超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、お久しぶりな読者様も初めましてな読者様もこんばんわ!
この度、続編の執筆に伴い新規投稿での本編再開になります。
またしばらく夢人君達の冒険にお付き合いくださいね。
それでは、 プロローグ はじまります


緋色に染まる女神の道
プロローグ


 ……どうしてこんなことになったのだろうか。

 

 1人の少女は今だからこそ、そう考え悩んでしまう。

 自分のしてきたことに後悔など微塵も感じることはなかった。

 目的のためなら、どんな物だって捨てられる。

 現に少女は目的を果たすために大切だと思っていた物を全て切り捨ててきた。

 ただ1つの目的を果たせるのなら、世界の全てを敵に回してでも戦える。

 誰の制止も受け付けない。

 その歩みは決して止まらない。

 利用できるものはすべて利用し尽くす。

 阻むものがいれば、慈悲もなく斬り捨てる。

 諦めたり、妥協したりなどしない。

 目的を果たすその日まで、少女の心は迷わない……はずだった。

 

 全ては目の前にいる男のせいだ。

 

「うっ、ぐっ」

 

 そこはまるで天国のようであった。

 太陽にもっとも近い雲のように青空を漂う大地。

 大小様々ないくつもの大地が虹の架け橋で繋がれていた。

 誰の手も加えられていない自然の美と調和するように白い塔や城がそびえていた。

 人工建造物であるはずのそれらは不思議と違和感を感じさせることなく、この地の神秘性を際立てていた。

 1つの完成された世界がそこに存在していたのだ。

 

 ……だが、今その姿は見る影もない。

 

 浮遊している大地は段々と削ぎ落されるように崩れていく。

 大地を繋いでいた虹の架け橋は、黒く染まり砕け散っている。

 数多くあった大地も既にほとんどが空から落ちてしまっていた。

 緑の芝生は荒れ果てて、清らかだった水の流れは淀み濁っている。

 白い塔は倒壊しており、城は落下した大地と共に消えてなくなっている。

 遠からず、この世界は崩壊してしまうだろう。

 

 そんな滅びに向かう世界にいるのは、少女と男の2人だけ。

 2人だけの世界と言えばロマンチックだろうが、現実は異なる。

 男は体中に傷を負い、血まみれの状態で握っている剣を支えに立ち上がろうとしている。

 その顔は苦痛に歪み、男が無理をしているのは誰の目にも明らかだった。

 しかし、少女が男に手を差し伸べることはない。

 ……何故なら、少女こそが男を傷つけた張本人なのだから。

 

「っ、ぐっ……ハア、ハア、ハア」

 

 ようやく立ち上がれても男は荒い息で呼吸を繰り返し、少女の目の前で無防備な姿を晒している。

 すぐにでもまた倒れてしまいそうな男の様子を見ても、少女は決して動かない。

 

 少女は知っていた……男が何度倒れようとも立ち上がることを。

 少女は知っている……男の黒い瞳に映し出されている自分の姿がどんなものなのかを。

 少女は知らない……男が何を考え、どうしてここまで来たのかを。

 

 誰よりも男のことを理解していると言う自信が少女にはあった。

 その心に触れられ、癒し、守り、慈しみ、愛することができるのは自分だけだと。

 その思いを受け入れ、どんな願いも叶え、いついかなる時も傍にいられるのは自分だけだと。

 

 しかし、今の少女には男を理解することができない。

 誰よりもその心を知っていたはずなのに、今の少女には男の抱いている思いがわからない。

 誰よりも近くにいたはずなのに、今の少女は男を遠くに感じてしまう。

 

 迷うはずのなかった少女の心が大きく揺さぶられる。

 今目の前にいる男が少女の目的を阻む存在であることは間違いない。

 目的を果たすためには男を少女はどんな手段を使ってでも排除しなければならない。

 少女は今までだってそうしてきた。

 色々なものを利用してここまで歩んできたのだ。

 今更、男1人のために目的を見失うことなど少女はできない。

 だからこそ、少女は男を消さなければいけない。

 何度も立ち上がるのならば、もう2度と立ち上がれないようにすればいい。

 少女の姿を映す黒い瞳から、色を失わせてやればいい。

 何も考えられないようにして、ここに来た意味を失くしてやればいい。

 どれも少女には容易くできることだ。

 しかも、今の男の様子から碌に抵抗することもできないだろう。

 後は、少女が決断するだけ。

 軽く手を振るように力を振るえば、少女の望みは叶えられる。

 難しいことなど何もない。

 躊躇うことなどあり得ない。

 目的を捨てることなどあってはならない。

 少女はそのためだけに生きてきたのだから。

 

「……ですか」

 

