【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。お陰で続けられております。
 誤字報告も感謝です。謝謝茄子!
 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。案頂けるとやる気に繋がります。

 今回からまた一人称。まったり道場回です。長くなったので分割。
 よろしくお願いします。

 あ、最後にちょっとしたアンケがあります。
 分岐というか調査ですね。今後の話に関わってきたり関わらなかったりします。
 お気軽にどうぞ。


暗夜行炉 其之壱

 環境が変わると習慣も変わるようで、異世界に来てからというもの俺はすっかり早起きになっていた。

 それでも現地人はもっと早起きなのだが、前は朝ギリギリまで寝ていた身からすると大いなる進歩である。

 

 僅かな光を感じて意識を浮上させると、大きな布団――昨日買った高級品だ――の中で一党の皆が眠っていた。

 異世界で鍛えられた筋肉は一晩中の腕枕を苦にしない。ルクスリリアもエリーゼもグーラも、俺にピッタリくっついて寝息をたてていた。当然、裸である。

 布団の外は肌寒く、布団の中はロリで温かい。なんと心地よいのだろうか。これ以上の極楽は存在し得ないでしょう。

 

「ん……あれ?」

 

 ふと気づいた。イリハがいない。

 一応布団をめくってみても、そこに桜色の狐はいなかった。

 何処行ったんだ? と思っていると、すたーんと勢いよく部屋の襖が開いた。

 

「皆の者! 朝なのじゃー!」

 

 そこには、着物に前掛けを身に着けたイリハが両手を広げて立っていた。

 耳も尻尾もピンと立ち、相当早起きだというのにイリハは元気いっぱいだった。

 

「おはようイリハ」

「おはようなのじゃ主様。ほらお主等も早く起きるのじゃ!」

「「「ふぁ~い」」」

 

 朝の挨拶を交わすと、エプロン装備のイリハはテキパキと一党員のお世話をこなしていった。

 眠そうなルクスリリアを風呂にぶちこみ、エリーゼの髪に櫛を入れ、グーラの口に歯ブラシを突っ込む。

 イリハの手際は完全にママのソレであり、俺視点相当なバブみ指数を検知できた。

 

「おぉ……!」

 

 朝の諸々を終えたら飯である。なんという事でしょう。大きな机の上には、色とりどりの料理が用意されているではありませんか。

 焦げ目のついた燻製肉と、形の整った卵焼き。旬の魚の塩焼きに、湯気を立てる味噌汁。炊き立てのご飯。山盛りの葉菜。その他色々。

 ご機嫌な朝飯だ……。

 

「いただきます」

 

 食前の礼をして、食べる。その頃には皆も元気になっており、各々ジブリ映画みたいな雰囲気で朝食を食べていた。

 

「あら、味噌のスープってこんな味になるのね。悪くないじゃない」

「こっちのは甘いッス! こっちのは甘くないッス! す、すげぇ! 無限の卵焼きッスよ!」

「ふぁい! ほいひぃれふ! んぐ! すみません、おかわり頂けませんか?」

「ほいほい、碗を出すのじゃ」

 

 ルクスリリアは卵に夢中で、エリーゼもすっかり箸を使いこなしている。グーラはさっそくおかわりを求め、イリハはお櫃からご飯をよそってあげていた。

 

「美味ぇ~……!」

 

 白米を頬張り、味噌汁を飲む。謎野菜の漬物を食べ、白米を食べる。そして味噌汁を啜る。このミソスープ、美味すぎる……!

 異世界味噌は最近出来た調味料と聞いたが、イリハは既に味噌を使いこなしているようだった。ダシが効いてていい感じである。何のダシかは知らないが、美味けりゃいいのだ。

 

「むふふ、じゃろ~? 味噌汁のおかわりもあるからの~」

 

 当人が言っていた通り、イリハは料理が上手かった。

 昨晩食べたイリハ謹製のきつねうどん――異世界では別の名前だった――はマジで絶品だった。食った瞬間、服がはじけ飛ぶかと思ったくらいだ。

 また、例によって美味い美味いと褒められたイリハは物凄いドヤなドヤ顔をかましていた。

 

