【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。続きを書く原動力になってます。
 誤字報告もありがとうございます。感謝の極みです。
 キャラ・ボスのご応募尾もありがとうございます。貰えると無条件で嬉しくなっちゃいますね。

 長くなりそうなので分割しました。
 よろしくお願いします。


目一杯の祝福をロリに(前)

 空は暗く、街は明るいリンジュの夜。

 鍛錬が終わった後、俺達は上玉館に戻ってきた。

 で、女将さんに頼んだイリハの歓迎パーティもつつがなく終了し、これにてイリハは正式に我が一党に加わる事と相成ったのである。

 

 今現在、ルクスリリア達ロリ勢は皆で温泉に入っている。

 そんな中、俺は先んじて風呂を済ませ、行燈の照らす寝室で一人とある本を読んでいた。

 

「ふむ」

 

 何を読んでいるかというと、カムイバラの道場案内パンフだ。

 イスラさんの言ってた通り、これまた俺が思ってた以上に、カムイバラには多くの道場が存在したのである。

 

 剣に槍に弓に棒。剣でも二刀流専門とか小太刀専門とか細かく分かれている。しかも凄いカジュアルにオススメポイントとかも載ってたのだからビックリだ。

 何となく、時代劇で見る道場というより、現代日本のジムとかスポーツクラブの宣伝のようである。指導者の解説なんかもあったりして、この道場ではこういう技能が身に付きますとか書いてあった。

 

 近くの道場で一番有名なのは“剣鬼道場”という所だった。

 ここはイスラさんがお勧めしていた道場で、彼女が通ってた所だな。てか普通にイスラさんの名前載ってるし、あの有名人が通ってました~みたいな感じ。経営が上手そうである。

 

 次にデカいのは、“澄刃道場”という所で、同じく剣を教えてくれる。

 嘘か真か、挿絵で描かれた指導者はイケメンエルフだった。何というか強くなるというより、心と技を鍛えて良いヒトになりましょう的な説明が書いてある。

 

 どうやら、この二つがカムイバラの二大剣術道場であるらしく、他は軒並み個人経営の小さな道場だ。弱小道場にもなると名前と住所が書いてあるだけで何がどういう流派なのか全く分からない。

 なんだかショッピングモールに押しつぶされてる小料理屋みたいだ。道場経営も楽じゃなさそうである。二大道場にしたって、門下生集めには苦心してるっぽいし。 

 

 で、俺はここから良い感じの道場を探している訳だが……。

 何処がいいかサッパリ分からん。

 

 残念ながら異世界にレビューサイトはないのである。「稽古ブラック過ぎてクソ」とか「この内容で会員費十四万ルァレとかぼったくりやろ」とか「見栄えはいいが実戦じゃ使えないザコ剣術です。通う価値なし」とかのクチコミが聞ければいいんだけど、まぁ無いもんは仕方ない。

 

 道場に行く一番の目的は、イリハのジョブ解放の為である。歪なジョブレベルのせいか、あるいはそうじゃないのか、魔法戦士系が生えてない現状を何とかすべくひとまず“侍”を解放しようと思うのだ。

 上手くいくかは分からないが、一度試してみよう。少なくとも「ほな魔術師レベルを上げればいいじゃん」と現状のイリハを迷宮に放り込む気にはなれない。

 あと、兼ねてから考えていた俺の基礎力アップの為でもある。実際、ニーナさんや鬼人ヤスケのようなテクニックキャラ相手の場合、からめ手無しじゃ勝てないのである。

 皆を守る為ならば、辛い修行も耐えてみせよう。一に修行、二に修行、三四がロリで五に修行だ。

 

 が、まぁ先述の通りで何処の道場もフワッとした情報しか載っていない。

 どっちみち、一度行ってみなければ分からぬ。幸い見学は無料らしいので、行くだけ行ってみようかなっと。

 

「ふぅ~」

 

 パンフを閉じ、一息つく。

 集中が途切れると、入浴中の皆の事が気になってきた。

 

