超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

12 / 129
はい、皆さんこんにちわ!
まさかこの時間に投稿できるとは思いませんでした。
後、今回タイトルをちょっと修正しました。
それでは、 候補生便り(ナナハ編) はじまります


候補生便り(ナナハ編)

 何だか久しぶりにここに来たけど、大分セットが変わったね。

 スタッフもカメラマンがブレイブで、大道具がジャッジ、監督が……トリック?

 えっと、何でトリックが監督なの?

 ……ああ、今回はタイトルの通り私達女神候補生しか登場しないからなんだね。

 ブレイブとジャッジはトリックがロムとラムに何かしようとしたら、ちゃんと取り押さえてよ?

 ……うん、よし。

 

 今回から始まる候補生だより……私達女神候補生が担当する新シリーズ1発目は、私リーンボックスの女神候補生ナナハがお送りします。

 私の失恋から話が始まっていくんだけど、ちょっと恥ずかしいかな。

 情けないところばかりだけど、私もちゃんと向き合わないとね。

 

 それでは、 候補生便り ナナハ編 始めます。

 

 

*     *     *

 

 

 あの丘で夢人に振られた後、私はどうやって教会に帰って来たのか覚えていない。

 気が付けば、周りが真っ暗になっていたし、いつの間にか教会の目の前まで帰って来ていた。

 

 ……正直、わかっていたからこそ辛かった。

 私の恋が終わることなんて、夢人から呼び出しのメールが届く前からいつも覚悟していたことだった。

 ネプギアが夢人の気持ちを知った時から?

 ネプギアが夢人のことを好きになった時から?

 ……ううん、もっと前からだ。

 私が病院で告白した時には、もうこんな結末になることなんて簡単にわかっていたんだよ。

 だって、あの時から夢人はネプギアしか見ていなかったんだもん。

 ユニやロム、ラムから好意を向けられているにも関わらず、夢人の心は既にネプギアにだけ向いていたんだ。

 それが悔しくて、夢人にもっと私ことを見てもらいたくて告白した。

 ……でも、結局私の輝きは夢人のことを夢中にさせられなかった。

 

「随分と遅かったじゃねェか」

 

 私がのろのろと教会の入り口を開けて入ると、そこには本来だったらいるはずのない人物が立っていた。

 

 ……リンダ。

 元犯罪組織の一員で、今はギョウカイ墓場でマジェコンヌさん達と一緒に生活している女性。

 夢人と一緒で、今の私になるきっかけをくれた大切な友達の1人。

 

 リンダは腕を組みながら指をトントンと忙しなく動かしている。

 予想外の人物がいたことに、私は大きく目を見開いたまま立ち止まってしまう。

 何故ここにいるのだろうかと考えを巡らせていると、リンダは表情を険しくさせて不機嫌そうに言い放つ。

 

「んだよ。アタイがここにいちゃいけないってのか、おい?」

 

「そうじゃないけど……」

 

「アタイだって本当はさっさと帰りたかったんだよ。でも、ジャッジ様と教祖に付き合ってたら遅くなっちまってよ。そしたら、テメェの姉のデカ乳女神が泊まっていけとかほざきやがるし、ここでテメェを待ってろとか意味わかんねェこと言われたんだよ」

 

 うんざりした様子でリンダがこぼしていく愚痴を聞いて、私はベール姉さんの気遣いに気付いた。

 多分、ベール姉さんは私が夢人に振られて帰ってくることがわかっていたんだと思う。

 一応、出かける前にベール姉さんとチカ姉さんには夢人に会いに行くから帰りが遅くなるって伝えてあった。

 何をするのかは話してなかったけど、おそらく私の顔に出てたんだろうな。

 ……これから振られてきますって。

 自分では笑っていたつもりでも、きっとバレバレだったんだろうね。

 だから、ベール姉さんは私が帰って来てすぐにリンダに会えるようにしてくれたんだと思う。

 

