超次次元ゲイムネプテューヌ Re;夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
最近、昼と夜の気温差に襲われて体が重いです。
これから梅雨を迎えると思うとすごく憂鬱です。
それでは、 憎・悪・爆・進 はじまります


憎・悪・爆・進

「――なんで、あなた達まで私について来てるのよ!!」

 

 ノワールの怒号がラステイションの街に響く。

 だが、肝心な怒られた側の彼女達に自覚はない。

 

「もー、そんなに嬉しがらないでよー。ノワールってば、本当に寂しがり屋さんなんだからー」

 

「あなたの目は腐っているのかしら? 私のどこが喜んでいるように見えるって言うのよ」

 

「そこはほら、ツンデレゆえの素直になれない愛情表現ってことで」

 

 締まりのない顔でへらへらするネプテューヌを見て、ノワールは思わず額を押さえてしまう。

 1人でルウィーからラステイションに帰ってくるはずだったのに、余計なものまで連れて来てしまったことを後悔しているのである。

 

「ほう、ここがこの世界のラステイションか。なかなかいい雰囲気ではないか」

 

「そ~かなぁ? あたしはいっつもお空が曇っているように見えるから、あんまり好きじゃないかも~」

 

「へんなにおいするから、すきくない!」

 

 MAGES.の好意的な感想を踏みにじるプルルートとピーシェのコメントに、ノワールの頬は引きつってしまう。

 すると、そんなノワールを見ていたロムが慌てて口を開く。

 

「あ、あの、ぴいちゃん達がその……ご、ごめんなさい」

 

「……いいのよ、別に。あなたが謝ることなんてないんだから」

 

 ロムの謝罪で少しだけ落ち着きを取り戻すノワール。

 確かに、ラステイションの雰囲気は好みが別れるだろう。

 女性受けはあまりしないほうだと、ノワール自身も分かっているのだから。

 

「おい、ぴいぴい馬鹿!! 何が変な臭いだ!! これはな、毎日新しい物を造ろうとしているシアン姉ちゃん達の努力の香りなんだよ!!」

 

「ぴいはバカじゃないもん!! バカっていうタツタのほうがバカ!!」

 

「誰が馬鹿だ!! だったら、テメェも馬鹿じゃねえか!!」

 

「だったら、タツタもバカ!! タツタのバーカ!!」

 

「2人とも、それじゃ終わらなくなっちゃうから落ち着いて、ね?」

 

 しかし、ノワールは我慢できたが、ラステイション出身のリュータは黙っていられなかった。

 すぐさまピーシェに噛みつき、お互いに罵り合いを始める。

 やんわりと仲裁に入ろうとするサイバーコネクトツーを無視して、2人は睨み合いを続ける。

 

「……はあ、どうしてこんなことになっちゃったのよ、もう」

 

「まあ、騒がしくしているのはすまない。だが、シンと言う男が何を目的としているか分からない以上、警戒しておく必要があるからな。すまないが、大勢で同行させてもらった」

 

 ため息をつくノワールに、レイヴィスは謝りながら事情を説明する。

 しかし、そんなことはノワールも分かっている。

 ネプテューヌ達がラステイションについてきたことに納得も理解もしているが、目の前で好き勝手する彼女達から説得力が感じられないのである。

 むしろ、観光に来ましたと言われた方が納得できる騒がしさだ。

 

(そもそも、この人って誰だっけ?)

 

「うん? 俺の顔に何かついているか?」

 

「いいえ、何でもないわ」

 

 だが、そんなことよりもノワールはレイヴィスの方が気になっていた。

 慌ただしさから自己紹介もしていないことに加え、レイヴィスに何となく違和感を感じているのである。

 それが特徴的なくすんだ銀髪に眼帯と言うファッションのせいなのか、それとも別の何かなのかはノワールにも分かっていない。

 

「ふっ、まさかこの短期間に何度もラステイションの地に踏み入れようとは……このヨメ王REDちゃんの目にも見えなかったわ」

 

「ねえ、それ何の真似なの?」

 

「うん? MAGES.だったら、こんな感じでやるかなーって思っただけだけど?」

 

「おい、ちょっと待て」

 

 芝居がかった台詞や手振りをするREDと首を傾げるナナハの会話に、MAGES.が突撃していく。

 さすがに怒っているのかと、ノワールが思考を中断させて見守る中……

 

「もっと“やれやれ”感を出せ。私の真似をするのなら、もっとくたびれた感じでやれ」

 

「え、演技指導!? そこ大事なの!?」

 

「うーんと、こんな感じ? ――ふっ、今日もオイルの臭いで鼻が曲がりそうだぜ」

 

