超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
つい先日、ようやくスマフォに乗り換えました。
さよなら、ガラケー。
……でも、慣れないスマフォの扱いに困っていると恋しく思ってしまう。
それでは、 4女神、共闘する? はじまります


4女神、共闘する?

「ちょっ!? それ、拳銃じゃないですか!?」

 

 拳銃を取り出したシンに、動揺を隠せないデンゲキコ。

 思わず声を上ずらせて、バッと後ろに距離を取ってしまう。

 

「そ、そんなものでどうやってロムちゃんを起こすって言うんですか!? ま、まさか私を撃った銃声で起こすつもりなんですか!? 撃つなら、そっちの眼鏡にしてくださいお願いします!?」

 

「な、何でボクなんだよ!?」

 

「あなた男でしょうが!? か弱い女性の盾となって散ってくださいよ!?」

 

「散りたくないわ!?」

 

 混乱したデンゲキコがボッツにまで話を飛び火させ、牢屋の中が喧しくなる。

 そんな醜い争いをする2人を眺めていたシンは苦笑し、ピーシェへと声をかける。

 

「仕方ないなあ。ピーシェちゃん、ちょっとロムちゃんをこっちに連れて来てくれるかな?」

 

 シンが頼むが、ピーシェはすぐに動かない。

 ピーシェは悩むようにシンとロムを見比べてから口を開く。

 

「……ほんとにそれでロムがおきるの?」

 

「ああ。今のロムちゃんの状態はちょっと特殊でね。そのままにしていたら、いつ目覚めるのか分からないんだ」

 

「……わかった」

 

 ピーシェも拳銃が危ないものだと言うことはデンゲキコ達の反応で分かっている。

 しかし、シンの言葉を信じてロムを布団から運び出すことを決めた。

 ロムのことを大切な友達と思っているからこそ、ピーシェは早く元気になって欲しいのである。

 

「ああっ!? 駄目ですってば、ピーシェちゃん!? シンさんが持っている拳銃と言うのものは殺傷能力に優れた武器でして……」

 

「ここでだいじょうぶ?」

 

「もちろん。少し確認させてもらうね」

 

「――って、何平然とロムちゃんに触っているんですか、この変態がー!?」

 

 因みに、デンゲキコは腰が引けているせいで口だけの攻撃である。

 シンはピーシェに運ばれてきたロムの首元に手を触れる。

 

(体温、呼吸共に異常なし。やっぱり、眠っている原因はアレか)

 

 手で触れた温かさに確信を得て、シンは銃口をロムの胸に押し当てた。

 そのまま引き金を引けば、弾丸がロムの体を貫くのは日を見るよりも明らかである。

 

(は、早く止めないと……!?)

 

 目の前でロムが殺されるのが分かっていても、デンゲキコは動けなかった。

 歯はガチガチと音を立て、震えている足では今にも倒れそうである。

 

「1つ、間違いを訂正してあげよう。この銃には弾丸を装填していない。代わりに、あるものが入っている」

 

 説明をしながら、シンは躊躇いもなく引き金を引いた。

 しかし、拳銃からは火花が散る音も硝煙の香りもしない。

 代わりに銃口を押し付けられていたロムの体に異変が起こる。

 

「ロム? ひかってる?」

 

 1番近くに居たピーシェが最初に気付いた。

 ロムの体を淡く白い光が包み込んでいることを。

 幻想的とも言えるその現象を前にして、デンゲキコやボッツは何も言えないでいる。

 やがて光が治まると、ロムのまつ毛が震えだす。

 

「――う、うぅん」

 

「ロム! ほんとにおきたの?」

 

「ぴーしぇ、ちゃん? ……あれ、ここどこ?」

 

「ロムー!!」

 

 まだ寝惚けているようであったが、シンの言う通りロムは目を覚ましたのである。

 ピーシェは感極まり、思わずロムへと抱きついてしまう。

 

(実験は成功だね)

 

 そんな感動的とも言えるシーンをよそに、シンは静かにほくそ笑む。

 嬉しそうに口角を大きく吊り上げ、満足そうに拳銃を眺める。

 

「さて、起きて早々悪いけど、ロムちゃんに1つだけ聞きたいことがあるんだ」

 

「……シン、さん?」

 

「うーん、ちょっと効き目が強すぎたのかもしれないなあ。仕方ない、また後で時間をずらしてから来るとしよう」

 

