超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今話でようやくあの人の名前が出ますよ。
……いやもうサブタイで出てるんですけどね(苦笑)。
それでは、 その魔女、マジェコンヌ はじまります


その魔女、マジェコンヌ

 呆気ない幕切れだった、とディックは思う。

 仰向けに倒れる夢人とブレイブソードだった残骸を見て、ディックは最後の一撃を思い出す。

 何の変哲もない一振りだった。

 特別に力を込めたわけではない。

 

 ……だが、そのなんてことない一振りがブレイブソードを砕き、夢人を斬り裂いたのである。

 

(何だ今の感触は……)

 

 ディックは自分の剣を見つめる。

 シアンに造ってもらった剣。

 それは特別切れ味がよかったり、装飾にこだわっているわけじゃない。

 無骨なだけのシンプルな剣である。

 造り手であるシアンは不満そうだったが、ディックにはそう言うものは必要ない。

 斬るために必要なのは剣の性能ではなく、己の力と技術だと信じているからだ。

 

 だからこそ、ディックは違和感を覚えていた。

 己の経験と技術が囁いている――あの程度の斬撃でブレイブソードが砕けるわけがないと。

 

「ムッ、しまった。やり過ぎてしまったか?」

 

 だが、剣にべったりと付着している血を見つけて、ディックは夢人の容態を思い出した。

 仰向けに倒れたままピクリとも動かない。

 右肩から左腰へと斬り裂かれた服は赤く染まっている。

 それだけにとどまらず、夢人の倒れている場所の雪にも血がにじんでいた。

 

「死んでしまったのか? おい、生きているなら返事をしろ」

 

 ディックから殺しに対する忌避感は感じられない。

 殺してしまったと言う感覚が薄いのでなく、夢人の生死に興味がないようだ。

 平坦な声で夢人に呼びかけている。

 すると、夢人の指がピクリと動いた。

 

「よし、生きているな。死ぬ前に俺の質問に……」

 

「――まだ、だ」

 

「何?」

 

 助からないだろうと思って聞きたかったことを尋ねようとするディックだったが、目を丸くして言葉を失ってしまう。

 何故なら、夢人が立ち上がったからである。

 明らかに致命傷と分かる傷口からは血が流れ落ちており、今にも倒れそうなくらいにふらついている。

 だが、夢人は歯を食いしばって立ち、ディックを睨みつける。

 

「俺は……こんな所で死ねない……! 絶対に……ネプギアを……」

 

「それ以上はしゃべらない方がいい。本当に死んでしまうぞ?」

 

 剣こそ握っているが、ディックにはもう戦う理由がなかった。

 ディックの目的は夢人を殺すことでなく、情報を聞きだすことだからである。

 せっかく生きていたのだから、死んでもらっては困るのだ。

 

「死んで……堪るか……! 俺は……ネプギアを……!」

 

 ディックの忠告を無視して、夢人はふらつきながらもポケットからB.H.C.の入った小瓶を取り出す。

 蓋を開けて逆さまにした小瓶から多くのB.H.C.がこぼれ落ちても気にせず、1粒だけを指でしっかりと掴む。

 

「――絶対に助けるんだ!!」

 

 叫ぶと同時に口の中にB.H.C.を放り込む。

 ガリッと噛み砕いた粒はすぐに夢人の体内に吸収されていく。

 すると、夢人は急に首をガクリと項垂れる。

 

(何だ? ただ意識を失っただけなのか?)

 

 最初、ディックは夢人が遂に立ったまま意識を失ったものだと思った。

 しかし、すぐに違うと否定する。

 夢人からさっきにも似たプレッシャーを感じたからである。

 

 ――パリンッとガラス玉が砕けるような軽い音が響く。

 音の発生源は夢人のブレスレット。

 砕けた水晶は溶けるように消えてしまう。

 瞬間、弾かれたように夢人がディックへと突撃する。

 

(まだ動けたか……だが――っ!?)

