超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
また明日から週末にかけて寒くなるみたいですね。
天気も崩れるみたいですし、憂鬱です。
それでは、 悪意と純粋 はじまります


悪意と純粋

 夢を……夢を見ていた。

 

 夢の中の俺は指1本動かすことができない。

 まるで何かに固定されているかのように顔もそらすことができず、目の前の暗闇を見せられ続けている。

 

『夢人さん』

 

 不意にぽわあっと光が溢れ、人の形を作り上げる。

 光の中に浮かんだ顔は見間違えるはずがない。

 ネプギアだった。

 何故か、悲しげな表情で俺の名前を呼んでいる。

 

『……さようなら』

 

 目を伏せ背中を向けたネプギアの姿は次第に遠くへと行ってしまう。

 俺は必死に呼び止めようと口を動かし、手を伸ばそうとした。

 しかし、そんな俺の意思に反して、体はまったく言うことを聞かない。

 

 ――動けっ!!

 動け動け動けよ!!

 待ってくれ、ネプギア!!

 頼む!! 行かないでくれ!!

 

 やがて、ネプギアの輪郭を浮かび上がらせていた光は完全に消え失せ、元の暗闇だけが残った。

 途端に俺は心細さと恐怖に支配される。

 手と足の指先から凍りつくような感覚が体の芯へと伝わっていく。

 そして、最初に感覚がなくなったのは右腕だった。

 次に左足、右足、最後に左腕が消えてしまったかのように錯覚してしまう。

 残っているのは頭と胴の感覚だけ。

 胴も心臓が鼓動をしているから分かるだけで、目の前が真っ暗なのは顔もなくなってしまっているからかもしれない。

 

『――ィ』

 

 低い声が聞こえてきた。

 俺の声でもネプギアの声でもない。

 聞いたこともない声である。

 

『――クイ』

 

 雑音が酷く、最初は聞き取り辛かった声が次第にクリアになっていく。

 だが、俺は少しも安心できなかった。

 声が聞こえてくる度に、言いようのない恐怖が襲い掛かってくる。

 

『――クイ――クイ――ス』

 

 リピートしているだけだった単語に新しい言葉が加わった。

 未だにそれはハッキリと聞こえないが、悪寒だけは増していく。

 頭が締め付けられるように痛い。

 黒しか分からなかった視界の端から違う色が滲みだしてきた。

 

『――クイ――クイ――クイ――ス――ス』

 

 ……それは赤い色だった。

 目の前が段々と赤く染まっていく。

 塗りつぶされていく黒と赤が混ざり合う。

 それを見ているだけで、胸の奥から吐き気がしてくる。

 しかし、全てを塗りつぶしたわけじゃない。

 1点、針の穴のような小ささだけが赤と交わらなかった部分がある。

 俺は覗きこむようにその穴だけに集中し……

 

「大丈夫。父様は1人じゃないから」

 

 娘の……フィーナの声が聞こえたような気がした。

 

 

*     *     *

 

 

「ようやく、お目覚めのようね」

 

「……あい……えふ……?」

 

 眩しい光の中で夢人が最初に見えたのは、呆れた表情をしたアイエフの姿だった。

 寝起きで状況が理解できない夢人へ、アイエフは自身の掴まれている腕を見せながら口を開く。

 

「アンタとしてはネプギアに傍に居て欲しかったんでしょうけど、私で悪かったわね。ほら、さっさと手を離しなさいよ」

 

 言われるがままに夢人は掴んでいた手を離す。

 アイエフは掴まれていた部分を手で擦りながら、不機嫌そうな顔を崩そうとしない。

 

「すぐに先生を呼んであげるから、そのまま待ってなさい。その後で、色々と聞かせてもらうから」

 

「俺……ここ……」

 

「あーもー、無理に喋ろうとしないの。コラ、動くな」

 

 ベッドから起き上がろうとする夢人をアイエフは押さえつけて叱る。

 それでも今の状況を知ろうとする夢人はぎこちない動作で顔をアイエフの方へと向ける。

 

