超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
……前回の後書きの通り、心構えしておいてくださいね?
それでは、 バースデイ はじまります
「ハッ!!」
作り出した剣を投擲し、巡回中の職員達の視界を奪うレイヴィス。
彼は今、言い知れぬ不安を感じていた。
(何なんだ、この感覚は……?)
肌がざわつくような不快感。
自分でもよく分からない感覚に、レイヴィスは顔をしかめる。
「どうした、レイヴィス?」
「……何でもない。次の場所に行こう」
「ああ」
一緒に行動していたMAGES.に首を横に振って答え、レイヴィスは次の場所へと向かおうとする。
不確かな勘よりも、今はルウィー奪還作戦を成功させるためである。
この奇襲作戦において、レイヴィス達の役割は囮である。
出来るだけ派手に暴れて巡回中の職員達を教会から遠ざけることが目的なのだ。
そして、職員達が少なくなった隙にネプテューヌ達女神がマジェコンヌの元に奇襲をかける……と言う手筈なのである。
力技だが、女神4人がかりでマジェコンヌを倒してルウィーから追い出そうと言うものだ。
(本当にゲームの時とは大違いだな)
思考を切り替え、レイヴィスは後ろをついてくるMAGES.のことを考える。
レイヴィスは『転生者』の中で唯一『超次元ゲイムネプテューヌ』と言う作品の内容を知っている。
だが、彼の遊んだゲームの中には、MAGES.や鉄拳達は登場しない。
彼女達は『神次元ゲイムネプテューヌV』で初めて登場する人物達だったとレイヴィスは記憶している。
(やっぱり、ゲームの知識は当てにできないか……となると、この後にいったい何が起こるんだ?)
元々、自分や夢人達の存在があるからゲームの内容通りに進まないことはレイヴィスも分かっていた。
しかし、そこにアドバンテージが無いわけではない。
夢人達がまだ知らない鍵の欠片を集めるよう指示している人物の正体やマジェコンヌの目的にも大まかな検討がつく。
だが、知識と実際に目の前で起こっている現実との差異がレイヴィスの頭を悩ませる。
(これも“勇者”……いや、夢人がいるからなのか?)
まるで決められていたかのように騒動に巻き込まれる夢人のことを考え、レイヴィスは知らずうちに眉間にしわを寄せていた。
しかし、レイヴィスはすぐにハッとして後悔したような顔になる。
(っ、今は余計なことを考えている場合じゃない。俺は俺に出来ることをするだけだ)
自分に言い聞かせるようにやるべきことを頭の中で反芻し、レイヴィスは迷いを振り切ろうとした。
考えはまとまらなかったが、それは今すべきことではないと判断したからである。
今は少しでもネプテューヌ達が動きやすくなるように囮の役目を果たそうと、レイヴィスは駆けるのであった。
その心に押し込めた感情を見て見ぬ振りをして……
* * *
「――えっ」
夢人は何が起こったのかが理解できなかった。
突然聞こえてきた銃声に顔を上げると、ネプギアが倒れ込むようにもたれかかって来たのだから。
「ネプギア……?」
呆然としていているせいで、名前を呼ぶ声にも力が無い。
しかし、その間にも夢人の背中に回されていたネプギアの腕は離れてしまう。
背中に感じていた温かさがなくなったことで、ようやく夢人はネプギアに異変が起こったことを理解する。
「っ、ネプギア!?」
抱きかかえるようにネプギアの体勢を変え、夢人は大声で名前を呼んだ。
しかし、ネプギアは何の反応も返さない。
「ネプギア!? おい、どうしたんだ!? しっかりしろ!?」
喚くような夢人の声だけが虚しく響く。
夢人には何が起こったのかが、まったく分からない。
胸が上下している様子から、最悪の事態だけは無いだろう。
しかし、ネプギアの体のどこにも異常は見られない。
純白のドレスはそのままの美しさを保っている。
「どうなってるんだ!? いったい何が……」
「ゆ……め……」
「っ、ネプギア!? 気がついたのか!?」
錯乱する夢人の耳に、ネプギアの小さな声が聞こえてきた。
それだけで夢人は顔を明るくさせる。
だが、次の瞬間には顔を凍りつかせてしまう光景を目の当たりにしてしまう。
