【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 今回もよろしくお願いします。


ロリの未来に、ご奉仕するにゃん!

 朝起きて修練して朝飯食って牛乳飲んで道場行って昼飯食って牛乳飲んで稽古して夜飯食って牛乳飲んで復習して風呂入って出撃して……。

 そんな毎日を送っていたら、いつの間にか約一ヵ月の時が経っていた。

 

 冬の終わり、春の訪れ。

 異世界転移一周年である。

 

 この間には色々あった訳でもないが、この頃になると色々あったりした。

 桜闘会に関する諸々を終え、イリハの装備が整って、それから迷宮探索を再開したとかである。

 

 まず、桜闘会について。

 期限ギリギリだったが、俺の大会参加は何の問題もなく認められた。ライドウさん曰く、運営側の重役にはそれぞれ推薦枠があるらしく、俺がその推薦招待組に選ばれたという訳だ。

 大会の段取りについては事前に説明を受けた。どうやらオリンピックみたいな開会式の選手入場とかはないらしいので、あとは俺が出る日を待つばかりである。

 

 同じく期限ギリギリのアンゼルマさんだったが、審査で実力を示して個人剣術部門にエントリーできたようだった。

 好きにすればいいとドライな対応をしていたゲルトラウデさんも、嬉しそうに報告してきた娘の顔を見て何だかんだ喜んでるように見えた。

 師匠は参加しないので、無月流門弟の参加は二人になる。そのうち、看板を背負ってるのはアンゼルマさんだけだな。

 

 そんなこんなで闘士の発表。

 広場とか集会場とか転移神殿の掲示板などに、学校の合格者発表みたいなノリで紙が張り出された。文字が読めない人の為に、役人が読み上げたりもしたようだ。

 

 師匠曰く、俺が出る予定の全種総合部門はイロモノの部。対戦ガチ勢はそんなにいないらしい。

 勝ったなガハハと結構呑気してた俺だが、翌日ライドウさんから直々に一部闘士の出場部門変更が伝えられた。

 なんと、二大道場のつえーやつらが部門変更を打診してきて、しかも当日のうちに受理されたというのだ。

 

 エンジョイな雰囲気なはずの全種総合部門には、剣鬼道場師範代のウラナキさんと澄刃道場のデイビットさんがエントリーしてきたらしい。

 アンゼルマさんが出る予定の個人剣術部門には、澄刃道場の師範代二人がやってくると。

 Vやねん! あかんイシグロ優勝してまう! などと慢心してた俺も、この急報にはビビッた。こいつぁ一筋縄では行かなくなったぜ。

 

「ていうか、そういうのアリなんですか? 悪い前例になってしまうんじゃあ……?」

「何とか今回だけの特別措置という事に収めました! ですが今回の結果を変える事はできず! 騙すような形になってしまい、本当に申し訳ありません!」

 

 と、訊いてみると、ライドウさんからリンジュ流DOGEZAで謝罪された。

 まぁ彼に俺をハメるメリットはないだろうから、それは別にいい。二大道場の人等についても、最初はムッとしたがコレも別にいいかとなった。

 ピンチはチャンス。勝ったらルクスリリアの言ってたメリットが増え、負けても両名相手なら損失は少ない。単にグーラの言ってたメリットが加算されるだけと考えよう。

 優勝の確率は下がってしまったが、それはそれ。ガチ度が上がったとプラスに考えよう。アンゼルマさんは、まぁ参加が目的みたいな印象だったし。

 

 それにしても、デイビットさんとウラナキさんか。

 もし、俺が二人とタイマンしたら、ルール次第で負ける相手だと思う。

 前提として、剣一本持ってよーいドンじゃあ俺に勝ち目はない気がする。乱戦なら不意打ち闇討ちで何とかなると思うのだが、小細工なしの真っ向勝負にゃ自信がない。

 幸い総合部門は剣以外の武器も使えるが、無銘や橘&湊を持ち込める訳ではない。アイテムも同様で、煙幕とか各種ポーションも使えないのだ。総合は毎回種目が違うらしいし、タイマン以外の競技をお祈りするしかない。

