超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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新年、明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!
それでは、 その眼帯、遅刻 はじまります


その眼帯、遅刻

 その日の朝、ネプテューヌ達はパニックを起こしていた。

 

「ゆっくん達がいないって、どう言うことなの!?」

 

 最初に疑問を口にしたのはネプテューヌであった。

 朝1で集められて寝惚けていた彼女だったが、話の内容を聞いて眠気が吹き飛んでしまったらしい。

 

「詳しいことは僕にも分からないんだ。でも、今現在御波君やホワイトハート様、それにロムちゃんやピーシェちゃんもいないみたいなんだ」

 

「それは本当なのか?」

 

「うん。最初、ここの人がホワイトハート様の姿が見えないって聞いたから御波君に相談しようと思ったんだけど、彼も部屋に居なくてね。もしかして、と思って皆にも声をかけたんだ」

 

 シンの言葉を聞き、MAGES.は眉間にしわを寄せた。

 朝早く叩き起こされたのはそう言った理由か、と納得したのである。

 同時に姿が見えなくなった夢人達を心配する。

 

「とりあえず、姿が見えないホワイトハート様の話は置いておいて、ネプギアはどうしたの? さっき名前を言わなかったんだから、当然行方不明にはなってないのでしょう?」

 

「そう言えば、ギアちゃんはどうしたんですか? シンさん、何か知っているんですか?」

 

 先ほどシンが名前を挙げていない者の中でネプギアだけがこの場にいない。

 それはミモザやコンパが不思議に思うのは当然である。

 すると、シンは困ったように笑いながら答える。

 

「彼女は話を聞いた途端に御波君を探しに行ってしまったよ。御波君が心配なんだろうね。僕にはとても止められなかったよ」

 

「……あー、何と言うか、ネプギアらしいね」

 

「……そうですね。ギアちゃん、誰よりもゆっくんさんが大事でしたから」

 

 乾いた笑みを浮かべてネプテューヌとコンパは納得した。

 出会ってからそれなりの付き合いがあり、ネプギアがそう言う行動に出ることが簡単に想像できたのである。

 

「では、ネプギアは無事なのだな?」

 

「うん。だから、僕達もここの人達と一緒に御波君達を探そうと思うんだ。どうかな?」

 

 シンの提案に異を唱える者など1人もいなかった。

 ネプテューヌ達は力強く頷く。

 

「もちろん! パーティーは助け合いだからね! ネプテューヌと愉快な仲間達のリーダーとしてはここでしっかりとポイント稼いどかないとね!」

 

「そのネーミングセンスとリーダーがポイント制なのは如何なものかと思うが、敢えて流しておこう。私も異論はない」

 

「そもそも1国の女神様が行方不明だと言うこと自体、大問題なのよ。これからのリーンボックスとルウィーの関係を良好にするためにも、ブ男以外はしっかりと見つけておかないといけないわ」

 

「もー、ミモちゃんってば素直じゃないですね。こう言う時は皆が心配だから探そうでいいんですよ」

 

 各自で好き勝手言ってはいるが、探すと言う結論は統一されている。

 何も問題ないかと思われたが、この場において1人だけ頭を抱えたい気持ちの人物がいた。

 

(うおおおーい!? いきなり何て問題が発生しちゃってるんですかー!?)

 

 もちろん、記録係として影に徹していたいデンゲキコである。

 記事に書ける事件が起こるのは嬉しいが、実際に当事者になるのは勘弁したいのである。

 

(あーもー、これどうしましょう!? ここは私も激流に身を任せつつ、皆さんの捜索模様を写真に収めて記事にしてしまいましょうか!? ……あれ? これ、よくない? 題して【女神と人の絆】とかにしちゃって、とってもハートフルな記事とか書けんじゃね?)

 

 後悔はすぐに欲望へと変化した模様である。

 特ダネを手に入れて豪華な椅子に座る自分を崇めるファミ通の姿を妄想し、デンゲキコは頬がにやけそうになる。

 

「ありがとう。じゃあ、皆で御波君達を絶対に探しだそう」

 

『おおー!』

 

「……まったく、この事態を本当に理解できているのかしら?」

 

「……言ってやるな。とりあえず、暗くなるよりも元気な方がいいだろうさ」

 

(うぇっへっへ、頭が高いんじゃないかなファミ通くん? なんつって!)