「めっちゃ美味しいよイリハ。ありがとう」

「こっちこそ、こんな上等な食材を使わせてもらって嬉しいのじゃ!」

 

 イリハの言う通り、昨晩うどんに使った食材も今食べてる朝食も全て一番良いのを頼んで勧められたやつなのだが、それでも上玉館で注文するより安上がりである。

 値段もそうだが、俺視点では上玉飯よりイリハ飯のが断然美味しく感じる。イリハの手料理は細胞一つ一つが元気になるからな。ロリ飯ってだけでプレ値がついて効果アップである。

 

「卵焼きは……。ちょっと、私の分がないじゃない」

「あ、わりぃッス。全部食っちまったッス」

「おかわりいいですか?」

「すまん俺もおかわり!」

 

 房中術を覚えてからというもの、以前にもまして俺の食欲が増している気がする。何となく大食いしているのではなく、食ったモノをしっかり栄養に変換しているような。

 もうね、腹から全身にエネルギーが行き渡ってる感じ。次なる酷使に耐えられるよう、俺の細胞が超回復しているのだ。

 

 ロリごはん、最高である。

 

 

 

「で、今日は何するんスか?」

「買い物の続きと、あと道場見学かなー」

 

 食後、俺達はこれまたイリハに淹れてもらったお茶を飲んでゆっくりしていた。

 エリーゼはすっかりグリーンティーがお気に入りのようで、楚々とした所作で湯呑を傾けていた。

 

「道場ですか。てっきり、先にイリハの武装を整えるものと思っていました」

「まだイリハの方針は確定してないから、買うなら決まってからかな」

 

 道場通いでジョブが生えるというのも、侍ジョブと陰陽術師ジョブで和風魔法剣士ジョブが生えるというのも所詮は仮説なのである。試してみてダメだったら、普通に陰陽術師として戦ってもらうかもしれない。

 そんな状態で武装を整えても仕方ないだろう。それに、刀が扱えないと綾景は使えない訳だし、まだイリハの特性を把握しきれているとも言えないのだ。

 とにかく色々チャレンジしてみて、最終的にイリハにぴったりなジョブ且つ彼女が気に入るジョブが決まってから、イリハの武装を作るべきだろう。

 

「道場にも色々あるようだけれど、何処に行くかは決まっているのかしら?」

「とりま大手の剣術系。まずはイリハに刀の扱いを覚えてもらいたいからな。俺もちゃんとした技覚えたいし」

「はて? 主様は“ちーと”で何とでもなるんじゃあないかの?」

「それでも、ちゃんと手に技つけないとなぁと思うんよ」

 

 剣に限らず、対人戦におけるセオリーみたいなのは覚えておきたい。今の俺はいわば常時アドリブ。特定の型を覚えるのは有用だと思うのだ。

 その点でいうと、イリハ以外の皆にも体系化された戦闘術を覚えてもらいたいので、剣だけじゃない戦闘技能を教えてくれるとなお嬉しい。

 

「一番いいのは、肉体とか精神面じゃない技重視の道場だな。あと変に仲間扱いされるのとか嫌だし、人間関係がドライな道場がいい」

「ご主人って友達作らないッスよねー」

「しがらみが嫌なんだ」

 

 実際、前世で変な空手道場の噂を聞いた事がある。

 幸い俺が通ってたのは普通の空手道場だったのだが、友人の中には師範に謎の空手思想を吹き込まれてる奴とかいたし、そういうノリは勘弁願う。

 

「免許皆伝には時間がかかりそうじゃが、それ目的かの?」

「それはいいかな。こう、技だけ盗ませてもらえれば……」

「アナタねぇ。それ、思っていても言わない方がいいわよ……」

「マジ? 気をつけよう」

「もう道場破りしまくる方が効率良くないッスか?」

「いやぁ、俺はあくまで我流剣法を卒業したいだけで……」

 

 あれ? 俺の希望道場、けっこう厳しそう? いやいや、探せばあるはずさ。うん。

 とにかく、道場選びは慎重にって話だな。合わないトコに入っても苦痛なだけだし。

 

