超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
今日がバレンタインだとかはともかく、春一番が強烈すぎませんでしたか?
正直、明日からまた寒くなると考えるとすごく体調を壊しそうで怖いんですが。
皆さんも体調管理には気をつけてくださいね。
それでは、 ニートの意味 はじまります
「ええい!? いったい奴らは何を考えているんだ!?」
教会の中で、マジェコンヌは使い魔から送られてくる街の映像に憤慨していた。
ネプテューヌ達が騒ぎを起こしているのを、黙って見ていることなどマジェコンヌにはできない。
今も使い魔の目から映し出されている映像を見て、すぐにでもネプテューヌ達を止めに駆け出そうとしている。
「まあまあ、少しは落ち着きなよ」
「これが落ち着いていられるか!? 奴らが自分が何をしているのか……って、クマだと!? クマが人を襲っているではないか!?」
眠気覚ましのコーヒーをちびちびと飲みながら宥めるシンの言葉は、マジェコンヌに届かない。
鉄拳の友達のクマが教会職員を追いかけまわす映像から目が離せないのだ。
「くっ、こうなったら今すぐにでも……」
「今のあなたが飛び出した所で解決できるわけがないでしょう? それよりも、早くホワイトハートに化けて職員の人達に指示を出した方がいいんじゃありませんか?」
「そ、そうだな」
シンの現実的な指摘に、熱くなった頭を冷やして頷くマジェコンヌ。
少しでも混乱した頭を整理しようと、眉間にできた皺を指でぐりぐりとほぐしている。
「いやぁ、しかし彼女達も大胆な行動に出ましたよね。世論は完全にあなたの味方なのに奇襲を仕掛けるなんて、よっぽどおめでたい頭をしているのか、それとも何か勝算があるのか」
「チッ、どちらにせよ忌々しいことだ。おい、奴らにはちゃんと“果たし状”を送ったのだろうな?」
「ええ。言われた通り、【3日後、ルウィーの地にて真にゲイムギョウ界を統治する者を決める。貴様らに女神としての誇りが少しでも残っているのならば、止めに来るといい】でしたっけ?」
そうだと言わんばかりに頷くマジェコンヌに、シンはへらへらと笑うだけだった。
実際にはそんな文面のメールなど、シンは送っていない。
もちろん、わざと内容を変えてネプテューヌ達に送ったのだ。
「やはり、これ以上奴らを野放しにはできん! 必ずこの手で……」
「はいはい、そう言う決意表明をしているところ悪いんだけど、結構ピンチだよ? ほら、職員の人達どんどん捕まってるみたいだし」
ビキッとこめかみの血管を浮かび上がらせながら怒りをあらわにするマジェコンヌだったが、その間にも騒ぎは拡大している。
シンの指さす画面では、REDとリュータが職員達の顔にカラーボールをぶつけている。
そんな職員達をナナハが申し訳なさそうに気絶させ、プルルートが嬉々として縄で縛る光景が繰り広げられている。
「チッ、これ以上やらせるものか! 貴様ものほほんとしてないで、手伝いに来い! いいな!」
「あいあいさー」
シンに強い口調で言い放つと同時に、マジェコンヌはブランの姿へと化けて部屋を飛び出した。
残されたシンはバタンッと大きな音を立ててしまった扉をにやにやと見つめながら口を開く。
「さーて、ちょっと予定とは違うけど、ちゃんと彼も来ているかな?」
慌てていたマジェコンヌとは対照的に、シンはのんきに使い魔から送られている映像を眺め続ける。
口元に手を当てていても、にやけている頬は誤魔化せない。
「おっ、いたいた」
目当ての人物を発見し、シンは目を細める。
画面に映っているのは教会の中に侵入しようとしている夢人とアイエフだ。
「もうこんな所まで来ちゃったのか。それじゃ、俺も早く準備を済ませないとね」
楽しげに浮かべる笑みを崩すことなく、シンは使い魔をディスクの中に戻して立ち上がる。
まだ半分以上残っているコーヒーのカップを机に置き、代わりにロムを目覚めさせた拳銃を懐にしまいこみながら……
* * *
「――なるほどな。話はだいたい理解した」
いきなりアヴニールの社長秘書が来たり、怪我した馬鹿と知り合いだってことには驚いた。
そんな2人の会話……と言うよりも、馬鹿の説明が終わるまで病室から出るに出られなくなった私は隅で黙って話を聞いていた。
「それで貴様はネプギアを助けるためにルウィーへ行くと? その怪我でか?」