「あん? テメェ、なに湿気た面してやがんだよ。何かあったのか?」

 

「……別に、何でもないよ」

 

「嘘つくんなら、テメェの顔を鏡で見てから言いやがれ。そんな顔して何でもないとか馬鹿なこと言ってんじゃねェよ」

 

 何の反応も返さないことを不審に思ったらしく、リンダは私の顔を覗き込もうと目を細めた。

 咄嗟に私はリンダから顔をそらしてしまう。

 でも、それが結局のところ確信を強めることになったらしく、リンダはぶっきらぼうだが私のことを心配してくれる。

 

 ふいに瞼が熱くなってくる。

 目の前にいるリンダの姿も段々とぼやけ始め、もう全部流しつくしたと思っていた涙が溢れてきた。

 ……あっ、駄目だ。

 私、また我慢できないっ!!

 

「って、なに急に泣いてやがり……うおっ、ナナハ!?」

 

 急に泣きだした私にリンダは組んでいた腕を離して慌てだす。

 さらに、続けざまに驚愕の声を上げて私の名前を呼ぶ。

 理由は、私が突然抱きついたからだ。

 ギュッとリンダの背中に腕を回して顔を見られないように抱きつく。

 振られたことを思い出して、見っとも無く泣いている顔をリンダに見られたくないから。

 ……でも、それ以上に今は人肌が恋しい。

 1人で……一人ぼっちでいたくないよぉ。

 

「お、おおおい、テメェ!? さっさと離し……」

 

「……もうちょっと」

 

 抱きつかれた理由のわからないリンダは私を引き剥がそうとする。

 しかし、私は離れたくない。

 その気持ちが自然と口から声になって出てしまう。

 

「もうちょっとだけ……もうちょっとだけでいいから……っ!」

 

 その言葉がなにを意味していたのかは私にもわからない。

 頭の中がもうぐちゃぐちゃで、リンダに抱きついていないと怖かったんだ。

 震えながら懇願していると、リンダは私を無理やり引き剥がそうとするのをやめてくれた。

 そのままリンダは優しく私の背中をポンポンと叩きながら口を開く。

 

「ったく、わかったよ。今日はテメェが満足いくまで傍にいてやるよ。それでいいんだろ?」

 

「……うんっ!」

 

 耳元でささやかれた優しいリンダの言葉に、私は甘えてしまう。

 少しだけ、あと少しだけと言いながら、私はすがってしまったんだ。

 

 ……ごめんね、リンダ。

 私、言い訳ばかりでまた自分の殻に閉じこもろうとしていた。

 また自分のことを嘘で塗り固めようとしていた。

 夢人に振られたことが悲しいのに、私は我慢しようとしていたんだ。

 最初から諦めていたなんて考えて、振られて惨めに泣きわめく自分のことを見ようとしていなかった。

 多分、1人で居たら私はまたあの頃と同じになってた。

 自分の気持ちに必死に蓋をして、死んだように生きていた頃の私。

 夢人やリンダと出会う前の私に逆戻りしてしまうところだった。

 ……でも、今の私にはリンダが傍にいてくれる。

 ベール姉さんとチカ姉さんが私のことを大切に思っているとわかってる。

 だから、こんな情けない私をさらけ出させてください。

 明日からまた新しい1歩を踏み出せるように。

 

 この考えが悲しみからの逃避だってことはわかってる。

 現実から目を背けて我がままを言っているだけだなんて、最初から承知の上なんだ。

 それでも今だけは……今だけはこのままでいさせてください。

 

 私はリンダの体を強く抱き寄せて顔をより深く埋めようとしながら、改めて自覚する。

 私の心の弱さを、脆さを……そして、浅はかさを。

 

 

*     *     *

 

 

「本当にいいのか?」

 

「うん、お願い」

 

 翌朝、私はリンダにとあるお願いをした。

 一晩中、私の泣きごとを受け止めてくれたリンダだからこそ、お願いしたかったこと。

 ……私の髪の毛を切ってもらいたいと思ったんだ。

 

