超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
正月のアニメ特番って、どうして再放送だと分かっているのに観てしまうでしょうかね。
気づけば、チャンネルをNHKにしている私がいました。
それでは、 その出会い、運命 はじまります


その出会い、運命

「出口でも何でも教えると言ったな? アレは嘘だ! ハーッハッハッハ、そう簡単にボクが口を割るとでも思って……」

 

「ピーシェ」

 

「あーい!」

 

「――イタダダダダダァッ!? 髪は引っ張らないでぇ!? ごめんなさい、嘘ですぅ!? 全部話しますから許して下さいぃ!?」

 

 ピーシェに後ろから髪を思いっきり引っ張られ、ボッツは悲鳴を上げた。

 何故、正座をさせられているにもかかわらず偉そうにしたのだろうか。

 そんな様子を見て、ピーシェに頼んだ夢人もため息をついてしまう。

 

「ピーシェ、ストップ……はあ、だったら最初からちゃんと教えてくれよ。こっちはちゃんと約束を守ったんだしさ」

 

「ひぃ……ひぃ……分かったよ。どの道、ボク1人じゃここを出られないんだし、仕方ないか」

 

 本音を口にしつつも、ボッツは出口を教えてくれるらしい。

 痛む後頭部を擦りながら、涙目で説明を始める。

 

「まず、ここを脱出するためにはきちんとした手順を踏まなきゃいけないんだ。ほら、扉がいくつかあるだろ? 適当に扉を通るだけじゃ、この場所をループするだけだけど決められた順番通りに進むと……」

 

「外に出られる、ってわけか」

 

「そうだ。それ以外にここから出る方法なんてない」

 

 脱出方法はポピュラーだが、難解でもあった。

 闘技場にある扉は6つ。

 その組み合わせから正解を偶然引き当てる確率はかなり低い。

 

「なるほどね。だいたい理解できたわ」

 

「ブラン……もう大丈夫なのか?」

 

「ええ。少しは休めたし、大丈夫よ」

 

 話を引き継ごうとしたブランを夢人が心配するのには理由があった。

 フェンリルや牛鬼の群れは問題なく倒せたが、ブランとロムは予想以上に疲弊してしまったのである。

 謎のパワーダウンの影響なのか、女神化を解いた途端に体からドッと力が抜けてしまったのだ。

 だから、ロムは今でも壁に寄りかかって座っている。

 ブランも先ほどまでロムの隣で同じように座っていたのだ。

 

「わたしからも色々と聞かせてもらいたいことはあるけど、今はここを出ることだけを考えましょう。それで、正しい道順はどうなっているの?」

 

「……えっと、それはちょっと言い辛いと言うか、何て言えばいいのか」

 

「ここまで来てだんまりを決め込むつもりなの? あなた1人じゃ外に出られないんでしょ? それまでなら、わたしが守ってあげるわ」

 

 渋るボッツに、ブランはやや苛立った声で言う。

 ブランは一刻も早くこの場所から外に出たいのである。

 魔王派のこともあるが、ここは居心地が悪すぎるのだ。

 

「……怒らないで聞いてくれますか?」

 

「嫌な予感しかしないけど、言ってみなさい」

 

「実は外に出るための手順、知らないんです」

 

「――んだと、テメェ!!」

 

「ヒイィッ!?」

 

 あんまりなボッツの言葉に、ブランはさすがにキレてしまった。

 脱出する方法は分かっても、その手順が分からなければ意味がないのである。

 それを唯一知っていると思っていたボッツが分からなければ、夢人達は完全にお手上げになってしまう。

 

「ふざけんなよ!! だったら、どうやってここから出りゃいいって言うんだ!!」

 

「そ、そんなのボクだって知りたいんだよ!? ずっとモンスターから逃げ回りながら扉をくぐる真似なんて、もうしたくないんだよ!?」

 

 いくら怒声をぶつけられようとも、分からないことは分からないのである。

 シンの弾丸から逃れるための事故でディスクの中に入ってから、ボッツは毎日モンスターに襲われ心休まる日などなかった。

 外に出たい気持ちはボッツも同じなのである。

 

「チッ、それじゃ、しらみつぶしで試すしかないか。どれだけ時間がかかると思ってんだよ」

 