「はあ、分かったわよ。先生が来るまで少し話してあげる」

 

 夢人が何を訴えているのか察したアイエフはため息をつきつつ、説明をすることを決めた。

 何故、ルウィーに居たはずの夢人がラステイションの病院に居るのか。

 そして、傷の具合とゲイムギョウ界全体の状況を。

 

 

*     *     *

 

 

 ――ホットケーキ。

 それは長い歴史を持つ食べ物である。

 小麦粉に卵、砂糖に牛乳とベーキングパウダーを加えた生地を焼いて出来上がったものにシロップをかけて食べるのが一般的なイメージだろう。

 デザート感覚で食する者も多いが、パンケーキと呼んで主食としても充分お腹を満たすことができる満足感を与えてくれる。

 

「おいしー!! おかわりー!!」

 

 ……だから、決して山のように積み上げて食べるものでも椀子ソバのようにパクパクと食べるものでもない。

 5枚積み重なっていたホットケーキの山を平らげ、お代わりを所望するサイタマは輝くばかりの笑顔である。

 因みに、既に同じ物を5皿平らげてからのお代わりである。

 

「……まだ食べるんですの?」

 

「……何だか見ている方が胸焼けしてきちゃうなあ」

 

 そんなサイタマの様子を見て、隣のテーブルに座っていたベールとナナハの顔色は悪くなってしまう。

 とどまることを知らないサイタマの食欲を目の当たりにして、2人とも気分が悪くなってしまったのである。

 

「いったい、彼女のどこにアレだけのホットケーキが入るんでしょうか?」

 

「さあ?」

 

「うにゅ? ベールとナナハも食べる?」

 

『結構です』

 

 話題にされていることに気付いたサイタマが善意で残っていたホットケーキを差し出してくれるが、2人は即座に断った。

 見てるだけで食べる気力が湧いてこなくなってしまったからだ。

 

「大食いキャラか……うむうむ、なかなかいい感じの設定って感じだよね」

 

「キャラ? 設定って何?」

 

「個性ってことだよ。つまり、属性ってことかな?」

 

「う、うにゅ?」

 

 にやりと笑いながら手帳に何かを書き込むREDの言葉の意味が分からず、サイタマは戸惑ってしまう。

 手帳の表紙には【ヨメ大辞典】と書かれており、REDはずっとサイタマを観察しながら書き込んでいるのであった。

 

「なるほど、そっち系の知識はあまり無い……その口癖もなかなか……ふ、ふ、ふ」

 

「え、えっと、大丈夫なの?」

 

「気にしないでいいですわ。その内、元に戻りますから」

 

 自分なりの考察を加えながらペンを動かすREDの顔には不気味な笑みが浮かびあがっていた。

 心配になったサイタマがベールへと尋ねると、にこやかに笑いながら無視を勧められる。

 周りの状況が見えていないようなので、酷いかもしれないが適切な対応でもある。

 

「ところで、少々お尋ねしてもよろしいでしょうか?」

 

 ちょうどいいので、ベールはサイタマに疑問をぶつけてみようとする。

 なにせ、初対面が初対面だ。

 その衝撃は今でも思い出せる。

 最初にサイタマに出会ったのは、ノワール達と出会った廃工場区画の中。

 血塗れの夢人を抱えながら、ふわりとベール達の前に姿を現したのだから。

 

「あなたは夢人さんがどうしてあんな怪我を負ったのか知っていますか?」

 

「うーんと、分かんない!」

 

「でしたら、どうやってルウィーからラステイションに渡ったのですか?」

 

「それも分かんない!」

 

「……だ、だったら、どうしてわたくし達の名前を知っていたんですか?」

 

「何となく!」

 

 サイタマの答えに、ベールは頬を引きつらせてしまった。

 元気いっぱいに答えるサイタマの顔は無邪気そのものである。

 だから、怒るに怒れなかった。

 

