超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
花粉で目と鼻がヤバいです(・・;)
それでは、 失ったものと責任 はじまります


失ったものと責任

「ほら、見てみろよ! 夕日がすげー綺麗だぜ!」

 

「……そうですね」

 

 昼の公演を終えたオレはフェルを連れて夕焼けの見える海岸へと来ていた。

 夜の分までは、まだ時間がある。

 目の前には悩んでいることがちっぽけに思えるくらいに広い海。

 落ち込んだり悩んでいる時は、やっぱり海を見ながら己に問いかけるのが定番だよな。

 これなら、フェルも少しは……

 

「シュンヤ君って、本当に単純だよね。と言うか、海に連れて来ただけで悩みが晴れるって、いつの時代の話なの?」

 

「そう言ってやるな。シュンヤはその……ほら、テレビとかの影響を真に受けるタイプだから」

 

「お前ら、うるせえぞ!?」

 

 同じユピテルの仲間、カケルとエースケに怒鳴る。

 カケルは文句言うだけなら、今すぐ帰れよ!

 それとエースケももっとまともなフォローしろってんだ!

 

「3人は本当に仲がいいんですね」

 

「ああ? まあな。ずっと夢を一緒に追い続けてきた仲間――いや、兄弟みたいなもんだからな」

 

 顔を上げたフェルに、オレは少しだけ照れながら答えた。

 実際、仲間なんて簡単な言葉じゃオレ達の関係を言い表せない。

 いいことも悪いことも一緒に共有して、今日までやって来たんだから。

 

「えー、シュンヤ君と兄弟とか嫌なんだけど。エースケ君は別として」

 

「俺もカケルならともかく、シュンヤみたいな弟はな……」

 

「お前らはそんなにオレを苛めて楽しいのか!?」

 

 ……こう言う冗談もコイツらとなら笑って楽しめる。

 今もきっとフェルのことを考えて、わざと笑いを取りに行こうとしているんだ。

 

「何言ってるのさ、イジメも何も本当のことを言って何が悪いの?」

 

「すまない、俺も自分に嘘はつけられないんだ」

 

「――って、マジなのかよ、おい!?」

 

 やめろよ、そのマジトーンで言うのは!?

 1人で勝手に舞い上がってたみたいで泣くぞ、おい!?

 

「悪い悪い、もちろん嘘だって」

 

「そうそう。本当シュンヤ君ってば、すぐ騙されるんだから」

 

 今更冗談だとか言われても、オレの傷ついた心は治らないんだぞ!?

 いやまあ、オレ1人だけ恥ずかしいこと考えてたわけじゃなくて、よかったけどさ!?

 

「……兄弟、か」

 

 ボソリと呟いたフェル。

 オレ達の言い合いを見てニコリともせず、どこか寂しげに海へと顔を向けてしまった。

 

「シュンヤ、これは本格的に不味くないか?」

 

「ああ、だからこそ放っておけないだろ」

 

「まったく、シュンヤ君ってば無駄に熱血なんだから」

 

 こんなことを言いながらも、コイツらがオレと同じ気持ちなのは顔を見なくても分かる。

 よし、早速頑張りますか。

 

「兄弟って言えば、勇者――じゃなかった、夢人の奴は今何してんだ?」

 

 こう言う時は直接聞くんじゃなくて、遠まわしに話を持って行った方がいいって聞いたことがある。

 それに倣ってフェルに尋ねようとしたんだが、また夢人のことを昔の呼び方で呼んでしまった。

 もう勇者じゃないから名前で呼んでくれって、本人にも言われてたんだがな。

 

「お兄さんは、その……行方不明です」

 

「そうか、行方不明――って、なにいいぃぃぃ!?」

 

 一瞬納得しかけたが、おかしいことに気付いて思わず叫んでしまった。

 行方不明とか、本当にアイツ何やってるんだよ!?

