IS 全知全能(に近いナニカ)が転生するようです 作:見知らぬ誰か
神様の取り計らい(笑)によって楯無と同じ部屋になった俺は、楯無を狙っていると言う十六夜の居るであろう1年生寮食堂にからかいに来ていた。
で、案の定来てみれば十六夜と東屋、茅場に一夏も居る……ついでに箒もだな……。
皆様驚いてるな……って、そりゃあ早速女子を……いや、年上だから女性をお姫さまだっこで連れてきたら驚くわな。
好い加減降ろさないと何時蒼流旋が襲ってくるか分からないし、第一反応出来るか分からないしな。
「たっちゃん先輩、降ろしますよ」
「え、ええ」
俺は楯無を床に足から下ろした。
てか、十六夜の視線が突き刺さるよぅ……なんなんだ一体、その『何で俺が接触する前にお前が接触してるんだ』的な視線は……実態はお前の気配察知能力及び空間認識力の不足だぞ……全知全能の俺が言う事じゃ無いが、訓練すれば人によって多少の差違はあれど誰でも出来るぞ。
「よう、皆さんお集まりでどうしたよ」
とにかく声を掛けてみる。
「ああ、いや……嘉寿が少し待たないかって言ってたから待っててみたんだよ」
「あ、そうなのか……」
つまり、東屋の都合の良いよう(こううん)に付き合わされたって訳か……あの【幸運】は自分に都合の良い幸運をもたらす幸運って訳か……。
俺、アイツらしい3人を纏めて相手出来るか分からないんだけど……危険度は高い順に茅場、東屋、十六夜ってところか……茅場の顔からマトモに何も読めねぇ……特典使えば楽々だろうが……世の中は『箱を開けてからのお楽しみ』の方が面白いからな……やらない。
「祓……ちょっと来い」
「うい……あ、皆様先に食べていては?そこに居たら邪魔になりますよ?」
俺はそう言って十六夜に着いていく……連れて来られた場所は……男子トイレだ。
「こんな所に連れてきて何の用だ?」
「てめぇ……何でもう会ってるんだよ」
「いや、何でって……どういう事さ?もうって何?十六夜がただ単に楯無に接触出来なかっただけでしょ?」
「何で俺に見つけらんないのにお前が見つけてるんだよ」
「えー……?お前、見つけてすら居なかったの?」
「はぁ?どこにも居なかったろ」
あ……駄目だ……コイツは楯無と居られないヤツだ……気配察知出来なきゃ楯無の傍には居られない……それすらも分からないなんて……原作をしっかり理解したのかよ……
「…………分からなかったなら……楯無を狙うのは止めた方が良い」
「は?お前何言ってんの?」
「…………十六夜には認識出来て無かったようだから言うが……楯無は休み時間、昼休み、放課後……全て俺らを見てたぞ」
「時間止めて何回も探した。だが居なかったよ!」
「………………楯無を自分のモノにしたいなら……楯無を抱きたいと言うのなら――」
俺は一瞬で十六夜の認識出来ない時間で十六夜の後ろに回り、浴衣の袖に入れていたナイフを取り出して十六夜の首元にナイフを突き付けた……
「――この動きに、能力無しで……生身で対応してみせろ。
ついでに言うなら……お前、これで1回死んだぞ」
「なっ……!」
「これを楯無は対応したぞ」
嘘である。あくまで認識しただけであって対応は出来ていない。だが、反応して俺がナイフを首に突きつけるまで0.3秒はあったため……ISを展開するだけの時間はあった。
つまり、認識すら出来なかった十六夜は楯無の傍には居られない……ましてやアイツは暗部を相手する組織の長だ……十六夜みたいな実力の無い奴は……更識で働いた所ですぐに死ぬ。
俺は十六夜からナイフを離し、仕舞いながら話す。
「もう少し……実力を身に付けてから楯無は狙った方が良いと俺は思う」
「そんなの……ISが「あればどうにでもなる……か?」ああ」
「そんな甘っちょろい考えが通る訳無いだろ。お前……能力で、ISでどうにでもなるなんて大間違いだぞ……」