(ど、どうしたらいいんでしょうか? 何となく名前が分かるわけありませんし、もしかしたらわたくしが忘れているだけで1度会ったことがあるとか? いやいや、サイタマちゃんみたいな子なら絶対に忘れない自信がありますし……)

 

「サイタマは夢人を助けようとしてくれたんだよね?」

 

「うん!!」

 

 必死に記憶の中を漁って頭を悩ませているベールの横で、ナナハは別の質問をサイタマへと投げかけた。

 すると、ベールの質問よりも力強い断定の答えが返ってくる。

 その反応を見て、ナナハは夢人に関係したことならサイタマのことが知れるのではないかと思う。

 

「それはどうして? サイタマはどうして夢人を助けようと思ったの?」

 

「好きだから!!」

 

「……え?」

 

「大好きだから!!」

 

 目を丸くしたナナハに配慮したのか、サイタマは2回答えた。

 その答えはナナハの予想を超えており、同時に胸に鋭い痛みをもたらすものであった。

 

「そ、それはどう言う……」

 

「大好きだから助けた!! 大好きだから死んでほしくないって思うのはおかしいの?」

 

「お、おかしくない。でも……」

 

 サイタマの言っていることはおかしいことではない。

 それはナナハも理解している。

 だが、胸の傷を抉られるような痛みがナナハを惑わせている。

 

「もー、2人とも情けないなー。ここはどんなジャンルのキャラもヨメにしてしまうことに定評のあるREDちゃんにお任せ!」

 

 ――そんな雰囲気を察してなのか、はたまた偶然なのかは分からないが、REDの宣言が響く。

 どうやら手帳への記入は終わったようだ。

 ふんす、と鼻を得意げに鳴らしてサイタマへと向き直る。

 

「要するに、サイタマは謎や秘密がいっぱいのミステリアスガールってことでしょ? だったら、普通に聞いても駄目だってば。コミュニケーションの基本は相手の立場や気持ちを考えて行動することだよ」

 

「……因みに、情報のソースはどちらですか?」

 

「もちろん、アタシの経験談に決まってるじゃん! 見ませい、REDちゃんのパーフェクトコミュニケーション術の奥義を!!」

 

 頼もしさをあまり感じられない言葉と謎のポーズを取るREDを見て、ベールは微妙な顔をしてしまう。

 言っていることは正論であるが、どうにもREDから滲みでているふざけている感じが拭いきれないのだ。

 特に片足を上げて威嚇するポーズに、何の意味があるのかを問い質したい気分になっている。

 

「うにゅ? “みすてりあす“、って何?」

 

「チェックポイントワーン! 相手からの質問には余程のことがない限り誠実に答えてあげるべし! ――えっと、ミステリアスって言うのは謎めいているって言うか……そう、大人の女ってことさ!」

 

「お、大人の……つまり、サイタマはもう大人なの!?」

 

 無駄に解説を交えようとするREDにツッコミを入れる者はおらず、答えだけを真に受けるサイタマ。

 驚くその瞳がキラキラと輝きだす。

 

「イエス、オフコース! ユーアーミステリアスレディー! ってね」

 

「……大人……サイタマ、“みすてりあす“な大人になったんだ」

 

「あ、あれ? お、おーい、どうかしたの?」

 

「――決めた! サイタマ、決めた!!」

 

 ぶつぶつと呟きだした様子を心配したREDに構わず、サイタマは椅子から立ち上がって拳を突き上げた。

 

「サイタマ、これから“みすてりあす”な大人を極める!! そして、“くーるびゅーてぃー”サイタマになる!!」

 

「お、おう、その意気だよ!? 頑張れ、ミステリアスでクールビューティーなサイタマ!?」

 

「うぅ、にゅうぅ!!」

 

(……ダメですわ、この2人。早く何とかしないと)

 