「ボクも獣人剣術以外にも色々と学んでみたいです! 強い人の動きって、見てるだけでも参考になりますよね!」

「かぁ~、貪欲じゃのぅ。わしからすると主様たち最強に見えるんじゃが」

「それがそうでもないんだなぁ」

「ボクはあの鬼人剣士に勝てませんでした。まだまだ精進が足りません」

「アタシは余裕っしたけど、まぁ時間稼ぎでおちょくってただけなんで、勝ってはいないんスよね。超淫魔(スーパーサキュバス)化すれば勝てたと思うんスけど」

「私ももう少し戦いの幅を広げたいわ」

「ひゃー、すんごいのぅお主等」

 

 と、いう訳で、道場探しの始まりである。

 いいトコ見つかるといいけど。

 

 

 

 

 

 

 パンフを読んだ感じ、カムイバラにおける武術道場は前世で言うフィットネスジムとかお習い事に近いポジションのようだった。

 入門動機も様々で、宮仕え志望で剣術を習う人や、冒険者になる為に通う人。中には余暇の趣味や健康維持の為に武術をやる人なんかもいるらしい。

 ガチ勢向け道場にエンジョイ勢向け道場。武器種だけでなく目標や動機も色々で、人によって合う道場は異なってくる訳だ。

 

 それで言うと、俺の目標は地に足ついて強くなる事であり、動機は体系化された戦闘技能を学びたいからだ。

 イリハの侍ジョブを解放したいというのもある。また、どうせ通うのならルクスリリア達にも得のある道場にしたい。剣専門になると、俺とイリハしか強くなれないし。戦闘技能全般を向上できたらなぁと思う。

 願わくば、あまり熱苦しくない所がいいな。あとできれば立ち回り重視で。まぁ注文が多い自覚はした。できるだけ理想に近い道場があればいいのだが、無ければ近いとこで妥協しよう。最低限、イリハ側の課題が確認できたら良いのだ。とにかくトラエラである。

 

「「「イェアアアアアアオオオアアアアアッ!」」」

 

 百聞は一見に如かず。いずれにせよ、実際行って見てみない事には分からない。目標や理想は一旦置いて、まずは大手を見学だ。

 

「「「ゴォォォォウウラァアアアアアアッ!」」」

 

 そんな訳で、俺達はカムイバラで一番の剣術道場である“剣鬼道場”の支部にやってきた。イスラさんの出身道場だな。

 

「「「キェエエアアアアアアアアアアア!」」」

 

 が、道場から凄まじき気迫が響いてきて、門を前にして足がすくんでいた。

 

「控えめに言ってクッソうるせぇッスね」

「す、すごい声です……」

「この声、剣を習っているのよね……?」

「のぅ主様、ヤバそうな気配がするんじゃが……。わ、わしこれ習うんかの……?」

 

 デデンと立派な門構え。高い塀、広い敷地に縦看板。

 開けっ放しの門前に近づくと、奥の道場からは多種多様な叫び声が聞こえてくる。そのどれもが鬼気迫る雄たけびであり、メンとかドーとかのレベルでは全くない。

 何というか、それぞれジャンプナイズされた野球部とサッカー部とラグビー部とアメフト部と剣道部と空手部と吹奏楽部と応援団が一緒の体育館で一斉に声出し練習でもしているかのような声量だ。

 

「「「ヒィハァァアアアアッ!」」」

 

 外だというのに、気合の乗った声が響いてくる。

 中に入ったらどうなっちまうんだ……?

 

「剣鬼道場、で合ってるんだよな……?」

 

 一応、カムイバラで最もアツい道場なはずである。

 ちょっと心配になってきた。看板を見る。うん、合ってる。

 パンフによるとアポ無しで直行していいらしいので、いつでもウェルカムのはずなのだが、これホントに入っていいのか? のこのこ入ってったら「連絡もなしに無礼でごわす!」とか言って斬りかかってこない?