 これ以上ボッツを責めても無意味だと悟り、ブランは舌打ちをして6つの扉を睨む。

 手順も分からなければ、何回目で外に出られるかも分からない。

 しかも、どこで間違えたのかも分からないのだ。

 正に気の遠くなるような作業を前にして、恨み事をこぼしてしまうのは仕方ないだろう。

 

「――多分、最初はあの扉だと思う」

 

「はあ?」

 

 不意に夢人が扉の1つを指さした。

 ブランはいぶかしみながら夢人の顔を見上げる。

 

「何となくあの扉の奥にネプギアがいるような気がするんだ」

 

「ネプギアって、あの少しネプテューヌに似てた子のこと?」

 

「ああ。俺にもよく分からないんだけど、あの扉の奥にネプギアがいる――そんな感じがするんだ」

 

 言っている本人もよく分かっていないのだろう。

 夢人の顔は戸惑っているように、ブランには見えた。

 普通に考えれば、夢人の危ない発言を信じる理由は1つもない。

 だが、ブランにはただの危ない発言に思えなかった。

 

「……ねえ、あなたはいつもあんなことができるの?」

 

「あんなこと?」

 

「自分よりも大きなモンスターを投げ飛ばすとかよ。あの穴に埋まっていたサイクロプス、あなたが投げ飛ばしたんでしょ?」

 

 ブランは夢人がサイクロプスを投げ飛ばした瞬間を見ていない。

 見たのは頭から地面に埋まっているサイクロプスだけである。

 

「出来るわけないだろ。俺だって、何でできたのか分からないんだから……でも、あの時は何となく“出来る”って思ったんだよな。そうしたら、勝手に体が動いて気付いたら投げ飛ばしていたんだ」

 

「そう。なら、体が重かったり、上手く動かせなかったりとか感じなかった?」

 

「いや、体は別に……そう言えば、なんか肩が軽いような気がするな。さっきもいつも以上に速く走れたし」

 

 グルグルと肩を回しながら首を傾げる夢人を見て、ブランは疑念を強めた。

 夢人の感想はブランと真逆のものだった。

 ブランはこの場に居るだけで消耗していくような感覚を味わっている。

 しかし、夢人の方は力を持て余しているように思える。

 

「分かったわ。今はあなたのその勘のようなものを信じてみましょう」

 

「えっ、でも……」

 

「別に間違ってても構わないわ。他に当てがない以上、手探りなのは変わらないんだから」

 

「……分かった。任せてくれ」

 

 緊張した面持ちで夢人はブランの頼みを引き受けた。

 ポケットからネプギアの髪飾りを取り出して握りしめる。

 コレだけは約束通り、肌身離さず持ち歩いていたのだ。

 

(ネプギア……)

 

 目を閉じてネプギアの姿を強くイメージする夢人。

 すると、やはり指さした扉の奥からネプギアの気配を感じる。

 

「よし、やっぱりあの扉だ。ロムは俺がおぶっていくとして……ブラン?」

 

「な、何でもないわ」

 

 夢人は目を開けると、まず壁際に居たロムを見た。

 疲れて眠ってしまっているのだろう、俯いたまま動いていない。

 背負うためにロムに近寄ろうとするが、その前にブランが目を丸くして自分の顔を見ていることに夢人は気付いた。

 理由を聞いても慌てて顔を逸らされたので分からない。

 

(今のは見間違いなの? 一瞬、目が赤く光ってたような……)

 

「おーい、ブラン。行くぞ」

 

「わ、分かった」

 

 夢人が目を開いた瞬間に見えた赤い光について考えていると、既にロムを背負い終えていたらしい。

 呼びかけられ、ブランは慌てて夢人の後を追う。

 その時にはもう夢人の瞳は完全に黒だったので、ブランは勘違いだろうと疑問を頭の中から捨ててしまう。

 

「って、ボクを置いていかないで――って、足が痺れたあああ!? ちょ、ちょっと待ってて!? お願いだから、立てるようになるまで待っててくださーい!?」

 

 ずっと正座をしていたせいで足が痺れ、ボッツは這うようにしか動けないでいた。

 そんなボッツの情けない姿を見て、夢人は苦笑しブランは呆れてため息をついてしまう。

 しかも、ピーシェには……

 

「さっさとたてー!!」

 

「へぶっ!?」

 

 顔を殴られてしまうボッツを、さすがに夢人達は憐れに思ってしまうのであった。

 

 