 2人の会話を聞いたベールは頭を抱えてしまう。

 とてもではないが、まともな会話にすらなっていない。

 天真爛漫……と言うよりは、まるで新しい言葉を覚えたことが嬉しくて使いたがる子どものような反応を示すサイタマ。

 路線がおかしな方へと流れていくことを感じて焦りながらも、これはこれでいいかと便乗するRED。

 2人に任せておけないと、ベールが重たい腰を上げる。

 

「オッホン、サイタマちゃん? 大人の女性と言う者は無暗矢鱈に騒ぐようなものではないのですわよ?」

 

 だが、その口から出た言葉はあまり適切じゃなかった。

 ベールも女神としての責任感と分からないことで頭を悩ませ、相当混乱しているのだろう。

 すると、サイタマは目をパチクリとさせてキョトンと首を傾げる。

 

「大人は騒がないの?」

 

「あっ、別に大人が騒がないわけじゃなくてですね……」

 

「ネプテューヌはいつもうるさいよ? ネプテューヌは大人だよね?」

 

「いや、確かにネプテューヌはいつも騒がしいですが、アレを一般的な大人と評していいか――って、ネプテューヌを御存じなのですか?」

 

 サイタマの出した名前を、ベールは聞き流せなかった。

 何故なら、この場にネプテューヌは居ないのだから。

 もしかしたら、ネプテューヌの交友関係からサイタマの正体が分かるかもと期待する。

 

「ネプテューヌ? うん、知ってるよ。だって、オバサンだもん」

 

「……はい? 今、何と仰いましたか?」

 

「ネプテューヌオバサンのことだよね?」

 

「っぐ!?」

 

 ポカンとしていたベールだったが、サイタマの言わんとしていることを理解すると噴き出しかけてしまう。

 慌てて口を両手で押さえたからよかったものの、指の間からは隠しきれない笑いがこぼれ出す。

 

(お、オバサン! ネプテューヌがオバサン! こ、この子とネプテューヌがどんな関係なのか本当に気になってきましたわ!)

 

「うにゅ? 違うの?」

 

「ち、違いませんわ。でも、どうしてオバサンって呼んでいるのですか?」

 

「だって、マジェコンヌもマジックも言ってたよ? ネプテューヌはオバサンだって」

 

「っ、マジェコンヌですって!?」

 

 思わぬ人物の名前に、ベールは笑いが引っ込んでしまった。

 マジェコンヌ……現在の問題を引き起こした張本人であり、どうにかしなければいけない相手。

 そんな人物の名前を気軽に言えるサイタマを警戒するのは当然だった。

 

「答えてください。あなたはマジェコンヌとどう言う関係なんですか? 事と次第によっては……」

 

「分かんない!」

 

「ただでは――はあ?」

 

 満面の笑みで言い切るサイタマを前にして、ベールは呆気にとられてしまう。

 

「サイタマ、全然覚えてないの。コンパ、言ってた。きおくそーしつだって」

 

「記憶喪失、ですか?」

 

「うん。だから、マジェコンヌのことは……うにゅ? マジェコンヌって、誰? サイタマ、知らないんだけど?」

 

「現在進行形で忘れていっている!?」

 

 最早、記憶喪失ではなかった。

 さすがにREDも静観していられず、ツッコミを入れてしまう。

 そして、REDはベールへと近づき小声で囁く。

 

「……ヤバい。ヤバいって。何この色んな要素を詰め込んだ感じの子。もうミステリアス通り越してカオスだよ。自分の中に宇宙とブラックホール抱えちゃってるってば」

 

「……まったく何を言っているのか、さっぱり分かりませんわ。ですが、本当にサイタマちゃんって何者なのでしょうか? 少しでも手がかりがあればいいのですが」

 

「……それは夢人が起きてから確かめるしかないんじゃないの?」

 

「……それしかないですか」

 

 サイタマから有力な情報を聞きだすことは無理だと分かり、2人は揃ってため息をついてしまう。

 結局、サイタマについて分かったことはあまりなく、余計に謎めいた存在になってしまった。

 

「は~い、ホットケーキのお代わりお待たせ~」

 