「ああ。こんな所で寝てなんかいられない。俺はネプギアを助けに行く」
頑なにネプギアを助けに行くことを諦めない夢人。
私はその姿に呆れよりも、恐怖を抱いてしまう。
どうしてそこまでするのか、と。
「それはいったい何のためだ? ネプギアが貴様に助けを求めたのか?」
「違う。俺が……俺がネプギアを助けたいんだ」
私にはそう言う夢人の顔がリーンボックスでの茶番劇の責任を1人で全部背負った時と同じ顔に見えた。
しかし、あの時見えなかった感情も見える。
それは焦りのように思えた。
まるで何かに追い詰められているようだ。
「立派なことだな。だが、本当にそうなのか?」
「……何が言いたいんだよ」
「自覚なし――いや、貴様はとっくに理解しているはずだ」
睨む夢人に構うことなく、秘書は言葉を続ける。
「今の貴様は“そう”自分に言い聞かせているだけに過ぎない。それは貴様が1番よく分かっているはずだ」
「何のことだよ? 意味が分からないぞ」
「とぼけるのもいい加減にしろと言いたいところだが……あくまで認めたくないらしいな。仕方ない、ならば私の質問に答えろ。答えられれば、貴様がルウィーに行くのを黙認してやる」
「ちょっ!? 何言ってるのよ!?」
発言の内容に、私もさすがに黙っていられず口を挟んでしまった。
すると、秘書はぎろりと私の方を睨みつけてくる。
「黙っていろ。大人しくしていられないなら、さっさと出て行け」
「無理に決まってるでしょうが!? アンタ何考えてるのよ!? 今のコイツがまともに動けないのは見りゃわかるでしょうが!? なのに、どうして!?」
「うるさい。これは私にとっても、コイツにとっても大事なことなのだ。それに、貴様が疑問に思っていることの答えでもある」
「答え?」
秘書の思わぬ言葉に、私は眉をひそめてしまう。
質問をやめさせるのも忘れてしまう程、ドキッと心臓が跳ねたような気がした。
すると、何も言えなくなった私に構わず、秘書は夢人に言葉を投げかける。
「――貴様は今、ゲイムギョウ界のことをどう思っている?」
それは漠然とした質問だった。
問われた夢人も、戸惑っているようである。
「……何だよ、急に」
「いいから答えろ」
「それは……」
答えようとする夢人の口が止まった。
いや、言おうとしているのに言葉にできないように見える。
「答えられんのか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。今のはちょっと言葉に詰まっただけだから。俺はゲイムギョウ界のことを……」
慌てて言い直そうとする夢人だったが、やはり途中で止まってしまった。
そのことに1番驚いているのは夢人本人だろう。
「あ、あれ? 何で? どうしてなんだ?」
「やはり、答えられんようだな」
「違う!? 俺は……」
目を細める秘書に、夢人は声を荒げた。
すると、前髪を掻き上げて俯いてしまう。
呼吸を乱して顔を青くする夢人に、秘書は淡々と告げる。
「なるほど。重傷だが、手遅れではなかったようだな」
「ちょっと、それどういう意味よ?」
「貴様も見れば分かるだろう? コイツは答えられないんじゃない……ただ答えたくないだけだと」
秘書の言葉の意味は分からないけど、何となく理解できるような気がする。
私も今の夢人を見て、同じように感じたからだ。
「貴様はコイツのことをどう思っている?」
「……よく分かんないけど、ムカつく奴」
「そうか。なら、コイツが何故自分のことをニートと蔑むのかを知っているか?」
正直に言うのも癪だから適当に答えた。
だが、秘書はそれを無視して質問を続けてくる。
まるで私の答えなど、どうでもいいと言わんばかりの態度に思わずムッとしてしまう。
「知らないわよ、そんなの」
「コイツは自分を貶すことでしか現状を受け入れられなかったからだ」
「はあ?」
本格的に秘書が言っている意味が分からなくなってきた。
しかし、そんな理解が追いつかない私を置いて、秘書は再び夢人へと声をかける。
「仮に、だ。貴様はネプギアとアカリを連れて元の自分の居た世界に戻れるとしたら、どうする?」
「そんなこと……あるわけないだろ」
「どうして答えられん? 妄想は貴様の得意分野ではなかったのか?」
挑発的な物言いをする秘書に対して、夢人は歯を食いしばったまま答えない。
しかし、その顔が全てを物語っている。