 

 夢人達を探すことに意欲を見せる2人と苦笑しながら見守る2人、変な世界に飛んでいる1人の不安な捜索活動が始まるのであった。

 

 ――夢人達がシンの持っているディスクの中にいることなど知らないままで。

 

 

*     *     *

 

 

 ……とは言ったものの、手がかりもなしに探すのは実に骨が折れる。

 実際、街をしらみつぶしに見回るしかないではないか。

 

「どうしたの、MAGES.? そんな変な顔しちゃって」

 

「……目の前で人を探すためにゴミ箱を漁る奴をリアルで見れば顔をしかめたくもなるだろ」

 

「いやまあ、お約束かなぁって思ってさ」

 

 アハハと笑って誤魔化そうとするネプテューヌ。

 だが、私にはどうしても本気で探していたようにしか見えない。

 

「ところでMAGES.は何か分かったことはないの? 例えば、ゆっくん達のいる場所とか」

 

「生憎と私はエスパーでも探偵でもないのでな。このまま地道に探すしかあるまい」

 

「えー、何かこう探知魔法みたいなものでババッと探せたりできないの?」

 

 まったく、ネプテューヌは魔法を何だと思っているのだ。

 確かに、魔法は選ばれし者だけが使える万能たる技術。

 だが、それは決して何でもできると言うことじゃない。

 

 例えば、死者蘇生などが分かりやすいだろう。

 いくら魔法が万能と言えども、死んだ者をよみがえらせることなど不可能だ。

 つまり、自然の摂理に反した魔法など有り得ないのである。

 魔法にご都合主義などと言う言葉は存在しない。

 従ってネプテューヌの言う探知魔法となると、ゲイムギョウ界中から白米ひと粒を探しだすような緻密さがなければ実現は不可能なのだ。

 そんなものは人の限界をとっくに超えてしまっている。

 

「無茶を言うな。ほら、さっさと次の場所を探すぞ」

 

「はーい」

 

 私の答えに期待してなかったのだろう、ネプテューヌは間延びした返事をしてついてくる。

 そもそもそんなものが使えたのであれば、最初から使っていると分かっているのだろう。

 

「でもさあ、ちょっとおかしいよね」

 

「何がだ?」

 

「だから、どうしてゆっくんやピー子、それにロムちゃんまでいなくなっちゃったのかだよ。ブランはまあ理由が分かるからいいけど、他の3人に何か共通点みたいな物ってないのかなって」

 

 とぼけているように見えて意外とネプテューヌは鋭いのかもしれない。

 今回の行方不明になった3人の不自然さに気付くなんて思わなかった。

 

「確かにな。夢人はともかく、あの幼い2人に何かあるとは到底思えん」

 

「あれ、ゆっくんだけ別枠?」

 

「当然だろう。変装していたとはいえ、夢人は魔王派に顔が割れている。しかも、自分達の存在を明るみだした張本人なのだ。恨みを買っていてもおかしくあるまい」

 

 デンゲキコが書いた記事を読ませてもらったが、アレで充分夢人も魔王派の標的になるだろうと私は考えている。

 女神を崇拝する者が多数を占めるゲイムギョウ界において、彼ら魔王派はできることなら極秘裏に計画を遂行しておきたかっただろう。

 それを邪魔した夢人が恨まれていてもおかしくない。

 

「うわぁ、ゆっくんってば結構危ない橋を渡ってたんだね。デンゲキコちゃんの記事見た時はREDちゃんと一緒に笑ったけど、マジでシャレにならない状況だったりしちゃうの?」

 

「ああ。それに奴には他にも……いや、それは関係ないか」

 

 言いかけた言葉を飲み込み、私は捜索に専念することにした。

 我ながら突飛なことを考えてしまったものである。

 夢人の“特異性”はあの場に居たリーンボックスの面々と私にアイエフ、それとナナハやデンゲキコに鉄拳やコンベルサシオンぐらいしか知らないのだから。

 

「うん? 何か言った?」

 

「気にするな。それよりも、もっと真面目に探せ」

 

 ネプテューヌを誤魔化し、私はあの時のことを思い出す。

 あの時――B.H.C.を使った時の夢人の反応は明らかに異常だった。

 電撃を扱う魔法はあっても、雷雲を呼び寄せる魔法なんて私は知らない。

 それに私がB.H.C.を使った時とまるで効果が違う。

 確かに、注意書きには体質により効果が変わると書いてあったが、アレはその範疇を明らかに逸脱している。

 だから、夢人が狙われた理由としても充分候補に挙がるのではないかと思う。

 

「この辺りにもいなさそうだね。ひょっとして街の中にはいないんじゃないかな?」

 

「だからと言って、街の外まで探しに出るわけにはいかないだろう。魔王派の連中がいつ襲ってくるかも分からないのに、そうホイホイと外に出られるわけがないさ」

 

「それは分かっているんだけど、こう動くに動けない歯がゆさみたいなのを感じちゃってさ」

 