 

「ホントに行くんスか? 多分、いや間違いなくご主人の要望とはかけ離れてると思うんスけど……」

「まぁ、うん。ここが今一番流行ってるらしいし……」

 

 理想は静かでドライでビジネスライクな道場なのだが、ここは大分違うような……。

 いやいや、偏見はよくない。中に入ってみると雰囲気の良い道場かもしれないじゃあないか。なにも今日入門する訳じゃないし、これはあくまで見学である。ダメならダメでそれじゃあバイバイすればいい。

 俺は改めて覚悟を決めて、道場に歩みを進めた。

 

「あら? お客さん?」

 

 と、その時である。突然、背後から声をかけられた。

 振り向くと、丸っこいケモミミを生やした少女がこっちに向かって歩いてきた。表情はニコニコして人当たりがよさそうだ。服装は羽織に袴スタイルで、腰に刀を佩いている。当然、初対面である。けど、この人の顔どっかで見覚えがあるような……。

 と、その前に挨拶だな。アイサツは大事。

 

「門前にて失礼します。私、王都アレクシストで迷宮探索を生業にしております、イシグロ・リキタカと申します。この度は……」

「あら! あらあらまぁまぁ! 貴方がイシグロさん!? 噂はかねがね! 娘からも話は聞いとります! ささっ、どうぞ上がってってください!」

「え、娘? あ、はい」

「ほらほら皆さんも上がっちゃってくださいね!」

 

 エリーゼに教えてもらった一礼の途中、急に異世界おばちゃん力を増した少女に圧倒されてしまった。

 そのまま押されるように道場の奥の方に案内され、あれよあれよと畳の部屋へと通された。

 

「粗茶ですが」

「ありがとうございます」

 

 案内された部屋で待っていると少女手ずからお茶を持ってきて、俺達全員に配ってくれた。

 こういう時、奴隷身分はハブられがちなのだが、そんな事はなくルクスリリアにもイリハにもお茶が供された。

 

「やー、あのイシグロさんがうちの道場来てくれるなんて光栄ですー! うちへは娘からの紹介で?」

「えーっと……」

 

 目の前の少女、見てくれは若いが中身は大阪のおばちゃんのようである。押しというか圧が凄い。あと、どうやら子持ちのようだ。

 スピーディな展開についていけず戸惑っていると、件の子持ち少女は俺の対面ですとんと正座した。

 改めて見て、やっぱり見覚えがある気がする。顔見知りの誰かに似てるんだよな。頭にある丸い獣の耳とか……。

 

「あ! 名乗り遅れました。ウチ、この剣鬼道場で師範代やらせてもらってます、ウラナキいいます。どうぞよろしくお願いしますー」

「痛み入ります。改めまして、イシグロ・リキタカと申します」

 

 言って、お互い頭を下げ合う。俺の隣に座るルクスリリア達も同じタイミングで頭を下げた。これはイリハ先生に教えてもらったリンジュの礼儀作法だ。

 視線を戻すと、さっきまで気づかなかったところに目が行った。尻尾だ。ウラナキさんの背後で、ヘビのような光沢のある尻尾が揺れていた。

 獣の耳にヘビの尻尾? なんだっけ、どっかで聞いた事あるんだよな。

 

(ぬえ)人……?」

「んー?」

「あ、すみません……!」

 

 僅かな逡巡の間、ふいに出たグーラの呟きに、ウラナキさんは反応した。

 まずったと思ったのか目を伏せるグーラに、ウラナキさんは手をパタパタやって明るい声を返した。

 

「よう知っとるなぁお嬢ちゃん! せやせや、ウチ鵺人やで! 分かりづらいけど、ウチ獣人でも蛇人でもなくて鵺人いう魔族なんや! あー、娘と種族が違うんは夫が虎系の人やからやで!」

「は、はい……」

 

 鵺人? あぁ、異世界種族本にあったマイナー種族か。

 いやそれはいい。そろそろ状況をまとめたいところ。

 

「えーっと、すみません。その娘というのは……?」

「あら? あらあら、もしかしてウチ勘違いしとった感じやったり? てっきり娘から案内されてきてくれたんやとばっか(おも)て!」

「いえ。“カムイバラ道場めぐり”というものを読みまして」

「やだもう! ウチったら恥ずかしいとこ見られちゃいましたわー! この事、娘には内緒でお願いしますー!」

「あの、その娘というのは……」

 