 

 ちょっと、このままだと拙いか。グーラには玩具あげると約束したのである。どうせ出るなら勝ちたいんだよな。

 というのも、俺のチートにも無月流にも決め手がないのだ。負けなくとも勝てなくちゃ意味がない。前にやったフルバフカウンターも橘ありきの必殺技だから、何か対人用の技が欲しいところ。

 燕返しとか三段突きとか流れ星とか円月殺法とか天翔龍閃とか鬼ノ爪とか秘剣・虎落笛とか、そういうの。

 必殺魔剣、編み出しちゃいたい気分である。

 

 まぁそれはいい。何とかなるだろう。

 何とかならなくても、どうにでもなるはずさ。

 ロリコンの事より、ロリの方が大事だ。

 

 そんなこんなありつつ、以前から注文していたイリハの防具が完成した。

 侍と陰陽術師の中間、和風魔法剣士である退魔士。そんなイリハの為に造られたのは、黄金の鉄の塊である金属鎧でも地味な革装備でもない。

 イリハ専用装備、それは絹をベースにした肌ざわり最高のアレンジ着物だった。ぶっちゃけ紙装甲である。ともすれば、エリーゼの軽鎧よりも脆い。まぁ俺の初期装備よりは大分マシだが。

 

 

 

◆九尾の天衣◆

 

・物理防御力:350

・魔法防御力:450

 

・補助効果1:自動修復

・補助効果2:環境適応

・補助効果3:全状態異常耐性(大)

・補助効果4:魔力回復(大)

・補助効果5:魔法防護(大)

・補助効果6:体温保護(中)

・補助効果7:精神異常耐性(中)

・補助効果8:対獣耐性(中)

 

 

 

 見た目は、何かこう和風ファンタジーの巫女と侍と陰陽師を足して二で割ったような印象。

 なんだっけ、艦これの何やら型戦艦の服に近い気がする。質感の高い絹に、細かい装飾がごちゃごちゃ付いてるのだ。艦これは駆逐艦しか覚えてない。

 

 で、なんでこんな貧弱布装備になったかというと、イリハ曰く刀を使う陰陽術師は伝統的に鎧を装備しないらしいのだ。

 これは氣との相性が関係しているようで、エリーゼや他魔術師なんかは魔力を通しやすい希少金属を使っているが、氣の場合はそうはいかないんだとか。ジョブごとの武器制限はあっても防具制限のない異世界だが、そういう現地勢の合理性があるのだ。

 その分、金属鎧や革装備より沢山の補助効果を付ける事ができた。ダメージには弱いが、デバフ耐性と状況適応力は高いという、俺の鎧の尖った版と言えなくないか。

 装飾品の髪飾りには、状況適応力を上げる補助効果や魔法装填を付けておいた。和っぽい衣と合わせて実に可愛らしい。

 

「こ、こんな上等な着物が防具なんかのぅ……? しかもわし用……」

「ちなこれ、いくらしたんスか?」

「聞かない方がいいよ」

 

 言うとショック受けそうだったので言わなかったが、この絹防具の値段はイリハの身請け金よりも高かったのである。

 素材の持ち込みをしなかったのだ。こうもなろうという話で。

 

 そんな感じで、防具を買った後はエリーゼの希望でオーダーメイドファッションの専門店に行き、皆の服を注文した。

 何やら、今後の為に必要とか何とかで。

 

 さて、防具が揃った以上、やる事はひとつ。

 迷宮探索である。

 

 桜闘会の開催はもうすぐだが、俺が出る部門は最後の方なのでまだまだ時間に余裕がある。

 その間、修行だけじゃ味気ないし、イリハのレベリングもしておきたい。

 勘が鈍るのも嫌だしな。

 

