超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
遅くなってしまいましたが、今章の本編最終話になります。
それでは、 その裏切り、白日の下に はじまります


その裏切り、白日の下に

 ガナッシュ達が制御室に辿りついている頃、ベールとノワールは激しく激突していた。

 

「――っとに、しつこいわね!! さっさと倒れなさいよ!!」

 

「お断りしますわ!!」

 

 2人が争っている場所は工場の製造機械が並べられていた場所。

 今では何もない倉庫も同然の場所である。

 狭い通路で戦っていた2人だが、過激になっていくにつれて壁を壊してここまで来てしまったのだ。

 

「あなた相手に力勝負を挑むなんて真似、絶対にごめんですわ!!」

 

 鍔迫り合いのような体勢になっていたノワールの大剣を弾き飛ばし、ベールは大きく後方へと距離を取った。

 すると、ベールの背後に緑色の大きな魔法陣が浮かび上がる。

 

「貫かれなさい!!」

 

 ベールが宣言すると同時に、緑色の魔法陣からまるで植物の根っこのような物体がノワールへと伸びていく。

 だが、ノワールは慌てることなく直進してくる根っこを避けてベールへと飛翔する。

 急いで逃げようとするベールよりもノワールの方が早く、大剣と槍が再び火花を散らして激突する。

 

「舐められたものね。どうしたのよ? 何を焦っているわけ?」

 

「っ、そちらこそ、前に比べて随分と余裕がなさそうですわね」

 

 ただ真っ直ぐに飛んでくるだけの魔法がノワールに効かないことはベールも理解していたはずである。

 しかし、ベールは制御室へと向かったナナハ達を気にして戦いに集中できていない。

 証拠に、ノワールに図星を指されてベールの顔に冷や汗が伝っている。

 

「どうとでもいいなさいよ。そっちが本調子でなくても、私には関係ないわ――あなたはここで私が倒すっ!!」

 

「っ、ぐっ!?」

 

 一気に押し込み、ノワールは槍を弾き飛ばしてベールの体勢を崩した。

 すかさず追撃をかけようとするが、すぐに反応したベールに阻まれてしまう。

 このままではマズイと判断したベールは、どうにかしてノワールから距離を取ろうとする。

 

「逃がすわけないでしょ!!」

 

 しかし、その言葉通りノワールはベールを逃がすつもりがなかった。

 離されそうになる距離を瞬時に詰め、ベールに自由を与えない。

 

(このままでは……ぐっ!? こうなったら!?)

 

「もらっ――なあっ!?」

 

 一瞬、動きが鈍くなったベールの隙をつき、ノワールは渾身の一撃を叩きこんだはずだった。

 だが、大剣はまるで何かに受け流されるかのように槍とぶつからずに滑ってしまう。

 原因は槍の穂先から渦を巻くように流れている風だ。

 魔法で風を操り、ベールは大剣の軌道を変化させたのである。

 

「ハアッ!!」

 

「っ、うぐぅ!?」

 

 大剣を受け流された反動で無防備になったノワールへ、ベールは背中から槍を叩きつけようとした。

 慌てて体を回転させて姿勢を変えたノワールは槍を何とか受け止めることに成功する。

 しかし、その表情は苦しそうに槍を振り降ろしてきたベールを睨む。

 

「やらしい技ばっかり使って!! だから、あなたは嫌いなのよ!!」

 

「力技ばかりのあなたやブランに言われたくありません、わっ!!」

 

 怒鳴るノワールへと叫び返すと、ベールは押し込むと見せかけて大きく後ろへと飛んだ。

 ほぼ地面と平行になっているノワールにはベールを追えない。

 悔しそうに顔を歪め、ノワールもベールと同様に体勢を整えるのであった。

 

(ふぅ、危ない所でしたわ。今は余計なことを考えず、集中しなければこっちがやられてしまいますわ)

 

(チッ、距離を離された。冷静にもなったみたいだし……あーもー、本当に面倒臭い奴ね)

 

 互いに睨み合い、出方を伺う。

 冷静さを取り戻して集中し始めたベールと心の中で悪態をつくノワール。

 強い緊張感が漂う中、先に動きだしたのはベールだった。

 