 手のパタパタを加速させてお道化る仕草は、まさしく大阪のおばちゃんそのものだった。見た目年齢は女子高生くらいなので、さっきから言っている娘というワードが引っかかる。

 まぁ魔族は基本不老だから異世界じゃ普通なのだが、それでもビックリしちゃうよねって。

 

「あー、娘いいますのは……ん?」

 

 その時、廊下の方から「おか~ん!?」という大きな声が聞こえてきた。その声音はやや剣呑で、若干キレかかっているのが分かる。

 ドタタタタ! そのまま足音が近づいて来て、声の主は勢いよく戸を開けた。

 

「おーかーんー!? またウチの衣裳勝手に使ったんかー! 前も止めて言うたやんなァーッ!?」

 

 襖の先、そこには見知った女性が肩を怒らせ立っていた。ぺしぺしと床を叩く尻尾が機嫌の悪さを示している。白黒の髪の毛に虎の耳。ミアカさんである。

 いつもは踊り子っぽい服を着ている彼女だが、今日は随分とラフな格好をしているようだった。

 

「えー、ちゃんと洗ったでー?」

「洗う洗わんやのうて勝手に使うなゆーとんねん! そもそもなぁ……!」

「それとお客さんの前やで。アンタの言うとったイシグロさん」

「イシグロさん!? んな訳ある……か?」

 

 目が合うと、ミアカさんはフリーズした。

 そうか。鵺のウラナキさんと白虎のミアカさんは親子だったのか。

 で、ミアカさんから母のウラナキさんに俺の話が伝わったと。

 

「なっ、な、ななな……!?」

 

 硬直するミアカさんの顔がみるみるうちに赤くなっていく。

 ていうか、いつもバッチリ化粧をしているミアカさんのすっぴん初めて見たな。

 俺視点、ノーメイクの方が美人に見えるのだが、そういうの本人的には違うんだろうな。ぶっちゃけよう分からんわ。

 

「おはようございます、ミアカさん。存じ上げなかった事とはいえ、突然の訪問となり申し訳ありません」

「あ、おはようさん……やのうて! なーっ! ちょちょちょ! ちょー待って! 今のコレはちゃうんですー!」

 

 ミアカさんは一通りあたふたやってから両手で顔を隠した。

 

「い、いきなりバタバタしてもうてごめんなー? ここ、一応ウチの実家やけど、別に気ぃ遣わんでええから! ほな!」

 

 そして、一言。ミアカさんは脱兎の如く走り去っていった。

 その逃げ足は流石の獣人ぶりで、鋼鉄札だというのに銀細工に迫るスピードだった。

 そういえば、俺まだミアカさんと戦った事ないんだよな。今度無手で仕合ってみたいところ。足技使いとの戦いは良い経験になりそうだ。

 

「あの娘、せっかくイシグロさんが来てくれたんに挨拶もせんで。あ、ごめんなさいねー。てっきりあの娘が紹介して来てくれたんやと思ったんですー」

「はあ」

「そんでね? あの娘ったら帰ってくる度にイシグロさんの話ばっかしてたんですよー」

「そうですか」

 

 まぁそれはいい。通うかもしれない道場が知り合いの家ってちょっと気まずいかもだけど、ここが真に優良ならば無問題。

 

「ご主人ご主人」

「ん?」

 

 ふと、ウラナキさんが娘トークに夢中になってる間、ルクスリリアが控えめに裾を引っ張ってきた。

 

「ミアカさん、まだご主人の事狙ってるっぽいッスよ」

「へー」

 

 前に一回断ったんだけど、そうなのか。

 ミアカさんの事は人として好きだけど、お友達で。

 

「あのー」

「あら、ごめんなさいね。あーっと、道場めぐり読んで来てくれたんですよね。本日は見学という事で?」

 

 割と話が好きだったウラナキさん、道場探しの旅は少し長くなりそうだ。




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 主人公は道場通いを陰キャゲーマー視点で考えてしまっています。

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