「焦っても仕方がないだろう。ちょうどいい。そこで休憩するとしよう」

 

 ネプテューヌの気持ちも分からなくはないが、ここは我慢するしかない。

 今魔王派の脅威からこの街と人々を守れるのは我々だけだ。

 白の女神が失踪が奴らの思惑通りなら、この絶好のチャンスを逃すことなく襲ってくるはずなのだから。

 

「なになに? もしかして、奢ってくれちゃったりするの?」

 

「まあ、缶ジュース1本くらいなら奢ってやるさ」

 

「おお、MAGES.の太っ腹! よっ、あんたが大将!」

 

 褒め言葉なのか分からない言葉をネプテューヌに投げかけられ、私は微妙な気分になってしまう。

 私とて女性の端くれ。

 気に入った服が自らの体型のせいで着れなくなれば、格好がつかずに落ち込むこともある。

 

「さて、何がある――っ!?」

 

「MAGES.? 急にどうしたの?」

 

 財布を取り出して自販機へと投入しようとした私の手は震えてしまっていた。

 手だけではない。

 商品のラインナップを確認した段階で私の全身は震えてしまっている。

 

「――い」

 

「えっ、なに? どうしたの?」

 

「――何故、ここにもドゥクペがないんだ!!」

 

「ドゥクペ?」

 

 首を傾げて本気で知らない様子のネプテューヌに愕然としてしまう。

 

 どうしてあの世界的に有名な飲み物を知らないのだ!?

 ドゥクペ、正式名称デュクテュアープエッパーを知らないとは……くっ!? これも機関の策略だと言うのか!?

 

「――もしもし、私だ……ああ、その通りだ。追って連絡する」

 

「急にどうしたの? と言うより、電話鳴ってなかったよね?」

 

 当然だ。

 この端末は1部の限られた者だけが認識できる通話手段なのだからな。

 決してエア電話などではない。

 

「断わりもせずに通話をしてしまってすまなかったな」

 

「いや、今の確実に誰とも話してなかったよね? 単にそれっぽくしていただけだよね?」

 

「ふっ、若いな。いずれ貴様も全てを知る時が来るだろう。全ては運命石の導き次第だ」

 

「……うわぁ、これって絶対あいちゃんより酷いパターンだ」

 

 若干ネプテューヌに引かれているような気がするが、こればかりは仕方ない。

 これは真理に目覚めた者だけが共有する感覚なのだ。

 今は理解されなくても、いずれネプテューヌも分かる時が来るだろう。

 

「さて、では何を買おうか? 何か希望はあるか?」

 

「ここで話を戻すの!? ……まあ、ディープな世界に片足突っ込んで抜け出せなくなっちゃうよりもいいのかな?」

 

「希望がなければ、適当に選んでしまうぞ?」

 

「待った待った!? とりあえず、わたしにも何があるのか見せてよ!?」

 

 既に自販機にはコインを投入済みだ。

 ならば、自分で選ばせても問題あるまい。

 私は少しずれ、自販機の前をネプテューヌに譲る。

 

「うーん、素朴な疑問なんだけど、寒いって分かっているのにどうして冷たい飲み物はなくならないんだろうね? 確か、ホットって熱い時には全部コールドになってなかったっけ?」

 

「飲みやすさの問題ではないのか? もしくは温かい飲み物だけだと商品の種類が少ないせいで見栄えが悪くなるとかな」

 

「見栄えが悪くなるのは結構重要問題かもね。わたし的には中間のぬるいってタイプの飲み物とかあったら嬉しいんだけど……よしっ、ここは君に決めた!」

 

 くだらない話を交わしながら、ネプテューヌは勢いよくボタンを押した。

 取り出した缶を左右の手の間で忙しなく投げ合っているところを見ると、どうやらホットを選んだのだろう。

 だったら、何故冷たい飲み物の話を振ったのかと突っ込みたくなるが、どうでもいいので流しておくことにする。

 

「では、私は何にするか……」

 

 ドゥクペが無いので、正直悩んでしまう。

 ここは無難にコーヒーを選んでおくべきなのだろうか。

 

「うん? アレってメイドの人じゃないの?」

 

「何を言っているんだ? メイドは教会に戻ったはずで……」

 

「――ようやく見つけました!? 探しましたよ、お2人とも!?」

 

 勘違いだと思って聞き流そうとしていたが、本当にメイド本人――フィナンシェがいたらしい。

 しかし、フィナンシェは白の女神への報告を終えて、緑の女神達と一緒に街を去ったはず。

 そのまま教会に戻ったと聞いていたのに、慌てた様子で私達を探していたとは何が起こったと言うのだ?