「アツアツですから、気をつけてくださいね」

 

「っ、うにゅ!! 待ってました!!」

 

 厨房の方からホットケーキが山になった皿を持って現れたプルルートとフィナンシェを見つけて、サイタマの瞳がキラキラと輝きだす。

 すぐさま椅子に座り直し、フォークとナイフを持って食べる準備に取り掛かる。

 

「ベールさん達、サイタマちゃんとどんなお話ししてたのぉ~?」

 

「……ごめんなさい。ちょっとだけ休ませてください」

 

 ホットケーキをサイタマの前に置いたプルルートが尋ねても、ベールはテーブルに顔を突っ伏して答えない。

 これ以上、サイタマがホットケーキを食べている様子を見ていたら、どうにかなってしまいそうだったからだ。

 片付かない問題が山積みになって起こる頭痛に、テーブルの冷たさが気持ち良いとベールは思ってしまう。

 

「ぶ~、あたしだけ仲間外れなの~。だったら、ベールさんにはホットケーキあげないんだから~」

 

「ホットケーキは見ているだけで――あら?」

 

 頬を膨らませるプルルートに返事をしている途中、ベールはポケットの中で何かが震えるのを感じた。

 それは夢人のNギアである。

 リーンボックスに居るネプテューヌ達と連絡を取る際に利用し、そのままベールが持っていたのだ。

 

「メール? 相手は……シンさん?」

 

 震えた理由はメールの着信によるバイブレーションだった。

 眉をひそめながら確認してみると、メールの差出人はシンになっている。

 

「【招待状】ですって? シンさんはいったい何を夢人さんに……っ!?」

 

 悪いと思いながらメールを開くと、1枚の画像が添付されていた。

 ぐったりとベッドに横たわるネプギアの写真が……

 

 

*     *     *

 

 

 ……自分でも薄々勘付いていた。

 私には致命的に運がないことを。

 幸せと絶望の起伏が激しい人生だった。

 いいこともあれば、悪いことも起こる。

 逆もまたしかり。

 だから、これは必然だったのかもしれない。

 でも、1つだけ言わせて欲しい。

 

「どーして私はまた牢屋の中に居るんですかー!?」

 

 届かない叫びだと分かっていても、鉄格子越しに叫ばずにはいられなかった。

 だって、2連続ですよ?

 リーンボックスに続いて2連続牢屋の中にゴーシュートされてるんですよ?

 そりゃもう、叫んでも仕方ないじゃないですか!?

 好きで投獄される趣味なんて持ち合わせてないのに!?

 

「デンゲキコ、うっさい!」

 

「あっ、すみません」

 

 そんな私の叫びも、一緒の牢屋に入れられているピーシェちゃんに一蹴されてしまう。

 敬語で謝ってしまうのは、もう敬語が体に染み付いているせいなのかもしれない。

 決してピーシェちゃんが怖かったわけじゃないので、ここ大事ですよ。

 

「ロムちゃん、まだ起きないんですか?」

 

「……ねたまんま。ずっとねてる」

 

 私の質問に、ピーシェちゃんはらしくなく暗い顔で答えた。

 視線の先には規則正しく寝息を立てるロムちゃん。

 御波さんから預かった後、まだ1度も目を覚ましていないのでピーシェちゃんも心配なのだろう。

 

 ……そう、私達はホワイトハート様や御波さんに置いていかれた後、教会の人達に捕まってしまったのである。

 下手にことを荒げたくなかった私は暴れようとするピーシェちゃんを必死に押さえ、教会の人達の指示に従った。

 その結果が牢屋への投獄である。

 ここに入れられてからは外の様子はまったく分からない。

 いったい、あの後何が起こったのだろうか。

 

「……ぴいたち、これからどうなるの?」

 

 不安を口にするピーシェちゃんは、本当にいつもの元気な姿からは想像ができないくらい弱々しかった。

 今にも泣き出しそうな顔で私を見上げてくる。

 

「それは……」

 

「――ふっふっふ、それは全てマジェコンヌ様がお決めになることさ」

 

 空気を読まず私の言葉を遮った人物が居た。

 ずっと壁の隅でうずくまっていたから、てっきり寝ているものだと思っていたが起きていたらしい。

 

「貴様らはここで大人しくマジェコンヌ様が裁きを下す時を……」

 

「ぴいぱんち!!」

 

「ほぐわぁっ!?」

 

 おお、またいい具合にパンチがめり込みましたね。

 これで何度目になるでしょうか?