「えっ、あっ、な、何だよ、これ……!?」
戸惑う夢人の目の前で、ネプギアの体が段々と薄くなっていく。
信じられない光景に、夢人は言葉も出せない。
そんな夢人をよそに、溶けていくようにネプギアの体を包み込む青白い光が天へと昇っていく。
「何だよ……いったい何だって言うんだよ!?」
叫んでも何も解決しないことは夢人も分かっていた。
しかし、混乱している夢人には叫んで喚くことしかできなかったのである。
「ゆめ……と、さん……」
そんな時、ネプギアは抱きしめるために肩を掴んでいた夢人の手に自分の手を重ねた。
その挙動は弱々しく、振り絞られた声はか細い。
だが、それでもネプギアは必死に口を動かす。
「そん……な、顔……しないで……」
「しゃべらなくていい!? 待ってろ、今何とか――あっ」
無理に話そうとするネプギアを止め、夢人はB.H.C.を取り出そうとした。
『再誕』の力なら、ネプギアを助けられるのではないかと考えたからである。
しかし、取り出した瓶の中身を見て絶句してしまう。
……そこには、ひと粒も残っていなかったのだから。
ディックとの戦いで全て落としてしまっていたのである。
「クソッ!? だったら!?」
それでも諦めず、夢人は『再誕』の力を使おうと意識を集中する。
だが、救いたいと願えば願う程、焦りは強くなってしまう。
結果、ブレスレットは何の反応も示すことなく、奇跡も何も起こらない。
「頼む!? 力を貸してくれよ、フィーナ!? このままがネプギアが!? ネプギアが!?」
夢人はブレスレットを託してくれたフィーナへ懇願するように叫ぶが、何も起こらない。
そうしているうちにも、ネプギアの両足の先端は完全に光の粒子となって消えてしまった。
「何で……何で何だよ!? 俺、どうして……」
「――だいじょ、ぶです」
何もできない無力感に打ちのめされている夢人に、ネプギアは笑って見せた。
その笑みの儚さが余計に夢人の胸を引き裂く。
「ゆめ……と、さんが……きにすること……ない……で……」
「もういい!? もういいから、しゃべらないでくれ!?」
「だめ……です、よ……だって……ゆめと……さん……ない……て……」
壊れたラジオのように途切れ途切れで話すネプギアの姿を、夢人は見ていられなかった。
だが、ネプギアは口を閉ざそうとしない。
震える手で夢人の頬に伝う涙を拭おうとする。
「さい……ご……に……わが、ままを……」
「諦めるなよ!? まだ何か手があるはずだから!? 最後だなんて言わないでくれ!?」
悲痛な夢人の訴えに、ネプギアは答えない。
いや、答えられないのだろう。
既にネプギアの体は腰の付近まで光になってしまっていたのだから。
「わたし……が……いなく……なって、も……ずっと……わすれ……ないで……」
「っ、ネプギア!?」
言い終わらないうちに目を閉じてしまうネプギアを見て、夢人は慌てて呼びかける。
だが、ネプギアは目を開けることなく、口元に柔らかな笑みを浮かべたまま告げる。
「――あいしてます、ゆめとさん」
そう言い残し、夢人の腕の中からネプギアの温もりは完全に消えてしまった。
残ったのは、ネプギアの着ていた白いウエディングドレスだけである。
ネプギアの体は完全に光の粒子となって消えてしまったのである。
「あ、ああ……ネプギア――ネプギアアアアアアァァァッ!?」
残されたウエディングドレスを抱きしめ、夢人は泣きながらネプギアの名前を叫んだ。
まだ温かいドレスが夢人に残酷な現実を嫌でも認識させる。
だが、認めたくない夢人は泣き叫ぶことしかできなかったのである。
「――へえ、なるほどね。女神の最後って、意外と呆気ないものだったんだ」
悲しみにくれる夢人の耳に、場違いなほどに明るい声が聞こえてくる。
カツ、カツとわざとらしく足音を鳴らして歩くシンはへらへらと笑っていた。
「まあ、これで実験は無事に成功ってところかな。お疲れ様、御波夢人君」
「……し、ん?」
「そうだよ。まさか、俺が別人にでも見えるかい?」
呆然としたまま顔を上げる夢人が名前を呼ぶと、シンは嫌らしく口角を吊り上げた。
夢人はそんな笑い方をするシンを1度も見たことが無かった。