 

「それで何か手掛かりとかあるのか!? 無くても何かオレ達に出来ることは……」

 

「あっ、いや、居場所とかそう言うのは分かってるんです。でも、簡単に迎えに行けるような場所じゃなくて……」

 

「オーケー。とりあえず、夢人に関してはここまでだ。何かあれば俺達も出来る限りのことをするってことでいいよな、シュンヤ?」

 

「あ、ああ」

 

 慌てるオレを宥めてくれたエースケに感謝しつつ、落ち着きを取り戻すために大きく息を吐く。

 本当、オレだけだったらフェルに掴みかかってるところだったぜ。

 

「夢人君もつくづく運がないって言うか、本当に可哀想に思えてくるよね」

 

「まあ、アイツ自身がトラブルメーカーみたいなもんだろ。むしろ、何かに巻き込まれてた方がアイツのためかもしれないな」

 

「……どう言う意味ですか?」

 

 オレとカケルの何気ない会話を聞いて、フェルが大きく目を見開いて尋ねてきた。

 そんな不思議なことを言った覚えのないオレ達は思わず顔を見合わせてしまう。

 

「いや、だって、なあ?」

 

「それじゃ何にも分からないよ。フェル君も何が聞きたいわけ?」

 

「お兄さんが何かに巻き込まれた方がいいって、どう言う意味なんですか?」

 

 今度はハッキリと聞きたいことを尋ねてくるフェルに、オレの方がビックリだ。

 多分、エースケもカケルも同じ気持ちだろう。

 

「だって、何もなかったら夢人君はずっとあのままだったじゃん」

 

「あのまま? あのままって、いったい……」

 

「待て、カケル。少し確認したい――フェル君、君から見た夢人はどんなものだい?」

 

 口を尖らせて不満げな表情で言うカケルに問いかけようとするフェルを止め、エースケが真顔で尋ねた。

 

「えっと、時々馬鹿なことはするけど、いつも一生懸命で誰よりも頑張って……」

 

「あー、悪い。聞き方が悪かったな。勇者だった頃の夢人でなく、平和になってからの夢人が君にはどう見えたのか聞きたいんだ」

 

「それは……何度不採用になっても諦めず前向きに仕事を探していたと思います」

 

 自信がないのか、フェルの声は小さかった。

 その態度を見て、オレ達は確信した。

 目配せしてくるエースケに頷いて返し、オレは口を開く。

 

「――お前、本当にそれだけだと思ってるのか?」

 

 語気を強めたオレの言葉に、フェルの体が少し震えたような気がする。

 だけど、オレは優しく教えてやるつもりはない。

 何故なら、オレ達は当然フェル達も気付いていると思っていたし、それを隠して過ごしていた夢人の馬鹿野郎に怒りを感じていたのだから。

 

「いいか? よく考えてみろよ? 今まで当たり前のように傍に居た奴らから離れて1人になった夢人が、失敗続きの生活で前向きな考えをずっと持ち続けられると思うか?」

 

「それは……」

 

「言っておくが、オレは無理だぜ。いや、無理だったと言うべきだがな」

 

 口ごもるフェルには最初から答えを求めていない。

 本当、こういう部分だけは素直に夢人を尊敬できる。

 自分達が世間に認められない腹いせで犯罪組織の片棒を担いでテロ騒ぎを起こしたオレ達とは違うからな。

 

「そもそもお前や女神様達は、今のアイツがどうしてゲイムギョウ界に居るのか分かってんのか?」

 

「……それはギアお姉さんやアカリちゃんがいるからじゃないんですか?」

 

「そうだよ――だけどさ、それはアイツがゲイムギョウ界に居たい理由にはならねえよな」

 

「えっ?」

 

 キョトンとするフェルを見て、オレは思わずため息をこぼしてしまう。

 自分でも上手く説明できなくて頭が痛くなってくる。

 助けを求めるように視線を向けると、エースケは苦笑しながら頷いてくれる。

 

「つまり、シュンヤが何を言いたいのかと言うと、夢人がゲイムギョウ界に居るのはネプギア様やアカリ様がいるからで……もちろん、フェル君達とも離れたく無かったのでしょう。でも、本心ではゲイムギョウ界に居たくなかったのではないのかと思っているんだ」