 これまたちなみに、桜闘会のルールに闘士は迷宮に行ってはいけませんという禁止事項は無かった。

 だから、闘士の俺が迷宮入りするのは違法ではないのだ。

 そもそも冒険者だしな、俺。

 

「よし、行こうイリハ」

「ホントに今行くんかの? 大会が控えてると思うのじゃが」

「だから行くんスよ。このスピード感には慣れろッス」

「久しぶりの迷宮ですね。楽しみです」

「最近はずっと鍛錬だったもの。早く魔法を撃ちたくて仕方がないわ」

「お主等やっぱおかしいのじゃー!」

 

 無論、一回だけじゃ足りない。

 ヘビロテである。

 

 

 

 

 

 

 棋械迷宮。

 

 見上げてなお見えぬほど高い天井に、一切高低差のない平らな木床。

 否、これはただの木床ではない。何処を見渡しても在って然るべき床の継ぎ目がなく、その代わりとばかりに一定間隔で格子状の黒い線が引かれている。

 もし、日本人がこの床を見下ろしたならば、こう思うだろう。将棋盤みたいだ、と。そして、改めて床に立てば思うだろう。自分が駒になったみたいだ、と。

 そう、この迷宮は盤面遊戯を模していた。

 

 事実、差し手のいない盤上には、二つの勢力が存在していた。

 片や五種族五人の一党に、片や絡繰仕掛けの盤上兵団。迷宮探索者と、迷宮の主である。

 

 主の名を、盤上械駒。異界の炉で稼働する、全身木組みの絡繰人形である。

 兵団は群れで一つの存在だった。計十一体構成で、頭である将軍を守るように金の騎士や銀の侍などが主の指令を待っていた。その他、槍を持った兵士に加え、飛竜や巨象や暴れ馬の絡繰などもいた。

 

 主の初期位置はランダムである。歩兵を最前列に、迷宮の主はサッカーチームのような陣形を取っていた。ゴールキーパーの位置にはバリアで守られた将軍様。

 対し、冒険者一党は予め決めておいた陣形を取った。遊びはいるが常にガチ。されど気負う事もない。新入りの慣らしには、都合の良すぎる敵なのだ。

 

 開戦の合図はない。竜の将と機械の将が自軍の兵を鼓舞し合い、そうして戦が始まった。

 初手、爆発。突っ込んでくる歩兵隊に、炎雷の波動が直撃する。グーラの片手かめはめ波だ。

 兵士が吹き飛び、同じく突っ込んできた味方馬にも撥ねられた。再度サッカーボールのように吹っ飛んできた歩兵を、空の淫魔が切り裂いた。

 ルクスリリアは守護獣の背に立つと、大鎌から魔法を放った。迫りくる飛竜はそれを掻い潜り、返しの火炎が吹き散らされる。無論、両者無傷。盤上の空で飛竜と淫魔のドッグファイトが始まった。

 

 二人の剣士が躍り出る。イシグロとグーラだ。イシグロは通り過ぎ様に二体の機械兵を斬り捨て、最も面倒な銀の侍と交戦を開始した。

 対する銀駒は、絡繰とは思えぬ動物的な動きで一党の頭目と刃を交わした。銀を放置すると被害がデカい。真っ先に潰すか、釘付けにしなければならないのだ。

 

 後衛に向かい疾駆する暴れ馬、しかし、どういう理屈か絡繰馬は唐突に転倒した。半透明の破片が舞い上がる。足元に板状の結界が引っかかったのだ。そこに竜の魔法が殺到し、これをグーラはひと突きして屠った。ナイスサポートと言いたいところに、巨大な影が割って入る。

 遅れて迫る巨象を、グーラは真正面から押し留めた。象と獣、一見して勝者が見えるこの相撲はしかし、小さな獣が圧し勝った。ジリジリと、やがて明確に象が後退していく。流石のグーラとて、常ならばこうはならない。つまり、今は常ではないという事だ。