*     *     *

 

 

 街から離れた林の中であろう場所、そこに1枚のディスクがあった。

 無造作に雪の上に落とされている。

 このままでは誰の目にも触れられずに雪に埋もれてしまうだろう。

 

 ――だが、そのディスクは突然光を放ち輝きだした。

 眩しい光でディスクの影すら分からなくなったが、代わりに多くの影が姿を現す。

 

「出れた、わよね?」

 

「ああ、間違いなく外だよな」

 

 その人影は先ほどまで闘技場のような場所に居たはずの夢人達であった。

 無事に脱出できたのである。

 しかし、その実感をブランも夢人も感じていなかった。

 

「わっ、つめたい!? ここ、ぴいたちのへやじゃない!?」

 

「やったー!! 外に出れたぞー!!」

 

 呆けている2人と違い、ピーシェとボッツは騒いでいた。

 ディスクから出た瞬間に尻餅をついてしまったピーシェは雪の冷たさや寝たはずの部屋じゃないことに驚いている。

 ボッツに至っては両手を組んで青空を泣きながら見上げている。

 

「う、うぅん……外、出れたの?」

 

「悪い、起こしちゃったか?」

 

「ちょっと寒いかなって(ぎゅっ)」

 

 背負っているロムの位置を調整し、夢人はようやく安心して一息つけた。

 一方、ブランは足元に落ちているディスクを拾い上げて眉をひそめる。

 

(コレって、やっぱりあのディスクよね。だとしたら、今までわたし達がいた空間はこのディスクの中なの?)

 

 闘技場で目覚める前と今の状況、ブランはほぼ推測が正しいことを確信していた。

 だが、人がディスクの中に入るなんて事例は今まで聞いたことがない。

 まだこのディスクには謎が残っているのだろうと、ブランは思っている。

 後で調べるために、ブランはディスクをポケットへとしまい込んだ。

 

「とりあえず、街に戻りましょう。このままここに居たら、全員風邪を引いてしまうわ」

 

「そうだな。ピーシェも遊んでないで……」

 

「――ちょーっと待ったー!!」

 

 このまま街に戻って休もうとする夢人達を止めたのは、ボッツだった。

 散々晒してきた情けない顔でなく、にやりと得意げに笑みを浮かべている。

 

「ハーッハッハッ!! よく我が迷宮を迷わずに脱出できたな!! さすが女神とその仲間と褒めておこう!! しかぁーし、貴様らの命運もここで尽きる!! 貴様らはこのDr.G=ボッツ様が作り上げた……」

 

「ぴいぱんち!!」

 

「ほごおっ!?」

 

 高笑いをしながら何かを取り出そうとした瞬間、ボッツはピーシェに殴られた。

 身長差もあり、ピーシェの拳は見事にボッツの鳩尾を捉えている。

 

「ながいし、うっさい!! へんなやつのくせに!!」

 

「ぼ、ボクは変な奴では――ちょっ、やめて!? これ以上、殴っちゃいやあああああ!?」

 

 亀のように腹を抱えて小さくなるボッツを、ピーシェは容赦なく叩いて蹴りまくる。

 どちらが悪者か分かったものじゃない。

 

「やめろ、ピーシェ! そうやってすぐに人を殴るなって!」

 

「へんなやつがわるい!! ぴい、はやくかえりたいのにじゃました!!」

 

「だからって、いきなり殴るのは駄目だろ……ほら、お前も立てって」

 

 プンスカ怒るピーシェを叱ると、夢人はうずくまったままのボッツに声をかけた。

 色々と残念すぎてかわいそうになってきたからである。

 

「ぐす……どうせボクなんて子どもにも負ける貧弱ニートなんだ……だから、ボクにはもうあの人しか……」

 

「ヤバいな。なんか変なスイッチ入ってるぞ」

 

「だからと言って、放っておくわけにもいかないわ。連れて帰って知っていることを話してもらわないといけないんだから」

 

 すすり泣くボッツを前にして、夢人とブランは困ってしまう。

 下手に刺激したら、また高笑いをするかメソメソしそうで非常に面倒臭そうである。

 しかし、色々と知っていそうなボッツをこのまま野放しにするわけにはいかない。

 

「とりあえず、手を引いて連れてくか? それなら、このままでも大丈夫そうだし」

 

「それしかないわね。悪いんだけど、引っ張って来てくれないかしら?」

 