 

「っ、どうしてそう思うんですか!? だって、お兄さんは……」

 

「だっても何も、そんなの普通に考えれば分かるじゃん。“勇者じゃなくなった”夢人君が惨めな思いをしてまでこっちに残る理由なんて、本当はどこにもないんだからさ」

 

 カケルに反論を潰され、フェルは目付きを鋭くさせる。

 いくら夢人の現状が気に入らないからって、感情的になったカケルにも非がある。

 仕方なく、オレは敢えて話題を変えることにした。

 

「なあ、勘違いしているかもしれねえけどよ――別に夢人は仕事ができないわけじゃねえんだぞ?」

 

「えっ?」

 

「オレが知っている限りで言えば、特命課のケイブさんやラステイションの教祖様にも職員として働かないかって聞かれてたみたいだぜ。でも、アイツはそう言う話を全部断った……何でだか分かるか?」

 

 何も答えず黙ってしまうフェルは、本当に分からないのだろう。

 てっきり、この話はフェル達も知っているものだと思っていたんだがな。

 

「アイツはな、自分の力でゲイムギョウ界に居場所を作りたかったんだよ」

 

「居場所……」

 

「そうだ。勇者じゃなくなった自分がゲイムギョウ界に居てもいい証明みたいなもんが欲しかったんだろうよ」

 

 言葉を反芻させるフェルに構わず、オレは話を続ける。

 

「前にゲイムキャラ様達から聞いた話だが、夢人はバグだとか『歪み』だとか言ってゲイムギョウ界に悪影響を与えるとかなんだとか……あーもう、よく分かんねえけど、とにかく存在を全否定されているようなもんだって聞いたんだ」

 

「もー、締まらないなあ、シュンヤ君は」

 

「仕方ないだろ、シュンヤなんだから」

 

「うっせーんだよ、お前らは!? ――とにかく、自分がそんな存在すら認められねえ場所に居続けるほど、アイツは厚かましい奴だったか? もしくは、周りのことなんか微塵も考えねえで我がままを通す馬鹿だったか?」

 

「……違います」

 

 途中で茶々を入れられたが、大事なところをフェルに聞くことはできた。

 それが分かったのなら、話は早い。

 

「だったら、分かるだろ? 早い話、アイツは認めてもらいたかったんだよ……いや、認めて欲しいってのも違うのか? えーっと、自立って言うか立派になりたいとか……」

 

「ハア、責任を果たそうとしていたんじゃないかなと思うんだ」

 

「責任、ですか?」

 

 上手い言葉が見つからないオレの横から、エースケのため息が聞こえてきた。

 言いたいことを奪われた恥ずかしさにオレが顔を熱くさせていると、フェルがエースケに意味を尋ねている。

 

「ああ、責任だ。夢人は俺達や君も知っての通り、根が真面目な男だ。だからこそ、元の世界ではなく、ゲイムギョウ界を選んだんじゃないかって思う」

 

「その責任って、いったい何ですか? 勇者のことを言っているんですか?」

 

「いや、それもあるのかもしれないが、1番は父親としての責任だろう」

 

「父親としての責任……」

 

 あまりピンと来ないのか、フェルは顔を曇らせたままである。

 そんなフェルを見て、エースケは説明を続ける。

 

「彼は確かに勇者としての役割を終えたのでしょう。ゲイムギョウ界を平和にするために全力を――それこそ命をかけた彼に残ったのはいったい何だったのか」

 

「それがアカリちゃんの親としての責任なんですか?」

 

「俺はそう考えている」

 

「エースケ君も回りくどい言い方はやめなよ。はっきり言っちゃえばいいじゃん――夢人君は元の世界に居た方が幸せだったってさ」

 

 遂に我慢の限界を迎えたらしいカケルが、敢えてオレ達が言わなかったことをズバッとフェルにぶつけた。

 今までの不満を吐き出すかのようにカケルの言葉は止まらない。

 

