それが何とも使い勝手が悪く、その時間あったら別の事した方がいいじゃんってな性能で。わざわざ刀型の杖を持つ理由がなかったのである。

 

「てなわけで、ちょっと試しに権能使ってみて」

「ふむ? 権能、権能とな……」

「柄から魔力探知をしてみるといいわ」

「探知と……むむむっ」

 

 異層権能は武器自体に宿ったユニークスキルであり、その起動は魔力消費のない魔法装填に似ている。

 アドバイスを受けたイリハは刀に魔力を巡らせ、権能スイッチを探った。

 

「おっ、これか! えーっと、えーっと……これを、こうじゃな!」

 

 瞬間、ピカッと光った刀身から真っ赤に燃える鳥が現れた。

 大きさは地球の鷹ほど。この鳥にはラザニアのような生物感はなく、どっちかというと半透明のエネルギー的な鳥だった。

 

「それから……こうかのぅ? おぉ!?」

 

 現れた火の鳥はイリハの周囲を旋回すると、やがて吸い込まれるようにして彼女の身体に入っていった。

 瞬間、イリハの背中から二対の炎の翼が生成された。オーセンティック・フェニックス・ウィングだ。

 これぞ、綾景の異層権能“憑依”である。何度でも蘇りそうなヴィジュアルだが、残念ながらそんな能力はない。多分。

 

「なるほど、イリハは鳥なのね」

「何か法則があるのかもしれない」

「わっわっ! なんじゃこれ! わしの背ぇどうなっとるんじゃあ!?」

 

 いきなり燃え上がった背中に、当のイリハは混乱していた。

 そして、身体を捻って片足立ちをした拍子に……。

 

「ぎゃあああああああ!」

 

 けんけんぱジャンプの勢いで、イリハは垂直方向に飛び上がってしまった。さながらロケットのように。

 こういう時、慌ててはいけない。俺は努めて冷静に頼れる相棒へと目を向けた。

 

「リリィ」

「あいッス」

 

 ぷすっと、頭上高くにいたイリハから炎が消えた。その手に刀はない。どうやら手放してしまったようである。

 

「ひょえぇえええ!?」

 

 そんでそのまま自由落下。陰陽術師イリハは空を飛ぶ手段がないのである。

 

「よっと、我ながらナイスキャッチ」

「はっ! た、助かったのじゃ……!」

 

 落ちてくるイリハは飛び上がったルクスリリアが優しくキャッチして、俺は彼女が手放した刀を回収した。

 

「び、ビックリした……。けど、飛べたのじゃ!」

「嬉しそうですね、イリハ」

「そりゃ嬉しいじゃろ!」

 

 地上に下ろされたイリハは暫し放心した後、空を飛んだ事にテンションを上げていた。トラウマになってないようで安心である。

 どうやら、イリハが使うと火の鳥が出て来るらしい。検証による発見だ。

 

 綾景の権能は、一言で言うと時限強化である。

 それも、権能の使用者によって出てくる動物が違い、強化内容も異なってくる類いの。

 俺とルクスリリアは黒いサメみたいなのが出て、憑依させると魔法防御力が上がった。グーラは黄色い大蛇が出て、状態異常を無効化できた。エリーゼはイリハと同じで火の鳥が出てきて背中に翼を生やす事ができたのだ。

 

「とりま、もっかい試してみて」

「わかったのじゃ!」

 

 飛行能力の付与。飛べないイリハにはおあつらえ向きの権能かもしれない。

 もう一度使うよう促すと、イリハは再度権能を使い、刀から火の鳥を出してみせた。

 

「ふむふむ……なるほど、こういうのもできるんじゃな」

「ん? おぉ!?」

 

 舞い上がった火の鳥はイリハの周りを旋回……したかと思えば、何故か俺に急接近して憑依してきた。

 ぶわっと、俺の背中にフェニックスの翼が生えてくる。え? 憑依って自分以外にもできるんですか?

 

「へぇ? そんな使い方があったのね」

「あと、鳥以外も出せるみたいじゃぞ。ほれ」

 

 言うと、俺の背から翼が消え、イリハの刀から新たに青い馬が出現した。

 半透明の青いゴーストホースは空中を疾走し、術者の周囲を旋回している。

 何? 召喚される動物は一人につき一体ではないのか!?