「はあ、変な風になってもしらねェからな」

 

「大丈夫だよ。私はリンダのことを信じてるから」

 

「ケッ、そうかよ」

 

 何度も確認して渋っていたリンダだったけど、最後はちゃんと了承してくれた。

 私は軽く口元を緩めながら、体全体が映る鏡の前に設置した椅子に座る。

 すると、リンダは椅子の後ろから私の首に体がすっぽりと覆える白い布を巻いてくれた。

 そのまま不機嫌そうな顔を隠そうとせず、優しく私の髪を指で整えてから櫛を入れ始める。

 

 正直、私は自分の行動がおかしくて笑えてしまう。

 失恋したから髪を切るなんて、典型的な振られた女の子っぽい。

 普通の女の子だってことを否定したこともあったと思いだし、私は懐かしさと共にその頃の自分の滑稽さに頬が緩む。

 女神なんて『特別』な存在だと思っていたけど、何のことはない普通に恋をして振られて傷つく女の子だったわけだ。

 当時の私はどうしてあんなに意固地になってたんだろうな。

 ……でも、今こうして笑い話にできるのも夢人がいたからなんだよね。

 

 感傷に浸っていると、リンダは遂に私の髪を切る準備を始めた。

 まずは私の髪の毛を湿らせるために毛先に霧吹きを吹きかけ、ある程度櫛でまとめて鋏で切っていく。

 チャキチャキと鋏が音を鳴らすごとに、前掛けのように首から巻かれた白い布に私の髪の毛が落ちてくる。

 その毛先の1本1本を見る度に、私は夢人に恋をしていた時のことを思い出す。

 

 最初はお洒落なんて興味なかった。

 長すぎると手入れが面倒だし、鬱陶しいとさえ思っていた。

 だから、私は適当に肩口ぐらいまでのシンプルなミディアムボブにしていた。

 ベリーショートみたいにしてもいいやとも思っていたけど、何故かベール姉さんに止められたんだよね。

 今だから思うんだけど、ベール姉さんは私の髪を弄ったりしてスキンシップを取りたかったんじゃないかな?

 でも、私は面倒くさいの一言でアクセサリーも付けず、寝癖を直すくらいしか整えようとしなかったんだけどね。

 そんな私の考えが変わったのが、夢人に恋をしてからだ。

 今まで髪の毛はおろか、服にさえ興味を抱けなかった私がファッション雑誌を片手に勉強を始めた。

 こんなの買うだけ無駄になると思っていたアクセサリーを付けている自分を想像して、1人でにやついていたこともある。

 似合ってるかなとか、夢人に可愛いって言ってもらえるかなって妄想していたんだ。

 ストレートのままだった髪もヘアアイロンでゆるくふわっと巻く練習だってしていた。

 失敗して変な髪形になった時は落ち込み、上手くいった時ははしゃいでしまったこともある。

 そのまま鏡の前でにこっと笑ったり、膨れたり、泣きそうな仕草をしたりと自分の顔が他人にどのように見えるのかを確認したりもした。

 改めて考えると、1人の鏡の前で百面相をしていただけの痛い女の子だったね。

 でも、私はどんな顔をすれば夢人に魅力的に映るのかを考えるのに必死だったんだ。

 

 ……考えれば考えるほど頭の中に夢人のことが浮かんでくるよ。

 まったく、本当に私って駄目だね。

 もう恋する時間は終わったって言うのに。

 

「ねえ、リンダ。昨日言ってたチカ姉さんとジャッジの手伝いって何なの?」

 

「新しいプロセッサユニットの開発だとよ。ワンダーのアーマーモードの稼働データを基にして、人工的にプロセッサユニットを開発しようとしてんだよ。そんで、アタイが組み上がった仮フレームのテストをしてたんだよ」

 

「女神じゃなくても動かせるの?」

 