「だいたいさ、夢人君はゲイムギョウ界に居ても何もいいことなんてないじゃん。どこの面接に行っても偽物扱いして採用されないし、女神様達と一緒に居たら居たで周りがうるさく言うし、まともな生活も送れないで独りぼっちなんだよ。そんなのおかしいよ。だって、夢人君は無理やりゲイムギョウ界に連れて来られただけなのに……」

 

「――そこまでだ、カケル。それ以上言うな」

 

 カケルの言葉を止め、オレは再びフェルへと向き直る。

 案の定、フェルは俯いていた。

 カケルが言っていたことが分かるからだろう。

 

「なあ、フェル。夢人には最初からゲイムギョウ界に残ることしかできなかったんだよ。どんなに周りから認められなくても、どんなに惨めな生活を強いられても……たった1人、自分のことを父親だって慕う娘のアカリ様のために、夢人は必死に頑張るしかなかった。オレはそう思っている」

 

 直接夢人の本心を聞いたわけじゃないが、ほぼ正解なんじゃないかと思う。

 アカリ様が夢人の心の支えだったのはまず間違いない。

 

「本当、馬鹿だよな。使い捨ての道具のような扱いをされるためにゲイムギョウ界に連れて来られて、残ったのは重たい責任と辛い生活だけだ。そんなもん関係ないって言って、元の世界に帰っちまえばよかったんだよ」

 

「それが出来ないのが夢人らしいとも思えるがな」

 

「そうそう、悪い噂が流れたのは僕らのせいだって言うのにね……本当、あの時僕らのことなんて助けなければよかったんだよ」

 

 苦笑して頷くエースケと憎まれ口を叩くカケルもオレと同じ気持ちらしい。

 カケルが苛立っていたのも夢人に対する感謝の裏返しみたいなものだったようだ。

 オレ達は夢人のおかげで音楽活動を続けられているんだから、カケルの言いたいこともよく分かる。

 だけど、オレは声を大にして言いたい。

 

「バーカ、アレはアイツが勝手にやったことだ。助けられたくせに落ち込んでんじゃねえよ」

 

「ちょっ!? やめてよ、シュンヤ君ってば!?」

 

 暗くなったカケルの頭をガシガシと撫で、オレは笑って言った。

 助けられたオレ達に出来ることは、結果を出し続けることなんだよ。

 中途半端はオレ自身は当然として、夢人のためにも絶対できない。

 それが今もオレ達を応援してくれている夢人に対する恩返しでもあるんだから。

 

「――だろう」

 

「あん? どうかしたか?」

 

「どうしてボク達に何も言ってくれなかったんだろう」

 

 寂しげな表情で呟くフェル。

 そんな姿を見て、オレはため息をついてしまう。

 

「言えるわけねえだろうが。好きな相手と娘はゲイムギョウ界を守るために生まれた女神様なんだぞ? そんな相手に面と向かって今のゲイムギョウ界に居たくないとか嫌いとか言えるわけねえだろう」

 

「っ、でも、それならボクやファルコム達だけにでも……」

 

「同じだよ。一緒にゲイムギョウ界を平和にするために戦った仲間だからこそ、夢人は言えない。なにせ、お前らは“勇者だった”からこそ知り合えた仲間だからな」

 

「今のゲイムギョウ界を否定することは、“勇者だった”自分も否定してしまうことになる――少々突飛な考えとも言えなくもないが、そう考えていたんだろうな」

 

「夢人君にとって“勇者だった”時のことがなくなってしまえば、それこそ本当の意味でゲイムギョウ界で独りぼっちになっちゃうもんね」

 

 平和になったゲイムギョウ界に勇者の存在は必要ない。

 悪者倒してハッピーエンドは物語の中だけだ。

 勇者としての役目を終えた夢人に待っていたは、誰も自分のことを認めてくれない社会。

 それでも頑張れたのはアカリ様やネプギア様、それにナナハ様達仲間の存在があったから。

 でも、裏を返せば、夢人がゲイムギョウ界に居る理由はそれだけなんだよな。

 