 いつの間にか、グーラの身体に青のオーラが宿っていた。これは獄炎犬の特性か? それもあるが、それだけではない。天狐が持つ深域の守護霊が、彼女の膂力を引き上げているのである。

 相撲に負け、機械巨象が転倒する。象への追い打ちを邪魔するように残る歩兵が襲ってくるも、グーラは惑わず退避した。瞬間、青白い光線が巨象の横腹に突き刺さった。余波で吹っ飛ぶ歩兵。立ち上がろうとしたその足には、不自然な木の根が絡まっていた。動けぬ兵の脳天を、獣の牙が粉砕した。

 

 獣の爪牙。竜の息吹。致死の暴威から生き残った一体の機械兵が、邪魔な後衛に襲い掛かる。駆け出そうとするグーラを制し、天狐は刀を構え、銀の竜族は「一応ね」と恩寵を与えた。

 集中するまでもない、散々やった型である。突き出された槍を、刀の鎬で受け流す。無月流剣術・弍ノ型。文字通り、返す刀で相手の手首を切り落とす。

 なおも動く機械兵。隙だらけの敵を前に、天狐はあっけらかんと退避した。瞬きの後、兵の身体は砕けていた。銀竜が吹き飛ばしたのだ。

 

 どしん! 翼を失くした絡繰飛竜がさっきまでイリハが居た場所に落下した。驚愕しつつ反射的に刀を振るい、ダメ押しとばかりに尻尾を切断。ビビッて放った斬撃は、イリハ史上最高の一太刀であった。残念ながら、誰も注目してはいなかったが。

 後衛組が藻掻く飛竜から離れると、翼鹿に乗った淫魔が機械竜に突っ込んだ。隕石めいて飛来し、魔法と鎌と鹿角突撃によって偽の飛竜を粉砕する。同時、最大脅威の銀侍が倒れた。この瞬間もまた誰にも見られてはいなかった。

 

 将軍が唸り、最強の駒に命を下す。満を持して金騎士が駆け、この場で最も強い戦士に剣を振り上げた。黄金の騎士と革鎧の剣士。交錯する視線には、お互い何の感情もない。

 瞬間、イシグロの背から炎の翼が発生し、迫る刃を避けてみせた。火の弧を描いて回り込もうとする獲物に剣を振るうと、今度は騎士の背中に魔法が当たった。上に淫魔、背に獣、前に頭目戦士がいて、遠くにいるのは竜と狐。

 将軍の命を受け、金の騎士はギシギシと機械仕掛けの咆哮を上げた。技も力も勝っている。魔法も弓矢も通さぬ鎧に、呪いの類いも効きはしない。黄金騎士の目に炎が灯った。

 十秒後、金の騎士は砕け散った。強い奴はさっさと倒すに限るのである。

 

 残る機械は将軍のみ。バリアが解かれ、巨躯の絡繰人形が躍動し、一党の前に降り立った。

 将軍の目が光る。戦闘形態だ。各種装甲の継ぎ目が開き、身体中に稲妻が迸る。すると、盤上に散らばった絡繰人形の破片が将軍に向かい集結していった。やがて、破片は凝集し、五つのパーツを形作った。

 

 ガシン! 具足装着! ガシン! 胴鎧装着! ガシン! 籠手装着! ガシン! 機械大槍装備!

 そして、電の尾を引いて将軍の兜が装着! 失敗! エラーが起きたので再装着! が、これもできない! まるで、頭部と兜の間に透明な板が挟まっているかのような……。

 

 ふと、将軍の目に原因と思しき存在が見えた。一党の中、将軍駒の頭部に掌を向けている狐人がいた。何故か、そいつは驚いた顔をしていた。

 ガガガガガ! 何度やっても装着できない兜は、ついにエラーを吐いて落っこちた。フルアーマー予定の将軍は、兜だけが無い情けない姿になっていた。

 お互い、想定外の出来事だ。両者の間に気まずい空気が過る。

 

「グーラ」

「はい」

 