 ボーっとした顔で見上げてくるロムに、シンはすぐさま質問することを諦めた。

 ロムの頬は赤く、目もトロンとしていている。

 まともに思考ができるとは到底考えられない状態なのだ。

 既にここに来た目的の1つは果たせているため、シンにとっても無駄足ではなかったのである。

 やれやれと肩をすくめながら立ち去ろうとする。

 

「それじゃ、精々大人しくしておいた方がいいよ。あまり騒ぎ過ぎると、怖い怖い魔女さんが怒って来るかもしれないからね」

 

「ちょ、ちょーっと待ったー!? まさか本当に行っちゃうんですか!? ロムちゃんを助けたついでに私達を牢屋から出してくれちゃったりは……」

 

「ハハハ、それは随分とおめでたい考えじゃないのかな? 勘違いしないで欲しいが、俺は君達を助けに来たわけじゃない。ロムちゃんに聞きたいことがあったから、彼女を起こしに来ただけだよ。君達を助ける理由なんて、どこにもないさ」

 

「だ、だったら、ボクはどうなんだよ!? ボクはマジェコンヌ様の部下なんだぞ!? つまり、君の味方じゃないか!?」

 

「あっ、ズルイ!? 何ちゃっかり自分だけ助かろうとしているんですか!?」

 

 ここぞとばかりにボッツがシンに訴えかける。

 拳銃に殺傷能力が無いことで安心したのだろう。

 必死になって牢屋から出してもらおうとする。

 

「それこそ、悪い冗談だ――俺は君を許さない、そう言ったはずだ」

 

「っ、な、何で何だよ!?」

 

 振り返ったシンの表情に笑みは一切無かった。

 無表情で見つめてくるシンに怖気づくが、ボッツも諦めきれず声を荒げる。

 

「分からないのかい? 本当に無知とは度し難いものだよ。あんなものを作っておいて、よくもまあ平然としていられるものだ」

 

「な、何のことだよ!? ボクには心当たりなんて……」

 

「――君はモンスターに人間の思考パターンを入力していた。違うとでも言えるのかい?」

 

 ボッツの叫びに耳を貸すことなく、シンは淡々と告げる。

 問いかけや確認するまでもなく、シンはボッツの持っていたディスクにされていた仕掛けに気付いていた。

 

「そ、それの何が悪い!? ただ暴れるだけのモンスターなんて、腕の立つ冒険者や女神相手じゃ何の役にも立たないじゃないか!?」

 

 事実、ブランはボッツの作り出したモンスターに苦戦していた。

 統率のとれた連携行動。

 本能のまま行動するモンスターとの違いに戸惑い、ロムの加勢が無ければ危なかったかもしれない。

 

「だから、ボクはマジェコンヌ様のために強いモンスターを作ろうと……」

 

「もういい、黙れ」

 

 ボッツの言葉を、シンは今までで1番低い声で遮った。

 その声に含まれた抑えきれなかった怒気に、隣に居たデンゲキコまで顔色を悪くしてしまう。

 

「君は本当に何も理解していないようだ。そんな君の行動に、マジェコンヌもたいそうご立腹だったよ」

 

「う、嘘だ!? マジェコンヌ様がボクのことを見捨てるわけ……」

 

「言い訳したいのなら、そこで延々と壁に向かってでもしていてくれたまえ。自分がどんなことをしたのかを理解しようとしないのなら、もう君のことなどどうでもいい」

 

 シンの言葉を認めようとしないボッツは今にも泣き出しそうであった。

 確かに、ボッツの行動はマジェコンヌにとって邪魔以外の何物でもなかった。

 だからこそ、Mディスクで複製したフィナンシェに嫌悪感を持たれていたのである。

 

「さあ、もう用は済んだ……といきたいところだが、このままじゃ俺も後味が悪すぎる。だから、デンゲキコさん?」

 

「っ、は、はははははいぃぃぃ!? わ、わわわ私めに何かご用でしょうか!?」

 

「ロムちゃんに聞こうと思っていたが、君の意見も聞きたくなった。答えてはもらえないだろうか?」

 

「も、ももももちろんでございます、サー!?」

 

 反論は許されなかった。

 身の危険を感じて怯えきってしまっているデンゲキコは無駄に敬礼までしてしまう。

 