「ハアアアアアッ!!」

 

「そうくるわよ、ねっ!!」

 

 槍を構えて突撃してくるベールを見て、ノワールも地面を蹴った。

 向かってくるベールに、ノワールは自ら突撃する。

 ここで逃げても勝機がないからだ。

 

 ――ビュン、ビュン、ビュンと残像すら現れるスピードで突きを放ち続けるベールの槍を、ノワールは最小限の動きだけでさばき続ける。

 しかし、それ以上先には進めないでいた。

 下手に攻撃に出て、また槍に渦巻いている風に体勢を崩されるわけにはいかないからである。

 ジッと攻撃に移るタイミングを見計らって耐え続けているのだ。

 そして、そのタイミングが遂にやってくる。

 

「そこっ!!」

 

「っ、嘘っ!?」

 

 ノワールの行動に、ベールは思わず大きく目を見開いてしまう。

 何故なら、ノワールは大剣の先端を槍の穂先へとぶつけてきたのだ。

 寸分違うことなく激突する鋭い刃は拮抗し、うるさかった風の音さえも消してしまう。

 

 ――しかし、ノワールの絶技がもたらしたのは静寂だけじゃない。

 

(っ、腕……!? 痺れて……まさか!?)

 

 すぐに槍を引こうとしたベールの腕に違和感が発生した。

 電流が走ったかのように槍を握る手から両腕にまで痺れが伝わってきたのである。

 そんな焦りに似た表情をしたベールを見て、ノワールはにやりと笑みを浮かべる。

 

「ごめんなさいね。非力なあなたにはきつかったようね」

 

「っ、あなた……!?」

 

「馬鹿力で悪かったわね。でも、私は女神なのよ。そして、ゲイムギョウ界を守るためのこの力は!!」

 

 皮肉を言いながら、ノワールは大剣を振り上げた。

 同時にベールの手から槍が離れてしまう。

 ノワールはすぐに丸腰となったベールとの距離を詰める。

 

「――私の誇りよ!!」

 

 己の思いのたけを全て込めたノワールの叫びが廃工場内に響く。

 大剣の狙いは無防備に立ち尽くすベール。

 ノワールがこのまま斬り伏せてやろう……とした瞬間、足元から緑色の光が溢れてくる。

 

(なあっ!? これって、まさか……)

 

「――かかりましたわね!!」

 

 ベールの声が聞こえた時には、既にノワールの体は工場の天井近くへと昇っていた。

 床に現れた魔法陣から竜巻が発生し、ノワールの体を宙に舞い上がらせたのである。

 まともに目も開けていられない風圧の中、ノワールはプロセッサユニットのウイングを全開にして渦の中からの脱出を図る。

 

「ぐっ、速く逃げないと……」

 

「どこへ行こうとしているのですか?」

 

「うげっ!?」

 

 渦の中心に居るベールの姿を見た時、ノワールは思わず呻いてしまった。

 そこでは先ほどの根っこが顔を出している魔法陣を展開しているベールが居た。

 

「チェックメイト、ですわ」

 

 瞬間、竜巻の中心を穿つように魔法陣から根っこが飛び出していく。

 風の動きによって渦の中心へと引き戻されそうになっているノワールには回避手段がない。

 

「――舐めるなあああああっ!!」

 

 だから、ノワールは避けることをやめた。

 風の動きに身を任せ、大剣で薙ぎ払うように竜巻ごと根っこを斬り飛ばしたのである。

 これにはさすがにベールも目を丸くしてしまう。

 

「あらまあ、本当に力技だけで何とかしてしまうなんて思いませんでしたわ」

 

「ハア、ハア……本当、ムカつくわね」

 

 白々しいことを呟くベールを、ノワールは息を切らしながら睨む。

 困ったようにはまったく見えなかったのだ。

 その余裕な態度がノワールの癪に障る。

 

「……仕切り直しね」

 

「ええ」

 

 ゆっくりと降りてくるノワールから目を離すことなく、ベールは転がっていた槍を拾い上げた。

 腕の痺れはもうない。

 2人とも、ほぼ万全の状態で相対している。

 そして、無言のまま同時に飛び出して再度空中で激突し合うのであった。

 

 ……そんな2人の戦いを窓から覗く者達がいた。

 

「うおー、すげー!! すげーよ、これ!! これが女神様同士の戦いなのか!!」

 

(……どうしてグリーンハート様がラステイションにいるのよ!?)