 あまりの事態に、将軍は立ち尽くしてしまった。迷宮の主は、こうなった時の対処法を知らないのだ。

 だが、相手にとって、それは殺すに十分だった。将軍が絡繰内部を解析し終えた時、目の前には大剣を振りかざす獣の姿が映った。

 

 鉄塊の如き大剣に、雷迸る炎が宿る。重ねるように青の守護霊が加勢して、竜の鼓舞が後押しする。さながらそれは、バフてんこもりダメージレースの様相だった。

 避けようとする将軍だが、もう遅い。兜のない頭部装甲に、魔獣の牙が突き立てられる。

 

「はああああああああッ!」

 

 バッギィィイイイイン!

 

 この日、強敵で知られる棋械将軍はクッソ情けない倒され方をした。

 合体バンクを邪魔され、兜のない頭にキツい一撃。よろけたところをフルボッコにされ、ロクな反撃もできず最後はド派手に大爆発。

 心なしか、粒子に還る寸前の将軍は、天狐に向けて忌々しげな眼を向けていた気がする。

 

 

 

「つ、疲れたのじゃ……!」

 

 ボスが死に、帰還水晶が現れ、皆に経験値が行き渡る。

 すると同時、イリハはその場にべちゃりとへたり込んだ。

 これが初迷宮という訳ではないが、元々戦いとは無縁の生活を送っていた彼女である。鉄火場にあってはガリガリ精神が削れるのだろう。初迷宮の時は結構ビビッていたが、今ではしっかり動けてるあたり流石である。

 

「最後の結界、アレ凄かったな。あそこまで届くのか」

「むほ!? え? えー、まぁ……のぅ? やってみたら出来たのじゃ」

「ッス! お陰で厄介なショーグン瞬殺できたッス!」

「はい、凄かったです! 次は対策されるでしょうか」

「かもしれないわ。けれど、今はとにかく勝利を祝いましょう。よく頑張ったわね」

「むふふ~! それほどでも有るのじゃ!」

 

 べちゃっと萎んでいたイリハだが、皆に褒められてすぐに膨らみを取り戻した。

 自己肯定感こそ低いが、お調子者なイリハはこうして褒められると幸せのムードレットを獲得するのである。

 

 実際、退魔士・イリハは優秀だった。

 まずバッファーとしての優秀さ。これは深域武装の権能だが、所持者以外に守護霊を憑依させられるのはイリハの能力あっての事なのだ。

 特に青霊のフィジカルアップが壊れ性能で、ただでさえ壊れてるグーラに憑けるとトンデモ火力が出せるのだ。いざとなったら自分に赤霊憑けて飛べるし、囲まれてる人に防御霊憑けて遠隔盾だってできる。一党に一人イリハが欲しいね。いたわ。

 

 低火力の陰陽術はダメージソースになり難いが、絡め手としては有用だ。魔力と魔攻ステが上がればもっと規模のデカい式も編めるらしい。

 刀のお陰で自衛もできるし、使える技は防御重視だ。仙氣眼のアシストもあるので、危機察知と合わせて守りも堅い。

 

 なにより、イリハは結界の使い方が上手かった。

 結界は陰陽術版の防御魔法だ。強度は劣るが、魔力の盾よりも色々と応用が利く。その特性を活かし、イリハは敵の足に引っかけて転倒させたり、キューブ結界作って足場にしたりできるのである。結界師かよ。

 これは偏に、イリハの精妙な氣捌きがあってこそ成せる技であるらしい。俺には出来ないし、ルクスリリアも真似できない。低レベルの今はちょっかい程度の結界しか使えないが、強度が上がればやれる事も増えるだろう。その点でも今後の成長が楽しみだな。

 

「でへへへへ……!」

「褒め過ぎちゃったッスかね」

「その時はイリハヤバいになるだけだしヘーキヘーキ」

 