「了解。ほら、しっかり立って」

 

「……うん」

 

 ロムを落とさないように気を付けて、夢人はボッツの腕を掴んで立ち上がらせる。

 素直に返事をして立ち上がった様子から、こちらの誘導には従ってくれるようだ。

 

「面倒なこと頼んじゃって、ごめんなさい。それとあなたのおかげで外に出ることができたわ。本当にありがとう」

 

「いや、俺も何が何だかよく分かってなかったし」

 

「それでも脱出できたのはあなたのおかげよ……それと後で話したいことがあるから、少しだけ時間をちょうだい」

 

「分かった」

 

 頷いたものの、夢人はブランが表情を硬くさせた理由は分からなかった。

 だが、話を聞けば分かるかと、夢人は軽く考える。

 今は早く街に戻るべきだと判断したからだ。

 

「いやいやいや!? 何で私を無視したまま行こうとしているんですか!? ちょっと気付いているんでしょ!?」

 

『……えっ?』

 

 しかし、まだ街には戻れなさそうである。

 突如聞こえてきた声に本気で夢人とブランが驚き振り向くと、そこには木に縛り付けられたデンゲキコの姿があった。

 

「えっ、何ですか、その反応。まさかとは思いますけど、私のことをまったく気付いてなかったとでも言うんですか?」

 

「……ごめん、全然気付かなかった」

 

「……わたしも」

 

「マジトーンで謝るのは本当にやめてくださいよぉ!? すごく傷つくんですけどぉ!?」

 

 申し訳なく顔を逸らす夢人とブランを見て、デンゲキコは泣いてしまう。

 背景に徹したいとは思っていたが、こんな時に影が薄くなるのは勘弁して欲しかったのである。

 

「ホワイトハート様はともかく、御波さんは酷いですよ!? 一緒にリーンボックスで死線をくぐり抜けた仲じゃないですか!? どうして私のことに気付いてくれなかったんですかぁ!?」

 

「いや、本当にごめん!? 今、助けるから!?」

 

「早くしてください!? もう腕の感覚がなくなってきているんですから!?」

 

 ボッツの腕を離し、夢人は慌ててデンゲキコを縛る縄を解き始めた。

 デンゲキコは大袈裟に言っているが、縄自体はそんなにきつく縛られていない。

 片手でも簡単に解け、デンゲキコは大きく息を吐く。

 

「ふぅ、ようやく自由の身になりました。いやあ、このまま誰にも気付かれないで死んじゃうんじゃないかって思っちゃいましたよ」

 

「悪かったって……ところで、何でデンゲキコはこんな所に居たんだ?」

 

 夢人の疑問は当然だろう。

 街から離れた人気のない林の中で縛られていたのだ。

 何があったのかと心配になってしまう。

 

「って、そうでした!? 色々と大変なんですよ!? 街は魔王派に襲われるし、ネプギアさんは捕まるしで……」

 

「ネプギアが!?」

 

「街が襲われたって、どう言うことだ!! 何が起こっているって言うんだ!!」

 

 聞き逃せないデンゲキコの発言に、夢人もブランも冷静でいられなくなった。

 激しい剣幕でブランに詰め寄られたデンゲキコは若干怯えながら口を開く。

 

「じ、実はラステイションの話は罠で、魔王派の目的はレジスタンスの壊滅だったみたいなんです。変な機械の大群が今も街を襲っていて、その……」

 

「チッ、アイツらよくも!!」

 

 盛大に舌打ちを鳴らし、ブランは街の方を睨んだ。

 自分がいない間に好き勝手暴れる魔王派に対する怒りだけで、今にも女神化しそうな勢いである。

 

「ネプギアは!? ネプギアが捕まったってどう言うことだよ!?」

 

「ネプギアさんは誰よりも早く魔王派の進軍を止めようとして……やられて捕まってしまったんです」

 

「クソッ!! 魔王派の奴ら……!!」

 

 俯くデンゲキコの話を聞き、夢人も魔王派に対する怒りを燃やす。

 

 ――だから、気付けなかった。

 デンゲキコが何に対して後ろめたさを感じて俯いたのかを。

 

「こうしちゃいられない!! わたしはすぐに街に戻るわ!! あなた達は……」

 

「俺もネプギアを助けないと!! 奴らはネプギアはどこに連れて行ったんだ!!」

 