秘書の質問を否定しているのではなく、答えを言うのを躊躇っているのだと。
「どうやらここまでのようだな。後は好きにしろ」
「ちょっ、待ちなさいよ!? どこに行く気よ!?」
「私も多忙の身でな。すぐに本社に戻らねばならんのだ」
「そう言う意味じゃないわよ!?」
淡々と言う秘書がわざと煽っているのではないかと勘ぐってしまう。
しかし、このまま黙って病室から出て行ってもらっては困る。
「好きにしろって、どう言う意味よ!? まさか、本当にコイツがルウィーに行くのを認めるって言うの!?」
「ああ、そうだ」
「何考えてるのよ!? 第一、コイツはアンタの質問に答えてないじゃ……」
「いいや、口に出してないだけで答えているさ。まあ、私ではそれ以上先を聞きだすことはできなかったようだがな」
正直、秘書の正気を疑ってしまった。
夢人は起き上がることすら困難な怪我をしているのに、どうしてルウィーに行くことを認めているのかと。
言い終えると、秘書は私のことを無視して病室から出て行こうとする。
「だから、待ちな……」
「――マジック」
止めようとする私の声を遮って、夢人が秘書の名前を呼んだ。
振り返ると、夢人はまだ俯いたままだった。
その姿勢のままで秘書に向かって言う。
「……ごめん、分からないんだ。俺、答えようとしても答えられなくて」
それが何に対する謝罪なのかはすぐに分かった。
さっきの質問に対する答えなんだと、夢人は辛そうな顔で言う。
絞り出すような声で答える夢人に、秘書はわずかに口元を緩める。
「そうか。なら、今はそれでいい」
「……でも、ちゃんと答えたいんだ。だから、もう少しだけ時間をくれないか?」
「気にするな――と言うのは貴様には酷な話か。答えは貴様がネプギアを助け出してから聞かせてもらう」
それだけ言い残すと、秘書は振り返りもせずに病室を後にした。
残されたのは困惑する私と――シーツを強く握りしめたまま動かない夢人だけだった。
* * *
(何なのよ? 本当、もうなんだって言うのよ?)
病室での会話を思い出しながら、アイエフは今の自分の行動に疑問を抱いていた。
気が付けば、自分も夢人がルウィーに行くことを認めていたことが信じられないのである。
しかも、教会に侵入する手伝いまでしている自分が有り得ないと思っている。
(でも、仕方ないじゃない。あんな顔で頼まれて、断われるわけないじゃないの)
心の中で必死に並べる言い訳と一緒に思い浮かべるのは、マジックの質問に答えられないでいた夢人の顔である。
その顔がアイエフの頭の中に焼き付いて離れない。
だからと言うわけではないが、アイエフは夢人の頼みを断れなかった。
【頼む。ネプギアやルウィーを取り戻すために力を貸してくれ】
夢人とマジックの会話を聞く前なら、容易く拒絶できていた願いのはずだった。
それどころか、夢人を病院のベッドに縛り付けるくらいしていたはずだったのである。
「――侵入者だ!?」
そんなことを考えていたせいだろうか、遠くの方で誰かの声が聞こえてきた。
考えに没頭し、注意が散漫になってしまった結果だろう。
バタバタと慌てた足音が夢人達に近づいてくる。
「チッ、急ぐわよ!」
「分かってる!」
舌打ちをしながら、アイエフは夢人を急かせて走るスピードを上げた。
怪我のせいで辛いはずの夢人であるが、遅れないように必死でアイエフについていく。
(そうよ! 全部、コイツが悪いのよ! 私がおかしくなったのは、コイツが全部悪いのよ!)
走りながら心の中で悪態をつく相手は追ってくる職員でなく、夢人に対してだった。
だが、いくら責任転嫁しようとも胸の中のモヤモヤは消えてくれない。
むしろ、募っていくばかりである。
「あーもー、やってられないわよ!!」
突如、アイエフは感情を爆発させたかのように叫びながら反転した。
急に足を止めたアイエフに驚き、夢人も止まってしまう。
すると、アイエフは夢人をぎろりと睨んで口を開く。
「アンタはさっさと先に行きなさい!! 後ろのは私が止めとくから!!」
「何言ってるんだよ!? そんなこと……」
「いいから行け!! アンタはネプギア助けたいんでしょうが!! だったら、さっさと助けてきなさいよ!!」
この時、アイエフの頭にあったのは夢人の怪我の心配ではない。
ましてや、この先に居るだろうネプギアの安否でもなかった。
それは確信にも似た危機感だった。
(コイツを早くネプギアに会わせないと……!)