 あの眼鏡の変な髪形の人も懲りないですねぇ。

 まあ、そのおかげでピーシェちゃんも元気になるんだし、別にそのままでもいいのかもしれませんね。

 

「ぴいたちをここからだせー!! ロムになにをしたー!!」

 

「ちょっ、ギブギブ!? ボクは何もしてない!? それにここから出られないのはボクも一緒なんだってばー!?」

 

 ……本当、急に偉そうな態度を取るくせに役立たずですよね。

 今もピーシェちゃんに泣かされてますし。

 はあ、いったい何時になったら私達はここから出られるのでしょうか?

 

「おやおや、随分と賑やかだね。楽しそうで何よりだよ」

 

 ――その声が聞こえた瞬間、背筋がゾクッとしてしまった。

 声の主は忘れもしない。

 あんな逆らえば死ねと言わんばかりの脅しをかけてきた人物のことを忘れられるほど、私の神経は図太くなかった。

 

「シン!!」

 

「うひゃああああああ、出たあああああ!?」

 

「やあ、ピーシェちゃん。随分と待たせてごめんね」

 

 パアッと顔を明るくさせるピーシェちゃんに、にこやかに答えるシンさん。

 それだけ見ていると、私達を助けに来たのだと素直に喜んでもよかった。

 しかし、私は知っている。

 シンさんが教会の人達とグルだってことを。

 私も気持ち的には変な眼鏡と一緒で、叫んで逃げてしまいたいくらいだ。

 ……実際は足がすくで動けなくなっちゃっただけですが。

 

「君達にも随分と不便な思いをさせてしまったね。素直に謝るよ」

 

「……い、いったい何をしに来たんですか?」

 

「君達を助けに――と言いたいところなんだけど、ちょっと今は無理かな。今はここの方が安全だから、大人しくしていて欲しいと言いに来たのさ」

 

 実に白々しい。

 怯える私を見ているくせに、わざと気付かない振りをしているところが特に。

 

「おっと、その前にやらなきゃいけないことがあったんだ」

 

「っ、ま、まさか!? またボクの命を狙うつもりなのか!? ぼ、ボクを殺せば、マジェコンヌ様が黙って……」

 

「ああ、そう言えば君まだ生きてたんだね。すっかり忘れてたよ……まあ、俺の用事はそこで眠っている子だけさ」

 

 騒ぐ変な眼鏡を無視して、シンさんが指さしたのは眠っているロムちゃんだった。

 私は咄嗟にロムちゃんとシンさんの間に割って入り、視線を遮る。

 そして、なけなしの勇気を振り絞ってシンさんに抗議する。

 

「ろ、ろろろロムちゃんに何をしようって言うんですか!? このロリコンがー!?」

 

「酷い言いがかりだね。俺は善意で来ただけだって言うのに」

 

「ロムになにをするき?」

 

 私の罵声に肩をすくめて流し、シンさんはピーシェちゃんの質問に目を細めて笑みを浮かべた。

 

「なに、彼女には聞きたいことがあってね。だから、起こしに来たのさ――コレでね」

 

 そう言いながらシンさんが取り出したのは、とても目覚ましグッズには見えなかった。

 何故なら、それは拳銃だったのだから。




と言う訳で、今回はここまで!
次話は1月中に投稿できると思います。
……まあ、後3日しかありませんが。
それでは、 次回 「4女神、共闘する?」 をお楽しみに!
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