 今、ルクスリリア達は露天風呂で身を清めている。いつもの三人に加え、イリハも一緒だ。いつもなら俺も混ざるのだが、今宵は休みである。

 そう、風呂にはイリハがいるのだ。流石に、昨日の今日で「俺も仲間に入れてくれよー」とは言えない。

 

 これはマジでホントの意思なのだが、俺はイリハに手を出すつもりはなかった。

 何度も言うが、俺は可哀想なのは苦手だ。ゆえ、文字通り借金のカタにイリハを手籠めにしようとは思わない。普通にラインオーバーである。

 というのも、俺は既に満ち足りているのだ。衣食住足りて礼節を知るというように、ロリ足りたロリコンは節操を知った訳である。

 

 いやまぁ、あわよくばと思う気持ちが全くないと言えばウソになる。

 もしイリハが自分の意思で身体を許してくれるなら、勢いよくルパンダイブするだろう確信があった。

 それはそれとして、俺は何もイリハと叡智をしたいから彼女の借金を肩代わりした訳じゃないのである。可哀想なロリを救いたかった。これは間違いなく正のロリコン魂によるものだ。

 身請け先で酷い目に遭わせてるようでは、それこそ鬱の発生源になってしまう。左のサイコガンで撃たれても文句は言えまい。

 

「よし……もうちょい読むか」

 

 なに、問題はない。俺は俺の下半身が信用できない事を知っている。

 なので今宵もルクスリリア達と遊びまくるのだ。それもイリハが眠った後、彼女にバレないようコッソリするのである。

 何か子供に隠れて営む夫婦みたいだ。これはこれで燃えるな。とても楽しみである。

 

 俺は期待と股間を膨らませ、パンフの続きを読むのであった。

 

 

 

 

 

 

 かぽーん、と。上玉館の露天風呂に謎の音が反響した。

 魔導照明で照らされた乳白色の露天風呂。湯けむりの中に、四種四名の少女の姿があった。

 

「いや~、それはもう凄いッスよご主人は! なんたって淫魔であるアタシが完敗するくらいッスから!」

 

 両の腕を広げ、ルクスリリアは温泉の縁に背を預けていた。一対の角の間に、畳まれた手拭が乗っている。

 その胸は平坦であった。

 

「ええ。最近は随分と繊細になったようだけれど……」

 

 言いながら、エリーゼは湯の中で脚を組み替えた。結い上げた銀髪のうなじに、うっすら汗が浮いている。

 その胸は平坦であった。

 

「そうですね。以前よりも遠慮がちになったといいますか……。何でしょう、自制しているようですね」

 

 グーラはちょこんと女の子座りをして、過去を振り返っていた。無意識に尻尾が揺れている。湯に濡れた褐色肌が魔導照明を反射していた。

 その胸は平坦であった。

 

「ほぉ~ぅ、なるほどのぅ」

 

 そんな中、イリハはお上品に正座をして彼女等の話に狐耳を傾けていた。しっとり濡れた桜の髪に、千歳緑の瞳。艶を取り戻した肌が僅かに赤らんでいる。

 その胸もまた、平坦であった。

 

 日本では女子三人集まれば姦しいと言うが、淫魔と竜族と混合魔族と天狐が集まればどうなるか。

 彼女等の表情は明るく、楽しそうである。一体何の話をしているのだろうか。

 

「なんで、こっちから行かないとイリハを抱くつもりは無いんスよ、ご主人は」

「むぅ、そうじゃったか」

 

 ナニの話をしていた。

 姦しい女子の中には三度の飯よりスケベが好きな淫魔がいるのである。むべなるかなといったところ。

 というより淫魔的にはスケベとは飯なのであるからして、淫魔の感覚では猥談とはつまり美味しいスイーツの話に相当する。紛れもなく夢かわ女子トークだ。

 

「逆に此方側が攻めの姿勢を見せれば、彼方側はすぐに開門するわ。無血開城ね」

 

 ここにいるのが女子だけというのもあってか、エリーゼも普段より明け透けな言い回しをしていた。竜族流の下ネタだ。

 