だから、訳が分からず混乱してしまう。
「混乱しているようだね。だったら、特別に色々と教えてあげるよ――まあ、単刀直入に言ってしまえば、俺は君達を騙して近づいていたわけだけどね」
あっさりと白状するシンの言葉に、罪悪感のような後ろめたさはまるで感じられなかった。
どこまでも楽しげに、それでいて夢人を嘲笑うかのようにシンは言葉を続ける。
「いやあ、まさか最後まで君達を騙し続けられるとは思っていなかったよ。絶対に途中で気付かれると思っていたのにね。本当、君達がお人好しの馬鹿で助かったよ。おかげで、こうして俺の研究の第1段階が完了したのだからさ」
「それじゃ、まさか……!?」
「お察しの通り……と言うよりも、“コレ”を見せた方が早いかな?」
言いたいことを察してくれた夢人に、シンはにやりと笑って手に持っていた拳銃を見せつける。
眠っていたロムを目覚めさせるだけでなく、ネプギアを光の粒子に変えてしまった凶器でも拳銃だ。
「この銃は特別製でね。中には普通の弾丸じゃなく、とある場所で取れた鉱石で作った弾丸が入っているんだ。それが面白い性質をしていて、見つけた時は本当に驚いたよ」
わざとらしく声に抑揚をつけて説明するシンから目を離し、夢人は項垂れてしまう。
だが、シンは構わず話し続ける。
「君は考えたことがあるかい? 女神とはいったい何なのかを……ゲイムギョウ界で生きる多くの人達は自分達が信仰する女神に勝手な理想を押し付けているだけで、その本質をまったく理解しようとしていない。君もそれは分かるだろ? なにせ、ここに来るまでのラステイションやリーンボックスでも散々見て来たのだからね」
ラステイションでは、アヴニールの味方をしているように見えたノワールへ失望して諦めていた人達。
リーンボックスでは、絶対的な存在としていたことによってベール1人の思いだけでは止まれなくなってしまったレジスタンス活動に参加した人達。
ルウィーでも、信仰の厚いブランだからこそマジェコンヌの変装に騙されて利用されている人達がいる。
3国共に形は違うが、女神への信仰――願いとも言っていい理想を抱いていたからこそ起こった悲劇である。
「その点、君は女神に近すぎた。ある意味で正しい形だったのかもしれないが、間違ってもいる。矛盾しているようだが、それで成り立つ君と彼女の関係は見ていて滑稽だったよ」
彼女、という言葉に夢人は反応して肩を小さく震わせた。
「いやはや、愛や恋なんて感情は本当に理解できない。どうして他人をそこまで思えるのか、俺にはまったく理解できないよ」
「……れ」
「そもそも女神に恋をするなんて、生物学な定義としても間違っているのさ。彼女達の本当の正体は……」
「――黙れッ!!」
煽るようなシンの言葉を、夢人の怒声が遮った。
すると、シンは面白そうに目を細める。
「怒ったかい? でも、君も本当は分かっていたんじゃないのかい? 君と彼女とでは住む世界――いや、次元が違うってことを」
「黙れよ!! それでも俺はネプギアのことを……」
「愛していた、と? だったら、どうする? そんな愛しい愛しい彼女を奪った相手が目の前に居たら、君はいったい何をするんだい?」
挑発とも取れるシンの物言いに反論することなく、夢人はゆらりと立ち上がった。
涙で濡れた瞳に暗い憤怒の炎を燃やしてシンを睨みつける。
「お前だけは――お前だけは絶対に許さない!!」
そう宣言すると同時に、夢人の右手首に巻かれているブレスレットの水晶が暗い輝きを放ち始める。
瞳もディックと戦った時のように赤黒く染まっていく。
すると、ブレスレットがガタガタと震え出す。
「へえ、許さないか。別に俺は君に許してもらうつもりはないんだけどね。その前にどうして君は怒っているのかな? 青臭い感情の発露なら、他でやってくれたまえ」
変わらずにへらへらと笑い続けるシンを見て、夢人の頭の中で何かが弾けた。
ネプギアが消えてしまったことへの深い悲しみ。
軽薄な笑みを浮かべるシンの裏切りへの戸惑いと怒り。
それらが全て混ざり合うように重なり、夢人の中で1つの衝動を湧きあがらせた。
――瞬間、ブレスレットの水晶を1つにしていた紐は粉々に砕け散るのであった。
* * *