 

 剣の腹で受け止めた夢人の手刀の重さに、ディックは驚愕する。

 立つのもやっとの状態だった夢人の一撃で、腕に痺れを感じてしまったのだ。

 まるで硬い鉄を斬った時と同じ感覚だった。

 

「くっ!?」

 

 ディックは弾き飛ばすように剣を振るい、夢人を離れさせた。

 後ろに跳んだ夢人に、先ほどまでのふらつきはない。

 両の脚でしっかりと体を支え、歯を剥き出しにしてディックを睨みつける。

 ――赤黒く染まった血のような瞳で。

 

(何とも不思議な奴だな。これが魔王派とやらの実力なのか)

 

 再び戦闘態勢へと戻るディック。

 ディックにとって、ブレスレットが砕けようが瞳が赤黒く光ろうが傷口の血が急に止まろうが関係ない。

 謎も疑問も剣を握れば意味を持たなくなる。

 

(斬れば分かる――それだけだ!!)

 

 母から教わったそのシンプルな行動原理に従い、ディックは迷いなく夢人へと斬りかかるのであった。

 

 

*     *     *

 

 

「チッ、数だけは多いな」

 

 悪態をつきながらも、レイヴィスは新しく“作り出した”剣をキラーマシンへと投擲する。

 剣は突き刺さると同時に爆発を起こし、キラーマシンは機能を停止させた。

 

 ――レイヴィスの能力、『創生』。

 それは彼が見た物、触れた物であれば、何でも作り出せる能力。

 ゲイムギョウ界において、転生者であるレイヴィスが貰った『特典』である。

 

「すごいですぅ……」

 

「銀髪に眼帯……じゃあ、あの男がレイヴィス?」

 

「ミモちゃん、知っているんですか?」

 

「ええ、ナナハから聞いていたブ男の仲間の1人のはずよ」

 

 ステップを踏むような軽やかな動きでキラーマシン達に剣を投擲していくレイヴィスの姿を、コンパとミモザは呆けた顔で眺めていた。

 命の危険が去った直後なので、気が抜けてしまっているのだろう。

 

「おーい、コンパー!! ミモリーン!!」

 

「無事か、2人とも!!」

 

「――ねぷねぷ!! それにめーちゃんも!!」

 

 後ろからやって来たネプテューヌとMAGES.の姿を捉え、コンパはパアッと顔を明るくさせた。

 2人はすぐにコンパとミモザの傍まで駆け寄ると、キラーマシン達と戦い続けるレイヴィスへと目を向ける。

 

「おおー! なんかいつの間にか新キャラが登場してる! それで、あの外見があいちゃんやMAGES.的な要素を含んでる人はどこの家のどちらさん?」

 

「ブ男の仲間の1人よ。それより遅れて来たんだから、さっさとアイツらをぶっ壊しに行きなさいよ!」

 

 こんな状況でも変わらないネプテューヌを睨み、ミモザはキラーマシン達を倒すように急かした。

 言い方は乱暴だが、正論なのでネプテューヌも無駄にふざけるつもりはなかった。

 

「あらほらさっさー! じゃあ、パパッと倒しちゃおうか!」

 

 すぐに女神化を行うネプテューヌ。

 光の中から姿を現すと、刀剣を構えてキラーマシン達を見据える。

 

「これ以上の悪行を見過ごすわけにはいかないわ。ネプテューヌ、目標を破壊する!」

 

 プロセッサユニットのウイングで羽ばたき、ネプテューヌは戦っているレイヴィスの元へと向かう。

 その進路を妨害しようとするビットカスタムとハイビットカスタムを一瞬で両断し、ネプテューヌはレイヴィスの隣に立つ。

 

「加勢するわ」

 

「助かる」

 

 短く言葉を交わし、ネプテューヌとレイヴィスは周りの敵を警戒する。

 いくら容易く倒せるとしても、数だけは多いので油断できない。

 だが、2人が警戒していると、目の前のロボット達が急に炎の壁に飲み込まれてしまう。

 

「私を忘れてもらっては困るな」

 

「MAGES.……あなた、本当に強かったのね」

 

 炎の発生源へと視線を向けると、そこには杖の先端をキラーマシン達へと向けているMAGES.の姿があった。

 得意げな顔で帽子のつばを人差し指で押し上げるMAGES.に、ネプテューヌは目を丸くする。

 

「何だ、信じていなかったのか? なら、その目に焼き付けてもらおうか。我が魔導の深淵をな」

 

「心強いわ。2人とも、一気に蹴散らすわよ!!」

 

「分かった!!」

 

「任せろ!!」

 