「教会に連れていくとか言っていたので、多分あっちの方です」

 

「分かった!!」

 

 ブランの言葉を遮ってデンゲキコから話を聞きだすと、夢人は急いでネプギアを助けようと考えた。

 素早く背負っていたロムをデンゲキコに預け、一目散に駆け出そうとする。

 

「ま、待ってください!? 御波さんの剣と薬はそこの木の陰にあります!? 一緒に持って行って下さい!?」

 

「何でここに……」

 

「そ、それは……ネプギアさんが御波さんに届けようとして、その……」

 

「とりあえず、今は助かる!!」

 

 しどろもどろになるデンゲキコに構わず、夢人は木の陰からブレイブソードとB.H.C.を拾った。

 都合が良すぎる気がしたが、今は考えている暇はない。

 今度こそ、夢人はネプギアを助けに向かう。

 

(ネプギア!! 絶対に助けてみせる!!)

 

 強い決意を秘めて駆け出す夢人を見送るデンゲキコの顔は優れない。

 だが、その理由をデンゲキコは口に出すわけにはいかない。

 寒さとは違う理由で体を震わせ、デンゲキコは後悔の言葉を頭の中で繰り返すのであった。

 

(ごめんなさい、御波さん。ああ言わなかったら、私殺されてたかもしれないんです)

 

「――キキィ」

 

 木の上で怯えるデンゲキコを監視していた使い魔は一連のやり取りを見届け、満足そうに目を細めて飛び立つ。

 その隣には夢人達に気付かれずディスクの中から飛び出したもう1匹もいる。

 片方は夢人を追いかけ、もう片方は自分達に命令を下した主――シンの元に飛んでいくのであった。

 

 

*     *     *

 

 

「ハア、ハア……こっちであってるんだよな?」

 

 息を切らしてはいるが、夢人の足は止まらない。

 教会への方向があっているかも分からないまま、夢人は走り続けている。

 1秒でも早くネプギアを助け出すためだ。

 

(まだ走れる!! 絶対に追いつくぞ!!)

 

 ――この時、夢人は気付かなかった。

 まだ自分の体がディスクの中に居た時と同じで軽いままだと言うことに。

 いつもより格段に速く走れていることに。

 

 自分の体に起きている異常に気付けないほど、夢人の頭の中はネプギアのことでいっぱいだった。

 ブレイブソードを持つ手は強く握られ、思考はネプギアを心配して焦るばかりである。

 

「おい、そこの男。少し待て」

 

「――っ、誰だ!?」

 

 急に投げかけられた声に反応し、夢人は慌てて周りを見回した。

 声の主は自分から夢人の前に現れたので、すぐに見つけることができた。

 

(コイツ……まさか魔王派の……)

 

 その人物は深い緑色の長い髪にマントを身に付けた男性だった。

 腰に携えた剣に手を添え、いつでも抜刀できるようにしている。

 自然体でありながら油断なく自分を射抜くように睨んでくる男性を前にして、夢人は表情を険しくさせる。

 

「急いでいた所すまないが、こちらも頼まれた以上引くに引けないのでな」

 

(来る……!)

 

「――豆腐屋はどこにある?」

 

 緊張していたのが馬鹿らしく思えてくる言葉が発せられた。

 聞き間違えかと夢人が目をパチクリとさせるが、男性は真顔のままである。

 

「聞こえなかったのか? 豆腐屋はどこにあるかと聞いているんだ」

 

「豆腐……いや、何で豆腐?」

 

「この辺りではなかったのか? 確か、地図ではこの辺りに豆腐屋があると描いてあるのだが……」

 

 ポケットから折りたたんだ地図を取り出し、男性は描いてある内容を確認する。

 次にきょろきょろとあたりを見渡し、不思議そうに首を傾げる。

 

「さっきまで温かかったはずなのに、いつの間に雪が降ったんだ? ラステイションは随分と場所によって気候が違うのだな」

 

「……いや、ここルウィーなんですけど」

 

「何、だと……!?」

 

 愕然とするただの迷子――ディックは国を越えたお遣いの真っただ中であった。




と言う訳で、今回はここまで!
まあ、正月は色々と面白い番組が多いんですけどね。
今年も格付けやマラソンなど、楽しませていただきました。
それでは、 次回 「その剣、折れる」 をお楽しみに!
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