「安心してください。ご主人様ならきっと優しくして……? えーっと、優しくはしてくれると思うので、大丈夫です」

 

 グーラは初夜の事を思い出しつつ、以後の淫れっぷりを鑑みて言葉を選んだ。嘘は言っていない、優しいのは確かなのだ、優しいのは。

 

「ふむふむ……ちと複雑じゃが、勉強になるのぅ」

 

 ロリの心、主知らず。先住の三人はイシグロの変化に気づき、主人がイリハを抱くつもりがない事に気づいていたのである。なので、後の先で手を打ったのだ。

 根っからスケベ種族のルクスリリアからして、イリハサイドがその気(・・・)な事は分かっている。もし、このまま進む場合、そのつもりで入ったイリハは一党の中で浮いてしまう。イシグロは気を遣ってるつもりだが、それこそ無駄な気遣いというものなのである。

 要するにクソボケ案件であった。

 

 無論、ルクスリリア達とて同調圧力で向かわせる気は無かった。故に、一旦ここで本人の真意を問うた訳である。

 すると案の定、淫魔の眼に狂いはなく、イリハ当人はバッチコイのスタンスだった。

 イリハ視点、寧ろどうやれば寝床に潜り込めるかと考えていたくらいである。

 

「それにしても……いやぁ、一晩で三人とのぅ」

「きひひ♡ ご主人は並みの男じゃねぇんスよ♡」

「私はアレくらいが普通だと思っていたけれど、違うのね」

「ボクもです。男の人ってずっと元気なんだなぁって」

「んな訳なかろう。どう考えても主様は絶倫の中の絶倫、まさに性豪じゃ。なんじゃ抜かずの六連射って。遊郭の常連にもおらんかったぞ、そんな奴」

 

 ドキッ! 湯けむり女だらけの異世界猥トークの中、話をしててイリハが最も驚いたのは、彼の黒剣氏の絶倫ぶりであった。

 見てくれがロリのイリハとて、年齢的には立派なロリババア。長い間、遊郭で裏方仕事をやっていた経験もある。今更、男女のアレコレであたふたする事もない。

 そんなイリハからして、毎夜毎夜三人同時に未来へと繋げるハッスルなマッスルドッキングをしているというイシグロは「あー銀細工がヤバいってそういう……」となっていたのだ。

 また、イシグロと相思相愛であるという三人娘にも畏怖の念を覚えていた。銀細工相応の力があるっぽいし、なるほど道理でって気持ちだ。彼女等の身体には流れているのである、彼の愛さえも友情さえも。

 

「まぁそういう事なんスけど。別に今日じゃなくてもいいと思うッスよ」

「いいや、わしは今夜決着をつけるつもりじゃ! 故、今日ばかりは主様を貸してもらうぞ!」

「ひ、一人で大丈夫でしょうか……?」

「大丈夫じゃ、問題ない!」

「随分と乗り気ね」

「のじゃ!」

 

 さて、イリハがこうも乗り気なのには理由がある。

 実際色々あるのだが、一言でいうと未来の為だ。それは子作りとかでなく、直近の実利である。

 要するにこのロリババア、例の計画を諦めていなかったのである。

 

 身請け前、イリハが皮算用し、ルクスリリア達に看破された企み。

 その名も、“房中術でイシグロをメロメロにしてわしが頂点に立つ作戦”。

 そのマイナーチェンジ版を実行しようというのである。

 

 元よりイリハは決意していた。所望していた。ガンガンいく気だった。

 それは好意のみによるものではなかったが、打算だけという訳でもない。

 畢竟、イリハは身も心も愛されたいのである。

 

 ルクスリリア達と話してみて、イシグロ達は氣に精通していない事が分かった。加えて、なんとイシグロは好き好んでルクスリリア達と肌を重ねているというのである。曰く、主人はイリハに対しても興味津々であるとも。

 

 ならば、是非もなし。

 陰陽術、氣、そして房中術。

 天狐イリハは、全身全霊を以て主人を篭絡する気構えであった。

 

(ふんっ! 如何な性豪とて、如何な銀細工とて、氣の扱いに関してはズブの素人! であるならば、寝床に入れさえすればこっちのモンじゃ!)

