超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回から新章突入です。
それでは、 Mディスク はじまります


ニート卒業! 就職先は……
Mディスク


「いやはや、上手くいってよかったですね」

 

「ふん、この私に失敗などありえん。当然の結果だ」

 

 さすがにご立派なルウィーの女神様を演じてきた彼女の言うことは違うね。

 1回の成功で今までの失敗を忘れちゃうんだから。

 

「さすがマジェコンヌ様、とでもいった方がいいかい?」

 

「やめろ、気色悪い。思ってもないことを口にするな」

 

「酷いなぁ。俺は素直に称賛しているだけなのに」

 

 眉をひそめるマジェコンヌを見て、俺は苦笑してしまう。

 その外面の厚さは化粧の濃さ……と、これ以上考えるのは危険かな?

 とにかく、俺も1年前くらい食べた朝食ぐらいには褒めているつもりだ。

 意味は“もう忘れた”、コレも蛇足だね。

 

「逃げた女神どもの動きはどうなっている?」

 

「リーンボックスに逃げ込んだみたいだね。監視役もいるし、何か動きがあればすぐに分かるよ」

 

「……監視役とは、コイツと同じものか?」

 

 マジェコンヌは露骨に嫌そうな顔をして、後ろに控えていたフィナンシェを顎で指す。

 先ほどから俺達の会話を聞いているのにも関わらず、ルウィーの女神に仕えるメイドはピクリとも動かない。

 それどころか、その瞳には光がなく、まるで人形のように見える。

 

「ええ、そうですよ。君達がちょっとした騒ぎを起こしている間に、少し“入れ替え”させてもらいました。何かご不満でも?」

 

「チッ、分かっていてそれを聞くのか?」

 

「冗談ですよ、冗談」

 

 実際、ここに居るフィナンシェは人形そのものだ。

 つまり、フィナンシェはあの時ルウィーの女神を裏切ったのではなく、最初から俺達の思い通りに動く駒だったわけだね。

 

「でも、俺がそれを作ったおかげで君も随分と助かったんじゃないのかい? それにこれは君の“能力”があってこそ、誕生したんだから」

 

 フィナンシェそっくりに動く人形――仕組みはディスクの中に居るモンスター達と同じだ。

 データさえ入力してしまえば、人間だろうとモンスターだろうと寸分違わぬ複製が出来上がる。

 御波夢人の端末の中にあったデータからトカゲの姿を模したモンスターを生成するよりも簡単だった。

 なにせ、元のデータがすぐに揃ったのだから。

 しかし、モンスターと違うところは複雑な……いや、人間特有の面倒臭さを再現するところだろう。

 単純な命令だけで済むモンスターと違い、人間を模すのであれば機械的なままでは駄目だ。

 

 ――だが、その問題もマジェコンヌの“能力”があれば話は別である。

 彼女の対象を『コピー』する能力。

 それは姿形や身体能力だけでなく、性格もある程度まで再現可能なのだ。

 つまり、ここに居るフィナンシェは体を俺が作り、マジェコンヌが『コピー』したデータを貼り付けた人形……いや、人間の形をしたモンスターである。 

 

「……気に入らん。貴様と違って、私はコイツのような存在を認めん」

 

「ふーん、それまたどうして?」

 

「私は自分の言いなりになる人形を並べて喜ぶ臆病な変態と違うからだ。心当たりがあるんじゃないのか?」

 

「さあね」

 

 とぼけた振りをしてみたけど、確実に俺のことを皮肉ってるね。

 まあ、俺が周りと違う思考回路をしていることぐらいは自覚しているよ。

 でも、1つだけ訂正してもらいたものだ。

 臆病ではなく、俺は慎重なだけさ。

 

「ところで、このディスクの名前なんだけど“Mディスク”って付けようと思うんだけど、どう思う?」

 

「“Mディスク”? どう言う意味だ?」

 

「単純にコピーじゃつまらないだろ? だから、ミラーのM……もしくはマジェコンヌのMでもいいよね?」

 

「……貴様のそう言うところが臆病者だと言っているんだ」

 

 おやおや、Mディスクの最大の功労者はお気に召さないようだね。

 俺は感謝の意味を込めて名前を刻んであげたって言うのに。

 

「私の名前を連想させる頭文字を付けたのは自分から遠ざけるためだろ? 貴様のことだ。あえて私の名前を晒して自分が無関係なことをアピールしようとしていたのだろう?」

 

「それは君の考えすぎさ。俺が味方である君を本気で裏切ると思っているのかい?」

 