「そこまで畏まる必要はないよ。俺が聞きたいことは1つだけ――君はどうして御波夢人がネプギアに固執するのか分かるかい?」

 

「……はい?」

 

 それは全くの予想外であった。

 シンの質問の意図が分からず、デンゲキコは呆然としてしまう。

 

「聞こえなかったのかな? どうして御波夢人がネプギアに固執するのかを聞いているんだよ。君は何か分かるかい?」

 

「いや、だって、それって2人が恋人同士だからじゃないんですか?」

 

 デンゲキコにはそうとしか答えられなかった。

 散々目の前でイチャイチャしていたのだ。

 お互いに好き合っているのは確認しなくても分かる。

 

「別に2人の関係性がどうとかじゃなくて、俺は御波夢人がどうしてネプギアと言う“個人”に執着しているのかを聞いているんだ」

 

「……えっと、だから、それは御波さんがネプギアさんのことを好きだからじゃないんですか?」

 

 言い直されてもデンゲキコには理解できなかった。

 シンが尋ねていることの違いが分からない。

 少なくともデンゲキコには夢人がネプギアを愛しているからとしか言えなかったのである。

 

「……貴重な意見、ありがとう。非常に助かるよ」

 

「は、はあ、それは別にいいんですけど」

 

「それじゃ、今度こそ大人しくしていてくれたまえ。それと、ロムちゃんには明日の同じ時間に来ることを伝えておいてくれ」

 

「――って、本当にそれだけ!?」

 

 しばらく考えこんでいたシンだったが、考えがまとまったのだろう。

 片手を上げて立ち去ろうとする。

 あまりにもあっさりしすぎている対応に、デンゲキコが叫んでしまうのも仕方ないことだろう。

 

「ああ。ついでにロムちゃんにも同じことを聞くつもりだから、考えをまとめておいてくれと……」

 

「シン!!」

 

「うん? ピーシェちゃん?」

 

 デンゲキコを無視して、言いたいことだけ言って去ろうとするシンの背中にピーシェの声が届く。

 思わず立ち止まり振り返ったシンが見たものは、ピーシェの嬉しそうな笑顔である。

 

「ありがとう!!」

 

 急な感謝の言葉に、シンはらしくもなく目を見開かせてしまう。

 だが、すぐに何に対しての礼なのかを察して苦笑する。

 ピーシェが礼を言う理由など、1つしかない。

 今も抱きしめているロムのこと以外有り得ないだろう。

 

「……どういたしまして」

 

 目を細めて笑みを浮かべるシンの顔は、どこか儚く――そして、眩しいものを見るような目であった。

 

 

*     *     *

 

 

「――これ、本当のことなの?」

 

「はい、残念ながら事実です」

 

「そう」

 

 ラステイションの教会。

 執務室で書類を読んでいるノワールは思わず頭を押さえてしまう。

 書類の内容もそうだが、目の前ではっきりと肯定したアヴニールの社長が憎らしかった。

 

「はあ、頭痛いわね。あなた社長なんでしょ? どうしてこんなことになるまで分からなかったの?」

 

「それも全て、私の監督不足です。誠に申し訳ございません」

 

「……別にあなたに謝って欲しいわけじゃないのよ。ごめんなさい、少し言い方が悪かったわね」

 

 頭を下げる社長に、ノワールは困ってしまう。

 嫌味で言ったわけじゃないのだ。

 そんな2人を見て、横に控えていたマジックのため息がこぼれる。

 

「確かに、これは怠慢と言われても仕方ないな――なにせ、社員の半数近くが失踪しているのに気付かなかったのだからな」

 

 ノワールの読んでいた書類は、アヴニールの社員が今現在どうしているのかを調べ上げた報告書であった。

 内容は酷いもので、マジックの言う通り半分近くの社員が行方不明となっている。

 

「……この件はあなたにも問題があるんじゃないのかしら? そこの所、社長秘書様はどう思っているのかお聞かせ下さらないかしら?」

 

「素直に相手の手腕を褒めるべきだろうな。よくも気づかれず、これだけの人数を手駒にしていたものだ」

 

「そう言うことを聞きたいんじゃないわよ!」

 

 社長の時と違い、混じりっ気なしの皮肉をマジックにぶつけるノワール。

 しかし、マジックはさらりと受け流して、あろうことか裏で動いていた人物を褒めだす。

 ノワールはそんな態度のマジックに対して苛立ち、思わず机を強く叩いてしまう。

 