 

「大変!? 大変なんですよ!? 今すぐここから避難してください!?」

 

「ちょっと落ち着きなって。それだけじゃ、何が何だか全然分からないよ」

 

「だから、お2人は今すぐ――っ!?」

 

 宥めようとするネプテューヌの言葉にも耳をかさず、フィナンシェは興奮したままだ。

 埒が明かないと私も落ち着かせようと考えた時、遠くの方から轟音が響いてきた。

 

「もう来た!? 早くブラン様に知らせないと!?」

 

「ちょっと待て! 今の音はいったい何だと言うんだ!」

 

 焦った顔で駆け出そうとするフィナンシェを呼び止め、私は先ほどの轟音の正体を尋ねた。

 地響きも感じたことから、相当ヤバい事態が起こっているに違いない。

 見れば、遠くに黒い煙のようなものも上がっている。

 

「教会の襲撃です!? 私が掴んだ情報は偽情報だったみたいなんです!? 本当の目的はレジスタンスの戦力を分散させるための罠だったんですよ!?」

 

「何だと!?」

 

 フィナンシェの言葉に驚きつつも、冷静な部分では納得もしていた。

 予想できていた襲撃なのだ。

 それなのに、奴らに先手を打たれてしまうとは情けない。

 私は悔しさで顔を歪めてしまう。

 

「行こう、MAGES.!」

 

「ああ、分かっているとも!」

 

 短い言葉だったが、ネプテューヌの真意はすぐに理解できた。

 私達で奴らの破壊活動を止めようと言うのだ。

 

「ちょっ、どこに行く気なんですか!? お2人は安全な場所に避難を……」

 

「ごめん、それ無理。だって、今はベールもブランもいないんだし、戦えるわたし達が逃げるわけにはいかないでしょ?」

 

「ま、待ってください!? ブラン様がいないって、どう言うこと……」

 

「話は全部終わった後でしてやる! だから、貴様は逃げる奴らの避難誘導を頼むぞ!」

 

 話す時間も惜しいため、私達は戸惑うフィナンシェを置き去りにして駆け出した。

 目的地は立ち昇る煙のおかげでバッチリ分かっている。

 これ以上、被害を広げさせるわけにはいかない。

 さて、久しぶりに全力で我が魔導の深淵を奴らに味わわせてやろうではないか!

 

 

*     *     *

 

 

「こっちですぅ!? 急いでください!?」

 

「助かりたかったら、この先に居る人の案内に従いなさい!? ほら、速く走りなさいよ!?」

 

 同じ頃、コンパとミモザは避難する人達の誘導に追われていた。

 2人はネプテューヌ達よりも襲撃された場所の近くに居たのである。

 見たことのある兵器を前にして、2人はすぐさまブランの部下達がいる場所の方向へと人々を誘導させたのであった。

 

「ミモちゃん、アレってやっぱりラステイションで見た……」

 

「余計なことを考えるんじゃないの!! 今は逃げ遅れがいないか、ちゃんと確認する!!」

 

「は、はいです!?」

 

 怯えるコンパを一喝し、ミモザは逃げ遅れた人がいないかを探しだす。

 避難する人達には既に誘導は必要ないと判断したのだ。

 後は、1人でも多く助けようとしている。

 

「こっちは大丈夫!! そっちは!!」

 

「こっちも全員避難できたみたいです!!」

 

「だったら、私達も早く避難を――っ、コンパ!?」

 

「えっ?」

 

 自分達も安全な場所に避難しようとした瞬間、ミモザはコンパの背後に死神を見た。

 呼びかけてももう遅い。

 キョトンとした顔でコンパが振り返ると、目の前には多脚型の戦車――SDHCカスタムの姿があった。

 

「あっ……あ……」

 

 自分がターゲットにされていると分かっているのに、コンパは動けずにいた。

 いや、恐怖のあまり足がすくんでしまっているのである。

 目の前の戦車が街を破壊する光景を目の当たりにしているのだから、コンパの反応は当たり前である。

 

「何やってるの!? 早く逃げなさいよ!?」

 

 動かないコンパを見て、ミモザの焦った声が木霊する。

 だが、それは余計にコンパを窮地に立たせるだけだった。

 コンパは上手く動かない足をもつれさせて転んでしまう。

 

「コンパー!?」

 

 名前を叫びながら、ミモザはコンパを救うために駆け出す。

 しかし、とても間に合いそうにない。

 既にSDHCカスタムの砲塔はコンパに向けられている。

 