 

(母が言うには房中術ってめっちゃ気持ちいいらしいし? 母が言うには男なんて竿さえ握れば手玉らしいし? じっくり調整して身も心もわしの虜にしてやろう! そして、わしに永遠の愛を捧げさせてやるのじゃ!)

 

(往くぞ黒剣! 氣の貯蔵は十分か!)

 

 ふんすと、イリハは湯に浸かりながら気合を入れていた。

 その耳はピンと立ち、緑の眼も爛々と煌めいていた。

 顔が赤いのは、湯によるものだろうか。

 

 そんなイリハを、三人娘はこれまた何とも言えない目で見ていた。

 まぁ頑張れ、と。

 

 ところで、イシグロの一党には、かつて似たような事を考えてた奴隷が存在する。

 ルクスリリアである。彼女は当初、イシグロの精を吸収して自分が天に立つと妄想していたのだ。二番煎じである。

 イリハは自身が持つ特性に慢心して、暴走状態のイシグロの火力を見誤っていた。

 だからこそ、皆に「今夜はイシグロと二人きりにしてくれ」というアホなお願いをしたのである。それを聞かされた三人の表情は推して知るべし。

 

 イシグロはソロで戦っていい相手ではない。

 完封など夢のまた夢。あれは一党を組んだ上で敗北と復活を繰り返して挑むタイプのボスなのだ。

 まして、耳年増なだけの処女ロリババアが太刀打ちできる相手などではないのである。

 

 

 

 

 

 

 風呂に入り、身体を温め、バッチリ身だしなみを整えた後。

 

「では、行ってくるのじゃ……!」

 

 イリハは、意気揚々と女子部屋を出た。

 対し、結果が分かってる三人は適当な返事をした。

 

 月明かりを頼りに、夜の廊下を歩く。

 静まり返った冬の上玉館の雰囲気は、かつて寝泊りしていた物置の静寂とは大違いだった。

 ピカピカに磨き上げられた廊下を、楚々とした動作で歩く。主人の部屋が近づくにつれ、イリハの心音はドキドキと五月蠅くなっていた。

 これは武者震いじゃと、天狐は己に言い聞かせた。

 

 そして、主人の部屋の前に到着する。

 襖を開ければ、イシグロがいる。イリハは薄く氣を整え、改めて決意を固めた。

 

 間違いなく、イリハはその気である。

 初心ではないが、擦れてもいない。ただ、経験がないだけだ。

 母以外の者に、愛されるという経験がだ。そして、その自信もまた。

 

 今から、男に抱かれる。

 そう思うと、ただただ純粋に緊張してきた。

 

「ふぅ……」

 

 息を吸って、吐く。体内の氣を循環し、心を落ち着ける。

 大丈夫だ、何とかなる。拒まれない。ちゃんと抱いてもらえると、イリハは自分に言い聞かせた。

 すると、イリハの脳裏にあの日の情景が映し出された。

 

 思い返すのは、力強い彼の背中だ。絶体絶命の夜、颯爽と駆けつけてイリハを救ってくれたのである。

 優しい手、頼もしい腕。そして、イリハを守る為に振るわれた猛き雄の勇。

 

 こういったシチュに、何も思わない異世界女子はいない。

 それはロリババアであるイリハも同様であった。初心ではないが、処女なのだ。多少乙女チックな事に憧れちゃっても仕方ないというものである。

 

「よし……」

 

 イリハは意を決し、襖の前で起坐をした。

 母との記憶、花嫁修業を思い返す。たおやかに、流麗に、お上品に……。

 

「失礼するのじゃ。主様、イリハじゃ……」

 

 そして、ゆるりと。

 声をかけ、襖を開け、一礼をするのであった。

 

「よ、夜伽に来たのじゃよ……!」

 

 言葉選びには失敗したが。

 結果オーライである。




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