「それこそ今更だな。貴様の面の厚さなら、平気で私を裏切るだろうさ」

 

 まったく酷い評価もあったものじゃないね。

 俺も勝つことが確定している立場を捨てるような馬鹿な真似をするつもりはない。

 

「俺が君の邪魔をするとでも? 冗談はよしてくれ。俺がそこまで愚かな男に見えるかい?」

 

「ふん、口では何とでも言えるさ」

 

 つまらなそうに鼻を鳴らす態度から、あまり信用されてないことは明白だった。

 でも、俺は別にそれでも構わない。

 どうせ利用し利用されるだけの関係だ。

 考えることは、どうすれば彼女を出し抜いて目的を達成できるかだけでいい。

 

「まあいい。コイツや監視役についてはもう何も言わん。貴様の好きにしろ」

 

「寛大な処置、感謝しますマジェコンヌ様」

 

「やめろと言っているだろ――だが、これだけは答えてもらう。元となった人間はちゃんと生きているんだな?」

 

「ええ、ちゃんと言われた通り全員生きていますよ」

 

 人形と入れ替わった本人はちゃんと生きて“は”いる。

 ただ、死んだ方がマシと言える状態かもしれないけど。

 マジェコンヌの『コピー』が有効だと分かる前の被検体は“多少”強引な手段で人形を作ったからね。

 他にも色々と役に立ってもらうために今も俺の研究室で働いてもらっている。

 

「貴様に任せたのは私だ。今はそれを信じてやる。だが、もしも1人でも死んでいた場合は覚えておけ。貴様は私が惨たらしく殺してやる、と」

 

「おお、怖い怖い。だったら、殺されないように俺もしっかり管理しときますよ」

 

「……ふん、女神どもに何か動きがあったら伝えろ。私はそれまで次の準備をしておく」

 

 冷たく命令だけして、フィナンシェを伴い部屋を出て行ったマジェコンヌ。

 アレはもう完璧に俺を疑っている様子だった。

 でも、甘い。

 疑うだけで何もしないマジェコンヌは本当に甘い。

 

 ……女神は憎いくせに、どうしてそこまで人間にこだわるのかが分からないよ。

 まあ、そのおかげで人間にカテゴライズされている俺も彼女に対して強いアドバンテージを持っているも同然なんだけどね。

 

「まったく馬鹿だよねぇ――そうは思わないかい、デルフィナス君?」

 

〔どうでもいい。我には関係ない〕

 

 不意に誰もいない空間へ呼びかける。

 すると、今まで誰もいなかった壁際に赤い渦を巻いた光が発生し、デルフィナスが姿を現す。

 姿を見せなかっただけで、ずっと俺達の会話を聞いていたのだ。

 

「予想通りの答えをありがとう。ところで、君はこれからどうするつもりだい? 愛しの王子様は変な女の子に連れ去られちゃったみたいだけど?」

 

〔……あの女が御波夢人を救うのであれば、我が動く必要はない。それだけだ〕

 

「本当にそれでいいのかい? 実は内心で嫉妬していたり――おっと、これ以上言うのはやめた方がいいみたいだね」

 

 図星を指されたくらいでゲハバーンを無言のまま首筋に添えるのはやめて欲しい。

 さすがにこんなくだらないやり取りで死ぬのはごめんだ。

 

〔貴様の目的は何だ?〕

 

「おっ、藪から棒にどうしたんだい? 君から質問なんて珍しいじゃないか」

 

〔貴様は何故御波夢人達を騙し、マジェコンヌさえも裏切ろうとしている? そして、我をどう利用するつもりだ?〕

 

 ……急にしゃべり出したと思えば、随分と直球で聞いてくるものだね。

 さて、どう答えたものかな。

 嘘八百を並べて誤魔化してもいいけど、今はまだデルフィナスとの協力関係を崩すべきじゃない。

 だったら、少しは真面目に答えないと駄目だな。

 

「そーだねー、正直俺はマジェコンヌが勝とうが女神が勝とうが関係ないんだよ。もちろん、君が御波夢人をどうしようとも全然構わないわけさ」

 

〔ならば、何を求めている? 貴様は言ったはずだ。求めることや固執することには理由があると〕

 

「意外と根に持つタイプ……と言うよりも、その質問に応えなかった君が俺にそれを聞くのかい?」

 

 邪魔をしないと言うアピールだけじゃ不満だったようだ。

 わざわざ俺のした質問で揚げ足を取ろうとしてまで、デルフィナスは聞き出したいらしい。

 