囮役を果たすために教会の近くを移動中だったナナハ達。
ブランとフィナンシェから教えてもらった教会職員の巡回ルートに沿って移動していたが、急な轟音と目の前に落ちてきた瓦礫に足を止めてしまう。
「ちょっ、何あれ!?」
音が聞こえてきた方を指さすREDにつられて、ナナハ達も顔を向けた。
見ると、教会の壁の一部が破壊されていることが分かる。
「……やれやれ、こんな展開聞いてなかったんだけどなぁ」
「シン!?」
ゴソゴソと瓦礫の中から姿を現したシンに、ナナハ達は大きく目を見開かせた。
気付かなかったが、瓦礫と共に落ちて来たらしい。
「やあ、諸君ごきげんよう。だが、残念ながらゆっくりと再会を喜ぶ時間は無いようだよ」
「何を言って……」
疲れたように笑みを浮かべるシンに近寄ろうとした時、ナナハ達の前にその男は音もなく降り立った。
「夢人?」
その背中に最初に呼びかけたのはナナハだった。
ナナハは後ろ姿からでも夢人だと確信を持てた。
だが、その様子がいつもと違いすぎて戸惑ってしまう。
「へっ? 夢人兄ちゃん? どっから来たの?」
「もしかして、あそこから?」
急に現れたように見える夢人に、リュータとREDは目をパチクリとさせてしまった。
事実、ナナハ達からは突然夢人が自分達の前に降りて来たようにしか見えなかったのである。
そこでREDがもしかしてと言うように、壊れた教会の方へと顔を向ける。
「そんなわけないだろ? 夢人兄ちゃんがそんなことできるわけないじゃんよ」
「それもそうだね。だったら、直接本人に……」
「――2人とも、ダメッ!?」
笑いながら夢人に近づこうとするリュータとREDを、プルルートが止めた。
何時になく余裕のないプルルートの声に、2人は驚き立ち止まる。
「ど、どうしたの、ぷるるん?」
「今のゆっちゃん、すっごく怖い感じがする!?」
ナナハとプルルートが感じた通り、今の夢人は普通ではなかった。
いつもならナナハ達に声をかけられたなら、すぐに振り返って返事をするだろう。
だが、今の夢人はまるでナナハ達の存在に気付いていないかのようにシンだけを睨みつけている。
それだけではなく、夢人の周りには赤黒い輝きを放つ6つの水晶が浮かんでいる。
「親切心で忠告しておくよ。今の彼には近づかない方がいいよ。下手すると、君達まで巻き添えを食うかもしれないからね」
頬を引きつらせながらも笑みを浮かべるシンの言葉が、ナナハ達の頭をさらに悩ませる。
しかし、すぐにその意味を理解させられるのであった。
「――ウアアアアアアァァァッ!!」
突然、獣のような雄叫びを上げる夢人。
驚くナナハ達の目の前で、夢人の体にさらなる変化が起こる。
浮かんでいた水晶の内、5つが夢人の胸へと吸い込まれるように消えてしまう。
すると、夢人は急に右腕を抱きかかえるように体を丸めた。
「ガアアアアアアァァァッ!!」
痛みに耐えるかのような悲痛な叫びを上げる夢人の右腕が見る見るうちに姿を変えていく。
赤い粒子が右腕に纏わりつき、まるで鎧のような攻撃的な外殻に変化して肘までを覆う。
だが、その反面内側の部分は脈打つようにドクッ、ドクッと動いている。
「あ、あはは……さすがにマズイかも」
その変化を目の当たりにしたシンは冷や汗を垂らしながら、乾いた声で笑うことしかできなかった。
ひと目で夢人の右腕がヤバいことを察しているからこそ、下手に背中を見せて逃げることもできないと判断したのである。
「うっ!?」
「あうっ!?」
「ど、どうしたの2人とも!?」
変化は夢人だけでなく、ナナハとプルルートにも起こった。
急にふらついて倒れそうになった2人をREDは慌てて受け止める。
「わ、分からないけど……体に力が……」
「きゅぅ~……立ってられない~」
何が起こったのかは本人である2人にも分からないが、両者ともに眩暈を起こしていた。
体中から力が抜けるような虚脱感を味わっており、立っていられなくなってしまったのである。
「――シン」
やがて、夢人は変化した右腕をだらりと下げて体をゆらゆらと揺らす。
そこでナナハ達の前に現れてから初めて理性を感じられる声でシンの名前を呼んだ。