「基にしたのがアーマーモードだからな。厳密にいえば、プロセッサユニットじゃねェよ。どっちかって言うと、ジャッジ様の鎧が1番近いんじゃねェか」

 

 私は夢人のことを考えないようにするため、作業中に申し訳ないけどリンダに声をかけた。

 リンダは気を悪くした様子もなく、私の髪を切りながら話に付き合ってくれる。

 

 あの最後の戦いで私とベール姉さんが鎧を破壊した後、実を言えばジャッジは死にかけたんだ。

 夢人の力でギョウカイ墓場から流れ込んでくるシェアエナジーが切れてしまい、存在を維持できなくなったジャッジは血まみれの状態で鎧から転がり落ちて四肢が消えかけていたんだ。

 でも、完全に消滅する前にジャッジの体が光だし、元の五体満足の状態に戻った。

 また傷が治って戦いを始めるのかと警戒していた私達をよそに、ジャッジは空を仰ぎながら泣きだした。

 

【何故です!? 何故オレを助けたんですか!? オレはあなたのためなら……っ!! フィーナ様あああああああああああああ!!】

 

 耳に痛すぎる慟哭だった。

 四つん這いの体勢で地面を強く掻き毟り、悲痛な叫びを上げるジャッジを見ていられなかった。

 しばらくすると、ジャッジは警備隊の人達に連れて行かれることになった。

 暴れることなく無抵抗のまま連れて行かれるジャッジの後ろ姿に、戦っていた時とはまるで別人だと思ってしまった。

 その後、司法取引としてジャッジはリーンボックスの開発局で無償奉仕をすることが決定された。

 あの黒い鎧もジャッジが1人で作り上げたものらしく、その技術をこれからのゲイムギョウ界の発展のために使ってもらうと言う建前の元、今はチカ姉さんの部下として働いてもらっている。

 ……裏の理由として、無気力になってしまったジャッジを見捨てられなかったんだ。

 牢屋の壁に寄りかかったままのジャッジの姿を見ていると、私は産みの両親に捨てられて裏路地で空を見上げていた時の自分を幻視してしまった。

 おそらくベール姉さんも同じだと思う。

 だから、私達はジャッジがまた新しい1歩を踏み出せるように力を貸そうと思った。

 その一環がチカ姉さんの元で働くことである。

 チカ姉さんの元で働けば監視にもなるし、何より他の仕事よりもジャッジがある程度自由に動ける時間が取れる。

 あの黒い鎧はすでに廃棄処分されているので、今のジャッジに前までの私達を圧倒する力は残っていない。

 だから、チカ姉さんと数人の警備隊員の監視で済んでいる。

 開発局での仕事も真面目に取り組んでいるらしいので評判は悪くない。

 ただ、周りとの協調性に欠けているため孤立しがちになっている。

 でも、最近ではチカ姉さんを始めとした職員の人達と議論を交わすなど、わずかながらその場に慣れてきたとも聞いている。

 そう言う積み重ねをしていくうちに、ジャッジも私が本当の自分になれたようにいい方向に変わっていけたらいいなと思う。

 

「よしっ、こんなもんでどうだ?」

 

 ジャッジのことに関して考えているうちに、私の髪は切り終えたらしく、鏡に映っているリンダがにやりと笑っていた。

 

 最初に抱いた感想は、後ろ髪がスッキリしたなと色気のないものであった。

 今まで隠れていたうなじが出ているため、ちょっと涼しく感じる。

 前髪の方は正面から見た時に両端となるモミアゲの部分が長いままで顔のラインに沿うように若干内側にカールしている。

 それでいて、ヘアピンで耳が出るように後ろへ流す感じで横髪をとめている。

 ちょっと後ろに髪が引っ張られる感覚もあるから、私からじゃ見えないけどゴムでまとめられているのかもしれない。

 そんな風にアレンジされているショートヘアを確認すると、私はリンダの方へと振り向いてほほ笑みかける。

 

「うん、いい感じに仕上げてくれてありがとう」

 

「へっ、ならよかったぜ……ただよ、なーんか前髪がさびしいんだよな」

 

 私がお礼を言うと、照れくさそうにリンダは笑った。

 だが、すぐに私の前髪をちょんちょんと触れながら微妙に納得の言ってない顔をする。

 

 確かに、ちょっと前髪にアクセントが欲しいよね。

 でも、どうすれば……そうだっ!