 ネプテューヌの号令で、3人は一斉に攻撃へと移る。

 刀剣を振りかぶってキラーマシンへと突撃するネプテューヌ。

 作り出した剣を正確にSDHCカスタムやR-4へと投擲し爆発させていくレイヴィス。

 相手との距離を測りながら宙に浮かぶ邪魔なビットカスタム達を魔法で撃ち落とすMAGES.。

 即席のパーティーながら、なかなかの動きを見せている。

 

「たあああああっ!!」

 

〔ジ……ジジッ!!〕

 

 向かってくるネプテューヌに対し、斧での迎撃を選択するキラーマシン。

 しかし、巨体ゆえの緩慢な動きでネプテューヌの動きを捉えることはできず、斧を持っている腕ごと斬り裂かれてしまう。

 

「そこだ!!」

 

 すかさず、レイヴィスが剣を投擲する。

 狙いはスパークを起こしている斬り裂かれた腕が外れた胴体部分。

 

〔ジ、ギッ!?〕

 

 キラーマシンは反応することもできずに剣の爆発に飲み込まれる。

 すると、カメラアイが完全に光を消し、キラーマシンは大地へと落下するのであった。

 

「やるわね」

 

「……コイツらのことは人並み以上に知っているからな」

 

 褒めるネプテューヌだったが、レイヴィスの表情は険しい。

 犯罪組織に協力していた時やフィーナとの最終決戦の時のことを思い出しているのだ。

 そのような経験を経て詳しくなっていることを苦々しく思っているのである。

 

「とにかく、コイツらの外側は硬いが、内側を傷つければすぐに機能を停止する」

 

「了解。傷口はわたしが作ってあげるわ。トドメは任せるわよ」

 

「ああ」

 

 作戦が決まり、2人の動きにコンビネーションが見え始める。

 ネプテューヌは止まることなく飛翔し続け、キラーマシンを刀剣で斬り裂いていく。

 そんなキラーマシン達がネプテューヌを標的にしている隙をつき、レイヴィスは確実に1体ずつ倒す。

 大量にいたはずのキラーマシンが見る見るうちに数を減らしていく。

 すると、残っているR-4達はネプテューヌやレイヴィスを狙うのをやめ、無防備に立ち尽くしているように見えるMAGES.へと迫る。

 

「やれやれ、私なら倒せるとでも判断したのか? 随分と舐められたものだな」

 

 迫りくるロボットたちを見て、MAGES.はにやりと笑みを浮かべた。

 クルリと芝居がかった動作で杖を振るうと、MAGES.の前方の地面に魔法陣のようなものが現れる。

 それに気付かないロボット達が魔法陣の上に乗ったのを確認すると、MAGES.は指揮棒のように杖を振り下ろす。

 

「光の雨に貫かれよ!!」

 

 MAGES.の宣言と同時に、魔法陣の上からレーザーのような光が降り注ぐ。

 雨のように降り注ぐ光は例外なくロボット達を貫いた。

 

「綺麗だったです」

 

「……えげつないわね」

 

 幻想的な光景に目を輝かせるコンパとは対照的に、地面に転がる焦げ付いたロボット達を見てミモザは頬を引きつらせた。

 しかし、MAGES.の顔は2人の感想など聞こえていないかのように得意げである。

 

「ふっ、2人にだけ格好を付けさせるわけにはいかないからな。さあ、次の相手はどいつだ? まとめて相手になってやろう」

 

「――ふん、ならば私の相手をしてもらおうか?」

 

「ムッ、誰だ貴様?」

 

 MAGES.の呼びかけに応えたのは、1人の女性だった。

 病的なまでに肌が青白く、目元と口元の化粧が濃い魔女のような服装をした女性。

 

「あ、あなたはあの時の!?」

 

「ほう、さすがに覚えていたか」

 

 女性を見て最初に驚いたのはコンパであった。

 何故なら、コンパはプラネテューヌのダンジョン……魔窟で女性と1度対峙していたのであるから。

 

「え、えっと、その……あれ? そう言えば、名前聞いてなかったです」

 

「だああああ!? そんなわけあるか!? よく思い出してみろ!?」

 

 驚愕から困惑、最後にはキョトンとするコンパの発言に、女性は思わずズッコケそうになってしまった。

 先ほどまでの余裕はすでになくなり、コンパを怒鳴りつける。

 