「まあ、知られて困ることじゃないし、教えてあげてもいいよ。ただし、君が何も答えないのに俺が答えると言うのは些かアンフェアが過ぎるんじゃないのかな?」

 

〔……いいだろう。我も貴様が聞きたいことを1つだけ答えてやる〕

 

 ようやく掴んだ尻尾に、俺は内心でにやりとする。

 今まで御波夢人に固執していると言うことしか分からなかったデルフィナスから、貴重な情報を聞きだすチャンスを得たのだ。

 ここでアドバンテージを奪わなければ、いずれ敵になるかもしれないデルフィナスに対抗することができなくなってしまう。

 このチャンス、絶対に無駄にはできない。

 

「じゃあ、まずは俺から答えよう。俺の目的だったね? それは単純さ――俺はゲイムギョウ界を救いたい、それだけさ」

 

〔ゲイムギョウ界を……救う、だと?〕

 

「そう、差し詰め正義の味方とでも言っておこうかな。この青い空と緑の大地を守るために立ち上がった……と、全然信じてないみたいだね」

 

〔当たり前だ。貴様のそれをどうすれば信じられると思う?〕

 

 そんなに俺の日頃の行いって悪いのかな?

 これでも毎日真面目に精一杯生きているだけなんだけどね。

 

「酷いなぁ。信じる信じないかは君の勝手だけど、俺の目的は言った通りさ」

 

 怪しむデルフィナスへ、俺は笑って言う。

 信じてもらわなくても結構。

 正気を疑われても仕方がないことを言っている自覚ぐらいある。

 

「誰もが君やマジェコンヌ、女神みたいに強いわけじゃない。非力な人間でしかないからこそ、騙し裏切り利用するのさ」

 

〔……目的のためなら手段を選ばない、か。実に人間らしい感情だな〕

 

「よく分かってるじゃないか」

 

 俺は別に高潔な精神も安っぽい正義感も持ち合わせていない。

 デルフィナスの言う通り、俺の中にあるのは何が何でも目的を達成させようとする人間らしいドス黒い感情だけ。

 

 ――だからこそ、このままマジェコンヌのワンサイドゲームで終わらせないために、俺は彼女達をまた騙して裏切り利用するのさ。

 

 

*     *     *

 

 

「どうぞ、ホワイトハート様」

 

「あ、ありがとう」

 

「いえいえ、勿体ないお言葉です」

 

 ブランは困惑していた。

 ラステイションでベールと一緒に居る本物のフィナンシェから連絡を受けたからではない。

 目の前の男性――ジャッドからの歓待のせいである。

 

「こちらはリーンボックスで有名なシェフが季節の果物をふんだんに使って作った特製タルトでございます。お飲み物も最高級のダージリンをご用意いたし……」

 

「あ、あの、別にそこまでしてくれなくても……それに、あなたも忙しいんじゃないの?」

 

 ほほ笑みを絶やさずに片膝をついて傅くジャッドの様子に、ブランは戸惑いしか感じない。

 だが、ジャッドからの厚意を無下にもできず、ブランは控えめに尋ねることしかできなかった。

 

「いえいえ、ホワイトハート様を持て成すことよりも優先させることなんてありません。私のことなど気にせず、ホワイトハート様はお寛ぎくださいませ」

 

「そ、そうなの? ありがとう、いただくわ」

 

 何を言っても無駄と判断したのか、ブランはジャッドの用意したタルトを口にする。

 甘すぎず、クリームの滑らかさとフルーツの味が充分に活かされている。

 口の中に広がっていく幸福感に、ブランは思わず頬を緩めてしまう。

 

「とても美味しいわ」

 

「御口に合いましたようでなによりでございます」

 

 さながら令嬢と執事のティータイムだった。

 元よりブランが女神として持ち合わせている気品とも言うべきものが漂っている。

 

 ……だが、忘れてはいけない。

 今がどんな状況で、ここには2人以外の人物もいることを。

 

「ブーブー、ブランだけズルイ! わたしにもそのタルト、ひと口ちょーだい」

 

「あっ、ちょっ!?」

 

「――おおー、本当に美味しい! もうひと口もらっちゃおう」

 

「ふざけんな!? それはわたしのだろうが!?」

 

 急に横から出てきたネプテューヌに皿ごとタルトを奪われ、ブランはガタンとテーブルを叩いて立ち上がる。

 当然、自分のタルトを奪い返すためである。

 

「コラ! 返せ、このっ!」

 