「そんなの、どうにでも……」
「いや、なんねーから……しかも、どうもお前何もやって無いだろ」
何も……つまり、武術に体術のことだ。知識はこの際どうでも良い……だが、武術・体術で獲得する事が出来る脚裁きに重心……そういった普段から使うものに雰囲気や纏う空気も素人もド素人……まだ一夏の方が篠ノ乃剣術の古武術やってた分脚裁きに重心といったものもだが雰囲気も少し違う……。
まだ原作一夏が突発的な実戦に耐えられたのか理解出来るレベルだ。それに一夏にはそれ相応の観察眼がある……相手の実力を多少は理解し、自分を鍛える努力をするし才能もある……つまり『努力する天才』。
対して十六夜……コイツは能力に頼り切って自分からは何の努力もしない……故に反応も遅いし考え方も異常なまでに稚拙……もしコイツが能力無しでIS主人公なら1巻で死んでる……要は『努力しない凡才』。
十六夜は恐ろしく稚拙だ……東屋と茅場は恐らく武術・体術をそこそこに学んで居るだろう……歩くときの脚裁きに重心移動もかなり様になっている……まずなんの努力もしていない素人よりは良い。特に茅場あたりは何かしら段位級もしくは師範代レベルだ……能力に頼り切って居ない証か……まぁ、あいつはかなりチートだが……。
「ま、何かしらの努力をする事だな……まずは体力・筋力を鍛えたらどうだ?」
「馬鹿に……しやがって……!!」
その瞬間、時が遅くなった感覚がした。そして目の前にある拳……あ、こいつ殴って殴って殴りまくるつもりだな……さて、どうするかな……俺の超反射では……初めの方は良いにしても、途中から無理だな。出来るならこんな所で能力をバラしたく無いんだけどな……。
つか、こいつ……自分の時間を加速してんな……速度が異常に速い……それでどうとでもなる訳じゃ無いけどな……。
たった1秒の間に10発……遅いな……処理速度が間に合わないのか……?やろうとすれば1秒に100発以上入れられる筈だが……
―おい、神様―
――なんじゃ?――
―十六夜の能力ってどうやって行使してるわけ?―
――儂等神々が転生させる際に与える特典は言うなれば【世界の極々一部に干渉する力】じゃ……その処理は全てわしらの世界で処理しとる――
―つまり、許容量は無い訳か……?―
――いや、体の方にはあるんじゃよ……――
―アクセル・ワールドのPFB(フィジカル・フル・バースト)仕様かよ―
――そんなものかの――
―聞きたい事は聞けた。じゃあな―
俺は神様との会話を終えて再び現実を見る。
ふぅむ……こりゃ、一度『十六夜は強い』って認識をさせた方が良いか……?上げてから落とした方が理解はするだろう。痛いのは嫌いだが……仕方無かろう……俺の実力を見たとき……どうなるか楽しみだ。
その直後、俺は超反射で反応しきれず大量の殴打を受けた。
「グハッ…………!」
「はっ!思い知ったか。所詮、時間操作に不可能は無いんだよ。初撃のイニシアチブ取れればな」
「ああ……そうだな……お前の能力は俺の能力を上回ってたよ……
初撃必殺ってやつか……所詮、お前は強者じゃないって訳だ」
……なーんて、嘘を吐いてみた。こいつはかなり自信過剰だ……1度上げてから落とさないと自覚しない……。
最後のは小声で言っただけだから十六夜には聞こえてない。
いい加減いやな奴が一緒に来たもんだ……全く……
―おい、神様―
――なんじゃ、またか――
―クラス代表決めるときに襲撃事件起こしやがれ―
――……それはよいのぉ……オモシロそうじゃ――
―襲撃事件の内容は任せる―
――了解じゃ――
「……よっこらせっと」
体のあちこちが痛いが……まぁ、能力で治すほどでも無いか……能力の使いすぎは……そんだけ実力が無いのをしめす。使いすぎないようにしないとなぁ……。
あー……だっりぃ……久しぶりに大量に殴られたわ……。