呼ばれたシンはもちろん、後ろで聞いていたナナハ達もその声に含まれていた“とある感情”……聞いているだけで震え上がりそうな憎悪に背筋を凍らせてしまう。
「殺すッ!!」
禍々しい赤で覆われた右腕を振り上げ、夢人はシンへと飛びかかっていく。
血のように赤黒く染まった瞳から、止めどなく涙を流しながら……
* * *
「おーおー、遂に始まったじゃねーか!」
「うんうん! よーやく面白くなりそうだねー!」
奥行くすら分からない真っ白な空間。
そんな不可思議な場所で浴衣のような着物を来た少女と妖精は興奮していた。
2人が興奮している理由は、目の前で渦を巻くように歪んでいる空間に浮かんでいる映像である。
そこには、飛びかかった夢人を避けるシンの様子が映し出されている。
シンが避けたことにより、背後にあった壁が夢人の右腕に木っ端微塵にされてしまう。
「うひゃー、すげーなー! 見事に壊しちまったぜー!」
「とーぜんじゃん! 逆に、あれぐらいできなきゃおかしーよ!」
称賛する妖精の言葉に、何故か少女が胸を張って威張りだす。
夢人の変化を、少女はまるで自分のことのように誇っている。
「まーでも、ちょーっとおかしーなー? アレって、あんな感じの力だったっけ? なんか違うような気がするんだけどなー?」
〔あなた達は彼のあの姿を見てそれしか考えられないのですか……!〕
「あっ、そーいえば、あなた達も居たんだね――ゲイムキャラさん?」
のんきに首を傾げる少女に、怒気の混ざった声が投げかけられた。
それは少女達の後ろで同じ映像を見ていた4つの光の球体……各国のゲイムキャラ達である。
自分で連れてきたくせに、今正に気付いたかのように笑って振り返る少女に彼女達はさらに苛立ちを募らせる。
〔こんなものを見せるために、わざわざわたし達を連れて来たのですか?〕
「うーんとねー、そーだよ。だって、あなた達も彼のことを気にしていたでしょ?」
〔だからって、こんなものを見せるなんて……〕
「――ふーん、だったら帰っちゃえば?」
抗議を続けようとするプラネテューヌのゲイムキャラの言葉を遮り、少女は冷たく言い放つ。
そこに先ほどまでの無邪気な笑顔はなく、目を細めてつまらなそうな表情にしている。
「おいおい、よーやく面白くなりそーだってのにうるさくすんなっつーの。白けちまうだろーが」
「おっと、そーだったそーだった。いやー、つまんないことで見逃すところだったよー」
呆れた顔をする妖精の声を聞き、少女は再びにんまりと笑みを浮かべて渦から見える映像に集中し始めた。
映像では、シンが必死に夢人から逃げようとしているせいで周りがドンドンと破壊されていっている。
「うーん、やっぱりおかしーなー? 本当にこんな力だったかなー?」
「あの男のせいじゃねーの? アイツ、ゲイムギョウ界で生まれた奴じゃねーわけだし」
「そーかもねー。まあ、エラー起こしてても目覚めてくれてよかったよ」
簡単に妖精と会話をしながら映像を眺めていた少女は、突然ふわっと誰もが見惚れるような笑みを浮かべた。
その目には泣きながら暴れ続ける夢人しか映っていない。
「おめでとう。ワタシはあなたの誕生を祝福するよ」
少女が嬉しそうに映像の向こうに居る夢人に告げると、今度は振り返ってゲイムキャラ達の方へと向き直る。
「あなた達もそう思うでしょ? ルウィーで生まれた悲劇の“バケモノ”。うっふっふー、まるであなた達もよく知っている“アレ”みたいだよねー」
少女の言葉に、ゲイムキャラ達は何も答えない。
その反応を気にしていないのか、それとも黙っていることに満足しているのか分からないが、少女は楽しげな笑みを崩さない。
「まあ、本当にバケモノになっちゃうかは彼次第なんだけどねー。とりあえず……」
再び画面の中に映る夢人に視線を戻し、少女は口を開く。
慈悲深い女神のようなほほ笑みを携えて。
「ハッピーバースデー……あなたの誕生を待ちわびていたよ、“D”」
と言う訳で、今回はここまで!
アンジュのネプイベで時間が取れず今回は遅れてしまいましたが、次回は早く投稿しようと思います。
次回でこの章の本編も終わりですからね、どんどん話を進めましょう。
それでは、 次回 「勇者? 参上」 をお楽しみに!