「けちけちしなくてもいーじゃんよ。むしろ、こんな美味しいものを独り占めになんかさせないって」

 

「だったら、さっさと返しやがれ!! テメェはもうひと口食っただろうが!!」

 

 皿からタルトを落とさずにひょいひょいとブランから逃げるネプテューヌ。

 無駄に機敏な動きである。

 そんな2人を様子を見て、1人カップを傾けていたMAGES.は呆れてしまう。

 

「まったく、奴らは静かに茶も飲めんのか」

 

「ねぷねぷらしいと言えばらしいですけど……」

 

 苦笑しながらも、コンパにはネプテューヌが少し無理をしているようにも見えた。

 わざとふざけて場を明るくさせているのはいつも通りだが、その顔が暗いような気がしたのである。

 

(多分、ゆっくんさんやぴいちゃん達のことを心配しているんですよね……うぅぅ、こう言う時こそ、わたしがもっとしっかりしないと駄目ですぅ!)

 

 ……そう、リーンボックスに逃げたメンバーの中にピーシェやロム、デンゲキコの姿はなかった。

 自分達が逃げることだけで精一杯であり、探している余裕もなかったのである。

 3人の行方は未だに分かっていない。

 加えて、ベールから聞いた夢人の現状とマジェコンヌに捕まったままのネプギア。

 それらがネプテューヌの顔を曇らせているのだとコンパは推測し、自分なりに励まそうと気合を入れる。

 

「ねぷねぷ!」

 

「あっ、コンパも食べる? コレ、本当に美味しいよ」

 

「いただきます! あむっ!」

 

「って、丸呑み!?」

 

 立ち上がったまではよかったが、コンパは勢いのままネプテューヌの悪ノリに乗っかってしまった。

 しかも、最悪な形でだ。

 あろうことか、残っていたタルトを丸ごと口の中に頬張ってしまったのである。

 

「むご、ほおとお――むぐっ!?」

 

 両手で口元を押さえたまま、コンパの顔は青く染まっていく。

 そんなコンパの危険信号を見て、ネプテューヌとブランは慌てだす。

 

「ま、待った待った!? ここじゃダメだって!?」

 

「すぐにトイレに案内して!?」

 

「は、はい!?」

 

 慌ただしくコンパを連れてトイレに向かうネプテューヌ達を見送り、MAGES.はため息をつく。

 頭痛を覚え、こめかみを人差し指で押すようなポーズを取る。

 

「紅茶で飲み込ませようとは考えなかったのか……まあ、うるさいのがいなくなってちょうどいいのかもしれないな。そう思わないか、レイヴィス?」

 

「……何が言いたいんだ?」

 

 残ったMAGES.は黙々と自分の分のタルトを完食していたレイヴィスへと声をかけた。

 鋭くなるレイヴィスの視線を受け、MAGES.は困ったように笑う。

 

「そう、警戒しないでくれ。私は真面目に今後についての意見を聞こうと思っただけだ。白の女神だけならともかく、ネプテューヌとコンパが居ると……」

 

「確かに、な」

 

 2人の頭の中で、真面目な話の最中にふざけだすネプテューヌや天然な発言で場を掻き乱すコンパの姿が思い浮かぶ。

 時と場合によってはそれが助けになる可能性もあるが、今は必要ない。

 レイヴィスと揃ってため息をつき、気持ちを切り替えてMAGES.は口を開く。

 

「現状、協院長殿の言う通り私達に出来ることはないに等しい。そのことについて、何か異論はあるか?」

 

「ないな。こうまで大々的に広まってしまったことを今更嘘や冗談で片づけられるとは思えない」

 

「同意見だよ。本当にしてやられたと言うわけだ」

 

 顔をしかめるMAGES.の表情には悔しさがにじみ出ていた。

 レイヴィスに意見を求めたのは、自分では思いつかないこの状況を打開する方策があるかどうかを確かめるため。

 第3者に近い立場に居るレイヴィスなら、と淡い希望を抱いていたのである。

 

「ルウィーの占拠と女神の信頼低下。しかも、ここまで一気に広まったと言うことは相当根回しがされていたらしいな」

 

「厄介なのはそれだけじゃないだろ。問題はそれをどう解決するかで……」

 

「焦るな。1つでも見落としがあれば、またすぐに足元をすくわれてしまうぞ」

 

「かと言って、このまま手をこまねいていたら、それこそ手遅れになる」

 

 どちらの意見も正しさはある。

 しかし、現状でネプテューヌ達は動こうにも動けない。

 広まっている誤解を解く方法を見つけない限り、ネプテューヌ達に勝機はないのだ。

 