自分でもアイエフは何故そんな考えが浮かんだのか分からない。
しかし、今の不安定な夢人を支えられるのはネプギア以外いないと確信していた。
「……ごめん」
迷いながらも最後は謝罪の言葉を残して夢人は駆け出した。
そんな夢人の後ろ姿を見て、アイエフは1つだけ分かったことがある。
(――そっか。そう言うことだったんだ)
今まで夢人が気にくわなかった理由。
それはあの“迷子”のような背中が嫌いだったのだと、アイエフは自覚した。
その背中が気取って強がっているだけの自分のことのように思えて気に入らなかったのだ。
言わば、同族嫌悪のようなものだったのである。
(私、嫌な女ね)
気付いてしまった感情に自己嫌悪に陥りながら、アイエフは向かってくる職員達を待ち構える。
ほんの少し、夢人のことを羨ましく思った気持ちを誤魔化して。
* * *
夢人は走り続ける。
服の下できつく巻かれている包帯が赤く滲んでいようが、スピードを少しも落とさずに急ぐ。
額に脂汗を浮かべて苦しそうにしながらも、足は止まることなく進み続ける。
――目的地はネプギアがいるだろう部屋。
挑発なのか、シンがメールにネプギアが囚われている部屋までの順路を添付させていたのだ。
だから、夢人は迷わず進むことができている。
……途中、不自然なほどに妨害にあうことなく。
「ここ、か」
息を乱しながら夢人が辿り着いたのは、他よりも大きな扉だった。
この先にネプギアがいると、夢人は息を整える間もなく重い扉を押し開けた。
「……えっ? 夢人、さん?」
開かれた扉の向こうから、聞きたかった声が夢人の耳に届いた。
その自分の名前を呼ぶ声を夢人が聞き間違えることはない。
顔だけ振り向いて目をパチクリとさせているネプギアが、夢人の目の前に立っていたのである。
「ネプ……ギア……」
驚いたのはネプギアだけでなく、夢人も同じであった。
まさか扉を開けた途端に会えるとは思っていなかったのである。
さらに、夢人を驚かせていたのはネプギアの服装である。
ネプギアはいつものワンピース姿でなく、白いウエディングドレスのような服装だったのだ。
黒い髪飾りが場違いのようにネプギアの頭で存在を主張している。
「え、えっと、これは私にもよく分からないんですけど、ここでコレを着て待ってろって……」
「――ネプギア!!」
「きゃっ!?」
しどろもどろになって説明するネプギアの言葉を遮り、夢人は衝動のまま動いていた。
強く抱き締めたのである。
ネプギアが驚いて悲鳴を上げても、その背中に回した腕を離さないように強く抱き締め続ける。
「ゆ、夢人さん!? こ、これはいったい……」
「……よかった。本当に……本当によかった」
顔を真っ赤にして焦るネプギアの耳に聞こえてきたのは、震えた夢人の声だった。
泣いているのだろう。
夢人の体の震えがネプギアにも伝わってくる。
「夢人さん……」
それ以上、ネプギアも何も言わなかった。
ただ黙って自分も夢人の背中に手を回して抱き締め返す。
お互い、それだけで心が癒されていくようだったのである。
2人がいる部屋と相まって、まるで映画の1シーンのようであった。
色彩豊かなステンドグラスから温かな光が差し込む部屋の中央には赤いカーペット。
木製の横長の椅子がカーペットの横に並べられている。
本来の用途で言えば、信者を招いての集会を行う場なのであろう。
だが、ドレス姿のネプギアがいるだけで結婚式場のような雰囲気を醸し出している。
静かな2人だけの空間だった。
――それを引き裂く銃声が聞こえてくるまでは。
と言う訳で、今回はここまで!
うん、とりあえず次回は心構えしといてと注意を呼び掛けときます。
何故かって、それは……
それでは、 次回 「バースデイ」 をお楽しみに!