「さっきと全然違うし!? ってか、そっちも何うんうん頷いているの!?」

 

 始まったMAGES.とREDの茶番に、見ていたノワールもげんなりしてしまう。

 今なら、間に挟まれてツッコミを入れさせられているナナハとすごく仲良くなれそうな気さえもしている。

 

「もー、ノワールってば! わたしのことを無視しないでよー!」

 

「……あー、はいはい。構ってあげるから、さっさとこの国から出て行ってくれる?」

 

「オッケー。それじゃ、早速――って、それじゃノワールについてきた意味ないじゃん! まったく、こんな漫才をするためにノワールと一緒に来たんじゃないんだからね」

 

 ノワールは言葉をそのまま投げ返してやりたい衝動に駆られてしまう。

 だが、ここで下手に会話のキャッチボールをするとまた疲れてしまうため我慢を選ぶ。

 

「でもでも、ノワールがどうしてもって言うんだったら、わたしもコンビ組んであげてもいいかなって思うんだけよね。ほら、わたしとノワールって結構相性よさげだし?」

 

「はいは~い! それなら、あたしも入る~! あたしもツッコミ役として、バンバンノワールちゃんにツッコミを入れたい~!」

 

「おお! それなら、わたしとぷるるんのダブルツッコミで会場の皆も大爆笑間違いなしだね!」

 

(……こ、コイツらときたらぁ!!)

 

 ぐぐぐっと手のひらを握りしめて耐え続けるノワール。

 本音を言えば、今すぐにでもネプテューヌとプルルートを黙らせたい。

 しかし、ここで反応してしまえば、ネプテューヌ達の思う壺だと自制を促している部分もあった。

 

(我慢、我慢よ。コイツらが来た所で、一緒に行動しなければ済む問題じゃないの。そう、今からでも1人で教会に……)

 

「そう言えば、まずは教会に言って状況の確認をするんだっけ?」

 

「ああ。それが1番手っ取り早いからな」

 

(――って、そうよね!? 普通そうなるわよね!?)

 

 ノワールがどうやって抜け出すかの算段をしていると、サイバーコネクトツーとレイヴィスの会話が耳に入って来た。

 当然とも言えるその流れに気付かないほど慌てていることに、ノワールは少し落ち込んでしまう。

 だが、そこに救世主が現れる。

 

「ちょっと待ってよ、眼帯兄ちゃん! シアン姉ちゃんの所の方が先だって!」

 

「眼帯兄ちゃん……いや、まずは教会で話を聞いてだな……」

 

「そんなことは後でも出来るだろ! 今はそれよりもシアン姉ちゃんにワンダーを直してもらわなきゃ!」

 

 頑として譲らないリュータに、レイヴィスは困った顔をしてしまう。

 すると、そこにチャンスを見出したノワールが口を挟む。

 

「そ、それなら教会には私だけで行くから、あなた達はすぐにバイクの修理に向かいなさい! 話なら、ちゃんと後で聞かせに行ってあげるから!」

 

「いや、俺達の方から教会に行った方が……」

 

「大人しく待ってなさい!! いいわね!!」

 

「……わ、分かった」

 

 妙な気迫のこもったノワールに圧倒され、レイヴィスは頷くことしかできなかった。

 

「えー、ノワール姉ちゃん1人で大丈夫かよ? なんか姉ちゃんって頼りないんだよなぁ」

 

「そーそー、ノワールって何だか肝心な時に大ポカとかしそうなイメージなんだよね。本当に大丈夫? ちゃんと迷子にならないで行けるの?」

 

「あたしも付き合おうか~?」

 

(こ、コイツらは人のことをなんだと思っているのよ!!)

 

 リュータにネプテューヌ、プルルートと散々な物言いをする3人に、ノワールは心の中で激怒した。

 悪意がないところが余計に腹立たしい。

 しかし、それを必死に隠してノワールは笑みを浮かべる。

 

「そう言うわけだから、後のことは任せるわよ。えーと、その……眼帯さん?」

 

「……レイヴィスだ」

 

「あーうん、とにかく頼んだわよ。しっかり、そこの馬鹿どもの手綱を握っておいてちょうだい」

 

 微妙に落ち込んだ雰囲気を出したレイヴィスに構わず、ノワールは言いたいことだけを言ってネプテューヌ達から足早に離れていく。

 後ろから自分に呼びかけてくるネプテューヌやプルルートの声にも耳をかさず、ノワールは表情を引き締めて教会に向かう。

 

(無理して明るく振る舞おうとしてるんじゃないわよ、本当に馬鹿な連中なんだから)

 

 ――ノワールは気付いていた。

 ネプテューヌ達がまだ夢人やネプギアのことで気持ちが沈んでいることを。

 だから、わざとテンションを上げて騒いでいる風に見せる彼女達を見ていられなかった。

 当然、ノワールにネプテューヌ達の所に戻る気はない。

 それはネプテューヌ達に対する気遣いでもあり、ラステイションの女神としての誇りでもある。

 

(絶対にこの国で好き勝手はさせないわ!)