「辛くなかったわけねえよ。怖くなかったわけねえよ。元の世界に帰れば、それこそ両親や友達もいるだろうし、ちゃんとした履歴書も書けて、時間はかかるだろうが就職も出来ただろうよ……でも、夢人はそれでも父親と慕うアカリ様に応えるためにゲイムギョウ界を選ぶしかなかった」

 

「……そんなこと、全然知らなかった」

 

「知らなくていいんだよ。強がりで見栄っ張りなところのある夢人のことだ。自分1人が我慢すればいい、なんて思ってたんだろうさ」

 

 報われねえよな。

 ゲイムギョウ界の平和と引き換えに手に入れたのが、辛い生活と父親としての責任だ。

 もしかして、そう言うプレッシャーに押しつぶされているところを見られたくなくて、夢人は1人になったのかもな。

 

「だから、オレ達は決めてたんだ。アイツが自分の力だけでゲイムギョウ界に認められて仕事を見つけられた時、何も言わずに祝ってやろうってな」

 

「それまではバレない程度に手助けをしつつ、ね」

 

「まあ、僕達に出来ることと言えば、アルバイトの紹介ぐらいだったけどね」

 

「そうそう。それで思い出したが、アイツが人一倍働くから仕事がすぐなくなっちまったんだよな」

 

 楽しげにオレ達のライブイベントの会場準備をする夢人の姿を思い出し、自然と頬が緩んでしまう。

 休んでていいと言ってもソワソワして落ち着かない夢人の姿は凄く笑えて、ライブ前の緊張も吹き飛んだもんだ。

 

「後、何だっけ? アンダーインヴァースの工事作業の時もやらかしたって言ってたっけ?」

 

「ああ。偶然見つけた水晶を加工するために、バイト代を全部注ぎこんだとか聞いたな」

 

「それでご飯も食べられなくてフラフラになってたんだよね。だから、偶然会った僕達と一緒にお寿司食べに行ったりもしたよね」

 

「奢りだって言っても安いネタばかり食べてたからな、アイツは」

 

 ほんの数日前の出来事のことだ。

 夢人のビクビクしながら卵や巻き物系食べる姿には呆れたものだ。

 

「……ふふ、お兄さんそんなことしてたんですね」

 

「おっ、やっと笑ったな」

 

「少しは元気が出たみたいでよかったよ」

 

「これも夢人君の情けないエピソードのおかげかな?」

 

 まあ、暗くなった原因が夢人にもあるから微妙だろうけどな。

 とにかく、ようやく顔を上げて笑ったフェルに、これだけは言っておきたかった。

 

「夢人のことはあまり気にすんなよ。お前が気付かなかったのはアイツが隠してたせいなんだからな」

 

「……でも、シュンヤさん達は気付いたんですよね?」

 

「お前らみたいに、ずっと一緒に居たわけじゃねえからな。アイツが変わったかどうかなんて嫌でも分かっちまうんだよ」

 

 最初に会った時と2度目に会った時ですら、もう夢人は変わっていたように見えた。

 なんて言えばいいか分からねえけど、2度目に会った時には勇者としての自覚が出て来たみたいな感じか?

 とにかく、覚悟みたいなものを決めてたように思えたんだ。

 

「って、長々と変な話しちまったな。そろそろ戻らなきゃマズイか?」

 

「そうだな。今から戻ってちょうどと言ったところか」

 

「もう、シュンヤ君が余計な話ばかりするからフェル君の悩みを解決できなかったじゃん」

 

「うっせえよ!? オレだって夢人の話がここまで膨らむとか予想外だっつーの!?」

 

 マジになって夢人の話をしていたと思ったら、もう夜の部まで時間がないとか笑えなさすぎるだろ。

 結局、フェルの話を何にも聞いてねえぞ。

 

「悪い、フェル。相談はまた後で……」

 

「いえ、少し1人で考えてみたいんです」

 

「へっ?」

 

 謝ろうとするオレに、フェルは笑って首を横に振った。

 思わずきょとんとしてしまうオレだったが、すぐにフェルが愛想を尽かしたから言ったわけじゃないことに気付く。

 その顔から、俯いていた時の暗さが晴れていたような気がしたからだ。

 