 

「リンダ、ヘアピンってまだ残ってる?」

 

「残ってるけどよ、前髪をジグザグにとめんのか?」

 

「ううん、それよりも色は……あった」

 

 リンダの言う通り、ジグザグにヘアピンを前髪に入れていくのもいいアイディアだと思うけど、私はそれよりもしたいことがある。

 私は黄緑色のヘアピンを2本だけ手に取り、右側の前髪にクロスさせるようにとめる。

 すると、私の金髪に黄緑色の細長いバツ印が生まれ、四葉のように見える。

 

「どうかな?」

 

「おお、結構いいじゃねェか。似合ってるぜ、それ」

 

「ありがとう」

 

 にかっと笑って褒めてくれたリンダから視線を外し、私は鏡に映っている自分の姿を改めて確認する。

 

 ……髪を短くするだけで、印象って結構変わってくるよね。

 見慣れていた自分の顔がまるで他人に見えてくる。

 何だかんだ言って、私はストレートのミディアムボブな髪が気に入っていたんだ。

 お洒落も手入れも面倒なんて思っていたけど、夢人に可愛いって言ってもらえるように頑張っていろいろと試しているうちに愛着がわいていたんだろうね。

 自分で少しでもいい感じにできたら喜んで、似合わなかったら悲しんで、鏡に前で一喜一憂した大切な思い出がある髪。

 自慢だったなんて思わないけど、それでもナナハとして生きてきた私の大事な一部だった。

 

 でも、私はこの悲しみを振りきるために髪を切りたかったんだ。

 鏡を見る度に、夢人のことを持って楽しみながらお洒落をした自分の顔がちらついてくる。

 諦めなきゃいけないのに、恋をしていた頃の私の顔を見ちゃうと勘違いをしてしまいそうになる。

 だから、私は古典的ながら髪を切って過去を振り切ろうと思った。

 ……まだ夢人のことを好きな気持ちは残ってる。

 1日だけでいいと思いながら、私はこの恋心を捨てられずにいたんだ。

 本当に情けなくて嫌になってくる。

 私ってやっぱり夢人を困らせてばかりの嫌な子だよ。

 夢人はネプギアを選んだんだから……ううん、わざわざ私の告白に誠実に向き合ってくれたんだから。

 本当だったら、私のことなんて無視してネプギアに告白したってよかったはずなのに。

 

 鏡に映ってる私の顔は上手く笑えていない。

 でも、いつの日か自然に笑えるようになるよ。

 その時になったらこの胸の痛みは消えてくれるだろうし、心から夢人とネプギアのことを祝福できるようになると思う。

 だから、私はこの新しい髪形でこれから生きていく。

 また髪が長くなった頃には夢人への恋心をいい思い出にできていると願って……

 

 

*     *     *

 

 

 髪を切ってベール姉さんとチカ姉さんを慌てさせてしまった次の日、私はリンダに付き添ってもらってプラネテューヌに来ていた。

 目的はもちろん夢人とネプギアに会うためだ。

 私に告白した時、夢人は昨日の内にネプギアに思いを告げると言っていた。

 つまり、2人はもう恋人同士なんだ。

 付き合っている2人を見れば、きっとこの再び再燃しそうになる私の気持ちにも諦めがつく。

 この恋に踏ん切りを付けられると思っていたのに……

 

「何でネプギアはそこで逃げちゃうかな」

 

「痛い痛い痛いっ!? わ、私が悪かったから、もうやめてよっ!?」

 

 私は両手を軽く握りしめ、ネプギアのこめかみをぐりぐりと刺激しながらため息をつく。

 涙目でやめてくれと頼まれても、私はネプギアへのお仕置きをやめようと思わない。

 

 だって、ネプギアが悪いんだもん。

 私がどんな思いでここまで来て2人を祝福しようとしているのかも知らないくせに、夢人の告白が恥ずかしかったから逃げたっていったい何なの?