 

 

*     *     *

 

 

 打倒シンの決意をノワールが固める一方で、強引に監督役を任されたレイヴィスは渋い顔をしていた。

 

(俺1人で、この状況をどうしろと言うんだ?)

 

 各人思い思い好き勝手に騒いでいるネプテューヌ達を見て、レイヴィスは眩暈を覚えた。

 とても自分1人でまとめられるとは思えない。

 

「どうかしたの? 顔色悪いよ?」

 

「……何でもない」

 

 心配そうに尋ねてくるナナハに、レイヴィスは頭を振って答えた。

 その気遣いだけで大分救われた気分だった。

 

「それよりも、お前は大丈夫なのか?」

 

「えっ、私? どこか変、かな?」

 

「いや、それじゃなくて……」

 

 きょとんとして自分の頬を触るナナハに、レイヴィスは口ごもってしまう。

 ナナハはそんな反応をするレイヴィスに何を言いたいのか察しがついた。

 

「と――夢人のことだね」

 

 ナナハの言い直しに気付かず、レイヴィスはバツが悪そうに頷く。

 聞かれなかったことに安堵しつつ、ナナハは苦笑する。

 

「正直に言えば、ショックは大きいよ。でも、私が落ち込んでても夢人が元に戻るわけじゃないし、何かしないといけない気がするんだ」

 

「……そう、か」

 

「だから、何か知っていることや気付いたことがあれば、教えてくれると嬉しいな――ね、眼帯さん?」

 

「なあっ!?」

 

 俯く自分の手に指を絡めてくるナナハに、レイヴィスは驚きを隠せなかった。

 しかも、からかうように含み笑いをするナナハの顔を見て、レイヴィスは赤面してしまう。

 

「うふふ、冗談だよ。ほら、早くて――ワンダーの修理をしてもらいに行こう?」

 

「あ、ああ」

 

 するりと指を離してネプテューヌ達の所に行くナナハを、レイヴィスはボーっと眺めていた。

 思い出すかのようにナナハに繋がれていた自分の手を見て立ち尽くすのであった。

 

 ……だからこそ、レイヴィスは気付かない。

 

(あーあ、やっぱり駄目だったわ。本当に役に立たないわね、あの銀髪眼帯自称魔王。結局、この体だけで何とかするしかなくなっちゃったじゃないのよ)

 

 ナナハの中に居る存在――フィーナが自身に対して悪態をついていることを。

 

 

*     *     *

 

 

『――デンゲキコさーん!! 居るんでしょ!! 開けてよ!!』

 

 扉の向こうから、ファミ通さんの声と扉を強く叩く音が聞こえてくる。

 毎日毎日、私がプラネテューヌに帰って来てから何度もやって来るなんて随分と暇なんでしょうかね。

 

 ……あの日、辞表を出したその日から私はほとんど外に出ていない。

 テレビやネットにも目を向けず、ただ1日中ボーっとして過ごしています。

 アレだけ特ダネを手に入れることに情熱をかけていた自分が嘘みたいな日々です。

 それも自分が蒔いた種のせいなんですから、笑えないですよね。

 

『ねえ、お願いだから少し話を聞かせて!!』

 

 ネプテューヌさん達の元を去ってから、毎日同じ夢を見ます。

 あの御波さんが私を殺そうと、赤くなった右腕を振り下ろしてくる光景。

 お前のせいだ、と恨み事を投げつけられながら赤から急に黒に変わる場面にハッとしていつも目覚めてしまいます。

 だから、睡眠時間も取れず、おそらく今の私は酷い顔をしていると思います。

 

『デンゲキコさんってば!! 少しだけ、少しだけでいいから話を――って、何しようとしているんですか!?』

 

 自業自得な結果で私は夢を失ったどころか、他人の人生までも壊してしまいました。

 記者を志した時や先輩達からも口を酸っぱくして注意されていたにも関わらずです。

 私は目先の特ダネに釣られたせいで、人として大切なものを自ら捨ててしまったんです。

 

『むっ、ここに居る引きこもりを引きずりだせばいいのではないのか?』

 