 しかし、少女は動かない。

 代わりに、自分の意思とは無関係に少女は口を開いてしまった。

 常人ではありえない機械的な翼を身に纏って宙に浮く少女は自分が何を男に尋ねようとしているのかさえ分からない。

 男が少女をどう思っているのかわからないことと同じで、少女も男のことをどう思っているのかもうわからなくなっていた。

 少女は男に対して格別な思いを抱いていたのにも関わらず。

 

 少女の声は決して大きいものではなかったが、男の耳に届いたのだろう。

 男は荒い呼吸を整えるために俯いていた顔を動かし、少女を見上げる。

 傷つきながらでも決して諦めない……そんな男の顔を少女は知っていたからこそ、ふいにとある感情が込み上げてくる。

 

(……どうしてそんなになるまで頑張れるんですか)

 

 今にも爆発しそうになる感情を少女は言葉にできない。

 喚き散らすように吐き出してしまえば、少女は自分を保っていられる自信がない。

 今まで積み上げてきた物がすべて壊れてしまう、そんな不安が少女を臆病にする。

 

 許されるのならば、少女は見っとも無く涙をこぼしていただろう。

 思いの丈をぶつけ、男に触れたいとすら願ってしまう。

 男に全てを委ねて、いつかのように優しく抱きしめて欲しいと。

 あの段々と消えていく冷たい温もりではなく、凍りついた心がゆっくりと溶けるように陽だまりに照らされているような熱さで。

 

 ……だが、それがもう2度と叶うことのない願いだと少女は知っている。

 少女と男は一緒にいられない。

 少なくとも少女は男の全てを否定した。

 知っていたはずの男を受け入れることができなかった。

 その事実が少女の心を苦しめ、傷つけ続ける。

 男に真っ直ぐに見つめられるだけで、少女の胸は張り裂けそうになってしまう。

 

 そんな少女の気持ちを知ってか知らずでか、男も何も話さない。

 ただその瞳は少女を見つめて離さない。

 しかし、その頬は徐々に緩んでいき、男は少女にほほ笑みかける。

 先ほどまで辛そうに息を荒げていた人物とは思えないほど穏やかな表情を浮かべる男を見て、少女は奥歯を噛みしめてきつく口を噤む。

 男の浮かべる表情がいつか見た光景の焼き増しであるかのように思え、少女は胸に鋭い痛みを覚えて目を閉じる。

 

 場所もシチュエーションも何もかも違う2人だけの思い出。

 色あせることのない少女の記憶として輝いていた歪な欠片の1つ。

 今も尚……いや、今だからこそ、少女の胸の中で強く輝いているそれらは目の前の男によって刺激される。

 走馬灯のように次々と男との思い出が少女の頭の中で浮かんでは消えていく。

 

(そう、だよね。私の願いは今も昔もこれからもずっと変わらない。この思いを叶えられるのなら、私はっ!)

 

 頭の中で流れて行く思い出を鮮明に思い出すために閉じていた瞳を開き、少女は覚悟を決めた。

 ゆらりと腕を持ち上げて横に伸ばすと、少女は何かを掴むように手を握りしめる。

 すると、いつの間にか少女の手には白く細長い物体が出現した。

 それは一見すると、ライフルのようでありながら全体的に長剣の一種であるエストックを思わせる不思議な機械であった。

 少女はその先端を男に向けるように両手でしっかりと握りしめ、決意を言葉にする。

 

「死んでください………………夢人さん」

 

 男、御波夢人は少女の言葉を聞くと、一瞬悲しそうに表情を歪ませる。

 しかし、すぐに瞳を閉じて少女の言葉を受け入れるように腕を広げて待つ。

 少女が手に持つそれが自身の体を撃ち抜くのか、斬り裂くのかを。

 

 そんな態度が気にくわなかったのか、少女は夢人をきつく睨みながら白いそれを頭上高くまで振り上げる。

 そして、躊躇うことなく夢人の体を袈裟がけに斬り裂く。

 鮮血が少女の頬を汚す。

 べっちょりと跳ねた生温かい感触が少女に夢人を斬り捨てたのだと自覚させる。

 

「ごめん、な…………ネプ……ギ……ア……」

 

 仰向けに地面に倒れた夢人は最後に薄く目を開けながら少女、ネプギアへと謝罪の言葉を口にして沈黙してしまう。

 傷口から止めどなく血を流す夢人の横に、ネプギアは膝をつけて座り込む。

 『変身』して水色にきらめく瞳を潤ませながら、ネプギアは震える手で夢人の頬に触れる。

 

 ……その指にかつての温もりを感じることはできなかった。




と言う訳で、今回はここまで!
プロローグと言うよりもバットエンド臭漂う始まり方ですが、これが何を意味するのかは本編が進んでいくごとに明らかになっていきますよ。
次回からは時系列を戻して、本編の本格始動となります。
それでは、 次回 「新生活」 をお楽しみに!
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