 前から思っていたけど、ネプギアは土壇場に弱すぎるよ。

 慌てて混乱すると視野狭窄になって、自分が何をしたのかさえ分からなくなるのは、本当に困るネプギアの悪いところだと思う。

 しかも、今回は夢人の告白に【ごめんなさい】と言いながら逃げ出すなんて、聞いてる方が呆れちゃうくらいの大ポカをやらかしてる。

 これ、どう考えてもネプギアが夢人のことを振ったとしか思えないよ。

 

「何でネプギアはこんな残念なことしかできないんだろうね」

 

「そ、それを私に言われても……って、イタタタ!? ご、ごめんなさい!? 私が悪かったです!?」

 

「まあ反省しているみたいだし、今回はこれくらいでいいかな」

 

「今回は!?」

 

 思わず漏れてしまった本音に口答えをしてきたネプギアに少しだけカチンときて、私は思わずグリッと折り曲げて鋭角になっていた指の第2関節を押しこんでしまった。

 その後、ネプギアの謝罪を受け入れて今回は特別に許してあげることに決めた。

 ネプギアは驚いていたけど、普通に考えれば当たり前だよ。

 私の勘だけど、絶対にネプギアはまた残念なことをしでかす。

 そんな嫌な確信が私の中にある。

 ……何でこう、頼りになる時とならない時のギャップが激しいんだろうね。

 言っちゃ悪いけど、ネプテューヌさんからの遺伝なのかな?

 

「はあ、それでこれからどうしたらいいのかわからないんだよね?」

 

「っ、うん」

 

 自然と出てしまったため息と共に、私はネプギアに確認する。

 すると、ネプギアは一瞬だけ体をビクッと震わせて悲しそうに顔を歪めて俯いてしまう。

 ……はあ、本当にネプギアは自分のことに関してはポンコツだね。

 そう言うところ、ユニによく似ていると思う。

 ユニも素直になれないから、自分の気持ちを隠して顔を伏せちゃうんだよね。

 でも、この顔を上げる方法って案外簡単なんだよ。

 

「ねえ、ネプギアは夢人の告白が嬉しかったんだよね?」

 

「……うん」

 

「夢人のこと、好きなんだよね?」

 

「……っ、うん」

 

 1つ1つ尋ねていくと、ネプギアは素直に答えてくれた。

 その中で夢人のことが好きって聞いたら、鼻をすすりながらも私に答えてくれたのはちょっと意外だった。

 ネプギアがもう私達に遠慮することなく夢人のことを好きだって言えるのは知っていたけど、今の状態でちゃんと答えてくれるなんて思わなかった。

 前みたいに何も答えられなくなるんじゃないかって思ってたよ。

 ……でも、それならもう答えは出ている。

 私は指で優しくネプギアの頬に触れると、軽く顔を上に向けてもらえるように持ち上げてあげる。

 されるがままのネプギアの表情は涙で歪んでいた。

 くしゃくしゃになってボロボロと泣くネプギアに、私は涙を拭ってあげながらほほ笑む。

 

「だったら、今度はネプギアの番だよ。ネプギアもちゃんと夢人に自分の気持ちを伝えに行こう」

 

「私の気持ち……でも、私逃げちゃって……」

 

「逃げたとわかっているなら、今度はちゃんと向き合わなきゃ駄目だよ。今度はネプギアが勇気を出す番なんだから」

 