 暗い砲身の内側に光が灯り始めたその時――何かが高速で砲塔の中に投げ込まれた。

 ミモザの仕業ではない。

 コンパを助けようとして、急に爆発した砲身に目を丸くしている。

 

「ゴホッ、ゴホッ……何が起きたんですかぁ?」

 

「――無事か?」

 

「ほえっ?」

 

 爆発によって生じた煙にコンパがむせていると、知らない声がかけられた。

 涙目になりながら顔を上げると、そこにはコンパを庇うように立つ男性がいた。

 くすんだ銀髪に黒い眼帯が特徴的な男性だった。

 

「その様子だと大丈夫そうだな」

 

「は、はい、大丈夫です!?」

 

「なら、よかった」

 

 コンパの無事を確認すると、男性は安心したように頬を緩めた。

 だが、すぐにSDHCカスタムへと鋭い視線を向ける。

 

「神次元に着いて早々、こんな場面に出くわすとはな。今の状況がどうなっているのか知らないが、街を破壊する貴様らを放置するわけにはいかない!」

 

 爆発音に集められたのか、SDHCカスタムの後ろからアンテナの付いた丸い球体のロボットがうじゃうじゃと姿を現す。

 しかし、男性は動じない。

 それどころか、いつの間にか男性の両手には剣が1本ずつ握られている。

 

「行くぞ!!」

 

 両手に剣を携え、男性――レイヴィスは機械の大群に突撃するのであった。

 

 

*     *     *

 

 

(あわわわわ!? いったいどうすればいいって言うんですか!?)

 

 デンゲキコはかつてないほど焦っていた。

 今まで遭遇した危険が子供騙しだと思えるほどに状況は切迫している。

 

「じゃあ、頼んだよ。丁重に御持て成ししてあげてくれ」

 

「はい、分かりました」

 

 最初は一緒に夢人達を捜索していたシンとはぐれたことが原因だった。

 1人になれたことで適当に捜索活動をしていると、爆発音が聞こえてきた。

 慌てて人の波に紛れて避難しようとしたのだが、途中で逆方向に進む人物を発見。

 何かあると睨んだデンゲキコはその人物を尾行し、あわよくば特ダネを手に入れようと考えていた。

 

「くれぐれも“彼女”には手を出しちゃ駄目だよ? その子にはもう先約がいるんだからね」

 

「はい、分かりました」

 

 しかし、今はその自分の判断をもの凄く後悔していた。

 気付けば、街の外まで怪しい人物の後を尾行していたのである。

 チラリと隠れている木の陰から観察してみると、尾行していた人物の服装はルウィーの教会職員の服を着ていた。

 声を拾える位置まで隠れながら移動すると、そこで予想外の人物まで見つけてしまったのである。

 

「それじゃ、よろしく頼むよ」

 

「はい、分かりました――シン様」

 

 何を隠そう、そこに居たのははぐれてしまったシンだった。

 感情を感じさせない機械的な返事を繰り返す職員も不気味に思ったが、デンゲキコはそれ以上に驚いていた。

 シンの存在はもちろんだが、職員が抱えている“彼女”も予想外だったのである。

 

 ――ぐったりとした様子で縛られているネプギアが居たのだから。

 

(どうしましょう!? これ、絶対私1人の手に負える問題じゃありませんって!? い、急いで誰かに知らせないと……)

 

「ところで、デンゲキコさんはそこにいつまで隠れているつもりなのかな?」

 

(――って、バレテーラー!?)

 

 シンはとっくにデンゲキコの存在に気付いていたらしい。

 デンゲキコがビクビクし過ぎて音を出したのが原因だろう。

 

「大人しく出て来ないのであれば、こちらも手荒な手段を取らざるを得なくなるんだよね。さーて、どうしようかな?」

 

「は、はいぃぃ!? すぐに出ますぅ!?」

 

「うん、ありがとう」

 

「あっ……」

 

 身の危険を感じて隠れるのをやめたデンゲキコ。

 だが、命の危険はまだ継続中だった。

 木の陰から出た途端に、デンゲキコは眉間に銃口を突き付けられたのである。

 

「大人しく俺達について来てくれないかな? 大丈夫、悪いようにはしないから、ね?」

 

(あっ、私死んだかも……)

 

 にっこりと笑うシンを前にして、デンゲキコに選択肢などなかった。

 迫る死の予感に背筋が凍るような思いで、デンゲキコはシンの指示に従うのであった。




と言う訳で、今回はここまで!
ルウィー編も大詰め……って、ここまでで結構長くなっちゃってますけどね。
とりあえず、新年の目標は年内中の完結を目指して頑張らせていただきます。
それでは、 次回 「その出会い、運命」 をお楽しみに!
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