『そうですの。何も間違ってないですの』

 

『いやいやいや!? そう言うことを言っているんじゃなくて、どうしてそれで剣を持つのかを聞いているんです!?』

 

 私は絶対にそんなことをしない、って思っていたのにどうしてこんなことになっちゃったんでしょうかね。

 今なら不正を行った政治家の人の気持ちが分かるような気がします。

 ああ言う人達も自分は絶対に、って思っていたんでしょうから。

 

『無論、引きずり出すためだ。それ以外ないだろう?』

 

『ここでのんびりしている時間はないですの。あっちが出て来るつもりがないのなら、悲しいですが実力行使で訴えるしかないんですの』

 

『駄目だよ!? それだけは駄目だから早まらないで!?』

 

 これから、私はどうしたらいいんでしょう。

 今の状態が駄目なことは当然分かっています。

 でも、外に出て私が広めてしまった御波さんに関する話を聞くことが堪らなく怖い。

 自分がやってしまった罪の重さに向き合うことが怖いんです。

 

『だったら、アタシに任せてよ!! 1発で決めてみせるからさ!!』

 

『何を決めるの!? と言うか、あなたも固まってないで3人を止めてよ!?』

 

『――ハッ、そ、そそそうだよ!? そんな実力行使とか、絶対にダメだから!?』

 

 結局、私は臆病者なんです。

 責任を感じて記者を辞めるとかじゃないんです。

 ただ怖くて……御波さん達に責められるのが怖くて逃げて引きこもっているだけなんです。

 

『甘いですの。引きこもりは甘やかすとつけあがるだけですの』

 

『いやまあ、そうだろうけど。だからって、無理やりだなんて……』

 

『俺も彼女に賛成だ。早く買った豆腐を届けなければ、シアン達も困るだろう』

 

『それは絶対に間に合ってませんから!? と言うより、何で豆腐を買うだけで迷子になって国を越えているんですか!?』

 

 ……それにしても、今日はやけに外が騒がしいですね。

 まったく近所迷惑もいいところです。

 

『いつの間にか違う国に居るのはいつものことだ。気にすることはない』

 

『いや、結構大事なことですから。それが本当だったら、密入国ってことに……』

 

『今はそれよりも大事なことがある。俺は早く豆腐を届けねばならないのだ。だから、こんな所で時間を食うぐらいなら――斬る』

 

 ――ちょっと待ってください。

 今外から、すっごく物騒な言葉が聞こえてきたような気がするんですが。

 き、きっと気のせいですよね?

 

『扉を斬って中から引きずり出す。これ以上の解決策は他にない』

 

『ありますから!? 他にもいっぱいありますから!?』

 

『そうですの。ここは魔法で一気にバーンッと……』

 

『ダメダメダメ!? それじゃ、もっと被害が大きくなっちゃうから!?』

 

 ……き、聞こえない!?

 私にはなーんにも聞こえてきませんよ!?

 きっと他の部屋の話です!?

 ファミ通さんの声が混じっているような気がするのも幻聴なんです!?

 

『もー、まだるっこしいなあ。だったら、アタシがやるしかないね!!』

 

 急いで私はベッドにもぐりこんだ。

 布団を被って丸くなる。

 これは眠たくなっただけで、現実逃避では決してない。

 体が震えているのも部屋が寒いだけだから。

 

『1番――いっきまーす!!』

 

 ――瞬間、轟音が響く。

 何かが叩きつけられたような鉄の音やガラスの破砕音。

 頭まですっぽりと布団を被っているはずなのに、何故か明るくなったように錯覚してしまう不自然さ。

 

「あ、あれ? ちょ、ちょっとやり過ぎちゃったかな?」

 

「やり過ぎだよ!? 何でドアごと壊しちゃうの!?」

 

「そんなことよりもデンゲキコさんは!? デンゲキコさんは無事なの!?」

 

 先程よりも鮮明に聞こえてくるファミ通さん達の声と慌ただしい足音が近づいてくる。

 全力で居ないと言いたい。

 と言うより、むしろこの布団の世界から外に出たくない。

 

「これではないか?」

 

「そうみたいですの。ひと思いにやっちゃってくださいですの」

 

「分かった」

 

 不吉な言葉に体を震わせていると、私の世界に光が差し込んできた。

 布団の端を握っていたのにも関わらず、現実と向き合わされてしまったのである。

 そして、目に映り込んだのは――変わり果てた部屋の惨状だった。

 

「ちょっと!? どうして剣を振り回しているんですか!?」

 

「むっ、俺は布団を斬っただけだ。この方が手っ取り早いからな」

 

「危なすぎます!?」

 

 ……何と言うことでしょう。

 しっかり整理整頓をしていたはずの部屋がまるでゴミ屋敷のようです。

 扉は外れ、何故か窓に突っ込んでいると言う奇抜なデザイン。

 奮発して買った大きめのテレビはスタンド部分と液晶が別れてコンパクト化。

 少しばかりの潤いをと花瓶に挿していた花は床に散らばる前衛芸術にスタイルチェンジ。

 

 ――ここ、誰の部屋でしたっけ?