 諦めて逃げ道を探そうとするネプギアを励ますように、私は言葉を続ける。

 好きな人に好きって伝えるのは、簡単そうに思えてすごく勇気が必要なんだよね。

 私も夢人に初めて告白した時は、返事が怖くて逃げ出してしまった。

 でも、逃げてばかりじゃいつまでも前に進めない。

 振られるとわかっていても、向き合わなきゃいけなかったんだ。

 

「部屋に閉じこもって泣いてても何も始まらないんだよ。自分の運命を切り開くは、いつだって自分自身なんだから」

 

「……ナナハちゃんはそれでいいの?」

 

 私が説教臭く話していると、ネプギアが恐る恐る聞いてきた。

 ……ああ、何で私がネプギアのことを応援しているのかわからないんだね。

 確かに、髪を短くしただけじゃイメチェンとしか思えないものね。

 私は思わず口を押さえて笑ってしまう。

 

「ネプギアは馬鹿だなぁ」

 

「なっ!? わ、私は馬鹿じゃないよ!? 何で急にそんなことを……」

 

「夢人がネプギアに告白したのなら、私がどうなったのかわかるでしょ?」

 

「あっ……」

 

 言葉を濁して伝えると、ネプギアはようやく気付いたようで申し訳なさそうに私から顔をそらした。

 そこまで露骨な態度を取られると、ちょっと傷つくんだけどな。

 苦笑しながらネプギアの顔を強制的に私に向かせると、額をこつんとくっつける。

 

「夢人は真剣にネプギアと向き合おうとしている。私の告白を断わって、正面から真っ直ぐにネプギアに思いを伝えたんだよ」

 

「そんな……私、夢人さんの気持ちも知らないで……また……」

 

「まだ間に合うよ。今、夢人は振られたなんて勘違いしているけど、ネプギアもちゃんと好きだって伝えればきっとわかってくれる。夢人のことを信じて、ネプギアも勇気を出そう」

 

「……うん、ありがとうナナハちゃんっ!」

 

 間近で見たネプギアの笑顔は純粋に綺麗だと思った。

 泣きそうな顔から一転して可愛らしく笑うネプギアを選んだ夢人の目は間違いなかったと思う。

 同性の私から見ても、夢人の誤解を解こうと元気を取り戻したネプギアは魅力的に映る。

 

 ……だからかな。

 ネプギアにお礼を言われた瞬間、胸が酷く痛んだ。

 それをネプギアに悟らせないように目を細めて口元を緩めることしか、私にはできなかった。

 

 

*     *     *

 

 

 その後、ネプギアが顔を洗いに行っている間にユニから連絡が来て夢人の所に急いで向かった。

 そこでもまたネプギアが残念すぎることをしでかしたんだけど、最後にはちゃんと夢人に告白してくると駆け出していったんだよね。

 その背中を見送った後、私は泣くのを堪えていたユニと一緒にゆっくりと話しながら夢人達の所に戻った。

 きっと今度こそ、2人は恋人同士になっているだろうなと思いを馳せながら。

 

 ……でも、そこにいたのは泣き崩れているネプギア1人だった。

 慌ててネプギアに駆け寄って何があったのかを聞くと、夢人が突然何かに吸い込まれるように消えてしまったらしい。

 話を聞いてもどうすることもできない私達は、とりあえず泣いているネプギアを連れてラステイションの街に戻ることしかできなかった。

 いったい、夢人に何があったって言うの……

 

 

 …………

 

 

 私が知っているのはこんなところかな。

 夢人の行方については、ベール姉さん達だけじゃなくてギョウカイ墓場にいるマジェコンヌさん達にも相談してみるしかないよね。

 何が起こったのかわからないけど、今の私達にできることは何もない。

 だから、ここで祈ることしかできないことが本当に悔しい。

 ……夢人、無事でいてね。




という訳で、今回はここまで!
さて、ここでお知らせです。
次回から第二章に移ると言うことで、作品名と原作名が変更となります。
次回まではこのままのタイトルと原作名のままですが、その次の投稿では変更いたしますのでご了承ください。
それでは、 次回 「ニューワールド」 をお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。