 

 ディックを探しに廃工場区画へと侵入したリュータとアイエフである。

 鼻息を荒くして興奮するリュータと対照的に、アイエフは頭を抱えてしまう。

 

(グリーンハート様がいるってことは夢人やネプ子達もラステイションにいるってこと? まさか追って来たとか? ――有り得る。あのネプ子やREDなら)

 

 嫌に現実味を帯びてくる直観に、アイエフの顔は青くなる。

 まだ会えない……正確には会いたくないのだ。

 心の整理も出来ていない現状で、夢人達に会いたくないのである。

 

「なあなあ、あっちの緑色の髪した胸のでっかいねーちゃんって、どこの国の女神様なんだ!?」

 

(ヤバい。今すぐ逃げなきゃ……いや、何で私が逃げなきゃいけないのよ。でも、絶対に会いたくないし……ああもう!? どうすればいいのよ!?)

 

「あい姉ちゃんってば!! オレの話を――うん? アレ、誰かいる?」

 

 葛藤し続けるせいで答えてくれないアイエフの方へ顔を向けた時、リュータは視界の隅で何かが動くのを捉えた。

 その人物は隠れることなく、工場から離れるように移動しようとする。

 

「……あい姉ちゃん」

 

「……分かってる。アンタはここで少し待ってなさい」

 

 明らかに不審な人物だったので、アイエフも瞬時に頭を切り替えて警戒する。

 リュータに指示を出すと、アイエフは逃げようとする人物を追う。

 静かに逃げる人物へと近寄ると、カタールの刃を顔のすぐ横へと近づける。

 

「動かないで。そのまま、ゆっくりこっちを向きなさい」

 

 頭までローブですっぽりと隠れているせいで、近くに居るアイエフでもまったく特徴が分からない。

 とりあえず、顔を確認しようとアイエフが命令すると、ローブの人物はぶつぶつと呟きだす。

 

「……命令……絶対に発見されるな……失敗……ディスク、死守……選択……」

 

「はあ? アンタ、何言って……」

 

 聞こえてきた言葉に、アイエフは眉をひそめた。

 淡々としていることと無機質な単語をただ発しているように思える口振りから、まるで機械のようだと感じた。

 そんな疑問をアイエフが感じていると、ローブの人物はダッと駆け出して逃走を図る。

 

「っと、逃がすわけないでしょうがっ!!」

 

「っ!?」

 

 みすみす逃がすような失態をアイエフがするわけもなく、ローブの人物は押し倒されてしまう。

 背中に馬乗りになり、アイエフはローブをはぎ取ってやろうとする。

 

「さあ、観念――っと、あれ?」

 

 ローブへと手をかけようとした瞬間、急に尻の位置が変わったことにアイエフは驚く。

 全体重をかけてローブの人物をしっかりと押さえていたにも関わらずだ。

 

「……消えた?」

 

 ローブを掴み上げると、そこに居たはずの人影は消失してしまっていた。

 代わりに、1枚のディスクが地面に置かれている。

 

(幽霊……なわけないか。だったら、このディスクに何か秘密が――うん? ディスク?)

 

 アイエフは妙な引っかかりを覚えた。

 首を傾げて思い出そうとすると、答えは目の前で形になる。

 手に持って観察していたディスクが強烈な光を放ち出したのである。

 

(しまった!? これは罠!?)

 

 アイエフは2度、その現象を目の当たりにしている。

 ディスクの中からモンスターが現れる不可思議な現象……それが起きているのだと、瞬時に頭が理解する。

 真っ白に染め上げられた視界の中、アイエフは自分の迂闊さを呪いながら来るであろう衝撃に身を硬くさせるのであった。

 

 

*     *     *

 

 

 接戦を繰り広げるベールとノワールとは対照的に、ルウィーでの戦いは一方的であった。

 

「ふっ!!」

 

 ――ギンッ、と人体と剣が接触したとは思えない音が林の中に響く。

 ディックの横薙ぎの一閃が夢人の右腕に激突した音である。

 