 

「デンゲキコさん、無事!? 大丈夫!? 怪我してない!?」

 

 必死に私の体を揺すりながら、デンゲキコさんが何かを言っているような気がします。

 ですが、今の私には返事をする余裕がないんですよ。

 布団の中で丸まって居たら、いつの間にか別の場所にワープしていたんですから。

 

「しっかりして!? お願いだから、正気に戻って!?」

 

「あ、ああああの!? すいませんすいません!? ボクの仲間がこんなことしちゃって!? 必ず弁償しますから!?」

 

 デンゲキコさんの隣で、涙目になって何度も頭を下げてくる腰まで届く長く青い髪の女性。

 ちょっと彼女の言っている意味が分からない。

 だって、こんなゴミ屋敷みたいな場所が私の部屋なわけがないもの。

 

「ほら、日本一も謝って!? それにディックさんも!?」

 

「あーうん、本当にごめんなさい。つい勢い余っちゃって」

 

「何で俺まで謝らなければならんのだ?」

 

「この人の布団を斬ったじゃないですか!? いいから、早く謝ってください!?」

 

「むぅ、すまなかった」

 

 青い髪の彼女に急かされ、2人の男女が私に頭を下げてきた。

 男性の方はどこか納得していない様子で、女性の方は乾いた笑みを浮かべている。

 

「ふぅ、やれやれですの。2人には誠意ってものが足りないですの」

 

「……がすとも魔法がどうこう言ってたよね?」

 

「何のことですの? ――それよりも、今はこっちの方が先ですの。えいっ」

 

「アタッ!? ……って、あれ? 確か露店商の……」

 

「がすと、ですの。正気に戻ったみたいでよかったですの」

 

 不意にぶたれたような衝撃を受けて顔を上げると、ルウィーであったがすとさんが目の前に居た。

 背中に木製の棒状の物を隠しながら。

 

「急な訪問で申し訳ないのですが、記者さんに聞きたいことがあるですの」

 

「……すいません。私、もう記者じゃないんです」

 

「あー、そう言うことじゃないですの。がすと達は記者だから話を聞きたいのではなく、ルウィーから戻って来たあなたに話を聞きたいんですの」

 

 その言葉を聞いて、急に背筋が凍りついたような気がした。

 思わず自分の体を抱き締めてしまう。

 それはがすとさんが何を聞きたいのかを察してしまったからだ。

 

「――ルウィーで何が起こったのか、どうかお話を聞かせて欲しいですの」

 

 

*     *     *

 

 

 その頃、ルウィー教会の牢屋で夢人に変化が訪れていた。

 

「……ねぷ……ぎあ……」

 

 拘束されてからピクリとも動かなかった指がわずかに震えた。

 相変わらず口から出る言葉はネプギアの名前だけだが、瞳にも光が戻ってくる。

 

「ねぷぎあ……」

 

 声が途切れる感覚も短くなる。

 だが、意識を取り戻したと言うわけではない。

 ましてや、正気に戻ったわけでもなさそうだ。

 

 ――そして、まるで寄り添うように漂う赤い粒子が何よりも異常だった。

 ナナハが去った後から、この赤い粒子は夢人の体を覆っている。

 特に右手の指先に集中していた。

 

 ……やがて、変化は目に見えた形で表れる。

 ピシッ、と言う音と共に中指の爪が姿を変えた。

 丸く平べったい人間的な物から、先端が鋭く尖った爬虫類のような物へと。

 

「ねぷぎあ……っ!」

 

 変化はそれだけで終わらない。

 光を取り戻していったように見えた瞳がほのかに赤く明滅し始める。

 鋭い爪に変化した右手の指が震える間隔が段々と短くなっていく。

 それでも赤い粒子は少しも変わらず、夢人の周りを漂っていた。

 ……赤く光る目から涙を流す夢人のことを抱き締めるように。




と言う訳で、今回はここまで!
まあ、彼女達もこの章でようやく参戦です。
残りは後2人……うん、その2人は次の章だわ。
それでは、 次回 「開・幕・引・金」 をお楽しみに!
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