 最大まで膨らみきったイリハは、中身の詰まった饅頭みたいになっていた。

 何にしても、イリハが自信を手に入れてくれてるようでよかった。

 ロリは笑顔が一番だからな。

 

「今回は角兜か」

 

 一通り労い合ったところで、ドロップアイテムを回収する。一応レアドロだが、どっちみち買取価格はショボい。

 儲けは渋いが、獲得経験値は美味いのでヨシ。お陰で低レベのイリハはどんどんレベリングできていた。

 どうやら、守護霊憑きがエネミーを倒すと、イリハにも経験値がいく仕様っぽいのである。DPSの高いグーラやエリーゼに憑けると経験値効率が良くて非常にグッド。

 

 現在、イリハのジョブは退魔士だ。これは近中遠物魔全てに対応できる中位職であり、ステ成長もバランス型だ。 

 時間はかかるだろうが、このまま行けば安定した戦力になってくれるだろう。急ぐ気はないが、なるはやで自衛力を身に付けたいところ。

 

「じゃ、帰ろうか」

 

 アイテム取ったら用はない。俺達は帰還水晶に触れ、転移神殿に戻っていった。

 ギルドを歩いていると、顔見知りの冒険者がたまに挨拶してくる。最初の頃に冒険者達から向けられていた剣呑な視線は既になく、地味鎧をつけてても嫌な顔されなくなった。

 

「換金お願いします」

「はいよ。緑の三番な」

 

 受付机に向かい、すっかり慣れた動作で戦利品を渡す。

 換金には時間がかかるので、近くの椅子に座って待つ。休憩タイムだ。

 

「おうイシグロ! お前また迷宮行ってたのか」

 

 軽くお茶など飲んでいると、背後から声をかけられた。

 銀細工のヨタロウさんである。そういえば、彼も桜闘会に出るんだったか。

 

「どうも。闘士は迷宮禁止って書いてなかったですから」

「いや普通考えねぇよ」

 

 世間話などしつつ、換金が終わればギルドにバイバイ。

 帰り道、商店街で買い物をして、衛宮邸そっくりの借家に無事帰還。

 

「じゃあ、エリーゼはこれを細かく切るのじゃ。ルクスリリアは皮を頼むのじゃ」

「ええ。猫の手、猫の手……」

「皮剥きなら任せろッス! 皮剥き超得意ッス! むきむきするッス!」

「グーラは強火でよろしくなのじゃ」

「はい!」

 

 モノにもよるが、最近はイリハ監督の下、皆で料理をしているようだった。背が145無い彼女等は、謎の木箱を足場に台所に並んでいる。野崎くんを思い出す光景だ。

 その間、俺は武道場で無月流の型稽古。なんか悪い気もしたが、待っとれと言われたなら仕方ない。

 こんな生活を送っている俺だが、そろそろ大会が近いのだ。グーラのおもちゃの為、無月流躍進の為、できるだけ頑張る所存である。

 

「ご主人~、ご飯できたッスよ~」

「は~い」

 

 そんなこんな、ご飯食べて風呂入って布団敷いて。

 諸々の後、広い寝室で、俺はイリハに気持ち良くしてもらっていた。

 

「んぉ~……!」

 

 巨大種族用クソデカ布団の上、俺はうつ伏せになって指圧っぽい施術を受けていた。

 按摩によく似たこれは陰陽術を応用した疲労回復技術であり、氣を使って表面化していない疲れを取る効果があるのだ。あと純粋に気持ち良いので、良いトコ押されると変な声出ちゃう。

 

 これを受ける前、ルクスリリアなんかは「はぁ? そんなんで気持ち良くなる訳ないじゃないッスか~」と言っていたが、今現在彼女はうつ伏せのままアヘ顔で眠っている。

 リリィだけじゃなく、エリーゼやグーラも彼女の手技の虜だ。皆、あへあへになってトロけている。

 

「主様の筋肉は柔らかいのぅ。女みたいなのに、奥には戦士の肉が眠っておるのじゃ」

「ん~、そこそこ……」

 