(防ぐのは右腕だけ……ならば、硬いのも右腕だけなのかもしれないな)

 

 攻防の違和感から、ディックは推測する。

 今の夢人が攻撃してくるのも防御するにしても全てが右腕を起点となっていた。

 

「しかし、弱くなったな」

 

 言葉通り、ディックはつまらなそうな顔で剣を振っていた。

 今も右腕を伸ばして突っ込んできた夢人を剣でいなし、冷めた目で見下ろしている。

 

 先ほどまでの夢人の動きが人間的なものだとすれば、今のそれは動物的な……言ってしまえば、モンスターのものと大差がなかった。

 何の技術も感じられない。

 単純に己の身体能力のみで襲いかかってくる獣のようだと、ディックは思う。

 

「フンッ!」

 

「ッ!?」

 

 右腕頼りの突進を避け、ディックは夢人の胴体を浅く斬り裂く。

 予想通り、右腕のように硬くなかった腹部からは鮮血が飛び出す。

 夢人はわずかに表情を歪めながら慌ててディックから距離を取る。

 既に斬られた傷跡から血が流れていないのを、破れた服越しにディックは確認する。

 

「ウウウゥゥ……」

 

「言葉も話せなくなったか。なら、もういいな」

 

 怒りに満ちた目で睨む夢人に、ディックはため息をつく。

 呻くだけで人語を話せないその姿から、情報を聞きだすことを諦めたのだ。

 つまり、ディックが手加減をする理由がなくなったのである。

 

「――来い」

 

「ッ!?」

 

 ディックの放った一言に、夢人の体はビクついた。

 剥き出しになった歯は震えを噛み殺すかのように擦れて嫌な音を鳴らす。

 理性があるとは到底思えないその顔にも冷や汗が流れるほど、今のディックから恐怖を感じているのが分かる。

 夢人は思わず後ずさりしてしまう。

 

「来ないのか? だったら、俺から行くとしよう」

 

 しかし、ディックは夢人を逃がすつもりはなかった。

 踏みしめた大地を蹴り上げ、一瞬で夢人との間合いを詰める。

 そして、まるで居合抜きのように下段に構えていた剣を片手で6回振り抜く。

 

 ――牙折り。

 正式名称フェンリル解体剣と名付けられたその技は、アイエフとリュータが見たものと同じである。

 一瞬のうちにフェンリルの胴体から四肢と頭、それに尻尾を斬り落とす剣技。

 ディックは今、それを夢人へと放ったのである。

 

「ッ、ァ……」

 

「……少し、ずらされたか?」

 

 ドサッと雪の上にうつ伏せで倒れる夢人を見て、ディックは首を傾げる。

 ディックは間違いなく腕や足、首を胴体から斬り離したと思っていた。

 しかし、出血はしているものの夢人の体は五体満足である。

 

「踏み込みが甘かったか?」

 

 倒れている夢人には目もくれず、ディックは技の反省を続ける。

 夢人が起き上がってくることなんて、まったく考えていない様子である。

 それだけ自分の腕に自信があるのだ。

 だからこそ、夢人の体を解体することができなかった理由を考えてしまう。

 

「完成にはまだ遠いと言うわけか。俺もまだまだ未熟だな」

 

 最終的にすべての謎を放棄し、ディックは己の未熟さをかみしめた。

 決して考えるのが面倒臭くなったのではない。

 アレコレ悩むよりも斬れるようになるまで修行を続けるしかないと能筋的な思考で解決しようと考えたからだ。

 

「さて、いつまでもこんな所で油を売っている暇はなかったな。早く豆腐を買って帰らなければ怒られてしまう」

 

 動かなくなった夢人から完全に興味が消え失せたディックは当初の目的である豆腐屋を目指そうとする。

 だが、1日以上豆腐屋を探して彷徨っているのに早いも遅いも最早関係ないだろう。

 その前にディックの持っている地図の豆腐屋はルウィーの店でなく、ラステイションの店である。

 いくらルウィーの林を抜けようとも辿りつけやしない。

 

「しまった。出口だけでも聞いておくべきだ――っ!?」

 