「少しは落ち着いて物事を考えられんのか? 今更、私達がどうこう言おうが起きてしまったことを変えることはできんのだぞ?」

 

「そんなこと言われなくても分かってるわよ」

 

「だったら、もっと建設的な話をしよう。さて、ラステイションの女神ブラックハート様はこれからどうするかお決まりかな?」

 

「うっ、それは……」

 

 マジックからの同じような皮肉を織り交ぜられた問いかけに、ノワールは言葉を詰まらせてしまった。

 正直な話、ノワールの中でこの状況を覆す方法は既に形になっている。

 だが、それを口に出して実行することを躊躇っているのだ。

 

「ならば、はっきりと言ってやろう。貴様、いつまでここに居るつもりだ?」

 

「……別に。ここは私の執務室だし、居てもいいじゃない」

 

「そうではない。どうしてリーンボックスの女神と別れたのかを聞いているのだ」

 

「それは、その……」

 

 睨みつけるように目を鋭くさせるマジックの視線に耐えかねて、ノワールは顔を逸らして言い淀む。

 マジックの言っていることは正しい。

 こうして執務室にこもっているよりも、今回の事件の中心に居たネプテューヌ達とコンタクトが取れるベールと一緒に居る方が正しい選択である。

 

(そんなことできるわけないでしょうが!? 私とアイツらがどんな関係なのか知ってるくせに無理言わないでよ!?)

 

 しかし、決して口に出せない言い訳をノワールは頭の中で並べていた。

 互いに姿を見つけたら、いつも戦っていた間柄なのだ。

 そんな相手と同じ空間に居て、平然としてられる自信がノワールには無かったのである。

 

「つまらない言い訳をしている暇があるなら、さっさと会って来い」

 

「……何で私が会いにいかなきゃいけないのよ。むしろ、あっちが私の方に会いに来るのが筋ってものじゃないのかしら? うん、きっとそうよ。そうに決まっているわ」

 

「貴様もよくよく面倒臭い性格をしている。もう付き合いきれん」

 

 勝手に1人で頷いているノワールに、マジックは呆れながら退室しようとする。

 スタスタと扉の方へと歩いていくマジックの背中へ、ノワールは慌てて呼びかける。

 

「ちょ、ちょっと!? どこに行く気なのよ!?」

 

「病院だ。奴もそろそろ起きている頃だろう。見舞いついでに話を聞いてくる」

 

 それだけ言うと、マジックはノワールの制止も聞かずに執務室を出て行ってしまう。

 すると、社長の方も動きだす。

 

「私ももう1度彼らの行方を探してみます。ですので、失礼させて頂きます」

 

「あ、あなたまで行くって言うの!? そんなことはガナッシュに任せておけばいいじゃない!?」

 

 現在、社長の話を聞いたガナッシュが行方不明になった社員を調べている。

 しかし、その社員の行方は絶対に分からないだろう。

 何故なら、行方不明になった社員はシンがMディスクで入れ替えていた人物なのだから。

 

「ブラックハート様、ご無理を承知でお願いします。どうか意地を張らずに最善と思われる行動をしてください」

 

「な、私だって今やれることを全力で……」

 

「意地を張った結果の先にあるものは――ただの虚しさだけですから」

 

 また頭を下げられて戸惑うノワールであったが、続けられた社長の言葉に頭が冷えてしまう。

 無視することはできない重みを感じたのだ。

 

「では、私も本社の方に戻ります。何かあればご連絡を」

 

 そう言い残し、社長も執務室から出て行ってしまった。

 1人になったノワールは座っていた椅子の背もたれに思いっきり寄りかかって天井を眺める。

 

(どいつもこいつも勝手なことばかり言って……)

 

 浮かび上がった恨み事だが、それはノワールの本心でない。

 ノワールだって、マジックや社長が何を期待しているのかは理解している。

 だが、それに踏み切ってしまえば、今までの自分が壊れてしまいそうだと考えていたのだ。

 

「……話だけ。まずは情報を集めないことには始まらないわね」

 

 それは自分に言い聞かせているのだろう。

 認めたくない事実と己のプライドの葛藤を必死に誤魔化しているようにも見える。

 