「誤解を解く方法か……いっその事、全国放送で白の女神に化けたマジェコンヌの化けの皮を剥がせたらいいのだがな」

 

「そんなことできるわけ……」

 

「言ってみただけさ。あまりに気にしてくれるな」

 

 結局、2人とも何もいい方法が思い浮かばない。

 だが、こうしている間にもマジェコンヌの企みが進行していると思うと焦れてしまう。

 マジェコンヌの手のひらの上でグルグルと回されているかのような不快感がMAGES.に襲いかかる。

 

「――た、大変です皆さ……あ、あれ? お2人だけですか?」

 

「鉄拳? 何かあったのか?」

 

 解決出来ない問題にMAGESとレイヴィスが頭を悩ませていると、鉄拳が扉を荒々しく開けて入室してきた。

 鉄拳は最初からこの部屋で休憩していないミモザやイヴォワールと共にマジェコンヌが流した映像の真偽を問いあわせてくる人達の対応に追われていたのである。

 因みにMAGES.が手伝いに不参加だった理由は、コンパやレイヴィスと共に余計なことをしでかしそうなネプテューヌと落ち込んでいたブランのお目付け役を預かったからだ。

 

「さ、さっきシンさんから連絡があったんです!? 何でもルウィーで3日後に大きな会見を開くとかどうとか……と、とりあえず、お2人だけでも先に来てください!?」

 

 要領を得ない鉄拳の説明だったが、急いでいることだけは2人にも伝わった。

 2人は顔を見合わせ頷き合うと、すぐに立ち上がって鉄拳と共にミモザ達の元へと向かう。

 

 ――その連絡のタイミングが怪しいと分かっていても行くと言う選択肢しかなかったのであった。

 

 

*     *     *

 

 

 その頃、ラステイションに居るアイエフは1人ある部屋を目指していた。

 病院の白い清潔感が溢れる壁で囲まれた廊下を歩き、目的の部屋の前まですぐに辿りつく。

 扉の横には【御波夢人】と書かれたプレートがある。

 

「邪魔するわよ」

 

 アイエフはノックすらせずに扉を開けて無遠慮に部屋へと入る。

 すると、すぐに大きなベッドで横になっている夢人の姿が目に入る。

 うなされているのか、顔中に汗が噴き出して辛そうに顔を歪めている。

 

「またうなされてるみたいね」

 

 明らかに異常な夢人の容態を見ても、アイエフは慌てなかった。

 ベッドの横に置いてあるタオルで軽く夢人の汗を拭い取る。

 それだけで寝ている夢人も少しは落ち着いたらしく、うめき声が小さくなった。

 

「――ァ」

 

「ネプギア、か。本当、アンタにいったい何があったって言うのよ」

 

 うなされながらもネプギアの名前を呼ぶ夢人を見て、アイエフは不安を抱かずにいられなかった。

 夢人は今も生きていることが奇跡なくらい重症なのだ。

 薄い病院服の内側は包帯でくまなく固定されている。

 何があったのかを想像するだけで恐ろしいと、アイエフは思ってしまう。

 

「……ぎ……あ……」

 

 考えこんでいるアイエフの横で、夢人の瞼が痙攣したかのように動きだす。

 すぐに閉じてしまいそうな薄さだが、この病院に連れて来られて初めて夢人が目を開いたのである。

 

「起きたみたいね。辛いだろうけど、ちょっと待ってなさい。今、先生を……って、アンタ何で泣いて――っ!?」

 

 ナースコールを押そうとしたアイエフが目にしたのは、薄く開いた瞼から涙を流す夢人の姿だった。

 そんな夢人の様子に気を取られていると、点滴を受けるために固定されていた腕がアイエフの手へと伸びていく。

 夢人にガシッと手を掴まれて驚き、咄嗟に払おうとするアイエフの耳にかすれた声が聞こえてくる。

 

「……いか……ないで……」

 

 涙を流しながら呟かれた言葉を聞き、アイエフは夢人の手を払い除けることができなくなってしまった。

 アイエフは黙ったままベッドの横にある椅子に座り直し、夢人の手に自分の手を重ねる。

 少しでも夢人が安心して落ち着くことができるようにと……




と言う訳で、今回はここまで!
できれば、今章からしばらくサクサクと更新していきたい。
何故かって? ……うん、それはすぐに分かると思います。
それでは、 次回 「悪意と純粋」 をお楽しみに!
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