俺は肩を回しながら男子トイレから出て食堂に向かう。入り口にはもう誰も居ない。当たり前か……俺はざるそばの食券を買って受け取ると適当な席に座り食べ始める。
「どこ行ってたのかしら?」
空いていた向かいの席に座ったのは外にはねているの水色の髪を持つ楯無だった。テーブルに置かれたのは殆ど手付かずの刺身山盛り定食。食べて無かったのか……。
「一緒に食べる予定だったんだけど?」
「俺と、たっちゃん先輩の間に大した繋がりは無かったと思うが?」
「知らないようだけど……あなたの『禊家』……更識とかなり深い繋がりあるのよ?」
「ほぅ?知らなかったなぁ……」
なんだよ……教えてくれたって良かったじゃねぇか……あの親共め…………
「その関係……教えましょうか?」
「何なんだ?」
「『更識』と『禊』の家の間には古い古いしきたりがあってね……それは更識の楯無を継ぐ者が相手を見つけられなかった場合、更識と禊の長子で婚姻を結ぶ……これがしきたり」
「……その長子同士が同性だったときはどうするんだ?」
「それは無いらしいわ……長子の性別が同じになるときは楯無の方に男運もしくは女運は恵まれるらしいし」
で、逆の場合は恵まれないってか……随分都合の良いしきたりなこって…………
「ま、飯食おうか……」
「そうね、今のところは関係の無い話だものね」
俺と楯無は飯を食べ始める。
「それで、あの十六夜くんだっけ?」
「十六夜……なんだったかな……」
「名前、覚えて無いのね……」
「人の名前覚えるの苦手だからな」
「えー……それってどうなのよ」
「別に……自分に関わりが深いのだけは全部覚えれば良いし……そこまで深くない若しくは関係のないやつはそいつがそいつと分かれば十分だよ……んで、十六夜がどうした」
そう、それで十分なのだ。自分に重要なやつだけ分かれば良い……勿論、関係のないやつの見分けはつく。束のような人間では無い。
「彼……危ない領域に足を踏み入れそうなのよ」
「『更識』……対暗部組織……『楯無』はその組織を引っ張る長の名前……だったよな。たしか今は17代目だったかな」
「……それは知ってるのね」
「これは親から聞かされた話だ……で、十六夜がお前に気があるとでも言うつもりか?」
「言うつもりなんかじゃなくて……そのものよ」
「ふぅん…………」
「興味なさそうね」
「無いからな」
「……………………」
ジト目で睨んで来る楯無……
「何だよ?」
「話は理解してたのよね?」
「更識と禊のやつ?」
「それよ」
「……要はこう言いたいんだろ?『十六夜は危険な場所に足を踏み入れようとしていて楯無は男運が無い』……違うか?」
「もっとあるでしょ?」
「……『彼を危険な場所に踏み入れさせたくないから協力しなさい』……ってか?」
「分かってるじゃない」
ほう、なら楯無はこう言いたい訳か……。
「『私には断りきれる自信が無いからあなたから伝えて欲しい』……なんて言わないよな」
「もしくは、私とあなたが付き合ってるって事にすれば良い」
「そんなヤラセでお前のカレシなんて務まるかよ」
「あら、演技力ならあの茅場って子より巧いわよ」
「それは褒めているのか?それとも、まだまだよって貶してるのか?」
「どちらかしらね」
ちっ……喰えないなぁ……楯無……
「どうせなら、両方やっても面白いかもね♪」
「……で、楯無」
「あら、何かしら?」
「気になるやつは居るわけ?」
「あら、いきなりね」
「どうなんだ?」
楯無は少し考えた後、答えた。
「気になってるのはぁ……」
楯無は俺に最上級の笑顔を見せて言った。
「禊 祓くん……君かなぁ……♪」
「……良いぜ、楯無のカレシ(仮)やってやろうじゃないか」
「ありがと」
こうして俺と楯無の関係は始まったのだった。
これが後に本当の関係になるとは、このときは知る由も無かった。