「必要なことなのよ。私はラステイションの女神ブラックハート……ゲイムギョウ界の危機を指をくわえて見ているような真似なんて絶対できないし、したくない。だから――」

 

 カッと目を開き、覚悟を決めてノワールは立ち上がった。

 その足取りがいつもより遅いのはまだ悩んでいるからなのだろう。

 しかし、本人は認めないだろうが、その1歩がマジックと社長が期待した行動そのものである。

 

「会いに行ってやるわよ。話を……話を聞くためにね!」

 

 やけくそであったが、確かにノワールからネプテューヌ達への歩み寄りであったのだから。

 

 

*     *     *

 

 

 ――その頃、プラネテューヌの公園では1人の女性がベンチに座ってため息をついていた。

 

「はあ、何だか大変なことになってきちゃったなぁ」

 

 どんよりとした雰囲気を纏いながら、女性は1人つぶやく。

 この時ばかりは、いつもの鮮やかな青色をしている髪も女性の暗さを助長させてしまう。

 端的に言ってしまえば、とても近寄りがたい雰囲気を発しているのだ。

 

(歌を歌えば気分も晴れるかもと思ったけど、そういう気分でもなくなっちゃったし)

 

 ふと女性は自分の横に置いてあるギターへと視線を移す。

 一緒に居た2人に無理を言ってまで、1人になって歌いに来た……はずだった。

 だが、いざ1人になってみると気分が落ち込みだし、歌う気分でなくなってしまったのである。

 

(帰って2人に相談――あっ、そうだ! あの記者さんに詳しい話を聞いてみればいいんだ!)

 

 しかし、全て無駄足に終わったわけではなかった。

 女性は今の状況をより詳しく知っているかもしれない人物に心当たりがあったのである。

 その人物と出会った場所が今いる公園で、自分が歌っていたからだったので思い出せたのだ。

 

(よし、そうと決まれば早速……)

 

「――すまない、ちょっといいか?」

 

「えっ、ボクで……っ!?」

 

 早く戻って記者の人に会おうと考えた女性を呼び止めた人物が居た。

 女性が呼び止められたことに驚き振り返ると――そこには怪しい人物が立っていた。

 濃い緑色の髪を後ろで1つにまとめている眼光の鋭い男性だった。

 そんな男性がボロボロのマントを纏い、何故か頭や肩には真っ白な雪が乗っている。

 怪しさ満点である。

 

(な、なにこの人!? 目が怖いって言うより、どうして雪が!?)

 

 ここ数日、プラネテューヌは雲ひとつない晴天が続いていた。

 いきなり天気が崩れて雪が降った事実など一切ない。

 だが、その男性の体には間違いなく雪が付着している。

 

「少々道を尋ねたいのだが……」

 

(それよりも前にどうして体中雪まみれなの!? この人、絶対普通じゃないよ!?)

 

 マイペースに口を開く男性に、女性は恐怖してしまう。

 元々、女性は人見知りする性格なのだ。

 今までの経験で多少緩和されたとはいえ、本心では今すぐに逃げ出したいと思っている。

 しかし、彼女のお人好しな面が邪魔して、困っている男性を見捨てられないのである。

 

(ど、どどどどうしよう!? こんなことなら、1人になんてなるんじゃなかった!? 誰でもいいから助けてー!?)

 

 心の中で必死に助けを求めるも、その願いが届くことはない。

 実際、遠巻きに女性達を見ていた通行人は見て見ぬ振りをして通り過ぎている。

 いくら女性が美人であっても、怪しい男性の前に立って助けようとする者はいなかったのだ。

 

「豆腐屋に向かうには、どっちに行けばいい?」

 

「……とう、ふ?」

 

「そうだ。この地図に描いてある豆腐屋への道を教えてくれないか?」

 

 だが、そんな女性の不安をよそに、男性はポケットから手描きの地図を取り出して道を尋ねた。

 呆然としている女性の気持ちが分からないのだろうか。

 どこまでもマイペースな迷子――ディックがルウィーからプラネテューヌに上陸したことに気付く様子は無かった。




と言う訳で、今回はここまで!
皆さん、よくあんなに軽やかに画面をタッチできるね。
私、指が震えて違う場所よく押しちゃうんだけど……もしかして、それって私だけ?
それとも慣れの問題なのかなぁ?
それでは、 次回 「歪み」 をお楽しみに!
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