 

「イリハ、それどうやったの?」

「え? いや普通に……」

 

 曰く、なんかこう上手い事やれば色々と選べたらしい。

 なんじゃそれ? こちとら色々検証しとんのや、騙されんぞ!

 

「ほれ」

「おぉぉぉ!」

 

 そう思っていると、初見の青馬は俺に憑依した。

 すると、俺の身体から凄まじい力が湧いてきた。筋肉、マッスルである。調べずとも分かる、青い馬の効果はフィジカルアップだ。

 ぶわっと青いオーラを纏うロリコン男。気分はスパーキングなサイヤ人だ。力が高まる、溢れる……! 今ならぶちぬき丸だって振り回せちまいそうだ……!

 

「グーラ! 腕相撲しようぜ腕相撲!」

「え? は、はい……!」

 

 普通に負けた。

 

「いててて……。いやでも凄いな。三秒は持ちこたえたぞ!」

「わしはどこに驚けばいいんじゃ?」

「慣れるわよ」

 

 と、いう訳で、楽しい検証の始まりだ。

 結果、綾景の権能は以下のようなものである事が分かった。五色五体の五種権能である。

 まだまだ分からない仕様がありそうだが、時間も時間なので今日はここまで。

 

 青い馬=純粋なフィジカルアップ。あと、憑依中はグーラみたいに空中を走る能力が身に付いた。

 火の鳥=純粋な魔法関連のステータスアップ。魔力飛行はおまけな印象。

 黄色いヘビ=状態異常無効化。毒・麻痺・睡眠など、精神系も軒並み弾く。憑依時に状態異常を治す効果もあるっぽい。

 白い牛=物理防御力が上がる。おまけに体幹というか重さというか、衝撃への耐性もアップ。

 黒いサメ=魔法防御アップ。何だろう、全身にビームバリアを張ってる感じだ。

 

「いいねぇ……!」

「主様、楽しそうじゃな」

 

 どうやら守護霊は一体ずつしか出せないようで、チェンジしたい時は一度召喚中の霊を回収しないといけないらしい。

 また、他人に憑依している守護霊はイリハの魔力で動いているらしく、術者の魔力供給が途切れると同時に憑依は解除されるようだった。

 

 あと、ついでにと俺達も守護霊の操作を試してみたが、どうしても同じ奴しか出てこなかった。

 恐らく、イリハにしか感知できない“氣”が関係してると思われる。あるいは知力ステによるものか。

 

「ワッ! ホッホーゥ! ワッハァーッ!」

「意外と慣れるの早いッスね、イリハ。エリーゼも初心者に追いつかれないようショージンするッスよ! もうグーラに負けちゃってんスから」

「難しいのよ、装填された魔力飛行は……」

「ぼ、ボクは“軽功”を併用してるので……」

 

 色々試してみたが、どうやらイリハは火の鳥の飛行がお気に入りらしく、今はルクスリリア達と空中で鬼ごっこをやっていた。

 空飛ぶロリを眺めていると、それぞれ飛び方に個性があるのが分かる。ルクスリリアは自由自在のラムちゃん飛行で、グーラはルインズスター。エリーゼは空飛ぶ車デロリアンだ。

 そんな中、イリハはアーマード・コアって感じ。上昇、旋回、クイックブースト。速く遠くに飛ぶ時は、炎翼を吹かして巡行機動といった具合に。

 

 うん、全守護霊使える訳だし、本人も気に入ってるっぽいし、もう綾景はイリハ専用武器って事でいいかな。

 ならば尚の事、イリハ魔法侍化計画を推進せねば……。

 

 それから、俺達は宿で試せなかった陰陽術や、イリハの他のスキルを確認したりして過ごした。

 夢が広がるな。




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※五神には全く似ていません。モチーフをパクッただけの謎アニマルです。
 本作世界に青龍とか玄武とかはいませんね。
 代わりに朱雀族とか白虎族とか麒麟族がいます。ぜんぶリンジュ住まいのレア種族です。

 次回、ようやく狐狩りです。
 長かったですね。
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