「……分かった。お前はしっかりしているし大丈夫だろうと思うが、気をつけろよ」

 

「はい、今日はありがとうございました」

 

 頭を下げてお礼を言うフェルに、オレ達は3人で顔を見合わせて口元を緩めた。

 

「じゃあ、頑張れよ。何悩んでるのか知らねえけど、お前も夢人も1人じゃねえんだからな」

 

「力になれることがあれば、すぐに連絡をくれ。必ず力を貸すさ」

 

「だから、あんま1人で考えすぎない方がいいよ。ほら、迎えも来てるみたいだし」

 

「迎え? ……あっ」

 

 カケルに促されたフェルが顔を向けた先には、大きなトカゲみたいなモンスターと小さなロボットがいた。

 オレ達も知っているトリック・ザ・ハードとブレイブ・ザ・ハードの2人だ。

 

「っ、本当にありがとうございました!! 皆さんもライブ頑張ってください!!」

 

 目元を腕で拭うと、フェルはもう1度大きな声でオレ達に礼を言ってきた。

 そのまま顔を俯かせず2人の方へと走っていくフェルを見て、オレ達もライブ会場へと戻るのであった。

 

 ……頑張れよ、フェル。

 オレ達も待ってくれているファンの皆を最高に楽しませてくるからよ。

 オレ達を救ってくれた夢人が誇れるような存在であり続けるためにな。

 

 

*     *     *

 

 

 ――それは突然の衝撃だった。

 

「っ、きゃああっ!?」

 

 ネリネのひと言で気付かされたネプギアが1人になった夢人のことを考えていると、アパート全体を揺らす衝撃が襲ってきた。

 悲鳴を上げて四つん這いになるネプギアと違い、ネリネはバッと顔を上げて窓の方へと近づく。

 

「敵襲……!」

 

「敵襲って何!? 何が起こってるの!?」

 

 要領を得ないネリネの言葉に、ネプギアの混乱は増すばかりだった。

 すると、ネリネは急にネプギアへと近づいて抱き上げる。

 

「ちょっ、急にどうし……」

 

「暴れないで。危ないから」

 

「危ないって、何が――っ!?」

 

 最後まで話を聞かず、ネリネはネプギアを抱えたまま窓から夢人の部屋を飛び出した。

 息をつく間もなく外に運び出されたネプギアが最初に感じたのは、自分達の横を通り過ぎる巨大な何かだった。

 すると、何か大きな物が壊れる轟音がネプギア達の耳に届く。

 

「チッ、逃げられたか」

 

 聞き覚えのある苛立った声が聞こえてきた。

 ネプギアはすぐに声の主の名前を呼ぶ。

 

「ジャッジさん!? いったい何を……!?」

 

 だが、そんなネプギアの非難の声は続かなかった。

 その表情は驚愕に目を見開かせている。

 

「ふん、そんなことは決まっているだろう!! そこのフィーナ様を侮辱した女をオレは許さん!! だから!!」

 

 廃棄されたはずの黒い禍々しいパワードスーツを身に纏い、ジャッジは黒い巨大な斧を構えてネリネを睨みつけていた。

 ……しかし、ネプギアが驚いている理由は別にある。

 

「あ、ああ……」

 

「負け犬が何度挑んできても無駄」

 

「減らず口を叩いていられるのも今のうちだけだ!! 行くぞ!!」

 

 荷物状態から解放されて呆然としているネプギアの目の前で、ネリネとジャッジの戦いが始まる。

 巨大な斧を振り回すジャッジが周りの被害を考えるわけもなく……

 

「夢人さんのアパートが!?」

 

 ――夢人が住居にしていたボロアパートは原型を留めることなく破壊されていくのであった。




と言う訳で、今回はここまで!
補足しておきますとユピテルの3人組は元ネタの木星さん達です。
次はもうちょっと早く投稿できるようにしますね。
それでは、 次回 「強さの理由」 をお楽しみに!
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