 ディックはそれ以上、言葉を紡ぐことができなかった。

 何故なら、絶対に立ち上がることはないと思っていた夢人が起き上がっていたのだから。

 夢人はディックを赤黒い瞳――ではなく、透き通るような水色の瞳で睨むと、手のひらから炎の球を発生させて投げつける。

 

「ムッ、魔法か!?」

 

 瞬時に炎の球を斬り裂いたディックだったが、既にそこには夢人の姿はない。

 どうやら炎の球は目くらましで、本命は逃走だったようだ。

 

「……逃げた、か」

 

 誰もいなくなった林の中で、ディックの声だけが静かに響く。

 投げ捨てた鞘を拾って剣を収めると、ディックは口を開く。

 

「豆腐屋、どっちだろう……」

 

 俯きトボトボと哀愁を漂わせながらディックは当てもなく林の中を歩いていくのであった。

 

 

*     *     *

 

 

「アーッハッハッハッ!! どうしたどうした!! 威勢がいいのは口だけか!!」

 

 ルウィーの街ではマジェコンヌが上機嫌で高笑いを上げていた。

 やたらテンションが高いのは鬱憤晴らしなのかもしれない。

 その様子を見て、ネプテューヌ達の顔は悔しさに歪む。

 

「くっ、思ったよりも厄介ね」

 

「ああ、この人数を相手にあそこまで戦えるなんて……ただの人間じゃねえみたいだな」

 

 特に悔しそうなのはネプテューヌとブランである。

 2人の刀剣と斧は1度もマジェコンヌの体の周りに展開されている魔力の膜を突破できていない。

 それどころか、マジェコンヌの戦い方が2人には気にくわなかった。

 

「ほれほれ!! ちゃんと避けてみせろよ!! ほら、行くぞ!!」

 

「っ、馬鹿にして!?」

 

 バチバチと帯電しているような赤黒い魔力の塊を、マジェコンヌはわざとらしくネプテューヌを煽りながら放り投げる。

 まるで避けてみろ、とでも言いたげな雰囲気である。

 その遊ぶような態度がネプテューヌとブランの態度を刺激しているのだ。

 

「だあああああ、もう!! いつまでもふざけてねえで、ちゃんと戦いやがれ!!」

 

「戦っているではないか? ほれ、次はそっちに飛ばすぞ!!」

 

「チィッ!?」

 

 怒鳴るブランに対して、マジェコンヌは嫌らしくニタリと笑みを浮かべながら魔法を放り投げた。

 マジェコンヌは完全にネプテューヌ達を馬鹿にしているように見える。

 その傲慢な隙をつき、何とか流れをこちらに引き戻そうとするMAGES.がマジェコンヌへと魔法を放つ。

 しかし、MAGES.の杖から放たれた魔法は魔力の膜に溶けるように無効化されてしまう。

 

「うん? 今、何かしたか?」

 

「……これも効かないとはな。少し自信を失いそうだよ」

 

 軽口を叩こうとしたMAGES.の声はわずかに震えていた。

 マジェコンヌが気付きもしなかったことがショックだったのだろう。

 そんな余裕な態度を崩さないマジェコンヌへ、今度はレイヴィスが剣を2本投擲する。

 

「おっと、それは撃ち落としておかなければいけないな」

 

「くっ!?」

 

 爆発することが分かっているレイヴィスの剣を、マジェコンヌは魔法で撃ち落とした。

 当然、わざとである。

 本当ならば撃ち落とさなくても爆発の余波すら受け付けないくせに、とレイヴィスは心中で吐き捨てる。

 

「……おかしいわね」

 

「何でそんなに冷静なんですか!? ねぷねぷ達が大ピンチなんですよ!?」

 

「だから、おかしいのよ。あの女、いったい何を考えてるの?」

 

 そんな戦いを見ながら、ミモザは隣で喚くコンパを無視して考える。

 マジェコンヌの実力は圧倒的だった。

 だからこそ、わざと戦いを長引かせるかのように行動しているのかが理解できない。

 先ほど目撃したネプテューヌへの怨嗟の言葉と行動が噛み合っていないのである。

 何故そんなことをしているのかとミモザが考えていると、遠くの方から大勢の足音が聞こえてくる。

 

「ふん、ようやく来たようだな」

 