 思えば、迷宮外でも、イリハには多くの仕事をしてもらっている。

 ブラックから解放したはずなのに、今ブラックになっては仕方ない。なんか心配になってきたぞ。

 

「ほい、これで終わりじゃ」

「ありがとうイリハ。あのさ、前にも訊いたけど、ほんとに大丈夫? 疲れてない?」

 

 なので、実際に訊いてみた。

 ホウ・レン・ソウだ。言いづらい事があったら相談してほしいものである。

 

「ん? いや別に忙しいとは思っとらんぞ。実際前より働いとらんし、迷宮潜ったお陰で体力もついたしのぅ」

「そうか。そうかぁ……ん~、じゃあ何かしてほしい事とかない?」

「してほしい事のぅ。わし、もう恵まれとるからのぅ……」

 

 重ねて問うと、イリハは腕組みして唸った。

 俺もうつ伏せ状態を解除し、胡坐をかいて向かい合う。

 しばらく後、イリハは少し顔を赤くして、ぽそぽそと返事をした。

 

「じゃ、じゃあ……頭を撫でて欲しいのじゃ」

「それでいいの?」

「うむ……」

 

 おいおい、そんなの俺へのご褒美じゃないか。まぁイリハがそういうならと、俺は即座に了承した。

 ちょこんと膝の上に乗ってもらって、頭を撫でる。桜色の髪から甘い匂いが香ってきた。

 

「むふ~、耳とか触ってもよいぞ♡」

「こう?」

「うむうむ♡」

 

 ナデナデしつつ、イリハの耳をモミモミする。

 彼女の狐耳は肉厚で、強めに触るとモフモフ毛の奥から独特の弾力が返ってくる。

 

「ん~♡ 尻尾出すから、こっちも撫でて欲しいのじゃ♡」

 

 言うと、イリハは八本の尾を現出させた。

 実態のある尻尾に加え、氣の塊である八本の尾。俺は綿飴のような感触の八尾に手を突っ込み、モフモフ度MAXの一本を撫で回した。

 イリハは目を細めて喜んでいる。俺もモフモフに触れて喜んでいる。ヤバい、何これ。天国か? 手離したくない、僕の魂ごと離してしまう気がするから。

 

「む~」

 

 が、ふと見ると、さっきまで按摩の余韻に浸っていたグーラからジト目が向けられていた。

 口を「へ」の字にし、黄金の瞳は半開き。これ以上ない不満顔である。

 見ていると、グーラは四つん這い移動で寄ってきて、そのままクイクイと頭を押し付けてきた。

 

「な、なに?」

「ご主人様、ボクにも尻尾がありますよ」

 

 ありますよありますよと、黒髪のロリ戦車が何度も追突してくる。あまりにも可愛い。

 内心身悶えしながら、俺はグーラの要請に応える事にした。右にイリハ、左にグーラで二人のモフモフを堪能した。

 

「えへへ♡ ご主人様♡」

「主様♡ そこ♡ 上手なのじゃ~♡」

 

 まさにモフモフパラダイス。九本の尻尾に、二股の尻尾。タイプの違うケモミミが俺を狂わせる。

 

「ちょっと、まだ私へのご褒美がないのだけれど。まさか忘れたなんて言わないわよね……?」

「はっ! スケベセンサーに感あり! おいコラァ! 淫魔にも飯を譲れー!」

 

 そうこうしていると、左右だけじゃなく全方位からロリに抱き着かれた。

 二人を撫でつつ、エリーゼとキスをしながらルクスリリアの下半身特攻を享受する。

 うんうん、みんな違ってみんな良い。

 

 このあと滅茶苦茶フォックスした。

 

 

 

 その夜、ふと閃いた!

 このアイディアは、無月流のトレーニングに活かせるかもしれない!

 

 必殺魔剣のヒントレベルが上がった!




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 作中、イシグロが言ってる艦これのキャラは金剛型の事ですね。
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