「で、でも、本当に聞いていないですぅ!? 忘れているのはそっちの方ですぅ!?」

 

「だぁーれが更年期障害のオバサンだって、この子娘がああああ!!」

 

「ひ、ヒイィッ!? そこまで言ってないですぅ!?」

 

 緊張感もへったくれもない漫才のような掛け合いだった。

 ミモザは呆れてしまったが、警戒した眼差しで女性を睨みながら尋ねる。

 

「あなたがどこの誰だとかはどうでもいいわ。私が聞きたいことはただ1つ――この状況を作り上げたのはあなたかしら?」

 

「ふん、如何にもと言っておこう。どうやら察しのいい奴がいるようではないか」

 

「……いや、この状況で出てきて無関係を主張されても普通信じないぞ」

 

 ドヤ顔を晒す女性に、MAGES.は頭が痛くなってしまう。

 どことなく残念な臭いを女性から感じたのである。

 

「そ、それよりもだ。我が軍勢を相手によく3人だけで持ち堪えられたと褒めてやろう」

 

 誤魔化すように咳払いをし、女性は調子を戻そうとする。

 尊大な態度でコンパ達を見下すように言葉を続ける。

 

「だが、それもここまでだ。貴様らはこの私、ま……」

 

「あなたはあの時の!? 生きていたのね!?」

 

「――って、邪魔をするなああああ!? 後、勝手に殺すんじゃない!?」

 

 しかし、肝心なところでコンパ達の様子に気付いたネプテューヌに遮られてしまう。

 叫び付かれたのか、ゼエゼエと息を切らせながら女性はネプテューヌは憎々しげに睨みつける。

 

「毎度毎度貴様やあの男は私の邪魔ばかりしおってからに!! もう許さんぞ!!」

 

「それはこっちの台詞だわ。あの時の借りとこの街を破壊したこと、まとめて倍にして返してあげるわ!」

 

 ネプテューヌも女性が魔窟で襲いかかって来たことを忘れていない。

 理由もなく襲われたことと街を破壊したことの怒りで、女性を見つめる目が鋭くなる。

 

「ハッ、私に勝てるとでも思っているのか? 自分の役割すら忘れて堕落した女神風情が言ってくれるではないか!!」

 

「……何を言っているの?」

 

「とぼけても無駄だ!! 私は貴様ら女神を絶対に許さん!!」

 

 女性が激昂している理由が分からず、ネプテューヌは困惑してしまう。

 だが、明らかにコンパを相手にしていた時と違う怒り方だ。

 それだけ女性が本気だと理解し、ネプテューヌ達は全員息を飲む。

 

「覚悟しろ!! 貴様らはこの私、まじぇ……」

 

「見つけたぞ!! テメェが親玉か!!」

 

「――またか!? またこのパターンなのかああああ!?」

 

 またもや言葉を遮られ、女性は地団太を踏む。

 やって来た女神化状態のブランはそんなことなど構いもせず、女性へと斧を向けて睨んだ。

 

「わたしがいない間に、随分と好き放題やってくれやがったな。絶対に許さねえぞ!!」

 

「ブラン、無事だったのね?」

 

「ああ、ちーっとばっかし訳分からねえ状況だったが、問題ねえ。後、ロムや他の奴らも無事だ」

 

 怒りを燃やすブランの無事な姿を見て、ネプテューヌは安心したように口元をわずかに緩めた。

 詳しい説明は後回しにしようとしたブランだったが、夢人達のことだけは先に伝える。

 

「そう。だったら、後は一緒にアイツを倒しましょう」

 

「おう! ……後、ありがとな」

 

「今、何か言った?」

 

「何でもねえ!? いいから集中しろ!?」

 

 小声で街を守っていてくれたことを感謝するブラン。

 素直に言うのが照れ臭かったのである。

 首を傾げるネプテューヌを誤魔化したブランの頬はほんのり赤く染まっている。

 

「これでこちらは女神が2人、4対1だな」

 

「たかが女神2人と人間2人で私に勝てるとでも? ハッ、笑わせるな。貴様らが束になってかかって来た所で、この私に指1本触れることすらできん」

 

 数的優位を宣言するMAGES.を鼻で笑い、女性は笑って見せた。

 それは余裕でなく、自信の表れなのだろう。

 挑発にムッとしながらも、ネプテューヌ達は女性の実力を測り損ねている。

 