「何のこと? 何を言っているの?」

 

「茶番は終わり、と言うわけだ」

 

 ネプテューヌの問いかけに、にやりと笑って返すマジェコンヌ。

 すると、突然マジェコンヌの体を光の柱が包み込む。

 女神化と似た現象を目の当たりにしてネプテューヌ達が驚いていると、光の中から現れたマジェコンヌの姿は女神化する前のブランと同じだった。

 

「なっ、わたし、だと……!?」

 

「ええ、その通りよ。まあ、こんな感じで替え玉を演じさせてもらっていたと言うわけね」

 

「て、テメェ……!」

 

 姿だけでなく、口調まで真似されたブランは怒りを爆発させそうになる。

 しかし、それを邪魔したのはこの場に駆け寄って来た第3者の呼び声である。

 その人物はブランが最も信頼する側近の声だった。

 

「ブラン様!!」

 

 赤を基調としたメイド服が乱れるのも気にせず、フィナンシェは慌てた様子で走っていた。

 叫ぶ名前はフィナンシェが敬愛している主のもの。

 フィナンシェの後ろには教会の者らしい団体がぞろぞろと駆け寄ってきていた。

 

「どうやら形勢逆転みたいだな。テメェもこれで終わりだな」

 

 フィナンシェを筆頭にした教会の者達の来訪を見て、ブランは勝ち誇るように笑みを浮かべた。

 いくら声や姿を真似されようとも、並んで比べればすぐに本物が自分だと分かってくれるはずだと信じているからである。

 

「果たして、そうかしらね」

 

「何だと? そいつはいったいどう言う……」

 

「――ブラン様!! お待たせいたしました!!」

 

 意味あり気に笑みを浮かべるマジェコンヌを見て、ブランが眉をひそめる。

 だが、その意味を問い質す前にフィナンシェがブランの元へと辿りつく。

 ――マジェコンヌの化けたブランの方へとだが。

 

「ご命令通り、偽物に騙されていたレジスタンスや市民の人達は無事に保護してきました。後はこちらに居る主犯格を捕らえるだけです」

 

「ご苦労様。皆もよくやってくれたわ」

 

 誰が見てもおかしいところなどなかった。

 フィナンシェからの報告を受けて嬉しそうに口元を緩めながら教会の職員達を労う姿は、正に女神としての威厳と優しさが溢れているかのように錯覚してしまう。

 

「ふぃ、フィナンシェ……何で……」

 

 そんな光景を前にして、1番衝撃を受けているのは本物のブランである。

 フィナンシェが恭しく偽物のマジェコンヌへと頭を下げているなんて信じたくないのだ。

 しかし、振り返ったフィナンシェがブランを見る目はとても冷ややかだった。

 

「偽物が何を言っているんですか? 私が敬愛している主はただ1人。こちらに居る本物のブラン様、ただ1人です」

 

 ニッコリと笑みを浮かべてマジェコンヌに寄り添うフィナンシェに、ブランは絶望してしまうのであった。

 

 

*     *     *

 

 

 周りに何もない雪原。

 ネプテューヌ達が居る街からも離れたその場所で、夢人は横たわっていた。

 どうしてそんな場所に倒れているのかは誰も知らない。

 気絶してしまっている当人も分かっていないだろう。

 だが、確実に分かることがある。

 それはこのまま放置されれば、確実に死んでしまうと言うことだけだ。

 

「――やっと、見つけた」

 

 雪を赤くしている夢人の体を抱き上げたのは女性だった。

 赤紫色の髪を後ろで三つ編みにしているパーカーとジーンズ姿の少女――空腹で倒れていたサイタマと名乗る少女だった。

 

「大丈夫、大丈夫だよ」

 

 自分の服が血で汚れるのも構わず、サイタマはギュッと夢人を抱きしめる。

 ぐったりとしている夢人に、その声は届いていないだろう。

 だが、サイタマは優しく囁くように言う。

 

「――今度は、わたしが2人を守るから」




と言う訳で、今回はここまで!
続きは次回のブランが担当する女神通信で。
ってことで、次章もルウィーが舞台です。
それでは、 次回 「new女神通信(ブラン編)」 をお楽しみに!
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