「冥土の土産に教えてやろう。よく覚えておくがいい。貴様らを葬る私の名をな!!」

 

 邪魔ばかりされたせいか、女性は余程名乗りたいらしい。

 心なしか、両手を広げて高らかに叫ぶ姿は生き生きしているように見える。

 

「私こそ貴様ら女神の時代を終わらせ、ゲイムギョウ界に新たな福音をもたらす存在!! 我が名はまじぇこ……」

 

「クシュン!」

 

「――まぁーた貴様かあああああ!?」

 

 2度あることは3度目もあったらしい。

 女性は絶妙なタイミングでくしゃみをして鼻水をすするコンパに怒鳴る。

 最早、憐れとしか言いようがない。

 

「……コンパ、さすがに空気を読んでくれないかしら? 我慢とか出来なかったの?」

 

「だ、だって、ずっと外に居たせいで寒くなってきちゃったんですぅ。わたし、寒いの苦手なんですよ」

 

「仕方ないわね。ほら、私のマフラーも巻いときなさいよ」

 

「わぁ、ミモちゃんありがとうですぅ」

 

 ジト目で苦言を呈するネプテューヌだったが、コンパの顔は白くなっており本当に辛そうであった。

 隣に居たミモザから渡されたマフラーで口まで覆い、コンパは温かそうに目を細める。

 

「ええい、もういい!? これ以上、邪魔されてたまるか!?」

 

「本当にごめんなさいです。邪魔する気なんてなかったんですけど……」

 

「もういいと言っているだろ!?」

 

 申し訳なさそうに頭を下げるコンパを見て、女性は余計に惨めな気分を味わってしまう。

 余裕も自信も威厳も投げ捨て、やけくそになりながら叫ぶ。

 

「マジェコンヌだ!! マ・ジェ・コ・ン・ヌ!! よく覚えておけ!! 貴様らを倒すのは私、マジェコンヌだと言うことをな!!」

 

 喚くように自分の名前を連呼する女性――マジェコンヌは心の中で泣きそうだった。

 何が悲しくて自棄を起こしながら自分の名前を大声で叫ばなければいけないのか、と。

 

 

*     *     *

 

 

「ま、まだ走るの~!? も~、あたしこれ以上はむりぃ~!?」

 

「そんなこと言わないで!? ちゃんと走って!?」

 

 場所は移り、ラステイション。

 ヴィーヴィーとうるさく警報が鳴り響く廊下をガナッシュを先頭に走るナナハ達。

 手を引いてもらっていると言うのに弱音をこぼすプルルートをナナハは叱咤している。

 

「まだ着かないの!?」

 

「もうすぐです!? そこの角を曲がれば――あの部屋です!?」

 

 ガナッシュが扉の1つを指さした。

 壁にはロックを解除するパスワードを入力するのだろうコンソールも備え付けられている。

 

「待っていてください!? すぐにパスワードを入力……っ!?」

 

「開いてる? ――っ、待って!? 誰かいるよ!?」

 

 コンソールへと手をかけようとしたガナッシュだったが、急に開いた扉に驚いてしまう。

 突然開いた扉に驚きながらも、最初に中を覗いたのはガナッシュの後ろにピッタリとくっついていたREDである。

 薄暗い部屋の中で機械のモニターだけが怪しい光を放っている。

 だが、すぐに部屋の中に居る人影を発見する。

 

「動かないでください! あなたに逃げ場は――っ、あなたは!?」

 

「やはり、ここに来たな。待っていたぞ」

 

 犯人の顔を見るためにガナッシュが部屋の灯りを付ける。

 すると、中に居た人物達はガナッシュ達を待っていたようだ。

 工場全体の制御パネルの前に陣取るスーツ姿の壮年の男性と紅色の髪で顔の右側だけが隠れている女性。

 

「社長!? それに、マーマレードさん!?」

 

 アヴニールの社長とマジック・ザ・ハードがいたのであった。




と言う訳で、今回は以上!
初登場から名前が出るまでが長かったですね(遠い目)。
あっ、そう言えば、まだ正式に名前が出てない人が……
じ、次回でこの章もお終いです!?
それでは、 次回 「その裏切り、白日の下に」 をお楽しみに!
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